説明

基板処理装置

【課題】基板を収容するカセットを装着可能な装置筐体に主要な処理部を収容した基板処理装置において、カセットおよび筺体内の雰囲気を適切に管理することのできる技術を提供する。
【解決手段】装置筺体の上面後方(図において左方)に気体吹出部190を設けて温調気体を筺体内に導入するとともに、前方下部に設けた主排気口192から排気する。前面パネル103のうちFOUPカセット110を装着する開口部103aよりも上方に副排気口194を設け、気流の一部を開口部103aの上方から排気する。これにより開口部103aの周辺で複雑な気流が生じ、カセット110内の気体の循環が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対して所定の処理を施す基板処理装置に関するものであり、特に、基板を収容するカセットを装着可能な筐体に主要部分を収容した構造を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して所定の処理を施す基板処理装置では、基板周辺の雰囲気管理を行うために、装置の主要部分を筐体で覆ったものがある。このような装置においては、外部との基板の受け渡しを行うため、基板を収容したカセット状のキャリアを筐体壁面に設けた開口部に装着可能とし、該開口部を介してカセット内と筐体内との間で基板を搬送できるようにしている。そして、筐体内の雰囲気管理のためには、筐体の上部に気体供給部、下部に排気部を設けることで、筐体内に気体によるダウンフローを形成している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、ダウンフローを導入して装置内の雰囲気管理を行うとともに、ウエハキャリア(カセットに相当)内に形成した流路にダウンフローの一部を流通させてから排気することで、キャリア周辺の塵埃により基板が汚染されるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−188320号公報(例えば、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の基板を収容するカセットとしては、FOUP(Front-Opening Unified Pod)として標準化されたものが広く使用されている。このFOUPカセットでは、上記のような気体の流路が規格上用意されていないため、上記技術をそのまま適用することはできない。
【0006】
また、筐体内における各処理ユニットの配置によっては、ダウンフローを効果的に形成することができない場合もある。例えばステージ上に載置された基板を走査露光して描画する描画装置では、基板の上部に露光のための機構が設置されることから上下方向の気流が阻害され、ダウンフローによって雰囲気管理を行うことは現実的ではない。
【0007】
このため、処理ユニットに対して側方からのエアフローを供給する構成が考えられる。しかしながら、このような構成でかつ上記のようなカセットを有する装置においては、カセット内の雰囲気までが考慮された雰囲気管理技術はこれまでのところ確立されるに至っていない。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を収容するカセットを装着可能な筐体に処理部を収容した基板処理装置において、カセットおよび筺体内の雰囲気を適切に管理することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、基板を保持しながら該基板に対して所定の処理を行う処理手段と、前記処理手段を覆い、前記基板を収容するカセットを側部に装着可能に構成されるとともに、装着された前記カセット内と前記筺体内とを連通させて前記基板を前記処理手段へ移送するための開口部が設けられた筐体と、前記筐体内で前記開口部と前記処理手段との間に配置されて、前記カセットと前記処理手段との間で前記基板を搬送する搬送手段と、前記処理手段を挟んで前記搬送手段とは反対側から、前記筐体内に気体を供給する気体供給部と、前記搬送手段の下方から前記筐体内の気体を排気する主排気部と、前記開口部の上方から前記筐体内の気体を排気する副排気部とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、処理手段に対して、搬送手段が設けられた側とは反対側から筺体内に気体が供給される。そして、処理手段の周囲を流れた気流の一部は搬送手段の下方へ、他の一部はカセットからの基板の移送のための開口部の上方へ流れて筺体外へ排気される。気流方向において搬送手段の上流側に処理手段を配し、また搬送手段の下方で排気を行うことで、可動部を有する搬送手段から発生するパーティクル等が処理手段に回り込むのを防止することができる。また処理手段を通って流れてくる気体の一部を開口部の上方から排気することで、開口部の周囲に気体の流れが生じ、開口部を介したカセット内の気体の循環が実現される。これにより、カセット内の雰囲気を管理することが可能となる。すなわち、この発明によれば、筺体内とともにカセット内の雰囲気についても適切に管理することが可能となる。
【0011】
この発明において、例えば、処理手段は、基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板に対して基板保持部の上方から光ビームを照射して描画を行う描画部とを備え、気体供給手段は、基板保持部と描画部との間の空間に対して気体を供給するものであってもよい。
【0012】
この種の基板処理装置は描画装置とも呼ばれるものであるが、このような装置では基板保持部の上部に描画部が設置されることから、従来技術のようなダウンフロー環境の利用が難しい。一方、描画部の温度上昇は描画精度に影響を及ぼすためエアフローの供給が重要である。これらのことから、この種の装置に本発明を適用することで特に顕著な効果を得ることができる。また、この種の装置では感光液が塗布された基板が収容されたカセットが装着されることからカセット内には溶媒蒸気が生じており、カセット内の気体を循環させる意義も大きい。
【0013】
また、例えば、気体供給手段は、気体を所定の温度に調節する温度調節部を備えるようにしてもよい。このようにして温度調節された気体を処理手段に供給することで、単なる雰囲気管理に留まらず、処理手段の温度を適正に維持して動作の安定を図ることが可能となる。
【0014】
この発明では、主排気部の排気口と副排気部の排気口とが、開口部を挟んで互いに反対側に開口することがより好ましい。こうすることで、処理手段側からの気流が開口部を挟む両側へ分かれて排気されることとなり、開口部の周辺で気流の渦や乱流が生じ、開口部を介したカセット内への気体の循環が効果的に促進される。
【0015】
また、主排気部からの排気量が副排気部からの排気量よりも大きくなるようにしてもよい。こうすることで、搬送手段の周辺で発生したパーティクルが開口部側へ回り込むことが抑制され、パーティクルによるカセット内や基板の汚染を効果的に防止することができる。
【0016】
これらの発明において、気体供給手段は、処理手段の上方から気体を供給するようにしてもよく、また処理手段の側方から気体を供給するようにしてもよい。いずれの構成においても、気流の方向において処理手段を上流側、搬送手段を下流側の関係とすることができ、かつ気流の一部が開口部を介してカセット内に循環することとなるので、いずれも本発明の目的を達成することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板を収容するカセットを装着可能な筐体に処理部を収容した基板処理装置において、筺体内のみでなく、カセット内の雰囲気も適切に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を好適に適用可能なパターン描画装置の一例を示す図である。
【図2】この装置における気体の流れを模式的に示す図である。
【図3】カセット周辺での気体の動きを模式的に示す図である。
【図4】基板収納カセットの周辺を示す一部平面図である。
【図5】本発明にかかる基板処理装置の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明を好適に適用することのできるパターン描画装置の一例を示す図である。より具体的には、本発明にかかる基板処理装置の一実施形態としての描画装置を示す側面図である。このパターン描画装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に光を照射してパターンを描画する装置である。
【0020】
このパターン描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成される。本体部の前面(図1において右手側)に当たる前面パネル103には、基板収納カセット110を載置可能なロードポート105が設けられている。この基板収納カセット110はFOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる標準化されたカセットであり、その内部には露光処理を受けるべき未処理基板Wが収納されている。後述するように、この実施形態では同一サイズの基板収納カセット110を2個、Y方向に並べて装着可能となっている。
【0021】
前面パネル103には基板をカセット110内からパターン描画装置100内へ、あるいはその逆にパターン描画装置100内からカセット110内へ基板Wを移送するための開口部103aが、各基板収納カセット110のそれぞれに対応してY方向に2か所並べて設けられている。ロードポート105は、載置された基板収納カセット110を、外部から開口部103aを覆うように押し付けることで、開口部103aを介してパターン描画装置100の内部空間と基板収納カセット110の内部空間とを連通させる。
【0022】
開口部103aの周囲には、カセット非装着時に該開口部103aを塞ぐためのシャッター機構および開口部103aと基板収納カセット110との接続部の気密を保持するシール機構等が設けられるが、これらは例えば特開2004−343148号公報に記載されたように公知の技術を適用することができるので、図へのこれらの記載および詳しい説明を省略する。
【0023】
本体部では、カバー102に囲まれた本体内部の右手側端部に、搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(図1の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっており、搬送ロボット120は、基板収納カセット110に収納された未処理基板Wを開口部103aを介して取り出して基板受渡領域へ移送したり、逆に処理済みの基板を基板受渡領域から基板収納カセット110内へ移送する動作を行う。
【0024】
また、基板受渡領域とは反対側の基台130の他方端側領域(図1の左手側領域)は、基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。この基台130上では、基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置にヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、基台130から上方に2本の脚部材141が立設されるとともに、それらの脚部材141の頂部を橋渡しするように梁部材143が横設されている。なお、2本の脚部材141は図1において手前側と奥側で前後に重なっているため、手前側の1本のみが図に現れている。そして、梁部材143のパターン描画領域側側面にカメラ150が固定されてステージ160に保持された基板Wの表面を撮像可能となっている。
【0025】
このステージ160は基台130上でステージ移動機構161によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構161はステージ160を水平面内で2次元的に移動させて位置決めするとともに、ステージ160をθ軸(鉛直軸)回りに回転させて光学ヘッド3に対する相対角度を調整して位置決めする。なお、このようなステージ移動機構161としては、従来より多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0026】
また、このように構成されたヘッド支持部140のパターン描画領域側で光学ヘッド3がその照明光学系を収めたボックス172に対して固定的に取り付けられている。光学ヘッド3は空間光変調器を装備して基板Wに対して光を照射して露光するものであり、このパターン描画装置100は空間光変調器を利用した装置である。すなわち、光学ヘッド3は、その下部から下向き(+Z方向)に、描画パターンに応じて変調されたレーザー光ビームを出射して、感光材料が塗布されステージ160に載置された基板Wの表面を露光して所定のパターンを描画する。空間光変調器を利用した描画装置は公知であり、本実施形態でも公知の構成を適用することができるので、ここでは光学ヘッド3の構成およびその動作についての詳しい説明を省略する。
【0027】
また、基台130の基板受渡領域とは反対側の端部(図1の左手側端部)においても、2本の脚部材144が立設されている。そして、この梁部材143と2本の脚部材144の頂部を橋渡しするように光学ヘッド3の照明光学系を収納したボックス172が設けられており、基台130のパターン描画領域を上方から覆っている。したがって、パターン描画装置100が設置されるクリーンルーム内に供給されているダウンフローをボックス172の真上から本体内部に引き入れたとしても、パターン描画領域にダウンフローが供給されない空間SPが形成される。
【0028】
そこで、本実施形態にかかるパターン描画装置100では、本体部の上面後方側(図1において左上)に、ステージ160と光学ヘッド3のボックス172とに挟まれた空間SPに向けて気体を吹き出す気体吹出部190が配置されている。この実施形態では、本体部の上面左手側を貫通するように気体吹出部190が取り付けられている。この気体吹出部190は空調器191に接続されており、図示しない制御部からの指令に応じて作動する空調器191で所定の温度に調節された温調気体を空間SPに向けて吹き出す。
【0029】
一方、装置本体部において気体吹出部190とは反対側、つまり本体部下部の前方側(図1において右下)に、本体部内の気体を排気するための主排気口192が設けられている。主排気口192は搬送ロボット120の可動部分よりも下方で開口するように設けられる。気体吹出部190から気体が吹き出されることで本体部内部は外部に対して陽圧となっており、その圧力により本体部内の気体は主排気口192から排出される。排出された気体は循環経路193を介して空調器191に戻される。
【0030】
また、本体部の前面パネル103において開口部103aの上部には、主排気口192よりも開口面積の小さい副排気口194が設けられている。副排気口194も循環経路193に接続されており、このため、気体吹出部190から本体内部に供給された気体の一部は副排気口194から排出されて、循環経路193を介して空調器101に戻される。
【0031】
図2はこの装置における気体の流れを模式的に示す図である。図では、本体部内部での気体の流れを太線矢印で示している。同図に示すように、本体部の上面後方に設けられた気体吹出部190から吹き出された温調気体は、ステージ160と光学ヘッド3のボックス172とに挟まれた空間SPを通って装置前方(+X方向)へ流れ、その大半が搬送ロボット120の下方に設けられた主排気口192から下向き(+Z方向)に排出される。また一部は前面パネル103に設けられた副排気口194から前方(+X方向)に排出される。
【0032】
このように、気体吹出部190から吹き出された温調気体が横向きに流れて空間SPを通過することによって、空間SPの雰囲気が入れ替えられてパターン描画領域での温度変化が抑制される。光学ヘッド3やその周囲部品の温度変動は、部品の熱膨張・熱収縮による光軸のズレなど描画処理における位置精度に影響を及ぼす。この実施形態では、気体吹出部190から吹き出された温調気体が空間SPに供給されているため、この空間SPの周りに配設された部品の温度変化が抑えられており、このような温度変化に起因する位置精度の低下を防止することができる。また、空間SPに清浄な気体が供給されることで、ステージ160上の基板Wの汚染も防止される。
【0033】
一方、上記空間SPを通過した空気は搬送ロボット120に向けて流れ込むが、この実施形態では、搬送ロボット120の下方部に排気口192が設けられるとともに、排気口192が配管193を介して空調器191に接続されている。したがって、排気口192を設けたことで搬送ロボット120を取り囲む雰囲気は排気されて同雰囲気内で下向きの気流、つまりダウンフローが形成される。したがって、搬送ロボット120周辺で発生したパーティクルは直ちに排出され、搬送ロボット120の動作によってパーティクルが舞い上がり散乱するのが効果的に防止される。
【0034】
また、前面パネル103のうち基板収納カセット110が接続される開口部103aの上方に副排気口194を設けたことにより、以下に説明するような作用効果が奏される。
【0035】
図3はカセット周辺での気体の動きを模式的に示す図である。この実施形態では、前面パネル103の背後に設けられた搬送ロボット120の下部に比較的開口面積の大きい主排気口192が設けられる一方、前面パネル103に設けられた開口部103aの上方に、主排気口192より開口面積の小さい副排気口194が設けられる。このため、開口部103aを挟んでその上下に2種類の排気口192,194が設けられたことになる。副排気口194の開口面積は開口部103aの開口面積よりも少し小さいことが好ましい。
【0036】
装置後方(図において左方)から流れてきた気体(太線矢印で示す)の流れは、2種類の排気口192,194に分かれて外部へ排出される。このため、2種類の排気口192,194に挟まれた空間では、点線矢印で示すように、気体の渦や乱流等が生じ、気体の流れは非常に複雑なものとなっている。このような複雑な気体の動きにより、開口部103aを介して本体部内部と連通する基板収納カセット110内の空間にも気体の動きが生じる。これにより、該カセット110内の雰囲気が循環されて、雰囲気の入れ替えが促進されることとなる。
【0037】
描画処理を受けるべく基板収納カセット110内に収納された基板Wは、表面に感光液が塗布されたものであり、当初は基板収納カセット110の内部空間には感光液に含まれた溶剤蒸気が充満していることがある。上記のようにカセット内の気体の循環を促すことで、カセット内の溶剤蒸気を含む気体は本体部側に排出され、清浄な気体がカセット内に導入される。カセットから排出された気体は主排気口192または副排気口194から外部へ排出されるので、本体部内部、特にパターン描画領域に臨む空間SPの雰囲気を汚染することはない。こうして、本体部内部とともに、基板収納カセット110内の雰囲気も清浄に保たれる。
【0038】
なお、副排気口194の開口面積を主排気口192よりも小さくしていることから、副排気口194の単位時間当たりの排気量は主排気口192のそれよりも小さくなっている。このため、搬送ロボット120の周辺の雰囲気はほとんどが主排気口192から排出される。これにより、搬送ロボット120の周辺で発生したパーティクルが副排気口194や基板収納カセット110に回り込んでくることはほとんどなく、パーティクルによる基板収納カセット110や該カセット内の基板Wの汚染は回避されている。この意味においては、副排気口194は搬送ロボット120の可動部分よりも上方に配置されることが望ましい。
【0039】
図4は基板収納カセットの周辺を示す一部平面図である。同図に示すように、この実施形態では2個の基板収納カセット110,110をY方向に並べて前面パネル103に装着している。副排気口194は、Y方向の開口長さが開口部103aのY方向開口長さと略同一とされ、2個の基板収納カセット110の各々に対応してその近傍に2か所設けられる。こうすることで、各カセット110のそれぞれに清浄な気体が導入されることが促進される。副排気口194のY方向の開口長さは開口部103aのY方向開口長さよりも少し短くてもよい。
【0040】
以上のように、この実施形態では、FOUPカセットを前面パネル103に装着可能に構成され、該カセットから取り出した基板Wに所定のパターン描画を行うパターン描画装置100において、装置本体部の上面に設けた気体吹出部190から気体を吹き付けるとともに、本体部下部前方に設けた主排気口192と、前面パネル103の開口部103aの上部に設けた副排気口194とから気体を排気する。
【0041】
このため、パターン描画のための主要部である光学ヘッド3やカメラ150、照明光学系を収めたボックス172等には所定温度に調節された温調気体が側方から(より正確には、後方から前方側に向けて)吹き付けられて、これらの構成部品の温度変動に起因する描画精度の低下が防止される。
【0042】
また、これらの主要部よりも前方側、すなわち気流の方向において下流側に設けた搬送ロボット120の下方から主たる排気を行うことで、この実施形態では、可動部分を有する搬送ロボット120の周辺で発生したパーティクルが舞い上がって装置内部を汚染することが防止されている。
【0043】
また、前面パネル103に設けられた、基板収納カセット110との間で基板Wを受け渡すための開口部103aの上方に、主排気口192より排気量の少ない副排気口194を設けている。これにより、気流の一部は副排気口194へ流れ、これにより開口部103aの周辺では複雑な気流が生じる。このため、開口部103aを介して装置本体内部と連通する基板収納カセット110の内部空間にも気体の流れが生じ、該カセット内の雰囲気の入れ替えが促進され、雰囲気を清浄に保つことができる。このように、この実施形態では、装置本体部の内部のみならず、基板収納カセット110の内部空間についてもその雰囲気を適切に管理することが可能となっている。
【0044】
図5は本発明にかかる基板処理装置の他の実施形態を示す図である。この実施形態にかかる基板処理装置としてのパターン描画装置200が上記第1実施形態と相違する点は、第1実施形態において装置上面後方に設けられていた気体吹出部190に代えて、装置背面(図5において左手側端部)に気体吹出部290が設けられている点である。この点を除く各部の構成は第1実施形態のものと同一であるため、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。図5においても、太線矢印は気体の流れを模式的に示すものである。
【0045】
このような構成では、光学ヘッド3、カメラ150、ボックス172等が配置されたパターン描画領域に対して、その後方(図において左方)から直接気体が吹き付けられて、前方(図において右方)へ向けた気流が生じる。したがって、上記実施形態と同様に、温調気体によってこれらの部品の温度変化を防止するとともに、搬送ロボット120の周辺で生じるパーティクルがパターン描画領域に回り込むのを防止することができる。また、気流の一部を開口部103a上方の副排気口194から排出することで、基板収納カセット110内の気体の循環を促進し、該カセット内の雰囲気管理を行うことができる。
【0046】
以上説明したように、上記各実施形態では、本体フレーム101、カバー部102および前面パネル103等が一体として本発明の「筺体」として機能している。また、ステージ160、光学ヘッド3、カメラ150、ボックス172等が一体として本発明の「処理手段」として機能している。このうちステージ160は本発明の「基板保持部」に相当しており、また光学ヘッド3が本発明の「描画部」に相当している。また、上記実施形態における基板収納カセット110が本発明の「カセット」に相当している。
【0047】
また、上記各実施形態では、搬送ロボット120が本発明の「搬送手段」として機能する一方、気体吹出部190が本発明の「気体供給部」として機能している。また空調器191が本発明の「温度調節部」として機能している。また、これらの実施形態において、主排気口192および副排気口194が、それぞれ本発明の「主排気部」および「副排気部」として機能している。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、装置の前面パネル103に副排気口194を設けて装置の前面外側へ排気経路を設定しているが、副排気口の位置は開口部103aの近傍上方であれば上記に限定されない。例えば、開口部103aの上方に開口する排気ダクトを装置内部に設けるようにしてもよい。
【0049】
また例えば、上記実施形態では、副排気口194は2個の基板収納カセット110に対応して個別に形成されているが、複数の開口部103aにまたがるようにY方向に長尺の副排気口を1つ設けてもよい。また前面パネル103のY方向の幅全体にわたって1つの副排気口を設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態は2個の基板収納カセット110を前面パネル103に装着可能であり、これに対応して2つの副排気口194を設けているが、装着可能な基板収納カセットの数はこれに限定されず、任意である。この場合も、装着される基板収納カセットの個数に応じた開口部と副排気口とを前面パネルに設けることが望ましい。また例えば、予め複数の開口部を設けてカセット装着数を可変とした構成においては、各開口部に対応して副排気口となる排気用開口を複数設けておき、カセットが装着される開口部に対応する排気用開口を循環経路に接続する一方、他の排気用開口を塞ぐことで、各カセットに対応した副排気口が設けられるようにすることが望ましい。これにより、装着された基板収納カセットのそれぞれにおける気体の循環が確保される。
【0051】
また、上記実施形態では、気体吹出部190,290から吹き出される気体の陽圧によって受動的に主排気口192、副排気口194からの排気を行っているが、これらの排気口にファン等の気流生成手段を設けて能動的に排気を行うようにしてもよい。また、上記実施形態では排気を循環させているが、このことは必須の要件ではない。また吹き出される気体の温度調節を行わない構成に対しても本発明を適用することが可能である。
【0052】
また、上記実施形態の変形形態(図5)では、装置後方に横向きに気体を吹き出す気体吹出部290を1基設けているが、これを上下に2基配置するようにしてもよい。このようにした場合、ステージ160と光学ヘッド3のボックス172とに挟まれた空間SPに流れる気流をほぼ水平方向に制御することができる。
【0053】
また、上記実施形態のパターン描画装置100は光変調技術を利用して基板Wにパターン描画を行う基板処理装置であるが、本発明を適用可能な基板処理装置はこれに限定されるものではなく、他の方式のパターン描画装置や露光装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明はパターン描画装置や露光装置に好適に適用可能であるほか、これ以外の基板処理装置全般に適用可能であり、特に処理対象となる基板の上方に構造部品が配置されてダウンフロー環境が実現されにくい基板処理装置に対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
3 光学ヘッド(処理手段、描画部)
101 本体フレーム(筺体)
102 カバー部(筺体)
103 前面パネル(筺体)
110 基板収納カセット(カセット)
120 搬送ロボット(搬送手段)
150 カメラ(処理手段)
160 ステージ(処理手段、基板保持部)
172 ボックス(処理手段)
190,290 気体吹出部(気体供給部)
191 空調器(温度調節部)
192 主排気口(主排気部)
194 副排気口(副排気部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しながら該基板に対して所定の処理を行う処理手段と、
前記処理手段を覆い、前記基板を収容するカセットを側部に装着可能に構成されるとともに、装着された前記カセット内と前記筺体内とを連通させて前記基板を前記処理手段へ移送するための開口部が設けられた筐体と、
前記筐体内で前記開口部と前記処理手段との間に配置されて、前記カセットと前記処理手段との間で前記基板を搬送する搬送手段と、
前記処理手段を挟んで前記搬送手段とは反対側から、前記筐体内に気体を供給する気体供給部と、
前記搬送手段の下方から前記筐体内の気体を排気する主排気部と、
前記開口部の上方から前記筐体内の気体を排気する副排気部と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板に対して前記基板保持部の上方から光ビームを照射して描画を行う描画部とを備え、
前記気体供給手段は、前記基板保持部と前記描画部との間の空間に対して前記気体を供給する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記気体供給手段は、前記気体を所定の温度に調節する温度調節部を備える請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記主排気部の排気口と前記副排気部の排気口とが、前記開口部を挟んで互いに反対側に開口する請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記主排気部からの排気量が前記副排気部からの排気量よりも大きい請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記気体供給手段は、前記処理手段の上方から前記気体を供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記気体供給手段は、前記処理手段の側方から前記気体を供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69896(P2013−69896A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207780(P2011−207780)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】