説明

基板受渡し装置およびその方法

【課題】 薄膜太陽電池の製造装置においては、従来の技術例として開示されている基板上の成膜面を下に向けた状態で該基板をレーザスクライブ加工する方が望ましい。
【解決手段】 片面に薄板が形成された基板を前記薄膜形成面を下向きになるように基板の上面を吸着して前記基板を把持する搬送装置を用いて搬入する搬入方法において、隙間を設けて配置されたエアー浮上ユニットの吹き出し口の隙間や外周に基板昇降用リフトピンを備えた基板搬送をおこなう場合に、基板の下面に形成された薄膜面を具備した基板加工後の機能に支障の無い位置に配備したリフトピンで支えた後、基板の下面に形成された薄膜に支障の無い位置に配備したエアー浮上ユニットに低速で基板を降下させ受け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池や液晶パネル等に用いられる基板加工の基板受け渡し装置および方法に関する
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池パネルに用いられる基板には、透明な素材(例えば、ガラス基板等)の片面に酸化物透明導電膜、アモルファスシリコン膜または金属膜などが積層されており、この薄膜導電膜が一定の幅でパターン化(短冊状に分離)されることで、基板に絶縁処理がなされる。
【0003】
従来、基板に形成された薄膜導電膜のパターン化は、薄膜導電膜へのレーザの照射によるレーザスクライブ加工によって所定の切断部品を成形されることが多い。このレーザスクライブ加工は、例えば、基板に形成された薄膜導電膜面に直接に照射させる方法や、基板に形成された薄膜導電膜側とは反対の面側からレーザを透明な素材の基板を透過させて薄膜導電膜に照射し薄膜導電膜を選択的に除去する方法によっておこなわれる。
【0004】
該透明の基板にレーザを透過させるには、発振波長が355nm〜1064nmであり出力が1〜20W程度のNd:YAG又はNd:YVO4レーザなどを用いることができる。
【0005】
このような、基板に形成された薄膜導電膜面とは反対側の面からレーザを照射して薄膜導電膜を加工する手法は、従来の技術例として開示されている(例えば、下記特許文献1)。その概要は次のとおりである。
【0006】
薄膜太陽電池の製造装置のエアー浮上ステージにガラス基板を、薄膜導電膜面を下に向けた姿勢で搬送し、レーザ発振器からのレーザをガラス基板に照射しながら、エアー浮上ステージを2次元方向に移動させるXテーブル及びYテーブルを駆動してガラス基板に積層された薄膜導電膜をレーザスクライブ加工を施して薄膜導電膜をパターン化する。さらに、ガラス基板の周縁部を支持すると共に、ガラス基板を下方から平坦な状態に保持するよう前記エアー浮上ステージに設けられた凹部にリフターユニットからなる保持機構が構成される。
【0007】
当該場合の保持機構は、保持機構を構成する部材が薄膜導電膜面に直接接する構造になっているため、薄膜導電膜が敷設されている面に損傷を与えて電気的特性に悪影響が生じないよう保持機構の構成部材については、工夫されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−111078号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
薄膜太陽電池の製造装置においては、製造ラインの上流工程で、成膜面を基板の下にした状態で生産するラインが用いられているため、前記基板の形成面を下に向けた姿勢で搬入されることが多い。一方、レーザスクライブ加工工程においては、薄膜導電膜面を上に向けた状態で、ステージやコンベヤにて搬送される構成が主体であった。しかし、この状態での加工では、レーザスクライブ加工後に発生するスクライブ屑が基板表面に残留してしまい、製品の品質低下(後の発電効率の低下等)を招いたり、スクライブ屑除去の為に後工程で洗浄を余儀なくされた。また、ガラス基板の成膜面を上にして太陽電池のレーザスクライブ工程へ基板を搬入する前に、一旦基板を反転する必要があった。上記のような理由を回避するために、基板上の成膜面を下に向けた状態で該ガラス基板をレーザスクライブ加工する方が望ましい。ところが、額縁状のステージを用いて該薄膜面を具備した基板加工後の機能に支障を与えない基板端だけを支えた状態で加工する構成とした場合には、基板中央の支えがない場所においては大きく撓み窪んでしまうことになり、該レーザスクライブ加工時の膜面高さをレーザ変位計を用いて都度計測し、加工焦点位置を補正するための、オートフォーカス機構を別途用いることが必要である。従い、当該機構を付与することは、機器追加に伴う装置コストアップを招くと共に、計測や補正に時間を費やし、該レーザスクライブ加工効率の低下を招いた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、発明者等は、鋭意検討の結果、下記の構成を創作した。
第1の発明は、片面に薄膜導電膜が形成された基板を前記薄膜導電膜が下向きになるように配置して、前記基板をエアー浮上ユニットを用いて浮上し搬送する基板搬送装置において、隙間を設けて配置された前記エアー浮上ユニットの吹き出し口の隙間や外周に基板昇降用リフトピンを備えたことを特徴とする。
【0011】
(作用・効果)当該装置では、受け渡される基板の薄膜導電膜面が下向きの状態で送られてくるので、その下向きの状態を維持したまま、受け入れることにより、搬入がし易くなる。また、基板の薄膜導電膜面と反対である上部から、基板を通して、レーザスクライブ加工をおこなうに際し、薄膜導電膜面に対し非接触の方法で、基板を保持するのが望ましく、エアー浮上ユニット機構を用いる。しかし、エアー浮上ユニット機構は、最適位置に静止させて保持するまでに高さや保持位置が定まりにくく、その前に、高さや位置決めを効率よく定め保持する方法としてエアー浮上ユニット機構の吹き出し口の隙間や保持する基板の外周に基板昇降用リフトピンを備えて、基板の適正な高さや位置を定めて後、エアー浮上ユニット機構を作動させて保持するように構成している。
【0012】
それにより、基板の搬入から保持までの受け渡しがすみやかにおこなわれ、且つ基板の適正な高さや位置に納めることができる。
【0013】
第2の発明は、前記リフトピンの位置を下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に配備することを特徴とする。
【0014】
(作用・効果)上記発明により、基板の搬入から後の受け渡しの段階で、該基板の下向き側の薄膜導電膜面を保持するため、保持するに基板加工後の機能に支障の無い位置、例えば、エアー浮上ユニット機構の吹き出し口の隙間や保持する基板の外周等にリフトピンが配備される。これにより、基板の受け渡し時に介在するリフトピンによる基板へのダメージを防止し、品質の確保ができる。
【0015】
第3の発明は、前記基板を前記リフトピンで支持した後、前記リフトピンの昇降速度をコントロールしながら前記基板の水平状態を保ちながら、前記リフトピンを降下させることを特徴とする。
【0016】
(作用・効果)基板の受け渡しにおいては、基板に対し、最適な高さと位置で保持するようにする必要がある。しかし、エアー浮上ユニット機構での基板の保持については、高さや位置を最適位置にて安定させるためには、若干の時間を要する。そのため、基板の保持する高さや位置を確保するためにリフトピン機構を採用し、設けられた前記リフトピンから、エアー浮上ユニット機構への受け渡しについては、最適な高さと位置を確保するために、すみやかに且つ正確に受け渡す必要があった。前記リフトピンにて基板の保持位置を設定した後の受け渡し時の基板は、低速で降下させるように機能を設定する。具体的には、前記リフトピンの昇降速度をコントロールして、降下時、始めは早く降下し、基板がエアーの力を受け始める高さ位置に到達した後は、減速して低速で降下させ浮上状態にて基板を保持する。当該コントロールにて基板を降下する速度を制御するのは、エアー浮上ユニットは常に吹き出し状態にて待機するが、勢い良く基板を降下させると、基板の降下時の慣性力にエアー浮上力が負けてしまい、エアー浮上ステージに接触するなどのトラブルが発生する。そのためにも、基板の薄膜導電膜面を接触させることなく、基板をエアー浮上ユニットの浮上面に受け渡す。
【0017】
第4の発明は、下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板加工後の機能に支障の無い位置にエアー浮上ユニットの吹き出し口を設け、前記基板がリフトピンから受け渡して後、前記エアー浮上ユニットで前記基板を浮上させて支えることを特徴とする。
【0018】
(作用・効果)基板の搬入からレーザスクライブ装置の浮上ステージに受け渡す段階で、最適な高さや位置を定めた後、リフトピン機構からエアー浮上ユニット機構へと橋渡しをおこなうが、該基板の薄膜導電膜面を下向きにして保持し、且つ、レーザスクライブ加工をおこなうので、基板の加工時、薄膜導電膜面の位置に対し、品質を保つために十分留意する必要がある。従い、エアー浮上ユニット機構の吹き出し位置の配置については、レーザスクライブ加工後の基板の機能に支障が無い適正な位置に配置することが要求される。
【0019】
第5の発明は、片面に薄膜が形成された基板の前記薄膜形成面を下向きになるように前記基板の上面を吸着して前記基板を把持する搬送装置を用いて搬入する搬入方法において、隙間を設けて配置されたエアー浮上ユニットの吹き出し口の隙間や外周に基板昇降用リフトピンを備えた基板搬送装置を用いて、下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に配備したリフトピンで支えた後、前記基板の下面に形成された前記薄膜面の前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に吹き出し口を配備したエアー浮上ユニットに前記基板を受け渡す基板搬送方法において、
前記リフトピンで支える上限位置から前記エアー浮上ユニットで保持する浮上面上方位置までの降下速度より前記浮上面上方位置より前記エアー浮上ユニットで保持する浮上面位置までの速度を小さい速度で基板を降下させ受け渡すことを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
(作用・効果)前工程から送られて来た基板を当該レーザスクライブ工程のステージの最適位置に受け渡し、基板を保持するに際し、まずは、エアー浮上ステージ上の最適の高さや位置に位置決めし易いリフトピン機構を用い、高さや位置が定まった後、基板を上限位置から浮上面上方位置の降下速度より浮上面上方位置より浮上面位置までの速度を小さくする速度で降下させ受け渡し、エアー浮上ユニット機構により、基板の薄膜面を具備した基板の加工後の機能に支障を与えない位置に位置して保持する。これにより、リフトピン機構の持つ利点とエアー浮上ユニット機構の持つ利点を融合して、基板をすみやかにステージの最適位置に位置決めし、基板を保持することができる。
【発明の効果】
【0021】
上述の発明である課題解決するための手段を用いることにより、下記の効果が期待される。すなわち、基板を保持する手段として、エアー浮上ユニットを用いて構成するため、前工程での基板の姿勢と同等に基板の薄膜導電膜面を下側にした保持形態で基板のレーザスクライブ加工をおこなうことができる。
【0022】
基板の薄膜導電膜面を下側にして保持することができるので、薄膜導電膜のレーザスクライブ加工時、スクライブ屑の回収が容易となり、レーザスクライブ加工による品質の低下防止や、後工程の洗浄工程を省くことができる。
【0023】
また、基板の薄膜導電膜面を下側にして保持することができるので、薄膜導電膜のレーザスクライブ加工時に薄膜導電膜の高さ方向の位置が、基板の厚みに左右されずにエアー浮上ユニットからの距離で焦点を合わせることができ、ロットや品種に左右されずに一定となり、ロットや品種ごとの焦点位置の段取り替えや補正の必要が無くなる。
【0024】
基板の薄膜導電膜面を必ず下側にする必要がある場合でも、従来のように、基板端を額縁状に支持するのでは無く、非接触で基板全体を浮上させることから、基板中央の支えがない場所においては大きく撓み窪んでしまうことがなくなり、該レーザスクライブ加工時の膜面高さをレーザ変位計を用いて都度計測し、加工焦点位置を補正するための、オートフォーカス機構を別途用いることが不要である。
【0025】
前工程から送られて来た基板を当該レーザスクライブ工程のステージの最適位置に受け渡し、基板を保持するに際し、まずは、ステージ上の最適の高さや位置に位置決めし易いリフトピン機構を用い、高さや位置が定まった後、エアー浮上ユニット機構により、基板の薄膜面を具備する基板の加工後の機能に支障を与えない位置に位置して保持する。これにより、リフトピン機構の持つ利点とエアー浮上ユニット機構の持つ利点を融合して、基板をすみやかにステージの最適位置に位置決めし、基板を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明に係わるレーザスクライブ装置1の外観斜視図、図2はレーザスクライブ装置1の主要部を示す平面図、図3はレーザスクライブ装置1の主要部を示す正面図、図4はレーザユニットを示す斜視図である。これら各図において、直交座標系の3軸をX,Y,Zとし、基板Kの移送方向をY方向,水平面でY方向に直交する方向をX方向、鉛直方向をZ方向,鉛直軸周りの回転方向をθ方向とする。また、図1の紙面手前側を上流とし、紙面奥側を下流とする。つまり、図2,図3では紙面に向かって左側が上流、右側が下流となる。また、XY各方向の向きを更に左右または前後に区別して説明する必要がある場合は、先頭に「+」または「−」の符号を付して示す。例えば、基板Kの搬送方向であるY方向のうち、スクライブ線形成中における搬送方向を「+Y方向」、スクライブ線形成後に於ける搬送方向を「−Y方向」などと示す。
【0027】
レーザスクライブ装置1は、回路形成用材料が成膜されたガラス基板の表面に所定強度のレーザ光を照射、走査することによって、目的の回路パターンに応じたスクライブ線を形成するように構成される。特に、このレーザスクライブ装置1は、ガラス基板Kにおける回路形成用材料の成膜面を下に向けた状態でスクライブ線の形成をおこなうタイプである。また、噴射エアーによりエアー浮上支持されたガラス基板Kを,+Y方向に移動させながら目的の回路パターンに応じたスクライブ線を形成していくように構成される。
【0028】
具体的には、図1に示すように、機台2、エアー浮上ステージ3、リフタユニット5、基板位置決め装置6、レーザユニット7、集塵ユニット8および制御装置9を備える。また、レーザスクライブ装置1の上流外側には、エアー浮上ステージ3へのガラス基板Kの搬入出をおこなう搬入出ロボット10が設置される。以下、レーザスクライブ装置1の基板の受け渡しに関係する部分を中心に、各構成要素について説明する。
【0029】
機台2は、レーザスクライブ装置1の主構成部を支持する支持体であり、台座部21及び門型フレーム22を備える。台座部21はエアー浮上ステージ3及び移送ユニット5などを支持し、門型フレーム22はレーザユニット7におけるレーザ照射ヘッド73及びヘッド駆動部74などを支持している。
【0030】
エアー浮上ステージ3は、その表面から噴出させたエアーにより、スクライブ対象となるガラス基板Kをエアー浮上支持する部材であり、主ステージ31及び副ステージ32を備える。主ステージ31は、レーザスクライブ装置1内における上流側と下流側とにそれぞれ1台ずつ配設される。その配置は、上流と下流の各主ステージ31間に所定の空間を保つようになされる。
【0031】
主ステージ31は、具体的には、Y方向に長い長尺のエアー浮上ユニット311をX方向に所定間隔あけて複数台配設した、簀子状をなす構成とされる。各エアー浮上ユニット311の表面には、多数のエアー噴出孔311hが穿設される。これらエアー噴出孔311hは、圧空ポンプ等を備えるブロワーユニット33に配管接続され、ブロワーユニット33から供給された所定圧力のエアーを上向きに噴出し、このエアーでガラス基板Kをエアー浮上支持するようになっている。噴出するエアーの圧力は、浮上対象とするガラス基板Kが撓むことなく且つ安定した状態を維持される大きさとされる。
【0032】
副ステージ32は、上流と下流の主ステージ31間で、X方向に長い長尺のエアー浮上ユニット321をY方向に所定間隔あけた状態で2台配設した構成とされる。2台のエアー浮上ユニット321間に形成される空間部分は、その上方にあるレーザ照射ヘッド73によりスクライブ加工がされたときに落下するパーティクル(回路形成用材料Kjののスクライブされた物)(図5参照)の回収穴として機能する。エアー浮上ユニット321についてもエアー浮上ユニット311と同様に、表面には多数のエアー噴出孔321hが穿設され、これらエアー噴出孔321hは、ブロワーユニット33から供給された所定圧力のエアーを上向きに噴出するようになっている。副ステージ32は、後述するように、ガラス基板Kが+Y方向への移動により、上流側の主ステージ31による浮上支持から下流側の主ステージ31による浮上支持に移り変わるときの動作、及びそれとは逆にガラス基板Kが−Y方向への移動により、下流側の主ステージ31による浮上支持から上流側の主ステージ31による浮上支持に移り変わるときの動作をスムーズ且つ確実とするために設けてある。
【0033】
リフタユニット4は、スクライブ対象となるガラス基板Kの受取り、及びスクライブ済みのガラス基板Kの引渡しを行う装置であり、ピンフレーム41及びフレーム駆動部42を備える。
【0034】
ピンフレーム41は、受取り及び引渡しの対象となるガラス基板Kのサイズに応じた略「日」の字状の枠体であり、図2に示すように、平面視がそれぞれ略「口」の字状の周囲枠41aと、略「一」の字状の中央枠41bとを備える。周囲枠41aには、複数のリフトピン43がそれぞれ隣合うもの同士で所定間隔をあけるように立設されている。リフトピン43は、その先端部でガラス基板Kにおける額縁部Kf(図5参照)の下面に当接してこのガラス基板Kを支持可能なピン部材である。この額縁部Kfは、ガラス基板Kの外側周囲に所定幅をもって形成される領域であり、回路形成用材料Kjが成膜されていないか、または、成膜されていたとしても、リフトピン43の先端部が当接した場合に最終製品に影響を及ぼさない領域である。
【0035】
フレーム駆動部42は、ピンフレーム41をZ方向に昇降駆動するように構成され、例えば中央枠41bに取り付けられた回転ボールネジ機構などにより実現される。フレーム駆動部42がピンフレーム41を駆動することにより、リフトピン43は、図3に示す上限位置P1と下限位置P2とに選択的に配置可能とされる。上限位置P1は、搬入出ロボット10からスクライブ加工の対象となるガラス基板Kを受け取るとき、またはスクライブ加工の済んだガラス基板Kを搬入出ロボット10に引き渡すときに配置される位置であり、リフトピン43の先端部がエアー浮上ステージ3の表面よりも十分に高くなる位置である。下限位置P2は、ガラス基板Kの搬入出以外のとき、例えばスクライブ線の形成時などリフトピン43を使用しないときにこれらリフトピン43を退避させておく位置であり、リフトピン43の先端部がエアー浮上ステージ3の表面よりも低くなる位置である。
【0036】
リフトピン43は、ガラス基板Kを受け取った後に降下するが、このときの降下速度は、次のように設定されている。即ち、リフトピン43が上限位置P1から浮上面上方位置P3(次述)に移るときの降下速度をU1とし、浮上面上方位置P3から浮上面位置P4(同じく次述)に移るときの降下速度をU2とするとき、U2<U1の関係がある。より好ましくはU2<U1/2である。なお、浮上面上方位置P3は、リフトピン43の先端部が浮上面位置P4よりも若干高く且つ上限位置P1よりも低くなる位置である。浮上面位置P4は、エアー浮上ステージ3におけるエアー噴出口311h,321hから噴出するエアーにより、ガラス基板Kが浮上支持されているときの高さである。
【0037】
移送ユニット5は、ガラス基板Kを片持ち支持した状態でこれをY方向に移動可能に構成された装置であり、ニップ群51とニップ群駆動部52とを備える。
【0038】
ニップ群51は、合計4個のニップ53がY方向に沿ってそれぞれ所定間隔をあけて1列状に一体的に配置されてなり、各ニップ53がガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴んでこのガラス基板Kを片持ち支持できるように構成される。具体的には、各ニップ53は、上下一対の可動爪を有する。この可動爪は、制御装置9から送られる信号に基づいて、上下方向に圧空作用等により同期駆動可能に構成され、これにより開閉自在とされる。可動爪を開くのは、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴む直前である。可動爪を閉めるのはガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴むとき、または各ニップ51を退避させているたときである。ガラス基板Kを掴む直前以外は、指の挟み込み防止等の安全性確保のため、基本的には可動爪は閉めた状態とされる。
【0039】
また、ニップ群51は、サーボモータ等の駆動装置によりX方向に駆動されて、図2に示す保持位置P5と回避位置P6とに選択的に配置可能とされる。保持位置P5は、リフトピン43により支持されたガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺がニップ53の開口領域に入る位置である。回避位置P6は、上記保持位置P5に対して、−X方向側にあり、ガラス基板Kを掴まないときに配置される位置である。また、各ニップ53は、それぞれ独立してサーボモータ等の駆動装置によりZ,θ各方向にも駆動可能とされる。Z方向の駆動は、主にニップ53の高さ補正時になされる。θ方向の駆動は、主にニップ53のθ方向の取付け角度補正時になされる。
【0040】
ニップ群駆動部52は、上記ニップ群51をY方向へスライド駆動自在とする装置であり、具体的には台座部21の一方側にY方向に沿って配設されたリニアモータ52Yを主要構成としている。リニアモータ52Yが作動することにより、ニップ群51は図2,3に示す受取位置P7と待避位置P8とに選択的に配置可能とされる。受取位置P7は、搬入出ロボット10から搬入されたガラス基板KのX方向範囲内(短辺範囲内)に全てのニップ53が含まれる位置であり、浮上ステージ3の上流側にある。また、待避位置P8は、安全性確保のために全てのニップ53を待避させておくための位置であり、浮上ステージ3の下流側にある。ガラス基板Kを移送する動作を行うとき以外は、腕の挟み込み防止等の安全性確保のため、基本的には4つのニップ群51は待避位置P8に配置される。
【0041】
基板位置決め装置6は、エアー浮上ステージ3の上流側におけるX方向両側に設けられ、ガラス基板Kにおける2つの短辺側の端面にそれぞれ押し当て可能な押当てローラ61と、押当てローラ61をX方向に駆動するエアーシリンダ62とを備える。この基板位置決め装置6は、位置決め時に、両方のエアーシリンダ62を同時に伸ばすことで、ガラス基板Kにおける2つの短辺側の端面を押当てローラ61により挟み込むことで、ガラス基板Kの位置決めを行うようになっている。そして位置決めが終わったら、両方のエアーシリンダ62を同時に縮めることで、各押当てローラ61をガラス基板Kから離すようになっている。
【0042】
搬入出ロボット10は、エアー浮上ステージ3に対するガラス基板Kの搬入出を行う構成とされ、図1に示すように、吸着ハンド11、アーム12、バキュームポンプ13、モータ14及び操作パネル17を備える。吸着ハンド11は、枠体15に2次元状に配列された複数の吸引パッド16を備える。これら吸引パッド16は、それぞれの吸着面を同一平面としており、これにより平面体であるガラス基板Kの上面(非成膜面)を複数箇所で同時に吸着可能になっている。各吸引パッド16は、バキュームポンプ13の作動により吸引圧が生じるようになっている。そして、吸着ハンド11は、操作パネル17からの命令に応じてモータ14が駆動され、アーム12を介してXYZθ各方向に移動自在に構成される。
【0043】
次に、レーザスクライブ装置1の動作について、基板の搬入から受け渡しに関係する点について、動作説明する。
【0044】
オペレータは、搬入出ロボット10を操作してガラス基板Kをレーザスクライブ装置1に搬入する。具体的には、操作パネル17を用いて次のようにアーム12を動かす。まず、台車或いはパレットに載ったガラス基板Kの上方に吸着ハンド11が来るようにする。次いで、この吸着ハンド11をガラス基板Kにおける非成膜面の高さまで降下させる。次いで、ガラス基板Kにおける非成膜面の複数箇所を、吸着ハンド11における吸着パッド16で吸着させる。次いで、アーム12を動かし、吸着ハンド11が吸着保持したガラス基板Kを、エアー浮上ステージ3の上流側位置に持ってくる。次いで、吸着ハンド11による吸着保持を解除し、ピンフレーム41に付いているガイド(図示せず)に沿わせて、手動にてガラス基板Kの額縁部Kfの下面をリフトピン43の先端部に載せる。
【0045】
ガラス基板Kがリフトピン43の先端部で支持されると、ニップ群51は待避位置P8から受取位置P7へ移動する。具体的には、リニアモータ52Yが、制御装置9から送られた信号に基づいて、ニップ群51を+Y方向に駆動する。これにより、安全確保のため待避位置P8に待避していたニップ群51は、受取位置P7に配置される。
【0046】
ニップ群51が受取位置P7に配置されると、各ニップ53は、制御装置9から送られた信号に基づいて、閉じていた可動爪を開く。
【0047】
各ニップ53が受取位置P7で開くと、ニップ群51は、回避位置P6から保持位置P5に移る。具体的には、ニップ群51は、制御装置9から送られた信号に基づいて、+X方向に駆動され、これにより、回避位置P6から保持位置P5に配置される。このとき、各ニップ53は、それぞれにおける上下の可動爪間の空間に、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺が入った状態となる。
【0048】
可動爪を開いたニップ群51が保持位置P5に配置されると、リフトピン43が降下する。これにより、ガラス基板Kは、エアー浮上ステージ3でエアー支持されつつ、浮上面位置P4まで降下する。具体的には、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を降下駆動する。この降下駆動は、次のように行う。即ち、まず、リフトピン43はガラス基板Kを支持した状態で、上限位置P1から浮上面上方位置P3まで速度U1で降下する。ガラス基板Kが浮上面上方位置P3まで速度U1で降下した後は、浮上面位置P4まで速度U2(<U1)で降下する。このようにガラス基板Kを降下させるに際し2段階の速度制御を用い、U2<U1というように、浮上面位置P4の近傍で低速としたのは、エアー浮上ステージ3の直上での急激な降下によりエアー浮上ステージ3とガラス基板Kとが接触してしまうことを防止するためである。リフトピン43が速度U2で降下した後、浮上面位置P4となり、ガラス基板Kが浮上面位置P4で浮上支持されると、リフトピン43は一旦停止する。この段階でガラス基板Kは、リフトピン43とエアー浮上ステージ3から噴出されたエアーとにより支持されている。
【0049】
ガラス基板Kがリフトピン43とエアーとにより支持されると、基板位置決め装置6は、制御装置9から送られた信号に基づいて、エアーシリンダ62を伸ばし、押当てローラ61がガラス基板Kの両端面を押すことで、予め決められた位置にガラス基板Kが配置される。
【0050】
ガラス基板Kの位置決めがなされると、制御装置9から送られた信号に基づいて、各ニップ53が閉まり、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴む。この段階ではガラス基板Kは、ニップ53とリフトピン43とエアーエアー浮上ユニット311/312とにより支持されている。
【0051】
ニップ53がガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴むと、基板位置決め装置6は、制御装置9から送られた信号に基づいて、エアーシリンダ62を縮め、押当てローラ61を後退させる。
【0052】
基板位置決め装置6が後退すると、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を更に降下駆動する。このときガラス基板Kは、エアーにより支持されている。リフトピン43はガラス基板Kから離れて、下限位置P2まで降下する。この段階でガラス基板Kは、額縁部Kfの一辺がニップ53で保持され、成膜面の全面がエアーで浮上支持されている。以上のようにしてガラス基板Kが搬入され、スクライブ線を形成する準備が整う。
【0053】
以上が、前工程から搬送されてきた基板の受け渡しのプロセスであり、以降のガラス基板へのレーザスクライブ加工の工程に移る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本明細は、発明を実施するための最良の形態として、太陽電池向けのガラス基板にレーザスクライブ加工を施すために、前工程から搬入されてきた該ガラス基板を受け渡し、レーザスクライブ工程のステージに高さおよび位置を定めて保持するための搬入工程を基軸に記載しているが、基板を受け渡すにあたり、位置決めを早期に確実に行えるリフトピン機構とガラス基板を非接触状態で保持できるエアー浮上ユニット機構の両方の利点を併せ持つガラス基板の受け渡しの方法および装置に関する発明である。従い、当該発明の機構については、単に、太陽電池のレーザスクライブ工程にだけでなく、その他の液晶用フラットパネルなど幅広く大型ガラス基板の受け渡し機構に利用可能として適用できる発明である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のレーザスクライブ装置1の外観斜視図
【図2】レーザスクライブ装置1の主要部を示す平面図
【図3】レーザスクライブ装置1の主要部を示す正面図
【図4】レーザユニットを示す斜視図
【図5】ガラス基板Kにおける額縁部を説明する図
【符号の説明】
【0056】
1 レーザスクライブ装置
10 搬入出ロボット
11 吸着ハンド
12 アーム
13 バキュームポンプ
14 モーター
15 枠体
16 吸引パッド
17 操作パネル
2 機台
3 エアー浮上ステージ
31 主ステージ
32 副ステージ
311エアー浮上ユニット
321エアー浮上ユニット
311h エアー噴出孔
321h エアー噴出孔
33 ブロワーユニット
4 リフターユニット
41 ピンフレーム
41a 周囲枠
41b 中央枠
42 フレーム駆動部
43 リフトピン
P1 上限位置
P2 下限位置
P3 浮上面上方位置
P4 浮上面位置
P5 保持位置
P6 回避位置
P7 受取位置
P8 待避位置
5 搬送ユニット
51 ニップ群
52 ニップ群駆動部
51 ニップ群
6 基板位置決め装置
7 レーザユニット
8 集塵ユニット
9 制御装置
K ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に薄膜が形成された基板を前記薄膜形成面が下向きになるように配置して、前記基板をエアー浮上ユニットを用いて浮上し搬送する基板搬送装置において、隙間を設けて配置された前記エアー浮上ユニットの吹き出し口の隙間や外周に基板昇降用リフトピンを備えたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記リフトピンの位置を下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に配備することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記基板を前記リフトピンで支持した後、前記リフトピンの昇降速度をコントロールしながら前記基板の水平状態を保ちながら、前記リフトピンを降下させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板加工後の機能に支障の無い位置にエアー浮上ユニットの吹き出し口を設け、前記基板がリフトピンから受け渡して後、前記エアー浮上ユニットで前記基板を浮上させて支えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板搬送装置。
【請求項5】
片面に薄膜が形成された基板の前記薄膜形成面を下向きになるように前記基板の上面を吸着して前記基板を把持する搬送装置を用いて搬入する搬入方法において、隙間を設けて配置されたエアー浮上ユニットの吹き出し口の隙間や外周に基板昇降用リフトピンを備えた基板搬送装置を用いて、下面に形成された前記薄膜面を具備した前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に配備したリフトピンで支えた後、前記基板の下面に形成された前記薄膜面の前記基板の加工後の機能に支障の無い位置に吹き出し口を配備したエアー浮上ユニットに前記基板を受け渡す基板搬送方法において、
前記リフトピンで支える上限位置から前記エアー浮上ユニットで保持する浮上面上方位置までの降下速度より前記浮上面上方位置より前記エアー浮上ユニットで保持する浮上面位置までの速度を小さい速度で基板を降下させ受け渡すことを特徴とする基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−157640(P2010−157640A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335630(P2008−335630)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】