説明

基板生産ラインの管理方法

【課題】吸着ミス等を考慮することにより、より各電子部品装着装置間の基板生産時間バランスを向上させること。
【解決手段】割り振られたA部品を電子部品装着装置の「1号機」、「2号機」、「3号機」に割り振った場合のシミュレーション時間とリカバリ時間との合算を行うと、各号機の合算時間はそれぞれ「10秒間」であり、これらの合算時間に基づいてこの対象電子部品であるA部品は最少時間である1号機に決定され、このA部品の評価・更新は終了する。次に、割り振られたB部品を各号機に割り振った場合のシミュレーション時間とリカバリ時間との合算を初めに行うと、各号機の合算時間は、1号機が「20秒間」、2号機が「10秒間」、3号機が「10秒間」であり、これらの合算時間に基づいて最少時間であるB部品は2号機に決定され、このA部品の評価・更新は終了する。同様に以下、対象のプリント基板P上に装着される電子部品の評価・更新を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板生産ラインの管理方法に関し、詳述すると、部品供給装置から供給された電子部品を保持具で吸着して取出して基板上に装着する電子部品装着装置を複数台接続した基板生産ラインと、この基板生産ラインを構成する各電子部品装着装置に通信回線を介して接続された管理コンピュータとを備えて、電子部品装着装置を管理する基板生産ラインの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品装着装置は、例えば特許文献1などに開示されている。そして、基板の生産性の向上のためには、シミュレーション時間を元に、基板生産ラインにおける各電子部品装着装置にとって、最適化された装着データであるラインバランスのとれた最適化データを作成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−94896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現実の基板の生産においては、電子部品の吸着ミス等により、この吸着ミスによる電子部品の装着をリカバリする動作が発生し、前記基板生産ラインにおける各電子部品装着装置間の基板生産時間バランスが悪化することで、装置稼働率、基板生産量への影響を与えることとなる。
【0005】
そこで本発明は、吸着ミス等を考慮することにより、より各電子部品装着装置間の基板生産時間バランスを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、部品供給装置から供給された電子部品を保持具で保持して取出して基板上に装着する電子部品装着装置を複数台接続した基板生産ラインと、この基板生産ラインを構成する各電子部品装着装置に通信回線を介して接続された管理コンピュータとを備えて、電子部品装着装置を管理する基板生産ラインの管理方法において、
対象の電子部品について前記基板上への電子部品の装着に要するシミュレーション時間と前記部品供給装置から前記保持具による対象電子部品の取り出しミスが起こるリカバリ発生率を加味した対象電子部品のリカバリ時間との和を算出し、
この和を複数台の前記電子部品装着装置に割り振って、各電子部品装着装置毎に累積時間を算出し、
この累積時間が最少時間となる前記電子部品装着装置を決定し、
前記対象の電子部品は前記決定された前記電子部品装着装置が前記基板上に装着するようにした
ことを特徴とする。
【0007】
また第2の発明は、第1の発明において、前記リカバリ時間は、1回当たりのリカバリ動作に要する時間に前記リカバリ発生率を乗算して、更に前記基板上に装着される対象電子部品の数を乗算したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、吸着ミス等を考慮することにより、より各電子部品装着装置間の基板生産時間バランスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子部品実装ラインの管理システムの概略図を示す。
【図2】電子部品装着装置の平面図である。
【図3】電子部品装着装置の制御ブロック図である。
【図4】ラインバランスの向上を図るためのフローチャートを示す図である。
【図5】解評価・更新に係る簡略説明図である。
【図6】対象電子部品のリカバリ時間の算出についてのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態につき説明する。図1は基板としてのプリント基板6上に電子部品(以下、単に「部品」と略す場合もある。)を装着する電子部品実装ラインの管理システムの概略図であり、この電子部品実装ラインは前記基板6上に半田クリームを塗布するスクリーン印刷機や、前記基板6上に接着剤を塗布する接着剤塗布装置や、前記基板6上に電子部品を装着する電子部品装着装置1、2、3などの作業装置を備えているが、これらの装置に限らず、電子部品実装ラインに電子部品の実装に係る他の装置も含んでもよい。
【0011】
そして、前記電子部品装着装置1、2、3は相互に通信回線5を介して送受信が可能で有ると共に、それぞれ前記通信回線5を介して管理コンピュータ7にも接続されてこの管理コンピュータ7との間で送受信が可能である。
【0012】
そして、前記管理コンピュータ7にはキーボード等の入力手段7A、表示画面に入力装置としてのタッチパネルスイッチが形成されるモニタなどの表示装置7Bが接続されており、電子部品の種類毎に部品ライブラリデータやプリント基板Pの種類毎にパターンプログラムデータを作成することができ、記憶手段である内部メモリに格納すると共に、前記電子部品装着装置1、2、3に通信回線5を介して送信して、これらの電子部品装着装置1、2、3の後述する各RAM31に格納する。
【0013】
前記部品ライブラリデータは、部品ID毎に電子部品の特徴を表すデータであり、部品ID毎に、部品形状、部品種別、供給種類、収納テープの幅であるテープ幅、部品寸法、使用優先順序毎のノズル候補1、2、3、照明方式、点灯パターン指定、視野指定などから構成される。
【0014】
前記パターンプログラムデータは、プリント基板PのX方向・Y方向のサイズ、厚み、基板認識の有無などから構成される基板情報データと、その装着順序毎(ステップ番号毎)に、プリント基板P内でのX座標、Y座標、角度情報、電子部品を供給する部品供給ユニット13Bの配置番号等から構成される装着データと、各部品供給ユニット13Bのフィーダベース13A上における配置番号に対応した各電子部品の種類の情報である部品配置データと、どの装着ヘッドのどの位置にどの種類の吸着ノズル(電子部品を部品供給ユニットから取出す保持具)が装着されているかを示すノズル配置データと、電子部品実装ライン1における何番目の装置のどの装置機種かに係る装置情報などから構成される。
【0015】
次に、図2に基づいて、他の電子部品装着装置2、3と同様な構造の電子部品装着装置1を例として説明する。先ず、電子部品装着装置1には、プリント基板6を搬送する搬送装置12と、この搬送装置12を挟んで手前側と奥側に配設される電子部品を供給するための部品供給装置13と、駆動源により一方向(プリント基板6の搬送方向と直交するY方向)に移動可能な一対のビーム14A、14Bと、それぞれ複数(例えば、12本)の部品保持手段である吸着ノズル15を着脱可能に備えて前記各ビーム14A、14Bに沿った方向(プリント基板6の搬送方向であるX方向)に各駆動源により移動可能で且つ回転可能な作業ヘッドとしての装着ヘッド16とが設けられている。
【0016】
前記搬送装置12は電子部品装着装置1の前後の中間部に配設され、上流側装置からプリント基板6を受け継ぐ基板供給部12Aと、前記各装着ヘッド16の吸着ノズル15に吸着保持された電子部品を装着するために基板供給部12Aから供給されたプリント基板6を位置決め固定する基板位置決め部12Bと、この基板位置決め部12Bで電子部品が装着されたプリント基板6を受け継いで下流側装置に搬送する基板排出部12Cとから構成され、これら基板供給部12A、基板位置決め部12B及び基板排出部12Cはプリント基板6の幅(搬送方向と直交する方向の幅)に合わせて間隔が調整できる一対の搬送コンベアから構成される。
【0017】
前記部品供給装置13は、キャスタ付きのカートのフィーダベース13A上に部品供給ユニット13Bを多数並設したものであり、部品供給側の先端部がプリント基板6の搬送路に臨むように装着装置本体に連結具(図示せず)を介して着脱可能に配設され、この連結具を解除して把手を引くと下面に設けられたキャスタにより移動できる構成である。
【0018】
この部品供給ユニット13Bは種々の種類の部品供給形態があり、例えば収納テープを使用するものにあっては、多数の電子部品をキャリアテープの凹部から成る各収納部に一定の間隔で収容したカバーテープで覆う収納テープが搭載されており、収納テープを間欠送りすると共にキャリアテープからカバーテープを剥離することで、部品供給ユニット13Bの部品取出位置に電子部品が1個ずつ供給され、各収納部から前記装着ヘッド16の吸着ノズル15により取出される。
【0019】
X方向に長い前後一対の前記ビーム14A、14Bは、Y方向リニアモータ17の駆動により左右一対の前後に延びたガイドに沿って前記各ビーム14A、14Bに固定されたスライダが摺動して個別にY方向に移動する。前記Y方向リニアモータ17は左右一対の基体11A、11Bに沿って固定された左右一対の固定子と、前記ビーム14A、14Bの両端部に設けられた取付板の下部に固定された可動子17Aとから構成される。
【0020】
また、前記ビーム14A、14Bにはその長手方向(X方向)にX方向リニアモータ19によりガイドに沿って移動する前記装着ヘッド16が夫々内側に設けられており、前記X方向リニアモータ19は各ビーム14A、14Bに固定された前後一対の固定子と、各固定子の間に位置して前記装着ヘッド16に設けられた可動子とから構成される。
【0021】
従って、各装着ヘッド16は向き合うように各ビーム14A、14Bの内側に設けられ、前記搬送装置12の基板位置決め部12B上のプリント基板6や部品供給ユニット13Bの部品取出し位置上方を移動する。
【0022】
そして、この吸着ノズル15は上下軸モータ20により昇降可能であり、またθ軸モータ21により装着ヘッド16を鉛直軸周りに回転させることにより、結果として各装着ヘッド16の各吸着ノズル15はX方向及びY方向に移動可能であり、垂直線回りに回転可能で、且つ上下動可能となっている。
【0023】
18は前記吸着ノズル15に吸着保持された電子部品を撮像する部品認識カメラで、22はプリント基板6に付された基板認識マークを撮像するための基板認識カメラで各装着ヘッド16に搭載されている。
【0024】
23は種々の吸着ノズル15を収納するノズルストッカであり、前記搬送装置12の奥側位置に2個、手前側位置に2個設置可能であり、吸着ノズル15の形状・サイズが異なるために、異なる種類のものが準備される。
【0025】
次に、図3に示す制御ブロック図について説明する。先ず、30は本装着装置の装着に係る動作を統括制御する制御手段、種々の判定をする判定手段、種々の比較をする比較手段、算出手段としてのCPU、31は電子部品の装着ステップ番号順(装着順序毎)にプリント基板6内でのX方向、Y方向及び角度位置から成る装着座標情報や各部品供給ユニット13Bの配置番号情報等から成る装着データ、部品供給ユニット13Bの配置番号毎の部品IDに係る部品配置データ、電子部品毎の電子部品のサイズデータ等から成る部品ライブラリデータ等を格納する記憶手段としてのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)、32はプログラムを格納するROM(リ−ド・オンリー・メモリ)である。
【0026】
なお、前記RAM31に格納された前記装着データ、部品配置データ、部品ライブラリデータ等は、前記管理コンピュータ7にも格納されている。
【0027】
そして、CPU30は前記RAM31に記憶されたデータに基づき、前記ROM32に格納されたプログラムに従い、電子部品装着装置の部品装着動作に係る動作を統括制御する。即ち、CPU30は、インターフェース33及び駆動回路36を介して前記X方向リニアモータ19、Y方向リニアモータ17、上下軸モータ20及びθ軸モータ21の駆動を制御する。
【0028】
26はインターフェース33を介して前記CPU30に接続される認識処理装置で、前記部品認識カメラ18、基板認識カメラ22により撮像して取込まれた画像の認識処理が該認識処理装置26にて行われ、CPU30に処理結果が送出される。即ち、CPU30は、前記部品認識カメラ18、基板認識カメラ22により撮像された画像を認識処理(位置ずれ量の算出など)するように指示を認識処理装置26に出力すると共に、認識処理結果を認識処理装置26から受取るものである。
【0029】
即ち、前記認識処理装置26の認識処理により電子部品の位置ずれ量が把握されると、その結果がCPU30に送られ、CPU30はプリント基板6の位置ずれ量に当該電子部品の位置ずれ量を加味して、前記ビーム4A、4BをY方向リニアモータ17の駆動によりY方向に、装着ヘッド16をX方向リニアモータ19の駆動によりX方向に移動させることにより、またθ軸モータ21によりθ回転させ、X、Y方向及び鉛直軸線回りへの回転角度位置の補正がなされるものである。
【0030】
また、CPU30には操作画面等を表示するモニタ27、このモニタ27の表示画面に形成された入力装置としてのタッチパネルスイッチ28がインターフェース33を介して接続されている。
【0031】
次に、前記管理コンピュータ7を使用して、電子部品実装ラインにおける電子部品装着装置1、2、3のラインバランスをとるための、即ち各電子部品装着装置1、2、3間の基板生産時間バランスをとるための動作について、図4のラインバランスの向上を図るためのフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
初めに、ステップS01はステップS06までの動作を対象電子部品(所定機種の対象のプリント基板P上に装着する電子部品)の数だけ繰り返すことを意味し、次にステップS02はステップS04までの動作を繰り返すことを意味する。
【0033】
従って、先ず最初の対象電子部品(ステップS01)についての電子部品装着装置1(ステップS02)について、前記管理コンピュータ7は各プリント基板Pの種類毎に前記内部メモリに格納されたこのプリント基板Pの種類毎のパターンプログラムデータに基づいて最適化処理を行う(ステップS03)。
【0034】
この最適化処理は、前記基板情報データ、前記装着データ、前記部品配置データ、前記ノズル配置データ等から構成される前記パターンプログラムデータに基づいて行われ、基板生産時間が短くなるように、最適化処理された装着データが作成される。
【0035】
次に、対象電子部品のシミュレーション時間及び対象電子部品のリカバリ時間が算出され、その合計時間を算出する(ステップS04)。このシミュレーション時間については、プリント基板Pが電子部品装着装置内に導入されてから、このプリント基板Pが位置決めされて対象の電子部品を吸着ノズル15が部品供給装置13から取出して、この電子部品を部品認識カメラ18が撮像して、認識処理装置26が認識処理をして前記プリント基板P上に装着するまでに要する時間について、前記管理コンピュータ7が前記パターンプログラムデータに基づいて算出し、前記対象電子部品のリカバリ時間の算出については、後述する。
【0036】
そして、1台目の電子部品装着装置1について、前述した最適化処理(ステップS03)と、前記シミュレーション時間及びリカバリ時間の合計時間算出(ステップS04)とを行ったら、同様に2台目の電子部品装着装置2及び3台目の電子部品装着装置3についても、行う(ステップS05)。
【0037】
次に、解評価・更新について行われ(ステップS06)、この解評価・更新を電子部品の数だけ繰り返す(ステップS07)。
【0038】
この解評価・更新について、解評価・更新に係る簡略説明図である図5に基づいて詳細に説明する。これから解評価・更新を行うために、割り振られたA部品(点線で囲まれており、「仮決定」の意。)を電子部品装着装置1(「1号機」)、2(「2号機」)、3(「3号機」)に割り振った場合のシミュレーション時間とリカバリ時間との合算を初めに行うと、各号機の合算時間は、それぞれ「10秒間」であり、これらの合算時間に基づいて、この対象電子部品であるA部品の装着(実線で囲まれており、「決定」の意味。)は1号機に決定され、このA部品の評価・更新は終了する。
【0039】
即ち、A部品を装着する電子部品装着装置は、本来最少時間の電子部品装着装置に決定されるが、前述したように、各号機の合算時間はそれぞれ「10秒間」であり、全て同時間であるために、最初の号機である1号機に決定される。
【0040】
次に、割り振られたB部品(点線で囲まれている。)を各号機に割り振った場合のシミュレーション時間とリカバリ時間との合算を初めに行うと、各号機の合算時間は、1号機が「20秒間」、2号機が「10秒間」、3号機が「10秒間」であり、これらの合算時間に基づいて、B部品の装着(実線で囲まれている。)は2号機に決定され、このA部品の評価・更新は終了する。この場合、1号機はA部品についての合算時間の「10秒間」に、B部品についての合算時間の「10秒間」を加えて、「20秒間」となる。
【0041】
即ち、前述したように、B部品について(B部品まで)の各号機の合算時間はそれぞれ「20秒間」、「10秒間」、「10秒間」であり、最少時間の2号機、3号機のうち、B部品の装着は初めの号機である2号機に決定され、このB部品の評価・更新は終了する。
【0042】
次に、割り振られたC部品(点線で囲まれている。)を各号機に割り振った場合のシミュレーション時間とリカバリ時間との合算を初めに行うと、各号機の合算時間は、1号機が「18秒間」、2号機が「18秒間」、3号機が「8秒間」であり、これらの合算時間に基づいて、このC部品(実線で囲まれている。)の装着は3号機に決定され、このC部品の評価・更新は終了する。
【0043】
この場合、この各号機の合算時間にあっては、1号機については前述したようなプリント基板Pが電子部品装着装置内に導入されてから、前記プリント基板P上に部品A及び部品Cを装着するまでに要する時間であり、2号機については同様にプリント基板Pが電子部品装着装置内に導入されてから、前記プリント基板P上に部品B及び部品Cを装着するまでに要する時間であり、3号機については同様にプリント基板Pが電子部品装着装置内に導入されてから、前記プリント基板P上に部品Cを装着するまでに要する時間である。
【0044】
そして、C部品までの各号機の合算時間(累積時間)はそれぞれ「18秒間」、「18秒間」、「8秒間」であり、最少時間の3号機に決定され、このC部品の評価・更新は終了する。
【0045】
従って、A部品は1号機で「10秒間」、B部品は2号機で「10秒間」、C部品は3号機で「8秒間」であって、以下同様に、順に各電子部品の評価・更新が行われることとなる。即ち、A部品、B部品、C部品以外の他の電子部品についても、以下同様に、順に各電子部品の評価・更新が行われ、このようにして電子部品毎に、プリント基板Pに装着する電子部品装着装置が決定されるので、各電子部品装着装置における装着データが作成する際に、前述した解評価・更新が使用される。
【0046】
ここで、前述した対象電子部品のリカバリ時間の算出について、図6のフローチャートに基づいて説明する。対象の前記プリント基板Pについての前記パターンプログラムデータを構成する装着データに基づいて、これから対象電子部品のリカバリ時間を算出するために、このプリント基板P上に装着されるこの対象電子部品の点数を算出する(ステップS11)。
【0047】
次に、対象電子部品のリカバリ発生率を算出する(ステップS12)が、これは既に算出して前記管理コンピュータ7の内部メモリに格納したリカバリ発生率を読み込んでもよい。このリカバリ発生率は、前記部品供給装置13から供給された対象電子部品を吸着して取り出しを複数回行って、吸着ミスした(吸着すべきでない面を吸着する「立ちチップ」が起こったり、吸着し損なったりした場合などが該当する。)回数を対象電子部品の吸着回数(取り出し動作の回数)で割り算して、算出する。
【0048】
次に、1回当たりのリカバリ時間、即ち前述した吸着ミスが発生した場合に、再度同一の電子部品を供給する前記部品供給装置13から供給された電子部品を取出すために要する時間に前記リカバリ発生率を乗算し(ステップS13)、この算出結果に、ステップS11で算出した対象プリント基板P上に装着されるこの対象電子部品の総数を乗算して、この対象電子部品のリカバリ時間(この対象部品の総数を対象プリント基板に装着するときのリカバリ時間)を算出して(ステップS14)、終了する。
【0049】
以下同様に、A部品、B部品、C部品以外の他の電子部品についても、リカバリ時間を算出して、前述したように、この電子部品について解評価・更新を行うものである。
【0050】
なお、以上のように、電子部品毎に、電子部品装着装置毎に、電子部品の評価・更新が行われることとなる。これにより、前記管理コンピュータ7が各電子部品装着装置1、2、3毎の適切な装着データを作成し、これを各電子部品装着装置1、2、3に通信回線5を介して送信して、これらの電子部品装着装置1、2、3の各RAM31に格納する。
【0051】
従って、各電子部品装着装置1、2、3において、吸着ミス等を考慮した装着データに基づいてプリント基板Pへの電子部品の装着動作を行うことができ、より各電子部品装着装置間の基板生産時間バランスを向上させることができる。
【0052】
なお、このように、電子部品について解評価・更新を行っても、基板生産時間バランスが、未だ良くない場合には、各電子部品装着装置1、2、3で使用する装着データを変更する。例えば、バランスを乱す原因のある電子部品について、他の電子部品装着装置で装着するようにしたり、装着する電子部品を互いに交換して装着するようにしてもよい。
【0053】
ここで、電子部品装着装置1の電子部品の装着運転について簡単に説明すると、その上流側作業装置(図示せず)からプリント基板6を受け取り、基板位置決め部にてこのプリント基板6を位置決め固定し、一方のビーム4AがY方向リニアモータ17の駆動によりY方向に移動すると共にX方向リニアモータ19によりビーム14Aに設けられた装着ヘッド16がX方向に移動し、前述したように、基板生産時間バランスを向上させることができる装着データに従い、対応する部品供給ユニット13Bの部品取出し位置上方まで移動して、上下軸モータ20の駆動により装着ヘッド16に設けられた吸着ノズル15を下降させて部品供給ユニット13Bから電子部品を取出す。
【0054】
そして、取出した後は装着ヘッド16の吸着ノズル15を上昇させて、部品認識カメラ18上方を通過させ、この移動中に複数の吸着ノズル15に吸着保持された複数の電子部品を一括して撮像して、この撮像された画像を認識処理装置26が認識処理して吸着ノズル15に対する位置ズレを把握する。
【0055】
また、各装着ヘッド16に設けられた基板認識カメラ22が前記プリント基板6上方位置まで移動して、プリント基板6に付された基板認識マークを撮像して、この撮像された画像を認識処理装置26が認識処理してプリント基板の位置が把握される。
【0056】
そして、装着データの装着座標に前記基板認識マークの認識処理結果及び各部品認識処理結果を加味して、吸着ノズル15が位置ずれを補正しつつ、それぞれ電子部品をプリント基板6上に装着する。このようにして、プリント基板6上に全ての電子部品の装着をしたら、この基板6を基板位置決め部から基板排出部を介して後工程装置に受け渡して、このプリント基板6上への電子部品の装着動作は終了する。
【0057】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3、4 電子部品装着装置
5 通信回線
7 管理コンピュータ
30 CPU
31 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給装置から供給された電子部品を保持具で保持して取出して基板上に装着する電子部品装着装置を複数台接続した基板生産ラインと、この基板生産ラインを構成する各電子部品装着装置に通信回線を介して接続された管理コンピュータとを備えて、電子部品装着装置を管理する基板生産ラインの管理方法において、
対象の電子部品について前記基板上への電子部品の装着に要するシミュレーション時間と前記部品供給装置から前記保持具による対象電子部品の取り出しミスが起こるリカバリ発生率を加味した対象電子部品のリカバリ時間との和を算出し、
この和を複数台の前記電子部品装着装置に割り振って、各電子部品装着装置毎に累積時間を算出し、
この累積時間が最少時間となる前記電子部品装着装置を決定し、
前記対象の電子部品は前記決定された前記電子部品装着装置が前記基板上に装着するようにした
ことを特徴とする基板生産ラインの管理方法。
【請求項2】
前記リカバリ時間は、1回当たりのリカバリ動作に要する時間に前記リカバリ発生率を乗算して、更に前記基板上に装着される対象電子部品の数を乗算したものであることを特徴とする請求項1に記載の基板生産ラインの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77650(P2013−77650A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215559(P2011−215559)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】