説明

基板処理装置、基板処理方法および記憶媒体

【課題】乾燥処理条件に起因して変動するパーティクルのレベルを安定して低く抑える。
【解決手段】基板を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄槽(69)を有する洗浄処理部(62)と、洗浄槽の上方に設けられて揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスおよび不活性ガスを用いて基板の乾燥を行う乾燥チャンバー(65)を有する乾燥処理部(61)と、を備えたバッチ式の基板処理装置において、予め定められた関係に基づいて、乾燥チャンバー内で次に行われるバッチ処理のバッチサイズに対応する基板搬入時乾燥チャンバー内温度を設定し、乾燥処理部の乾燥チャンバーに基板を搬入する前に、乾燥チャンバー内の温度を、設定した基板搬入時乾燥チャンバー内温度に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の基板を洗浄した後に乾燥させるためのバッチ式の基板処理装置、基板処理方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)等の基板の洗浄処理等の処理を行う基板処理システムとして、25枚または50枚のウエハを1バッチとして処理を行うバッチ式の基板処理システムが知られている。このような基板処理システムにおいては、1つまたは2つのウエハ収納容器から取り出されたウエハにより1バッチが構成され、この1バッチのウエハが、一括して、基板処理システムの処理部に設けられた各種基板処理装置に搬送されて一連の処理を施されて、その後、ウエハ収納容器に戻されるようになっている。処理部における一連の処理の最終工程としてリンス処理および乾燥処理が行われる。
【0003】
特許文献1は、本件特許出願と同一出願人による特許出願に係るものであり、ここには、リンス処理および乾燥処理を連続的に行うバッチ式の基板処理装置が記載されている。この基板処理装置は、複数のウエハが浸漬されて純水リンス処理が行われる洗浄槽と、この洗浄槽の上方に設けられたウエハを乾燥させる乾燥チャンバーとを有している。洗浄槽内の純水から引き上げられたウエハに対して、ウエハが乾燥チャンバーに向かって移動する際あるいは乾燥チャンバー内に入った後に、まず乾燥ガスとしてIPA蒸気が吹き付けられ、これによってウエハ表面に付着した純水がIPAで置換され、その後、ウエハに不活性ガスとしてNガスが吹き付けられ、これによってウエハ表面で凝縮またはウエハ表面に吸着されたIPAがNガスにより除去され、ウエハ表面が均一に乾燥する。また、特許文献1には、ウエハを洗浄槽から乾燥チャンバーに搬入する前に、乾燥チャンバーの壁体を高温のNガスで加熱した後、乾燥チャンバー内に低温のNガスを供給して当該内部空間を冷却することが記載されている。このような手順を踏むことにより、乾燥チャンバーの壁体内表面へのIPA蒸気の凝縮を防止しつつウエハ表面にのみIPAが凝縮するようにして、IPAがウエハの乾燥に効率良く寄与するようにし、パーティクルレベルを低減している。しかし、特許文献1に記載されている形式の装置においても、パーティクルレベルが許容範囲内とはいえ、高くなるという現象が時おり認められる。今後、更なるウエハの清浄度向上の要求が生じることが予想され、パーティクルレベルを安定して低く抑制することができる技術の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−253026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パーティクルレベルを安定して低く抑えることができる乾燥技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、研究の結果、パーティクルレベルの変動が乾燥処理時、特にその開始時(すなわち基板の乾燥チャンバーへの搬入時)の乾燥チャンバー内の温度に依存していることを見いだした。また、バッチ式の乾燥処理を行う場合、バッチサイズ(一回の処理枚数)は常にフルサイズ(例えば50枚/1回の処理)なわけではなく、処理スケジュールに依存して変動し、例えば20枚/1処理、時には1枚/1処理ということもあり得る。本発明者は、乾燥チャンバー内の温度と異なる温度(具体的には例えば乾燥チャンバー内の雰囲気温度より低い温度である常温)の基板が乾燥チャンバー内に搬入された時に、バッチサイズに応じて基板の温度変化の挙動が異なり、これに応じて乾燥ガスの基板表面上への凝縮挙動が変化し、その結果として乾燥ガスの乾燥挙動が変化し、パーティクルレベルの変動をもたらしていることを突き止めた。そして、基板の乾燥チャンバーへの搬入時の乾燥チャンバー内の温度をバッチサイズに応じた最適な温度(温度範囲)に調整しておくことにより、パーティクルレベルを安定して低くすることができることを見いだした。
【0007】
本発明は、上記の新規な知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、バッチ式の基板処理装置において、基板を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄槽を有する洗浄処理部と、前記洗浄槽の上方に設けられた乾燥処理部と、を備え、前記乾燥処理部は、その中で基板の乾燥が行われる乾燥チャンバーと、前記乾燥チャンバー内で基板を保持する基板保持具と、前記乾燥チャンバー内に揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給手段と、前記乾燥チャンバー内の温度を調整するための加熱用気体または冷却用気体を前記乾燥チャンバー内に供給する温調気体供給手段と、前記乾燥チャンバー内の温度を測定する温度センサと、前記温調気体供給手段の動作を制御する制御部と、を有しており、前記制御部は、予め定められたバッチサイズと基板搬入時乾燥チャンバー内温度との関係に基づいて、前記乾燥チャンバー内で次に行われるバッチ処理のバッチサイズに対応する基板搬入時乾燥チャンバー内温度を設定し、次に行われるバッチ処理のために基板が前記乾燥チャンバー内に搬入される前に、前記乾燥チャンバー内の温度が前記設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度となるように前記温調気体供給手段を制御するように構成されている、基板処理装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、基板のバッチ処理方法において、基板にリンス処理を施す工程と、乾燥チャンバー内に温調気体を供給して、乾燥チャンバー内の温度を調整する工程と、温度が調整された前記乾燥チャンバー内にリンス処理後の基板を搬入する工程と、前記基板に揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給して、前記基板に付着しているリンス液を前記乾燥ガスで置換する工程と、前記基板に不活性ガスを供給して、前記基板に付着している乾燥ガスを除去する工程と、を備え、前記乾燥チャンバー内の温度を調整する工程は、予め定められたバッチサイズと基板搬入時乾燥チャンバー内温度との関係に基づいて、前記乾燥チャンバー内で次に行われるバッチ処理のバッチサイズに応じて設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度に、前記乾燥チャンバー内の温度を調整する工程である、基板のバッチ処理方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、基板を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄槽を有する洗浄処理部と、前記洗浄槽の上方に設けられた乾燥処理部と、を備えたバッチ式の基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記憶媒体であって、前記プログラムを実行することによって前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板のバッチ処理方法を実行させるものにおいて、このバッチ処理方法が、上述した基板のバッチ処理方法である記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乾燥チャンバー内の温度を、バッチサイズに応じた乾燥処理に適した温度に調整した後に基板を乾燥チャンバー内に搬入することにより、揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを効率的かつ均一に凝縮させることができるので、基板の乾燥効率および乾燥均一性が向上し、パーティクルの発生をバッチサイズにかかわらず安定して低いレベルに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板処理装置としての洗浄乾燥装置を含む基板処理システムの構成の概略を示す概略平面図である。
【図2】洗浄乾燥装置の構成を示す縦断面図である。
【図3】コントローラの、搬入時温度の設定に関する部分の構成を示す図である。
【図4】洗浄乾燥装置において実施される一連の工程の一例を説明するフローチャートである。
【図5】洗浄乾燥装置において実施される一連の工程の他の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、基板処理システムの全体構成について図1を用いて説明する。図1に示すような基板処理システムは、例えば半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という)等の基板の洗浄をバッチ方式で(すなわち、複数枚(例えば50枚)のウエハWの洗浄を同時に)行うようになっている。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム1は、複数、具体的には例えば25枚のウエハWが水平姿勢で上下方向に隙間を空けて並ぶよう収納される収納容器Cを搬入出し、また保管等する容器搬入出ブロック2と、ウエハWに対して所定の処理液(薬液、リンス液等)を用いた洗浄処理および洗浄処理後の乾燥処理を行う洗浄処理ブロック4と、容器搬入出ブロック2と洗浄処理ブロック4との間でウエハWの受け渡しを行うインターフェースブロック3とから構成されている。
【0014】
容器搬入出ブロック2は、収納容器Cを載置するための収納容器搬入出ステージ5と、収納容器Cを保管する収納容器ストック部6と、収納容器Cを搬送する収納容器搬送装置12とを有している。収納容器ストック部6には、収納容器Cを保持する複数の収納容器保持部材13が設けられている。収納容器Cとしては、具体的にはFOUPを用いることができる。当該技術分野において周知の通り、FOUPの内壁面には、各々が1枚のウエハWを収納する複数の(例えば25個の)スロットが設けられており、また、FOUPの前面は、蓋体により開閉可能なウエハWの搬入出口となっている。
【0015】
収納容器搬入出ステージ5と収納容器ストック部6との間にはシャッター14が設けられており、収納容器搬入出ステージ5に対する収納容器Cの搬入出操作の時にシャッター14が開き、それ以外の時には閉じた状態とされる。
【0016】
収納容器ストック部6とインターフェースブロック3との間は仕切壁16により仕切られており、この仕切壁16には開口16a、16bが上下2段に形成されている(図1は平面図であるため1つしか見えない)。開口16a、16bの収納容器ストック部6側には、収納容器Cの蓋体が開口16a、16bに対向するように収納容器Cを載置するウエハ出し入れステージ15が上下2段に設けられている。上下2段の開口16a、16bのうち、下方の開口16aは、収納容器CからウエハWを搬出するためのウエハ搬出用であり、上方の開口16bは、収納容器CにウエハWを搬入するためのウエハ搬入用である。
【0017】
ウエハ出し入れステージ15には、そこに載置された収納容器Cの蓋体の開閉を行うための蓋体開閉機構17が設けられており、この蓋体開閉機構17により、収納容器Cと仕切壁16とが密着した状態で蓋体を開けて、収納容器C内のウエハWをインターフェースブロック3側へ搬出すること、並びに、インターフェースブロック3側から空の収納容器C内へウエハWを搬入することが可能となっている。
【0018】
収納容器保持部材13は、壁部16の近傍において上下二段に設けられている。収納容器ストック部6は、洗浄処理前のウエハWが収納された収納容器Cを一時的に保管し、また、ウエハWが取り出されて内部が空となった収納容器Cを保管する機能を有している。
【0019】
収納容器搬送装置12は、多関節構造を有しており、その先端の支持アーム12aにより収納容器Cを支持して収納容器Cの搬送を行う。収納容器搬送装置12は、図2のA方向および高さ方向にも移動可能となっており、収納容器搬入出ステージ5、収納容器保持部材13およびウエハ出し入れステージ15の間で収納容器Cを搬送することができる。
【0020】
インターフェースブロック3の下側の開口16aの近傍には、収納容器C内の処理前のウエハWの検出を行う第1の検出部40が設けられている。また、インターフェースブロック3の上側の開口16bの近傍には、収納容器C内の処理後のウエハWの検出を行う第2の検出部50が設けられている。これらの第1の検出部40および第2の検出部50はいずれも、複数対の発光素子および受光素子により収納容器C内のウエハWの収納枚数、収納状態(各スロット内のウエハの有無、ウエハの倒れ等)を光学的に検出することができるように構成されている。第1の検出部40および第2の検出部50の構成については公知であり、その詳細構成については、本件出願人と同一の出願人による特許出願に係る特許公開公報、特開2010−272796号を参照されたい。なお、このような収納容器内におけるウエハ収納状態の検出動作は、「ウエハマッピング」などとも呼ばれ、その具体的構成および方法としてさまざまなものが公知であり、ここでも任意のものを採択することができる。
【0021】
インターフェースブロック3には、ウエハWの移載を行うためのウエハ移載装置19と、ウエハ搬入出部20とがそれぞれ設けられている。
【0022】
ウエハ移載装置19は、ウエハ出し入れステージ15に位置する収納容器Cに対するウエハWの移載、および配列部21に対するウエハWの移載を行うためのものである。ウエハ移載装置19は多軸アーム構造を有しており、その先端に、収納容器C内に収容可能なウエハWの数と同じ数のウエハWを保持することができるウエハ保持アーム19aを有している。ウエハ保持アーム19aにはウエハWを把持可能な把持爪(図示せず)が設けられており、この把持爪によりウエハWを把持した状態で、多軸アーム機構によりウエハ保持アーム19aが3次元空間で任意の位置および姿勢をとることができるようになっている。
【0023】
ウエハ搬入出部20はロード位置20aおよびアンロード位置20bを有しており、また、ウエハ配列装置21およびウエハ搬送装置22を有している。
【0024】
ウエハ配列装置21は、ウエハ移載装置19から供給される2つの収納容器分、例えば50枚の未処理のウエハWを収納容器C内における配列ピッチの半分のピッチ(ハーフピッチ)に配列する第1配列機構21aと、ハーフピッチで配列された処理済みのウエハWを収納容器C内での配列ピッチ(ノーマルピッチ)に戻す第2配列機構21bとを有している。ウエハ配列装置21は、「ピッチチェンジャー」などとも呼ばれ、当該技術分野において良く知られたものであるので、詳細な説明は省略する。
【0025】
ウエハ搬送装置22は、ハーフピッチでウエハ保持溝が形成された3本のチャック(図示せず)を有しており、2つの収納容器分の50枚のウエハWをハーフピッチで保持可能となっている。ウエハ搬送装置22は、インターフェースブロック3から洗浄処理ブロック4へ延びるガイドレール23を図1における矢印Bで示す方向に沿って移動可能である。ウエハ搬送装置22は、ウエハ配列装置21の第1配列機構21aからハーフピッチで配列された処理前のウエハWをウエハ搬入出部20のロード位置20aで受け取り、ガイドレール23に沿って洗浄処理ブロック4へ移動してウエハWを洗浄処理ブロック4へ搬入する。また、ウエハ搬送装置22は、一連の処理が終了したウエハWを洗浄処理ブロック4から搬出して、ウエハ搬入出部20のアンロード位置20bまで移動し、そこでウエハ配列装置21の第2配列機構21bにウエハWを渡す。
【0026】
洗浄処理ブロック4は、洗浄エリア7と、乾燥エリア8と、パーキングエリア9とを有する。ウエハ搬送装置22は、これらエリア間でウエハWの受け渡しを行う。
【0027】
パーキングエリア9は、次に処理が施されるウエハWを待機させる場所である。エリア(7、8、9)内およびエリア間でのウエハ搬送が行われない時間帯に、次に処理が施されるウエハWが、ウエハ搬送装置22により第1配列機構21aからパーキングエリア9に搬送される。
【0028】
洗浄エリア7には、図1に示すように、パーキングエリア9側から、第1の薬液槽31、第1の水洗槽32、第2の薬液槽33、第2の水洗槽34、第3の薬液槽35、第3の水洗槽36が順に配置されている。
【0029】
第1の薬液槽31には、例えば、有機性汚れ除去や表面金属不純物除去を行うために、130℃前後に加熱されたSPM液(濃硫酸と過酸化水素水の混合溶液)が貯留されている。第2の薬液槽33には、パーティクル等の付着物を除去するための薬液、具体的には例えばSC−1液(アンモニアと過酸化水素と水の混合溶液)が貯留されている。第3の薬液槽35には、ウエハWの表面に形成された酸化膜をエッチングするためのエッチング液、具体的には例えば希フッ素が貯留されている。エッチング液としては、希フッ酸の他に、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合物(バッファドフッ酸(BHF))を用いることもできる。
【0030】
第1〜第3の水洗槽32、34、36では、それぞれ第1〜第3の薬液槽31、33、35による薬液処理によってウエハWに付着した薬液および残渣の除去が行われ、オーバーフローリンス、クイックダンプリンス等の各種の水洗方法が用いられる。
【0031】
第1の薬液槽31、第1の水洗槽32、第2の薬液槽33、第2の水洗槽34、第3の薬液槽35、第3の水洗槽36にはそれぞれ、槽の内部の位置(処理位置)と槽の上方の位置(ウエハ搬送装置22との間でウエハの受け渡しを行う位置)との間で移動可能な搬送装置31a,32a,33a,34a,35a,36aが設けられている。
【0032】
乾燥エリア8には、洗浄乾燥装置60と、ウエハ搬送装置22のチャックを洗浄するチャック洗浄機構55とが設けられている。
【0033】
図2に示すように、洗浄乾燥装置60は、ウエハWの洗浄処理を行う洗浄処理部62と、洗浄処理部62の上方に設けられ、洗浄処理部62での洗浄処理が終了したウエハWの乾燥を行う乾燥処理部61とを備えている。例示された実施形態においては、洗浄処理部62は、ウエハWに対して純水(DIW)によるリンス処理のみを行うためのものである。また、洗浄乾燥装置60は、ウエハ搬送装置22のウエハ可搬枚数に相当する枚数のウエハ(ここでは50枚)のウエハWを保持することができるウエハガイド(ウエハ保持部)64を備えている。ウエハガイド64は、昇降機構64aにより、洗浄処理部62と乾燥処理部61との間で移動(昇降)自在となっている。洗浄乾燥装置60の上方にはファンフィルターユニット(FFU、図示せず)が配設されており、このファンフィルターユニットにより洗浄乾燥装置60に清浄な空気がダウンフローとして供給されるようになっている。
【0034】
洗浄処理部62は純水を貯留する洗浄槽69を有している。この洗浄槽69に貯留された純水(DIW)にウエハWを浸漬することによりウエハWの純水リンス処理(洗浄処理)が行われる。
【0035】
乾燥処理部61には、ウエハWを収容するための乾燥チャンバー65および乾燥チャンバー65を内部に形成するチャンバー壁67が設けられている。
【0036】
洗浄処理部62の洗浄槽69の雰囲気(洗浄槽69内および洗浄槽69近傍の上方の雰囲気)と、乾燥処理部61の乾燥チャンバー65内の雰囲気とは、洗浄槽69と乾燥チャンバー65との間に水平方向にスライド自在に配置されたシャッター63によって隔離し、または連通させることができるようになっている。シャッター63は、洗浄処理部62の洗浄槽69において洗浄処理を行うときと、洗浄槽69と乾燥チャンバー65との間でウエハWをウエハガイド64により移動させるときには、シャッターボックス66に収容され、洗浄槽69の雰囲気と乾燥チャンバー65の雰囲気とが連通状態となる。一方、シャッター63を乾燥チャンバー65の真下に配置した状態では、シャッター63の上面に設けられたシールリング63aがチャンバー壁67の下端に当接することにより、乾燥チャンバー65の下面開口が気密に閉塞される。なお、シャッター63は、後述のように洗浄槽69内で純水リンス処理だけでなく薬液処理も行う場合のように、洗浄槽69内の雰囲気が乾燥チャンバー65内に移行すると不具合が生じる可能性がある場合には設けた方が好ましいが、洗浄槽69内で純水リンス処理のみが行われる場合には、省略することも可能である。
【0037】
乾燥チャンバー65の内部には、乾燥用の揮発性有機溶剤例えばIPA(イソプロピルアルコール)の蒸気(乾燥ガス)を不活性ガス例えばNガス(窒素ガス)と混合してまたは単独で乾燥チャンバー65内に供給するための流体ノズル70が配置されている。流体ノズル70には配管80が接続されており、配管80は途中で配管80a、80bに分岐し、それぞれNガス供給源91およびIPA供給源92に接続されている。配管80aに設けられた開閉バルブ82を開放するとともに流量制御バルブ85を操作することにより、Nガス供給源91から所定流量のNガスが加熱器87に送られて、加熱器87でNガスが加熱されてホットNガスが生成される。また、配管80bに設けられた開閉バルブ83を開放するとともに流量制御バルブ86を操作することにより、IPA供給源92から所定流量のIPAの液体が蒸気発生器88に送られて、この蒸気発生器88でIPAの液体が加熱されることによりIPA蒸気が生成される。ホットNガスおよびIPA蒸気は単独で、または配管80において両者が混合された後に、流体ノズル70から乾燥チャンバー65内に噴射される。流体ノズル70および配管80(配管80a、80b)に設けられた各種機器は、ウエハWの乾燥処理時に用いられる「揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給手段」および「基板に付着した乾燥ガスを除去するために不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段」であると同時に、乾燥チャンバー65の温調のために「温調気体としての加熱用気体を供給する温調気体供給手段」でもある。
【0038】
また、乾燥チャンバー65の内部には、コールドNガス(常温の窒素ガス)を乾燥チャンバー65内に噴射するためのNガスノズル71が設けられている。配管81に設けられた開閉バルブ84を開放するとともに流量制御バルブ88を操作することにより、Nガス供給源93から所定流量の常温のNガスが、コールドNガスノズルから乾燥チャンバー65内に噴射される。Nガスノズル71および配管81に設けられた各種機器は、乾燥チャンバー65の温調のために「温調気体としての冷却用気体を供給する温調気体供給手段」である。
なお、図示された実施形態においては、温調気体としての冷却用気体を供給するために、Nガスノズル71および配管81に設けられた各種機器を、流体ノズル70および配管80(配管80a、80b)に設けられた各種機器とは別個に設けたが、これに限定されるものではなく、流体ノズル70および配管80に設けられた各種機器を、温調気体としての冷却用気体を供給する手段としても用いることができる。すなわち、蒸気発生器88からの有機溶剤蒸気の発生を停止するとともに、配管80aに設けられた加熱器87を停止させることにより、流体ノズル70からコールドNガスを乾燥チャンバー65内に噴射することができる。この場合、流体ノズル70および配管80に設けられた各種機器は、「揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給手段」、「基板に付着した乾燥ガスを除去するために不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段」および「温調気体としての加熱用気体を供給する温調気体供給手段」であることに加えて、「温調気体としての冷却用気体を供給する温調気体供給手段」でもあるということになる。
【0039】
また、乾燥チャンバー65の内部には、乾燥チャンバー65内の雰囲気を排出するための排気ノズル72が設けられている。この排気ノズル72には、乾燥チャンバー65内からの自然排気を行うための自然排気ラインと、乾燥チャンバー65内からの強制排気を行うための強制排気ラインとが設けられている。
【0040】
また、乾燥チャンバー65の内部には、乾燥チャンバー65内の温度を検出するための温度センサ94例えば熱電対が設けられている。温度センサ94の検出信号は、変換器95により温度信号に変換される。なお、温度センサ94が直接測定する「乾燥チャンバー65内の温度」とは、典型的には、乾燥チャンバー65の壁体温度(好ましくは壁体の内表面温度)である。しかしながら、温度センサ94が乾燥チャンバー65内の雰囲気温度を測定してもよく、この場合でも、乾燥チャンバー65内の雰囲気温度と乾燥チャンバー65の壁体温度との関係を実験により予め把握しておくことにより、乾燥チャンバー65内の雰囲気温度に基づいて乾燥チャンバー65の壁体温度を把握することができる。
【0041】
洗浄乾燥装置60は、この洗浄乾燥装置60の制御コンピュータであるコントローラ(制御部)100が発生する制御信号に基づいて動作する。コントローラ100は、基板処理システム1の全ての機能要素(例えば、アーム12、19、ウエハ配列装置21、ウエハ搬送装置22、各液処理装置32、34、36、洗浄乾燥装置60の各種構成部品、例えば乾燥チャンバー65の開閉機構、ウエハガイド64の昇降機構、各種ガスの供給機構の開閉弁82−84、流量制御弁85、86、89、加熱装置87、蒸気発生器88等)の動作を制御する。コントローラ100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラム及び処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号101で示されている。プロセッサ(演算部)102は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体101から呼び出して実行させ、これによってコントローラ100の制御の下で基板処理システム1の各機能要素が動作して所定の処理が行われる。
【0042】
コントローラ100の構成のうちの、洗浄乾燥装置60の動作に関連する部分について図3を参照して以下に説明する。コントローラ100は、バッチサイズ取得部104を有している。バッチサイズ取得部103は、基板処理システム1が設置された半導体製造工場のホストコンピュータから、処理スケジュールに関連するデータを受け取り、このデータから、これから洗浄乾燥装置60により行われる乾燥処理のバッチサイズ(1バッチ処理当たりのウエハ処理枚数)を取得する。バッチサイズ取得部103は、前述した第1の検出部40の過去のウエハ枚数の検出結果を照合することにより、ホストコンピュータから得られたウエハ枚数のデータが正しいか否かを確認することもできる。なお、バッチサイズ取得部103は、第1の検出部40の過去のウエハ枚数の検出結果に基づいて、これから洗浄乾燥装置60により行われる乾燥処理のバッチサイズを取得するように構成されていてもよい。
【0043】
また、コントローラ100は、様々なバッチサイズにそれぞれ対応する最適な乾燥チャンバー65内の搬入時温度を定めた搬入時温度データベース104を有している。バッチサイズと搬入時温度の関係は、バッチサイズ毎にパーティクル量が最も少なくなるような搬入時温度を実験により予め求めて、それを表形式あるいは数式形式(搬入時温度T=f(N)、但しNはバッチサイズ)の適当な関数として表現したものである。図3には、表形式で記載された搬入時温度データベース104が示されている。図3では、バッチサイズ1枚、5枚、25枚、50枚にそれぞれ対応する搬入時温度(図3中のブロック104内の表の右欄に「チャンバー内温度」と表示)が示されているが、実際には、1枚〜50枚の各バッチサイズに対応してそれぞれ搬入時温度が定められている。一般的には搬入時温度はバッチサイズの増大に応じて単調増加し、「バッチサイズがNの時の搬入時温度」<「バッチサイズがN+1の時の搬入時温度」の関係が通常は成立する。なお、バッチサイズと搬入時温度との間に上記のような関係が成立する理由は完全に解明はされてはいないが、発明者は以下のように考えている。すなわち、搬入時温度が最適値よりも低くなると、冷たい(常温の)ウエハWが搬入された際にウエハに熱を奪われたチャンバー壁内面の温度が低くなり、その結果、チャンバー壁内面上に凝縮するIPA(乾燥ガス)の量が増えて、ウエハW上に十分な量のIPAが凝縮せず、このためにパーティクルが生じやすくなるものと考えられる。一方で、搬入時温度が最適値よりも高くなると、ウエハW上にIPAが十分に凝縮する前にウエハ面内の水分が乾燥してしまい、その結果ウオーターマークが発生し、パーティクルが生じやすくなるものと考えられる。なお、バッチサイズ毎の搬入時温度の最適値は、乾燥チャンバー65の容積、チャンバー壁67の熱容量等に応じて変化する。
【0044】
コントローラ100はさらに搬入時温度設定部105を有しており、この搬入時温度設定部105は、バッチサイズ取得部103により認識したバッチサイズに適した乾燥チャンバー65内の搬入時温度を、搬入時温度データベース104を参照して決定し、その決定された温度を目標値として設定する。なお、バッチサイズ取得部103、搬入時温度データベース104および搬入時温度設定部105は、記憶媒体101により記憶されたプログラムおよびプロセッサ102、メモリ(図示せず)等からなるコンピュータハードウエアにより実現することができる。なお、図3中に示された温調時間算出部106については後述する。
【0045】
次に、基板処理システム1の動作について説明する。
【0046】
まず、所定枚数(ここでは25枚とする)のウエハWが収納された収納容器Cを、収納容器搬入出ステージ5に載せる。そして、収納容器搬入出ステージ5上の収納容器Cを収納容器搬送装置12により搬入用のウエハ出し入れステージ15へ搬送する。なお、複数の収納容器Cを繰り返し搬送する場合には、必要に応じて収納容器ストック部6の収納容器保持部材13に一旦保管した後に搬送を行ってもよい。次に、ウエハ出し入れステージ15に載置された収納容器Cについて、蓋体開閉機構17によりロックを外して蓋体を開け、次に第1の検出部40により壁部16の開口16aを介して収納容器C内のウエハWの検出を行う。
【0047】
第1の検出部40が収納容器C内のウエハWの検出を行った後、ウエハ移載装置19のウエハ保持アーム19aを、開口16aを介してウエハ出し入れステージ15上の収納容器C内に挿入してウエハWを取り出し、配列部21の第1配列機構21aに受け渡す。この動作と同時に、蓋体開閉機構17により、ウエハ出し入れステージ15上のウエハWを取り出した後の収納容器Cに蓋体を装着し、引き続きその収納容器Cを、収納容器搬送装置12によりいずれかの収納容器保持部材13へ搬送する。また、この動作の間に、下側扉70は開口16aを塞ぐ位置に戻る。
【0048】
その後、収納容器搬入出ステージ5上の次の収納容器C(ここにも25枚のウエハWが収納されているものとする)を収納容器搬送装置12により搬入用のウエハ出し入れステージ15へ搬送する。次に、ウエハ出し入れステージ15に載置された収納容器Cについて、蓋体開閉機構17によりロックを外して蓋体を開け、次に第1の検出部40により壁部16の開口16aを介して収納容器C内のウエハWの検出を行う。そして、ウエハ移載装置19のウエハ保持アーム19aにより、その収納容器C内のウエハWを取り出して、第1配列機構21aへ受け渡す。このときに、第1配列機構21aでは、ハーフピッチで50枚のウエハWが保持された状態となり、これをウエハ搬送装置22に受け渡す。
【0049】
次に、このようにしてウエハ搬送装置22に受け渡された2つの収納容器分のウエハWをまとめて洗浄処理ブロック4へ搬送し、一連の洗浄処理を行う。
【0050】
このとき、ウエハWは、まず、ウエハ搬送装置22により第1の薬液槽31の上方の位置に運ばれ、そこで搬送装置31aに受け渡され、第1の薬液槽31内で薬液処理を受ける。その後、ウエハWは、搬送装置31aにより第1の薬液槽31の上方の位置に引き上げられ、そこでウエハ搬送装置22に受け渡される。次いで、ウエハWは、ウエハ搬送装置22により第1の水洗槽32の上方の位置に運ばれ、そこで搬送装置32aに受け渡され、第1の水洗槽32内でリンス処理を受ける。同様にして、ウエハWは順次、第2の薬液槽33、第2の水洗槽34、第3の薬液槽35、第3の水洗槽36において所定の液処理を受ける。
【0051】
洗浄エリア7での洗浄処理が終了したウエハWは、ウエハ搬送装置22に渡された後、乾燥エリア8の洗浄乾燥装置60に搬入され、リンス処理(洗浄処理)および乾燥処理が順次施される。
【0052】
以下に、洗浄乾燥装置60において実行される一連の作用について、図4のフローチャートも併せて参照して説明する。
【0053】
最初に、ウエハガイド64を乾燥処理部61の乾燥チャンバー65内に位置させた状態で乾燥処理部61の乾燥チャンバー65を開状態とし、ウエハ搬送装置22からウエハガイド64に50枚のウエハWを渡す。続いてウエハガイド64を降下させて、保持したウエハWを洗浄槽69に貯留された純水に浸漬させ、その後シャッター63を閉じる。洗浄槽69に純水を供給して洗浄槽69から純水オーバーフローさせながらウエハWの純水リンス洗浄処理を行う(以上、ステップ1)。
【0054】
シャッター63を閉じた後に直ちに、乾燥チャンバー65の温調が開始される。温調にあたっては、まず、コントローラ100が、バッチサイズ取得部103により、半導体製造工場のホストコンピュータあるいは第1の検出部40の検出結果の記録から、洗浄槽69に収容されたウエハWの枚数(すなわちバッチサイズ)のデータを取得する(ステップ2)。次に、コントローラ100が、搬入時温度設定部105により、乾燥チャンバー65内の搬入時温度(基板搬入時乾燥チャンバー内温度)を搬入時温度データベース104に基づいて設定する(ステップ3)。バッチサイズが50枚であるならば、図3に示すように、搬入時温度は55℃に設定される。なお、上記のステップ2、3は、ステップ1よりも前に、あるいはステップ1と並行して行ってもよい。
【0055】
次に、設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度に基づいて、乾燥チャンバー65内の温調を行う(ステップS4)。この温調にあたっては、コントローラ100が、温度センサ94により検出された乾燥チャンバー65内温度(以下、簡便のため「実際温度Ta」とも呼ぶ)と搬入時温度設定部105により設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度(以下、簡便のため「設定温度Ts」とも呼ぶ)とを比較し、実際温度Taが設定温度Tsよりも低い場合には、流体ノズル70から例えば60〜70℃に温度調整されたホットNガスを乾燥チャンバー65内に噴射することにより、乾燥チャンバー65内を加熱する。実際温度Taが設定温度Tsよりも大幅に低い場合には、ホットNガスに加えて例えば70〜80℃に温度調整されたIPA蒸気を乾燥チャンバー65内に噴射してもよい。実際温度Taが設定温度Tsよりも高い場合には、Nガスノズル71から、コールドNガス(常温(クリーンルーム内温度とほぼ同じ温度)のNガス)を乾燥チャンバー65内に噴射することにより、乾燥チャンバー65内を冷却する。乾燥チャンバー65内の温調は、一定温度、一定流量の温調気体を用いて、温調時間を変化させることにより行うことができる。但し、実際温度Taの昇温速度は、温調流体(ホットNガス、IPA蒸気)の温度、流量により変化するため、流量調整バルブ85,86の開度、加熱器87および蒸気発生器88の加熱温度、排気ノズル72からの自然排気/強制排気の切換え等により調整することもできる。同様に、実際温度Taの降温速度は、温調流体(コールドNガス)の流量(温度は常温で一定)により変化するため、流量調整バルブ89の開度、排気ノズル72からの自然排気/強制排気の切換え等により調整することもできる。
【0056】
実際温度Taが設定温度Tsと同じになったら、或いは実際温度Taと設定温度Tsとの差が許容範囲内(例えば±1℃)となったら(ステップS5のYes)、乾燥処理の開始準備が整ったことになる。この時点において、洗浄槽69内での洗浄処理が終了しているなら、直ちに乾燥処理に移行する。洗浄槽69内での洗浄処理が終了していない場合には、上記の温調操作を継続しながら、洗浄槽69内での洗浄処理の終了を待ち、洗浄槽69内での洗浄処理が終了し次第、直ちに乾燥処理に移行する。
【0057】
乾燥処理への移行に際してはまず、乾燥チャンバー65と洗浄槽69との間を隔離しているシャッター63を開き、また、乾燥チャンバー65内に例えば70〜80℃に温度調整されたIPA蒸気の供給を開始して、乾燥チャンバー65内および洗浄槽69の上部にIPA蒸気雰囲気を形成する。この状態で、ウエハガイド64を上昇させてウエハWを乾燥チャンバー65内に収容される位置まで上昇させる(ステップS6)。次いで、シャッター63を閉じて洗浄槽69と乾燥チャンバー65とを隔離する。さらに引き続き所定時間チャンバー65内へのIPA蒸気の供給を継続する。このことにより、ウエハWの表面に付着している純水がIPAに置換される。
【0058】
所定時間、IPA蒸気を供給することによりウエハWの表面にIPAの液膜が形成されたら、チャンバー65内へのIPA蒸気の供給を停止し、続いてウエハW表面からIPA除去を行う。IPAの除去は、例えば40〜50℃に加熱されたNガスをチャンバー65内に供給してウエハWの表面からIPAを揮発、蒸発させ、その後に常温のNガスをチャンバー65内に供給してウエハWを所定の温度に冷却するという手順により行うことができる。以上によりウエハの乾燥処理が終了する(ステップS7)。
【0059】
乾燥処理が終了したウエハWは、ウエハ搬送装置22により、ハーフピッチで2つの収納容器分、例えば50枚垂直姿勢で搭載された状態でインターフェースブロック3のアンロード位置20bまで搬送される。
【0060】
アンロード位置20bまで搬送されたウエハWは、そこから配列部21の第2配列機構21bに2つの収納容器分のウエハWがハーフピッチのまま受け渡される。このときに、第2配列機構21bでは、ノーマルピッチで具体的には例えば25枚のウエハWが2つの収納容器分だけ保持された状態とするよう動作が行われる。
【0061】
その後、収納容器搬送装置12により搬出用のウエハ出し入れステージ15に空の収納容器Cを載置し、蓋体開閉機構17によりその蓋体を開けておく。次いで、ウエハ移載装置19の準備動作を行った後、ウエハ保持アーム19aを配列部21の第2配列機構21b内に挿入し、垂直姿勢で保持されている状態のウエハWを取り出す。その後、搬出用のウエハ出し入れステージ15上の空の収納容器Cに、壁部16の開口16bを介して、ウエハWを保持したウエハ保持アーム19aを挿入し、ウエハWを水平姿勢で搬入する。その後、ウエハ保持アーム19aを収納容器Cから出して、次に第2の検出部50により壁部16の開口16bを介して収納容器C内のウエハWの検出を行う。
【0062】
第2の検出部50により収納容器C内のウエハWの検出が行われた後、蓋体開閉機構17により収納容器Cの蓋体を閉じる。その後、洗浄処理が行われた後の状態のウエハWを収納した収納容器Cは、収納容器搬送装置12により収納容器搬入出ステージ5に搬送される。以上により、基板処理システム1における一連の処理が終了する。
【0063】
上記の実施形態によれば、乾燥チャンバー65内にウエハWが搬入される前に乾燥チャンバー65内の温度をバッチサイズに応じた適当な温度に調整しておくことにより、乾燥ムラが防止され、ウエハW表面上へのパーティクルの付着を低減することができる。
【0064】
上記の実施形態は、下記のように改変することができる。
上記実施形態では、洗浄処理部62の洗浄槽69内では、純水リンス処理のみを行うようにしていたが、洗浄処理部62に薬液(例えばDHF,APF、SPM)を供給することを可能とする構成(薬液供給機構)を付加して、洗浄乾燥装置60に前述した第1〜第3の薬液槽31、33、35による薬液処理の一部を受け持たせてもよい。この場合、洗浄槽69内に搬入されたウエハWに少なくとも1種類の薬液処理が施された後、洗浄槽69内の薬液が純水(DIW)に置換されてウエハWに純水リンス処理が施され、その後、ウエハWが乾燥処理部62の乾燥チャンバー65内に移動されて、ウエハWに乾燥処理が施される。この場合には、ウエハWが洗浄槽69内に搬入されてシャッター63が閉じられてから、ウエハWを洗浄槽69から乾燥チャンバー65に移すときに再びシャッター63が開かれるまでの間の時間が長くなる。このことにより、時間的余裕をもって乾燥チャンバー65内の温調を行うことができ、温調に関与する機構の負担を小さくでき、また、温調に付随して発生する費用を低く抑えることができる。例えば、ホットNガスの温度を低く抑えて電力消費を抑制することができ、ホットNガス(コールドNガス)の流量を小さくしてNガスの消費を抑制することができ、あるいは昇温のために高価なIPAを用いる必要がなくなる。
【0065】
上記実施形態では、洗浄槽69内にウエハWを搬入してシャッター63を閉じた後に乾燥チャンバー65の温調を開始していたが、洗浄槽69内にウエハWを搬入する前から乾燥チャンバー65の温調を行ってもよい。この場合、ウエハWの搬入時に乾燥チャンバー65を開放すると、乾燥チャンバー65内の雰囲気の多くは外部に逃げてしまうが、チャンバー壁67はある程度の熱容量を有しているので、ある程度温調の効果は残る。このため、ウエハWの搬入後に行われる温調に必要な時間を短縮することができる。上記の手順は、実際温度Taと設定温度Tsとの差が大きい場合に行うことが特に有益である。この場合には、図3のフローチャートは、ステップS2→S3→S4→S1→S4(二度目のS4以降は図3と同じ)に変更される。
【0066】
上記実施形態においては、図4のステップS5では、設定温度Tsと温度センサ94により検出された実際温度Taとのリアルタイムモードでの比較に基づいて温調完了を判断していたが、これには限定されない。設定温度Tsと初期の実際温度Taとの差がわかれば、温調気体の必要供給時間は、予め実験により求めた関係に基づいて演算によって求めることができるので、この演算に求めた必要供給時間だけ温調気体を供給したことをもって、温調完了の判断を行ってもよい。上記した温調気体の必要供給時間を演算する手段が、温調時間算出部106として図3に示されている。
【0067】
なお、温調気体の必要供給時間が洗浄槽69内での洗浄処理時間より長い場合には、上述したようにステップS1の前から乾燥チャンバー65内の温調を開始した方が好ましいため、ステップS2およびステップS3は、あるバッチ処理が施されたウエハWの乾燥チャンバー65からの搬出が終了した後であって次のバッチ処理が施されるウエハWが洗浄槽69内に搬入される前に、開始した方が好ましい。この場合のフローが図5に示されており、図3のフローとの相違点について簡単に説明する。図5のフローチャートにおいて図3と同じステップ番号は同じ動作を意味しているので、以下において重複説明は省略する。ステップS9において必要温調時間(温調気体の必要供給時間)が算出されると、この必要温調時間と洗浄槽69内での洗浄処理に必要な時間(具体的には例えば、洗浄槽69にウエハWを搬入しシャッター65を閉じてから、洗浄槽69から乾燥チャンバー65へのウエハWの移送のためにシャッター65を開くまでの時間)を比較することにより、洗浄槽69内にウエハWを搬入する前に乾燥チャンバー65内の温調を行っておいた方が好ましいか否かがわかる(ステップS10)。必要温調時間が洗浄処理に必要な時間より長いと、洗浄処理の終了後温調が完了するまでの時間、ウエハWを洗浄槽69内で待機させておかなければならない。ウエハWを洗浄槽69内で待機させることはスループットに悪影響を及ぼす可能性があるため、回避した方が好ましい。ステップS10で「好ましい(必要である)」と判断された場合には(ステップS10のYes)、洗浄槽69内にウエハWを搬入する前に乾燥チャンバー65内の温調が行われる(ステップ11)。ステップS10で必要無いと判断された場合は(ステップS10のNo)、洗浄槽69内にウエハWを搬入する前に乾燥チャンバー65内の温調が行われず、洗浄槽69内にウエハWを搬入した後に温調が行われる(ステップS4)。
【0068】
また、処理スケジュール次第では、バッチ処理とバッチ処理との間に比較的長い時間が空く場合がある。この場合、仮に乾燥チャンバー65内の温度が常温付近まで低下すると、再度の昇温には比較的長時間を要することになるため、これを防止するために、乾燥チャンバー65内の温度が所定温度以下に下がらないように、加熱用流体特にホットNガスを流しておくことも好ましい。
【0069】
上記実施形態では、乾燥チャンバー65内に収容されたウエハWに向けてガスを供給するように設けられた流体ノズル70およびNガスノズルを、乾燥チャンバー65の温調にも用いているが、効率よくチャンバー壁67を加熱、冷却するために、チャンバー壁67に向けてガスを吹き付ける一つまたは複数のノズルを別に設けてもよい。このようなノズルにガスを供給する機構は、流体ノズル70およびNガスノズル72にガスを供給する機構と同じものであってもよいし、別のものであってもよい。
【0070】
上記実施形態では、乾燥チャンバー65内を冷却する場合には、Nガスノズル72から常温(クリーンルーム内温度とほぼ同じ温度)のNガスを乾燥チャンバー内に供給したが、別のNガス供給ノズルから冷却機構を介して冷却したNガスを乾燥チャンバー65内に供給してもよい。
【符号の説明】
【0071】
61 乾燥処理部
62 洗浄処理部
65 乾燥チャンバー
69 洗浄槽
71 基板保持具(ウエハガイド)
70,80,83,86,92 乾燥ガス供給手段、温調気体供給手段
70,80,82,85,87,91 温調気体供給手段
71,81,84,89,93 不活性ガス供給手段、温調気体供給手段
94 温度センサ
100 制御部(コントローラ、制御コンピュータ)
101 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ式の基板処理装置において、
基板を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄槽を有する洗浄処理部と、
前記洗浄槽の上方に設けられた乾燥処理部と、を備え、
前記乾燥処理部は、
その中で基板の乾燥が行われる乾燥チャンバーと、
前記乾燥チャンバー内で基板を保持する基板保持具と、
前記乾燥チャンバー内に揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給手段と、
前記乾燥チャンバー内の温度を調整するための加熱用気体または冷却用気体を前記乾燥チャンバー内に供給する温調気体供給手段と、
前記乾燥チャンバー内の温度を測定する温度センサと、
前記温調気体供給手段の動作を制御する制御部と、を有しており、
前記制御部は、予め定められたバッチサイズと基板搬入時乾燥チャンバー内温度との関係に基づいて、前記乾燥チャンバー内で次に行われるバッチ処理のバッチサイズに対応する基板搬入時乾燥チャンバー内温度を設定し、次に行われるバッチ処理のために基板が前記乾燥チャンバー内に搬入される前に、前記乾燥チャンバー内の温度が前記設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度となるように前記温調気体供給手段を制御するように構成されている、基板処理装置。
【請求項2】
基板に付着した前記乾燥ガスを除去するための不活性ガスを前記乾燥チャンバー内に供給する不活性ガス供給手段をさらに備え、前記乾燥ガス供給手段および前記不活性ガス供給手段の少なくとも一方が、前記温調気体供給手段の少なくとも一部を構成している、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサにより測定された前記乾燥チャンバー内の実際温度と、設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度との差に基づいて、温調に必要な時間を算出し、それに基づいて温調の開始時点を決定するように構成されている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板のバッチ処理方法において、
基板にリンス処理を施す工程と、
乾燥チャンバー内に温調気体を供給して、乾燥チャンバー内の温度を調整する工程と、
温度が調整された前記乾燥チャンバー内にリンス処理後の基板を搬入する工程と、
前記基板に揮発性有機溶剤の蒸気からなる乾燥ガスを供給して、前記基板に付着しているリンス液を前記乾燥ガスで置換する工程と、
前記基板に不活性ガスを供給して、前記基板に付着している乾燥ガスを除去する工程と、
を備え、
前記乾燥チャンバー内の温度を調整する工程は、予め定められたバッチサイズと基板搬入時乾燥チャンバー内温度との関係に基づいて、前記乾燥チャンバー内で次に行われるバッチ処理のバッチサイズに応じて設定された基板搬入時乾燥チャンバー内温度に、前記乾燥チャンバー内の温度を調整する工程である、基板のバッチ処理方法。
【請求項5】
前記乾燥ガスおよび前記不活性ガスの少なくとも一方を、温調気体としても利用する、請求項4に記載の基板のバッチ処理方法。
【請求項6】
基板を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄槽を有する洗浄処理部と、前記洗浄槽の上方に設けられた乾燥処理部と、を備えたバッチ式の基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記憶媒体であって、前記プログラムを実行することによって前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板のバッチ処理方法を実行させるものにおいて、
前記基板のバッチ処理方法が、請求項4または5に記載の基板のバッチ処理方法である記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58696(P2013−58696A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197463(P2011−197463)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】