説明

基板処理装置

【課題】気化ガスの再液化物や再固化物を供給管内から十分に除去する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置101は、基板を収容する処理室201と、処理室201内に処理ガスを供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段の少なくとも一部のガス供給管内の雰囲気を排出する排出手段と、溶剤を供給する溶剤供給手段と、コントローラ280と、を有し、前記ガス供給手段は、液体または固体材料を気化させた気化ガスを供給する気化ガス供給管を少なくとも備え、コントローラ280は、少なくとも前記排出手段と溶剤供給手段を制御することで、前記気化ガス供給管内への前記溶剤の供給と排出とを交互に所定回数繰り返して、前記気化ガス供給管内の洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に関し、特に処理ガスを半導体ウエハ上に供給して成膜を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の処理ガスをウエハ上へ交互に照射して成膜を行うALD(atomic layer deposition)法や処理ガスをウエハ上に供給して成膜を行うCVD(chemical vapor deposition)法等では、原料となる液体または固体材料を気化した気化ガスを処理室へ供給することにより、ウエハ上に薄膜を形成する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような場合には、気化ガスが供給管内で再液化又は再固化すると、その供給管内でパーティクルが発生したり、気化ガスの供給量を所望の量に制御できなかったりするといった問題がある。このとき、気化ガスの供給管に対し真空引きと不活性ガスのパージとを実施して供給管内に残留した気化ガスの再液化物や再固化物を除去しようとしても、十分に除去することができない。
【0004】
本発明の主な目的は、液体または固体材料を気化させた気化ガスの再液化物や再固化物を気化ガス供給管内から十分に除去することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明に係る基板処理装置は、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記ガス供給手段の少なくとも一部のガス供給管内の雰囲気を排出する排出手段と、
溶剤を供給する溶剤供給手段と、
制御部と、
を有し、
前記ガス供給手段は、液体または固体材料を気化させた気化ガスを供給する気化ガス供給管を少なくとも備え、
前記制御部は、少なくとも前記排出手段と溶剤供給手段を制御することで、前記気化ガス供給管内への前記溶剤の供給と排出とを交互に所定回数繰り返して、前記気化ガス供給管内の洗浄を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、気化ガス供給管内に対し溶剤の供給と排出とを交互に繰り返して当該気化ガス供給管内の気化ガスの再液化物や再固化物を溶剤で洗浄するから、気化ガスの再液化物や再固化物を気化ガス供給管内から十分に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための好ましい形態について説明する。本実施形態に係る基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC(Integrated Circuit))の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。下記の説明では、基板処理装置の一例として、ウエハに対しALD法による成膜処理などを行う縦型の装置を使用した場合について述べる。
【0008】
図1は、本発明の好ましい実施形態で使用される基板処理装置の概略構成を示す斜透視図である。
図1に示されているように、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用される。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工場内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。
【0009】
カセットステージ114は、工場内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0010】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0011】
また、カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0012】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されており、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0013】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111の右側端部に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ボート217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0014】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0015】
処理炉202の下方にはボート217を処理炉202に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ115が設けられ、ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0016】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0017】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられておりクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0018】
ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134bが設置されており、クリーンユニット134bから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0019】
次に、基板処理装置101の動作について説明する。
工場内搬送装置(図示せず)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向けるように、筐体後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0020】
次に、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0021】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、移載室(図示せず)の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0022】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0023】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理(後述参照)が実施される。処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110は筐体111の外部へ払出される。
【0024】
図2は、本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉とそれに付属する部材との概略構成図であり、特に処理炉部分を縦断面で示している。図3は図2のA−A線断面図である。図4は、本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉への処理ガスの供給に際して、その処理ガスの供給源となるガス供給源とそれに関連する部材との概略構成を示す図面である。
【0025】
図2及び図3に示されているように、ヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応管203が設けられている。反応管203の下端には、例えばステンレス等により構成されたマニホールド209が気密部材であるOリング220を介して設けられている。マニホールド209の下端開口は蓋体であるシールキャップ219によりOリング220を介して気密に閉塞されている。少なくとも、反応管203、マニホールド209及びシールキャップ219により処理室201が形成されている。
【0026】
シールキャップ219にはボート支持台218を介して基板保持部材であるボート217が立設され、ボート支持台218はボート217を保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理室201に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0027】
処理室201へは複数種類、ここでは2種類の処理ガスを供給する2本のガス供給管(ガス供給管232a,ガス供給管232b)が設けられている。
【0028】
ガス供給管232aの一方側には、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ノズル233aが設けられ、ノズル233aの側面には処理ガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0029】
ガス供給管232bの一方側にも、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ノズル233bが設けられ、ノズル233bの側面には処理ガスを供給する供給孔であるガス供給孔248bが設けられている。このガス供給孔248bは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
ガス供給管232a,232bの他方側には、処理室201の内部に供給しようとする処理ガスの供給源となるガス供給源250が設けられている。
【0031】
図4に示すように、ガス供給源250では、原料となる液体材料301を貯留した原料槽300と、その液体材料301を溶解可能な溶剤401を貯留した溶剤槽400と、これら原料槽300,溶剤槽400へのキャリアガスの供給源となる2つのキャリアガス源350,450とが設けられている。
【0032】
原料槽300にはガス供給管232aが挿入・連結されており、ガス供給管232aの端部が液体材料301には接しない状態で原料槽300の内部空間部に通じている。ガス供給源250中においてガス供給管232aには2つのバルブ235,T1が設けられている。バルブT1は原料槽300の外側でバルブ235より上流側に配置されており、バルブ235はバルブT1より下流側に配置されている。
【0033】
また、原料槽300には当該原料槽300にキャリアガスを供給するキャリアガス供給管320が挿入・連結されている。キャリアガス供給管320は一端部が原料槽300中で液体材料301に浸漬しており、他端部がキャリアガス源350に接続されている。キャリアガス供給管320にはマスフローコントローラ321と2つのバルブT3,T4とが設けられている。マスフローコントローラ321が最も上流側に配置されており、バルブT4がマスフローコントローラ321の下流側に配置され、バルブT3が原料槽300の外側でバルブT4より下流側に配置されている。
【0034】
ガス供給管232aとキャリアガス供給管320との間にはこれらを連結する連結管330が架け渡されており、その中途部にバルブT2が設けられている。連結管330は一端部がバルブT1とバルブ235との間でガス供給管232aに連結されており、他端部がバルブT3とバルブT4との間でキャリアガス供給管320に連結されている。
【0035】
これに対し、溶剤槽400にはガス供給管232aに溶剤を供給する溶剤供給管410が挿入・連結されている。溶剤供給管410は一端部が溶剤槽400中で溶剤401に浸漬しており、他端部がキャリアガス供給管320に連結している。溶剤供給管410には2つのバルブH1,H2が設けられており、バルブH2が溶剤槽400の外側でバルブH1より上流側に配置され、バルブH1がバルブH2より下流側に配置されている。
【0036】
また、溶剤槽400には当該溶剤槽400にキャリアガスを供給するキャリアガス供給管420が挿入・連結されている。キャリアガス供給管420は一端部が溶剤槽400中では溶剤401に接しない状態で溶剤槽400の内部空間部に通じており、他端部がキャリアガス源450に接続されている。キャリアガス供給管420にはマスフローコントローラ421と2つのバルブH4,H5が設けられている。マスフローコントローラ421が最も上流側に配置されており、バルブH5がマスフローコントローラ421より下流側に配置され、バルブH4が溶剤槽400の外側でバルブH5より下流側に配置されている。
【0037】
溶剤供給管410とキャリアガス供給管420との間にはこれらを連結する連結管430が架け渡されており、その中途部にバルブH3が設けられている。連結管430は一端部がバルブH1とバルブH2との間で溶剤供給管410に連結されており、他端部がバルブT4とバルブT5との間でキャリアガス供給管420に連結されている。
【0038】
なお、溶剤槽400に貯留する「溶剤」は、ガス供給管232aを通じて反応炉202に供給する原料(液体又は固体材料)を溶解可能なものであればよく、炭化水素系の溶剤が好ましく使用される。
【0039】
上記構成では、上記の通り原料槽300に液体材料301が貯留されており、ガス供給管232aからは、ノズル233aを介して処理室201内に当該液体材料の気化ガスが供給される。すなわち、基板処理装置101では、少なくとも、ガス供給管232aが液体材料を気化させた気化ガスを処理室201に供給する気化ガス供給管となっている。
【0040】
ガス供給管232aから処理室201に供給する原料として、液体材料301に代えて固体材料も好ましく使用することができる。
この場合には、ガス供給管232aのバルブT1より上流側に気化器とマスフローコントローラとを設置して当該マスフローコントローラで流量を制御しながら当該気化器で固体材料を気化させ、その気化ガスを、上記と同様に、ガス供給管232aとノズル233aとを介して処理室201内に気化ガスを供給するような構成にするのが好ましい。
【0041】
更に、ガス供給源250では、上記原料槽300,溶剤槽400,2つのキャリアガス源350,450以外にも、処理室201への処理ガスの供給源となる処理ガス源500と、ガス供給管232bへのキャリアガスの供給源となるキャリアガス源550とが設けられている。
【0042】
処理ガス源500にはガス供給管232bが接続されている。ガス供給管232bにはマスフローコントローラ241aとバルブ243bとが設けられており、マスフローコントローラ241aがバルブ243bより上流側に配置され、バルブ243bがマスフローコントローラ241aより下流側に配置されている。
【0043】
キャリアガス源550にはガス供給管232bにキャリアガスを供給するキャリアガス供給管234bが接続されている。キャリアガス供給管234bは一端部がキャリアガス源550に接続されており、他端部がガス供給管232bに連結されている。キャリアガス供給管234bにはマスフローコントローラ241cとバルブ243dとが設けられており、マスフローコントローラ241cがバルブ243dより上流側に配置され、バルブ243dがマスフローコントローラ241cより下流側に配置されている。
【0044】
上記構成では、ガス供給管232bからは、ノズル233bを介して処理室201に処理ガスが供給される。
【0045】
図2に示すように、処理室201は、ガスを排気する排気管であるガス排気管231によりバルブ243eを介して排気装置である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。バルブ243eは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。
【0046】
ガス排気管231には、ガス供給管232a中のガスを排気するガス排気管236が連結されており、その中途部にバルブ237が設けられている。ガス排気管236は一端部がバルブT1とバルブ235との間でガス供給管232aに連結されており、他端部がバルブ243eと真空ポンプ246との間で排気管231に連結されている。
【0047】
反応管203内の中央部には、複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート217が設けられており、このボート217は、図示しないボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また、処理の均一性を向上するためにボート217を回転するためのボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を駆動させることにより、ボート支持台218に支持されたボート217を回転するようになっている。
【0048】
制御部としてのコントローラ280は、ガス供給源250(バルブ235,T1〜T4,H1〜H5,243b,243d、マスフローコントローラ321,421,241a,241c)、ヒータ207、バルブ243e,237、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図示しないボート昇降機構とに接続されている。
【0049】
コントローラ280は、ガス供給源250に対しては、バルブ235,T1〜T4,H1〜H5,243b,243dの開閉動作と、マスフローコントローラ321,421,241a,241cの流量調整とを、制御するようになっている。
【0050】
他方、コントローラ280は、ガス供給源250以外の部材に対しては、ヒータ207の温度調整と、バルブ243eの開閉及び圧力調整動作と、バルブ237の開閉動作と、真空ポンプ246の起動・停止と、ボート回転機構267の回転速度調節と、ボート昇降機構の昇降動作とを、制御するようになっている。
【0051】
次に、ALD法を用いた成膜処理例について、半導体デバイスの製造工程の一つである、TEMAH及びOを用いてHfO膜を成膜する例を基に説明する。
【0052】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法の一つであるALD(Atomic Layer Deposition)法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる少なくとも2種類の原料となる処理ガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子単位で基板上に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。このとき、膜厚の制御は、処理ガスを供給するサイクル数で行う(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、20サイクル行う)。
【0053】
ALD法では、例えばHfO膜形成の場合、TEMAH(Hf[NCH、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)とO(オゾン)との2種類の処理ガスを用いて、180〜250℃の低温で高品質の成膜が可能である。
【0054】
まず、上述したようにウエハ200をボート217に装填し、処理室201に搬入する。ボート217を処理室201に搬入後、後述する3つのステップを順次実行する。
【0055】
(ステップ1)
原料槽300に対し液体材料301としてTEMAHを貯留させ、真空ポンプ246を作動させる。この状態において、バルブ235,T1,T3,T4,243eを開け、キャリアガス源350からキャリアガス供給管320にキャリアガス(N)を流す。
【0056】
キャリアガスはマスフローコントローラ321に流量調整されながら、キャリアガス供給管320を流通して原料槽300に流入する。原料槽300中では、キャリアガスの流入を受けてTEMAHの気化ガスがガス供給管232aに流入する。当該気化ガスはガス供給管232aを流通して、最終的にノズル233aのガス供給孔248aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0057】
この時、バルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を一定範囲内の最適な値に維持する。マスフローコントローラ321で制御するTEMAHの気化ガスの供給量は0.01〜0.1g/minである。TEMAHの気化ガスにウエハ200を晒す時間は30〜180秒間である。このときヒータ207の温度はウエハ200の温度が180〜250℃の範囲内の最適な温度になるよう設定してある。
【0058】
TEMAHの気化ガスを処理室201内に供給することで、当該TEMAHの気化ガスがウエハ200上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)する。
【0059】
(ステップ2)
バルブ235,T1,T3,T4を閉め、TEMAHの気化ガスの供給を停止する。このときガス排気管231のバルブ243eは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留したTEMAHの気化ガスを処理室201内から排除する。このときN等の不活性ガスを処理室201内へ供給すると、更に残留したTEMAHの気化ガスを排除する効果が高まる。
【0060】
(ステップ3)
処理ガス源500からガス供給管232bにOを流し、バルブ243bを開ける。
【0061】
は、マスフローコントローラ241aにより流量調整されながらガス供給管232bを流通して、最終的にノズル233bのガス供給孔248bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0062】
この時、バルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を一定範囲内の最適な値に維持する。Oにウエハ200を晒す時間は10〜120秒間である。このときのウエハ200の温度が、ステップ1のTEMAHの気化ガスの供給時と同じく180〜250℃の範囲内の最適な温度となるようヒータ207を設定する。Oの供給により、ウエハ200の表面に化学吸着したTEMAHとOとが反応して、ウエハ200上にHfO膜が成膜される。
【0063】
成膜後、バルブ243bを閉じ、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留するOの成膜に寄与した後のガスを排除する。このとき、N等の不活性ガスを反応管203内に供給すると、更に残留するOの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。
【0064】
上述したステップ1〜3を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハ200上に所定の膜厚のHfO膜を形成することができる。
【0065】
ここで、基板処理装置101では、上記ステップ1〜3のサイクル後に任意にガス供給管232aの内部の洗浄を行うことができるようになっている。
【0066】
図5は本発明の好ましい実施形態で使用される洗浄ステップ中の複数の処理を経時的に示すフローチャートである。当該洗浄ステップでは、TEMAHを溶解可能な溶剤401の一例としてn−ヘキサンを使用しており、キャリアガスとしてN等の不活性ガスを使用した例について説明する。
【0067】
溶剤槽400に対し溶剤401としてn−ヘキサンを貯留させ、真空ポンプ246を作動させる。この状態において、バルブ235,T1,T2を閉じるとともに排気管236のバルブ237を開け、ガス供給管232aの内部を真空引きする(ステップS1)。
【0068】
その後、バルブT2,T4を開け、キャリアガスをキャリアガス供給管320から連結管330を経てガス供給管232aに供給し、当該ガス供給管232aの内部をキャリアガスでパージする(ステップS2)。その後、バルブT4を閉じて、ガス供給管232aの内部を真空引きする(ステップS3)。
【0069】
その後、バルブ237を閉じるとともにバルブH1,H2,H4,H5を開けて、キャリアガスをキャリアガス供給管420に流通させる。キャリアガスはマスフローコントローラ421に流量調整されながら溶剤槽400に流入する。
【0070】
溶剤槽400では、キャリアガスの流入を受けて溶剤槽400中のn−ヘキサンが溶剤供給管410に流入する。n−ヘキサンは溶剤供給管410から連結管330を経てガス供給管232aに至り、ガス供給管232aを流通しながらガス供給管232aに残留したTEMAHを溶解する(ステップS4)。ステップS4の処理では、ガス供給管232a中をn−ヘキサンで一定時間満たしておき、TEMAHを十分に溶解させるのが好ましい。
【0071】
その後、バルブH2,H4,H5を閉じてn−ヘキサンの供給を停止するとともに、バルブ237を開け、溶剤供給管410、連結管330及びガス供給管232aの内部を真空引きし、ガス供給管232aのn−ヘキサンを排出する(ステップS5)。
【0072】
その後、バルブH3,H5を開けて、キャリアガスをキャリアガス供給管420に流入させ、当該キャリアガスをキャリアガス供給管420から連結管430、溶剤供給管410及び連結管330を経てガス供給管232aに至るまで流通させ、ガス供給管232aの内部をキャリアガスでパージする(ステップS6)。
【0073】
その後、これらステップS3〜S6の処理を1サイクルとして、このサイクルを複数回にわたり繰り返し行い、n−ヘキサンのガス供給管232aへの供給と排出とを交互に複数回にわたり繰り返す。もちろん、単にステップS3〜S6の1回のサイクルのみで後続のステップS7の処理に移行してもよいが、HfO膜の成膜頻度(回数)に応じてステップS3〜S6の処理を複数回にわたり繰り返すのが好ましい。
【0074】
その後、バルブH3,H5を閉じて、溶剤供給管410、連結管330及びガス供給管232aの内部を真空引きする(ステップS7)。その後、バルブH3,H5を開けて、キャリアガスをキャリアガス供給管420に流入させ、当該キャリアガスをキャリアガス供給管420から連結管430、溶剤供給管410及び連結管330を経てガス供給管232aに至るまで流通させ、ガス供給管232aの内部をキャリアガスでパージする(ステップS8)。
【0075】
そしてステップS7,S8の処理を任意に複数回繰り返して、ガス供給管232aの内部に残留したn−ヘキサンを蒸発させ、当該洗浄ステップの処理が終了する。
【0076】
以上の本発明の好ましい実施形態では、洗浄ステップ中でステップS3〜S6の処理を複数回にわたり繰り返し行うことで、ガス供給管232a内に対し溶剤401の供給と排出とを交互に繰り返し行うから、ガス供給管232a内の液体材料301の気化ガスの再液化物や再固化物が溶剤401で十分に洗浄(溶解・排出)される。そのため、溶剤401の気化ガスの再液化物や再固化物をガス供給管232a内から十分に除去することができ、ひいてはガス供給管232a内でパーティクルが発生したり、液体材料301の気化ガスの供給量を所望の量に制御できなかったりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される基板処理装置の概略構成を示す斜透視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉とそれに付属する部材との概略構成図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉への処理ガスの供給に際して、その処理ガスの供給源となるガス供給源とそれに関連する部材との概略構成を示す図面である。
【図5】本発明の好ましい実施形態で使用される洗浄ステップ中の複数の処理を経時的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
101 基板処理装置
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
232a,232b ガス供給管
231,236 ガス排気管
237,243e バルブ
246 真空ポンプ
250 ガス供給源
280 コントローラ
300 原料槽
320 キャリアガス供給管
330 連結管
350 キャリアガス供給源
T1〜T4 バルブ
400 溶剤槽
410 溶剤供給管
420 キャリアガス供給管
430 連結管
450 キャリアガス供給源
H1〜H5 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記ガス供給手段の少なくとも一部のガス供給管内の雰囲気を排出する排出手段と、
溶剤を供給する溶剤供給手段と、
制御部と、
を有し、
前記ガス供給手段は、液体または固体材料を気化させた気化ガスを供給する気化ガス供給管を少なくとも備え、
前記制御部は、少なくとも前記排出手段と溶剤供給手段を制御することで、前記気化ガス供給管内への前記溶剤の供給と排出とを交互に所定回数繰り返して、前記気化ガス供給管内の洗浄を行うことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−227259(P2008−227259A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65038(P2007−65038)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】