説明

基板洗浄処理装置

【課題】高い洗浄能力を維持し煩瑣な作業を伴うことなく、かつ、基板上に成膜されたトランジスタ素子等の静電破壊を引き起こすことなく効果的な洗浄処理を行うことができる基板洗浄処理装置を提供する。
【解決手段】搬送される基板Wに対して水洗処理を行う直水洗室20内に、2流体スプレーノズル24と、2流体スプレーノズル24の基板搬送方向上流側および下流側にそれぞれ配設されるスプレーノズル36、38とを備え、純水タンク22に貯留された純水を高圧送液ポンプ34により2流体スプレーノズル24およびスプレーノズル36、38へ供給する装置であって、2流体スプレーノズル24は、純水をSUS製のノズル部24bから基板の上面に高速で吐出することにより基板Wを正に帯電させ、スプレーノズル36、38は、純水をPVDF製のノズル部36b、38bから基板の上面に吐出することにより基板Wを負に帯電させて、基板Wの電位を中和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置(LCD)用、プラズマディスプレイ(PDP)用、有機発光ダイオード(OLED)用、電界放出ディスプレイ(FED)用、真空蛍光ディスプレイ(VFD)用、太陽電池パネル用等のガラス基板、磁気/光ディスク用のガラス/セラミック基板、半導体ウエハ、電子デバイス基板等の各種の基板に対して、洗浄処理を行う基板洗浄処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLCD、PDP等のデバイスの製造プロセスにおいて、基板の主面へ各種薬液を供給してレジスト剥離処理、エッチング処理等の薬液処理を行った後に、基板を水洗処理する場合、置換水洗室と水洗室と直水洗室(新水水洗処理部)とを設置し、まず、置換水洗室において、薬液処理直後の基板の主面へ洗浄水を供給して基板上の薬液を洗浄水で置換した後、水洗室において、直水洗室で使用された水を循環水タンクに回収してそれを洗浄水として使用し、主面上の薬液が洗浄水で置換された基板を水洗処理し、最後に、直水洗室において基板の主面へ純水を供給して基板を仕上げ水洗する装置が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
この直水洗室内において、仕上げ水洗効果を高めるため、気体及び液体からなる2流体を基板に対して吐出する2流体スプレーノズル等の高圧スプレーノズルが設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−284379号公報(第3−4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に、従来の基板洗浄装置の概略構成の1例を示す。図6は、基板洗浄処理装置300を模式的に示したものである。
【0006】
この基板洗浄処理装置300は、直水洗室(新水水洗処理部)20と、この直水洗室20内へ搬入されてきた基板Wを直水洗室20内において水平方向へ搬送する複数の搬送ローラ(図示せず)と、直水洗室20内において水平方向へ搬送される基板Wの上面へ気体の圧力で純水をミスト化して吐出する2流体スプレーノズル24と、基板Wの上・下両面へそれぞれ純水を吐出する上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28と、純水を貯留する純水タンク22と、純水タンク22の底部に介設された高圧送液ポンプ34とを備えている。
【0007】
2流体スプレーノズル24は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部24aに、その長手方向に沿って一列に互いに近接してSUS(ステンレス鋼)製の複数のノズル部24bが形設され、その各ノズル部24bの吐出口からそれぞれエアー等の気体の圧力で純水をミスト化して基板Wの上面に吐出する。このスプレーノズル24のスプレーパイプ部24aには、高圧送液ポンプ34に流路接続された純水供給路30が連通接続されるとともに、エアー供給源に流路接続されたエアー供給路40が連通接続される。
【0008】
上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28は、基板搬送方向に沿ってかつ互いに平行にそれぞれ複数本設けられ、各スプレーノズル26、28には、基板搬送方向に複数個のノズル部が一列に形設されている。上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28には、純水供給源に流路接続された純水供給路32がそれぞれ連通接続されている。
【0009】
高圧送液ポンプ34は、純水タンク22に貯留された純水を純水供給路30を介して2流体スプレーノズル24へ高圧で送液する。
【0010】
従来の基板洗浄処理装置では、スプレーパイプ24aに形設されたSUS製の複数のノズル部24bの吐出口からそれぞれ、気体と純水とが混合されて微小な水粒子が高速で基板上面に吐出されることにより、基板上面に付着するパーティクル等を高い洗浄能力で効果的に除去できるが、基板Wを正に帯電させ、場合によっては基板上に成膜されたトランジスタ素子等を破壊してしまうことがある。このトランジスタ素子等の静電破壊の原因につながる基板Wの正帯電現象は、2流体スプレーノズルに限らず洗浄用の高圧スプレーノズルのノズル部として特定の材質を選択し、当該ノズル部の吐出口から基板Wの上面に比抵抗値が高い液体である純水を高速で吐出する場合に発生することが本願発明者の実験により確認された。
【0011】
図7は、2流体スプレーノズルのスプレーパイプ部や純水のみの1流体を吐出する高圧スプレーノズルのスプレーパイプ部に形設すべきノズル部として種々の材質を選択し、それぞれのノズル部から、基板の上面に純水を高速で吐出した場合に基板Wに発生する帯電量について、本願発明者によって行われた実験結果に関するグラフをそれぞれ示す図である。
【0012】
図7において、縦軸はノズル部の材質の種類、横軸は帯電量(V)を示し、グラフA〜Cは、ノズル部の材質としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を、D〜FはPVC(ポリ塩化ビニル)を、GおよびHはPP(ポリプロピレン)を、I〜KはSUSを、それぞれ選択した場合の帯電量を示す。高圧送液ポンプによる純水のスプレーノズルへの送液圧力に関しては、グラフA〜Cでは0.85MPa、グラフD〜Hでは0.92MPa、I〜Kでは0.95MPaをそれぞれ設定し、また、吐出される純水の比抵抗値に関しては、グラフAでは5.0MΩ・cm、グラフBでは4.4MΩ・cm、グラフCでは、3.7MΩ・cm、グラフDでは4.6MΩ・cm、グラフEでは4.4MΩ・cm、グラフFでは3.6MΩ・cm、グラフGでは4.8MΩ・cm、グラフHおよびJでは4.1MΩ・cm、グラフIでは、5.8MΩ・cm、グラフKでは3.5MΩ・cmの純水を使用した場合の結果をそれぞれ示している。
【0013】
なお、各ノズル部の吐出口から基板上面までの距離については、A〜Kのいずれも50mmに設定した。
【0014】
図7から明らかなとおり、スプレーノズルのノズル部の材質としてSUSを選択したグラフI〜Kは、大きな正の帯電量を示している。一方、スプレーノズルのノズル部の材質としてPVDFを選択したグラフA〜Cは、負の帯電量を示している。
【0015】
したがって、従来から、SUS製のノズル部を有する2流体スプレーノズルや高圧スプレーノズルから高圧で純水を吐出する場合には、高い洗浄能力を維持しかつ基板上に成膜されたトランジスタ素子等の静電破壊を防止するために、二酸化炭素等の不純物を純水に混入して純水の比抵抗値を低下させたり、あるいはまた、高圧送液ポンプによるスプレーノズルからの純水吐出圧を下げたりする必要があり、煩瑣な作業が付随していた。
【0016】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、気体及び液体からなる2流体を基板に対して吐出する2流体スプレーノズルや純水のみの1流体を基板に対して吐出する高圧スプレーノズルを用いて基板を洗浄処理する場合に、高い洗浄能力を維持し煩瑣な作業を伴うことなく、しかも基板上に成膜されたトランジスタ素子等の静電破壊を引き起こすことなく効果的な洗浄処理を行うことができる基板洗浄処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、基板に対して水洗処理を行う新水水洗処理部と、前記新水水洗処理部内に配設されて基板を前記新水水洗処理部内において水平方向へ搬送する基板搬送手段と、前記新水水洗処理部内に配設され、前記基板搬送手段によって搬送される基板の主面へ高速で純水を吐出する第1純水吐出手段と、前記新水水洗処理部内において前記第1純水吐出手段に近接して配設され、前記基板搬送手段によって搬送される基板の主面へ純水を吐出する第2純水吐出手段と、純水を貯留する純水タンクと、前記純水タンクに貯留された純水を前記第1および第2純水吐出手段へ供給する送液ポンプと、を備えた基板洗浄処理装置であって、前記第1純水吐出手段は、前記送液ポンプによって供給される純水を基板の主面に高速で吐出することにより基板を正に帯電させ、前記第2純水吐出手段は、前記送液ポンプによって供給される純水を基板の主面に吐出することにより基板を負に帯電させて、前記第1純水吐出手段からの純水の吐出により発生した基板の正の帯電を相殺して基板の電位を中和することを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第2純水吐出手段は、前記第1純水吐出手段の基板搬送方向下流側において前記第1純水吐出手段に近接して配設されかつ基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第1および第2純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列にそれぞれ一つずつ交互に近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って形設される複数のノズル部によって構成され、前記第2純水吐出手段は、前記スプレーパイプ部の長手方向に沿って、前記第1純水吐出手段を構成する前記複数のノズル部の2つの間に少なくとも2つ連設して形設されるノズル部を含む複数のノズル部によって構成されることを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置され前記送液ポンプから純水が供給されるとともに気体供給源から気体が供給される2流体スプレーノズルのスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部、によって構成され、当該複数のノズル部の吐出口からそれぞれ気体の圧力で純水をミスト化して基板の主面に吐出することを特徴とする。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置され前記送液ポンプから純水が供給される高圧スプレーノズルのスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部によって構成され、当該複数のノズル部の吐出口から純水のみの1流体を高速で基板の主面に吐出することを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板洗浄処理装置において、前記第1純水吐出手段を構成する複数のノズル部の材質は、PVC、PPおよびSUSから成るグループから選ばれた1つであることを特徴とする。
【0025】
請求項9に係る発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の基板洗浄処理装置において、前記第2純水吐出手段を構成する複数のノズル部の材質は、SUSであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1ないし請求項3ならびに請求項6ないし請求項9に係る発明の基板処理装置においては、送液タンクから供給された純水が第1純水吐出手段によって基板の主面に高速で吐出されることにより、基板が正に帯電されるが、第1純水吐出手段に近接して配設された第2純水吐出手段によって純水が基板の主面に吐出されることにより、基板が負に帯電され、第1純水吐出手段からの純水の吐出により発生した基板の正の帯電が相殺されて結果として基板の電位が中和される。したがって、二酸化炭素等の不純物を純水に混入して純水の比抵抗値を低下させたり、送液ポンプによる第1純水吐出手段からの純水吐出圧を下げたりするといったような煩瑣な作業を必要とせずに、高い洗浄能力を維持しつつしかも基板上に成膜されたトランジスタ素子等の静電破壊を引き起こすことなく効果的な洗浄処理を行うことができる。
【0027】
請求項4および請求項5に係る発明の基板洗浄処理装置においては、上記の効果に加えて、第1および第2純水吐出手段の両方が、基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って形設される複数のノズル部によって構成されるので、スプレーパイプ部の部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る基板洗浄処理装置200を模式的に示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態の第1の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態の第2の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態の第3の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施形態の第4の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。
【図6】従来の基板洗浄処理装置300を模式的に示した概略構成図である。
【図7】ノズル部の材質と帯電量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置200を模式的に示したものである。なお、図6において示した構成要素および部材と同一または対応する構成要素および部材については、図1においても同一の符号を使用する。
【0031】
この基板洗浄処理装置200は、直水洗室(新水水洗処理部)20と、この直水洗室20内へ搬入されてきた基板Wを直水洗室20内において水平方向へ搬送する複数の搬送ローラ(図示せず)と、直水洗室20内において水平方向へ搬送される基板Wの上面へ気体の圧力で純水をミスト化して吐出する2流体スプレーノズル24と、この2流体スプレーノズル24の基板搬送方向における上流側および下流側において2流体スプレーノズル24と近接してそれぞれ配設されたスプレーノズル36、38と、基板Wの上・下両面へそれぞれ純水を吐出する上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28と、純水を貯留する純水タンク22と、純水タンク22の底部に介設された高圧送液ポンプ34とを備えている。
【0032】
2流体スプレーノズル24は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部24aに、その長手方向に沿って一列に互いに近接してSUS製の複数のノズル部24bが形設され、その各ノズル部24bの吐出口からそれぞれエアー等の気体の圧力で純水をミスト化して基板Wの上面に吐出する。
【0033】
このスプレーノズル24のスプレーパイプ部24aには、高圧送液ポンプ34に流路接続された純水供給路30が連通接続されるとともに、エアー供給源に流路接続されたエアー供給路40が連通接続される。純水供給路30には、スプレーパイプ部24aへ供給される純水の流量調節用バルブ(図示せず)が設けられている。2流体スプレーノズル24は、例えば、そのノズル部24bの吐出口から基板Wの上面までの距離が10mm〜100mmとなるような高さ位置に設置され、複数のノズル部24bは、例えば20mm〜100mmのピッチで設けられる。この2流体スプレーノズル24は、基板Wの上面と平行に、かつ、基板搬送方向に対して直交するように配置される。このノズル部24bの吐出口からは、搬送される基板Wの上面へ高圧送液ポンプ34により高圧、例えば0.4MPaの圧力の純水が基板Wの幅方向全体にわたって吐出される。
【0034】
スプレーノズル36、38には、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部36a、38aに、その長手方向に沿って一列に互いに近接してPVDF製の複数のノズル部36b、38bがそれぞれ形設され、その各ノズル部36b、38bの吐出口からそれぞれ扇状に純水が吐出される。このスプレーノズル36、38のスプレーパイプ部36a、38aは、純水供給路30が連通接続され、純水供給路30には、スプレーパイプ部36a、38aへ供給されるそれぞれの純水の流量調節用バルブ(図示せず)が設けられている。スプレーノズル36、38は、例えば、そのノズル部36b、38bの吐出口から基板Wの上面までの距離が10mm〜300mmとなるような高さ位置に設置され、複数のノズル部36b、38bは、例えば20mm〜200mmのピッチで設けられる。
【0035】
このようなスプレーノズル36、38は、基板Wの上面と平行に、かつ、基板搬送方向に対して直交するように配置される。このノズル部36b、38bの吐出口からは、搬送される基板Wの上面へ高圧送液ポンプ34により高圧、例えば0.85MPaの圧力の純水が基板Wの幅方向全体にわたって吐出される。
【0036】
上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28は、基板搬送方向に沿ってかつ互いに平行にそれぞれ複数本設けられ、各スプレーノズル26、28には、基板搬送方向に複数個のノズル部が一列に形設されている。上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28には、純水供給源に流路接続された純水供給路32がそれぞれ連通接続されている。
【0037】
高圧送液ポンプ34は、純水タンク22に貯留された純水を、純水供給路30を介して2流体スプレーノズル24、スプレーノズル36、38へ送液する。
【0038】
上記した構成を備えた基板洗浄処理装置200では、直水洗室20内へ搬入されてきた基板Wは、搬送ローラにより直水洗室20内において水平方向へ搬送されながら、スプレーノズル36のスプレーパイプ部36aに形設されたPVDF製のノズル部36bから純水が基板上面に吐出され、次に、2流体スプレーノズル24のスプレーパイプ部24aに形設されたSUS製の複数のノズル部24bの吐出口からそれぞれ、気体と純水とが混合された微小な水粒子が高速で基板上面に吐出され、さらにスプレーノズル38のスプレーパイプ部38aに形設されたPVDF製のノズル部38bから純水が基板上面に吐出され、最後に上部スプレーノズル26および下部スプレーノズル28の各ノズル部から純水が基板上面に吐出されることにより基板Wの仕上げ水洗が行われる。
【0039】
ここで、図7に示されるように、基板Wでは、SUS製のノズル部24bからの微小水粒子吐出により正帯電が、PVDF製のノズル部36b、38bからの純水吐出によりこれとは逆極性の負帯電が、それぞれ発生する。したがって、正負両極性の帯電量が相殺されるようにそれぞれの発生帯電量を調節することにより、結果として基板Wの電位を中和することができる。この発生帯電量の調節は、設定された高圧送液ポンプ34による送液圧力に加えて、各ノズル部24b、36b、38bの吐出口から基板Wの上面までの距離の調節、純水供給路30に設けられた各流量調節用バルブの調節等により行う。
【0040】
このように、SUS製のノズル部24bを備えた2流体スプレーノズル24を用いても、基板Wの電位が中和されることにより、成膜されたトランジスタ素子等の静電破壊を引き起こすことなく、基板上面に付着するパーティクル等を高い洗浄能力で効果的に除去できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、さらに様々な変形が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、基板に正の帯電現象を発生させる2流体スプレーノズル24の基板搬送方向上流側および下流側に、2流体スプレーノズルに近接して負の帯電現象を発生させるPVDF製のノズル部を備えた2つのスプレーノズル36、38をそれぞれ配設し、正負両極性の帯電量を相殺して基板Wの電位を中和するように構成したが、図2に示すように、2流体スプレーノズル24の基板搬送方向下流側にこれと近接してスプレーノズル38のみを配置しても良い。図2は、本発明の実施形態の第1の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。この場合、スプレーノズル38(ノズル部38b)によって発生する基板Wの負の帯電量は、2流体スプレーノズル24(ノズル部24b)によって基板Wに発生する正の帯電量と絶対量として等しくなるように調節される。
【0043】
また、図3に示すように、2流体スプレーノズル24の基板搬送方向上流側および下流側に配設された2つのスプレーノズル36、38に加えて、スプレーノズル38の基板搬送方向下流側に、PVDF製のノズル部42bが形設され基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部42aを有するもう1つのスプレーノズル42を配設し、各スプレーノズル36、38、42(ノズル部36b、38b、42b)によって基板Wに発生する正の帯電量の総量が、絶対量として2流体スプレーノズル24(ノズル部24b)によって基板Wに発生する正の帯電量と等しくなるようにしてもよい。図3は、本発明の実施形態の第2の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。
【0044】
さらにまた、図4に示すように、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部50aに、その長手方向に沿って一列に互いに近接して、複数のSUS製のノズル部50b1と複数のPVDF製のノズル部50b2とをそれぞれ一つずつ交互に形設して2流体スプレーノズル50を構成しても良い。図4は、本発明の実施形態の第3の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。この場合も、複数のSUS製のノズル部50b1によって基板Wに発生する正の帯電量の総量が、複数のPVDF製のノズル部50b2によって基板Wに発生する負の帯電量と、絶対量として等しくなって両極性の帯電量が相殺されるように設定すればよい。この図4図示の変形例では、スプレーパイプ部の部品点数を低減することができる。
【0045】
また、図5に示すように、複数のSUS製のノズル部50b1と複数のPVDF製のノズル部50b2とをそれぞれ一つずつ交互に形設して2流体スプレーノズル50を構成する代わりに、2つのSUS製のノズル部50b1の間に、複数の、例えば2つのPVDF製のノズル部50b2を連設して2流体スプレーノズル50を構成しても良い。図5は、本発明の実施形態の第4の変形例に係る基板洗浄処理装置の要部を模式的に示す図である。この場合も、複数のSUS製のノズル部50b1によって基板Wに発生する正の帯電量の総量が、複数のPVDF製のノズル部50b2によって基板Wに発生する負の帯電量と、絶対量として等しくなって両極性の帯電量が相殺されるように設定すればよい。この図5図示の変形例でも、スプレーパイプ部の部品点数を低減することができる。
【0046】
また、上記実施形態および変形例では、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部の長手方向に沿って形設されたSUS製の複数のノズル部、を有する2流体スプレーノズルを用いて、その複数のノズル部の吐出口からそれぞれエアー等の気体の圧力で純水をミスト化して基板Wの上面に吐出することにより基板上面に付着するパーティクル等を洗浄除去する洗浄処理装置について説明したが、2流体スプレーノズルを用いる代わりに、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部の長手方向に沿って形設されたSUS製の複数のノズル部を有する高圧スプレーノズルを用いて、その複数のノズル部の吐出口から純水のみの1流体を基板に対して高速で吐出する高圧スプレーノズルを備えた基板洗浄処理装置にも適用できる。
【0047】
また、2流体スプレーノズルや高圧スプレーノズルのノズル部の材質としては、SUS製に限らず、PVC、PPなど、純水を高速で吐出することにより基板Wに正帯電を発生させる材質のノズル部を有するスプレーノズルを備えた基板洗浄処理装置にも適用できる。
【0048】
さらに、純水吐出に伴って基板に負の帯電を発生させるノズル部の材質としては、PVDFに限らず、他の、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂でもよい。
【符号の説明】
【0049】
20 直水洗室(新水水洗処理部)
22 純水タンク
24、50 2流体スプレーノズル
24a、36a、38a、42a、50a スプレーパイプ部
24b 、36b、38b、42b、50b1、50b2 ノズル部
26 上部スプレーノズル
28 下部スプレーノズル
30、32 純水供給路
34 高圧送液ポンプ
36、38、42 スプレーノズル
200、300 基板洗浄処理装置
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して水洗処理を行う新水水洗処理部と、
前記新水水洗処理部内に配設されて基板を前記新水水洗処理部内において水平方向へ搬送する基板搬送手段と、
前記新水水洗処理部内に配設され、前記基板搬送手段によって搬送される基板の主面へ高速で純水を吐出する第1純水吐出手段と、
前記新水水洗処理部内において前記第1純水吐出手段に近接して配設され、前記基板搬送手段によって搬送される基板の主面へ純水を吐出する第2純水吐出手段と、
純水を貯留する純水タンクと、
前記純水タンクに貯留された純水を前記第1および第2純水吐出手段へ供給する送液ポンプと、
を備えた基板洗浄処理装置であって、
前記第1純水吐出手段は、前記送液ポンプによって供給される純水を基板の主面に高速で吐出することにより基板を正に帯電させ、
前記第2純水吐出手段は、前記送液ポンプによって供給される純水を基板の主面に吐出することにより基板を負に帯電させて、前記第1純水吐出手段からの純水の吐出により発生した基板の正の帯電を相殺して基板の電位を中和することを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置されるスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第2純水吐出手段は、前記第1純水吐出手段の基板搬送方向下流側において前記第1純水吐出手段に近接して配設されかつ基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1および第2純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列にそれぞれ一つずつ交互に近接して形設される複数のノズル部によって構成されることを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置される少なくとも1本のスプレーパイプ部に当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って形設される複数のノズル部によって構成され、
前記第2純水吐出手段は、前記スプレーパイプ部の長手方向に沿って、前記第1純水吐出手段を構成する前記複数のノズル部の2つの間に少なくとも2つ連設して形設されるノズル部を含む複数のノズル部によって構成されることを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置され前記送液ポンプから純水が供給されるとともに気体供給源から気体が供給される2流体スプレーノズルのスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部、によって構成され、当該複数のノズル部の吐出口からそれぞれ気体の圧力で純水をミスト化して基板の主面に吐出することを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1純水吐出手段は、基板搬送方向に対して交差する方向に配置され前記送液ポンプから純水が供給される高圧スプレーノズルのスプレーパイプ部に、当該スプレーパイプ部の長手方向に沿って一列に互いに近接して形設される複数のノズル部、によって構成され、当該複数のノズル部の吐出口から純水のみの1流体を高速で基板の主面に吐出することを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の基板洗浄処理装置において、
前記第1純水吐出手段を構成する複数のノズル部の材質は、PVC、PPおよびSUSから成るグループから選ばれた1つであることを特徴とする基板洗浄処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の基板洗浄処理装置において、
前記第2純水吐出手段を構成する複数のノズル部の材質は、SUSであることを特徴とする基板洗浄処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143320(P2011−143320A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3574(P2010−3574)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】