説明

基板処理装置

【課題】少量の処理液で基板上面全体を均一に処理することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】多孔ノズル32から基板Wの回転方向Aに沿って基板Wの上面に対して斜め上方から配列方向Xに沿って列状に処理液を吐出させる。しかも、基板Wの回転半径方向に伸びる線を回転半径線としたとき、基板Wの上面に着液する列状処理液を構成する処理液(液滴)の各々の着液位置が、回転半径線RL上から回転半径線RLに直交するオフセット方向Yに所定の距離S1だけずれるように、多孔ノズル32から処理液を吐出させる。その一方で、中心処理ノズル33から基板Wの回転中心A0に向けて処理液を吐出させて、基板Wの中心部に処理液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を回転させながら該基板に処理液を供給することによって基板に所定の処理を施す基板処理装置に関する。なお、基板には半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、基板に処理液としてフッ酸などの薬液を供給することによって基板上に不所望に形成される薄膜(不要物)をエッチング除去することが行われることがある。そこで、このような基板上に形成された薄膜を除去するために、例えば特許文献1に記載された基板処理装置が提案されている。
【0003】
この基板処理装置では、基板保持部によって基板がほぼ水平な状態で保持される。基板保持部には、鉛直方向に伸びる回転軸が取り付けられており、この回転軸をモータで回転駆動することで、基板中心と回転軸とをほぼ一致させた状態で、基板保持部が基板を保持したまま回転して基板を回転させている。また、基板保持部によって保持された基板の上方には、薬液供給ノズルが配置されており、基板中心(基板の上面の回転中心)付近に薬液を供給する。このとき、基板上面の中心付近に供給された薬液は、基板の回転に伴う遠心力の作用により拡散して基板上面全体に行き渡り、基板に対するエッチング処理が実行される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−237214号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように基板に対してエッチング処理する際には、基板上面の面内を均一にエッチング処理することが要求される。そこで、基板上面のエッチング処理の面内均一性を高めるために、基板上面の各部に薬液を速やかに行き渡らせる、つまり基板上面の各部にそれぞれ薬液が供給されるまでの時間差を少なくすることと、基板上面の各部に供給される薬液量を均一にすることが重要となっている。
【0006】
しかしながら、従来装置では、薬液供給ノズルから基板中心付近に供給された薬液を遠心力の作用により拡散させて基板の端縁部に薬液を供給しているため、基板中心付近に薬液が供給されるまでの時間と基板の端縁部に薬液が供給されるまでの時間との間に時間差が発生していた。特に、基板が液晶表示用ガラス基板のような角型基板である場合には、角型基板の中心付近と、角型基板の角部(4隅の部分)とでは、薬液が供給されるまでの時間に大きな時間差が発生していた。また、薬液供給ノズルから基板中心付近に供給した薬液を基板の端縁部に拡散させているために、基板中心部に供給される単位面積当たりの薬液量に対して基板端縁部に供給される単位面積当たりの薬液量が少なくなっていた。このような結果、従来装置では、基板上面全体を均一に処理することが阻害されていた。
【0007】
そこで、従来装置において、処理の均一性を高めるために、次のようなことが考えられる。すなわち、基板の端縁部にも処理に必要なだけの薬液が十分に供給されるように基板上面に供給する薬液量を増やすことが考えられる。しかしながら、このように薬液消費量を増加させることはそのままランニングコストの増大に直結するとともに、基板から排出される薬液の排液処理に要する設備にも相応の負担をかけることとなり、好ましくない。また、基板の回転速度を高めて、基板中心付近に供給された薬液を基板の端縁部に速く拡散させることも考えられるが、基板の高速回転に対応するため装置構成が複雑になるほか、装置の構成部品にさらなる耐久性が要求され、現実的ではない。特に、基板サイズが大型化していくと、基板中心から基板の端縁までの距離が長くなってしまい、基板の回転速度を高めて処理の均一化を図っていくにも限界がある。
【0008】
一方で、基板に供給する薬液量および/または基板の回転速度を増加させることなく、処理の均一性を高める方法として、薬液供給ノズルを基板上面に対向させながら、水平姿勢で回転される基板に対して薬液供給ノズルを水平移動させることも考えられる。具体的には、薬液供給ノズルから薬液を供給しながら、薬液供給ノズルを基板中心部に対応する位置と基板端縁部に対応する位置との間で往復移動させることにより、処理の均一化を図ることが考えられる。しかしながら、この場合、例えば薬液供給ノズルが基板端縁部に薬液を供給しているときには、基板中心部には薬液が供給されず、また、遠心力により基板中心から端縁部へと薬液が流れるので、基板中心部が部分的に乾燥してしまうという問題があった。その結果、かえって、処理の均一性を劣化させることとなっていた。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、少量の処理液で基板上面全体を均一に処理することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる基板処理装置の一態様は、基板を略水平姿勢で回転させながら該基板に処理液を供給して基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、基板を略水平姿勢で保持する基板保持手段と、基板保持手段を回転駆動して基板を所定の回転中心回りに回転させる回転駆動手段と、回転駆動手段により回転される基板の上面に向けて、基板の回転半径方向に略平行な所定の配列方向に沿って列状に処理液を吐出する第1吐出手段と、基板上面の回転中心に向けて処理液を吐出する第2吐出手段とを備え、基板の回転中心を通って基板の回転半径方向に伸びる線を回転半径線としたとき、第1吐出手段から吐出され基板上面に着液する列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置が、回転半径線上から該回転半径線に直交するオフセット方向に沿って所定の距離だけずれていることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明では、基板上面に向けて第1吐出手段より基板の回転半径方向に略平行な方向に沿って列状に処理液(列状処理液)を吐出しているので、比較的広範囲にわたって処理液が基板上面に同時に着液する。したがって、基板上面の各部に処理液が供給されるまでの時間差を最小限にとどめ基板上面の各部に所定量の処理液を供給することができる。しかも、列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置を、基板の回転中心を通って基板の回転半径方向に伸びる回転半径線上ではなく、該回転半径線上から回転半径線に直交する方向(オフセット方向)に沿って所定の距離だけずらしている。このように列状処理液を着液させることにより、次のような利点を有する。すなわち、基板上面に着液した処理液は、基板の回転に伴う基板の回転方向と反対方向に作用する反作用の力と、回転半径方向に作用する遠心力とが合成されたベクトルに従った方向および力の大きさにそって基板上面を流れ、基板外に排出されていく。ここで、列状処理液を構成する処理液の各々を回転半径線上に着液させた場合には、列状処理液を構成する各処理液(液滴)に作用する遠心力の方向(回転半径方向)は、すべて同一方向となる。その一方で、本願発明のように列状処理液を構成する処理液の各々を回転半径線上からずらして着液させることにより、列状処理液を構成する処理液の各々に作用する遠心力の方向(回転半径方向)は、互いに相違する方向となる。その結果、基板上面に着液した後の処理液(液滴)の軌跡が互いに異なり、基板上面における処理液の均一分散が促進される。
【0012】
さらに、この発明によれば、第1吐出手段に加えて第2吐出手段を設けて、該第2吐出手段より基板上面の回転中心に向けて処理液を吐出している。このため、第1吐出手段より吐出され基板上面に着液した処理液を基板の回転中心に十分に供給することができない、あるいは基板上面に着液した処理液の軌跡が基板の回転中心を外れる場合であっても、第2吐出手段により吐出される処理液によって、基板の回転中心に処理液を供給して基板中心部を確実に処理することができる。なお、第1および第2吐出手段は、それぞれ別体で構成して個別に配置するようにしてもよいし、一体的に構成して配置するようにしてもよい。
【0013】
このように、この発明によれば、第2吐出手段より吐出される処理液によって基板中心部を確実に処理しながらも、第1吐出手段より吐出される列状処理液によって基板上面の各部に速やかに処理液を供給することができ、基板上面を均一に処理することが可能となっている。したがって、基板上面に供給する処理液の量を増加させることなく、少量の処理液で基板上面全体を均一にして処理することができる。
【0014】
ここで、基板の回転中心を通ってオフセット方向に伸びる線と回転半径線とで基板上面を分割して規定される4つの象限のいずれかに第1吐出手段から吐出される列状処理液の着液位置が限定されるようにしてもよい。このような範囲に列状処理液の着液位置を限定しても、基板の回転により基板上面全体を均一に処理することができる。さらに、列状処理液の着液位置を限定することにより、処理液の消費量を効果的に低減することができる。
【0015】
また、第1吐出手段より吐出する処理液の吐出方向は任意である。例えば、基板上面に対して垂直に処理液を吐出してもよいし、基板上面に対して基板の回転方向に沿って斜め上方から列状に処理液を吐出するようにしてもよい。但し、後者のように処理液を吐出することで次のような効果が得られる。すなわち、基板の回転方向に沿って処理液を吐出することにより、基板上面に着液した処理液は、基板の回転に伴う基板の回転方向と反対方向に作用する反作用の力と回転半径方向に作用する遠心力を受けながらも、回転方向にならった吐出方向に沿って該吐出方向の前面側に押し広げられていく。したがって、少量の処理液で、より広範囲に処理液を均一分散させることができ、基板上面の各部に供給される単位面積当たりの処理液の供給量の均一性をさらに高めることができる。また、基板上面に垂直に処理液を吐出する場合に対して、基板上面に向けて吐出され基板上面に着液する処理液が、基板上面に既に供給された処理液と干渉するのを抑制することができる。例えば、基板上面に着液する処理液と、基板の回転とともに着液位置に移動してくる基板上面に付着する処理液との衝突により、基板上面の処理液の液面が盛り上がり、処理の均一性を劣化させることがあるが、このような現象の発生を防止することができる。
【0016】
また、第1吐出手段として基板の回転半径方向に略平行な配列方向に沿って複数の吐出孔を有する多孔ノズルを設けて、該複数の吐出孔の各々から処理液を吐出することが望ましい。このような構成によれば、上記した配列方向に沿って処理液を列状に基板に供給することができ、例えば半導体ウエハのような略円形の基板はもとより、液晶表示用ガラス基板のような角型基板に対して処理液を供給した際において、処理液を基板の端縁部に確実に行き渡らせることができ、処理液の浪費を抑制しつつ均一に基板を処理することが可能となる。
【0017】
ここで、長方形の角型基板を処理する場合には、第1吐出手段から吐出され角型基板の上面に着液する列状処理液の配列方向における長さを角型基板の短辺の半分の長さ以下にすることが好ましい。このような構成によれば、回転される角型基板の上面に対して列状処理液を確実に着液させることが可能となり、次のような効果が得られる。すなわち、列状処理液の配列方向における長さを角型基板の短辺の半分の長さよりも長くすると、基板の回転に伴い、第1吐出手段から吐出された列状処理液のうち基板の端縁側の処理液の一部が基板上面に供給されない状態(例えば列状処理液の配列方向と角型基板の短辺方向とが平行になった場合)が発生する。その状態から基板がさらに回転されると、角型基板の角部(4隅)が第1吐出手段から吐出された基板の端縁側の処理液を横から切ってしまい、処理液の跳ね返りを発生させる。このため、角型基板の上面に対して列状処理液を確実に着液させることにより、処理液の跳ね返りを防止して、基板を均一に処理することができる。特に、基板サイズが大きい場合には、角部の線速度も大きくなるため、上記のように列状処理液の配列方向における長さを設定することが、処理液の跳ね返りを防止する上で非常に有効となる。
【0018】
この発明にかかる基板処理装置の他の態様は、基板を略水平姿勢で回転させながら該基板に処理液を供給して基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、基板を略水平姿勢で保持する基板保持手段と、基板保持手段を回転駆動して基板を所定の回転中心回りに回転させる回転駆動手段と、回転駆動手段により回転される基板の上面に向けて、基板の回転半径方向に略平行な方向に沿って列状に、しかも基板の回転方向に沿って基板上面に対して斜め上方から処理液を吐出する吐出手段とを備え、吐出手段から吐出され基板上面に着液する列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置は、基板の回転中心を通って基板の回転半径方向に伸びる線を回転半径線としたとき、基板上面において以下の第1および第2条件を満足することを特徴としている。
【0019】
ここで、第1条件とは、回転半径線のうち基板の回転中心に対して一方側に伸びる線上から回転半径線に直交するオフセット方向に基板の回転方向と反対方向に所定の距離だけずれている構成である。また、第2条件とは、着液位置の基板の回転中心側の端部が、基板の回転中心を通ってオフセット方向に伸びる線に対して回転半径線のうち基板の回転中心に対して他方側に位置している構成である。
【0020】
このような構成によれば、吐出手段より基板の回転半径方向に略平行な配列方向に沿って列状に処理液(列状処理液)を吐出しているので、比較的広範囲にわたって基板上面の各部に処理液が供給されるまでの時間差を最小限にとどめ処理液を供給することができる。
【0021】
また、第1条件を満足することにより、基板上面に着液した列状処理液を構成する処理液の液滴の各々に作用する遠心力の方向(回転半径方向)は、互いに相違する方向となる。その結果、基板上面に着液した処理液(液滴)の軌跡が互いに異なり、基板上面における処理液の均一分散が促進される。さらに、基板の回転方向に沿って処理液を吐出することにより、基板上面に着液した処理液は吐出方向に沿って該吐出方向の前面側に押し広げられていく。したがって、少量の処理液で、より広範囲に処理液を均一に分散させることができる。
【0022】
また、第2条件を満足することにより、基板上面に着液した列状処理液のうち基板の回転中心側の端部に位置する処理液は、基板の回転中心を通過しながら基板の端縁側へと流れていく。具体的には、吐出手段からの吐出方向に作用する力のほか、基板の回転に伴う基板の回転方向と反対方向に作用する反作用の力と、回転半径方向に作用する遠心力とを受けながら処理液が基板中心部に供給され、分散しながら基板外に排出されていく。
【0023】
したがって、第1および第2条件を満足することにより、基板中心部を確実に処理しながらも、列状処理液によって基板上面の各部に速やかに処理液を供給することができ、基板上面を均一に処理することが可能となっている。その結果、基板上面に供給する処理液の量を増加させることなく、少量の処理液で基板を均一にして処理することができる。
【0024】
ここで、処理液の浪費を抑制しつつ均一に基板を処理するために、吐出手段として基板の回転半径方向に略平行な配列方向に沿って複数の吐出孔が設けられた多孔ノズルを設けて、該複数の吐出孔の各々から処理液を吐出するようにしてもよい。
【0025】
また、長方形の角型基板を処理する場合には、吐出手段から吐出され基板上面に着液する列状処理液の配列方向における長さLを以下の条件を満足するように設定するのが好ましい。つまり、
L≦Re・sinθ+(Wn/2)
ただし、
Re…角型基板の回転中心から列状処理液の角型基板の回転中心側の端部着液位置までの距離、
θ…角型基板の回転中心と列状処理液の角型基板の回転中心側の端部着液位置とを結ぶ線分と、角型基板の回転中心を通ってオフセット方向に伸びる線とがなす角、
Wn…角型基板の短辺の長さ、
に設定することが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、回転される角型基板の上面に対して列状処理液を確実に着液させることが可能となり、回転される角型基板の角部(4隅)が吐出手段から吐出された基板の端縁側の処理液を切ってしまうのを防止することができる。その結果、処理液の跳ね返りを防止して、基板を均一に処理することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、基板上面に列状に処理液を吐出することにより比較的広範囲にわたって基板上面の各部に処理液が供給されるまでの時間差を最小限にとどめ処理液を供給している。しかも、基板上面に着液する列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置を回転半径線上から回転半径線に直交するオフセット方向に沿って所定の距離だけずらすことにより、基板上面における処理液の均一分散を促進することができる。さらに、基板中心に向けて処理液を供給することにより、基板中心部を確実に処理している。したがって、基板中心部を確実に処理しながらも、列状処理液によって基板上面の各部に速やかに処理液を供給することができ、少量の処理液で基板上面全体を均一にして処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。この基板処理装置は、長方形の角型基板であるLCD用ガラス基板W(以下、単に「基板W」という)に処理液として希フッ酸等の薬液を供給して、該基板Wの上面に不所望に形成された薄膜(不要物)をエッチング除去する装置である。この装置は、図1に示すように、基板Wを略水平姿勢で保持する基板保持部1(基板保持手段)と、その基板保持部1を回転駆動する回転駆動部2と、基板保持部1に保持された基板Wの上面に処理液を供給する液吐出ノズル部3と、液吐出ノズル部3を上下方向および水平方向に移動させるノズル駆動部4と、基板Wから振り切られる液体を回収するカップ部5と、それぞれの装置各部を収納するハウジング6と、装置全体を制御する制御部(図示省略)とを備えている。
【0029】
この基板保持部1は、基板Wと同程度の平面サイズを有する基板支持板11と、この基板支持板11の上面に固着されて基板Wの周縁部を支持する周縁支持ピン12と、基板支持板11の上面に固着されて基板Wの下面中央部を支持する中央支持ピン13とを備えている。また、基板保持部1は、エッチング処理を実行することを考慮して耐薬品性樹脂で構成されている。
【0030】
周縁支持ピン12は基板Wの4角部に対応して配置される。各周縁支持ピン12は、基板Wの外周端縁を下方から支持する支持台121と、支持台121に支持された基板Wの外周端面に当接して基板Wの移動を規制する案内立ち上がり面122とを備えており、基板Wの周縁部を4箇所で支持している。なお、図1では、図面が煩雑になることを避けるために、2個の周縁支持ピン12のみを示している。また、中央支持ピン13は基板Wの中央部に対応して基板支持板11に4個配置されている。なお、中央支持ピン13の個数は4個に限定されるものではない。
【0031】
基板支持板11の下面には、中空の筒軸21の上方端部が取り付けられている。そして、この筒軸21の下方端部がベルト機構22を介してモータ23の回転駆動力が伝達されるように構成されている。このため、モータ23を駆動することで基板支持板11に保持された基板Wは回転中心(基板Wの中心)A0回りに回転される。このように、この実施形態では、モータ23とベルト機構22とを備える回転駆動部2が本発明の「回転駆動手段」として機能している。
【0032】
また、筒軸21は中空筒状の部材で構成され、その中心に沿って液ノズル16が配設されている。そして、液ノズル16には、液供給管161が貫通され、この液供給管161の上端が基板Wの下面中央部に臨んでおり、上端部に設けられたノズル孔162から基板Wの下面の回転中心付近に処理液として薬液や洗浄液を供給できるように構成されている。なお、ここでは、洗浄液として純水等が用いられている。
【0033】
さらに、筒軸21は基板支持板11の開口に臨んで延在し、基板支持板11に対して上側に位置することにより排出口17が開口されている。また、筒軸21と液ノズル16との間隙は流量調整弁86aを介して配管86が大気圧雰囲気に開放されるように構成されている。そして、排出口17において、この液ノズル16の側面と筒軸21内周面との間隙から大気圧雰囲気からのエアーが吐出される。また、液ノズル16の先端部には断面T字状に形成され、平坦な上面の中央部に処理液のノズル孔162が開口される。
【0034】
液ノズル16は配管80に接続されている。この配管80の基端部は2つに分岐されており、第1の分岐配管80aには薬液供給源81が接続され、第2の分岐配管80bには純水供給源82が接続されている。各分岐配管80a、80bには開閉弁83a、83bがそれぞれ設けられている。そして、制御部からの開閉指令に応じて開閉弁83bを開き、開閉弁83aを閉じることで、洗浄液(純水)が配管80を介して液ノズル16に圧送されて液ノズル16のノズル孔162から基板Wの下面に向けて供給される。また、制御部からの開閉指令に応じて開閉弁83aを開き、開閉弁83bを閉じることで、液ノズル16のノズル孔162から基板Wの下面に向けて薬液を供給できるようになっている。
【0035】
また、気体供給路163は、液ノズル16内に設けられるとともに、その下端部は、開閉弁84aが設けられた配管84を介して気体供給源85に連通接続されており、気体供給路163の上端部の吐出口から基板支持板11と基板Wの下面との間の空間に、清浄な空気や清浄な不活性ガス(窒素ガスなど)などの清浄な気体を供給できるように構成されている。
【0036】
モータ23やベルト機構22などは、この基板処理装置の底板としてのベース部材61上に設けられた円筒状のケーシング62内に収容されている。このケーシング62が、筒軸21の外周面に軸受け63を介して接続され、筒軸21を覆う状態となる。すなわち、モータ23から基板支持板11に接続する直前までの筒軸21の周囲をケーシング62で覆い、これに伴い筒軸21に下方に取り付けられたモータ23もカバーで覆った状態とする。
【0037】
液吐出ノズル部3は、ノズル本体30を備えており、ノズル本体30が基板保持部1に保持された基板Wの上方に上下方向および水平方向に移動自在に配設されている。ノズル本体30は支持アーム7の先端部に取り付けられており、この支持アーム7の他端部にはノズル駆動部4が連結されている。そのため、ノズル駆動部4が駆動されることで、ノズル本体30を後述する処理位置と、基板搬送手段(図示せず)により基板Wを搬入出する際に基板保持部1から退避した退避位置との間で移動可能に構成されている。ノズル駆動部4は、ノズル本体30と支持アーム7とを一体的に水平移動させる水平移動駆動源41と、ノズル本体30と支持アーム7とを一体的に上下方向に昇降させる昇降駆動源42とを備えている。これらの構成により、ノズル本体30を、水平移動駆動源41の駆動により基板Wの上面に平行に水平移動させるとともに、昇降駆動源42の駆動により上下移動させることが可能となっている。
【0038】
液吐出ノズル部3は、液ノズル16側と同様にして薬液と洗浄液とを選択的に切り換えて基板Wの上面に供給できるようになっている。すなわち、ノズル本体30には、液供給管31が接続され、液供給管31からノズル本体30に圧送される処理液をノズル本体30から基板保持部1に保持された基板Wの上面に供給できるように構成されている。この液供給管31は配管87に接続されている。そして、この配管87の基端部は2つに分岐されており、第1の分岐配管87aには薬液供給源81が接続され、第2の分岐配管87bには純水供給源82が接続されている。分岐配管87a、87bには開閉弁88a、88bがそれぞれ設けられている。そして、制御部からの開閉指令に応じて開閉弁88bを開き、開閉弁88aを閉じることで洗浄液(純水)がノズル本体30から基板Wの上面に向けて供給される。また、制御部からの開閉指令に応じて開閉弁88aを開き、開閉弁88bを閉じることで、ノズル本体30から基板Wの上面に向けて薬液を供給できるようになっている。
【0039】
図2は、液吐出ノズル部の構成および液吐出ノズル部から吐出された処理液の基板上面における着液位置を示す斜視図であり、図3は、その平面図である。具体的には、これらの図2および図3は、ノズル駆動部4の駆動により液吐出ノズル部3が基板Wの直上の処理位置に位置決めされ、該処理位置にて液吐出ノズル部3から基板Wの上面に向けて処理液を吐出している様子を示している。
【0040】
ノズル本体30は、基板Wの回転半径方向に略平行な配列方向X((+X)方向および(−X)方向)に伸びる筒状に構成されており、多孔ノズル32と中心処理ノズル33とを備えている。多孔ノズル32と中心処理ノズル33とは基板Wの配列方向Xに沿って結合され、一体的に構成されている。つまり、液供給管31からノズル本体30に処理液が圧送されることにより、多孔ノズル32と中心処理ノズル33とから処理液が基板Wの上面に向けて吐出されるように構成されている。
【0041】
多孔ノズル32には、配列方向Xに沿って一列に複数の吐出管321が等間隔に設けられている。これらの吐出管321はそれぞれ、吐出管321から吐出される処理液の直進性を高めるために後述の吐出方向に沿って延設された細径の円筒形状に構成されている。これにより、各吐出管321から吐出され基板Wの上面に処理液が着液する着液位置が相互に重なり、互いに干渉するのを防止することができる。また、吐出管321の先端に開口された吐出孔321aの開口径は、処理液の流量(吐出量)を絞る目的からφ1〜2mm程度となっている。したがって、液供給管31からノズル本体30に処理液が圧送されると、複数の吐出管321の各々の吐出孔321aから処理液が一斉に吐出方向に沿って吐出され、基板Wの上面に配列方向Xに沿って一列に処理液が供給される。このように、この実施形態では、多孔ノズル32が、本発明の「第1吐出手段」として機能している。
【0042】
一方、中心処理ノズル33には、吐出管331が延設されており、吐出管331の先端に開口された吐出孔331aは、基板Wの上面中心(回転中心A0)に向けられている。このため、液供給管31からノズル本体30に処理液が圧送されると、吐出孔331aから基板Wの回転中心A0に向けて処理液が吐出され、基板Wの中心部に処理液が供給される。このように、この実施形態では、中心処理ノズル33が、本発明の「第2吐出手段」として機能している。
【0043】
図4は、多孔ノズルから吐出される処理液の吐出方向を説明するための図である。多孔ノズル32の各吐出管321から吐出される処理液は、基板Wの回転方向Aに沿って基板Wの上面に対して斜め上方から入射される。このとき、基板Wの上面と処理液の吐出方向Fとのなす角αは、おおよそ30°〜60°に設定される。このように、処理液を吐出させることにより、基板Wの上面に着液した処理液は、基板Wの回転に伴う基板の回転方向Aと反対方向に作用する反作用の力と回転半径方向に作用する遠心力を受けながらも、回転方向Aにならった吐出方向Fに沿って該吐出方向Fの前面側に押し広げられていく。
【0044】
次に、図2および図3に戻って多孔ノズル32から吐出された処理液の基板Wの上面における着液位置について説明する。ここでは、基板Wの回転中心A0を通って基板Wの回転半径方向に伸びる任意の仮想線のうち、ノズル本体30の配列方向(X方向)に平行する仮想線を回転半径線RLとして、該回転半径線RLを基準として多孔ノズル32から吐出される処理液の着液位置について説明していく。ここで、回転半径線RLは、基板Wの上面に着液する処理液の着液位置を特定するために便宜的に導入するものであり、回転半径線RLそれ自体は、基板Wと多孔ノズル32(配列方向X)との配置関係に応じて任意に仮想的に描かれるものであって、基板Wの位置に対して特定されるものではない。
【0045】
多孔ノズル32から吐出され基板Wの上面に着液する列状処理液を構成する処理液(液滴)の各々の着液位置は、回転半径線RL上ではなく、回転半径線RL上から回転半径線RLに直交するオフセット方向Y((+Y)方向および(−Y)方向)に所定の距離S1(以下「オフセット距離」という)だけずれている。すなわち、回転半径線RL上からY方向にオフセット距離S1だけずらした位置に列状処理液が着液するように、多孔ノズル32から処理液を吐出させている。
【0046】
また、列状処理液の着液位置は、基板Wの上面において次のように限定されている。すなわち、基板Wの回転中心A0を通ってY方向に伸びる線CLと回転半径線RLとで基板Wの上面を分割して規定される4つの象限W1〜W4のうち、列状処理液の着液位置が象限W2内の領域に限定されている。これは、上記した基板Wの回転方向Aに沿って基板Wの上面に対して処理液を吐出するという要請と、処理液の消費量を抑制するためである。このように列状処理液の着液位置を限定しても、基板Wの回転により着液した処理液が拡散され、中心処理ノズル33から供給される処理液と合わせて基板Wの上面全体を処理することが可能である。なお、中心処理ノズル33により基板Wの中心部を処理する限り、多孔ノズル32から吐出される列状処理液の着液位置を象限W1内の領域に限定するようにしてもよい。
【0047】
さらに、基板Wの上面に着液する列状処理液のX方向の長さL1が、基板Wの短辺の長さWnの半分以下となるように、多孔ノズル32から処理液を吐出させている。このように、列状処理液の長さL1を規定することにより、回転される基板Wの上面に対して列状処理液を確実に着液させることが可能となっている。
【0048】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。ここでは、基板保持部1に保持された基板Wに対して処理液として希フッ酸等の薬液を供給して基板Wの上面に不所望に形成された薄膜をエッチング除去する場合について説明する。
【0049】
基板搬送手段により未処理の基板Wが装置内に搬入され、基板保持部1に保持されると、ノズル駆動部4の駆動によりノズル本体30が退避位置から処理位置に移動される。基板保持部1に保持された基板Wは、モータ23が駆動されることで、基板Wの回転中心A0回りに所定の回転速度で回転される。このようなエッチング処理において、基板Wの回転速度は、およそ50〜200rpm、好ましくは50〜150rpmに設定される。
【0050】
続いて、ノズル本体30から基板Wの上面に向けて薬液が吐出される。具体的には、多孔ノズル32から基板Wの上面に対して基板Wの回転方向Aに沿って斜め上方から列状に(一列に)薬液が吐出されるとともに、中心処理ノズル33から基板Wの上面の回転中心A0に向けて薬液が吐出される。多孔ノズル32から吐出された列状薬液を構成する薬液(液滴)の各々は、基板Wの上面において、回転半径線RLから(+Y)方向にオフセット距離Sだけずれた位置に着液する。ここで、基板Wがいわゆる第4世代(基板サイズ:730mm×920mm)のガラス基板である場合には、処理の均一性の観点からオフセット距離Sは、およそ40mm〜60mmに設定するのが好適である。勿論、オフセット距離Sは、処理対象となる基板サイズに応じて適宜、適正な距離に設定される。
【0051】
図5は、多孔ノズルから吐出され基板上面に着液した薬液に作用する力の方向を示した模式図である。基板Wの上面に着液した列状薬液を構成する各薬液(液滴)には、(1)基板Wの回転方向Aと反対方向に作用する反作用の力fr,fr,…frと、(2)回転半径方向に作用する遠心力fc,fc,…fcと、(3)回転方向Aにならった吐出方向Fに作用する力fd,fd,…fdとが合成されたベクトルに従った方向および力の大きさに沿って基板Wの上面を流れ、基板外に排出されていく。ここで、仮に列状薬液を構成する薬液の各々を回転半径線RL上に着液させた場合には、列状薬液を構成する各薬液(液滴)に作用する遠心力の方向(回転半径方向)は、すべて同一方向となる。その一方で、図5に示すように列状薬液を構成する薬液の各々を回転半径線RL上からY方向にずらして着液させることにより、列状薬液を構成する薬液の各々に作用する遠心力fc,fc,…fcの方向(回転半径方向)は、互いに相違する方向となる。その結果、基板Wの上面に着液した後の薬液(液滴)の軌跡が互いに異なり、基板Wの上面における薬液の均一分散が促進される。
【0052】
しかも、基板Wの回転方向Aに沿って斜め上方から薬液を吐出しているので、基板Wの上面に着液した薬液は回転方向Aにならった吐出方向Fに沿って該吐出方向Fの前面側に押し広げられていく。したがって、少量の薬液で、より広範囲に薬液を均一分散させることができ、基板Wの上面の各部に供給される単位面積当たりの薬液の供給量の均一性をさらに高めることができる。さらに、基板Wの上面に垂直に薬液を吐出する場合に対して、次のような有利な効果を有する。すなわち、基板Wの上面に向けて吐出され基板Wの上面に着液する薬液が、基板Wの上面に既に供給された薬液と干渉するのを抑制することができる。例えば、基板Wの上面に着液する薬液と、基板Wの回転とともに着液位置に移動してくる基板Wの上面に付着する薬液との衝突により、基板Wの上面で薬液の液面が盛り上がり、エッチング処理の均一性を劣化させることがあるが、このような現象の発生を防止することができる。
【0053】
また、基板Wの上面に着液する列状薬液の配列方向(X方向)の長さL1が、角型基板である基板Wの短辺の長さWnの半分以下となっているので、回転される基板Wの上面に対して列状薬液を確実に着液させることができる。これにより、次のような効果が得られる。すなわち、列状薬液のX方向における長さL1を角型基板の短辺の長さWnの半分よりも長くすると、基板Wの回転に伴い、多孔ノズル32から吐出された列状薬液のうち基板Wの端縁側の薬液の一部が基板Wの上面に供給されない状態(例えば列状薬液の配列方向Xと基板Wの短辺方向とが平行になった場合)が発生する。その状態から基板Wがさらに回転されると、基板Wの角部(4隅)が多孔ノズル32から吐出された基板Wの端縁側の薬液を横から切ってしまい、薬液の跳ね返りを発生させる。このため、上記のように基板Wの上面に対して列状薬液を確実に着液させることにより、薬液の跳ね返りを防止して、基板Wを均一にエッチング処理することができる。
【0054】
以上のように、この実施形態によれば、複数の吐出孔321aを有する多孔ノズル32から配列方向Xに沿って列状に薬液を吐出しているので、比較的広範囲にわたって薬液を基板Wの上面に同時に着液させることができる。したがって、基板Wの上面の各部に薬液が供給されるまでの時間差を最小限にとどめ基板Wの上面の各部に所定量の薬液を供給することができる。
【0055】
また、この実施形態によれば、列状薬液を構成する薬液の各々の着液位置を回転半径線RL上から回転半径線RLに直交するオフセット方向Yに沿って所定の距離(オフセット距離)Sだけずらしている。その結果、基板Wの上面に着液した薬液(液滴)の軌跡が互いに異なり、基板Wの上面における薬液の均一分散が促進される。さらに、基板Wの回転方向Aに沿って薬液を吐出させているので、基板Wの上面に着液した薬液は吐出方向Fに沿って該吐出方向Fの前面側に押し広げられ、少量の薬液で、より広範囲に薬液を均一に分散させることができる。
【0056】
また、この実施形態によれば、中心処理ノズル33より基板Wの回転中心A0に向けて薬液を吐出している。このため、多孔ノズル32より吐出され基板Wの上面に着液した薬液を基板Wの回転中心A0に十分に供給することができない、あるいは基板Wの上面に着液した薬液の軌跡が基板Wの回転中心A0を外れる場合であっても、中心処理ノズル33により吐出される薬液によって、基板Wの中心部を確実にエッチング処理することができる。
【0057】
このように、この実施形態によれば、中心処理ノズル33より吐出される薬液によって基板Wの中心部を確実にエッチング処理しながらも、多孔ノズル32より吐出される列状薬液によって基板Wの上面の各部に速やかに薬液を供給することができ、基板Wの上面を均一にエッチング処理することが可能となっている。したがって、基板Wの上面に供給する薬液の量を増加させることなく、少量の薬液で基板Wの上面全体を均一にしてエッチング処理することができる。
【0058】
<第2実施形態>
図6は、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図7は図6の基板処理装置の要部拡大図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、多孔ノズルのみから供給される薬液で基板Wの上面に対してエッチング処理を施している点であり、そのように処理するために多孔ノズルから吐出され基板Wの上面に着液する薬液の着液位置を変更している。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同様であり、第1実施形態と対比しながら、第2実施形態の特徴について以下に詳述する。
【0059】
この第2実施形態にかかる基板処理装置で採用されるノズル本体30は、多孔ノズル34(本発明の「吐出手段」に相当)のみからなり、その構成は第1実施形態で用いられた多孔ノズル32と同様である。すなわち、多孔ノズル34には、配列方向(X方向)に沿って一列に複数の吐出管341が等間隔に延設され、各吐出管341の吐出孔341aから基板Wの上面に対して斜め上方から薬液が吐出されるよう構成されている。また、基板Wの上面に着液する列状薬液を構成する薬液の各々の着液位置が、オフセット方向(Y方向)に所定の距離(オフセット距離)だけずれるように、多孔ノズル34から薬液を吐出させている。なお、オフセット距離S2については、薬液の均一分散とともに、基板Wの中心部に薬液を確実に供給するという観点から、基板Wの回転速度等も考慮して適宜、設定される。
【0060】
その一方で、第1実施形態においては、基板Wの回転中心A0を通ってY方向に伸びる線CLと回転半径線RLとで基板Wの上面を分割して規定される4つの象限W1〜W4のうち、列状薬液の着液位置を象限W2内の領域に限定していたが、この第2実施形態では、列状薬液の一部を象限W3内の領域に着液させている。つまり、基板Wの上面に着液する列状薬液を構成する薬液(液滴)の着液位置が以下の第1および第2条件を満足するように、多孔ノズル34から薬液を吐出させている(図7)。
【0061】
第1条件:回転半径線RLのうち基板Wの回転中心A0に対して一方側(+X方向)に伸びる線上からY方向に基板Wの回転方向Aと反対方向に所定の距離(オフセット距離)S2だけずれている。つまり、回転半径線RLのうち基板Wの回転中心A0に対して+X方向に伸びる線上から+Y方向にオフセット距離S2だけずれている。
【0062】
第2条件:列状薬液の着液位置の基板Wの回転中心側の端部Peが、基板Wの回転中心A0を通ってY方向に伸びる線CLに対して、回転半径線RLのうち基板Wの回転中心A0に対して他方側(−X方向)に位置している。
【0063】
このように、列状薬液を着液させることにより、基板Wの回転により、列状薬液のうち基板Wの回転中心側の端部Peに位置する薬液は、基板Wの回転中心A0を通過しながら基板Wの端縁側へと流れていく。具体的には、基板Wの回転中心側の端部Peに位置する薬液には、吐出方向に作用する力のほか、基板Wの回転方向Aと反対方向に作用する反作用の力と、回転半径方向に作用する遠心力が働き、それらの合力に従って薬液が基板Wの中心部に供給され、分散しながら基板外に排出されていく。
【0064】
ここで、基板Wの回転中心A0から列状薬液の基板Wの回転中心側の端部着液位置Peまでの距離をReとし、基板Wの回転中心A0と列状薬液の基板Wの回転中心側の端部着液位置Peとを結ぶ線分と、基板Wの回転中心A0を通ってY方向に伸びる線CLとがなす角をθとすると、Re・sinθに相当する長さが象限W2から象限W3へと列状薬液の着液位置がシフトされた量となる。このようなシフト量(Re・sinθに相当する長さ)は、オフセット距離S2,基板Wの回転速度、基板Wの上面の状態、使用する薬液の表面張力の大きさ等の諸条件を勘案して、象限W3内に着液した薬液が基板Wの回転中心A0を通るように設定される。
【0065】
また、角型基板Wの上面に着液する列状薬液の配列方向(X方向)の長さL2が、以下の不等式、つまり、
L2≦Re・sinθ+(Wn/2)
ただし、Wn…角型基板の短辺の長さ、
を満足するように、多孔ノズル34から処理液を吐出させている。このように、列状薬液の長さL2を規定することにより、回転される基板Wの上面に対して列状薬液を確実に着液させることができる。これにより、回転される基板Wの角部(4隅)が多孔ノズル34から吐出された基板Wの端縁側の薬液を切ってしまうのを防止することができる。その結果、薬液の跳ね返りを防止して、基板Wを均一にエッチング処理することができる。
【0066】
以上のように、この実施形態によれば、第1実施形態と同様にして多孔ノズル34より基板Wの回転半径方向に略平行な配列方向Xに沿って列状に薬液(列状薬液)を吐出しているので、比較的広範囲にわたって基板Wの上面の各部に薬液が供給されるまでの時間差を最小限にとどめ薬液を供給することができる。
【0067】
また、この実施形態によれば、上記第1条件を満足することにより、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、基板Wの上面に着液した薬液(液滴)の軌跡が互いに異なり、基板Wの上面における薬液の均一分散が促進される。さらに、基板Wの回転方向Aに沿って薬液を吐出することにより、基板Wの上面に着液した薬液は吐出方向に沿って該吐出方向の前面側に押し広げられ、少量の薬液で、より広範囲に薬液を均一に分散させることができる。
【0068】
また、この実施形態によれば、上記第2条件を満足することにより、基板Wの上面に着液した列状薬液のうち基板Wの回転中心側の端部Peに位置する薬液を基板Wの中心部に供給することが可能となり、基板Wの中心部をエッチング処理することができる。
【0069】
したがって、第1および第2条件を満足することにより、基板Wの中心部を確実に処理しながらも、列状薬液によって基板Wの上面の各部に速やかに薬液を供給することができ、基板Wの上面を均一にエッチング処理することが可能となっている。その結果、基板Wの上面に供給する薬液の量を増加させることなく、少量の薬液で基板Wを均一にして処理することができる。しかも、中心処理用のノズルを設けることなく、各吐出管341から同一条件で薬液を吐出しているので、エッチング処理の均一性が一層に高められる。
【0070】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態では、ノズル本体30に多孔ノズル32と中心処理ノズル33とが設けられ、多孔ノズル32と中心処理ノズル33とを一体的に構成しているが、これに限定されない。例えば図8に示すように、多孔ノズル32とは別に、中心処理ノズル35を別体に設けて、多孔ノズル32と中心処理ノズル35とを個別に配置してもよい(第3実施形態)。このように構成することで、基板Wの中心部を確実に処理しながら、中心処理ノズル35の配設位置にかかわりなく、処理内容に応じて多孔ノズル32から吐出する処理液の吐出方向、列状処理液の着液位置等の処理パラメータを自在に変更することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、多孔ノズル32,34から基板Wの上面に対して斜め上方から処理液(列状処理液)を吐出しているが、処理液の吐出方向は任意である。例えば基板Wの上面に対して垂直に処理液を吐出してもよい。このように構成しても、列状処理液の着液位置が回転半径線RL上からオフセット方向Yにずれている限り、基板Wに着液した処理液(液滴)の軌跡が互いに異なり、処理液の均一分散が促進される。したがって、少量の処理液で、基板Wの上面全体を均一にして処理することができる。この場合、基板Wの回転方向Aと吐出方向とは直交関係にあるので、基板Wの回転中心A0を通ってY方向に伸びる線CLと回転半径線RLとで基板Wの上面を分割して規定される4つの象限W1〜W4のいずれかに列状処理液の着液位置が限定されることはない。
【0072】
また、上記実施形態では、多孔ノズル32,34に複数の吐出管をX方向(配列方向)に沿って一列に配設して、複数の吐出管の各々から吐出され基板Wの上面に着液する各処理液の着液位置が一列に配列するようにしているが、処理液の配列形状はこれに限定されない。例えば、複数の吐出管の各々から吐出され基板Wの上面に着液する各処理液の着液位置が、Y方向(オフセット方向)において互いに異なるように、弓なり状にあるいは千鳥状に配列方向Xに沿って配列させるように、多孔ノズルの構成を変更してもよい。要は、複数の吐出管の各々から吐出され基板Wの上面に着液する各処理液の着液位置が相互に干渉しないように、配列方向Xに沿って列状に処理液を吐出させる限り、多孔ノズルの構成は任意である。
【0073】
また、上記実施形態では、多孔ノズル32,34に設けられた複数の吐出管より処理液を吐出させることで、列状処理液を基板Wに供給しているが、これに限定されない。例えば複数の吐出ノズルを個別に配列方向Xに沿って列状に配置して、各吐出ノズルから処理液を吐出させることにより、列状処理液を基板Wに供給するようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、多孔ノズル32,34には、複数の吐出管が延設されているが、複数の吐出管を設けることなく、配列方向Xに伸びる管に配列方向Xに沿って複数の吐出孔を穿設するようにしてもよい。さらに、多孔ノズルに限らず、配列方向Xに伸びるように開口されたスリットノズルを用いてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、希フッ酸等による薬液を基板Wに供給して基板Wに対してエッチング処理を施す場合について説明しているが、基板処理の内容はこれに限定されない。例えば、処理液として純水等の洗浄液を用いて、該洗浄液に超音波振動を付与しながら列状に洗浄液を回転する基板Wに供給して、基板Wに対して洗浄処理を施す装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用基板、あるいは磁気ディスク用のガラス基板やセラミック基板などを含む各種基板を回転させながら該基板に処理液を供給して、基板に対して所定の処理を施す基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】液吐出ノズル部の構成および液吐出ノズル部から吐出された処理液の基板上面における着液位置を示す斜視図である。
【図3】液吐出ノズル部の構成および液吐出ノズル部から吐出された処理液の基板上面における着液位置を示す平面図である。
【図4】多孔ノズルから吐出される処理液の吐出方向を説明するための図である。
【図5】多孔ノズルから吐出され基板上面に着液した薬液に作用する力の方向を示した模式図である。
【図6】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】図6の基板処理装置の要部拡大図である。
【図8】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1…基板保持部(基板保持手段)
2…回転駆動部(回転駆動手段)
32…多孔ノズル(第1吐出手段)
33,35…中心処理ノズル(第2吐出手段)
34…多孔ノズル(吐出手段)
321a,341a…複数の吐出孔
A…(基板の)回転方向
A0…(基板の)回転中心
CL…オフセット方向に伸びる線
L1,L2…列状処理液の配列方向における長さ
RL…回転半径線
W…基板
W1〜W4…(基板の回転中心を通ってオフセット方向に伸びる線と回転半径線とで基板上面を分割して規定される)4つの象限
X…配列方向
+X…回転半径線のうち基板の回転中心に対して一方側
−X…回転半径線のうち基板の回転中心に対して他方側
Y…オフセット方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を略水平姿勢で回転させながら該基板に処理液を供給して前記基板に対して所定の処理を施す基板処理装置において、
基板を略水平姿勢で保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段を回転駆動して前記基板を所定の回転中心回りに回転させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段により回転される前記基板の上面に向けて、前記基板の回転半径方向に略平行な所定の配列方向に沿って列状に処理液を吐出する第1吐出手段と、
前記基板上面の回転中心に向けて処理液を吐出する第2吐出手段と
を備え、
前記基板の回転中心を通って前記基板の回転半径方向に伸びる線を回転半径線としたとき、前記第1吐出手段から吐出され前記基板上面に着液する前記列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置が、前記回転半径線上から該回転半径線に直交するオフセット方向に所定の距離だけずれていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1吐出手段は、複数の吐出孔が前記配列方向に沿って設けられた多孔ノズルを備え、
前記多孔ノズルは前記複数の吐出孔の各々から処理液を吐出することで、前記基板上面に前記列状処理液を供給する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1吐出手段は、前記基板の回転中心を通って前記オフセット方向に伸びる線と前記回転半径線とで前記基板上面を分割して規定される4つの象限のいずれかに前記着液位置が限定されるように、処理液を吐出する請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1吐出手段は、前記基板の回転方向に沿って前記基板上面に対して斜め上方から列状に処理液を吐出する請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板として長方形の角型基板に前記所定の処理を施す請求項3または4記載の基板処理装置であって、
前記第1吐出手段から吐出され前記角型基板の上面に着液する前記列状処理液の前記配列方向における長さは、前記角型基板の短辺の半分の長さ以下である基板処理装置。
【請求項6】
基板を略水平姿勢で回転させながら該基板に処理液を供給して前記基板に対して所定の処理を施す基板処理装置において、
基板を略水平姿勢で保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段を回転駆動して前記基板を所定の回転中心回りに回転させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段により回転される前記基板の上面に向けて、前記基板の回転半径方向に略平行な所定の配列方向に沿って列状に、しかも前記基板の回転方向に沿って前記基板上面に対して斜め上方から処理液を吐出する吐出手段と
を備え、
前記吐出手段から吐出され前記基板上面に着液する前記列状処理液を構成する処理液の各々の着液位置は、前記基板の回転中心を通って前記基板の回転半径方向に伸びる線を回転半径線としたとき、前記基板上面において以下の条件を満足することを特徴とする基板処理装置。
第1条件:前記回転半径線のうち前記基板の回転中心に対して一方側に伸びる線上から前記回転半径線に直交するオフセット方向に前記基板の回転方向と反対方向に所定の距離だけずれている。
第2条件:前記着液位置の前記基板の回転中心側の端部が、前記基板の回転中心を通って前記オフセット方向に伸びる線に対して、前記回転半径線のうち前記基板の回転中心に対して他方側に位置している。
【請求項7】
前記吐出手段は、複数の吐出孔が前記配列方向に沿って設けられた多孔ノズルを備え、
前記多孔ノズルは前記複数の吐出孔の各々から処理液を吐出することで、前記基板上面に前記列状処理液を供給する請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板として長方形の角型基板に前記所定の処理を施す請求項6または7記載の基板処理装置であって、
前記吐出手段から吐出され前記角型基板の上面に着液する前記列状処理液の前記配列方向における長さLが以下の条件を満足することを特徴とする基板処理装置。
L≦Re・sinθ+(Wn/2)
ただし、
Re…前記角型基板の回転中心から前記列状処理液の前記角型基板の回転中心側の端部着液位置までの距離、
θ…前記角型基板の回転中心と前記列状処理液の前記角型基板の回転中心側の端部着液位置とを結ぶ線分と、前記角型基板の回転中心を通って前記オフセット方向に伸びる線とがなす角、
Wn…前記角型基板の短辺の長さ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−180144(P2007−180144A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374571(P2005−374571)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】