説明

基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置

【課題】一度に複数の基板を一つのロボットアームで搬送する場合であっても、各基板の温度履歴を同じにすることが可能で、基板同士の間で温度ムラが発生することを防止でき、複数の基板を均一に仕上げることができると共に、搬送を迅速に行うことが可能な基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置を提供する。
【解決手段】加熱ステージ10には、2枚のガラス基板1a,1bを、ロボットアーム3の移動方向に沿って直列に並べて配置し、加熱ステージには、ガラス基板を、同じ高さに持ち上げるために上昇されかつ下降されてロボットアームに受け渡す昇降手段を設けると共に、ロボットアームの温度上昇過程でガラス基板を同じ温度にてロボットアームに受け渡しするために、ガラス基板のロボットアームへの受け渡しを、当該ロボットアームのフォーク16の先端16a側で先に行いかつ基端16b側で後に行うための、昇降手段制御装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一度に複数の基板を一つのロボットアームで搬送する場合であっても、各基板の温度履歴を同じにすることが可能で、基板同士の間で温度ムラが発生することを防止でき、複数の基板を均一に仕上げることができると共に、搬送を迅速に行うことが可能な基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種基板を搬送しつつ、乾燥処理したり熱処理する処理設備では、処理にムラが生じることを防止するために、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1の「レジスト液塗布処理装置」は、基板裏面と他の部材との接触によって生じる接触転写ムラ、乾燥ムラをなくすことができるレジスト液塗布処理装置を提供することを課題とし、レジスト液が表面に塗布された基板を減圧乾燥する減圧乾燥機と、前記減圧乾燥された基板を加熱して前記レジスト液を固化させるベーキング装置と、減圧乾燥機と前記ベーキング装置の間で基板を搬送する搬送ロボットを備えるレジスト液塗布処理装置である。前記搬送ロボットは、前記基板を下側から載置した状態に支持する搬送ハンドが、ハンド本体と、前記基板と前記ハンド本体との間を断熱する断熱部と、前記断熱部よりも熱伝導率が高い材料で構成され基板を支持する突起を有するハンド表面部とが、積層状態に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−166623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板には、プラズマディスプレイパネルに用いられる大型で厚みのあるものから、携帯端末(例えば、スマートフォンなど)のタッチパネル等に用いられる小型極薄のものがある。
【0005】
大量生産する場合、プラズマディスプレイパネル用のガラス基板では、約2m×2mのような大きなサイズのものに加工処理を施してから、必要な小さなサイズに切り取る手法が採用されている。これに対し、タッチパネル用のガラス基板は、携帯性に優れるように軽さが追求され、その厚さは、プラズマディスプレイパネル用が約2mmであるのに対し、約0.2mmという薄さであり、このため、強度が弱く、プラズマディスプレイパネル用のガラス基板とは異なり、大きなサイズで取り扱うことが難しい。
【0006】
従って、携帯端末用のガラス基板を効率よく大量生産するには、薄型のガラス基板を複数、同時に搬送し処理することが求められる。大量生産における設備の自動化を考慮すれば、搬送作業は、プラズマディスプレイパネル用のガラス基板を取り扱う場合と同様に、ロボットアームを利用することが好ましい。
【0007】
一度に複数のガラス基板を一つのロボットアームで搬送する場合、ガラス基板に施した各種処理にムラが生じるおそれがあるという課題があった。
【0008】
具体的には、高温雰囲気の加熱ステージで加熱処理した後の複数のガラス基板を一つのロボットアームで取り扱う場合、ロボットアームは通常、常温状態であって、ガラス基板を受け取るために高温雰囲気の加熱ステージへ進入する段階で加熱される。加熱ステージへ先行して進入するロボットアームの先端側は早いタイミングで暖められて昇温し始め、その後、後から後行して進入する基端側が遅いタイミングで暖められて昇温し始める。
【0009】
ロボットアームの先端側と基端側とで異なる温度であるにも拘わらず、ロボットアームが複数のガラス基板を同時に受け取ってしまうと、先端側のガラス基板は温度の高いロボットアーム部分に、基端側のガラス基板は温度の低いロボットアーム部分に受け渡されることとなり、これら先端側と基端側のガラス基板で温度履歴に差が生じてしまい、不均一な仕上がりになってしまうという課題があった。
【0010】
また、その場合、ロボットアーム全体の温度が一定温度に収斂するのを待ってからガラス基板を受け渡すのでは、搬送に時間がかかってしまうという課題があった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、一度に複数の基板を一つのロボットアームで搬送する場合であっても、各基板の温度履歴を同じにすることが可能で、基板同士の間で温度ムラが発生することを防止でき、複数の基板を均一に仕上げることができると共に、搬送を迅速に行うことが可能な基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる基板の搬送装置は、製造ラインに備えられる加熱ステージで、上昇された基板の下に進入し、該基板が下降されることでこれを受け取り、その後、後退して当該基板を次のステージへ搬送する水平方向に移動可能なロボットアームを有し、該ロボットアームが、その先端側と基端側との間で、該加熱ステージへ先行して進入する先端側よりも後行して進入する基端側が遅いタイミングで昇温する習性のある基板の搬送装置であって、上記加熱ステージには、複数の上記基板を、上記ロボットアームの移動方向に沿って直列に並べて配置し、上記加熱ステージには、これら基板を、同じ高さに持ち上げるために上昇されかつ下降されて上記ロボットアームに受け渡す昇降手段を設けると共に、上記ロボットアームの温度上昇過程で複数の上記基板を同じ温度にて該ロボットアームに受け渡しするために、これら基板の該ロボットアームへの受け渡しを、当該ロボットアームの先端側で先に行いかつ基端側で後に行うための、タイミング調整手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記昇降手段は、これら基板それぞれを、個別に同じ高さに持ち上げるために上昇されかつ個別に下降されて前記ロボットアームに受け渡すように複数設けられ、
前記タイミング調整手段は、前記ロボットアームの先端側に位置する前記昇降手段よりも、前記ロボットアームの基端側に位置する前記昇降手段を遅く下降させる昇降手段制御装置であることを特徴とする。
【0014】
前記タイミング調整手段は、前記ロボットアームの先端側上面よりも、該ロボットアームの基端側上面を前記基板から離隔させるために、該ロボットアームに、基端側上面から先端側上面へ向かって漸次高くなるように傾斜させて設けられた傾斜面であることを特徴とする。
【0015】
前記ロボットアームは、すべての前記基板を搭載したときの重量で前記傾斜面がおおよそ水平となるように撓む習性を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る基板の加工装置は、上記基板の搬送装置を備え、上記基板を2枚一組で取り扱って搬送する第1ハンドリングロボットと、該第1ハンドリングロボットにより搬送される上記基板を2枚一組で塗工処理する塗装ステージと、上記第1ハンドリングロボットにより上記塗装ステージから搬送される2枚一組の上記基板に対し真空乾燥処理する真空乾燥ステージと、該真空乾燥ステージで真空乾燥処理された後の上記基板を2枚一組で取り扱って搬送する第2ハンドリングロボットと、該第2ハンドリングロボットにより上記真空乾燥ステージから搬送される2枚一組の基板に対し、焼成のための加熱処理を施す加熱ステージと、上記第2ハンドリングロボットにより上記加熱ステージから搬送される2枚一組の上記基板に対し冷却処理を施す冷却ステージとから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置にあっては、一度に複数の基板を一つのロボットアームで搬送する場合であっても、各基板の温度履歴を同じにすることができ、基板同士の間で温度ムラが発生することを防止できて、複数の基板を均一に仕上げることができると共に、搬送を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る基板の搬送装置を備えて、薄型のガラス基板を加工する基板の加工装置の製造ラインの構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る基板の搬送装置に備えられるロボットアームに受け渡される複数の基板の配列を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る基板の搬送装置の第1実施形態であって、ロボットアームが複数の基板を受け取る手順を説明する説明図である。
【図4】本発明に係る基板の搬送装置の第2実施形態であって、ロボットアームが複数の基板を受け取る手順を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る基板の搬送装置を備えて、薄型のガラス基板を加工する基板の加工装置の他の製造ラインの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図3には、第1実施形態にかかる基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置が示されている。
【0020】
図1は、第1実施形態にかかる基板の搬送装置を備えて、薄型のガラス基板1を加工する基板の加工装置の製造ライン2の構成を示す概略図、図2は、第1実施形態にかかるガラス基板の搬送装置に備えられるロボットアーム3に受け渡される2枚のガラス基板1a,1bの配列を説明する説明図、図3は、第1実施形態にかかるガラス基板の搬送装置に備えられるロボットアーム3が2枚のガラス基板1a,1bを受け取る手順を説明する説明図である。
【0021】
図1の基板の加工装置の製造ライン2は、タッチパネル式携帯端末用のガラス基板1を一枚ずつ搬入する搬入コンベア4と、搬入コンベア4に面して設けられ、搬入コンベア4で搬入されるガラス基板1を2枚(1a,1b)で一組とするカップリングステージ5と、カップリングステージ5に面して設けられ、ガラス基板1を2枚一組で取り扱う第1ハンドリングロボット6と、第1ハンドリングロボット6の左側に設けられ、ガラス基板1を2枚一組で塗工処理する塗装ステージ7と、第1ハンドリングロボット6の右側に設けられ、塗装ステージ7で塗工処理された2枚一組のガラス基板1に対し真空乾燥処理する真空乾燥ステージ8と、真空乾燥ステージ8に面して設けられ、第1ハンドリングロボット6と同様に、ガラス基板1を2枚一組で取り扱う第2ハンドリングロボット9と、第2ハンドリングロボット9を挟んで真空乾燥ステージ8の反対側に設けられ、真空乾燥ステージ8で乾燥処理された2枚一組のガラス基板1に対し、焼成のための加熱処理を施す加熱ステージ10と、第2ハンドリングロボット9に面して設けられ、2枚一組のガラス基板1に対し冷却処理を施すと同時に、2枚一組のガラス基板1の取り扱いを一枚一枚に分けるための冷却・分離ステージ11と、冷却・分離ステージ11に面して設けられ、ガラス基板1を一枚ずつ搬出する搬出コンベア12とから構成される。
【0022】
すべてのステージ5,7,8,10,11には基本的に、ガラス基板1をハンドリングロボット6,9で取り扱うことができるように、ガラス基板1を持ち上げて浮き上がらせるための昇降手段13が設けられる(図3(b)参照)。昇降手段13は、ステージ5,7,8,10,11の上面から迫り上がってガラス基板1(1a,1b)を支持し、またステージ5,7,8,10,11の内部へ没入する昇降ピン13aと、昇降ピン13aを上下駆動する駆動部13bとから構成される。
【0023】
ハンドリングロボット6,9は常温域に設けられ、基本的に、昇降手段13によって上昇されたガラス基板1の下に進入し、また下降する昇降手段13からガラス基板1を受け取り、その後、後退してガラス基板1を次ステージ(次工程)へ搬送する水平方向に移動可能なロボットアーム3が備えられる。
【0024】
カップリングステージ5には、昇降ピン13aの動作を妨げない配置で、ベルトコンベア(図示せず)が設けられる。カップリングステージ5は、ベルトコンベア上が空の状態で搬入コンベア4からガラス基板1が一枚ずつ2枚搬入されると、第1ハンドリングロボット6による搬送の待ち受け状態となる。
【0025】
冷却・分離ステージ11には、2枚一組で取り扱って処理したガラス基板1を分けるために、カップリングステージ5と同様に、昇降ピン13aの動作を妨げない配置で、ベルトコンベア(図示せず)が設けられ、ベルトコンベア上に2枚のガラス基板1が載っている状態で、搬出コンベア12へガラス基板1を一枚ずつ搬出し、空の状態で第2ハンドリングロボット9によるガラス基板1の搬送を待ち受ける。
【0026】
ハンドリングロボット6,9は、ターンテーブル14を備え、ターンテーブル14上にロボットアーム3が設けられる。ターンテーブル14の回転により、ロボットアーム3の向きが360°全方位で変更される。また、ロボットアーム3は上述したように、水平方向に移動可能で、前後方向の往復動作によって各ステージ5,7,8,10,11に向かって進入したり後退したりし、いずれかのステージ5,7,8,10からガラス基板1を受け取って次のステージ7,8,10,11へ受け渡すようになっている。
【0027】
ロボットアーム3は、ターンテーブル14上に搭載された支持部15と複数本のフォーク16とから構成され、片持ち梁状に先端16aが迫り出したフォーク16の基端16bが支持部15に支持される。ロボットアーム3、具体的にはフォーク16は、金属やカーボンなど伝熱材料で形成される。ハンドリングロボット6,9は、自動制御装置(図示せず)により、製造ライン2の工程タイミングに従ってガラス基板1の受け渡し動作を行う。
【0028】
2枚一組のガラス基板1a,1bとこれを一括して取り扱うロボットアーム3について、図2(A)に示すように、2枚のガラス基板1a,1bをロボットアーム3の移動方向Dに沿って直列に並べて配置して取り扱う仕方と、図2(B)に示すように、ロボットアーム3の移動方向Dと直交する方向に並列に並べて配置して取り扱う仕方の2通りが考えられる。
【0029】
並列に配置する仕方では、横に並べて受け取られるガラス基板1a,1bの重量バランスが崩れやすく、振動を起こし、適切に搬送することができない。そこで、第1実施形態にあっては、ガラス基板1a,1bを、並列配置に対し、安定にガラス基板1a,1bを取り扱うことが可能な直列配置でロボットアーム3に受け渡すことができるように、すべてのステージ5,7,8,10,11でガラス基板1a,1bは、直列配置でハンドリングロボット6,9による搬送の待ち受け状態となるように設定される。図2の例では、支持部15に設けられるロボットアーム3の水平移動用の屈伸アーム17が示されている。
【0030】
第1実施形態に係るガラス基板の搬送装置は特に、図3に示すように、加熱ステージ10から冷却・分離ステージ11へのガラス基板1a,1bの搬送に好ましく適用される。加熱ステージ10は、ガラス基板1a,1bの加熱処理が完了し、第2ハンドリングロボット9のロボットアーム3でガラス基板1a,1bを搬出する段階では、高温雰囲気となっている。なお、ターンテーブル14の代わりに、屈伸アーム17そのものが中心17’で360°回転する構造としてもよい。
【0031】
加熱ステージ10へ進入し後退するロボットアーム3のフォーク16は伝熱材料で形成されていて、当該フォーク16の先端16a側と基端16b側との間で、加熱ステージ10へ先行して進入する先端16a側よりも後行して進入する基端16b側が遅いタイミングで昇温する習性、もしくは先端16a側が先に暖められ、基端16b側が後から暖められる状況がある。
【0032】
加熱ステージ10には、第1及び第2昇降手段13が設けられる。これら2台の昇降手段13は、昇降ピン13aを個別に上下駆動し、昇降ピン13aが上昇して2枚のガラス基板1a,1bそれぞれを個別に同じ高さに持ち上げ、かつ下降してこれらガラス基板1a,1bをロボットアーム3に受け渡す。
【0033】
上述したように、2枚のガラス基板1a,1bをロボットアーム3の移動方向Dに沿って並べて配置するようにしたので、これら2台の昇降手段13も、ガラス基板1a,1bの配置に合わせて、ロボットアーム3の移動方向Dに沿って並設される。他のステージ5,7,8,11についても、加熱ステージ10と同じ態様で昇降手段13を2台設けるようにしても良いことはもちろんである。
【0034】
加熱ステージ10の2台の昇降手段13には、これらの昇降ピン13aの下降タイミングを制御して、各ガラス基板1a,1bのロボットアーム3への受け渡しタイミングを調整するために、タイミング調整手段としての昇降手段制御装置18が接続される。
【0035】
具体的には、昇降手段制御装置18は、フォーク16の先端16a側に位置する第1昇降手段13の昇降ピン13aよりも、フォーク16の基端16b側に位置する第2昇降手段13の昇降ピン13aを遅く下降させる。言い換えれば、ガラス基板1a,1bのロボットアーム3への受け渡しタイミングを、フォーク16の先端16a側で早くし(先に受け渡しを行い)基端16b側で遅くする(後に受け渡しを行う)。
【0036】
常温域にあるロボットアーム3は、高温雰囲気の加熱ステージ10に移動してガラス基板1a,1bの下に進入するとき、先端16a側が早く暖まり、基端16b側が遅く暖まる傾向にあるので、高温雰囲気によるロボットアーム3の温度上昇過程で、フォーク16の先端16a側で受け渡しを早くし、基端16b側については、基端16b側の温度が先端16a側の温度に追いつく遅いタイミングで受け渡しを行うようにして、2枚のガラス基板1a,1bを同じ温度にてロボットアーム3へ受け渡しするようになっている。
【0037】
受け渡しタイミングは、フォーク16の基端16b側の温度が先端16a側の温度と同じになるタイミングに設定され、この受け渡しタイミングは詳細には、フォーク16の伝熱係数と2枚のガラス基板1a,1bの距離に基づき、実機で試験を実施することで容易に求めることができる。簡略的には、ロボットアーム3が基端16b側のガラス基板1bから先端16a側のガラス基板1aに達するのに要する時間だけ、第2昇降手段13による受け渡しタイミングを遅くすればよい。
【0038】
次に第1実施形態に係るガラス基板の搬送装置の作用について説明する。ガラス基板1に対する各種加工処理を実行する基板の加工装置は、上述した通りである(図1参照)。
【0039】
図3(a)に示すように加熱ステージ10では、ガラス基板1a,1bの加熱処理を完了した後、高温雰囲気が滞留している。ガラス基板1a,1bを加熱ステージ10から冷却・分離ステージ11に搬送する際、第1及び第2昇降手段13の各駆動部13bは図3(b)に示すように、昇降ピン13aを上昇させ、ガラス基板1a,1bを同じ高さに持ち上げる。昇降ピン13aの上昇動作は、同じタイミングであっても、異なるタイミングであってもよい。
【0040】
次いで、図3(c)に示すように、第2ハンドリングロボット9のロボットアーム3は加熱ステージ10に向かって移動し、先端16a側からガラス基板1a,1bの下に進入していって、図3(d)に示すように、先端16a側から基端16b側にわたって、ガラス基板1a,1bの下に位置して移動を停止する。
【0041】
この際、先行して進入するフォーク16の先端16a側が先に昇温し始め、後行して進入する基端16b側が後から遅いタイミングで昇温し始める。従って、ロボットアーム3のフォーク16はガラス基板1a,1b下に進入した直後の時点では、先端16a側の温度が高く基端16b側の温度が低くて、不均一な昇温状態にある。
【0042】
フォーク16のこのような温度上昇過程において、昇降手段制御装置18には、先端16a側でガラス基板1aを受け渡しするときの先端16a側温度に基端16b側温度が追いつくタイミングが設定されていて、昇降手段制御装置18はまず、図3(e)に示すように、フォーク16の先端16a側に位置するガラス基板1aを持ち上げている第1昇降手段13の昇降ピン13aを下降する。
【0043】
その後、基端16b側が先端16a側と同じ温度になるタイミングで、図3(f)に示すように、フォーク16の基端16b側に位置するガラス基板1bを持ち上げている第2昇降手段13の昇降ピン13aを下降する。これにより、2枚のガラス基板1a,1bは、先端16a側及び基端16b側共に、同じ温度に昇温したフォーク16に受け渡されることになる。
【0044】
以上説明した第1実施形態に係るガラス基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置にあっては、先端16a側のガラス基板1aの受け渡し時における先端16a側の温度に基端16b側の温度が等しくなったタイミングで基端16b側のガラス基板1bを受け渡すようにしていて、一度に2枚のガラス基板1a,1bを一つのロボットアーム3で搬送する場合であっても、各ガラス基板1a,1bの温度履歴を同じにすることができ、ガラス基板1a,1b同士の間で温度ムラが発生することを防止できて、2枚のガラス基板1a,1bを均一に仕上げることができる。
【0045】
また、加熱ステージ10の高温雰囲気で暖められるフォーク16が先端16aから基端16bにわたり同じ一定温度に収斂するまで待ってからガラス基板1a,1bを受け渡すのでは、搬送に時間がかかってしまうが、第1実施形態にあっては、ロボットアーム3の温度上昇過程で受け渡しを行うことができるので、ガラス基板1a,1bの搬送を迅速に行うことができ、高い生産効率を確保することができる。
【0046】
さらに、2枚のガラス基板1a,1bをロボットアーム3の移動方向Dに沿って並べて配置するようにしたので、並列配置する場合に比べて、ロボットアーム3は安定にガラス基板1a,1bを受け取って搬送することができる。
【0047】
図4には、本発明に係るガラス基板の搬送装置の第2実施形態が示されている。第2実施形態は、個別に作動される第1及び第2の昇降手段13に代えて、同時に作動される2台の昇降手段13もしくは2枚のガラス基板1a,1bを単一の昇降手段13で取り扱うことができるように構成されている。
【0048】
第2実施形態のタイミング調整手段は、ロボットアーム3のフォーク16の先端16a側上面よりも、フォーク16の基端16b側上面をガラス基板1a,1bから離隔させるために、フォーク16に、基端16b側上面から先端16a側上面へ向かって漸次高くなるように傾斜させた傾斜面19を設けて構成される。
【0049】
このように先端16a側及び基端16b側においてガラス基板1a,1bに対するフォーク16の上面、すなわち受け取り面の距離を異ならせることによって、昇降ピン13aを同時に下降させても、各ガラス基板1a,1bの受け渡しタイミングを異ならせることができる。傾斜面19の傾斜角度は、基端16b側でのガラス基板1bの受け渡しが先端16a側でのガラス基板1aの受け渡しよりも、上記第1実施形態の昇降手段制御装置18で説明した遅いタイミングとなるように設定される。
【0050】
ロボットアーム3のフォーク16は、上述したように片持ち梁状であって、2枚のガラス基板1a,1bを搭載したときの重量で傾斜面19がおおよそ水平となるように撓む習性の素材で構成される(図4中、矢印X参照)。
【0051】
第2実施形態に係るガラス基板の搬送装置及びこれを備えた基板の加工装置の作用について説明すると、図4(a)に示すようにガラス基板1a,1bを加熱ステージ10から冷却・分離ステージ11に搬送する際、昇降手段13の駆動部13bは昇降ピン13aを上昇させ、ガラス基板1a,1bを同じ高さに持ち上げる。第2ハンドリングロボット9のロボットアーム3は加熱ステージ10に向かって移動し、先端16a側からガラス基板1a,1bの下に進入していって、先端16a側から基端16b側にわたって、ガラス基板1a,1bの下に位置して移動を停止する。
【0052】
この際、先行して進入するフォーク16の先端16a側が先に昇温し始め、後行して進入する基端16b側が後から遅いタイミングで昇温し始める。従って、フォーク16はガラス基板1a,1b下に進入した直後の時点では、先端16a側の温度が高く基端16b側の温度が低くて、不均一な昇温状態にある。また、ロボットアーム3のフォーク16は、これに設けた傾斜面19により、先端16a側上面が基端16b側上面よりもガラス基板1a,1bに接近している。
【0053】
これにより、ロボットアーム3の温度上昇過程において、先端16a側でガラス基板1aを受け渡しするときの先端16a側温度に基端16b側温度が追いつくタイミングが設定される。
【0054】
その後、2枚のガラス基板1a,1bを持ち上げている昇降手段13の昇降ピン13aを下降して、2枚のガラス基板1a,1bを同時に下降させる。すると、図4(b)、(c)に示すように、早いタイミングで先端16a側のガラス基板1aがロボットアーム3に受け渡され、遅いタイミングで基端16b側のガラス基板1bがロボットアーム3に受け渡されて、これにより、2枚のガラス基板1a,1bは、先端16a側及び基端16b側共に、同じ温度に昇温しているロボットアーム3に受け渡されることになる。
【0055】
このような第2実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。特に第2実施形態では、2枚のガラス基板1a,1bを単一の昇降手段13で取り扱うことができ、またフォーク16に傾斜面19を設けるだけで受け渡しのタイミングを調整することができるので、第1実施形態よりも構造が簡単であると共に、タイミング制御も容易であるという優れた作用効果を発揮する。
【0056】
また、第2実施形態では、2枚のガラス基板1a,1bを支持している昇降ピン13aを同時に下降させる態様なので、ロボットアーム3に昇降機構を備える場合には、昇降ピン13aの下降に代えて、ロボットアーム3を上昇させることによりガラス基板1a,1bの受け取りを完了することができ、多様な制御に対応させることができる。
【0057】
さらに、ロボットアーム3のフォーク16が、2枚のガラス基板1a,1bを搭載したときの重量で傾斜面19がおおよそ水平となるように撓む習性を有するようにしたので、傾斜面19を設けた場合であっても、安定した水平搬送を確保することができる。
【0058】
図5には、本実施形態に係るガラス基板の搬送装置を備えた基板の加工装置の製造ラインの他の例が示されている。
【0059】
図5の基板の加工装置の製造ライン20は、タッチパネル式携帯端末用のガラス基板1を向きを変えて一枚ずつ搬入する搬入用ターンテーブル21と、搬入用ターンテーブル21に面して設けられ、当該搬入用ターンテーブル21から送り込まれるガラス基板1を2枚一組で搬入する搬入コンベア22と、搬入コンベア22に面して設けられ、ガラス基板1を2枚一組で搬入コンベア22から次段の塗装ステージ23へ搬送する第1ハンドリングロボット24と、第1ハンドリングロボット24を挟んで搬入コンベア22の反対側に設けられ、ガラス基板1を2枚一組で塗工処理する塗装ステージ23と、塗装ステージ23に面して設けられ、ガラス基板1を塗装ステージ23から次段の真空乾燥ステージ25へ搬送する第2ハンドリングロボット26と、第2ハンドリングロボット26を挟んで塗装ステージ23の反対側に設けられ、2枚一組のガラス基板1を真空乾燥処理する真空乾燥ステージ25と、真空乾燥ステージ25に面して設けられ、ガラス基板1を真空乾燥ステージ25から次段の加熱ステージ27へ搬送する第3ハンドリングロボット28と、第3ハンドリングロボット28を挟んで真空乾燥ステージ25の反対側に設けられ、2枚一組のガラス基板1を加熱処理する加熱ステージ27と、加熱ステージ27に面して設けられ、ガラス基板1を加熱ステージ27から次段の冷却ステージ29へ搬送する第4ハンドリングロボット30と、第4ハンドリングロボット30を挟んで加熱ステージ27の反対側に設けられ、2枚一組のガラス基板1を冷却処理する冷却ステージ29と、冷却ステージ29に面して設けられ、ガラス基板1を2枚一組で搬出する搬出コンベア31と、搬出コンベア31に面して設けられ、ガラス基板1を一枚一枚向きを変えて搬出する搬出用ターンテーブル32とから構成される。このような製造ライン20の第1〜第4ハンドリングロボット24,26,28,30として、第1または第2実施形態に係るガラス基板の搬送装置を好適に適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
1,1a,1b ガラス基板
2,20 製造ライン
3 ロボットアーム
4,22 搬入コンベア
5,7,8,11,23,25,29 ステージ
6,9,24,26,28,30 ハンドリングロボット
10,27 加熱ステージ
12,31 搬出コンベア
13 昇降手段
14,21,32 ターンテーブル
15 支持部
16 フォーク
16a フォークの先端
16b フォークの基端
17 屈伸アーム
18 昇降手段制御装置
19 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに備えられる加熱ステージで、上昇された基板の下に進入し、該基板が下降されることでこれを受け取り、その後、後退して当該基板を次のステージへ搬送する水平方向に移動可能なロボットアームを有し、該ロボットアームが、その先端側と基端側との間で、該加熱ステージへ先行して進入する先端側よりも後行して進入する基端側が遅いタイミングで昇温する習性のある基板の搬送装置であって、
上記加熱ステージには、複数の上記基板を、上記ロボットアームの移動方向に沿って直列に並べて配置し、
上記加熱ステージには、これら基板を、同じ高さに持ち上げるために上昇されかつ下降されて上記ロボットアームに受け渡す昇降手段を設けると共に、
上記ロボットアームの温度上昇過程で複数の上記基板を同じ温度にて該ロボットアームに受け渡しするために、これら基板の該ロボットアームへの受け渡しを、当該ロボットアームの先端側で先に行いかつ基端側で後に行うための、タイミング調整手段を備えたことを特徴とする基板の搬送装置。
【請求項2】
前記昇降手段は、これら基板それぞれを、個別に同じ高さに持ち上げるために上昇されかつ個別に下降されて前記ロボットアームに受け渡すように複数設けられ、
前記タイミング調整手段は、前記ロボットアームの先端側に位置する前記昇降手段よりも、前記ロボットアームの基端側に位置する前記昇降手段を遅く下降させる昇降手段制御装置であることを特徴とする請求項1に記載の基板の搬送装置。
【請求項3】
前記タイミング調整手段は、前記ロボットアームの先端側上面よりも、該ロボットアームの基端側上面を前記基板から離隔させるために、該ロボットアームに、基端側上面から先端側上面へ向かって漸次高くなるように傾斜させて設けられた傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の基板の搬送装置。
【請求項4】
前記ロボットアームは、すべての前記基板を搭載したときの重量で前記傾斜面がおおよそ水平となるように撓む習性を有することを特徴とする請求項3に記載の基板の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの項に記載の基板の搬送装置を備え、上記基板を2枚一組で取り扱って搬送する第1ハンドリングロボットと、該第1ハンドリングロボットにより搬送される上記基板を2枚一組で塗工処理する塗装ステージと、上記第1ハンドリングロボットにより上記塗装ステージから搬送される2枚一組の上記基板に対し真空乾燥処理する真空乾燥ステージと、該真空乾燥ステージで真空乾燥処理された後の上記基板を2枚一組で取り扱って搬送する第2ハンドリングロボットと、該第2ハンドリングロボットにより上記真空乾燥ステージから搬送される2枚一組の基板に対し、焼成のための加熱処理を施す加熱ステージと、上記第2ハンドリングロボットにより上記加熱ステージから搬送される2枚一組の上記基板に対し冷却処理を施す冷却ステージとから構成されることを特徴とする基板の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−222087(P2012−222087A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84845(P2011−84845)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】