説明

基地局装置、音声パケットデータ処理方法、及びプログラム

【課題】データ帯域保証方式に準拠することなく処理負荷の少ない手法によりVoIP通信に用いる音声パケットデータを優先処理すること。
【解決手段】音声パケット判定部103は、VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する。有線側送受信部104または無線側送受信部105は、音声パケットデータ判定部103の判定結果に基づいて、音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基地局装置、音声パケットデータ処理方法、及びプログラムに関し、特に音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して処理する基地局装置、音声パケットデータ処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットネットワーク上において音声をパケットデータに変換して送信するVoIP(Voice over Internet Protocol)が広く用いられている。音声パケットデータと一般のパケットデータが混在するような無線LAN(Local Area Network)ネットワークでは、音声パケットデータが優先して処理される必要がある。音声パケットデータが優先的に処理されない場合、通話中の音切れ及び音声遅延が生じ、音声品質の低下を招く。以下に、音声パケットデータを優先的に処理する技術について検討する。
【0003】
無線LANネットワークシステムにおいて、音声データに割り当てるサービス識別子(SSID:Service Set Identifier)と、音声データ以外の一般データに割り当てるサービス識別子を別にすることを検討する。ある無線LAN移動局がソフトフォンを使用してVoIP通信をする場合、当該無線LAN移動局には2つのSSIDが割り当てられる必要がある。しかし、1つの無線LAN移動局に対して複数のSSIDを割り当てることはできない。そのため、SSIDを用いて音声データを認識し、音声データを優先的に処理することはできない。
【0004】
続いて、標準化されたデータ帯域保証方式に準拠した音声パケットデータの識別方法について検討する。無線LAN通信における音声、動画像等のリアルタイム性を要するデータの帯域保証方式として、IEEE802.11eが規定されている。このデータ帯域保証方式を使用するには、無線LAN基地局及び無線LAN移動局の双方がIEEE802.11eに準拠する必要がある。そのため、この方式ではIEEE802.11eに準拠していない既存の無線LAN移動局から送信されたパケットデータが音声パケットデータであるか否かを判別できない。さらに、本願の出願時点においては、多くの無線LAN基地局、無線LAN移動局がIEEE802.11eに準拠していない。
【0005】
次に、無線LAN基地局が受信したパケットデータをRTPパケットデータとして扱う方式について検討する。VoIPでは、符号化した音声データの伝送を行うためにRTP(Real-time Transport Protocol)を使用する。そのため、無線LAN基地局がRTPに対応し、受信したデータをRTPパケットデータとして処理した場合、当該パケットデータが音声パケットデータであるか否かを判定できる。しかし無線LAN基地局がRTPパケットデータを扱う場合、無線LAN基地局の処理負荷が大きくなってしまう。そのため、無線LAN基地局がRTPパケットデータを扱うことは現実的には非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、上述の方法による音声パケットデータの優先処理では、IEEE802.11eに準拠していない無線LAN基地局が処理負荷の少ない手法によりVoIP通信に用いる音声パケットデータを優先処理できないという問題がある。
【0007】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、データ帯域保証方式に準拠することなく処理負荷の少ない手法によりVoIP通信に用いる音声パケットデータを優先処理できる基地局装置、音声パケットデータ処理方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる基地局装置の一態様は、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定部と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信部と、を備えるものである。
【0009】
本発明にかかる音声データ処理方法の一態様は、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定工程と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信工程と、を備えるものである。
【0010】
本発明にかかるプログラムの一態様は、
VoIP形式により送受信される音声パケットデータを制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定工程と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信工程と、を備えるものである。
【0011】
本発明にかかる通信システムの一態様は、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定部と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信部と、を備える基地局装置、及び
VoIP通信が可能な移動局装置、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、データ帯域保証方式に準拠することなく簡易な手法によりVoIP通信に用いる音声パケットデータを優先処理できる基地局装置、音声データ処理方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる無線LANシステムの概略的な構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる無線LAN基地局の概略的な構成図である。
【図3】実施の形態1にかかる音声パケットデータのデータサイズと受信間隔の関係を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる音声データフローの概念図である。
【図5】実施の形態1にかかる有線側送受信部104の概略的な構成図である。
【図6】実施の形態1にかかる無線側送受信部105の概略的な構成図である。
【図7】実施の形態1にかかる無線LAN移動局の概略的な構成図である。
【図8】実施の形態1にかかる無線LAN基地局による音声パケットデータの判別動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる基地局装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
図面を適宜参照して、本実施の形態にかかる基地局装置、無線LANシステムの構成について説明する。VoIP通信において無線LAN移動局が使用する音声符号化方式及び符号化ペイロード周期(音声パケットデータの送信周期)が定まると、無線LAN基地局が受信する音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期が一意に定まる。本発明の実施の形態1にかかる無線LANシステムは、この性質を利用して音声パケットデータを優先的に送信する。詳細を以下に述べる。
【0015】
無線LANシステムは、図1に示されるように、無線LAN基地局10−1〜10−N(Nは任意の整数)と、無線LAN移動局20−1〜20−N(Nは任意の整数)と、集中管理制御装置30と、を有する。
【0016】
集中管理制御装置30は、有線LANネットワーク上に存在する。集中管理制御装置30は、複数の無線LAN基地局10−1〜10−Nの各種設定を行う。
【0017】
無線LAN基地局10−1〜10−Nは、無線LAN移動局20−1〜20−Nと通信可能な範囲であるセルを形成する。各無線LAN基地局は、当該セル内に存在する無線LAN移動局20−1〜20−Nとパケットデータの送受信を行う。各無線LAN基地局及び各無線LAN移動局の構成の詳細は図2から図7を用いて後述する。
【0018】
図1に記載の無線LAN移動局20−1と無線LAN移動局20−2がデータ通信を行う処理の概要を説明する。無線LAN移動局20−1が送信した無線LAN用のパケットデータを無線LAN基地局10−1が有線LAN用のパケットデータに変換する。無線LAN基地局10−1は変換したパケットデータを無線LAN基地局10−2に送信する。無線LAN基地局10−2は受信した有線LAN用のパケットデータを無線LAN用のパケットデータに変換する。無線LAN基地局10−2は変換したパケットデータを無線移動局20−2に送信する。無線LAN移動局20−2から無線LAN移動局20−1にデータを送信する場合も、上述の処理と略同一の処理を行う。
【0019】
なお、無線LAN基地局を設置する場合、図1に示すように、隣接する無線LAN基地局が構成するセルの範囲が重複するように無線LAN基地局の設置場所を決定する。セルが重複する範囲が形成されることにより、無線LAN移動局が移動した場合であっても、無線LAN移動局と無線LAN基地局との通信を継続できる。
【0020】
次に図2を参照して、無線LAN基地局10−1の構成の詳細を説明する。なお、無線LAN基地局10−2〜10−Nについても無線LAN基地局10−1と略同一の機能を有する。
【0021】
無線LAN基地局10−1は、通信部101、音声パケットデータ判定部102、記憶部103、有線側送受信部104、無線側送受信部105、及びアンテナ106を備える。
【0022】
通信部101は、集中管理制御装置30との間のパケットデータの送受信の制御を行う。通信部101は、無線LAN移動局20−1〜20−Nとの無線回線を確立し、任意の周波数及び送信出力によるパケットデータの送受信の制御を行う。通信部101は、他の無線LAN基地局10−1〜10−Nとの間のパケットデータの送受信の制御を行う。
【0023】
アンテナ106は、無線LAN通信にかかる電波を送受信する装置である。
【0024】
記憶部102は、VoIP通信に用いられる音声符号化方式により符号化された音声パケットデータのペイロード部分のデータサイズと、パケットデータの受信周期と、を対応づけて記憶する。言い換えると、当該データサイズ及び受信間隔は、無線LAN基地局10−1が受信した一連のパケットデータが音声パケットデータに該当するための条件である。VoIP通信に用いられる音声符号化方式として、たとえばG.711方式、G.729方式が挙げられる。記憶部102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置である。図3は、当該データサイズ(D1)と受信周期(T1)のデータを格納したテーブルの例を示す。
【0025】
図3には、音声符号化方式により定まる6つの条件(条件1〜6)が示されている。条件1〜3は、G.711方式により定まる条件である。条件4〜6は、G.729方式により定まる条件である。条件1〜6のいずれかを満たす一連のパケットデータは、音声パケットデータと判定される。例えば条件1は、パケットデータのペイロード部分のデータサイズ(D1)が200バイトであり、受信周期(T1)が20ミリ秒である。
【0026】
なお、記憶部102に格納される条件の数は、任意である。以降の説明では、条件1〜6が記憶部102に記憶されているものとする。
【0027】
さらに、記憶部102は、音声パケットデータを送受信した端末間の情報、すなわち無線移動局の音声パケットデータの通信履歴を格納する音声データフローリストを記憶する。図4は、音声データフローリストの構成を示す図である。音声データフローリストは、パケットデータの受信間隔、音声パケットデータのペイロード部分のデータサイズ、送信元を識別するための固有値(本例ではMACアドレス)、及び送信先を識別するための固有値(本例ではMACアドレス)を保持する。各データ列は、送信端末と、受信端末と、を識別できる特定端末情報(本例ではMACアドレスの組)を含む。なお、送信元及び送信先の固有値はパケットデータから取得でき、端末を識別できる情報であればよい。
【0028】
たとえば図4の列1は、「00:1a:55:45:b7:32」のMACアドレスを持つ無線LAN移動局が「00:1a:55:26:a6:7c」のMACアドレスを持つ無線LAN移動局にデータサイズが200バイトの音声パケットデータを送信したことを示している。無線LAN基地局10−1を経由する新たな音声パケットデータの転送経路が生じた場合、音声フローリストに新たなデータ列が追加される。
【0029】
記憶部102は、上述の情報の他に無線チャネルに関する情報、サービス識別子(SSID:Service Set Identifier)等も記憶する。
【0030】
記憶部102は、必ずしも無線LAN基地局10−1の内部に備えられる必要はなく、無線LAN基地局10−1と接続可能な外付けのメモリ装置であってもよい。さらに、記憶部102に記憶される情報は、無線LAN基地局10−1がネットワーク経由によりアクセス可能な任意のコンピュータ内に格納されてもよい。この場合、後述の音声パケットデータ判定部103が必要に応じて当該コンピュータにアクセスする。
【0031】
音声パケットデータ判定部103は、後述の有線側送受信部104または無線側送受信部105を介して受信したパケットデータが音声パケットデータであるか否かを判定する処理部である。以下に音声パケットデータ判定部103の詳細な処理について説明する。
【0032】
音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータのデータサイズを取得し、当該データサイズが記憶部102に格納された条件1〜6のデータサイズ(D1)のいずれかに該当するか否かを判定する。条件1〜6のデータサイズ(D1)に該当しない場合、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータが音声パケットデータではないものと判定する。なお、音声パケットデータ判定部103は、パケットデータのヘッダ部分のデータサイズも考慮してデータサイズの一致判定を行う。
【0033】
当該受信パケットデータのデータサイズが条件1〜6のデータサイズ(D1)のいずれかに該当する場合、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータから送信元及び送信先のMACアドレスを読み出す。音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータから読み出した送信元のMACアドレス、送信先のMACアドレス、及びデータサイズと一致するデータ列が音声フローリスト(図4)内に存在するか否かを判定する。一致するデータ列が音声フローリスト内に存在する場合、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータを音声パケットデータと判定する。
【0034】
一方、音声フローリスト内に一致するデータ列が存在しない場合、音声パケットデータ判定部103は、後続のパケットデータのデータサイズ及び受信間隔を監視する。後続のパケットデータが条件1〜6に規定のデータサイズ(D1)及び受信周期(T1)のいずれかを満たしている場合、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータ及び後続のパケットデータが音声パケットデータであると判定する。この際、音声パケットデータ判定部103は、この受信パケットデータから送信元のMACアドレス、送信先のMACアドレス等を読み出して、読み出した情報を音声データフローリストに登録する。
【0035】
一方、後続のパケットデータが条件1〜6のいずれも満たさない場合、音声パケットデータ判定部103は、当該受信パケットデータ及び後続のパケットデータが音声パケットデータではないと判定する。
【0036】
受信周期の判定は、パケットデータの受信間隔の平均値が受信間隔(T1)からある程度の許容範囲内にあるか否かにより行う。これは、ネットワーク上での揺らぎやデータ遅延を考慮したためである。
【0037】
音声パケットデータ判定部103は、上述の判定に応じてパケットデータを後述の送信バッファ部1042、1052内のデータキューに格納する。
【0038】
なお、音声パケットデータ判定部103は、一定期間に音声パケットデータの送受信が行われていない送信経路にかかるデータ列を音声フローリストから削除してもよい。たとえば図4において、MACアドレス「00:1a:55:81:3c:7a」を持つ無線LAN移動局からMACアドレス「00:1a:55:51:3c:d1」を持つ無線LAN移動局に対して一定期間(たとえば10分、任意の期間でよい。)に音声パケットデータが送信されていない場合、音声パケットデータ判定部103は列3のデータを削除する。これにより、音声フローリストのデータサイズの増大を防ぐことができるとともに、音声フローリストの検索時間を短縮できる。なお、当該データ削除を行う場合、音声フローリストの各データ列は最後に音声パケットデータの転送が生じた時刻を保持する必要がある。
【0039】
次に、図5及び図6を参照して有線側送受信部104、無線側送受信部105の説明を行う。
【0040】
有線側送受信部104は、有線ネットワークと接続された他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30とパケットデータの送受信を行う処理部である。有線側送受信部104の詳細を図5に示す。
【0041】
有線側送受信部104は、入出力インターフェイス1041、送信バッファ部1042、送信デバイス1043及び受信デバイス1044を備える。
【0042】
入出力インターフェイス1041は、他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30とのインターフェイスである。具体的には、入出力インターフェイス1041は、送信デバイス1043から供給されたパケットデータを他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30に送信する。さらに、入出力インターフェイス1041は、他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30から受信したパケットデータを受信デバイス1044に供給する。
【0043】
送信バッファ部1042は、他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30に送信するパケットデータを一時的に格納するデータキューを複数備える。本実施形態にかかる無線LAN基地局10−1では、送信バッファ部1042は第1〜4優先キューを有する。第1優先キューが最も優先度が高い。第2〜第4優先キューは同じ優先度を持ち、第1優先キューよりも優先度が低い。すなわち、第1優先キューに格納されたパケットデータが優先的に後述の送信デバイス1043から取り出される。第1優先キューは、音声パケットデータを格納する。第2〜4優先キューは、音声パケットデータ以外のパケットデータを格納する。
【0044】
なお、送信バッファ部1042の備えるデータキューの数は2以上とすればよい。この場合、送信バッファ部1042が備えるデータキューは、優先的に送信される音声パケットデータを格納するデータキュー(第1データキュー)と、他のパケットデータを格納するデータキューに大別される。なお、各データキューは、FIFO(First In First Out)方式で構成される。
【0045】
送信デバイス1043は、送信バッファ部1042内のデータキューの第1優先キューを優先してパケットデータを取り出す。送信デバイス1043は、取り出したパケットデータを他の無線LAN基地局または集中管理制御装置30に送信する。
【0046】
受信デバイス1044は、入出力インターフェイス1041を介して受信したパケットデータを通信部101に供給する。
【0047】
次に、図6を用いて無線側送受信部105について説明する。無線側送受信部105は、無線LAN移動局とパケットデータの送受信を行う処理部である。無線側送受信部105は、入出力インターフェイス1051、送信バッファ部1052、送信デバイス1053、及び受信デバイス1054を備える。
【0048】
入出力インターフェイス1051は、無線LAN移動局とのインターフェイスである。具体的には、入出力インターフェイス1051は、送信デバイス1053から入力されたパケットデータを無線LAN移動局に送信する。さらに、入出力インターフェイス1051は、無線LAN移動局から受信したパケットデータを受信デバイス1054に供給する。
【0049】
送信バッファ部1052は、無線LAN移動局20−1〜20−Nに送信するパケットデータを一時的に格納するデータキューを複数備える。本実施形態にかかる無線LAN基地局10−1では、送信バッファ部1052は第1〜4優先キューを有する。第1優先キューが最も優先度が高い。第2〜第4優先キューは同じ優先度を持ち、第1優先キューよりも優先度が低い。すなわち、第1優先キューに格納されたパケットデータが優先的に後述の送信デバイス1053から取り出される。第1優先キューは、音声パケットデータを格納する。第2〜4優先キューは、音声パケットデータ以外のパケットデータを格納する。
【0050】
送信デバイス1053は、送信バッファ部1052内のデータキューの第1優先キューを優先してパケットデータを取り出す。送信デバイス1052は、取り出したパケットデータを無線LAN移動局に送信する。
【0051】
受信デバイス1054は、入出力インターフェイス1051を介して受信したパケットデータを通信部101に供給する。
【0052】
なお、本実施の形態では、送信部は、有線側送受信部104または無線側送受信部105である。
【0053】
次に図7を参照して、無線LAN移動局20−1の構成の詳細を説明する。なお、無線LAN移動局20−2〜20−Nについても無線LAN移動局20−1と略同一の機能を有する。無線LAN移動局20−1〜20−Nは、たとえばIEEE802.11a、IEEE802.11b/g等の規格に準拠した無線LAN通信機能を持つ携帯電話端末、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)等である。
【0054】
無線LAN移動局20−1は、通信部201、制御部202、記憶部203、操作部204、及びアンテナ205を備える。
【0055】
通信部201は、無線LAN基地局10−1〜10−Nと無線回線を確立し、任意の周波数及び送信出力によりパケットデータの送受信を行う処理部である。制御部202は、音声データの符号化等の各種制御を行う処理部である。記憶部203は、無線LAN移動局20−1の各種設定値(VoIP通信において使用する音声符号化方式、符号化ペイロード周期等)を記憶する記憶部である。操作部204は、ユーザが各種設定値を入力するためのものである。操作部204はたとえばマウス、キーボード等である。アンテナ205は、無線LAN通信にかかる電波を送受信する装置である。
【0056】
続いて、無線LAN基地局10−1による音声パケットデータの判定処理について図8のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
音声パケットデータ判定部103は、通信部101を介して受信したパケットデータのデータサイズを取得する(S11)。音声パケットデータ判定部103は、条件1〜6のいずれかのデータサイズ(D1)と受信パケットデータのデータサイズが一致するか否かを判定する(S12)。データサイズが一致しない場合(S12:No)、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータが音声パケットデータではないと判定する。そして、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータを送信バッファ部1042の第2〜4優先キューのいずれかに格納する(S17)。
【0058】
一方、データサイズが一致する場合(S12:Yes)、音声パケットデータ判定部103は受信したパケットデータから送信元及び送信先のMACアドレスを読み出す。音声パケットデータ判定部103は、読み出した送信元のMACアドレス、送信先のMACアドレス、及び受信パケットデータのデータサイズと対応するデータ列が音声フローリスト内にあるか否かを判定する(S13)。
【0059】
対応するデータ列が音声フローリスト内に存在する場合(S13:Yes)、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータが音声パケットデータであると判定する。そして、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータを送信バッファ部1042の第1優先キューに格納する(S16)。
【0060】
一方、対応するデータ列が音声フローリスト内に存在しない場合(S13:No)、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータの後続パケットデータを一定期間監視する。音声パケットデータ判定部103は当該監視により同一端末から送信された後続のパケットデータが条件1〜6のいずれかを満たすか否かを判定する(S14)。
【0061】
後続のパケットデータが条件1〜6のいずれかを満たすと判定した場合(S14:Yes)、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータ及び後続のパケットデータが音声パケットデータであると判定する。この場合、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータから送信元及び送信先のMACアドレスを読み出し、当該情報を音声フローリストに登録する(S15)。そして、音声パケットデータ判定部103は、受信パケットデータ及び後続のパケットデータを送信バッファ部1042の第1優先キューに格納する(S16)。
【0062】
後続のパケットデータが条件1〜6のいずれも満たさないと判定した場合(S14:No)、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータが音声パケットデータではないと判定する。そして、音声パケットデータ判定部103は受信パケットデータを送信バッファ部1042の第2〜4優先キューのいずれかに格納する(S17)。
【0063】
なお、S13の処理をS11の前に行ってもよい。この場合、受信パケットデータのデータサイズの取得及びデータサイズ比較を行う必要が無くなるため、音声パケットデータ判定部103はより高速に判定処理を行える。
【0064】
次に本実施の形態にかかる基地局装置の主な効果について説明する。本実施の形態にかかる無線LAN基地局は、パケットデータのデータサイズ及び受信間隔のみを用いた簡易な手法によりVoIP通信の音声パケットデータを判別できる。本実施の形態にかかる無線LAN基地局は、IEEE802.11eに準拠する必要がない。
【0065】
さらに、音声パケットデータ判定部103が音声フローリストを用いて音声パケットデータの判別を行う場合、当該判別においてパケットデータの受信間隔を考慮する必要が無い。これにより、音声パケットデータの判別処理の高速化が図れる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。たとえば、本発明は無線LAN移動局と、無線LANシステムに接続された有線ネットワーク上のコンピュータと、の間のVoIP通信にも適用可能である。
【0067】
無線LANシステム内の有線LANネットワークがVLAN(Virtual LAN)を構成し、かつ当該有線LANネットワーク上にIEEE802.1qのCoS(Class of Service)を優先制御できるスイッチを有する場合、音声パケットデータ判定部103は音声パケットデータのCoS値を7に設定してもよい。これにより、有線LANネットワーク上においても音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先制御することができる。
【0068】
無線LAN基地局の音声パケットデータ判定部103、有線側送受信部104、及び無線側送受信部105の処理の一部/全部は任意のコンピュータ内で動作するプログラムとして実現できる。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(たとえばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(たとえば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(たとえば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0069】
なお、本発明にかかる基地局装置(無線LAN基地局)の最小構成を図9に示す。基地局装置10は、音声パケットデータ判定部103と、送信部104(上述の有線側送受信部104または無線側送受信部105と対応する。)と、を備える。音声パケットデータ判定部103は、VoIPに用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが音声パケットデータに該当するか否かを判定する。送信部104は、音声パケットデータ判定部103の判定結果に基づいて、音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する。本構成においても、音声パケットデータは、受信したパケットデータのデータサイズ及び受信間隔のみを用いて音声パケットデータの判定処理を行う。これにより、処理負荷の少ない音声パケットデータの優先処理が可能になる。
【0070】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0071】
(付記1)
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定部と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信部と、を備える基地局装置。
【0072】
(付記2)
前記音声パケットデータ判定部は、受信した前記パケットデータのデータサイズと前記条件として規定された前記データサイズとを比較し、連続して受信したパケットデータの受信間隔から算出する受信周期と前記条件として規定された前記受信周期とを比較することにより前記判定を行うことを特徴とする付記1に記載の基地局装置。
【0073】
(付記3)
前記送信部は、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先的に送信可能な状態で一時的に保持することを特徴とする付記1または付記2に記載の基地局装置。
【0074】
(付記4)
前記送信部は、送信するパケットデータを格納する複数のデータキューを有するバッファを備え、
前記判定により前記音声パケットデータに該当すると判定されたパケットデータは、他のデータキューに比べて優先的にパケットデータが取り出される前記複数のデータキューに含まれる第1データキューに格納され、
前記判定により前記音声パケットデータに該当しないと判定されたパケットデータは、前記複数のデータキューに含まれる前記第1データキュー以外のデータキューのいずれかに格納されることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の基地局装置。
【0075】
(付記5)
前記送信部は、前記バッファの前記複数のデータキューからパケットデータを取り出して送信先に送信することを特徴とする付記4に記載の基地局装置。
【0076】
(付記6)
前記音声パケットデータ判定部は、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当すると判定した場合に、当該パケットデータから送信元の固有値と、送信先の固有値と、を含む情報を抽出することを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【0077】
(付記7)
前記音声パケットデータ判定部は、前記情報の抽出処理より後に受信したパケットデータと、前記情報とを比較することにより当該パケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定することを特徴とする付記6に記載の基地局装置。
【0078】
(付記8)
前記音声パケットデータ判定部は、付記7に記載の判定を行った後に、連続して受信したパケットデータの受信間隔から算出する受信周期と前記条件として規定された前記受信周期とを比較することを特徴とする付記7に記載の基地局装置。
【0079】
(付記9)
前記音声パケットデータ判定部は、付記7に記載の判定を行った後に、受信した前記パケットデータのデータサイズと前記条件として規定された前記データサイズとを比較することを特徴とする付記7に記載の基地局装置。
【0080】
(付記10)
前記音声パケットデータ判定部は、受信した前記パケットデータのデータサイズと前記条件として規定された前記データサイズとを比較し、付記7に記載の判定を行った後に、連続して受信したパケットデータの受信間隔から算出する受信周期と前記条件として規定された前記受信周期とを比較することを特徴とする付記7に記載の基地局装置。
【0081】
(付記11)
前記情報を格納する記憶部をさらに備え、
前記音声パケットデータ判定部は、抽出した前記情報を前記記憶部に格納することを特徴とする付記6乃至付記10のいずれか1項に記載の基地局装置。
【0082】
(付記12)
前記音声パケットデータ判定部は、所定期間の間、前記音声パケットデータの送信が生じていない送信経路にかかる情報を前記記憶部から削除することを特徴とする付記11に記載の基地局装置。
【0083】
(付記13)
前記送信元の固有値及び前記送信先の固有値はMACアドレスであることを特徴とする付記6乃至付記12のいずれか1項に記載の基地局装置。
【0084】
(付記14)
前記音声符号化方式は、G.711方式、G.729方式の少なくとも一方であることを特徴とする付記1乃至付記13のいずれか1項に記載の基地局装置。
【0085】
(付記15)
付記1乃至付記14のいずれか1項に記載の基地局装置と、VoIP通信が可能な移動局装置と、を備える通信システム。
【0086】
(付記16)
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定し、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する音声パケットデータ制御方法。
【0087】
(付記17)
VoIP形式により送受信される音声パケットデータを制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定し、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信するプログラム。
【符号の説明】
【0088】
10−1〜10−N 無線LAN基地局
20−1〜20−N 無線LAN移動局
30 集中管理制御装置
101 通信部
102 記憶部
103 音声パケットデータ判定部
104 有線側送受信部
105 無線側送受信部
106 アンテナ
201 通信部
202 制御部
203 記憶部
204 操作部
205 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定する音声パケットデータ判定部と、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する送信部と、を備える基地局装置。
【請求項2】
前記音声パケットデータ判定部は、受信した前記パケットデータのデータサイズと前記条件として規定された前記データサイズとを比較し、連続して受信したパケットデータの受信間隔から算出する受信周期と前記条件として規定された前記受信周期とを比較することにより前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先的に送信可能な状態で一時的に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記送信部は、送信するパケットデータを格納する複数のデータキューを有するバッファを備え、
前記判定により前記音声パケットデータに該当すると判定されたパケットデータは、他のデータキューに比べて優先的にパケットデータが取り出される前記複数のデータキューに含まれる第1データキューに格納され、
前記判定により前記音声パケットデータに該当しないと判定されたパケットデータは、前記複数のデータキューに含まれる前記第1データキュー以外のデータキューのいずれかに格納されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記バッファの前記複数のデータキューからパケットデータを取り出して送信先に送信することを特徴とする請求項4に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記音声パケットデータ判定部は、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当すると判定した場合に、当該パケットデータから送信元の固有値と、送信先の固有値と、を含む情報を抽出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記音声パケットデータ判定部は、前記情報の抽出処理より後に受信したパケットデータと、前記情報とを比較することにより当該パケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の基地局装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の基地局装置と、VoIP通信が可能な移動局装置と、を備える通信システム。
【請求項9】
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定し、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信する音声パケットデータ制御方法。
【請求項10】
VoIP形式により送受信される音声パケットデータを制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
VoIP(Voice over Internet Protocol)に用いられる音声符号化方式により定まる音声パケットデータのデータサイズ及び受信周期の条件に基づいて、受信したパケットデータが前記音声パケットデータに該当するか否かを判定し、
前記音声パケットデータ判定部の判定結果に基づいて、前記音声パケットデータを他のパケットデータよりも優先して送信するプログラム。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−23448(P2012−23448A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157998(P2010−157998)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】