説明

基板収納容器

【課題】基板の位置ずれを防いで円滑に取り出すことのできる基板収納容器を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハ1を収納する容器本体10を正面が開口したフロントオープンボックスに成形してその内部下方には半導体ウェーハ1を支持する下部支持ブロック15を装着し、この下部支持ブロック15の半導体ウェーハ1に対向する対向面には、半導体ウェーハの周縁部2下方を縦に支持する支持溝16を複数形成する。また、容器本体10の内部上方に、下部支持ブロック15に対向する上部支持ブロック17を装着してその半導体ウェーハ1に対向する対向面には半導体ウェーハ1の周縁部2上方を縦に支持する支持溝18を複数形成するとともに、各支持溝18の谷部19を半導体ウェーハ1の周縁部2上方に半導体ウェーハ1移動用の空隙22を介して対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに代表される基板を収納、保管、搬送、輸送等する際に使用される基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体とを備えて構成され、蓋体が取り外された容器本体から半導体ウェーハがクランプハンドにより取り出される。
【0003】
容器本体は、その内部両側に、半導体ウェーハを水平に支持する左右一対のティースが対設され、この左右一対のティースが容器本体の上下方向に所定の間隔で配列されており、半導体ウェーハの収納や輸送に使用される。この容器本体の内部両側の後方は、ティースに支持された半導体ウェーハを摩擦により持ち上げる傾斜面としてそれぞれ形成され、半導体ウェーハの接触面積を減少させて擦れに伴うパーティクルの発生を防止したり、輸送時の振動や衝撃を緩和するよう機能する。
【0004】
蓋体は、その半導体ウェーハに対向する対向面に、ティースに支持された半導体ウェーハの周縁部前方を持ち上げて押圧保持する弾性のリテーナが装着され、容器本体の開口した正面に取り付け、取り外しされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−522078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、容器本体の内部両側の傾斜面に半導体ウェーハが蓋体のリテーナにより持ち上げられるが、容器本体から蓋体を取り外しても、半導体ウェーハがティースの定位置まで滑り落ちず、その結果、半導体ウェーハが位置ずれして取り出しに支障を来たしたり、損傷するおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板の位置ずれを防いで円滑に取り出すことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、容器本体に基板を収納するものであって、容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスに形成してその内部下方には基板を支持する下部支持ブロックを設け、この下部支持ブロックの基板に対向する対向面には、基板の周縁部下方を縦に支持する支持溝を形成し、容器本体の内部上方に、下部支持ブロックに対向する上部支持ブロックを設けてその基板に対向する対向面には基板の周縁部上方を縦に支持する支持溝を形成するとともに、この支持溝の谷部を基板の周縁部上方に基板移動用の空隙を介して対向させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
なお、容器本体の正面を開閉する着脱自在の蓋体を備え、この蓋体の基板に対向する対向面に、基板の周縁部を保持する弾性のフロントリテーナを設けることができる。
また、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を備え、この施錠機構は、容器本体に設けられ、容器本体の正面周縁部を貫通して蓋体の周壁に係合可能な係合爪と、この係合爪を蓋体の周壁に係合させるバネ部材とを含むことができる。
また、容器本体の内部後方に、基板の中心線近傍に位置する後部支持ブロックを設け、この後部支持ブロックに基板の周縁部後方を縦に支持させることもできる。
【0010】
また、下部支持ブロックの支持溝と上部支持ブロックの支持溝とを基板の周縁部に沿うようそれぞれ湾曲形成し、下部支持ブロックの支持溝の最小高さと最大高さとの差をS1とし、上部支持ブロックの支持溝における谷部から基板の周縁部上方までの長さの最小長さをS2とした場合に、S2>S1の関係とすることが好ましい。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ200mm、300mm、450mmタイプの丸い半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス、液晶ガラス、記憶ディスク等が含まれる。この基板は、撓み量や単数複数の数を特に問うものではない。また、容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。この容器本体の上部、後部、側部には、基板観察用の透視窓や物流管理用のICタグ等を取り付けることができる。さらに、本発明に係る基板収納容器は、基板の収納、保管、搬送、輸送等に使用することができる。
【0012】
本発明によれば、容器本体内に基板が水平ではなく、起立して縦に支持されるので、例え基板の撓み量が大きい場合でも、基板の自重による撓みを抑制することができる。また、基板がリテーナにより容器本体の内部両側の傾斜面をスライドして持ち上げられることがないので、容器本体から蓋体を取り外しても、基板が容器本体の傾斜面の途中で摩擦抵抗により引っかかり、位置ずれして取り出しに支障を来たしたり、損傷するおそれを防ぐことできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の位置ずれを防いで円滑に取り出すことができるという効果がある。また、上部支持ブロックの支持溝が基板の周縁部上方に空隙を介して対向するので、容器本体の下部支持ブロックから基板を持ち上げて取り出す際、上部支持ブロックが障害物になることが少ない。
【0014】
また、容器本体の内部後方に、基板の中心線近傍に位置する後部支持ブロックを設け、この後部支持ブロックに基板の周縁部後方を縦に支持させれば、容器本体に対する基板の挿入量や位置を規制することができる。
【0015】
また、下部支持ブロックの支持溝と上部支持ブロックの支持溝とを基板の周縁部に沿うようそれぞれ湾曲形成し、下部支持ブロックの支持溝の最小高さと最大高さとの差をS1とし、上部支持ブロックの支持溝における谷部から基板の周縁部上方までの長さの最小長さをS2とした場合に、S2>S1の関係とすれば、下部支持ブロックから基板を持ち上げた際、基板と上部支持ブロックとの干渉に伴い、基板が破損したり、擦れて塵埃を発生させることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の施錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の解錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体が取り外された容器本体を模式的に示す断面説明図である。
【図8】図7の容器本体にクランプハンドが挿入された状態を模式的に示す断面説明図である。
【図9】図8のクランプハンドが半導体ウェーハを僅かに持ち上げた状態を模式的に示す断面説明図である。
【図10】図9のクランプハンドが後退して半導体ウェーハを容器本体から取り出す状態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図10に示すように、複数枚の半導体ウェーハ1を収納する容器本体10と、この容器本体10の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体30と、容器本体10の正面に嵌合された蓋体30を施錠する施錠機構40とを備え、容器本体10内から縦に支持された半導体ウェーハ1がクランプハンド50により取り出される。
【0018】
半導体ウェーハ1は、図2ないし図4等に示すように、例えば薄く丸い円板にスライスされた撓み量の大きいφ450mmのシリコンウェーハ等からなり、容器本体10に25枚あるいは26枚の枚数で縦に整列収納される。
【0019】
容器本体10と蓋体30とは、所定の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ成形される。この成形材料の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、環状オレフィン樹脂、これらのアロイ樹脂等があげられる。係る樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じ、選択的に添加される。
【0020】
容器本体10は、図1ないし図4等に示すように、正面が縦長に開口した透明のフロントオープンボックスタイプに射出成形され、内部下方には下部支持ブロック15が装着されるとともに、内部上方には上部支持ブロック17が装着され、かつ内部後方には後部支持ブロック23が装着されており、図示しない半導体加工装置のテーブル上に水平に搭載される。
【0021】
容器本体10は、前後方向に伸びる縦長の底板11を備え、この底板11の底面の前部両側と後部中央とには、断面略M字形あるいは断面略凹字形を呈した複数の位置決め具12がそれぞれ直接間接に配設されており、この複数の位置決め具12が半導体加工装置のテーブルから突出した位置決めピンに上方から着脱自在に嵌合することにより、容器本体10が高精度に位置決めされる。
【0022】
容器本体10の正面周縁部13は、断面略Z字形に屈曲形成されて外方向に膨出し、蓋体30の過剰な嵌合と奥側方向の位置とを規制するよう機能する。この正面周縁部13の両側には、施錠機構40用の溝孔14がそれぞれ穿孔される。また、容器本体10の両側壁外面には、容器本体10の姿勢・向きを変更する回転ピンや握持操作用のハンドルがそれぞれ選択的に装着される。
【0023】
下部支持ブロック15、上部支持ブロック17、及び後部支持ブロック23は、所定の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ成形される。この成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、環状オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、これらのアロイ樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂等があげられる。係る樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が選択的に添加される。
【0024】
下部支持ブロック15は、図2や図3に示すように、基本的には容器本体10の前後方向に伸びるブロック形に形成され、容器本体10の底板11の内面中央に装着されて複数枚の半導体ウェーハ1の周縁部2をそれぞれ支持するよう機能する。
【0025】
下部支持ブロック15の半導体ウェーハ1に対向する表面は半導体ウェーハ1の周縁部2に沿うよう断面半円弧形に湾曲形成され、この凹んだ表面には、容器本体10の前後方向に半円弧形に湾曲しながら伸長する複数の支持溝16が左右方向に並べて凹み形成される。各支持溝16は、断面略Y字形に形成され、半導体ウェーハ1の周縁部2下方を縦に支持する。
【0026】
上部支持ブロック17は、図2ないし図4に示すように、基本的には容器本体10の前後方向に伸びるブロック形に形成され、容器本体10の天板の内面中央に装着されて下部支持ブロック15に上方から対向しており、複数枚の半導体ウェーハ1の周縁部2をそれぞれ支持するよう機能する。
【0027】
上部支持ブロック17の半導体ウェーハ1に対向する表面は半導体ウェーハ1の周縁部2に沿うよう断面半円弧形に湾曲形成され、この凹んだ表面には、容器本体10の前後方向に半円弧形に湾曲しながら伸長する複数の支持溝18が左右方向に並べて凹み形成されており、各支持溝18が断面略V字形に形成されて半導体ウェーハ1の周縁部2上方を縦に遊嵌支持する。
【0028】
各支持溝18は、図3に示すように、半導体ウェーハ1の厚さよりも幅広で平坦な谷部19と、この谷部19から1°〜10°の狭い角度でそれぞれ傾斜しながら下方に伸長される一対の第一傾斜面20と、各第一傾斜面20の端部に連続して形成され、5°〜30°の広い角度でそれぞれ傾斜しながら下方に拡開する一対の第二傾斜面21とを備え、この傾斜角度の大きい第二傾斜面21が半導体ウェーハ1の周縁部2上方を谷部19に誘導して芯出しする。
【0029】
谷部19は、半導体ウェーハ1の周縁部2上方に移動用の空隙22を介して対向し、この半導体ウェーハ1の周縁部2上方に非接触となるよう形成されており、半導体ウェーハ1の取り出しの円滑化や汚染防止を図るよう機能する。空隙22は、半導体ウェーハ1の取り出しを容易にする観点から、半導体ウェーハ1の厚さよりも十分に幅広で、半導体ウェーハ1の挿入や取り出し時に過度に接触して擦れることのないような空間に区画形成される。
【0030】
下部支持ブロック15の支持溝16と上部支持ブロック17の支持溝18とは、図3に示すように、下部支持ブロック15における支持溝16の谷部の最小高さと最大高さとの差がS1とされ、上部支持ブロック17の支持溝18における谷部19から半導体ウェーハ1の周縁部2上方までの長さの最小長さがS2の場合に、S2>S1の関係とされる。
【0031】
後部支持ブロック23は、図2や図3に示すように、基本的には容器本体10の上下方向に伸びるブロック形に形成され、容器本体10の背面壁の内面中央に装着されて半導体ウェーハ1の中心線近傍に位置し、複数枚の半導体ウェーハ1の周縁部2をそれぞれ縦に支持するよう機能する。
【0032】
後部支持ブロック23の半導体ウェーハ1に対向する表面には、複数のガイド支持溝24が左右方向に並べて形成され、各ガイド支持溝24が半導体ウェーハ1の周縁部2後方をガイドして縦に支持し、かつ半導体ウェーハ1の後方における挿入位置を規制する。
【0033】
各ガイド支持溝24は、半導体ウェーハ1の厚さよりも幅広で平坦な谷部と、この谷部から所定の角度でそれぞれ傾斜しながら前方に伸びる一対の傾斜面とを備えた断面略V字形に形成され、相対する傾斜面で半導体ウェーハ1を位置規制する。このガイド支持溝24は、谷部に半導体ウェーハ1が接触する際、傾斜面に半導体ウェーハ1のエッジが接触しないよう形成される。
【0034】
なお、下部支持ブロック15の支持溝16、上部支持ブロック17の支持溝18、及び後部支持ブロック23のガイド支持溝24の半導体ウェーハ1とのオーバーラップ量は、それぞれ5〜20mmの範囲が好ましい。また、上部支持ブロック17の支持溝18は、半導体ウェーハ1との空隙22を介してオーバーラップ量を確保することが好ましい。
【0035】
蓋体30は、図1、図4ないし図6に示すように、容器本体10の開口した正面に着脱自在に嵌合される縦長の筐体31と、この筐体31の開口した表面を被覆する表面プレート32とを備え、半導体加工装置近傍の昇降可能な蓋体開閉装置(図示せず)に着脱自在に真空吸着されて容器本体10の正面に自動的に取り付け、取り外しされる。
【0036】
筐体31は、断面略皿形に形成され、周壁に弾性変形可能なエンドレスのガスケット33が嵌合されており、このガスケット33が容器本体10の正面周縁部13内の段差部に弾接してシール性を確保する(図5、図6参照)。筐体31の周壁両側には、容器本体10の溝孔14に近接する施錠機構40用の係合突起34がそれぞれ突出形成される。また、筐体31の半導体ウェーハ1に対向する対向面には、後部支持ブロック23等と同様の成形材料で成形された弾性のフロントリテーナ35が配設され、このフロントリテーナ35が複数枚の半導体ウェーハ1の周縁部2前方をそれぞれ弾発的に圧接保持する。
【0037】
フロントリテーナ35は、図4に示すように、筐体31の対向面の上下部に配設されて容器本体10の背面壁方向に突出する一対の支柱リブ36と、この一対の支柱リブ36の間に架設されて左右方向に並ぶ複数の弾性片37とを備えて構成される。各弾性片37は、半導体ウェーハ1の周縁部2前方に沿うよう略半円弧形に凹んで湾曲形成され、複数の保持部38が一体形成されており、各保持部38に半導体ウェーハ1の周縁部2前方を縦に保持する断面略U字形、略V字形、略Y字形の保持溝39が凹み形成される。
【0038】
なお、下部支持ブロック15、上部支持ブロック17、後部支持ブロック23、及び蓋体30のフロントリテーナ35は、半導体ウェーハ1の全周の50%〜70%を保持することが好ましい。これは、保持範囲が半導体ウェーハ1の全周の50%未満の場合には、基板収納容器の輸送時の振動や衝撃に伴い、半導体ウェーハ1が回転したり、破損するおそれがあるからである。これに対し、半導体ウェーハ1の全周の70%を超える場合には、基板収納容器の輸送時の振動や衝撃に伴い、半導体ウェーハ1に付着するパーティクルの付着量が増加するおそれがあり、しかも、半導体ウェーハ1の取出しが困難になるからである。
【0039】
施錠機構40は、図5や図6に示すように、容器本体10の正面周縁部13付近の両側に、蓋体開閉装置に外部から操作されるスライド軸41がそれぞれ嵌通軸支され、各スライド軸41の周面に、容器本体10の溝孔14を外側から貫通して蓋体30の係合突起34に正面側から係合する係合爪42が一体形成されており、この係合爪42が略L字形に屈曲形成される。各スライド軸41は、上下方向に伸長形成されて同方向にスライド可能とされ、弾圧付勢用のコイルバネ43が嵌合されており、このコイルバネ43により常時下方にスライドして係合爪42を蓋体30の係合突起34に係合させるよう機能する。
【0040】
このような施錠機構40は、蓋体30の取り付け時には、スライド軸41をコイルバネ43により下方にスライドさせて係合爪42と蓋体30の係合突起34とを係合させ(図5参照)、蓋体30の取り外し時には、スライド軸41を上方にスライドさせて係合爪42と蓋体30の係合突起34との係合を解除し(図6参照)、蓋体30を取り外し可能とする。
【0041】
クランプハンド50は、図8ないし図10に示すように、例えば半導体ウェーハ1の周縁部2前方を縦に保持可能なクランプアーム51と、このクランプアーム51の先端部にスライド可能に支持されて半導体ウェーハ1の周縁部2後方を縦に保持可能なクランプ板52とを備え、図示しない専用のロボットに回転可能に装着されて容器本体10に対して進退動する。
【0042】
クランプアーム51は、容器本体10に対して進退動する細長い板形に形成され、先端部には半導体ウェーハ1保持用のクランプチップ53が装着されており、このクランプチップ53には、半導体ウェーハ1の周縁部2前方を挟持する傾斜保持溝が形成される。また、クランプ板52は、例えば細長いU字形あるいはY字形に形成され、二股に分岐した先端部には、半導体ウェーハ1保持用のクランプチップ53がそれぞれ装着されており、各クランプチップ53には、半導体ウェーハ1の周縁部2後方を挟持する傾斜保持溝が形成される。
【0043】
上記構成において、基板収納容器の蓋体30が取り外された容器本体10(図7参照)から縦に支持された半導体ウェーハ1をクランプハンド50により取り出す場合には、容器本体10の開口した正面内にクランプハンド50を、下部支持ブロック15により垂直に支持された半導体ウェーハ1と略平行に挿入し、このクランプハンド50を半導体ウェーハ1の裏面方向に接近させ、クランプハンド50の先端部を作動させて半導体ウェーハ1の周縁部2を保持させる(図8参照)。この際、クランプハンド50を半導体ウェーハ1の裏面に接近させ、吸着保持させることも可能である。
【0044】
半導体ウェーハ1をクランプハンド50で保持したら、クランプハンド50をやや上方向に上昇させて半導体ウェーハ1と下部支持ブロック15との干渉を回避(図9参照)し、容器本体10の正面からクランプハンド50を水平方向に引き抜き、後退させれば、縦に支持された半導体ウェーハ1を容易かつ確実に取り出すことができる(図10参照)。
【0045】
この際、下部支持ブロック15の支持溝16と上部支持ブロック17の支持溝18とがS2>S1の関係にあるので、クランプハンド50をやや上昇させて半導体ウェーハ1を持ち上げた際、半導体ウェーハ1と上部支持ブロック17とが干渉して半導体ウェーハ1が損傷したり、擦れてパーティクルを発生させることがない。
【0046】
クランプハンド50は、後退後、回転して半導体ウェーハ1の姿勢を起立した状態から水平状態に変更し、この半導体ウェーハ1を工程内用の基板収納容器の容器本体(図示せず)に挿入して収納する。その後、半導体ウェーハ1は、工程内用の基板収納容器から適宜取り出され、各種の加工や処理が施される。
【0047】
上記構成によれば、容器本体10内に半導体ウェーハ1が水平ではなく、起立して支持されるので、例え半導体ウェーハ1が撓み量の大きいφ450mmタイプの場合でも、半導体ウェーハ1の自重による撓みを防ぎ、しかも、隣接する半導体ウェーハ1・1間の間隔を狭くすることができるので、容器本体10の大型化を防止して保管時や輸送時のスペースの有効利用を図ることができる。
【0048】
また、半導体ウェーハ1がフロントリテーナ35により容器本体10の内部両側の傾斜面をスライドして持ち上げられることがないので、容器本体10から蓋体30を取り外しても、半導体ウェーハ1が容器本体10の傾斜面の途中で摩擦抵抗により引っかかり、位置ずれして取り出しに支障を来たしたり、損傷するおそれを有効に排除することできる。また、上部支持ブロック17の支持溝18が半導体ウェーハ1の周縁部2上方に空隙22を介して対向するので、半導体ウェーハ1を持ち上げて取り出す取出作業が著しく容易になる。
【0049】
また、半導体ウェーハ1が下部支持ブロック15の支持溝16に支持され、定位置に保持されるので、半導体ウェーハ1が隣接する半導体ウェーハ1方向に傾斜して接触することが少なく、半導体ウェーハ1の汚染防止が大いに期待できる。また、蓋体30ではなく、容器本体10の正面周縁部13付近に施錠機構40を取り付けるので、蓋体30を薄く形成したり、蓋体30の洗浄乾燥作業を容易化したり、半導体ウェーハ1の汚染を抑制することが可能となる。
【0050】
また、蓋体30に施錠機構40を内蔵する場合に比べ、蓋体30が軽量になるので、基板収納容器の重心位置を半導体ウェーハ1の中心部に接近させることができる。したがって、半導体ウェーハ1を加工する工程内で基板収納容器を搬送する際の振動を小さくしたり、高速で搬送することができ、さらには、大きな加速度が作用した場合でも、安定して搬送することが可能になる。
【0051】
なお、上記実施形態では容器本体10の底板11に複数の位置決め具12を配設したが、容器本体10の底板11にボトムプレートを装着し、このボトムプレートに複数の位置決め具12を配設しても良い。また、後部支持ブロック23を、容器本体10の背面壁の内面中央部に装着するのではなく、背面壁の内面下部等に装着しても良い。また、上部支持ブロック17とフロントリテーナ35とは、それぞれ半導体ウェーハ1の中心線に対して対称になるよう配置しても良い。また、一対のフロントリテーナ35により半導体ウェーハ1の周縁部2の上部あるいは下部を弾発的に保持することもできる。このフロントリテーナ35の保持部38は、必要に応じて増減することができる。
【0052】
また、施錠機構40を、容器本体10の正面周縁部13付近に設けられる磁石と、蓋体30に装着されて磁石に吸着する磁性体とから構成することもできる。また、施錠機構40を、蓋体30に支持されて外部から回転操作される回転体と、この回転体に連結されてその回転に伴い蓋体30の内外方向に進退する複数の進退動体と、各進退動体に設けられ、蓋体30の周壁を貫通して容器本体10の正面周縁部13内に係合する係合爪とを含む構成とすることも可能である。
【0053】
また、施錠機構40を、回転体と、この回転体に連結されてその回転に伴い蓋体30の内外方向に進退する進退動バーとから構成し、蓋体30に外部から操作可能に内蔵されるラッチ機構、又はラックとピニオンとを利用して容器本体10の正面周縁部13内に係合爪を係合させる構造に構成することもできる。さらに、施錠機構40を、容器本体10の正面周縁部13の外周に突設される複数のクランプ部と、蓋体30の周壁に回転可能に軸支されて容器本体10のクランプ部に着脱自在に係合するクランプ片とから構成することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 半導体ウェーハ(基板)
2 周縁部
10 容器本体
15 下部支持ブロック
16 支持溝
17 上部支持ブロック
18 支持溝
19 谷部
20 第一傾斜面
21 第二傾斜面
22 空隙
23 後部支持ブロック
24 ガイド支持溝
30 蓋体
35 フロントリテーナ
40 施錠機構
50 クランプハンド
51 クランプアーム
52 クランプ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に基板を収納する基板収納容器であって、容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスに形成してその内部下方には基板を支持する下部支持ブロックを設け、この下部支持ブロックの基板に対向する対向面には、基板の周縁部下方を縦に支持する支持溝を形成し、容器本体の内部上方に、下部支持ブロックに対向する上部支持ブロックを設けてその基板に対向する対向面には基板の周縁部上方を縦に支持する支持溝を形成するとともに、この支持溝の谷部を基板の周縁部上方に基板移動用の空隙を介して対向させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の内部後方に、基板の中心線近傍に位置する後部支持ブロックを設け、この後部支持ブロックに基板の周縁部後方を縦に支持させる請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
下部支持ブロックの支持溝と上部支持ブロックの支持溝とを基板の周縁部に沿うようそれぞれ湾曲形成し、下部支持ブロックの支持溝の最小高さと最大高さとの差をS1とし、上部支持ブロックの支持溝における谷部から基板の周縁部上方までの長さの最小長さをS2とした場合に、S2>S1の関係とした請求項1又は2記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−192801(P2010−192801A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37653(P2009−37653)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】