説明

基板収納容器

【課題】ガスケットのコーナ領域におけるシール性が悪化するのを防止し、基板が汚染したり、容器本体と蓋体が接触して発塵するおそれの少ない基板収納容器を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハを収納可能な容器本体1と、容器本体1の開口した正面2に嵌合される蓋体20と、容器本体1と蓋体20の間に介在されるシール用のガスケット40とを備え、容器本体1の正面内周にガスケット用のシール形成面7を形成し、蓋体20に、ガスケット用の嵌合取付溝25を形成した基板収納容器であり、ガスケット40を、蓋体20の嵌合取付溝25に嵌合される枠体41と、枠体41から突出して容器本体1のシール形成面7に変形接触してシールするリップ片47とから形成し、リップ片47の変形量を枠体41のコーナ領域と他領域とで相違させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等からなる基板を収納、保管、搬送、輸送する基板収納容器に関し、より詳しくは、基板収納容器の容器本体と蓋体との間にシールを形成するガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体と、容器本体の正面に嵌合した蓋体を施錠する施錠機構と、容器本体の正面と蓋体との間に介在してシールする弾性変形可能なガスケットとを備え、半導体製造工場の天井搬送機構に把持して工程間を搬送されたり、半導体加工装置に付設された蓋体開閉装置上に位置決めして搭載される(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
各半導体ウェーハは、例えば775μmの厚さを有するφ300mmタイプのシリコンウェーハからなり、チップサイズの大型化や生産性向上の観点から、φ200mmタイプよりも大口径化されてきている。このような半導体ウェーハの大口径化に応じ、容器本体、蓋体、施錠機構、及びガスケットは、それぞれ大型に構成されたり、大型に成形されている。
【0004】
蓋体は、蓋体開閉装置により容器本体の開口した正面内に自動的に圧入して嵌合されたり、取り外される。この蓋体の容器本体の正面に対する押し付けは、蓋体開閉装置により位置が設定され、容器本体の開口した正面内に過剰に圧入して嵌合されないようになっている。また、蓋体開閉装置が容器本体の開口した正面内に蓋体を圧入して嵌合する際の押し付け力は、工程の自動化の観点から上限が設定されている。
【0005】
ガスケットは、容器本体の正面内周と蓋体との間に介在される枠体と、この枠体から突出して容器本体の正面内周と蓋体との間に区画されるシール形成面に圧接変形してシールするリップ片とを備え、基板収納容器の外部から内部に汚染物が侵入して半導体ウェーハの汚染を招かないよう機能する(特許文献4参照)。このガスケットは、Oリングのような反りの少ない材料では、容器本体の開口した正面に蓋体が嵌合して施錠される際の反力が増大し、蓋体の自動開閉に支障を来たすので、比較的柔軟な材料により成形されている。また、リップ片は、枠体から斜めに突出し、変形の容易化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−3948号公報
【特許文献2】特開2009−272371号公報
【特許文献3】特開2009−224464号公報
【特許文献4】特開2008−62979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、ガスケットの枠体に柔軟なリップ片が単に突出形成されているので、容器本体の開口した正面内に蓋体が所定の設定値を越える押し付け力で嵌合される場合等には、枠体の四隅部のコーナ領域におけるリップ片がコーナ領域に隣接する他領域の直交する方向に指向する複数の直線片におけるリップ片の変形の影響で反って浮き上がろうとして大きく変形するので、リップ片の一部がシール形成面から離れてしまったり、変形が不十分になることがある。この結果、シール性が悪化して半導体ウェーハが汚染したり、容器本体と蓋体とが直接的に接触して発塵を招くおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ガスケットのコーナ領域におけるシール性が悪化するのを防止し、基板が汚染したり、容器本体と蓋体とが接触して発塵するおそれの少ない基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在されるシール用のガスケットとを備え、容器本体の開口部内周にガスケット用のシール形成面を形成し、蓋体には、ガスケット用の嵌合取付溝を形成したものであって、
ガスケットは、蓋体の嵌合取付溝に嵌め合わされる枠体と、この枠体から突出して容器本体のシール形成面に変形接触してシールするリップ片とを含み、このリップ片の変形量を枠体のコーナ領域と他領域とで相違させることにより、容器本体の開口部に蓋体が嵌め合わされた場合に容器本体のシール形成面からガスケットの枠体におけるコーナ領域のリップ片が離れるのを規制するようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、容器本体をフロントオープンボックスに形成し、この容器本体の開口した正面の少なくとも内周に段差部を設けてガスケット用のシール形成面を形成し、
ガスケットの枠体に、蓋体の嵌合取付溝内に接触する位置ずれ防止部を形成するとともに、枠体のコーナ領域を、略L字形に屈曲した屈曲部と、この屈曲部の両端からそれぞれ短く伸びる複数の直線部とから形成し、屈曲部から直線部に向かうにしたがい徐々に薄肉にすることができる。
【0011】
また、容器本体のシール形成面を正面略枠形に形成し、シール形成面のコーナ領域を、略L字形に屈曲した屈曲部と、この屈曲部の両端からそれぞれ短く伸びる複数の直線部とから形成するとともに、コーナ領域以外の他領域よりも厚い肉厚面に形成することができる。
さらに、ガスケットの枠体におけるコーナ領域のリップ片をコーナ領域以外の他領域のリップ片よりも肉厚に形成し、コーナ領域のリップ片の変形量をコーナ領域以外の他領域のリップ片の変形量よりも小さくすることもできる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ200、300、450mmの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等が必要数含まれる。容器本体は、正面の開口したフロントオープンボックスが主ではあるが、上面の開口したトップオープンボックスでも良いし、又透明、不透明、半透明のいずれでも良い。蓋体については、容器本体の開口部内に嵌め合わされる蓋本体と、この蓋本体の開口した表面を被覆する表面プレートとから構成し、蓋本体と表面プレートとの間、あるいは蓋本体に蓋体用の施錠機構を取り付けることができる。
【0013】
ガスケットの枠体におけるコーナ領域は、単数複数を特に問うものではない。したがって、一部のコーナ領域におけるリップ片の変形量をコーナ領域以外の他領域におけるリップ片の変形量と相違させることもできるし、全コーナ領域におけるリップ片の変形量をコーナ領域以外の他領域におけるリップ片の変形量と相違させることも可能である。
【0014】
本発明によれば、基板を収納する容器本体の開口部に蓋体を対向させ、蓋体を嵌め入れると、ガスケットのリップ片は、容器本体と蓋体との間のシール形成面に隙間をおいて対向し、蓋体の嵌め入れに伴いシール形成面に変形接触してシールすることにより、基板収納容器の密封性を確保する。この際、ガスケットの枠体におけるコーナ領域のリップ片の変形量は、他領域のリップ片の変形量と異なるので、コーナ領域のリップ片が隣接する他領域の悪影響で変形して浮き上がったり、シール形成面から安易に離れることが少ない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガスケットの枠体のコーナ領域におけるシール性が悪化するのを防ぐことができるので、基板の汚染を招いたり、容器本体と蓋体とが接触して発塵するおそれが少ないという効果がある。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、基板を収納する容器本体の開口した正面に蓋体を嵌め入れた場合、ガスケットの枠体のコーナ領域に作用する力と加わる異なる方向に指向するリップ片の変形しようとする力により、シール性が悪化するのを防ぐことができる。また、容器本体内の段差部によりシール形成面を形成するので、このシール形成面により容器本体に対する蓋体の位置を規制し、過剰な嵌め入れを規制することもできる。また、枠体の位置ずれ防止部により、蓋体の嵌合取付溝に嵌合したガスケットの位置ずれや脱落を防止することができる。
【0017】
また、請求項3記載の発明によれば、容器本体のシール形成面のコーナ領域がガスケットのコーナ領域のリップ片を強く押圧して変形させるので、ガスケットのコーナ領域のリップ片を厚く形成する必要がない。
さらに、請求項4記載の発明によれば、容器本体の開口した正面やその内周に改造を特に施す必要がないので、既存の容器本体をそのまま利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す平面説明図である。
【図4】図3のIV−IV線断面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と蓋体との嵌合直前の状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と蓋体との嵌合状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における容器本体と蓋体との嵌合直前の状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における容器本体と蓋体との嵌合状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図6に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納可能な容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2に着脱自在に嵌合される蓋体20と、容器本体1の正面2に嵌合した蓋体20を施錠する施錠機構30と、容器本体1と蓋体20との間に介在されるシール用のガスケット40とを備え、このガスケット40のコーナ領域42におけるリップ片47の変形量を他領域におけるリップ片47の変形量と相違させるようにしている。
【0020】
各半導体ウェーハWは、図1に示すように、例えば775μmの厚さを有するφ300mmのシリコンウェーハからなり、容器本体1に25枚が水平に挿入して整列収納され、容器本体1の正面2に嵌合した蓋体20が施錠操作された後、梱包されて半導体の製造工場に輸送される。こうした半導体ウェーハWは、半導体部品の製造工程(500〜600工程にも及ぶ)で各種の加工や処理が適宜施され、半導体部品となる。
【0021】
容器本体1と蓋体20とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0022】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0023】
容器本体1は、図1等に示すように、正面2が開口したフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した正面2を水平横方向に向けた状態で半導体製造工場の天井搬送機構に把持して工程間を搬送されたり、半導体加工装置に付属の蓋体開閉装置上に位置決めして搭載される。この容器本体1は、その相対向する内部両側、換言すれば、両側壁の内面に、半導体ウェーハWを略水平に支持する左右一対の支持片3がそれぞれ対設され、両側壁の内面後部に、半導体ウェーハWの過剰な挿入を規制する位置規制部がそれぞれ一体形成される。
【0024】
一対の支持片3は、上下方向に所定のピッチで配列され、各支持片3が半導体ウェーハWの側部周縁を支持する細長い板形に形成されており、支持片3の前部表面には、半導体ウェーハWの飛び出しを規制する規制段差部が一体形成される。また、容器本体1の底板における前後部の両側には取付孔がそれぞれ貫通して穿孔され、各取付孔に気体置換用のフィルタバルブ4が嵌着される。この複数のフィルタバルブ4は、エアやパージガス等の気体を内外に流通させることにより、基板収納容器の内外圧力差を解消するよう機能する。
【0025】
容器本体1の底板裏面における前部両側と後部中央とには、容器本体1を位置決めする位置決め具がそれぞれ配設される。各位置決め具は、基本的には平面略楕円形を呈する断面略V字形に形成されてその一対の斜面を備えた凹部を下方に指向させ、蓋体開閉装置の位置決めピンに上方から凹部を嵌合・摺接させることにより、容器本体1を高精度に位置決めするよう機能する。
【0026】
容器本体1の底板裏面には別体のボトムプレートが螺子具を介して水平に螺着され、このボトムプレートが複数の位置決め具をそれぞれ露出させる。また、容器本体1の天板中央部には、半導体製造工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ5が着脱自在に装着される。
【0027】
容器本体1の開口した正面2は、図1、図5、図6に示すように、外方向に屈曲して膨出形成されることにより、少なくとも内周面に段差部6が設けられ、この段差部6がガスケット40用のシール形成面7を平坦に形成する。このシール形成面7は、正面視で略枠形に形成されて蓋体20の裏面周縁部に対向し、蓋体20の嵌合施錠時にシール機能を発揮する他、蓋体20の過剰な圧入嵌合を規制するよう機能する。
【0028】
シール形成面7の四隅部のコーナ領域8は、略L字形に屈曲した屈曲部9と、この屈曲部9の両端からそれぞれ短く(例えば10mm程度)伸長する直線部10とから一体形成される。また、容器本体1の正面内周縁における上下の両側には、施錠機構30用の施錠穴11がそれぞれ穿孔される。
容器本体1の両側壁中央部には、握持操作用に機能するグリップ具12がそれぞれ着脱自在に装着される。また、容器本体1の両側壁下部には、搬送用のサイドレール13がそれぞれ選択的に水平に装着される。
【0029】
蓋体20は、図1、図5、図6に示すように、容器本体1の開口した正面内に圧入して嵌合される蓋本体21と、この蓋本体21の開口した正面を被覆する表面プレート27とを備え、容器本体1の開口した正面内周に蓋本体21の周壁を接触させる。蓋本体21は、基本的には底の浅い断面略皿形に形成され、内部に補強用や取付用のリブが複数配設されており、半導体ウェーハWに対向する対向面である裏面には、半導体ウェーハWを弾発的に保持するフロントリテーナ22が装着される。
【0030】
フロントリテーナ22は、蓋本体21の裏面中央部に装着される縦長の保持枠23を備え、この保持枠23の左右両側部には,内方向に伸びる複数の弾性片24がそれぞれ上下に並べて配列形成される。各弾性片24は、可撓性や弾性が付与され、先端部には、半導体ウェーハWの前部周縁をV溝等で保持する保持ブロックが一体形成される。この保持ブロックには、V溝の代わりにU字溝を形成することも可能である。
【0031】
蓋本体21の裏面周縁部には正面視で略枠形の嵌合取付溝25が凹み形成され、この嵌合取付溝25の内部に、容器本体1のシール形成面7に圧接するガスケット40が嵌合される(図5、図6参照)。また、蓋本体21の周壁における上下の両側部には、容器本体1の施錠穴11に対向する施錠機構30用の出没孔26が貫通して穿孔される。
【0032】
表面プレート27は、横長の正面矩形に形成され、補強用や取付用のリブ、螺子孔等が複数配設される。この表面プレート27の両側部には、施錠機構30用の操作孔28がそれぞれ穿孔される。
【0033】
施錠機構30は、図1、図5、図6に示すように、蓋体20の蓋本体21における左右両側部にそれぞれ軸支されて外部から回転操作される左右一対の回転プレート31と、各回転プレート31の回転に伴い蓋体20の上下方向にスライドする複数の進退動プレート32と、各進退動プレート32のスライドに伴い蓋本体21の出没孔26から出没して容器本体1の施錠穴11に接離する複数の施錠爪33とを備え、蓋本体21と表面プレート27との間に介在される。
【0034】
各回転プレート31は、蓋体20の表面プレート27の操作孔28に対向し、この操作孔28を貫通した蓋体開閉装置の操作キーにより回転操作される。また、各施錠爪33は、基本的には断面略L字形に屈曲形成されてその先端部には回転可能なローラを備え、蓋本体21内の出没孔26付近に揺動可能に軸支されて進退動プレート32の先端部にピンを介し連結されており、容器本体1の施錠穴11にローラを接離する。
【0035】
ガスケット40は、図2ないし図6に示すように、容器本体1の正面内周と蓋体20の裏面との間に介在される枠体41と、この枠体41から容器本体1のシール形成面7方向に突出して圧接する可撓性のリップ片47とを一体に備え、枠体41の四隅部のコーナ領域42におけるリップ片47の変形量がコーナ領域42以外の他領域におけるリップ片47の変形量よりも小さく調整される。このガスケット40は、例えば耐熱性や耐候性に優れるポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、シリコーン系のエラストマー等を成形材料として成形される。
【0036】
枠体41は、図2や図3に示すように、四隅部を形成してシール形成面7のコーナ領域8に対向する複数のコーナ領域42を備え、この複数のコーナ領域42が他領域である長い直線片43により連結されており、蓋本体21の嵌合取付溝25内に圧入して密嵌される。
【0037】
各コーナ領域42は、シール形成面7のコーナ領域8に対応するよう、面取りされて略L字形に屈曲した屈曲部44を備え、この屈曲部44の両端からそれぞれ直線部45が直線的に短く(例えば10mm程度)伸長形成されるとともに、各直線部45が直線片43の端部に一体的に接続されており、良好な変位を得る観点から屈曲部44から各直線部45に向かうにしたがい徐々に薄肉に形成される。
【0038】
枠体41の外周面には図4ないし図6に示すように、蓋本体21の嵌合取付溝25内に圧接して変形する複数の位置ずれ防止リブ46が並べて突出形成される。各位置ずれ防止リブ46は、例えば先細りの断面略山形に形成され、ガスケット40の位置ずれや脱落を有効に防止する。この位置ずれ防止リブ46は、断面略半円形や半楕円形等に形成することもできる。
【0039】
リップ片47は、連続した正面略枠形に形成されて枠体41の外周面から斜めに突出し、蓋体20の嵌合施錠時に容器本体1のシール形成面7に撓みながら圧接してシールするよう機能する。このリップ片47は、直線的に突出しても良いが、曲がりながら突出しても良い。
【0040】
各コーナ領域42のリップ片47は、図4等に示すように、表裏面の少なくともいずれか一方の面に補強片48が積層して補強されることにより、コーナ領域42以外の他領域のリップ片47よりも肉厚に形成され、シール形成面7のコーナ領域8に圧接される。補強片48は、リップ片47のシール形成面7に対向しない非対向面に積層されることが好ましく、又リップ片47と一体成形されても良いし、後から形成されても良い。このようなコーナ領域42のリップ片47は、コーナ領域42以外の直線片43のリップ片47よりも撓みにくく、必要以上の過剰な変形が抑制される。
【0041】
上記構成において、半導体ウェーハWを整列収納した容器本体1の開口した正面2に蓋体20を嵌合する場合には、蓋体20が蓋体開閉装置に吸着保持され、容器本体1の開口した正面2に蓋体20が蓋体開閉装置により対向配置され、その後、容器本体1の開口した正面2内に蓋体20が蓋体開閉装置により徐々に圧入して嵌合されるとともに、施錠機構30が施錠操作される。
【0042】
すると、ガスケット40のリップ片47は、容器本体1のシール形成面7に隙間をおいて対向(図5参照)し、蓋体20の圧入に伴い容器本体1のシール形成面7に撓みながら圧接してシール(図6参照)することにより、基板収納容器の密封性を確保してその外部から内部に汚染物が侵入するのを有効に防止する。
【0043】
この際、各コーナ領域42のリップ片47が補強片48の補強作用で他領域のリップ片47よりも変形しにくいので、例え容器本体1の開口した正面2内に蓋体20が所定の設定値を越える押し付け力で圧入嵌合された場合にも、各コーナ領域42のリップ片47が隣接する他領域の直線片43やリップ片47の悪影響で持ち上げられ、変形して浮き上がったり、シール形成面7のコーナ領域8から安易に離れるのを有効に防止することができる。
【0044】
したがって、ガスケット40の全周に亘るシール性の均一化が大いに期待でき、シール性が悪化して半導体ウェーハWが汚染したり、容器本体1と蓋体20とが直接的に接触して発塵を招くおそれを排除することができる。また、容器本体1の正面2やその内周に何ら改造を施す必要がないので、既存の容器本体1をそのまま利用することができる。
【0045】
次に、図7と図8は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1のシール形成面7の四隅部におけるコーナ領域8をコーナ領域8以外の他領域よりも厚い肉厚面に形成し、各コーナ領域8を他領域よりも容器本体1の正面2方向(図の下方向)に突出させることにより、ガスケット40の各コーナ領域42のリップ片47を他の部分よりも先にシール形成面7に接触させてこれを強く抑えるようにしている。
【0046】
シール形成面7の各コーナ領域8は、面取りされて略L字形に屈曲した屈曲部9と、この屈曲部9の両端からそれぞれ直線的に短く(例えば10mm程度)伸長する直線部10とから一体形成される。このコーナ領域8を肉厚面に形成する方法としては、エラストマー層や基材の積層接着、平坦な突起14の形成等があげられる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、シール形成面7のコーナ領域8を厚く肉厚面に形成するので、ガスケット40の各コーナ領域42のリップ片47を他領域のリップ片47よりも強く圧接して変形させることができる(図8参照)。したがって、ガスケット40のコーナ領域42が浮き上がろうと変形することによる悪影響を未然に防止することができ、しかも、各コーナ領域42のリップ片47に補強片48を形成して補強する必要が全くなく、ガスケット40の構成の簡素化を図ることができるのは明らかである。
【0048】
なお、上記実施形態ではフロントリテーナ22の保持枠23の左右両側部に複数の弾性片24をそれぞれ上下に並べて配列形成したが、左右の弾性片24を連結片を介して連結し、この連結片に保持ブロックを形成しても良い。また、保持枠23の上下部間に連結柱を縦に架設し、この連結柱の左右両側部に複数の弾性片24をそれぞれ上下に並べて配列形成しても良い。
【0049】
また、蓋本体21の裏面周縁部に嵌合取付溝25を凹み形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、蓋体20の周壁、すなわち蓋本体21の周壁に嵌合取付溝25を凹み形成することもできる。また、ガスケット40の枠体外周面に単一の位置ずれ防止リブ46を突出形成することもできる。また、枠体41の周方向に複数のリップ片47を断続的に形成しても良いし、リップ片47を断面先細りに形成することもでき、さらにはリップ片47の先端部を断面略円形に膨張形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る基板収納容器は、半導体や液晶ディスプレイの製造分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
2 正面(開口部)
3 支持片
6 段差部
7 シール形成面
8 コーナ領域
9 屈曲部
10 直線部
14 突起
20 蓋体
21 蓋本体
25 嵌合取付溝
27 表面プレート
30 施錠機構
40 ガスケット
41 枠体
42 コーナ領域
43 直線片(他領域)
44 屈曲部
45 直線部
46 位置ずれ防止リブ(位置ずれ防止部)
47 リップ片
48 補強片
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在されるシール用のガスケットとを備え、容器本体の開口部内周にガスケット用のシール形成面を形成し、蓋体には、ガスケット用の嵌合取付溝を形成した基板収納容器であって、
ガスケットは、蓋体の嵌合取付溝に嵌め合わされる枠体と、この枠体から突出して容器本体のシール形成面に変形接触してシールするリップ片とを含み、このリップ片の変形量を枠体のコーナ領域と他領域とで相違させることにより、容器本体の開口部に蓋体が嵌め合わされた場合に容器本体のシール形成面からガスケットの枠体におけるコーナ領域のリップ片が離れるのを規制するようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体をフロントオープンボックスに形成し、この容器本体の開口した正面の少なくとも内周に段差部を設けてガスケット用のシール形成面を形成し、
ガスケットの枠体に、蓋体の嵌合取付溝内に接触する位置ずれ防止部を形成するとともに、枠体のコーナ領域を、略L字形に屈曲した屈曲部と、この屈曲部の両端からそれぞれ短く伸びる複数の直線部とから形成し、屈曲部から直線部に向かうにしたがい徐々に薄肉にするようにした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
容器本体のシール形成面を正面略枠形に形成し、シール形成面のコーナ領域を、略L字形に屈曲した屈曲部と、この屈曲部の両端からそれぞれ短く伸びる複数の直線部とから形成するとともに、コーナ領域以外の他領域よりも厚い肉厚面に形成した請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
ガスケットの枠体におけるコーナ領域のリップ片をコーナ領域以外の他領域のリップ片よりも肉厚に形成し、コーナ領域のリップ片の変形量をコーナ領域以外の他領域のリップ片の変形量よりも小さくした請求項2又は3記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−182304(P2012−182304A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44045(P2011−44045)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】