説明

基板収納容器及び基板の取り出し方法

【課題】基板の横ぶれや位置ずれを抑制してクランプハンドのハンドリングの円滑化を図ることができ、しかも、基板の取り出し作業の作業性を向上させることのできる基板収納容器及び基板の取り出し方法を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハ1を収納する容器本体10を正面が開口したフロントオープンボックスタイプに形成してその内部下方には半導体ウェーハ1の周縁部2下方を縦に支持する下部支持ブロック16を設け、容器本体10の内部上方には、半導体ウェーハ1の周縁部2上方に隙間を介して左右横方向から対向する上部規制板21を設けるとともに、容器本体10の内部後方には、半導体ウェーハ1の周縁部2後方を縦に支持する後部支持ブロック24を設ける。容器本体10を左右方向に傾斜させた場合に上部規制板21に傾斜した半導体ウェーハ1の周縁部2上方を支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに代表される基板を収納、保管、搬送、輸送等する際に使用される基板収納容器及び基板の取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを収納したり、搬送する従来の基板収納容器は、半導体ウェーハを縦に収納するトップオープンボックスタイプや半導体ウェーハを水平に収納するフロントオープンボックスタイプ等(特許文献1、2、3参照)に分類されるが、近時、半導体ウェーハの大口径化(例えばφ300mm、φ450mm等)や薄片化に鑑み、半導体ウェーハを縦に収納するフロントオープンボックスタイプの開発が検討されている。
【0003】
係る基板収納容器は、図示しないが、縦に起立した複数枚の半導体ウェーハを左右方向に並べて整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体とを備え、蓋体が取り外された容器本体の半導体ウェーハが背面吸着型のクランプハンドにより真空吸着され、その後、縦に起立した状態で取り出される。容器本体の内部下方、内部上方、内部後方には、半導体ウェーハの周縁部を支持する支持ブロックがそれぞれ配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−159288号公報
【特許文献2】特開2002−110776号公報
【特許文献3】特開2008−140949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、係る基板収納容器の容器本体の内部上方に支持ブロックが単に設置されると、半導体ウェーハをクランプハンドにより上方にピックアップすることが困難になる事態が予想される。このような事態を解消する手法としては、容器本体の内部上方に支持ブロックを設置しない方法があげられるが、そうすると、半導体ウェーハが横ぶれしやすく、位置が不安定となり、クランプハンドのハンドリングに支障を来たすおそれが考えられる。
【0006】
また、容器本体の半導体ウェーハに背面吸着型のクランプハンドを接触させて真空吸着し、容器本体から半導体ウェーハを取り出そうとすると、支持ブロックに半導体ウェーハの下部や後部が支持固定される関係上、薄く脆い半導体ウェーハにクランプハンドが強く接触して破損するのを防止するため、クランプハンドをきわめて高精度に制御せざるを得ない。この結果、半導体ウェーハの取り出し作業が遅延したり、作業性が悪化する事態が予想される。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板の横ぶれや位置ずれを抑制してクランプハンドのハンドリングの円滑化を図ることができ、しかも、基板の取り出し作業の作業性を向上させることのできる基板収納容器及び基板の取り出し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、容器本体に基板を収納するものであって、容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスタイプに形成してその内部下方には基板の周縁部の下方を縦に支持する下部支持ブロックを設け、容器本体の内部上方には、基板の周縁部の上方に隙間を介して対向する上部規制板を設けるとともに、容器本体の内部後方には、基板の周縁部の後方を縦に支持する後部支持ブロックを設け、容器本体を左右方向に傾斜させた場合に上部規制板に基板の周縁部の上方を支持させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
なお、容器本体の正面を開閉する着脱自在の蓋体を備え、この蓋体の基板に対向する対向面に、基板の周縁部を保持する弾性のフロントリテーナを設けることができる。
また、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を備え、この施錠機構は、容器本体に設けられ、容器本体の正面周縁部を貫通して蓋体の周壁に係合可能な係合爪と、この係合爪を蓋体の周壁に係合させるバネ部材とを含むと良い。
【0010】
また、下部支持ブロックと後部支持ブロックのうち、少なくとも下部支持ブロックの基板に対向する対向面を基板の周縁部に沿うよう曲げ、この下部支持ブロックの対向面には、基板の周縁部を支持する支持溝を形成することができる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3記載の基板収納容器の容器本体から基板をクランプハンドにより取り出す基板の取り出し方法であって、
正面が開口した容器本体を左右方向に傾斜させて上部規制板に基板の周縁部の上方を支持させ、容器本体の開口した正面内にクランプハンドを挿入して基板に対向させるとともに、このクランプハンドを基板に接触させて吸着保持し、クランプハンドを上昇させて基板を下部支持ブロックから取り外し、その後、容器本体からクランプハンドを引き抜いて後退させることを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ200mm、300mm、450mmタイプの丸い半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス、液晶ガラス、記憶ディスク等が含まれる。この基板は、撓み量や単数複数の数を特に問うものではない。また、容器本体と蓋体とは、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。容器本体の上部、後部、側部には、基板観察用の透視窓や物流管理用のICタグ等を取り付けることができる。
【0013】
上部規制板は、容器本体の前後方向に伸びる板からなり、基板の周縁部上方に対向する対向面が厚さ方向に切り欠かれ、この対向面に傾いた基板の周縁部上方が位置決め接触することが好ましい。この上部規制板は、単数でも良いし、複数でも良い。また、クランプハンドは、例えば略U字形、略Y字形、多角形等に形成され、基板を減圧して吸着保持することができる。さらに、本発明に係る基板収納容器は、基板の収納、保管、搬送、輸送等に使用することができる。
【0014】
本発明によれば、基板収納容器の容器本体から基板をクランプハンドにより取り出す場合には、先ず、基板を収納した容器本体を左右方向に傾斜させ、上部規制板に傾斜した基板の周縁部上方を支持させる。こうして上部規制板に基板の周縁部上方を支持させたら、容器本体の開口した正面内にクランプハンドを挿入して基板に対向させ、このクランプハンドを基板に接触させ、吸着保持させる。このクランプハンドの保持の際、基板が上部規制板に接触していない反対側の方向に傾斜可能なので、クランプハンドを安心して使用することができ、クランプハンドの保持に伴い基板が破損することが少ない。
【0015】
基板をクランプハンドに保持させたら、クランプハンドを上昇させて基板と下部支持ブロックとの干渉を回避し、容器本体の正面からクランプハンドを引き抜いて後退させれば、基板を容易に取り出すことができる。この際、上部規制板に基板が単に接触するに止まるので、クランプハンドにより基板を上方に容易にピックアップすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板の横ぶれや位置ずれを抑制してクランプハンドのハンドリングの円滑化を図ることができ、しかも、基板の取り出し作業の作業性を向上させることができるという効果がある。
【0017】
また、容器本体の正面を開閉する着脱自在の蓋体を備え、この蓋体の基板に対向する対向面に、基板の周縁部を保持する弾性のフロントリテーナを設ければ、基板収納容器の密封性を確保したり、容器本体に収納された基板の位置ずれやがたつきを抑制することができる。
【0018】
さらに、下部支持ブロックと後部支持ブロックのうち、少なくとも下部支持ブロックの基板に対向する対向面を基板の周縁部に沿うよう曲げ、この下部支持ブロックの対向面には、基板の周縁部を支持する支持溝を形成すれば、基板を適切に支持してその位置ずれやがたつきを防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す部分断面斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における下部支持ブロックを模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と上部規制板を模式的に示す正面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における傾斜した容器本体と上部規制板を模式的に示す正面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における後部支持ブロックを模式的に示す断面斜視説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体とフロントリテーナとを模式的に示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の施錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の解錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器及び基板の取り出し方法の実施形態における蓋体が取り外された容器本体を模式的に示す部分断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器及び基板の取り出し方法の実施形態における半導体ウェーハとクランプハンドとを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図12に示すように、複数枚の半導体ウェーハ1を収納する容器本体10と、この容器本体10の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体40と、容器本体10の正面に嵌合された蓋体40を施錠する施錠機構60とを備え、容器本体10内から縦に支持された半導体ウェーハ1が背面吸着型のクランプハンド70により取り出される。
【0021】
半導体ウェーハ1は、図2、図3、図5や図6に示すように、例えば薄く丸い円板にスライスされた撓み量の大きいφ450mmのシリコンウェーハ等からなり、容器本体10に25枚あるいは26枚の枚数で縦に起立した状態で整列収納される。このような半導体ウェーハ1は、半導体デバイス工場で表面に回路パターンが形成され、半導体チップの生産に使用される。
【0022】
容器本体10と蓋体40とは、所定の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ成形される。この成形材料の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、環状オレフィン樹脂、これらのアロイ樹脂等があげられる。樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じ、選択的に添加される。
【0023】
容器本体10は、図1ないし図3、図11に示すように、所定の成形材料により正面が縦長に開口した透明のフロントオープンボックスタイプに射出成形され、内部下方には下部支持ブロック16が装着されるとともに、内部上方には複数の上部規制板21が装着され、かつ内部後方には後部支持ブロック24が装着されており、半導体加工装置30の左右方向に揺動可能なテーブル31上に搭載される。
【0024】
容器本体10は、前後方向に縦長の底板11を備え、この底板11の底面の前部両側と後部中央とには、断面略M字形あるいは断面略凹字形を呈した複数の位置決め具12がそれぞれ直接間接に配設されており、この複数の位置決め具12が半導体加工装置30のテーブル31から突出した位置決めピン32に上方から着脱自在に嵌合することにより、容器本体10が高精度に位置決めされる。このようにして容器本体10が高精度に位置決めされ、容器本体10の正面から蓋体40が取り外されると、半導体加工装置30のテーブル31が揺動して容器本体10をその左右方向に所定の角度θで傾斜させる(図6参照)。
【0025】
容器本体10の正面周縁部13は、断面略Z字形に屈曲形成されて外方向に膨出し、蓋体40の過剰な嵌合を規制するよう機能する。この正面周縁部13の両側には、施錠機構60用の溝孔14がそれぞれ穿孔される。また、容器本体10の両側壁外面には、容器本体10の姿勢・向きを変更する回転ピンや握持操作用のハンドルがそれぞれ選択的に装着される。
【0026】
下部支持ブロック16、複数の上部規制板21、及び後部支持ブロック24は、所定の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ成形される。この成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、環状オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、これらのアロイ樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂等があげられる。樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が選択的に添加される。
【0027】
下部支持ブロック16は、図2ないし図4に示すように、基本的には容器本体10の前後方向に伸びる板形に形成されてその前部17よりも後部18が上方にやや高く突出し、容器本体10の底板11の内面中央に取付リブ19を介し装着されて半導体ウェーハ1の周縁部2を縦に支持するよう機能する。
【0028】
下部支持ブロック16の半導体ウェーハ1に対向する表面は半導体ウェーハ1の周縁部2に沿うよう断面半円弧形に湾曲形成され、この凹んだ表面には、容器本体10の前後方向に半円弧形に湾曲しながら伸長する複数の支持溝20が左右方向に並べて凹み形成されており、各支持溝20が半導体ウェーハ1の周縁部2下方を縦に支持する。各支持溝20は、断面略V字形に形成され、前部が容器本体10の正面側に位置して低い高さ(深さ)とされるとともに、後部が容器本体10の後方側に位置して高くされており、半導体ウェーハ1の取り出しを円滑化する。
【0029】
複数の上部規制板21は、図3、図5、図6に示すように、容器本体10の天板22の内面に並設されて左右方向に所定のピッチで配列され、各上部規制板21が容器本体10の前後方向に伸びる薄板に形成されており、この上部規制板21が蓋体40の有無に拘わらず、半導体ウェーハ1の周縁部2の上方に僅かな隙間を介し左右横方向から対向する。
【0030】
上部規制板21の半導体ウェーハ1の周縁部2上方に対向する対向面23は、上部規制板21の厚さ方向に平坦に切り欠かれ、容器本体10が左右方向に傾斜して半導体ウェーハ1を同方向に傾けると、この傾いた半導体ウェーハ1の周縁部2上方に位置決め接触し、支持するよう機能する。
【0031】
後部支持ブロック24は、図2、図3、図7に示すように、基本的には細長いブロック形に形成され、容器本体10の背面壁25の内面下部に取付リブ19を介し装着されて半導体ウェーハ1の周縁部2を縦に支持する。この後部支持ブロック24の半導体ウェーハ1に対向する表面は斜めに傾斜形成されてその下部が容器本体10の正面方向に突出し、この表面の上下部には、複数のガイド支持溝26がそれぞれ左右方向に並べて形成されており、各ガイド支持溝26が半導体ウェーハ1の周縁部2の下部後方をガイドして縦に支持し、かつ半導体ウェーハ1の挿入位置を規制する。
【0032】
各ガイド支持溝26は、相対する傾斜面27で半導体ウェーハ1を位置規制する断面略V字形に形成され、最深の谷部28が半導体ウェーハ1の厚さよりも幅広の平坦面に形成される。このようなガイド支持溝26は、相対する傾斜面27が半導体ウェーハ1に接触せず、最深の谷部28が半導体ウェーハ1に接触する。
【0033】
蓋体40は、図1ないし図3、図8、図11に示すように、容器本体10の開口した正面に着脱自在に嵌合される縦長の筐体41と、この筐体41の開口した表面を被覆する表面プレート50とを備え、半導体加工装置30近傍の昇降可能な蓋体開閉装置51に着脱自在に真空吸着されて容器本体10の正面に自動的に取り付け、取り外しされる。
【0034】
筐体41は、断面略皿形に形成され、周壁に弾性変形可能なエンドレスのガスケット42が嵌合されており、このガスケット42が容器本体10の正面周縁部13内の段差部15に弾接してシール性を確保する。筐体41の周壁両側には、容器本体10の溝孔14に近接する施錠機構60用の係合突起43がそれぞれ突出形成される。
【0035】
筐体41の半導体ウェーハ1に対向する対向面44の中央部は半導体ウェーハ1の周縁部2前方に沿うよう湾曲して凹み形成され、対向面44の上下部には、後部支持ブロック24等と同様の成形材料で成形された弾性のフロントリテーナ45がそれぞれ配設されており、この一対のフロントリテーナ45が半導体ウェーハ1の周縁部2の上下部を弾発的に圧接保持する。
【0036】
各フロントリテーナ45は、図2や図3、図8、図11に示すように、筐体41の対向面44の上部あるいは下部に配設されて容器本体10の背面壁25方向に突出する突出リブ46と、この突出リブ46の先端部と筐体41の対向面44との間に斜めに張架されて左右方向に並ぶ複数の弾性片47とを備えて構成される。各弾性片47は、山部と谷部とを交互に有する略M字形に屈曲形成され、複数の山部に保持部48がそれぞれ一体形成されており、各保持部48に半導体ウェーハ1の周縁部2を縦に保持する断面略V字形の保持溝49が凹み形成される。
【0037】
施錠機構60は、図1、図9、図10に示すように、容器本体10の正面周縁部13付近の両側に、蓋体開閉装置51に外部から操作されるスライド軸61がそれぞれ嵌通軸支され、各スライド軸61の周面に、容器本体10の溝孔14を外側から貫通して蓋体40の係合突起43に正面側から係合する係合爪62が一体形成されており、この係合爪62が略L字形に屈曲形成される。各スライド軸61は、上下方向に伸長形成されて同方向にスライド可能とされ、弾圧付勢用のコイルバネ63が嵌合されており、このコイルバネ63により常時下方にスライドして係合爪62を蓋体40の係合突起43に係合させるよう機能する。
【0038】
このような施錠機構60は、蓋体40の取り付け時には、スライド軸61をコイルバネ63により下方にスライドさせて係合爪62と蓋体40の係合突起43とを係合させ(図9参照)、蓋体40の取り外し時には、スライド軸61を上方にスライドさせて係合爪62と蓋体40の係合突起43との係合を解除し(図10参照)、蓋体40を取り外し可能とする。
【0039】
クランプハンド70は、図12に示すように、例えば半導体ウェーハ1を縦に保持可能な略Y字形のクランプアーム71を備え、図示しない専用のロボットに回転可能に装着されて容器本体10に対して進退動する。クランプアーム71は、図示しない真空ポンプ等からなる排気装置に接続され、この排気装置の駆動に伴う空気の排気より半導体ウェーハ1の背面に真空吸着して保持する。
【0040】
上記構成において、基板収納容器の容器本体10から縦に支持された半導体ウェーハ1をクランプハンド70により取り出す場合には、先ず、半導体加工装置30のテーブル31の位置決めピン32に容器本体10が位置決めされ、この容器本体10の正面から蓋体40が蓋体開閉装置51により取り外された(図11参照)後、半導体加工装置30のテーブル31が揺動して容器本体10を左右方向に傾斜させる。
【0041】
この容器本体10の傾斜の際、上部規制板21の切り欠かれた対向面23に離隔していた半導体ウェーハ1の周縁部2上方が傾いて接触し、位置決め支持されるので、半導体ウェーハ1が左右方向に横ぶれしたり、位置ずれすることがなく、クランプハンド70のハンドリングに支障を来たすおそれを有効に排除することができる。容器本体10の傾斜角度θは、容器本体10の傾斜支持を安定させたり、上部規制板21の対向面23に半導体ウェーハ1の周縁部2上方を一定方向に傾けて支持させる観点から、5°以内であることが好ましい。
【0042】
なお、半導体加工装置30に、容器本体10を傾斜させた場合の保持機構が設置される場合には、容器本体10を5°以上傾斜させることができる。
【0043】
容器本体10が傾斜して上部規制板21に半導体ウェーハ1の周縁部2上方が支持されると、容器本体10の開口した正面内にクランプハンド70のクランプアーム71が挿入されて隣接する半導体ウェーハ1・1の間に進入し、クランプアーム71が半導体ウェーハ1の背面に対向して接触した後、半導体ウェーハ1の背面に真空吸着して保持する。
【0044】
係るクランプハンド70の保持の際、半導体ウェーハ1が上部規制板21に接触していない反対側の方向に揺動可能で、遊び(play)が確保されているので、半導体ウェーハ1とクランプハンド70とが強く接触することがない。したがって、クランプハンド70を安心して挿入することができ、クランプハンド70の挿入や保持に伴い半導体ウェーハ1が破損することがない。
【0045】
半導体ウェーハ1がクランプハンド70に保持されると、クランプハンド70がやや上方向に動作して半導体ウェーハ1と下部支持ブロック16との干渉を回避し、容器本体10の正面からクランプハンド70が水平に引き抜かれて半導体ウェーハ1を後部支持ブロック24から取り外し、このクランプハンド70が後退することにより、縦に支持された半導体ウェーハ1が容易かつ確実に取り出される。この際、半導体ウェーハ1は、上部規制板21に挟持されているのではなく、単に接触するに止まるので、クランプハンド70により上方に容易にピックアップされる。
【0046】
クランプハンド70は、後退後、回転して半導体ウェーハ1の姿勢を起立した状態から水平状態に変更し、この半導体ウェーハ1を工程内用の基板収納容器の容器本体(図示せず)に挿入して収納する。その後、半導体ウェーハ1は、工程内用の基板収納容器から適宜取り出され、各種の加工や処理が施される。
【0047】
上記構成によれば、上部規制板21に半導体ウェーハ1を挟持させたり、嵌合保持させるのではなく、位置決め接触させるので、半導体ウェーハ1をクランプハンド70により上方に簡単にピックアップすることができる。また、上部規制板21により半導体ウェーハ1の横ぶれや位置ずれを抑制防止し、クランプハンド70のハンドリングに支障を来たすおそれを排除することができる。また、上部規制板21に半導体ウェーハ1の裏面が規制され、この半導体ウェーハ1の裏面を基準にしてクランプハンド70がクランプするので、半導体ウェーハ1の厚さバラツキを考慮することなくハンドリングすることができる。
【0048】
また、半導体ウェーハ1にクランプハンド70を接触させて真空吸着する際、半導体ウェーハ1が上部規制板21に接触していない反対側の方向に傾いて大きなストレスが加わるのを回避することができるので、半導体ウェーハ1の破損防止の観点からクランプハンド70をきわめて高精度に制御する必要がない。したがって、半導体ウェーハ1の取り出し作業の遅延や作業性の悪化を抑制防止することができる。
【0049】
また、容器本体10内に半導体ウェーハ1が水平ではなく、起立して支持されるので、例え半導体ウェーハ1が撓み量の大きいφ450mmタイプの場合でも、半導体ウェーハ1の自重による撓みを防ぎ、しかも、隣接する半導体ウェーハ1・1間の間隔を狭くすることができ、容器本体10の大型化を防止して保管時や輸送時のスペースの有効利用を図ることができる。また、半導体ウェーハ1の支持姿勢の変更により、撓み量の大きい半導体ウェーハ1が振動で容易に破損するのを防止することが可能になる。
【0050】
また、半導体ウェーハ1が一対のフロントリテーナ45により容器本体10の内部両側の傾斜面をスライドして持ち上げられることがないので、容器本体10から蓋体40を取り外しても、半導体ウェーハ1が容器本体10の傾斜面の途中で摩擦抵抗により引っかかり、位置ずれして取り出しに支障を来たしたり、損傷するおそれの排除が大いに期待できる。さらに、蓋体40ではなく、容器本体10の正面周縁部13付近に施錠機構60を取り付けるので、蓋体40を薄く形成したり、蓋体40の洗浄乾燥作業を容易化したり、半導体ウェーハ1の汚染を抑制することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では容器本体10の底板11に複数の位置決め具12を配設したが、容器本体10の底板11にボトムプレートを装着し、このボトムプレートに複数の位置決め具12を配設しても良い。また、上部規制板21の対向面23を、上部規制板21の厚さ方向に傾けて切り欠いたり、湾曲等させて切り欠き、半導体ウェーハ1の上部規制板21との接触面積を減少させて汚染防止を図るようにしても良い。
【0052】
また、後部支持ブロック24を、容器本体10の背面壁25の内面下部に装着するのではなく、背面壁25の内面中央部等に装着しても良い。この場合、後部支持ブロック24を下部支持ブロック16に準じた形とし、後部支持ブロック24の半導体ウェーハ1に対向する対向面を半導体ウェーハ1の周縁部に沿うよう湾曲させ、この後部支持ブロック24の対向面に、半導体ウェーハ1の周縁部を支持する支持溝を形成しても良い。また、半導体加工装置30の位置決めピン32を昇降させて容器本体10を左右方向に所定の角度θで傾斜させても良い。
【0053】
また、一対のフロントリテーナ45ではなく、一のフロントリテーナ45により半導体ウェーハ1の周縁部2の上部あるいは下部を弾発的に保持することもできる。フロントリテーナ45の保持部48は、必要に応じて増減することができる。フロントリテーナ45の保持溝49は、断面略U字形や略Y字形に形成することができる。
【0054】
また、施錠機構60を、蓋体40に支持されて外部から回転操作される回転体と、この回転体に連結されてその回転に伴い蓋体40の内外方向に進退する複数の進退動体と、各進退動体に設けられ、蓋体40の周壁を貫通して容器本体10の正面周縁部13内に係合する係合爪とを含む構成とすることが可能である。
【0055】
また、施錠機構60を、回転体と、この回転体に連結されてその回転に伴い蓋体40の内外方向に進退する進退動バーとから構成し、蓋体40に外部から操作可能に内蔵されるラッチ機構、又はラックとピニオンとを利用して容器本体10の正面周縁部13内に係合爪を係合させる構造に構成することも可能である。さらに、施錠機構60を、容器本体10の正面周縁部13の外周に突設される複数のクランプ部と、蓋体40の周壁に回転可能に軸支されて容器本体10のクランプ部に着脱自在に係合するクランプ片とから構成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 半導体ウェーハ(基板)
2 周縁部
10 容器本体
11 底板
13 正面周縁部
14 溝孔
16 下部支持ブロック
17 前部
18 後部
20 支持溝
21 上部規制板
22 天板
23 対向面
24 後部支持ブロック
25 背面壁
26 ガイド支持溝
30 半導体加工装置
31 テーブル
40 蓋体
41 筐体
43 係合突起
44 対向面
45 フロントリテーナ
46 突出リブ
47 弾性片
48 保持部
49 保持溝
50 表面プレート
60 施錠機構
61 スライド軸
62 係合爪
63 コイルバネ(バネ部材)
70 クランプハンド
71 クランプアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に基板を収納する基板収納容器であって、容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスタイプに形成してその内部下方には基板の周縁部の下方を縦に支持する下部支持ブロックを設け、容器本体の内部上方には、基板の周縁部の上方に隙間を介して対向する上部規制板を設けるとともに、容器本体の内部後方には、基板の周縁部の後方を縦に支持する後部支持ブロックを設け、容器本体を左右方向に傾斜させた場合に上部規制板に基板の周縁部の上方を支持させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の正面を開閉する着脱自在の蓋体を備え、この蓋体の基板に対向する対向面に、基板の周縁部を保持する弾性のフロントリテーナを設けた請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
下部支持ブロックと後部支持ブロックのうち、少なくとも下部支持ブロックの基板に対向する対向面を基板の周縁部に沿うよう曲げ、この下部支持ブロックの対向面には、基板の周縁部を支持する支持溝を形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
請求項1、2、又は3記載の基板収納容器の容器本体から基板をクランプハンドにより取り出す基板の取り出し方法であって、
正面が開口した容器本体を左右方向に傾斜させて上部規制板に基板の周縁部の上方を支持させ、容器本体の開口した正面内にクランプハンドを挿入して基板に対向させるとともに、このクランプハンドを基板に接触させて吸着保持し、クランプハンドを上昇させて基板を下部支持ブロックから取り外し、その後、容器本体からクランプハンドを引き抜いて後退させることを特徴とする基板の取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−182949(P2010−182949A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26405(P2009−26405)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】