説明

基板を含む積層体および基板の処理方法

【課題】ダイシングテープを劣化することなく、基板を支持するサポートプレートを基板から剥離する処理を実現する積層体および基板の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる基板を含む積層体は、薄板化された基板10と、サポートプレート12とを含む積層体20であって、基板10の一方の面10aに第1接着剤を介して貼着された第1サポートプレート12と、基板10の他方の面に第2接着剤を介して貼着された第2サポートプレート14とを備え、第2接着剤は、第1接着剤とは異なる溶解性を有していることを特徴とし、基板10から第1サポートプレート12および第2サポートプレート14の剥離処理を良好に行なうことができる積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と該基板を支持するサポートプレートを含む積層体および積層体を構成する基板からサポートプレートを剥離する基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化および薄板化することによって、パッケージ内にチップを高集積化する要求が高まっている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25〜150μmの範囲にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースとなる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄となるため、その強度は弱くなり、ウエハにクラックまたは反りが生じやすくなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハサポートシステムが開発されている。ウエハサポートシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができるのである。
【0005】
ウエハとサポートプレートとは、粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合わせられている。その後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。ウエハとサポートプレートとの貼り合わせに粘着テープを用いる場合は、ウエハをサポートプレートから引き剥がす、熱可塑性樹脂を用いる場合は樹脂を加熱して樹脂を溶解させる、接着剤を用いる場合は溶解液を用いて接着剤を溶解させること等によって、ウエハをサポートプレートから剥離する。たとえば、特許文献1には、接着剤を用いてウエハとサポートプレートとを貼り合わせ、溶解液により接着剤を溶解させてウエハをサポートプレートから剥離する技術が開示されている。
【0006】
上述のように、ウエハからサポートプレートを剥離する際には、ウエハの膜厚に応じて、ウエハの他方の面を、ダイシングテープなどの他の支持体に貼り合わせた後に剥離が行われる。これは、ウエハの膜厚が小さいため、ウエハ自体の強度が低く、クラックが生じやすいためである。つまり、ダイシングテープ、基板およびサポートプレートからなる積層体を一旦形成した後に、基板からサポートプレートが剥離されることになる。
【特許文献1】特開2006−135272号公報(2006年5月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、基板からサポートプレートを剥離する前に、ダイシングテープ、基板およびサポートプレートとで構成される積層体が存在することになる。そして、サポートプレートを剥離する際には、サポートプレートがその最上に位置するよう積層体を保持し、サポートプレートの貫通孔を介して基板とサポートプレートとを貼りつけている接着剤を溶解する溶剤が供給される。
【0008】
しかしながら、上記のように溶剤の供給が行なわれると、露出しているダイシングテープにその溶剤が飛散することがある。このとき、溶剤の種類によっては、ダイシングテープが劣化してしまうおそれがあり、ダイシングテープの劣化は、基板のクラックや反りを生じさせる一因となり、その後のダイシングにも問題が生じることになる。
【0009】
そのため、ダイシングテープを劣化させることなく、基板からサポートプレートを剥離する方法の開発が求められている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダイシングテープを劣化することなく、基板を支持するサポートプレートを基板から剥離することが可能な基板の処理方法およびこの処理に良好に供される積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる積層体は、薄板化された基板と、サポートプレートとを含む積層体であって、
該基板の一方の面に第1接着剤を介して貼着された第1サポートプレートと、該基板の他方の面に第2接着剤を介して貼着された第2サポートプレートとを備え、
該第2接着剤は、該第1接着剤とは異なる溶解性を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる基板の処理方法は、薄板化され、第1接着剤を介して第1サポートプレートが貼着された基板から、当該第1サポートプレートを剥離する基板の処理方法であって、
該基板における該第1サポートプレートの貼着面とは反対側の面に、該第1接着剤とは異なる溶解性を有している第2接着剤を用いて第2サポートプレートを貼着する貼着工程と、
前記貼着工程の後に、前記第1接着剤を溶解して前記第1サポートプレートを基板から剥離する第1剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる積層体によれば、積層体から第1サポートプレートまたは第2サポートプレートを除去する際に、溶剤中に積層体を浸漬することが可能な積層体を提供する。つまり、第1サポートプレートおよび基板、第2サポートプレートおよび基板をそれぞれ貼着している接着剤の溶解性が互いに異なるために、一方のサポートプレートのみを除去したい場合、単に除去したいサポートプレートを貼り付けている接着剤が可溶な溶剤中に浸漬することのみで、除去することができる。つまり、本発明にかかる積層体によれば、積層体からサポートプレートの除去を簡易な方法で実現することができる。
【0014】
そして、第2サポートプレートは、ダイシングテープに対して不活性な溶剤によって溶解される第2接着剤を用いて基板に貼り付けられている。そのため、ダイシングテープ、基板および第2サポートプレートからなる積層構造を一旦形成した後に、基板から第2サポートプレートを剥離するとき、ダイシングテープが劣化し、ウエハにクラックを生じさせることがない。つまり、本発明によれば、薄板化された基板の強度を良好に補強しつつ、ダイシングテープを劣化させることのないよう、基板からサポートプレートを剥離する処理を実現できる積層体を提供することができる。
【0015】
本発明にかかる基板の処理方法によれば、薄板化された基板を支持している第1サポートプレートを剥離する前に、第2接着剤を用いて基板に第2サポートプレートを貼着する工程を含む。そのため、第1サポートプレートの剥離をより簡便な方法で実現することができる。さらに、基板と第2サポートプレートとはダイシングテープに対して不活性な溶剤に溶解しえる第2接着剤を用いて貼り付けられている。そのため、第2サポートプレートを基板から剥離するときに、自由度の高い処理方法を用いて、簡便に第2接着剤の溶解を実現することができる。その結果、本発明によれば、薄板化された基板の強度を良好に維持しつつ、ダイシングテープを劣化させることのないよう、基板からサポートプレートを剥離することができる基板の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本実施形態について説明する。
【0017】
〔積層体〕
(第1の実施形態)
図1を参照しつつ、本実施形態にかかる基板を含む積層体について説明する。図1は、本実施形態にかかる積層体を説明する断面図である。図1に示すように、積層体20は、基板10の一方の面10aに設けられた第1サポートプレート12と、他方の面10bに設けられた第2サポートプレート14と、を含む。つまり、基板10の両面にそれぞれサポートプレートが設けられている。そして、第1サポートプレート12と基板10とは、第1接着剤(図示せず)を介して、第2サポートプレート14と基板10とは、第2接着剤(図示せず)を介して、それぞれ貼り付けられている。
【0018】
基板10は、たとえば、薄板化された基板である。具体的には、基板10は、半導体ウエハであることが好ましい。このとき、基板10の膜厚は、10〜150μmであることができる。
【0019】
第1サポートプレート12は、後述の半導体ウエハを薄板化する工程にて詳細を説明するが、基板10を支持する役割を果たす。第1サポートプレート12は、基板10の面10aと同一の大きさまたは同一以上の大きさを有することが好ましく、面10aと同一の大きさであることがより好ましい。また、第1サポートプレート12は、厚さ方向に第1サポートプレート12を貫通する貫通孔(図示せず)が設けられていることが好ましい。貫通孔は、多数設けられ、また、貫通孔は、第1サポートプレート12の全面に均一に分散して設けられていることが好ましく、貫通孔の直径は、0.3mm〜0.5mmであり、貫通孔同士のピッチは、0.5mm〜1.0mmであることが好ましい。このように、第1サポートプレート12が貫通孔を有する場合の利点については、後述する。第1サポートプレート12を形成する材料としては、ガラス、硬質プラスチックなどを挙げることができる。
【0020】
第2サポートプレート14は、第1サポートプレート(支持板)12と同様に、基板10を支持する役割を果たす部材である。つまり、第2サポートプレート14は、基板10の面10bと接触可能な面を有し、面10bに貼り付けられることができるサポート部であるともいう。そのため、第2サポートプレート14が、単独で取り扱われるプレート(単なる板)である場合に限定されることなく、基板の他方の面10bとの接触が可能な面を有し、第2接着剤を介して基板10を貼り付けることができる限り、その態様は限定されない。
【0021】
第1の実施形態では、第2サポートプレート14が、単独で取り扱うことが可能な板である場合について説明する。ここで、「単独で取り扱われる板」とは、単なる板のことを意味する。このような単独で取り扱われるプレートを第2サポートプレート14として用いる場合には、積層体20が形成された後であっても積層体20の処理に対する制限が少ないという利点がある。第2サポートプレート14は、第1サポートプレート12と同様に厚さ方向に貫通孔を有するプレートであってもよい。第2サポートプレート14が貫通孔を有する場合、第2接着剤への溶剤の浸透をより迅速に行なうことができるという利点を有する。
【0022】
また、第2サポートプレート14は、第1接着剤を溶解する溶剤に対して耐性を有する材料であることが好ましい。つまり、第1接着剤を溶解するときに、溶剤が第2サポートプレート14に飛散しても、第2サポートプレート14自体が損傷することがない材料である。この態様によれば、第1サポートプレート12を基板10から剥離するときの処理方法に対する制限が少なくなり、処理方法の自由度が高くなる。
【0023】
第2サポートプレート14において、基板10との接触面は、少なくとも基板10の面と同一の大きさまたは同一以上の大きさ(大径)を有することが好ましい。第2サポートプレートの接触面が、基板10の面と同一の大きさを有する場合、積層体20が基板10と同じ大きさになり、搬送器などによる搬送の自由度が高くなる。また、第2サポートプレート14は、未加工のプレート状部材、たとえば、ガラス、硬質プラスチック、SUS、セラミック、アルミなどであることができる。
【0024】
第1接着剤は、基板10と第1サポートプレート12とを貼り付けている。第1接着剤としては、後述の第2接着剤を溶解しない溶剤の内、少なくとも1種の溶剤に対して溶解性を示す材料であることがもとめられる。このような接着剤の例としては、例えば、有機溶剤に対して可溶性を示す接着剤が好ましく、特開2005−191550号公報に記載されているような、ノボラックタイプのフェノール樹脂あるいはアクリル系樹脂材料を含有してなる接着剤組成物、特開2007−119646号公報に記載されているような、スチレン、環式骨格含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとからなるアクリル系ポリマーを主成分とする接着剤組成物などを例示することができる。
【0025】
第2接着剤は、基板10と第2サポートプレート14とを貼り付け、第1接着剤とは溶解性が異なる。なお、本発明において、「第1接着剤と溶解性が異なる」とは、第1接着剤を溶解する溶剤の内、少なくとも1種の溶剤に対して不溶性あるいは難溶性を示すことを意味する。また、第2接着剤は、ダイシングテープに対して不活性な溶剤によって溶解可能な接着剤であることが好ましい。
【0026】
具体的には、第2接着剤として、水溶性接着剤を用いることが好ましい。ここで、「水溶性」とは、水および水性溶剤に溶解しえることを意味する。水溶性接着剤の例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド−ジアセトンアクリルアミド共重合体などの水溶性ポリマーを水、あるいは溶剤に溶解してなる組成物を挙げることができる。このように、第2サポートプレート14と基板10とを水溶性接着剤を介して貼り付けることにより、以下の利点がある。基板10から第1サポートプレート12を剥離した後、さらに、基板10から第2サポートプレートを剥離するが、この剥離前に基板10をダイシングテープに貼り付けることがある。ここで、上記特定の接着剤を使用していることにより、第2接着剤を溶解する溶剤がダイシングテープに飛散したとしても、ダイシングテープの劣化を抑制することができる。また、ダイシングテープへの飛散を防止しつつ溶解しなくてはならないという処理条件の制限がないため、より簡易な方法で、基板10から第2サポートプレート14を剥離することができる。
【0027】
本実施形態にかかる積層体20によれば、積層体20から第1サポートプレート12または第2サポートプレート14を剥離する際に、溶剤中に積層体20を浸すことが可能な積層体を提供する。つまり、第1サポートプレート12および基板10、第2サポートプレート14および基板10との間に設けられている接着剤の溶解性が互いに異なるために、一方のサポートプレートのみを除去したい場合、除去したいサポートプレートを貼り付けている接着剤が可溶な溶剤中に浸すことによって、所望のサポートプレートを除去することができる。本実施形態にかかる積層体の利点については、後述の基板の処理方法にてさらに詳細に説明する。
【0028】
(第2の実施形態)
図2を参照しつつ、第2の実施形態にかかる積層体30について説明する。第2の実施形態は、第2サポートプレートが第1の実施形態とは異なる例である。第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0029】
積層体30では、第2サポートプレートとして、所定の基板を搭載可能なステージ26を用いる。つまり、第2の実施形態において、第2サポートプレートの役割を果たすステージ26は、単独で取り扱われない部材であるが、基板10の他の面10bと接触しえる面を有し、第2接着剤を介して基板10を支持することができるため、第2サポートプレートとして用いることができる。第2接着剤を介して基板10と貼り付けることができる限り、ステージの材質や構造が限定されることはない。たとえば、ステージ26としては、ポーラスな材質からなるステージであることもできる。
【0030】
第2実施形態にかかる積層体30によれば、既存の装置が有するステージを第2サポートプレートとして有効利用でき、製造コストの上昇を抑制できるという利点を有する。
【0031】
(第3の実施形態)
図3を参照しつつ、第3の実施形態にかかる積層体40について説明する。第3の実施形態は、第2サポートプレートが第1の実施形態とは異なる例である。積層体40では、第2サポートプレートは、各種処理に用いられ得る平坦な面を有するプレートを備えた処理装置のプレートである。具体的には、平坦化処理装置の押圧部材などを例示することができる。つまり、第2実施形態にて説明したステージ26が基板10の面10bを下向きにして貼り付けられるサポートプレートであるのに対して、第3の実施形態は、基板10の面10bを上向きにして、基板10の上方から貼りつけることが可能な部材である。たとえば、平坦化をするための押圧するためのプレート28を例示することができる。
【0032】
このプレート28は、基板10の面10bと貼り付けることができる面を有している限り、形状や材質に制限はない。たとえば、基板を上方から吸着するために、貫通穴を有し、吸引手段に接続されているプレートや、基板に所定の処理液や気体など供給または吸引するために、貫通孔を有し、供給手段または吸引手段に接続されているプレートであってもよい。
【0033】
また、プレート28としては、第1接着剤を溶解する溶剤が飛散した場合であっても劣化することのない材料によりできていることが好ましい。この態様によれば、処理方法の自由度が高くなり、簡便な処理を実現できるためである。
【0034】
第3の実施形態にかかる積層体によれば、第1の実施形態にかかる積層体と同様に、基板10から第1サポートプレート12を剥離する際に、良好に実施することができる。また、既存の装置に備えられているプレートを第2サポートプレートとして有効利用でき、製造コストの上昇を抑制できるという利点がある。
【0035】
〔基板の処理方法〕
次に、図4〜図8を参照して、本実施形態にかかる基板の処理方法について説明する。図4〜図8は、本実施形態にかかる基板処理方法を示す断面図である。この基板の処理方法は、具体的には、薄板化された基板10からサポートプレートを剥離するための処理方法であり、さらには、ダイシングテープに貼り付けられた基板10を得るための処理方法である。
【0036】
1.基板薄板化工程
この工程では、まず、薄板化されたウエハ(例えば、半導体ウエハや化合物半導体ウエハなど)を形成する。具体的には、膜厚が500〜1000μmの基板11を準備し、図4に示すように、基板11の面10aに第1サポートプレート12を、第1接着剤を介して貼りつける。第1サポートプレート12としては、上述の積層体の項で説明した構成をとることができる。このとき、第1サポートプレート12は、薄板化される基板を支持する役割を果たす。第1接着剤は、後述する第2接着剤とは溶解性が異なり、当該第2接着剤を溶解しない溶剤の内、少なくとも1種の溶剤に対して溶解性を示す接着剤であることが好ましい。また基板の薄板化工程では、研磨熱により基板が過熱することを防ぐために冷却水を噴きつけながら行うことがあるが、この工程時にサポートプレートが剥がれないようにすることが必要がであり、従って第1接着剤は耐水性の材料であることが好ましい。具体的には、上述の積層体の項で説明した接着剤を用いることができる。
【0037】
第1接着剤として、上述したノボラックタイプのフェノール樹脂あるいはアクリル系樹脂材料を含有してなる接着剤組成物を用いることで、薄板化された基板10に成膜処理を施すなど、基板10と第1サポートプレート12とが高熱に曝されることがあっても、耐熱性があり、良好な接着力が維持されたままであることができる。特にアクリル系樹脂材料は耐熱性、接着性が良好で、剥離時に容易に剥離可能であることから好ましい。
【0038】
このような接着剤の例としては、特願2005−315282号出願明細書に記載の、(a)スチレン、(b)環式骨格含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(c)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを繰返単位として含有するアクリル系ポリマーを主成分とする接着剤組成物、特願2006−215070号出願明細書に記載の、スチレンと、熱の作用によりエステル結合から解離する基を含む環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とすることを特徴とする接着剤組成物、特願2006−243449号出願明細書に記載の、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記単量体組成物が、エチレン性二重結合を有するカルボン酸をさらに含むことを特徴とする接着剤組成物。特願2006−243450号出願明細書に記載の、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記単量体組成物が、二官能性モノマーをさらに含むことを特徴とする接着剤組成物。特願2006−243451号出願明細書に記載の、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記単量体組成物が、スチレンマクロモノマーをさらに含むことを特徴とする接着剤組成物。特願2006−243452号出願明細書に記載の、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記ポリマーがスチレンブロックセグメントを有することを特徴とする接着剤組成物。特願2006−316094号出願明細書に記載の、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記単量体組成物が、さらに、エチレン性二重結合を有するカルボン酸、二官能性モノマー、及び、スチレンマクロモノマーを含み、上記ポリマーが、スチレンブロックセグメントを有することを特徴とする接着剤組成物、特願2006−322346号出願明細書に記載の、スチレンと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルと、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記スチレンと、上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、上記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルと、上記芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとの総量を100質量部としたとき、上記スチレンの質量が40〜69質量部であり、上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量が20〜30質量部であり、上記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルの質量が10〜25質量部であり、上記芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルの質量が1〜5質量部であることを特徴とする接着剤組成物、特願2006−335081号出願明細書に記載の、単量体組成物を重合してなる重合体を主成分とする接着剤組成物であって、接着剤組成物を被接着物から剥離するときに加えられる熱によって気化する芯物質と、芯物質を内包し、かつ、上記接着剤組成物に対して不溶であり、刺激が加えられることによって破壊される皮膜とからなるマイクロカプセルを含むことを特徴とする接着剤組成物、などを挙げることができ、特にスチレン単位を含有するアクリル系樹脂材料が好ましい。
【0039】
次に、基板11を研削して、薄板化された基板10を得る。基板10の厚さは、10〜150μmであることが好ましい。これにより、図5に示すように、薄板化された基板10と、第1サポートプレート12とからなる積層構造を得る。
【0040】
2.貼着工程
次に、基板10における第1サポートプレート12の貼着面10aとは反対側の面10bに、第2接着剤を用いて第2サポートプレート14を貼着する。本実施形態では、第2サポートプレート14として、単独で取り扱われる板を用いる場合を例として説明する。第2接着剤は、上記の第1接着剤とは異なる溶解性を有している。そのため、第1サポートプレート12と第2サポートプレート14とが同時に剥離されることがない。第2接着剤としては、水溶性接着剤を使用することが好ましい。ここで、水溶性接着剤とは、水または水性溶剤に可溶な接着剤のことをいう。ここまでの工程により、積層体20が形成される。
【0041】
3.第1剥離工程
次に、第1サポートプレート12を基板10から剥離する。具体的には、第1接着剤を溶解する。この工程での処理方法は、第1接着剤を溶解することができる限り、その方法は限定されない。たとえば、図6に示すように、溶剤24が貯留された処理容器22を用いて、積層体20の全体を溶剤24に浸漬することによって第1接着剤を溶解することができる。この態様によれば、非常に簡便な方法で第1サポートプレートの剥離を行なうことができる。また、処理装置としても、特殊な装置を準備する必要がなく、製造コストの上昇を招くこともない。
【0042】
従来は、面10b側にダイシングテープを貼り付けた後に、第1サポートプレート12を基板10から剥離していために、ダイシングテープの材質によっては、第1接着剤を溶解する溶剤に対して耐性を有さないこともあり、第1サポートプレート12を剥離する際に、処理対象を溶剤に浸すことができなかった。そのため、ダイシングテープに溶剤が飛散しないように、特殊な処理装置を使用したり、煩雑な処理を必要としたりすることがあった。しかしながら、本実施形態によれば、特殊な処理装置を用いることなく、第1サポートプレート12の剥離を簡便な方法で良好に行なうことができる。
【0043】
なお、本実施形態では、第1サポートプレート12と基板10とが溶剤中で完全に分離するまで溶剤に浸漬してもよいし、または、溶剤に浸漬し、ある程度接着力が低下した後に、第1サポートプレート12および基板10とを互いに反対側の方向に引っ張ることで完全に分離させてもよい。また、貫通孔を有するサポートプレートの場合には、溶剤に浸漬することなく、第1サポートプレート12の面と直交する方向から貫通孔を介して、溶剤を供給し、第1接着剤に溶剤を浸透させることもできる。また、貫通孔を有さない場合には、第1サポートプレート12の端面方向から溶剤を供給することもできる。
【0044】
4.ダイシングテープ貼着工程
次に、図7に示すように、基板10の面10aにダイシングテープ16を貼り付ける。ダイシングテープ16は、ダイシングフレーム18により周囲を固定されている。つまり、ダイシングフレーム18は、ダイシングテープ16が緩むことのないようその張りを維持している。
【0045】
5.第2剥離工程
次に、図8に示すように、第2サポートプレート14を基板10から剥離する。第2サポートプレート14の剥離では、まず第2接着剤を溶解する。第2接着剤の溶解は、ダイシングテープ16に不活性な溶剤を用いて行なわれる。つまり、ダイシングテープを劣化させることのない溶剤である。このような溶剤としては、水または水性溶剤を用いることができる。水の場合には、pH値が6〜8の水であることが好ましい。処理方法としては、図6にて例示したように、全体を溶剤中に浸漬してもよいし、端面側から溶剤を供給してもよい。水性溶剤としては、たとえば、水、または水に各種添加剤(例えば、界面活性剤、酸性化合物、塩基性化合物など)を配合した水溶液を用いることができる。
【0046】
また、第2サポートプレート14が、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する場合には、第2サポートプレート14の上方から、貫通孔を介して溶剤を供給して第2接着剤を溶解することもできる。また、基板10の端面側から溶剤を供給し、第2接着剤を溶解することもできる。
【0047】
以上の工程により、ダイシングテープ16に取り付けられた基板10を得ることができる。
【0048】
本実施形態にかかる基板の処理方法によれば、薄板化された基板10からサポートプレートを、基板10を損傷させることなく剥離することができる。ダイシングテープ16と基板10とを貼りつける前に、第1サポートプレートの除去が行なわれるため、ダイシングテープ16に対して活性な、つまり、ダイシングテープ16を劣化させうる溶剤と接触することがない。そのため、ダイシングテープ16を劣化させることなく、基板10からサポートプレートを剥離することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
第2の実施形態にかかる基板の処理方法について図9および図10を参照しつつ説明する。図9および図10は、第2の実施形態にかかる基板の処理工程を示す断面図である。第2の実施形態にかかる基板の処理方法では、上述の積層体30中の基板10からサポートプレートを剥離する方法である。なお、以下の説明では、第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0050】
まず、第1の実施形態の基板薄板化工程と同様にして、薄板化された基板10を得る。ついで、基板10の面10bに、第2接着剤を介して、第2サポートプレートであるステージ26を貼り付ける。これにより、図2に参照されるような積層体30が得られる。
【0051】
次に、第1サポートプレート12の剥離を行なう。ここでは、基板10および第1サポートプレート12の端面側から溶剤を供給することや、第1サポートプレート12に貫通孔(不図示)がある場合には、この貫通孔を介して、上方から溶剤を供給することにより第1接着剤を溶解すればよい。第1接着剤の接着力が低下した後に、第1サポートプレート12を上方向に引っ張ることにより、図9に示すように、第1サポートプレート12を基板10から剥離することができる。
【0052】
次に、図10に示すように、基板10の面10bにダイシングテープ16を貼り付ける。ついで、基板10をステージ26から剥離する(第2剥離工程)。この工程では、基板10の端面側から溶剤を供給することにより、第2接着剤を溶解する。以上の工程により、ダイシングテープ16に貼り付けられた基板10を得ることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態にかかる基板の処理方法について図11および図12を参照しつつ説明する。図11および図12は、第3の実施形態にかかる基板の処理工程を示す断面図である。第3の実施形態にかかる基板の処理方法では、上述の積層体40中の基板10からサポートプレートを剥離する方法である。なお、以下の説明では、第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0054】
まず、薄板化された基板10の面10bに第2サポートプレートであるプレート28を貼り付ける。これにより、図3に参照されるように積層体40が得られる。次に、第1サポートプレート12の剥離を行なう。ここでは、基板10と第1サポートプレート12との接着面を溶剤に浸すことなどにより、第1接着剤を溶解する方法を採用することができる。
【0055】
次に、図11に示すように、基板10の面10bに、ダイシングテープ16を貼り付ける。ついで、基板10をプレート28から剥離する(第2剥離工程)。この工程では、図12に示すように、溶剤44が貯えられた処理容器42に、積層体40を浸す方法や、プレート28が厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)を有する場合には、プレート28の貫通孔を介して溶剤を基板10とプレート28との間に供給する方法によって、第2接着剤を溶解することができる。その後、プレート28を基板10から剥がし、図8に参照されるように、ダイシングテープ16に貼り付けられた基板10を得ることができる。なお、プレート28の貫通孔を介して溶剤を供給する場合には、必要に応じて、プレート28の他の貫通孔を介して溶剤を吸引しつつ行なうことが好ましい。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る基板処理方法によれば、薄板化された基板の取り扱いを容易にすることができる積層体および基板の処理方法を提供する。本発明は、たとえば、微細化された半導体装置の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態にかかる基板を含む積層体を示す断面図である。
【図2】第2の実施形態にかかる基板を含む積層体を示す断面図である。
【図3】第3の実施形態にかかる基板を含む積層体を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図6】第1の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図7】第1の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図8】第1の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図9】第2の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図10】第2の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図11】第3の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【図12】第3の実施形態にかかる基板の処理方法の一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 基板
10a、10b 面
11 基板
12 第1サポートプレート
14 第2サポートプレート
16 ダイシングテープ
18 ダイシングフレーム
20、30、40 積層体
22、42 処理容器
24、44 溶剤
26 ステージ
28 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板化された基板と、サポートプレートとを含む積層体であって、
該基板の一方の面に第1接着剤を介して貼着された第1サポートプレートと、該基板の他方の面に第2接着剤を介して貼着された第2サポートプレートとを備え、
該第2接着剤は、該第1接着剤とは異なる溶解性を有していることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第2接着剤は、水溶性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1サポートプレートおよび前記第2サポートプレートの少なくとも一方は、厚み方向に貫通した複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第2サポートプレートにおける前記基板との接触面の面積は、該基板の面積と同じかそれより大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2サポートプレートは、基板を搭載可能な面を有するステージであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
薄板化され、第1接着剤を介して第1サポートプレートが貼着された基板から、当該第1サポートプレートを剥離する基板の処理方法であって、
該基板における該第1サポートプレートの貼着面とは反対側の面に、該第1接着剤とは異なる溶解性を有している第2接着剤を用いて第2サポートプレートを貼着する貼着工程と、
前記貼着工程の後に、前記第1接着剤を溶解して前記第1サポートプレートを基板から剥離する第1剥離工程と、
を含むことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項7】
前記第1剥離工程は、前記第1サポートプレート、前記基板および前記第2サポートプレートからなる積層体を溶剤に浸漬することを含むことを特徴とする請求項6に記載の基板の処理方法。
【請求項8】
前記第1剥離工程の後に、前記第2接着剤を溶解して、第2サポートプレートを該基板から剥離する第2剥離工程を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の基板の処理方法。
【請求項9】
前記第1剥離工程の後であり、前記第2剥離工程の前に、
前記基板において前記第1サポートプレートが除去された面がダイシングテープと対向するようにして、該基板と該ダイシングテープとを貼着する工程を含むことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の基板の処理方法。
【請求項10】
前記第1剥離工程では、前記第2接着剤を溶解しない有機溶剤を溶剤として用いることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の基板の処理方法。
【請求項11】
前記有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)および2−ヘプタノンの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の基板の処理方法。
【請求項12】
前記第2剥離工程では、前記ダイシングテープに対して不活性な溶剤を用いることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の基板の処理方法。
【請求項13】
前記第2剥離工程では、pH=6〜8の水または水溶液を溶剤として用いることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の基板の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−182067(P2009−182067A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18454(P2008−18454)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】