説明

基板およびその製造方法、回路装置およびその製造方法

【課題】耐湿性が向上された基板およびその製造方法、回路装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の基板20は、基材12と、基材12の上面に形成された配線14と、接続部となる領域を除外して配線14を被覆する被覆層18と、基材12の下面に形成された裏面電極32と、基材12を貫通して配線14と裏面電極32とを接続する貫通電極30とから成る。そして、基材12の周辺部に位置する配線14の表面の凹凸の幅を、基材12の中心部に位置する配線14の表面の凹凸の幅よりも大きくしている。このことにより、配線14と被覆層18との密着の、熱サイクル負荷時の信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板およびその製造方法、回路装置およびその製造方法に関する。特に、本発明は、基材の主面に形成された配線が被覆層により被覆される構成の基板およびその製造方法に関する。更に、本発明は、この様な基板を備えた回路装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器の小型化および高機能化に伴い、その内部に収納される回路装置においては、微細な配線を具備するものが主流になっている。図16を参照して、配線基板107を有する回路装置を説明する(下記特許文献1)。
【0003】
ここでは、配線基板107の上面に形成された第1の配線層102Aに回路素子(半導体素子105)が実装されることで回路装置100が構成されている。
【0004】
配線基板107は、ガラスエポキシ等の樹脂から成る基材101の表面及び裏面に配線層が形成されている。ここでは、基材101の上面に第1の配線層102Aおよび第2の配線層102Bが形成されている。第1の配線層102Aと第2の配線層102Bとは、絶縁層103を介して積層されている。基材101の下面には、第3の配線層102Cおよび第4の配線層102Dが、絶縁層103を介して積層されている。また、各配線層は、絶縁層103を貫通して設けられた接続部104により所定の箇所にて接続されている。さらに第2の配線層102Bと第3の配線層102Cは基材101を貫通して設けられた接続部104により所定の箇所にて接続されている。ここで、配線基板107の厚みは、例えば1mm程度である。
【0005】
また、最上層の配線層である第1の配線層102Aは、被覆層109により被覆されている。そして、電気的接続領域(金属細線108が接続される部分)の第1の配線層102Aは、被覆層109を部分的に除去して設けた開口部から露出している。ここで、被覆層109は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料から成る。
【0006】
被覆層109の上面には、半導体素子105が固着されている。ここでは、半導体素子105の下面は絶縁性接着剤等を使用して固着されている。そして、半導体素子105の上面に設けた電極は、金属細線108を経由して第1の配線層102Aと電気的に接続される。
【0007】
更に、半導体素子105および金属細線108が被覆されるように配線基板107の上面は封止樹脂106により被覆されている。
【0008】
上記した構成の配線基板107の製造方法は次の通りである。先ず、エポキシ樹脂等の樹脂系の材料から成る基材101の上面及び下面に第2の配線層102Bおよび第3の配線層102Cを形成する。これらの配線層は、貼着された導電膜のエッチングまたは選択的なメッキ処理により形成される。また、基材101を貫通して第2の配線層102Bと第3の配線層102Cとを接続する接続部104を形成する。次に、第2の配線層102Bおよび第3の配線層102Cを、樹脂から成る絶縁層103により被覆する。更に、絶縁層103の表面に第1の配線層102Aおよび第4の配線層102Dを形成する。これらの配線層の形成方法は、上記した第2の配線層102B等と同様である。更に、絶縁層103を貫通して第1の配線層102Aと第2の配線層102Bとを接続する接続部104を形成する。また、最上層の配線層である第1の配線層102Aが覆われるように被覆層109が形成され、電気的接続領域と成る部分の第1の配線層102Aが外部に露出するように、被覆層109を部分的に除去して開口部が設けられる。
【0009】
しかしながら、上記した構成の回路装置100では、最上層の第1の配線層102Aと被覆層109との密着性が十分でない問題があった。具体的には、半導体素子105に集積される回路の規模が大きくなると、半導体素子105の動作に伴う発熱量が増大する。そして、銅などの金属から成る第1の配線層102Aと、樹脂から成る被覆層109とでは、熱膨張係数が大きく異なるので、両者の界面には熱ストレスが発生する。従って、両者の界面に多数回の熱ストレスが加わることで、第1の配線層102Aから被覆層109が剥離してしまう虞がある。
【0010】
この問題を解決する方法が下記特許文献2に記載されている。この技術事項を図17を参照して説明する。ここでは、絶縁性の基板110の上面に導体回路111が形成されている。更に、導体回路111と絶縁樹脂部との熱膨張係数の差に起因する問題を回避するために、導体回路111の表面に均一な荒さの凹凸を形成している。
【0011】
具体的には、特許文献2では、上記構成を実現するために、過酸化水素水と硫酸とテトラゾール等を含むエッチング液を使用して導体回路111のパターニングを行っている。このことにより、エッチング工程では、導体回路111の表面に化合物112が付着する。この結果、化合物112が付着した部分以外から一様にエッチングが進行して、均一な凹凸が導体回路111の表面に形成される。このことにより、導体回路111と他の樹脂製の部材との密着強度が向上されて、両者の剥離の問題が回避される、と下記特許文献2には記載されている。
【特許文献1】特開2003−324263号公報
【特許文献2】特開2002−76610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献2に記載された技術事項では、導体回路111がソルダーレジストから剥離してしまう問題があった。図18(A)は導体回路111の周辺部付近を示す断面図であり、図18(B)は被覆層114(ソルダーレジスト)が導体回路111から剥離した状態を示す断面図である。
【0013】
図18(A)を参照して、基板110の上面には導体回路111が形成されており、この導体回路111の端部(紙面上では右側の端部)は、電解メッキ法により形成されたメッキ膜112により被覆されている。更に、導体回路111および基板110の上面が被覆されるように、樹脂材料から成る被覆層114が形成されている。この被覆層114は、導体回路111の表面を被覆すると共に、部分的にメッキ膜112の表面も含めて被覆している。
【0014】
図18(B)を参照して、上記のように形成された被覆層114が乖離する現象を説明する。具体的には、上記したように、導体回路111と被覆層114とでは熱膨張係数が異なるので、温度変化に伴い両者の境界には熱ストレスが発生する。そしてこの熱ストレスは、被覆層114端部で大きい。この図を参照して説明すると被覆層114内部付近(紙面上では左側)に於ける上記熱ストレスの大きさF1は小さく、被覆層114端部での周辺部付近に於ける熱ストレスの大きさF2は比較的大きい。また、導体回路111の粗度は全ての領域に於いて略同一であるので、導体回路11と被覆層114との密着強度も全面的に略同一である。
【0015】
上記のことにより、基板110の周辺部に於いては、導体回路111と被覆層114との界面には、温度変化の度に大きな熱ストレスが加わる。結果的に、この領域に於いて、被覆層114が導体回路111から剥離してしまう問題が発生する。被覆層114が剥離してしまうと、両者の界面に容易に水分が侵入してしまい、耐湿性が劣化する。
【0016】
本発明は、上述した問題を鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、耐湿性が向上された基板およびその製造方法、回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の基板は、基材と、前記基材の一主面に形成されると共に接続部を有する配線と、前記接続部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、前記配線の前記接続部は、前記基材の上面に規定された一領域を囲むように配置され、前記一領域の周辺部に位置する前記配線の表面の凹凸の幅を、前記一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくすることを特徴とする。
【0018】
本発明は、基板と、前記基板に実装された回路素子とを有する回路装置であり、前記基板は、基材と、前記基材の一主面に形成されると共に、前記回路素子と電気的に接続される接続部を有する配線と、前記接続部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、前記配線の前記接続部は、前記基材の前記一主面の一領域を囲むように配置され、前記一領域の周辺部に位置する前記配線の表面の凹凸の幅を、前記一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基板および回路装置によれば、基板の周辺部に位置する配線表面の凹凸の幅を、基板の中心部に位置する配線表面よりも大きくしている。このことにより、基板の中心部に於いては、配線と被覆層との密着強度を向上させて両者の剥離を抑止することができる。更に、基板の周辺部に於いては、配線の表面凹凸の幅が比較的大きいため、熱ストレス(応力)が分散されて、被覆層の配線からの剥離が防止される。
【0020】
また、本発明の製造方法によれば、上記構成の基板および回路装置を効率的に製造することができる。具体的には、配線の周辺部をエッチングする工程と、配線の中心部をエッチングする工程とで、性質の異なるエッチャントを使用することにより、周辺部に位置する配線の凹凸の幅を、中心部よりも大きくすることができる。換言すると、基板の中心部に位置する配線の表面の凹凸の幅を、周辺部のものよりも細かくすることができる。
【0021】
更に、基板の上面全域を被覆するように形成された無電解メッキ膜を、電解メッキ処理を行う際のメッキ線として利用する場合がある。この様な場合、不要となる無電解メッキ膜を除去する工程と、周辺部に位置する配線の表面をエッチングする工程とを同一の工程で行うことができる。従って、配線の表面に粗度の変化をつけることによる工程数の増加が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1の実施の形態>
図1から図5を参照して、先ず、本実施の形態の回路装置10の構造を説明する。図1は回路装置10の全体的な構造を示す図であり、図2は配線14の粗度を示す図であり、図3は配線14の表面の状態を撮影した画像であり、図4は配線表面とメッキ表面の状態を撮影した画像であり、図5は配線14の他の構造を示す図である。
【0023】
先ず、図1を参照して、回路装置10の構造を説明する。図1(A)は回路装置10の断面図であり、図1(B)はその平面図である。ここで、図1(A)は、図1(B)に示す平面図の代表的な断面図である。
【0024】
回路装置10は、内蔵される半導体素子16よりも外形寸法が若干大きいサイズの樹脂封止型のCSPである。回路装置10の外観は直方体形状または立方体形状である。更に、回路装置10は、内蔵される半導体素子16と電気的に接続された接続電極34が、基板20の裏面にグリッド状に設けられるBGA(Ball Grid Array)である。
【0025】
尚、SIP等でも可能であることから、接続電極の位置は、基板の周囲にリング状に配置されても良いし、ランダムに配置されても良い。
【0026】
図1(A)を参照して、回路装置10は、配線14が上面に設けられた基板20と、基板20に固着されて配線14と電気的に接続された半導体素子16と、半導体素子16を覆うように基板20の上面を被覆する封止樹脂22とを主要に具備する。
【0027】
基板20は、基材12と、基材12の上面に形成された配線14と、接続部となる領域を除外して配線14を被覆する被覆層18と、基材12の下面に形成された裏面電極32と、基材12を貫通して配線14と裏面電極32とを接続する貫通電極30とから成る。
【0028】
基材12は、ガラス繊維にエポキシ樹脂が含浸されたガラスエポキシ等であり、樹脂材料を主体とするインターポーザーである。基材12は、上面および裏面に配線層が形成されると共に、製造工程に於いて半導体素子16を機械的に支持する機能も有する。基材12の材料としては、樹脂を主体とする材料以外も採用可能であり、例えば、セラミックまたはSi等の無機材料から成る基板、銅やアルミニウム等の金属から成る金属基板等を基材12の材料として採用することもできる。なお、金属基板が基材12の材料として採用された場合は、基材12の上面および下面は、樹脂等から成る絶縁層により被覆され、配線14等と基材12とが絶縁される。
【0029】
配線14は、銅やアルミニウム等の金属から成り、基材12の上面に積層された厚みが20μm〜50μm程度の導電箔を選択的にエッチングすることにより所定形状に形成される。選択的なメッキ膜の被着により配線14が形成されても良い。本実施の形態では、被覆層18の開口部24の周辺部に位置する配線14の表面の凹凸の幅を、開口部24の周辺部以外よりも大きくすることが特徴であるが、この特徴は後述する。更に、ここでは、基材12の上面に単層の配線14が形成されているが、絶縁層を介して積層された2層以上の多層の配線層が基材12の上面または下面に形成されても良い。更に、下から上に絶縁層を介してパターンが積層されたクラッド構造等と、基板の構造は何でも良い。
【0030】
図1(B)を参照して、配線14は、第1接続部14A(接続部)と、第2接続部14Bと、両接続部の間に細長く設けられた配線部14Cとを含む。第1接続部14Aは、半導体素子16(回路素子)と電気的に接続される部位であり、図では、一例として、基板20の周辺部に沿って、半導体素子16を取り囲むように複数個が形成されている。第2接続部14Bは、下面に貫通電極30が接続する部位であり、第1接続部14Aよりも回路基板20の内側に位置している。そして、第1接続部14Aと第2接続部14Bとは、両接続部よりも細長い配線部14Cにより接続されている。配線14をこの様な構成にすることにより、半導体素子16の上面に密に列状に配置される電極を、基板20の裏面にマトリックス状(行列状)に離間して形成される裏面電極32として再配置させることができる。
【0031】
基材12の下面には、導電箔をエッチングして裏面電極32が設けられている。上記した配線14の構成により、裏面電極32同士が離間する距離は、配線14の第1接続部14A同士が離間する距離よりも長くなっている。
【0032】
貫通電極30は、所定箇所の基材12を厚み方向に貫通して設けた貫通孔に銅などの金属をメッキ法等により埋め込むことで形成される。図1(B)を参照すると、各配線14の第2接続部14Bの下方に、貫通電極30および裏面電極32が設けられている。ここで、接続電極34が形成される部分を除外して、裏面電極32および基材12の下面を被覆する被覆樹脂が設けられても良い。更にこの場合は、上面の配線14と同じように、被覆層18の開口部24の周辺部に位置する裏面電極32の表面の凹凸の幅を、被覆層18の開口部周辺部以外に位置する裏面電極32よりも大きくしても良い。
【0033】
基材12の上面は、接続部となる箇所を除外して配線14が覆われるように被覆層18により被覆されている。被覆層18はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはポリエチレン等の熱可塑性樹脂から成り、被覆層18が配線14の上面を被覆する厚みは、例えば20μmから100μm程度である。図1(B)を参照すると、各配線14の第1接続部14Aが露出されるように、被覆層18を部分的に除去して四角形状の開口部24が設けられている。また、被覆層18は、ソルダーレジストや、PSR(Photo solder resist)とも称されている。尚、この被覆層は、基板の裏面に設けても良い。
【0034】
半導体素子16(回路素子)は基板20の上面に固着されると共に、配線14と電気的に接続されている。具体的には、半導体素子16はフェイスアップにて基板20に実装されており、その下面は絶縁性の接着剤を介して被覆層18の上面に固着されている。尚、半導体素子の裏面がGNDに固定される場合は、ロウ材または導電性ペースト等の導電性材料を介してアイランドに固定される。また、半導体素子16の上面に形成された電極は、Au等からなる金属細線26を経由して配線14に接続されている。ここでは、フェイスアップにて実装される半導体素子16が例示されているが、半導体素子16はフェイスダウンで実装されても良い。この場合は、電極が下面になるように半導体素子16が載置され、この電極に接続するバンプ状の電極を経由して、基板20の上面に形成された配線14と半導体素子16が電気的に接続される。
【0035】
ここでは、回路装置10に内蔵される回路素子として半導体素子16が採用されているが、他の回路素子が採用されても良い。具体的には、IC、LSI、ディスクリート型のトランジスタ、ダイオード等の能動素子が回路素子として採用されても良い。更には、チップ抵抗、チップコンデンサ、センサ等の受動素子が回路素子として採用されても良い。更に、受動素子と能動素子とを複数個組み合わせて内部接続されたシステムが、回路装置10の内部に構築されても良い(SIP:System in Package)。この場合は、図1(A)を参照して、半導体素子16の隣にチップ抵抗等の受動素子が配置される。更に、半導体素子16およびその周辺部(一領域)に、上記した構成の配線14が形成される。
【0036】
尚、この基板は、回路素子をただ載せたモジュール、基板全体を封止した回路装置に適用可能である。更にこの基板や回路装置に載せられる回路素子として半導体チップや受動素子が考えられる。しかもこれらの回路素子は、3次元的または平面的に設けられる。つまり3次元としては、複数の半導体チップがスタックされても良い。更には複数の半導体素子が平面配置されも良い。どちらにしても複数の回路素子が設けられてシステムが構成されるものである。
【0037】
封止樹脂22は、トランスファーモールドにより形成される熱硬化性樹脂またはインジェクションモールドにより形成される熱可塑性樹脂から成る。また、封止樹脂22は、半導体素子16、金属細線26および基板20の上面が覆われるように形成されている。更に、封止樹脂22は、基材12の上面、被覆層18の上面、配線14およびメッキ膜28に接触している。
【0038】
図1(B)を参照して、回路装置10の構成を更に説明する。この図では、半導体素子16と配線14とを接続する金属細線26が省略されている。
【0039】
先ず、ここでは1つの半導体素子16が基板20の中央部付近に実装されている。そして、配線14の第1接続部14Aは、この半導体素子16を取り囲むように複数個が設けられている。第1接続部14Aは、半導体素子16の上面に設けられた電極に対応して設けられている。
【0040】
基板20の上面は、略全面が被覆層18により被覆されている。また、配線部14の第1接続部14Aが露出されるように、被覆層18を部分的に四角形状に除去して開口部24が設けられている。開口部24からは、配線14の第1接続部14A、第1接続部14Aを被覆するメッキ膜28、第1接続部14A付近の基材12の上面が露出している。
【0041】
配線14は、基材12の上面に複数個が設けられており、半導体素子16の下方(基板20の中心部付近)から基板20の周辺部に向かって放射状に延在している。第2接続部14Bは、第1接続部14Aよりも基板20の内側の位置に形成されており、下方には貫通電極30が接続している。多数の第2接続部14Bは、半導体素子16の下方に配置されるものと、半導体素子16の外側の領域に配置されるものとに分類することができる。ここで、全ての第2接続部14Bを半導体素子16の下方に配置しても良い。
【0042】
図2を参照して、配線14の表面の粗度について説明する。図2(A)は配線14の第1接続部14Aおよびその付近の断面図であり、図2(B)はその平面図である。ここで、図2(A)は、図2(B)に示す平面図の代表的な断面図である。
【0043】
本実施の形態では、被覆層18に形成された開口部24の周辺部に位置する配線14の表面の凹凸の幅を、被覆層18に形成された開口部24の周辺部以外に位置する配線14の表面よりも大きくしている。逆の表現をすると、配線14の表面は、開口部24の周辺部以外の方が周辺部よりも凹凸の幅が小さい。このことにより、配線14と、それを被覆する被覆層18との熱サイクル負荷時の信頼性が向上する。即ち、被覆層18の配線14からの剥離が防止される。なお、ここで、配線14の表面とは、配線14の上面および側面であり、これらの面が被覆層18により被覆されている。
【0044】
図2(A)を参照して、基材12の上面には配線14が形成されており、配線14を被覆するように被覆層18が形成されている。更に、被覆層18の上面には半導体素子16が固着されている。ここでは、配線14の第1接続部14Aと配線部14Cが示されており、配線部14Cが被覆層18により覆われており、第1接続部14Aは被覆層18により覆われずに露出している。そして、第1接続部14Aの上面および側面はメッキ膜28により被覆されている。このメッキ膜28としては、例えばニッケル(Ni)と金(Au)とを順次成膜されたものが使用される。不図示ではあるが、メッキ膜28の上面に金属細線の一端が接続され、金属細線の他端は半導体素子16の上面に設けられた電極に接続される。
【0045】
配線14は、表面の凹凸の幅が比較的に小さい第1粗化領域36と、この第1粗化領域36よりも表面の凹凸の幅が大きい第2領域38に分別することができる。第1粗化領域36および第2粗化領域38の表面凹凸の幅の調整は、これらの表面をエッチングする際に使用されるエッチャントを適切に選択することにより行うことができる。
【0046】
第1粗化領域36は、配線部14Cの途中から基板20の内側(紙面上では左側)の領域の配線14が該当し、配線部14Cの一部と第2接続部14B(図1参照)とを含む。この第1粗化領域36の表面では比較的細かな凹凸が形成され、表面の凸部の大きさは、例えば高さが1.2μmであり、凸部間の幅が1.7μm程度である。第1粗化領域36では、表面の鋭利な凹凸と被覆層18との間にアンカー効果が発生するので、配線14と被覆層18との密着強度が向上する。更に、鋭利な凹凸が第1粗化領域36の表面に形成されることで、この領域の配線14の表面積が増大されて、配線14と被覆層18とが密着する面積が増大する。このことによっても、第1粗化領域36にて、配線14と被覆層18との密着強度が向上されている。
【0047】
第2粗化領域38は、配線部14Cの途中から基板20の外側(紙面上では右側)の領域の配線14が該当し、配線部14Cの一部と第1接続部14Aとを含む。第2粗化領域38の表面は、上記した第1粗化領域36よりも表面の凹凸の幅は第1粗化領域36よりも小さくない形状と成っている。具体的には、第2粗化領域38の表面に形成される凸部の大きさは、例えば高さが0.8μmであり、幅が2.4μm程度である。従って、第1粗化領域36と比較すると、第2粗化領域38の表面の凸部は、幅が広い形状となっている。
【0048】
第2粗化領域38の表面を上記構成にすることで、第2粗化領域38に於ける配線14と被覆層18との剥離を防止することができる。具体的には、温度変化が生じた場合、樹脂から成る被覆層18と金属材料である配線14とでは熱膨張係数が異なるので、両者の境界面には熱ストレスが作用する。この熱ストレスは、配線14の上面と被覆層18との界面に沿って平行に作用する。更に、この熱ストレスは、基板20の中央部では比較的に小さく、被覆層18の開口部24(図1参照)の周辺部付近に於いては比較的に大きい。言い換えると、本実施の形態では、開口部24が基板20の周辺部に形成されているため、基板20の周辺部において熱ストレスが大きい。従って、熱ストレスに起因した両者の剥離が発生するときは、多くの場合に於いて被覆層18の開口部24近傍、すなわち基板20の周辺部にて発生する。
【0049】
本実施の形態では、基板20の周辺部に位置する配線14を上記のように第2粗化領域38としている。このことにより、第2粗化領域38では、配線14の表面の凹凸の幅が大きいので熱ストレスの集中しやすい鋭角な形状がない。即ち、熱ストレスの集中が抑制される。このことにより、基板20の周辺部における被覆層18の配線14からの剥離が防止される。
【0050】
一方、基板20の中心部に於いては、上記したように周辺部に対して熱応力が小さいため応力が集中しやすいが、アンカー効果の大きい凹凸の幅が小さい鋭角形状をとることで、配線14の第1粗化領域36と被覆層18との間に大きなアンカー効果を発生させ、被覆層18の配線14からの剥離が防止する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態では、基板20の中心部と周辺部とで配線14の表面凹凸の幅を異ならせることにより、大きな熱応力が配線14と被覆層18との境界面に作用しても、両者の剥離が防止されている。
【0052】
また以下の効果もある。軽薄短小の傾向から、基板に設けられる配線の幅、配線同士の間隔をより小さくして、パターンの実装密度を向上させる必要がある。つまり配線の幅がより細くなっていく。そのとき、配線全域の表面粗度が粗化領域の状態であると、被覆層またはその上の封止樹脂との熱膨張係数の不一致により、図18Bで示す応力が加わり、特に端子の付け根(首)の部分でボイドが発生し、電気抵抗の上昇の恐れがある。
【0053】
これは、この付け根の部分に応力が集中し、そこに配線内の欠陥が集中するからである。しかし図2を見ると判るように、第2粗化領域38が設けられ、応力が集中しない形状とすることでボイドの発生を抑制し、その分、信頼性を向上させることができる。
【0054】
図3を参照して、配線14の各領域を撮影した画像を説明する。図3(A)は第1粗化領域36における配線14の表面の画像であり、図3(B)は第2粗化領域38における配線14の表面の画像であり、図3(C)は配線14の第1粗化領域36および第2粗化領域38の両方を撮影した画像である。
【0055】
図3(A)および図3(B)を参照して、配線14の第1粗化領域36と第2粗化領域38とを比較すると、第1粗化領域36の表面の方が第2粗化領域38の表面よりも、凹凸の度合いが大きいことが理解できる。即ち、第1粗化領域36に形成される凸部は、第2粗化領域38に形成される凸部よりも、高さが高く幅が狭い。この様に、第1粗化領域36と第2粗化領域38の表面の凹凸の度合いを異ならせることにより、上記した効果を得ることができる。この様な構成は、第1粗化領域36と第2粗化領域38とで、性質の異なるエッチャントでエッチングすることにより得ることができる。この事項の詳細は後述する。
【0056】
図3(C)を参照して、この画像に示される配線の左側は第1粗化領域36であり、右側は第2粗化領域38である。この画像から、境界線が明確に出現するほどに、第1粗化領域36と第2粗化領域38との粗度は異なることが読み取れる。
【0057】
更に、図2(B)を参照して、被覆層18を除去して設けた開口部24からは、メッキ膜28と共に配線14の第2粗化領域38(導電材料)も露出している。そして、開口部24から露出するメッキ膜28および第2粗化領域38は、封止樹脂22(図1(A)参照)により被覆されている。換言すると、被覆層18は配線14のみを被覆しており、メッキ膜28は被覆層18により覆われていない。このことにより、封止樹脂22と配線14との密着性を向上させることができる。具体的には、最表面が金から成るメッキ膜28の表面は非常に滑らかである。一方、開口部24からは配線14の第2粗化領域38が露出するが、この第2粗化領域38は、メッキ膜28の表面よりは粗い面となっている。
【0058】
図4(A)はメッキ膜28の表面を撮影した画像であり、図4(B)は配線14の代表的な表面を撮影した画像である。これらの図から、メッキ膜28の表面よりも配線14の表面の方が粗いことが読み取れる。従って、上記構成により、封止樹脂22と他の部材(ここでは配線14)との密着強度が向上される。
【0059】
図5を参照して、配線14と被覆層18との他の関連構成を説明する。図5(A)は配線14の第1接続部14Aおよびその付近の断面図であり、図5(B)はその平面図である。
【0060】
図5(A)および図5(B)に示された構成は、図2を参照して述べたものと基本的には同一であり、相違点は、配線14の表面およびメッキ膜28の表面の一部が被覆層18により被覆される点にある。
【0061】
即ち、図5(A)を参照して、被覆層18は、不図示の第2接続部14B、配線部14Cおよび第1接続部14Aの一部を被覆すると共に、メッキ膜28の一部を被覆している。換言すると、メッキ膜28により被覆されていない配線14の全ての表面が被覆層18により覆われている。
【0062】
図5(B)を参照すると、被覆層18を除去して設けた開口部24から露出するのは、第1接続部14Aを被覆するメッキ膜28であり、配線14自体は外部に露出しない。
【0063】
この様な構成にすることで、配線14が外部に露出しないので、配線14の表面の酸化が抑制される。更に、第2粗化領域38は、他の領域と比較と極めて細く形成されるが、この部分も被覆層18により覆われるので、細い第2粗化領域38の断線を防止することもできる。具体的には、第2粗化領域38の幅は例えば35μm程度であり、他の領域(第1粗化領域36)の配線14の幅は45μm程度である。第2粗化領域38の幅が細くなる理由は、後の製造方法の説明により明らかになるが、この部分が複数回エッチングされるからである。
【0064】
更に、図5(A)を参照して、被覆層18でメッキ膜28も含めて配線14を覆うことにより、装置全体の耐湿性を向上させることができる。具体的には、被覆層18により、配線14およびメッキ膜28の表面に加えて、両者の境界の段差部分も被覆されている。従って、このことにより、被覆層18と配線14との異種材料間の経路が長くなり、この分だけ耐湿性が向上される。
【0065】
更に、図5(A)を参照して、メッキ膜28の終端部分の配線14には、内側に窪む凹部40が設けられている。具体的には、メッキ膜28を配線14の第1接続部14Aに被着させた後に、配線14は全面的に薄くウェットエッチングされる。ウェットエッチングは、等方性にて進行するので、メッキ膜28の終端部では、エッチングがメッキ膜28側(紙面上では右側)に進行して凹部40が形成される。そして、メッキ膜28の端部がひさし状に突出する形となる。この凹部40には、被覆層18を構成する樹脂材料が充填される。凹部40は、配線14の上面および側面のメッキ膜28の終端部に沿って設けられる。この構成により、配線14の表面と被覆層18との境界の経路が更に長くなるので、耐湿性が更に向上される。
【0066】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、図6から図15を参照して、上記構成の回路装置10の製造方法を説明する。これらの各図に於いて、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【0067】
図6を参照して、先ず、基材12の主面に配線等が形成された基板20を用意する。図6(A)は本工程に於ける基板20を示す断面図であり、図6(B)は基板20を上方から見た平面図である。
【0068】
図6(A)を参照して、基材12の上面には所定形状の配線14が形成され、基材12の裏面には裏面電極32が形成され、両者を接続する貫通電極30が基材12を貫通して形成されている。
【0069】
基材12の材料等は上述した第1の実施の形態と同様であり、樹脂材料、無機材料または金属材料から成る。基材12は、上面に配線14が形成されて下面に裏面電極32が形成されると共に、製造工程に於いて半導体素子16を機械的に支持する機能も有する。
【0070】
配線14は、銅やアルミニウム等の金属から成り、基材12の上面に貼着された厚みが20μm〜50μm程度の導電箔を選択的にエッチングすることにより形成される。ここでは、配線14は、第1接続部14Aと、第2接続部14Bと、両接続部の間に細長く設けられた配線部14Cとを含む。図6(B)を参照して、配線14は、基材12の上面に複数個が設けられており、基板20の中心部付近から周辺部に向かって放射状に延在している。平面的には、第1接続部14Aは、基板20の側辺に沿って平行に複数個が配置されている。また、第2接続部14Bは、第1接続部14Aよりも基板20の内側の位置に形成されており、下方には貫通電極30が接続している。
【0071】
裏面電極32は、配線14と同様に、基材12の裏面に貼着された導電箔をエッチングすることで所定形状に形成されている。図6(B)を参照すると、裏面電極32は、基板20の裏面にグリッド状に略等間隔に離間して配置されている。
【0072】
貫通電極30は、所定箇所の基材12を厚み方向に貫通して設けた貫通孔に、銅などの金属をメッキ法等により埋め込むことで形成される。
【0073】
図7を参照して、次に、基材12の上面および配線14の表面に、無電解メッキ膜42を被着させる。
【0074】
図7(A)および図7(B)を参照して、本工程では、基材12の上面、配線14の表面(上面および両側面)に、例えば厚みが1μm程度のメッキ膜42を無電解メッキ法により付着させる。導電材料である配線14の表面にも無電解メッキ膜42が付着され、絶縁材料である基材12の上面にも無電解メッキ膜42が付着される。無電解メッキ膜42の材料としては、配線14と同じ材料(例えば銅)でも良いし、他の金属材料でも良い。
【0075】
本工程にて形成された無電解メッキ膜42により、基板20の上面に形成された全ての配線14が短絡された状態となる。無電解メッキ膜42は、後の工程にて電解メッキ膜を形成する際の給電用のメッキ線の如き作用を有する。
【0076】
図8は、本工程により形成される電解メッキ膜42を撮影した画像である。この図を参照すると、メッキ膜42の表面は、第1粗化領域36の表面(図3(A)参照)や第2粗化領域38の表面(図3(B)参照)よりも凹凸が細かいことが読み取られる。第2粗化領域38では、図8に示す無電解メッキ膜42の表面をエッチングし表面が平滑となった後に再度粗化処理を行なうことにより得られるので、第2粗化領域38の表面は無電解メッキ膜42よりも凹凸の幅が大きくなる。
【0077】
図9を参照して、次に、無電解メッキ膜42が形成された基板20の上面を、エッチングレジスト46により被覆する。 本工程では、先ず、樹脂材料から成るエッチングレジスト46を基材12の上面に薄く形成する。この様にすることで、基材12および配線14を被覆する無電解メッキ膜42の表面がエッチングレジスト46により全面的に被覆される。
【0078】
更に、感光性のエッチングレジスト46に選択的に光線を上方から照射させた後に、強アルカリの溶液をエッチングレジスト46に接触させる。このことにより、感光されなかったエッチングレジスト46が部分的に除去されて開口部44が形成される。
【0079】
図9(B)を参照して、上記方法により形成された開口部44から、配線14の第1接続部14Aとその周辺の基材12の上面が露出されている。ここでは、開口部44から露出される部位は無電解メッキ膜42により全面的に被覆されている。
【0080】
図10を参照して、次に、エッチングレジスト46の開口部44からエッチングを行い、開口部44から露出する無電解メッキ膜42を除去する。
【0081】
本工程では、エッチングレジスト46を除去して設けた開口部44からウェットエッチングを行う。このことにより、開口部44から露出する無電解メッキ膜42がエッチングされる。本工程では、開口部44の内部に於いて、基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜42が除去されるまでエッチングを行う。
【0082】
図10(B)を参照して、エッチングレジスト46の開口部44の内部では、基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜42が除去されている。一方、開口部44に露出する配線14の第1接続部14Aも、本工程により表面がエッチングされる。
【0083】
本工程のエッチングの目的は、電解メッキ処理を行う次工程にて、第1接続部14Aの表面のみにメッキ膜を付着させて、基材12の上面にはメッキ膜を付着させないためである。基材12の上面に次工程にて例えば金メッキ膜を付着させてしまうと、金メッキ膜が付着した部分の無電解メッキ膜42が除去されずに残存してしまう虞がある。製品としては不必要な無電解メッキ膜42が残存してしまうと、無電解メッキ膜42を介して配線14同士がショートしてしまう危険性がある。本実施の形態では、この様な危険性を排除するために、開口部44を介したエッチングを行うことで、第1接続部14A付近の基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜42を除去している。
【0084】
また、本工程では、配線14の材料が銅の場合は、配線銅(配線14の材料:例えば圧延銅箔や電解銅)と無解銅(無電解メッキ膜42)とのエッチングレートが大きいエッチャントが使用されてエッチングが行われる。即ち、配線14よりも無電解メッキ膜42の方をエッチングしやすいエッチャントが選択されて本工程は行われる。
【0085】
更に本工程では、上記したように、開口部44から露出する配線14の第1接続部14Aの表面(第1接続部14Aの表面を被覆する無電解メッキ膜42)がエッチングされる。換言すると、基板20(一領域)の周辺部に位置する配線14の表面をウェットエッチングしている。従って、本工程により、周辺部に位置する配線14の表面はエッチングされて、その表面が平坦化される。そして、本工程にてエッチングの影響を受ける配線14が、図2に示す第2粗化領域38となる。
【0086】
更に本工程では、平坦化に適したエッチャントが使用されてエッチングが行われる。具体的には、配線14の表面には、配線14を構成する結晶の表面と、この結晶同士の境界(粒界)が露出する。本工程では、結晶の表面と粒界とを一様(均一)に除去するエッチャントが使用される。このことにより、本工程でエッチング処理される配線14の第1接続部14Aの表面はより平滑となる。
【0087】
本工程が終了した後は、エッチングレジスト46は基板20から剥離されて除去される。
【0088】
図11を参照して、次に、次工程で電解メッキ処理を行うためのメッキレジスト48を形成する。
【0089】
図11(A)を参照して、基板20の上面に全面的にメッキレジスト48を形成した後に、露光現像処理を行って、メッキレジスト48を部分的に除去する。このことにより、メッキ膜が形成される予定の第1接続部14Aの上面および側面が、開口部50から外部に露出する。
【0090】
図11(B)を参照して、各々の配線14の第1接続部14Aが露出されるようにメッキレジスト48に開口部50が設けられている。ここで、メッキレジスト48に形成される開口部50は、先回の工程にてエッチングレジスト46に設けた開口部44よりも小さい。即ち、先回の工程にてエッチングにより平坦化された部分の配線14が、部分的にメッキレジスト48の開口部50から露出している。開口部50から露出する部分の配線14にメッキ膜が付着される。一方、先工程のエッチングにより平坦化されて且つ開口部50から露出しない部分の配線14が存在する。この部分は、図2(A)を参照して、メッキ膜28により覆われない第2粗化領域38となる。図12(A)を参照すると、上面が無電解メッキ膜42により覆われず、更に、開口部50に露出しない部分の配線14が、この部分(第2粗化領域38)に該当する。
【0091】
図12を参照して、次に、メッキレジスト48の開口部50から露出する配線14の表面に、電解メッキ法によりメッキ膜28を付着させる。
【0092】
図12(A)を参照して、本工程では、メッキレジスト48に設けた開口部50から露出する配線14(第1接続部)にメッキ液を接触させて、無電解メッキ膜42に電圧を印加することで、配線14の表面に電解メッキ膜を形成している。ここでは、露出する配線14の表面にニッケルから成る電解メッキ膜を被着させた後に、このニッケルから成る電解メッキ膜の上面に、金から成る電解メッキ膜を被着させている。
【0093】
本工程では、開口部50内部の基材12の上面を除外して、基材12の上面および配線14を全面的に被覆する無電解メッキ膜42を電極として用いて、電解メッキ処理が行われている。従って、従来では配線14同士の間に電解メッキの為のメッキ線が形成されていたが、このメッキ線を不要にすることができるので、配線14同士を接近させることができる。
【0094】
図12(B)を参照して、各開口部50の内部では、配線14の表面を覆うメッキ膜28が形成されている。なお、開口部50の内部に露出する基材12に関しては、先工程にて基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜42が除去されているので、この部分にはメッキ膜28は被着されない。
【0095】
本工程が終了した後に、メッキレジスト48は、基板20の上面から剥離されて除去される。図13を参照して、メッキレジストを除去した後の基板20の状態を示す。特に図13(B)を参照して、開口部50の内部を除いた基板20の上面は、メッキ線として機能した無電解メッキ膜42により被覆されている。
【0096】
図14を参照して、次に、電解メッキ処理の為に使用された無電解メッキ膜を全面的に除去する。
【0097】
本工程では、エッチングレジストは基本的には使用せずに、基板20の上面全域にエッチャントを接触させて、エッチングを行っている。そして、基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜が除去されるまでエッチングを連続して行っている。本工程により、基材12の上面を被覆する無電解メッキ膜がエッチングされると共に、配線14の全領域の表面がエッチングされる。
【0098】
上記工程により、メッキ線として機能した無電解メッキ膜を除去することで、各配線14は電気的に独立する。
【0099】
本工程で使用するエッチャントは、先工程のエッチングにて使用されたエッチャントよりも選択性の強いものである。具体的には、本工程で使用されるエッチャントは、結晶の表面よりも粒界の方を優先的に除去するものである。ここで、配線14及び、配線14上の無電解メッキ膜42の表面には、配線14及び無電解メッキを構成する結晶の表面と、この結晶同士の境界(粒界)が露出する。そのため、配線14を構成する結晶粒と比較して、無電解メッキ膜42の結晶粒は細かい。
【0100】
そのため、先回のエッチングの工程で平滑に無電解メッキ膜42の除去が行われた第1接続部14A付近(周辺部)の配線14の表面では、無電解メッキ膜42と比較して大きな結晶粒が露出しており、本工程を経ても比較的凹凸の幅が大きな形状となっている。即ち、この部分は、複数回のエッチングが行われており、図2(A)に示す第2粗化領域38と成っている。
【0101】
一方、図2(A)を参照して、本工程のエッチングのみが行われる配線14は、本工程のエッチング処理時に、表面に比較的結晶粒径の小さな無電解メッキ膜42が存在しているため、表面の凹凸の幅が小さい第1粗化領域36となっている。
【0102】
図15を参照して、次に、基板20の上面を被覆層18により被覆する。図15(A)は本工程における基板20の断面図であり、図15(B)は基板20を上方から見た平面図である。
【0103】
図15(A)および図15(B)を参照して、先ず、基材12の上面および配線14が全面的に覆われるように樹脂から成る被覆層18を形成する。次に、各配線14の第1接続部14Aが露出するように、被覆層18を除去して開口部24を形成する。開口部24から第1接続部14Aおよびメッキ膜28が露出する。
【0104】
ここでは、メッキ膜28だけではなく配線14を構成する金属材料が、開口部24から外部に露出している。しかしながら、図5(A)および、図5(B)に示されているように開口部24の幅を狭めて、開口部24からメッキ膜28のみが外部に露出するようにしても良い。この場合は、配線14を構成する金属材料は全面的に被覆層18により覆われることになる。
【0105】
以上の工程により、基板20が製造される。また、図1に示されている回路装置10を製造するには次の工程が必要になる。即ち、絶縁性の接着剤を介して半導体素子16を基板20に固着する工程、金属細線26を介して半導体素子16の電極と配線14とを電気的に接続する工程、半導体素子16および金属細線26が封止されるように基板20の上面に封止樹脂22を形成する工程、裏面電極32に半田から成る接続電極34を溶着させる工程、等が必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図2】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】(A)−(C)は、本発明の回路装置に含まれる配線を撮影した画像である
【図4】(A)および(B)は、本発明の回路装置に含まれる配線を撮影した画像である
【図5】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図6】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図7】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図8】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、電解メッキ膜の表面を撮影した画像である。
【図9】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図10】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図11】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図12】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図13】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図14】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図15】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図16】背景技術の回路装置を示す断面図である。
【図17】背景技術の回路装置を示す断面図である。
【図18】(A)および(B)は、背景技術の回路装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0107】
10 回路装置
12 基材
14 配線
14A 第1接続部
14B 第2接続部
14C 配線部
16 半導体素子
18 被覆層
20 基板
22 封止樹脂
24 開口部
26 金属細線
28 メッキ膜
30 貫通電極
32 裏面電極
34 接続電極
36 第1粗化領域
38 第2粗化領域
40 凹部
42 無電解メッキ膜
44 開口部
46 エッチングレジスト
48 メッキレジスト
50 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一主面に形成されると共に接続部を有する配線と、
前記接続部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、
前記配線の前記接続部は、前記基材の上面に規定された一領域を囲むように配置され、
前記一領域の周辺部に位置する前記配線の表面の凹凸の幅を、前記一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくすることを特徴とする基板。
【請求項2】
基板と、前記基板に実装された回路素子とを有する回路装置であり、
前記基板は、
基材と、
前記基材の一主面に形成されると共に、前記回路素子と電気的に接続される接続部を有する配線と、
前記接続部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、
前記配線の前記接続部は、前記基材の前記一主面の一領域を囲むように配置され、
前記一領域の周辺部に位置する前記配線の表面の凹凸の幅を、前記一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくすることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
基板と、前記基板に実装された回路素子とを有する回路装置であり、
前記回路素子は一主面に複数の電極を有する半導体素子であり、
前記基板は、
基材と、
前記基材の一主面に形成されると共に、前記半導体素子と電気的に接続される接続部を有する配線と、
前記接続部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、
前記配線の前記接続部は、前記基材の周辺部に設けられ、
前記基材の周辺部に位置する前記配線の表面の凹凸の幅を、前記基材の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくすることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
前記被覆層には、前記配線の前記接続部が露出される開口部が設けられることを特徴とする請求項2または請求項3記載の回路装置。
【請求項5】
前記開口部から露出する前記接続部は、メッキ膜により被覆されることを特徴とする請求項4記載の回路装置。
【請求項6】
前記メッキ膜の終端部が前記被覆層により被覆されることを特徴とする請求項5記載の回路装置。
【請求項7】
前記開口部から前記メッキ膜と共に前記配線を構成する導電材料の一部を露出させ、
前記回路素子を封止する封止樹脂を、前記開口部から露出する前記メッキ膜の表面および前記配線を構成する導電材料に密着させることを特徴とする請求項5記載の回路装置。
【請求項8】
基材の一主面に被覆層により被覆された配線を形成する基板の製造方法であり、
前記基材の一領域の周辺部に位置する前記配線の凹凸の幅を、前記基材の一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくする第1工程と、
前記配線の表面および前記基材の一主面が被覆されるように前記被覆層を形成する第2工程と、を具備することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程は、前記基材の周辺部に位置する前記配線の表面をエッチングする第1エッチングと、前記基材の中心部に位置する前記配線の表面をエッチングする第2エッチングとを含み、
前記第1エッチングでは第1エッチャントが使用され、前記第2エッチングでは前記第1エッチャントは性質が異なる第2エッチャントが使用され、
前記第1エッチャントは、第2エッチャントよりも、前記配線の表面を均一にエッチングさせる性質を有していることを特徴とする請求項8記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記第2エッチングでは、前記配線の表面を粗化することを特徴とする請求項9記載の基板の製造方法。
【請求項11】
基材の一主面に被覆層により被覆された配線を形成する基板の製造方法であり、
前記基材の前記一主面に、一領域を囲むように接続部を有する配線を形成する第1工程と、
前記基材の前記一主面および前記配線の表面に無電解メッキ膜を付着させる第2工程と、
前記配線の接続部およびその周辺部の前記基材の前記一主面を第1開口部として開口させて、前記基材の前記一主面および前記配線をエッチングレジストにより被覆する第3工程と、
前記第1開口部から露出する領域の前記無電解メッキ膜をエッチングにより除去する第4工程と、
前記接続部が設けられた領域を第2開口部として開口させて、前記配線を被覆するメッキレジストを前記基材の一主面に形成する第5工程と、
前記無電解メッキ膜を電極として使用する電解メッキ法により前記第2開口部から露出する前記配線の前記接続部に電解メッキ膜を被着させる第6工程と、
前記基材の前記第1主面を被覆する前記無電解メッキ膜を除去して、前記配線同士を電気的に独立させる第7工程と、
前記電解メッキ膜が被着された前記接続部を第3開口部として露出させて、前記配線が被覆されるように前記基材の前記第1主面に被覆層を形成する第8工程と、を具備することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項12】
前記第4工程では第1エッチャントが使用され、前記第7工程では前記第1エッチャントとは性質が異なる第2エッチャントが使用され、
前記第1エッチャントは、第2エッチャントよりも、前記配線の表面を均一にエッチングさせる性質を有していることを特徴とする請求項11記載の基板の製造方法。
【請求項13】
前記第7工程では、前記基材の前記一主面を被覆する前記無電解メッキ膜および前記配線の表面のエッチングを行い、
前記基材の前記一主面を被覆する前記無電解メッキ膜が除去されるまで前記エッチングを継続させることを特徴とする請求項11記載の基板の製造方法。
【請求項14】
基材の一主面に被覆層により被覆された配線を有する基板を形成する工程と、前記配線と電気的に接続される回路素子を前記基板に実装する工程と、を具備する回路装置の製造方法であり、
前記基板を形成する工程は、
前記基材の一領域の周辺部に位置する前記配線の凹凸の幅を、前記基材の一領域の中心部に位置する前記配線の凹凸の幅よりも大きくする第1工程と、
前記配線の表面および前記基材の一主面が被覆されるように被覆層を形成する第2工程と、を具備することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項15】
基材の一主面に被覆層により被覆された配線を有する基板を形成する工程と、前記配線と電気的に接続される回路素子を前記基板に実装する工程と、を具備する回路装置の製造方法であり、
前記基板を形成する工程は、
前記基材の前記一主面に、一領域を囲むように接続部を有する配線を形成する第1工程と、
前記基材の前記一主面および前記配線の表面に無電解メッキ膜を付着させる第2工程と、
前記配線の接続部およびその周辺部の前記基材の前記一主面を第1開口部として開口させて、前記基材の前記一主面および前記配線をエッチングレジストにより被覆する第3工程と、
前記第1開口部から露出する領域の前記無電解メッキ膜をエッチングにより除去する第4工程と、
前記接続部が設けられた領域を第2開口部として開口させて、前記配線を被覆するメッキレジストを前記基材の一主面に形成する第5工程と、
前記無電解メッキ膜を電極として使用する電解メッキ法により前記第2開口部から露出する前記配線の前記接続部に電解メッキ膜を被着させる第6工程と、
前記基材の前記第1主面を被覆する前記無電解メッキ膜を除去して、前記配線同士を電気的に独立させる第7工程と、
前記電解メッキ膜が被着された前記接続部を第3開口部として露出させて、前記配線が被覆されるように前記基材の前記第1主面に被覆層を形成する第8工程と、を具備することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項16】
絶縁層から成る支持基材と、
前記支持基材の少なくとも一方の面に設けられ、前記支持基材の他方の面の外部接続用の電極と電気的に接続される第1の端子と、
前記支持基材の一方の面に設けられ、前記第1の端子と一体で延在される配線と、
前記支持基材の一方の面に設けられ、前記配線と一体で設けられる第2の端子とを有する基板であり、
前記第2の端子表面および前記第2の端子の近傍に位置する近接配線の表面は、前記近接配線表面よりもその粗度よりも小さく形成され、
前記第2の端子および前記第2の端子側の近接配線の一部が露出するように、前記基板の上に樹脂から成る被覆層が設けられ、
前記粗度の小さい近接配線の上の被覆層を他の領域よりもアンカー効果が小さくなるようにしたことを特徴とする基板。
【請求項17】
絶縁層から成る支持基材と、
前記支持基材の少なくとも一方の面に設けられ、前記支持基材の他方の面の外部接続用の電極と電気的に接続される第1の端子と、
前記支持基材の一方の面に設けられ、前記第1の端子と一体で延在される配線と、
前記支持基材の一方の面に設けられ、前記配線と一体で設けられる第2の端子とを有する基板と、
前記支持基材に設けられ、前記第2の端子と電気的に接続された少なくとも一つの半導体素子とを有する回路装置であり、
前記第2の端子表面および前記第2の端子の近傍に位置する近接配線の表面は、前記近接配線表面よりもその粗度よりも小さく形成され、
前記第2の端子および前記第2の端子側の近接配線の一部が露出するように、前記基板の上に樹脂から成る被覆層が設けられ、
前記粗度の小さい近接配線の上の被覆層を他の領域よりもアンカー効果が小さくなるようにしたことを特徴とする回路装置。
【請求項18】
前記第2の端子は、Cuからなり、その上にはNiまたはAuが被覆されている請求項16に記載の基板。
【請求項19】
前記第2の端子は、Cuからなり、その上にはNiまたはAuが被覆されている請求項17に記載の回路装置。
【請求項20】
基材と、
前記基材の一主面に形成されると共に外部端子部を有する配線と、
前記外部端子部を除外して前記配線を被覆する被覆層と、を具備し、
前記被覆層には、前記配線の前記外部端子部が露出される開口部を有し、
前記開口部の周辺部近傍に位置する前記被覆層に被覆された前記配線の表面の凹凸の幅を、前記開口部周辺部以外の前記被覆層に被覆された前記配線の粗度よりも大きくすることを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−252016(P2008−252016A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94574(P2007−94574)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】