基板収納容器及びその製造方法
【課題】容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、損傷することのない基板収納容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】三枚以下の半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体1が射出成形され、この射出成形された容器本体1の内部背面側に複数の突出しピン2が突き出されることにより容器本体1が金型から脱型される基板収納容器であって、容器本体1の背面壁と両側壁とにリブフランジ20を一体成形し、背面壁のリブフランジ20Aを容器本体1の金型からの脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向させる。金型の突出しピン2に容器本体1の背面壁のリブフランジ20Aが外側から対向して障害物となり、補強機能を発揮するので、突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがない。
【解決手段】三枚以下の半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体1が射出成形され、この射出成形された容器本体1の内部背面側に複数の突出しピン2が突き出されることにより容器本体1が金型から脱型される基板収納容器であって、容器本体1の背面壁と両側壁とにリブフランジ20を一体成形し、背面壁のリブフランジ20Aを容器本体1の金型からの脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向させる。金型の突出しピン2に容器本体1の背面壁のリブフランジ20Aが外側から対向して障害物となり、補強機能を発揮するので、突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少数枚の半導体ウェーハ等からなる基板を収納する背の低い基板収納容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIメーカ等で半導体ウェーハを短時間で加工処理する場合には、三枚以下の半導体ウェーハを収納する基板収納容器(Small−FOUPともいう)が使用されるが、この種の基板収納容器は、図示しない三枚以下の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体と、この容器本体の開口した正面部を着脱自在に開閉する蓋体とを備えて構成されている(特許文献1、2参照)。
容器本体は、成形用の金型に樹脂を含む成形材料が射出されることにより高さ(縦寸法)の制限された状態で射出成形され、この射出成形後に内部背面側に複数の突出しピンが強く突き出されることにより密着した金型から脱型される。
【特許文献1】特開2006−245206号公報
【特許文献2】特開2006−100712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における基板収納容器は、以上のように容器本体の射出成形後に容器本体の内部背面側に複数の突出しピンが強く突き出されて大きな負荷が作用することにより、容器本体が密着した金型から脱型されるので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、容器本体の損傷を招くという問題がある。この問題を解消する方法としては、金型から容器本体を脱型する際の抜き角度の変更が考えられるが、そうすると、容器本体の寸法に変更が生じるので、半導体ウェーハの出し入れに支障を来たすという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、損傷することのない基板収納容器及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体が射出成形され、この射出成形された容器本体の内部背面側に突出しピンが突き出されることにより容器本体が金型から脱型されるものであって、
容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させることができる。
また、容器本体の背面壁中央部の下方にリブフランジの中央部を位置させ、背面壁のリブフランジの中央部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすることができる。
【0007】
また、容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形し、各側壁前部の下方にリブフランジの前部を位置させるとともに、各側壁の前部以外の残部の略中央にはリブフランジの前部以外の残部を位置させ、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすることができる。
【0008】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器を製造することを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における三枚以下の基板には、少なくとも三枚以下の各種ガラス基板、カバーガラス、半導体ウェーハ(口径300mm、450mm等)、フォトマスク等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明を特に問うものではないが、口径300mmの半導体ウェーハを25、26枚収納する基板収納容器よりも背が低くされる。例えば、口径300mmの半導体ウェーハからなる基板を2枚収納する場合には、6cm以下の高さとされる。また、突出しピンは、単数複数を特に問うものではない。背面壁のリブフランジと側壁のリブフランジとは、一体形成されて連続しても良いし、そうでなくても良い。
【0010】
本発明によれば、容器本体を製造する場合には、金型を型締めして成形材料を射出・充填し、成形材料の固化に伴う収縮を補うために保圧してリブフランジ付きの容器本体を成形し、脱型するのに十分な剛性となるまで容器本体を冷却する。容器本体を冷却したら、金型を型開きして突出しピンを容器本体の内部背面側に突き出し、金型から容器本体を脱型する。
この際、金型の突出しピンに容器本体の背面壁の強度を高めるリブフランジが略対向して補強効果を奏するので、容器本体の背面側が突出しピンに突き破られるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、損傷することがないという効果がある。
また、容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させれば、容器本体の姿勢を安定させた状態で金型から脱型することができ、しかも、容器本体が複数の突出しピンに突き破られるのを抑制できる。
【0012】
また、容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形すれば、容器本体の両側壁の強度や剛性を高めることができ、容器本体の変形等を有効に防ぐことができる。さらに、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすれば、リブフランジと位置決め部とを一体化し、構成の簡素化を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図18に示すように、少数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1が射出成形され、この射出成形された容器本体1の内部背面側に複数の突出しピン2が突き出されることにより容器本体1が金型から脱型されるタイプであって、容器本体1の背面壁と両側壁とにリブフランジ20を成形し、背面壁のリブフランジ20Aを容器本体1の脱型時に突出しピン2に対向させるようにしている。
【0014】
各半導体ウェーハWは、図15や図16に示すように、例えば薄く丸い口径300mmのシリコンタイプからなり、周縁部に位置合わせや識別用のオリフラあるいは平面略半円形のノッチが選択的に形成される。
【0015】
容器本体1は、図1ないし図3、図6に示すように、成形用の金型に所定の樹脂を含む成形材料が射出されることにより、二枚以下の半導体ウェーハWを整列収納する背の低い(例えば6cm以下)フロントオープンボックスタイプに射出成形され、開口した横長の正面部に同形の蓋体10がエンドレスで弾性のガスケットを介し着脱自在に嵌合される。金型は、図示しない射出成形用のタイプが使用され、射出成形機に装着される。この金型には、型開きと共に突き出る往復動可能な複数の突出しピン2が突き出し板に固定された状態で内蔵される(図16参照)。
【0016】
容器本体1の所定の樹脂としては、例えば力学的性質、耐熱性、寸法安定性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらの樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、帯電防止剤、難燃剤等が適宜添加される。
【0017】
容器本体1の内部、具体的には相対向する両側壁の内面には図16等に示すように、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に間隔をおいて配列される。各ティース3は、容器本体1の前後方向に細長い板に成形され、容器本体1の背面壁寄りの末端部が先細りとされる。
【0018】
容器本体1の天井の略中心部には図1、図4ないし図6に示すように、平面略Y字形を呈する複数の被取付リブ4が立設され、この複数の被取付リブ4上には、図示しない搬送機構に把持される平面略三角形あるいは多角形の吊持フランジ5が螺子等の締結具を介し着脱自在に後から螺着される。
【0019】
容器本体1の開口した正面部は、図3や図14、図18に示すように、外方向に広がるよう屈曲形成されてリムフランジ6を形成し、このリムフランジ6の内部両側には、蓋体施錠用の係止溝7がそれぞれ上下方向に切り欠かれる。リムフランジ6の左右に張り出した両側部には図3や図14に示すように、複数の識別孔8がそれぞれ上下に並べて丸く穿孔され、この複数の識別孔8に識別ピンが選択的に挿入され、かつ図示しない加工装置の検出手段(例えば、光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)に検出されることにより、半導体ウェーハWの有無や枚数、基板収納容器のタイプ等が加工装置に識別される。
【0020】
蓋体10は、図7ないし図10に示すように、表面カバーが透明の横長の箱形に形成され、内部には容器本体1の係止溝7に干渉する施錠機構11が配設されており、裏面の中央部には、複数の半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持するフロントリテーナが装着される。
【0021】
施錠機構11は、図9に示すように、蓋体10の内部両側に支持されて左右方向にスライド可能な一対のスライドピン12と、蓋体10の両側部に出没可能に軸支されて各スライドピン12の先端部に連結され、容器本体1の係止溝7に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪13と、蓋体10に内蔵されてスライドピン12に嵌入され、容器本体1の係止溝7に係止爪13を常時干渉させる一対のコイルバネ14とを備え、容器本体1に嵌合した蓋体10を施錠して固定するよう機能する。
【0022】
蓋体10の表面カバー両側には図9に示すように、各スライドピン12をスライドさせてコイルバネ14を圧縮させ、容器本体1の係止溝7に対する係止爪13の干渉を解除する一対の操作孔15がそれぞれ穿孔される。
【0023】
リブフランジ20は、図1、図2、図4ないし図6、図11ないし図13、図15ないし図18に示すように、容器本体1の背面壁と両側壁とに外側から一体成形され、変形した平面略U字形を呈する。背面壁のリブフランジ20Aは、例えば細長い肉厚の板形に形成され、両側部21が容器本体1の背面壁両側部の略中央に水平に位置しており、中央部22が容器本体1の背面壁中央部の下方に位置する。
【0024】
背面壁のリブフランジ20Aの両側部21は、容器本体1の正面部が下方に傾かないよう金属製のバランスウェイト23が下方からそれぞれ後付けで螺着され、容器本体1の脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向するよう機能する(図16参照)。
【0025】
背面壁のリブフランジ20Aの中央部22は、図4、図13、図16に示すように、略W字形に屈曲形成されて凹部24を形成し、この凹部24の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部25として機能する。
【0026】
各側壁のリブフランジ20Bは、図1、図2、図5、図6、図11ないし図12、図17に示すように、例えば細長い肉厚の板形に形成され、前部26が各側壁前部の下方に位置しており、前部以外の残部27が各側壁の前部以外の残部の略中央に水平に位置して背面壁のリブフランジ20Aと一体化する。各側壁のリブフランジ20Bの前部26は、略逆V字形に屈曲して凹部28を形成し、この凹部28の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部25として機能する。
【0027】
上記において、容器本体1を製造する場合には、先ず、容器本体1用の金型を型締めして溶融した成形材料を高速・高圧で射出・充填し、成形材料の固化に伴う収縮を補うために保圧してリブフランジ20付きの容器本体1を高精度に成形し、脱型するのに十分な剛性となるまで金型内を流れる冷却水で容器本体1を放置・冷却する。この間、次回の成形のため、射出成形機のスクリュを回転させて成形材料を可塑化、計量化する。
【0028】
こうして容器本体1を放置・冷却したら、金型を型開きして複数の突出しピン2を容器本体1の正面側から内部背面側に突き出し、金型に密着した容器本体1を脱型する。この際、金型の複数の突出しピン2に容器本体1の背面壁の剛性を高める肉厚のリブフランジ20Aの両側部が対向する(図16参照)ので、容器本体1の背面側が複数の突出しピン2により突き破られることがない。以下、同様の作業が繰り返される。
【0029】
上記構成によれば、金型の突出しピン2に容器本体1のリブフランジ20Aの両側部21が外側から対向して障害物となり、背面壁の強度を高めて補強機能を発揮するので、例え突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがなく、これにより製造時の容器本体1の損傷をきわめて有効に防止することができる。
【0030】
また、金型から容器本体1を脱型する際の抜き角度を大きく変更する必要がないので、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たすこともない。さらに、背面壁のリブフランジ20Aと位置決め部25とを別々に形成するのではなく、リブフランジ20Aの中央部22に位置決め部25を一体形成するので、構成の簡易化や部品点数の削減が期待できる。
【0031】
なお、本発明に係る基板収納容器及びその製造方法は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、容器本体1の背面壁の中央部上方に、半導体ウェーハWを視認する覗き窓をインサート成形法や二色成形法等により形成しても良い。また、容器本体1やそのリブフランジ20には、FRIDシステムのRFタグを取り付けて自動の移動体識別システムに資するようにしても良い。
【0032】
また、リブフランジ20に複数の位置決め部25を形成するのではなく、容器本体1の底面の前部両側と後部中央とに加工装置に対する位置決め部25をそれぞれ形成しても良い。また、背面壁のリブフランジ20Aの中央部22を略W字形ではなく、略V字形に屈曲形成して凹部24とすることもできる。さらに、特に支障が生じなければ、各側壁のリブフランジ20Bを省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す背面図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の表面カバーを模式的に示す斜視図である。
【図8】図7の裏面図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体やその施錠機構を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体を模式的に示す裏面図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す底面図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す背面図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器及びその製造方法の実施形態を模式的に示す断面正面図である。
【図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体のリブフランジと突出しピンとの関係を模式的に示す背面説明図である。
【図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す側面説明図である。
【図18】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 容器本体
2 突出しピン
3 ティース
10 蓋体
20 リブフランジ
20A 背面壁のリブフランジ
20B 側面壁のリブフランジ
21 両側部
22 中央部
24 凹部
25 位置決め部
26 前部
27 残部
28 凹部
W 半導体ウェーハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、少数枚の半導体ウェーハ等からなる基板を収納する背の低い基板収納容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIメーカ等で半導体ウェーハを短時間で加工処理する場合には、三枚以下の半導体ウェーハを収納する基板収納容器(Small−FOUPともいう)が使用されるが、この種の基板収納容器は、図示しない三枚以下の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体と、この容器本体の開口した正面部を着脱自在に開閉する蓋体とを備えて構成されている(特許文献1、2参照)。
容器本体は、成形用の金型に樹脂を含む成形材料が射出されることにより高さ(縦寸法)の制限された状態で射出成形され、この射出成形後に内部背面側に複数の突出しピンが強く突き出されることにより密着した金型から脱型される。
【特許文献1】特開2006−245206号公報
【特許文献2】特開2006−100712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における基板収納容器は、以上のように容器本体の射出成形後に容器本体の内部背面側に複数の突出しピンが強く突き出されて大きな負荷が作用することにより、容器本体が密着した金型から脱型されるので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、容器本体の損傷を招くという問題がある。この問題を解消する方法としては、金型から容器本体を脱型する際の抜き角度の変更が考えられるが、そうすると、容器本体の寸法に変更が生じるので、半導体ウェーハの出し入れに支障を来たすという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、損傷することのない基板収納容器及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体が射出成形され、この射出成形された容器本体の内部背面側に突出しピンが突き出されることにより容器本体が金型から脱型されるものであって、
容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させることができる。
また、容器本体の背面壁中央部の下方にリブフランジの中央部を位置させ、背面壁のリブフランジの中央部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすることができる。
【0007】
また、容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形し、各側壁前部の下方にリブフランジの前部を位置させるとともに、各側壁の前部以外の残部の略中央にはリブフランジの前部以外の残部を位置させ、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすることができる。
【0008】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器を製造することを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における三枚以下の基板には、少なくとも三枚以下の各種ガラス基板、カバーガラス、半導体ウェーハ(口径300mm、450mm等)、フォトマスク等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明を特に問うものではないが、口径300mmの半導体ウェーハを25、26枚収納する基板収納容器よりも背が低くされる。例えば、口径300mmの半導体ウェーハからなる基板を2枚収納する場合には、6cm以下の高さとされる。また、突出しピンは、単数複数を特に問うものではない。背面壁のリブフランジと側壁のリブフランジとは、一体形成されて連続しても良いし、そうでなくても良い。
【0010】
本発明によれば、容器本体を製造する場合には、金型を型締めして成形材料を射出・充填し、成形材料の固化に伴う収縮を補うために保圧してリブフランジ付きの容器本体を成形し、脱型するのに十分な剛性となるまで容器本体を冷却する。容器本体を冷却したら、金型を型開きして突出しピンを容器本体の内部背面側に突き出し、金型から容器本体を脱型する。
この際、金型の突出しピンに容器本体の背面壁の強度を高めるリブフランジが略対向して補強効果を奏するので、容器本体の背面側が突出しピンに突き破られるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるので、容器本体の背面側が突出しピンにより突き破られ、損傷することがないという効果がある。
また、容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させれば、容器本体の姿勢を安定させた状態で金型から脱型することができ、しかも、容器本体が複数の突出しピンに突き破られるのを抑制できる。
【0012】
また、容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形すれば、容器本体の両側壁の強度や剛性を高めることができ、容器本体の変形等を有効に防ぐことができる。さらに、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とすれば、リブフランジと位置決め部とを一体化し、構成の簡素化を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図18に示すように、少数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1が射出成形され、この射出成形された容器本体1の内部背面側に複数の突出しピン2が突き出されることにより容器本体1が金型から脱型されるタイプであって、容器本体1の背面壁と両側壁とにリブフランジ20を成形し、背面壁のリブフランジ20Aを容器本体1の脱型時に突出しピン2に対向させるようにしている。
【0014】
各半導体ウェーハWは、図15や図16に示すように、例えば薄く丸い口径300mmのシリコンタイプからなり、周縁部に位置合わせや識別用のオリフラあるいは平面略半円形のノッチが選択的に形成される。
【0015】
容器本体1は、図1ないし図3、図6に示すように、成形用の金型に所定の樹脂を含む成形材料が射出されることにより、二枚以下の半導体ウェーハWを整列収納する背の低い(例えば6cm以下)フロントオープンボックスタイプに射出成形され、開口した横長の正面部に同形の蓋体10がエンドレスで弾性のガスケットを介し着脱自在に嵌合される。金型は、図示しない射出成形用のタイプが使用され、射出成形機に装着される。この金型には、型開きと共に突き出る往復動可能な複数の突出しピン2が突き出し板に固定された状態で内蔵される(図16参照)。
【0016】
容器本体1の所定の樹脂としては、例えば力学的性質、耐熱性、寸法安定性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらの樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、帯電防止剤、難燃剤等が適宜添加される。
【0017】
容器本体1の内部、具体的には相対向する両側壁の内面には図16等に示すように、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に間隔をおいて配列される。各ティース3は、容器本体1の前後方向に細長い板に成形され、容器本体1の背面壁寄りの末端部が先細りとされる。
【0018】
容器本体1の天井の略中心部には図1、図4ないし図6に示すように、平面略Y字形を呈する複数の被取付リブ4が立設され、この複数の被取付リブ4上には、図示しない搬送機構に把持される平面略三角形あるいは多角形の吊持フランジ5が螺子等の締結具を介し着脱自在に後から螺着される。
【0019】
容器本体1の開口した正面部は、図3や図14、図18に示すように、外方向に広がるよう屈曲形成されてリムフランジ6を形成し、このリムフランジ6の内部両側には、蓋体施錠用の係止溝7がそれぞれ上下方向に切り欠かれる。リムフランジ6の左右に張り出した両側部には図3や図14に示すように、複数の識別孔8がそれぞれ上下に並べて丸く穿孔され、この複数の識別孔8に識別ピンが選択的に挿入され、かつ図示しない加工装置の検出手段(例えば、光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)に検出されることにより、半導体ウェーハWの有無や枚数、基板収納容器のタイプ等が加工装置に識別される。
【0020】
蓋体10は、図7ないし図10に示すように、表面カバーが透明の横長の箱形に形成され、内部には容器本体1の係止溝7に干渉する施錠機構11が配設されており、裏面の中央部には、複数の半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持するフロントリテーナが装着される。
【0021】
施錠機構11は、図9に示すように、蓋体10の内部両側に支持されて左右方向にスライド可能な一対のスライドピン12と、蓋体10の両側部に出没可能に軸支されて各スライドピン12の先端部に連結され、容器本体1の係止溝7に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪13と、蓋体10に内蔵されてスライドピン12に嵌入され、容器本体1の係止溝7に係止爪13を常時干渉させる一対のコイルバネ14とを備え、容器本体1に嵌合した蓋体10を施錠して固定するよう機能する。
【0022】
蓋体10の表面カバー両側には図9に示すように、各スライドピン12をスライドさせてコイルバネ14を圧縮させ、容器本体1の係止溝7に対する係止爪13の干渉を解除する一対の操作孔15がそれぞれ穿孔される。
【0023】
リブフランジ20は、図1、図2、図4ないし図6、図11ないし図13、図15ないし図18に示すように、容器本体1の背面壁と両側壁とに外側から一体成形され、変形した平面略U字形を呈する。背面壁のリブフランジ20Aは、例えば細長い肉厚の板形に形成され、両側部21が容器本体1の背面壁両側部の略中央に水平に位置しており、中央部22が容器本体1の背面壁中央部の下方に位置する。
【0024】
背面壁のリブフランジ20Aの両側部21は、容器本体1の正面部が下方に傾かないよう金属製のバランスウェイト23が下方からそれぞれ後付けで螺着され、容器本体1の脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向するよう機能する(図16参照)。
【0025】
背面壁のリブフランジ20Aの中央部22は、図4、図13、図16に示すように、略W字形に屈曲形成されて凹部24を形成し、この凹部24の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部25として機能する。
【0026】
各側壁のリブフランジ20Bは、図1、図2、図5、図6、図11ないし図12、図17に示すように、例えば細長い肉厚の板形に形成され、前部26が各側壁前部の下方に位置しており、前部以外の残部27が各側壁の前部以外の残部の略中央に水平に位置して背面壁のリブフランジ20Aと一体化する。各側壁のリブフランジ20Bの前部26は、略逆V字形に屈曲して凹部28を形成し、この凹部28の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部25として機能する。
【0027】
上記において、容器本体1を製造する場合には、先ず、容器本体1用の金型を型締めして溶融した成形材料を高速・高圧で射出・充填し、成形材料の固化に伴う収縮を補うために保圧してリブフランジ20付きの容器本体1を高精度に成形し、脱型するのに十分な剛性となるまで金型内を流れる冷却水で容器本体1を放置・冷却する。この間、次回の成形のため、射出成形機のスクリュを回転させて成形材料を可塑化、計量化する。
【0028】
こうして容器本体1を放置・冷却したら、金型を型開きして複数の突出しピン2を容器本体1の正面側から内部背面側に突き出し、金型に密着した容器本体1を脱型する。この際、金型の複数の突出しピン2に容器本体1の背面壁の剛性を高める肉厚のリブフランジ20Aの両側部が対向する(図16参照)ので、容器本体1の背面側が複数の突出しピン2により突き破られることがない。以下、同様の作業が繰り返される。
【0029】
上記構成によれば、金型の突出しピン2に容器本体1のリブフランジ20Aの両側部21が外側から対向して障害物となり、背面壁の強度を高めて補強機能を発揮するので、例え突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがなく、これにより製造時の容器本体1の損傷をきわめて有効に防止することができる。
【0030】
また、金型から容器本体1を脱型する際の抜き角度を大きく変更する必要がないので、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たすこともない。さらに、背面壁のリブフランジ20Aと位置決め部25とを別々に形成するのではなく、リブフランジ20Aの中央部22に位置決め部25を一体形成するので、構成の簡易化や部品点数の削減が期待できる。
【0031】
なお、本発明に係る基板収納容器及びその製造方法は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、容器本体1の背面壁の中央部上方に、半導体ウェーハWを視認する覗き窓をインサート成形法や二色成形法等により形成しても良い。また、容器本体1やそのリブフランジ20には、FRIDシステムのRFタグを取り付けて自動の移動体識別システムに資するようにしても良い。
【0032】
また、リブフランジ20に複数の位置決め部25を形成するのではなく、容器本体1の底面の前部両側と後部中央とに加工装置に対する位置決め部25をそれぞれ形成しても良い。また、背面壁のリブフランジ20Aの中央部22を略W字形ではなく、略V字形に屈曲形成して凹部24とすることもできる。さらに、特に支障が生じなければ、各側壁のリブフランジ20Bを省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す背面図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の表面カバーを模式的に示す斜視図である。
【図8】図7の裏面図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体やその施錠機構を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体を模式的に示す裏面図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す底面図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す背面図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器及びその製造方法の実施形態を模式的に示す断面正面図である。
【図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体のリブフランジと突出しピンとの関係を模式的に示す背面説明図である。
【図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す側面説明図である。
【図18】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 容器本体
2 突出しピン
3 ティース
10 蓋体
20 リブフランジ
20A 背面壁のリブフランジ
20B 側面壁のリブフランジ
21 両側部
22 中央部
24 凹部
25 位置決め部
26 前部
27 残部
28 凹部
W 半導体ウェーハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三枚以下の基板を収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体が射出成形され、この射出成形された容器本体の内部背面側に突出しピンが突き出されることにより容器本体が金型から脱型される基板収納容器であって、
容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させるようにした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
容器本体の背面壁中央部の下方にリブフランジの中央部を位置させ、背面壁のリブフランジの中央部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とした請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形し、各側壁前部の下方にリブフランジの前部を位置させるとともに、各側壁の前部以外の残部の略中央にはリブフランジの前部以外の残部を位置させ、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器を製造することを特徴とする基板収納容器の製造方法。
【請求項1】
三枚以下の基板を収納するフロントオープンボックスタイプで背の低い容器本体が射出成形され、この射出成形された容器本体の内部背面側に突出しピンが突き出されることにより容器本体が金型から脱型される基板収納容器であって、
容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁外側にリブフランジを成形し、このリブフランジを、容器本体の金型に設けられた脱型用の突出しピンに略対向させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の背面壁両側部の略中央にリブフランジの両側部を位置させて複数の突出しピンに略対向させるようにした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
容器本体の背面壁中央部の下方にリブフランジの中央部を位置させ、背面壁のリブフランジの中央部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とした請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体の両側壁にリブフランジをそれぞれ成形し、各側壁前部の下方にリブフランジの前部を位置させるとともに、各側壁の前部以外の残部の略中央にはリブフランジの前部以外の残部を位置させ、各側壁のリブフランジの前部を屈曲させて凹部を形成し、この凹部の開口を下方に向けて容器本体の位置決め部とした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器を製造することを特徴とする基板収納容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−21370(P2009−21370A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182509(P2007−182509)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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