説明

基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティング用の装置

本発明は、気相からの堆積により、特にPVD(物理蒸着)又は反応性PVD法に従って気相からの物理的な堆積により、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための機構に関する。複数の基材キャリアと複数のコーティング及び/又は処理ユニット、例えば、蒸発器の源、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極などは、真空にすることができる堆積又は処理チャンバー内に配置されている。システムのより経済的な利用のために、設備に1つのバッチで導入される基材コンポーネントを、異なる処理(例えば、コーティングや、表面処理など)にかけることができるように、モジュール方式で装備することができる。さらに、本発明は、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための新たな方法を提供し、この方法を使用することにより、PVD(物理蒸着)又は反応性PVD法によるコーティング設備が大幅にコスト効率よく操作させることができる。それは、以下の方法の工程を特徴とする:a)基材コンポーネントのための所望のコーティング又は処置プログラムに従って、堆積又は処理チャンバー内に、モジュールから、コーティング及び/又は処置ユニット(蒸発器、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及び腐食性の陽極など)及び遮蔽素子を作り上げ、b)同じ処理を受けることになる基材コンポーネントを基材キャリアに設置し、c)堆積または処理チャンバーを閉じ、d)1つのバッチで、基材キャリア上にグループで結合される基材コンポーネントに対する個々の処理又はコーティングプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は14の前書きによると、気相からの堆積により、特にPVD(物理蒸着)又は反応性PVD方法を用いて、気相からの物理的な堆積により、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティング用の装置及び方法に関する。このような装置又は方法を使用して、基材コンポーネントである被加工物の表面に非常に薄いコーティング、例えば、チタン系の炭化物コーティングのような耐腐食及び耐磨損コーティングを、被膜することが可能である。このような薄いコーティングは、頻繁に、ツールの製造に、特に、例えば、穴あけツール、フライス加工ツール、或いはリーマツールなど、精密加工ツールの製造に使用されている。
【背景技術】
【0002】
CVD(化学蒸着)法は、900〜1100℃の比較的高い処理温度を使用して動作しながら、PVDプロセスでは、処理温度が、約100〜600℃で、すなわち、実質的に比較的に低くすることができる。この方法によれば、コーティング材料を、まず、例えば、電子ビーム、電気アーク(アークPVD)、又はスパッタリングなど、適切な物理的効果を適用することにより、気化する。気化された材料は、基材表面に衝突して、前記基材表面で層を形成する。蒸気の粒子が基材に到達するためには、部分的な真空を使用する必要がある。このプロセスでは、粒子の線形運動が発生するので、基材表面全体に、均一且つ均質的にコーティングされ得るために、基材を移動させることが必要である。
【0003】
しかしながら、PVD法における低い処理温度は、装置上のより大きな支出で支払われる。これは、良好なコーティング密着性を達成するために、コーティングされる基材を、慎重な表面前処理と正確なプロセス制御にかけられることが必要であるからである。また、いわゆるシャドウ効果が補償されていることを確認する必要がある。したがって、関連するPVDコーティング設備は、コーティング又は表面処理の実行中に基材コンポーネントの連続的な動きのための駆動技術を備えている必要がある。さらに、堆積または蒸発が、高真空、すなわち、10-4〜10 Paの範囲で実行されるので、処理チャンバーは、外部に対して、密閉的に、密封されることが必要であり、その結果、コーティング設備の比較的複雑な構造が生じる。
【0004】
金属のようなコーティング材料を、気相に変換するためには、反応性イオンプレーティングを含むイオンプレーティング、マグネトロンスパッタリングを含むスパッタリング、またはレーザー蒸発、或いは真空蒸発のようなPVD法に基づいて、様々な方法が提案されている。すべての方法は、所望のコーティング又は処理効果を達成するために、例えば、ガス雰囲気、温度、及びコーティング材に対する基材表面の配向などの処理パラメータが、非常に正確に維持されなければならないという特徴を共有する。したがって、従来のコーティング設備は、処理チャンバーが、複数の基材キャリアと、例えば、気化器の源、陰極、ターゲット、マグネトロンなどのコーティング及び/又は処理ユニットと、に対するスペースを提供するように構成されている。このような真空処理設備は、例えば、DE 10 2005 050 358 A1又はDE 10 2006 020 004 A1に記述されている。
【0005】
処理及び/又はコーティングされる基材は、そのような市販の設備を使って、単一類型のコーティングしか具備できない。これは、この類型のコーティングが、例えば、文献としてUS6,051,113においで説明したように、多層コーティングの場合でも、従来のコーティング設備について、コーティングの厚さが、バッチ全体にわたって異なる場合でも、一種類のコーティングのみが常にコーティング設備のバッチ全体を覆って堆積することができることを意味する。
【0006】
その結果、従来のコーティング設備は、しばしば低効率的にしか動作できない。これは、PVD法によれば冒頭で説明したコーティング及び/又は処理設備における処理時間のうち、割合が最も高いのが、基材とその保持装置の加熱、冷却時に消費されるためである。また、コーティングされる基材コンポーネントのスペクトルは、多くのコーティングセンターにおいて広まっているので、さらに、異なる基材コンポーネントに対して、異なるコーティングが必要である。コーティング設備の体積は、コーティング容器の寸法の原因で固定され、特定のコーティング類型を要求する基材又は基材コンポーネントの数は、多くの場合、100%にコーティング設備を埋めるのに十分でないので、所望の納期を満足することができない場合が多いである。
【0007】
したがって、本発明は、気相からの堆積による、特にPVD法による気相からの物理的堆積による、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティング用装置、及びその装置を操作する方法を提供するという目的に基づいている。前記の基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティング用装置、及びその装置を操作する方法を使用することで、処理と納期を最小限に抑えることが可能である。
【0008】
前記の目的は、前記の装置に対して、請求項1の特徴により達成され、前記の方法に対して、請求項14の方法のステップにより達成される。
【0009】
本発明によれば、前記の装置は、モジュールを装備することができるように構成され、コーティング装置に一括で導入された基材コンポーネントに対して、コーティング/処理チャンバーの閉鎖後に、コーティングや表面処理など異なる処理をかけることができるように構成される。本発明による前記の装置の設計を通じ、コーティング設備の利用の度合いが大幅に向上し、さらに、コーティング設備が実質的に、より経済的に、且つ、大幅に改善したエネルギー効率で操作させることができる。これは、コーティング設備において、本発明に係るより多数の基材コンポーネントが、一度だけ加熱・冷却され、これにより処理時間をかなりの程度節約することになるためである。
【0010】
本発明に係る前記の方法は、その中核の面で、コーティング及び/又は処理ユニットとシールドモジュールを、コーティングしようとする異なる基材コンポーネント用の所望のコーティング及び/又は処理プログラムにしたがって組み立てることができ、それから基材キャリアが、一つのバッチで同じ処理を施そうとする各基材コンポーネントを装備することができることを特徴とする。処理チャンバーの閉鎖後に、シールドモジュールと設備のプロセス制御装置は、個々の基材キャリアの上に組み立てている基材コンポーネントが、個々のコーティング及び/又は処理プログラムを受けることができることを確保する。方法の改良によれば、基材コンポーネントへの異なる処理は、コーティングチャンバーのさまざまな場所でも同時に行うことができる。
【0011】
前記の設備のモジュラー構造のため、それぞれの既存の注文状況に対して、極めて柔軟にコーティング設備を適合させることが可能である。さらなる利点からは、処理チャンバー内部に、個別で加熱・冷却し、且つ他の領域から遮蔽することができ、特定のコーティング及び/又はエッチングプログラムを、チャンバーのさらなる領域から遮蔽された状態で行うことができる領域を提供することで、減少した数量を装填する場合でも、設備が経済的に操作できるという結果を生じる。
【0012】
本発明の有利な改良及びその変種は、従属請求項の主題である。
【0013】
請求項2の改良で、処理チャンバー内の既存の設置スペースは、有利に利用され、このさらなる利点は、基材コンポーネントへの異なる処理が、各処理ステーションの空間的な分離が要因で、同時に実行できることという結果をもたらす。また、このように、隣接するコーティング及び/又は処理ユニットの影響を受けることなく、選択されたコーティング及び/又は処理ユニットの異なる基材キャリアに対して、正確に監視された処理パラメータを持つ個別の処理を施すことが可能になる。従って、コーティングの非常に正確で均質な成長率が達成することができる。
【0014】
請求項3に係る、そして、好ましく、モジュールとして実現される、遮蔽ユニットによれば、非常にタイトな設置スペースでも、遮蔽モジュールを使用して、基材コンポーネントが、異なる処理を受けられることができるので、貴重な設置スペースを節約することが可能になる。
【0015】
請求項4によれば、PVDコーティング設備に関して、表面処理やコーティングの質の低下を受け入れることなく、仕切壁の構成の形でシールドモジュールを実現することが容易に十分であることが示されている。前記の仕切壁は、セラミック及び/又は穴あき金属材料を含む、異なる材料を含むことができる。
【0016】
請求項5によれば、堆積又は処理チャンバーが閉じた時に、基材キャリアと、コーティング及び/又は処理ユニット、及び/又は加熱ユニットとの間の相対的な位置を変更することを可能とする運動機構を提供する場合、さらに、設備の柔軟性が増加する。
【0017】
駆動装置を、キャリアの構造と一緒にコーティング及び/又は処理ユニットに提供することは、根本的に可能である。しかしながら、請求項6に記載の取付台に回転駆動装置が装備されている場合、前記の運動機構はより簡単になる。
【0018】
取付台用の回転駆動装置は、有利的には、同時に、選択されたコーティング及び/又は処理ユニットに対して相対的に、選択された基材キャリアの位置を決めるためのインデックスユニットとして使用され、それによって、制御上の支出は、少なくなる。
【0019】
請求項10によると、例えば軸の形である基材キャリア用の回転駆動装置は、前記の取付台の各取付スペースに設けられている。従って、コーティング設備が均一に被膜される基材要素で100%満たされた時、コーティング設備は、前記の設備の柔軟性を失うことなく、従来の形で動作させることが可能である。
【0020】
例えば、請求項11に記載の変更を使用して、選択された、コーティング及び/又は処理ユニットに直接近接する基材キャリアは、環状運転を作動させることなく、回転運動に設定することができる。これによって、その厚さが正確に定義され、非常に均質なコーティングを、これらの選択された基材コンポーネント上に堆積することが可能となる。
【0021】
基本的に、選択されたコーティング及び/又は処理ユニットを連続して機能するように置くことが可能である。そして、本発明のコーティング設備に係る構造は、選択されたコーティング及び/又は処理ユニットが、同期してオペレーションされることを可能にし、これにより、さらに、処理時間も、節約される。
【0022】
本発明の例示的な実施形態は、図面に基づいて、以下で詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、コーティングチャンバー壁が削除されたコーティング設備の内部の斜視図を示している。
【図2】図2は、コーティングチャンバーが閉鎖した状態で、図1に記載のコーティング設備の上面図を概略的に示している。
【図3】図3は、図2に記載のコーティング設備の、図2におけるIII-III線に対応する断面での概略断面図を示している。
【図4】図4は、本発明に係るコーティング設備において、選択された駆動コンポーネントの斜視概略図を示している。
【図5A】図5Aは、本発明に係る方法の実行中に、取付台の別の位置を表示するための図を示している。
【図5B】図5Bは、本発明に係る方法の実行中に、取付台の別の位置を表示するための図を示している。
【図5C】図5Cは、本発明に係る方法の実行中に、取付台の別の位置を表示するための図を示している。
【図5D】図5Dは、本発明に係る方法の実行中に、取付台の別の位置を表示するための図を示している。
【0024】
前記の図面は、PVD法または反応性PVD法により基材コンポーネントをコーティングするためのコーティング設備における処理チャンバー(より詳細に示されていない)の内部に受け入れられたコンポーネントを模式的に示している。言い換えれば、図面に示された組立部品は、真空にすることができ、且つ好ましくは種々のガス接続部を具備しているコーティングチャンバーや真空チャンバー内に位置している。このような真空チャンバーは知られているので、ここで、このチャンバーに対する詳細な説明を省略する。より詳細に説明されるべきコーティング設備の特別な特徴は、このような設備の操作中に、コスト効率を大幅に増加させて、且つ改良された柔軟性によって設備の加工時間を最小限に抑えるために、どのように、真空にすることが可能な堆積又は処理チャンバーの内部を装備することができるかということである。
【0025】
この目的のために、コーティング装置のモジュール構成が選択されている。コーティング及び/又は処理モジュール12は、符号10で表記されている取付台の周りに予定の角度間隔で位置している。望ましくは、これらのコーティング及び/又は処理モジュール12は、気化器や又はモジュール方式で備えることができるターゲットを持ったいわゆるスパッタ陰極と、さらに、図面に詳細に示しないが、使用可能ないわゆるシャッターとからなる。このようなコーティング又は処理モジュールがそういうものとして知られているので、ここで、これらのコンポーネントについてのより正確な記述の必要はない。しかしながら、強調すべきであるのは、本発明が、具体的な処理/コーティングモジュールに制限されないとされることである。確かに、PVD方法によるコーティングプロセスで適当に使用されるすべてのユニットは用いられることができる。コーティング/処理モジュール12に加えて、さらに、通常、処理モジュール12の間に位置し、且つ、モジュールとしても実現できる加熱ユニット14が提供される。
【0026】
符号16で表記されているエッチング陽極は、取付台10のセンターに位置している。エッチング陽極部は、加熱ユニット14及びコーティングモジュール12の上方で、コーティングチャンバーの丸屋根(図示せず)の領域にある中央のフィラメント陰極(より詳細に図示せず)と連携動作する。
【0027】
図1は、堆積又は処理チャンバーが開かれているときのコーティング又は処理に必要なモジュールの構成を示しているが、図2によると、チャンバーが閉じているときの構成の平面図を示している。この図は、取付台10の周囲にグループ化されたコーティングモジュール12および加熱ユニット14の一部が、真空チャンバー用の装填ドアとして使用される別の部分に取付けられ得ることを示している。残りのコーティング及び加熱モジュールは、装填ドアのように、コーティング及び加熱モジュールの柔軟な構成のための取付ポイントを持つキャリア構造に取付けられている。
【0028】
取付台10は、図2から最も明らかであるように、回転台の形として実装され、且つ各々が異なるモジュールを装備できる、複数の、例示的な実施形態においては八つの、好ましくは同一に設計した取付スペース18-1〜18-8を搭載する。
【0029】
駆動軸22は、垂直回転軸を持つ各取付スペース18-1〜18-8に関連付けられている。取付スペース18-2、18-4、18-6、及び18-8において、駆動軸22は、垂直運搬軸24に固定結合される。垂直運搬軸24は、所定の、好ましくは設定可能な軸方向の間隔で、基材コンポーネント、例えば、ドリルを保持するプラグ入れ30を具備する回転台26を支持する。前記のプラグ入れは、コーティング又は処理しようとする表面部を有する前記のドリルが前記のプラグ入れから突出するように実装されている。
【0030】
運搬軸24は、支持棒20と支持アーム28を用いて安定させる。これは、トランスミッション(より詳細に図示せず)を介して、回転台26の回転時に、プラグ入れと、それから基材コンポーネントが、垂直にあるプラグ入れの軸の周りを、同一または反対方向に別々に回転することを実行することを確保できる。
【0031】
図4には、図1〜3の図面から変更された運動機構に基づいて、どのように、回転運動を取付台10と駆動軸22とに伝えるのかを、模式的に示している。第1のリングギア34の内部ギアに噛合う駆動歯車32は、取付台10の下方に位置されている。リングギア34は、第一のドライブピニオン38を使用してその内部のギアを介して駆動することができる大きい直径をもった、軸方向にオフセットした第2のリングギヤ36に回転固定接続されている。
【0032】
駆動歯車32を支持する軸22は、回転可能に組立てれるように、取付台10を通過して延びており、第2の駆動ピニオン42を介して駆動可能であって、取付台10の下に位置する歯車40に回転可能であるように据えつけられている。
【0033】
したがって、第2の駆動ピニオン42が駆動されるときに、歯車40は、駆動軸22を駆動して、それから取付台10を回転方向に駆動する。このように、取付台10は、サイクルすることができる。
【0034】
同時に、駆動歯車32は、第1のリングギア34の内歯上で転がる。第1の駆動ピニオン38の回転駆動の適切な制御を通じ、第1のリングギア34の速度は、取付台10の周期的な運動中に駆動軸22が回転しないように、歯車40の速度と同じに保つことができる。
【0035】
一方、第2の駆動ピニオン42の駆動が停止し、取付台がインデックスングされたままの場合、すべての駆動軸22を、第1の駆動ピニオン38を作動させることによって、同時に回転運動に設定することができる。
【0036】
取付スペースの一部、すなわち、取付スペース18-1、18-3、18-5及び18-7は、取付スペース18-2、18-4、18-6及び18-8と異なって装備される。これらは、カバーされた駆動軸22上に放射状に指向した遮蔽板48のためのホルダー46を具備するカバー板44を載せる。さらに、静止して取付けられた遮蔽壁構造50は、取付スペース18-1と18-7、又は18-3と18-5の二つの隣接する遮蔽板48の間のいずれの場合にも提供されている。前記の遮蔽壁構造50は、いずれの場合も、凸面板52と割線板54とから形成され、隣接する放射状の遮蔽板48との間のスペースを、隣接する取付スペースから、遮蔽する。遮蔽板48と遮蔽壁構造50は、モジュールとして設計されており、それらは、残りの処理/コーティングのコンポーネントの配置に応じて、コーティングチャンバーの内部に、異なる位置で取付られることができる。
【0037】
コーティング設備の上記構成では、次の効果を得る。
【0038】
基材キャリア2だけではなく、気化器の源、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極(S)、エッチング陽極などのコーティング及び/又は処理ユニット12、並びに加熱モジュール14がモジュール方式で組み立てられ、設備内に1つのバッチで導入された基材コンポーネントをコーティング及び処理チャンバー内で異なる処理(コーティングや、表面処理など)にかけることができるように配置することができる。特に基材コンポーネント、例えば異なるドリルは、堆積または処理チャンバー内において様々な場所で異なる処理がかけられる、異なる基材キャリア上に組立てられることができ、少なくとも、基材キャリア26上に位置している基材コンポーネント56は、遮蔽板48と遮蔽壁構造50を介して非常に専用のコーティング及び/又は処理ユニット12の影響領域に排他的に保持されている。
【0039】
さらに、駆動装置が提供され、前記駆動装置を用いて、閉じている堆積及び/又は処理チャンバーで基材キャリア26とコーティング及び/又は処理ユニット12との間の相対的な位置が変更可能であるので、僅かの基材コンポーネントが特定のコーティングを提供する必要がある場合、又は特定の処理を施す必要がある場合にも、そのコーティング設備をコスト効率よく動作させることができる。これは、気化器、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極などのコーティング及び/又は処理ユニット12、並びに遮蔽素子48、50は、基材コンポーネントに対する所望のコーティング又は処理プログラムに従って、堆積又は処理チャンバー内にモジュールから組み立てられ、基材キャリア26は、同じ処理を受ける基材コンポーネントと対応して装備される。その後、堆積又は処理チャンバーが閉じられた後に、基材キャリア(26)上にグループに集められた基材コンポーネントに対する各々の処理又はコーティングプログラムは、1回のバッチで実行することができる。基材コンポーネントと基板のキャリアとに対する複数回の加熱・冷却を省略することができ、これにより、小さいバッチの場合でも、処理時間がかなりの程度節約することができ、コーティング設備の利用を大幅に向上することができる。
【0040】
これを、図5A〜5Dを基に、処理の例に基づいて説明する。
【0041】
例えば、異なる3種類のコーティングが、一つのバッチで塗られることを想定している。この場合に、図5Aに示すように、ポジション1、3、5及び7は、仕切りモジュール48-1、48-3、48-5及び48-7に占拠されている。基板は、ポジション2、4、6及び8で装填される。
【0042】
すべてのキャリアに対して、ポンプ、加熱、冷却などの処理段階は同じであり、取付台10又は回転台は、その軸の周りを回転する。
【0043】
エッチング(イオンエッチング)の場合、回転台10は停止して、ポジション4と8に位置する基材キャリア26は、自分の軸を中心にして回転する。エッチング段階は開始することができる(図5A)。
【0044】
一旦、ポジション4と8に対するエッチングが完成すれば、駆動装置がサイクルして、ポジション2と6がエッチング位置にもたらされる(図5Bを参照)。ポジション6と2は、イオン衝撃が終了するまで、それら自身の軸の周りで回転する。
【0045】
エッチング段階が正常に完了したときに、コーティングは始まる(図5C)。ポジション4と8は自分の軸を中心にして回転し、ターゲットのTiAlとTiを持っている、これらの位置に割り当てられた左右の各気化器は起動し、バーンオフが完了した(もし可能である場合)後にシャッター(より詳細に示されていない)を開ける(もし設置される場合)。適当な窒素雰囲気を構築した後に、ポジション4は窒化チタンを使用してコーティングされ、ポジション8は、窒化チタンアルミニウムを使用してコーティングされる。達成された塗り厚さによって、気化器はオフにされ、及び/又は、関連のシャッターは閉じられる。図5Dによると、駆動装置は、さらに、そのポジションにサイクルする。
【0046】
ところで、ポジション2と6は、ナノレイヤを使用してコーティングすることができる。ポジション2と6は、次の層に要求される各々の気化器に到達するとき、対応する気化器が起動し、及び/又はシャッター(もし提供された場合)が開かれる。それぞれの層を堆積することができる。ポジションは、自身の軸の周りにさらに回転する。
【0047】
それぞれのポジションは、様々な気化器により、個別に、又は同時に、コーティングすることができる。
【0048】
さらにサイクルするために、回転台はそれ自身の軸を中心にして回転する。もし、すべてのコーティングが堆積された場合、気化器はオフにされる。ところで、バッチ全体を冷却した後に、コーティング又は処理チャンバー、即ち、容器は、通風される。プロセスは完了する。
【0049】
この上記のプロセスは、その可能な変化が、1つしかない。提供されている気化器の数及びそのターゲット材料、ポジションの数、及び仕切りモジュールの構造の機能に応じて、様々な多数のコーティングの種類は、一つのプロセスで可能である。また、充填レベルは、前述の条件と直接依存し、可変である。モジュラ構造によって、短縮したプロセスも可能である。この場合、僅かに、減少したポジションの数が装填されて、それから、目標とする形態で、加熱して、前処理して、コーティングされる。
【0050】
もちろん、上述した実施形態からの変化は、基本的な考え方を離れずに、可能である。したがって、もちろん、他のコーティングは、例えば、装飾的なコーティングも、堆積させることができる。
【0051】
取付スペースに置かれる仕切りモジュールの代わりに、放射状に又は軸方向に処理チャンバーの内部に挿入される仕切ユニットが使用され及び/又は移入され及び/又は正しい方向に設置される。
【0052】
さらに、例えば、運動学的反転は、取付台が静止維持され、且つ、処理/コーティングユニットが駆動されているように、基材キャリア用ドライブ装置の領域で行われる。
【0053】
また、エッチング陽極の代わりに、コーティングチャンバー内に基材を前処理するための他の機能のユニットを使用することができる。また、これらの機能のユニットの空間的な構成は、例えば、プロセスのために、広い範囲において変動させることができる。
【0054】
最後に、駆動装置の運動も、基材コンポーネントとコーティング又は処理ユニットとの間に必要な相対的な動きを提供するように、自由に変化させることができる。なお、決定的なのは、単に駆動装置が、取付台と、基材キャリアと、そして有利にも、個々の基材コンポーネントのホルダとを、処理ユニットと相対的に回転運動させることが可能であることである。
【0055】
従来的な設備を使用できる操作は、説明した構成を使用して実装させることができる。これは、すべてのポジションが基材を持つためである。しかしながら、仕切りモジュール48、50は、そのとき、取付られない。バッチ内にあるすべての基材は、種々の処理段階で同程度に扱われる。コーティングは、1種類しか堆積されない。
【0056】
オペレーションのための更なる可能性は、コーティングプロセスが、以下の点で、短くされるということである:選択された基材キャリヤーだけを装備し、それゆえに、減少した量で装填される点と、そして、処理中に、処理又はコーティングが実行されるセクターだけが加熱される点である。
【0057】
従って、本発明は、気相からの堆積により、特にPVD(物理蒸着)又は反応性PVD法に従って気相からの物理的な堆積により、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための装置を提供する。複数の基材キャリアと複数のコーティング及び/又は処理ユニット、例えば、気化器の源、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極などは、設備のより経済的な利用のために、真空にすることができる堆積又は処理チャンバー内に位置している。設備に1つのバッチで導入される基材コンポーネントを、異なる処理(例えば、コーティングや、表面処理など)にかけることができるように、モジュール方式で装備することができる。
【0058】
さらに、本発明は、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための新たな方法を提供し、この方法を使用することにより、PVD(物理蒸着)又は反応性PVD法によるコーティング設備が大幅にコスト効率よく操作させることができる。それは、以下の方法の工程を特徴とする:
a)基材コンポーネントのための所望のコーティング又は処置プログラムに従って、堆積又は処理チャンバー内に、モジュールから、コーティング及び/又は処置ユニット(気化器、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極など)及び遮蔽素子を組み立て、
b)同じ処理を受けることになる基材コンポーネントを基材キャリアに設置し、
c)堆積または処理チャンバーを閉じ、
d)1つのバッチで、基材キャリア上にグループで組み付けられる基材コンポーネントに対する個々の処理又はコーティングプログラムを実行する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相からの堆積により、特にPVD(物理蒸着)又は反応性PVD法に従って気相からの物理的な堆積により、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための装置であって、前記の装置は、真空にすることができる堆積又は処理チャンバーを具備し、複数の基材キャリア(26)と複数のコーティング及び/又は処理ユニット(12、14、16)(気化器の源、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極)は、前記の堆積又は処理チャンバー内に位置しており、前記の装置は、設備内に1つのバッチで導入される基材コンポーネント(56)を、異なる処理(コーティングや、表面処理)にかけることができるように、モジュール方式で装備されることを特徴とする装置。
【請求項2】
基材コンポーネント(56)が、前記の堆積又は処理チャンバー内の様々な場所(ポジション1〜8)で、異なる処理を受けることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも一つの遮蔽ユニット(48、50、52、54)は、前記の堆積又は処理室内に提供され、前記の少なくとも一つの遮蔽ユニットを用いて、少なくとも1つの基材キャリア(24、26)上に位置する前記の基材コンポーネント(56)が、コーティング及び/又は処理ユニット(12)の影響領域に排他的に保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記の遮蔽ユニット(48、50、52、54)は、モジュールとして実現され、好ましくは、板(48、52、54)から組み立てられる隔壁構造(48、50)のような平面構成素子から形成されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記の堆積又は処理チャンバーが閉じたときに、前記の基材キャリア(24、26)と前記のコーティング及び/または処理ユニット(12)との間の相対的な位置を変更可能とするユニット(10、32〜42)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
その周囲に分散した基材キャリア(24、26)のための駆動源(22)が装備されている取付スペース(18-1〜18-8)を複数個を有する、前記のコーティング及び/又は処理ユニット(12、14、気化器の源、陰極、ターゲット、マグネトロン)のためのキャリア構造の内部に、放射状に、前記の堆積又は処理チャンバー内に提供される取付台(10)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
取付スペースには、基材キャリア(24、24)及び/又は遮蔽ユニット(48、50)が装備されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
取付台(10)とキャリア構造との間の相対的な回転運動が制御可能となる駆動及びインデッスクングユニット(10、32〜42)を有することを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記の取付台(10)は、回転駆動装置を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記の基材キャリア(24、26)の動力は、基材コンポーネント(56)上に引き出されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの基材キャリアの回転運動は、前記の取付台のサイクル運動から切り離されることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
少なくとも選択されたコーティング及び/又は処理ユニット(12-1、12-2)は、同期的に操作可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記のキャリア構造には、前記のコーティング及び/又は処理ユニット(12)及び/又は加熱ユニット(14)の取付位置ポジションが装備されていることを特徴とする請求項6乃至12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
気相からの堆積により、特にPVD(物理蒸着)又は反応性PVD法に従って気相からの物理的な堆積により、基材コンポーネントの表面処理及び/又はコーティングするための方法において、前記の基材コンポーネントが、真空にすることができる堆積又は処理チャンバー内に複数の基材キャリヤと一緒に収容される方法であって、
a)基材コンポーネント(56)のための所望のコーティング又は処置プログラムに従って、堆積又は処理チャンバー内に、コーティング及び/又は処置ユニット(12、気化器、陰極、ターゲット、マグネトロン、フィラメント陰極、及びエッチング陽極)及び/又は加熱ユニット(16)及び遮蔽素子(48、50)を、モジュールから、組み立てる工程と、
b)同じ処理を受けることになる基材コンポーネント(56)を前記の基材キャリア(26)に設置する工程と、
c)前記の堆積又は処理チャンバーを閉じる工程と、
d)1つのバッチで、基材キャリア(24、26)上に取付けられている基材コンポーネント(56)に対する個々の処理又はコーティングプログラムを実行する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記の工程d)において、個々の基板のキャリア(24、26)は、必要に応じて、関連付けられている個々の前記のコーティング及び/又は処理ユニット(12)のための個々の表面処理に対して最適化された相対的なポジションに、サイクル的に提供されることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公表番号】特表2012−512321(P2012−512321A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539893(P2011−539893)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001712
【国際公開番号】WO2010/069289
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506360974)ギューリング オッフェネ ハンデルスゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Guehring oHG
【住所又は居所原語表記】Herderstrasse 50−54, D−72458 Albstadt, Germany
【Fターム(参考)】