説明

基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法

【課題】本発明は、電線と回路基板との接続部分の構造を小型化、低背化することができる基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法を提供する。
【解決手段】基板用電線接続構造体において、横一列に配列された多数本のケーブル(2)と、プレート(14)と、プレート(14)の表面側に第1表面の少なくとも一端が固定されたFPC(13)とを有する中継接続体(35A)と、を備え、FPC(13)は、第2表面の一端側に多数本のケーブル(2)と電気的に接続された第1の導体部を具備する第1の電気接触面と、第2表面の他端側に回路基板(8)に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面と、一端側と他端側との間の部分にUターン状に曲げられる折曲げ部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と回路基板とを電気的に接続する基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の課題に関連している従来の一例として、コネクタを介して回路基板と電線とを電気的に相互接続する基板用電線接続構造体を挙げることができる(例えば、特許文献1)。特許文献1の段落番号[0014]には、「本発明に係るケーブル用コネクタ1は、図1に示すように、プリント基板2に表面実装されるレセプタクルコネクタ3と、該レセプタクルコネクタ3に前記プリント基板2の垂直方向から嵌合され同軸ケーブル4を半田付けして併設するプラグコネクタ5とでなる。」と記載されている。また、段落番号[0022]には、「前記レセプタクルコネクタ3は、図7乃至図8に示すように、ハウジング本体3aにプリント基板2に接続する脚部が交互に短長にされた雌コンタクト3bが埋設されている。」と記載され、段落番号[0023]には、「この雌コンタクト3bの接触部3dは、図8(C)に示すように、前記プラグコネクタ5の雄コンタクト5bの下位置で、前記プリント基板2の表面と略平行に延設され前記雄コンタクト5bの接触部5fと共にプリント基板2に略垂直に起立して、前記接触部5fに接触するように湾曲して形成されている。」と記載されている。
【0003】
すなわち、この基板用電線接続構造体は、細径同軸ケーブルと回路基板とを導通するために適用され、回路基板に表面実装されたレセプタクルコネクタと、レセプタクルコネクタに回路基板の垂直方向から嵌合するプラグコネクタとを備えており、レセプタクルコネクタは回路基板の導体部に接続している雌接触子を有し、プラグコネクタは一端が同軸ケーブルに半田付けされた雄接触子を有している。レセプタクルコネクタとプラグコネクタとを嵌合することにより、雌接触子と雄接触子とが電気的に接続し、同軸ケーブルと回路基板とが導通するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−302417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対のコネクタを介してケーブルと回路基板を電気的に接続する接続構造ではコネクタ同士を嵌合させる嵌合機構が必要となる。雄側コンタクトと雌側コンタクトとの電気的接触を確実にとるため、一方のコンタクトを他方のコンタクトで上下方向または長手方向(ケーブルの軸方向)から弾性的に狭持する構造とすることが多く、それには雄側のコネクタの一部に雌側のコンタクトの少なくとも一方を受け入れる空間を設ける必要がある。また、同様に雌側コネクタにも雄側コネクタの少なくとも一部を受け入れる凹所を設ける必要がある。このため、一対のコネクタを介してケーブルと回路基板を電気的に接続する接続構造では、コネクタの小型化及び低背化、回路基板の実装面積を小さくする上で限界があり、携帯電話や情報端末機器などの電子機器の小型化・薄型化の流れから接続構造に対しても更なる小型化への要望がある。
【0006】
また、同軸ケーブルと回路基板との接続において、同軸ケーブルが回路基板上に実装される回路部品の邪魔になり、基板上での回路部品の実装密度を高めるには限界があった。 また、同軸ケーブルの筐体内での取り回しのために、一列に並んでいる多数本の同軸ケーブルが根本側で1本に束ねられて配線されているが、多数本の同軸ケーブルを束ねた際に、末広がりの両側に位置する同軸ケーブルがより強く引っ張られることとなり、電気的接続の接続信頼性が損なわれるという心配があった。
【0007】
そこで、本発明は、電線と回路基板との接続部分の構造を小型化、低背化することができ、さらには筐体のコンパクト化を図ることができる基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法を提供する。
また、本発明は、回路基板上での電線の処理方法を改善することにより、回路部品の実装密度を高めることができ、電線を束ねたときに生ずる張力を低減することができる基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、横一列に配列された多数本の電線と、プレートと、該プレートの表面側に第1表面の少なくとも一端が固定されたFPCとを有する中継接続体とを備え、前記FPCは、第2表面の一端側に前記多数本の電線と電気的に接続された第1の導体部を具備する第1の電気接触面と、第2表面の他端側に回路基板に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面と、前記一端側と前記他端側との間の部分にUターン状に曲げられる折曲げ部とを備えている基板用電線接続構造体を提供する。
【0009】
本発明の他の態様は、前記中継接続体の前記FPCの前記第2の導体部を回路基板の導体部に電気的に接続した後、前記FPCの略中間部分を支点として、前記FPCの一端側をUターンさせて、前記プレートの裏面側又は表面側に固定する中継接続体の固定方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様は、回路基板に開閉自在に連結されたカバー部材を有するベース部材を固定することと、開放している前記カバー部材の内面上に、前記基板用電線接続構造体の前記FPCの一端側を配置することと、前記FPCの他端側の前記第2の導体部と前記回路基板の導体部とを電気的に接続することと、前記カバー部材を閉じ方向に回動させることにより、前記FPCの略中間部分を支点として、前記FPCの一端側をUターンさせることと、前記カバー部材を前記ベース部材に係止することにより、前記FPCをUターンさせた状態を保持することと、を備えた中継接続体の固定方法を提供する。
【0011】
本発明の他の態様は、横一列に配列された多数本の電線と、プレートと、該プレートの表面側から裏面側にかけてUターン状に曲げて固定されているFPCとを有する中継接続体とを備え、該中継接続体は、一方の表面に前記多数本の電線と電気的に接続する第1の導体部を具備する第1の電気接触面を有し、他方の表面に回路基板に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面を有している、基板用電線接続構造体を提供する。
【0012】
本発明の他の態様は、多数本の電線を回路基板に中継接続する基板用電線接続構造体の製造方法であって、表面に所定間隔で並んでいる多数の導体部を有し、裏面に固定面を有するFPCを用意することと、前記FPCの前記導体部が外側になるようにして、該FPCと該FPCが固定されるプレートとを位置合わせし、該FPCの一端側の前記固定面をプレートの表面に固定することと、前記プレートに固定されていない前記FPCの他端側を前記プレートの縁部の近傍に位置する部分を支点として前記プレートの裏面側にUターンさせて、前記FPCの他端側の前記固定面を前記プレートの裏面に固定することと、を備えた中継接続体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、横一列に配列された多数本の電線と、該多数本の電線の端部に接続する多数の中継接続体と、備え、前記多数の中継接続体からそれぞれ導出する前記多数本の電線が集合する集合部の周囲に、電線導出端を内向きにして前記多数の中継接続体が放射状に配置されている、基板用電線接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル側コネクタに嵌合する基板側コネクタに代えて中継接続体が使用されているから、コネクタを使用する場合と比べて回路基板と電線との接続部分の構造を小型化・低背化することができる。これにより、本発明の基板用電線接続構造体が適用される電子機器などの小型化・薄型化を図ることができる。
【0015】
また、本発明によれば、多数の中継接続体が電線導出端を内向きにして放射状に配置されているから、電線と回路基板との接続部の近傍において回路部品を実装できるスペースを増やすことができ、これにより、回路部品の実装密度を高めることができる。したがって、回路設計の自由度を高めることができると共に、筐体のコンパクト化を図ることができる。また、電線を束ねたときに生ずる張力を低減することができ、電気的接続の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。本実施形態は、一つの代表的用途で使用可能な基板用電線接続構造体に関する。代表的な用途としては、折り畳み式やスライド式の携帯電話やスマートフォンなどの情報端末機器を挙げることができるが、本発明に係る基板用電線接続構造体はこれには限られない。基板用電線接続構造体は、ケーブル(電線)2と回路基板8との基板用電線接続構造体であり、横一列に配列された多数本のケーブル2と、ケーブルの芯線部3aとシールド層3cとを回路基板8の導体部7に中継接続する中継接続体12と、を備えている。
【0017】
図1及び図2には、第1の実施形態の基板用電線接続構造体1が示されている。この基板用電線接続構造体1は、前後方向の幅寸法Wは2mm以下、高さ寸法Tは1mm以下、横方向の長さ寸法Lは15mm以下の諸寸法を有することができる。
【0018】
ケーブルの一つの形態としては、ケーブル径が0.3mm程度の細径同軸ケーブル2を挙げることができる。図1〜4に示す細径同軸ケーブル2は、中心に導電性の芯線3aが配置され、芯線3aの外側に絶縁性の内部被覆3bが配置され、内部被覆3bの外側にシールド層3cが配置され、シールド層3cの外側に絶縁性の外部被覆3dが配置されている。このようにケーブル2は多層構造をなしており、信号を伝送する芯線3aとシールド層3cは内部被覆3bにより相互に絶縁され、信号電流がシールド層3cによってノイズから保護され、EMI特性が改善されるようになっている。
【0019】
細径同軸ケーブル2は、先端側の外部被覆3d及び内部被覆3bがそれぞれ所定の長さに皮剥ぎされ、芯線3a及びシールド層3cが露出した状態となるように端末処理される。シールド層3cを流れるノイズ電流は、グランドバー4と、中継接続体12を介して回路基板8の表面に設けられたグランド接続用の配線導体(図示せず)に流れるようになっている。
【0020】
回路基板8の形態としては、PCB(Printed Circuit Board)8や、可撓性を有するFPC(Flexible Printed Circuit)を挙げることができる。FPCは、厚さ数μm〜100μm程度のポリイミド等の材料からなる基材の表面に導電体が配された回路基板であり、可撓性を有するものである。
【0021】
PCBの一つの代表的な形態としては、エポキシ樹脂などを構成材料とする絶縁性の基材に所定パターンで多数本の配線導体が印刷されたものを挙げることができる。後述するとおり、本実施形態においては回路基板8の下面側から、回路基板8と中継接続体との間に配された接着剤をヒータ26によって加熱する必要があるため、熱伝導をあまり損なわない材質・厚さの回路基板8が好適に使用される。この点、FPCは基材が薄くて熱伝導性が良く、耐熱性が高いため、好適である。中継接続体12が固定される回路基板8上の部分には、中継接続体12の多数の導体部21に対応する位置で、配線導体の一端が露出している。
【0022】
多数本の細径同軸ケーブル2は、横一列に配列された状態で、シールド層3cを狭持する一対のグランドバー4で狭持される。グランドバー4とシールド層3cとの電気的接続は、ろう付け等で行うことができる。多数本の細径同軸ケーブル2と、一対のグランドバー4とから電線セット5が構成されている。グランドバー4は、例えば導電性を有する銅合金などの板材からプレスにて長尺状に打ち抜き形成されたものである。グランドバー4を介して、全ての同軸ケーブル2のシールド層3cが一括接続される。
【0023】
電線セット5の上側のグランドバー4及び芯線部3aは、中継接続体12に固定されるシールドシェル6により覆われ、遮蔽されるようになっている。シールドシェル6は、上壁部9aと、この上壁部9aの縁に連なる側壁9bとを有している。シールドシェル6のケーブル導出側に対応する部分は、開口形成されている。シールドシェル6の上壁部9aには、ろう付け用の孔部9cが4箇所に設けられており、この孔部9cの位置で上側のグランドバー4とシールドシェル6とがろう付けされるようになっている。これに加えて、もしくはこれに代えて、シールドシェル6と中継接続体12をラッチ等の係合手段によって固定するようにしても良い。
【0024】
中継接続体12は、本実施形態に制限されるものではないが、一実施形態としてフラットプレート14の表裏両面にFPC13が接着されたものを挙げることができる。FPC13はフラットプレート14の端面近傍でU字状に折り曲げられている。長尺フラットプレート14は、特に長手方向(幅方向)の平坦度が所定の精度に形成できるものであれば、金属でも樹脂材料でもよいが、特には、平坦度の精度管理が容易な金属が好ましい。フラットプレート14の厚みは必要な強度がえられれば任意の厚さとすることができ、例えば、ステンレスを使用した場合には約0.2mmとすることができる。
【0025】
FPC13には、厚さ数10〜100μm程度のポリイミド等の材料からなる基材の上に、導電体が配されたものが使用されることができる。そして、回路基板8やケーブル2との電気接続に必要な部位を除き、配線導体はレジスト27で覆われている。FPC13の一方の面は接着面19として形成され、他方の面は電気接触面20a、20b、20c(図5参照)として形成されている。電気接触面(第1の電気接触面)20aはケーブル2の芯線部3aと接続する導体部21aを複数備える。導体部21aの本数は、通常はケーブル2の本数と同数である。導体部21aのピッチは、同軸ケーブル2の芯線部3aのピッチに対応する間隔に形成されている。電気接触面(第2の電気接触面)20bは、レジスト27で第1の電気接触面20a及び第3の電気接触面20cから電気的に分離され、グランドバー4と接続する導体部21bを有する。導体部21aと導体部21bは、電気的に互いに分離し、芯線部3aとシールド層3cとは互いに絶縁されている。図5,10,15,16,21,22は、芯線部3aとシールド層3cとが絶縁されている状態を示している。電気接触面(第3の電気接触面)20cは回路基板8上の配線導体と接触するための導体部21cを備える。導体部21cのピッチは、回路基板8の導体部7のピッチに対応する間隔に形成されている。電気接触面20cの一部は、FPC13のU字状折曲げ部を構成しても良い。導体部21cは、導体部21aと電気的に接続する導体部21cと、導体部21aとは絶縁され、導体部21bと電気的に接続する導体部21cとを含んでいる。電気接触面20cの導体部21cを回路基板8に電気的に接続すると、信号線(コア3a)とグランド線(シールド層3c)とを導体部21a,21bを介して回路基板8に同時に接続することができる。
【0026】
本実施形態では平面度の良いフラットプレート14にFPC13を貼り付けているため、それぞれの電気接触面20に配置された各導体部21の高さばらつきが小さく抑えられる。このため基板用電線接続構造体1を回路基板8へ熱圧着等で接続する場合、過度の圧力を加えなくとも電気接触面20cの導体部21cと回路基板8の導体部7とが物理的に接触することが可能となる。また、基板用電線接続構造体1又は回路基板8が接続時の高すぎる圧力で変形すると、変形した状態から復元しようとする復元力が接続している導体間にそれらを引き剥がす方向に作用する可能性がある。本実施形態では、基板用電線接続構造体1又は回路基板8の変形が抑制されるので、導体部間の接続部に作用する応力が小さくなり、接続部の信頼性も向上する。
【0027】
図2では、基板用電線接続構造体1の上側でシールドシェル6に覆われた多数本の同軸ケーブル2が接続した状態が示され、図3では基板用電線接続構造体1の下側で中継接続体12の電気接触面20が露出した状態が示されている。このような基板用電線接続構造体1を回路接続用の接着剤等を使用して回路基板8に接続する。このため、基板用電線接続構造体1を機械的に固定する雌コネクタのような部材を回路基板8側に配する必要がない。これによって、実装面積が実質的に基板用電線接続構造体1の大きさに縮減できる。また、中継接続体12の長さ(電線の軸方向)もケーブル2の外部被覆が除去された部分の長さと実質的に同じ大きさにまで縮小できる。さらに、中継接続体12の幅(ケーブルの並んでいる方向)も、並べられた複数のケーブル2の幅と実質的に同じ大きさにすることができる。
【0028】
図4では、基板用電線接続構造体1の断面図が示されている。同軸ケーブル2の芯線部3aとFPC13の電気接触面20a(導体部21a)との電気的接続形態は任意であり、例えばろう付けや異方導電性や非導電性の回路接続用接着剤などの接着手段を用いて行うことができる。本実施形態では、同軸ケーブル2の芯線部3aとFPC13の電気接触面20a(21a)とが半田50で接続している。グランドバー4とFPC13の電気接触面20b(21b)との接続も半田50で行うことができる。また、FPC13の電気接触面20cと回路基板8の導体部7との電気的接続形態も任意であるが、同様にろう付けや異方導電性や非導電性の回路接続用接着剤などの接着手段を用いて行うことができる。本実施形態では、FPC13の電気接触面20cと回路基板8の導体部7とが回路接続用接着剤(図示せず)で電気的に接続している。非導電性の回路接続用接着剤を用いて電気的接続を行う場合は、FPC13の導体部21と回路基板8の導体部7との位置関係を保った状態で、シート状の熱硬化性接着剤を回路基板8の上面とFPC13の導体部21との間に挟み、回路基板8の下側に配置されたヒータ26(図28(b))で接着剤を加熱しながら、回路基板8とFPC13とを所定の力で相互に押し付けながら接着を行う。このような熱圧着の温度及び圧力の条件は、選択される接着剤の組成などによって決まるものであり、一定の条件に限定されるものではないが、一例として、60〜170℃の流動化温度を有し、170〜260℃の硬化温度を有する樹脂を選択した場合には、150〜230℃の加熱温度と、5〜200N/cm2の圧力で行うことができる。
【0029】
好適に使用される非導電性の回路接続用接着剤には、熱可塑性成分と熱硬化性成分を所定の割り合いで含み、厚みが30μm程度で、所定温度で流動性を発現し、さらに加熱することで硬化する性質を有するフィルムが挙げられる。一例として、熱可塑性樹脂にはフェノキシ樹脂を用い、熱硬化性樹脂にはエポキシ樹脂を用いることができる。熱可塑性成分と熱硬化性成分を調整することにより、熱硬化性接着剤をリペア性を有するフィルムとして用いることも可能である。ここで、リペア性とは、一度フィルムを接着した後に、加熱によりフィルムを剥がし、再度接着することができることを意味するものとする。なお、用いられる熱硬化性接着剤であるフィルムは本実施形態の態様に限定されるものではなく、使用される樹脂の種類や成分組成などを種々変更して用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としてポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0030】
次に、本実施形態の基板用電線接続構造体の構成要素である中継接続体12の製造方法を説明する。中継接続体12の製造方法の一つの代表的な形態としては、図5〜図9で示される方法が挙げられるが、この方法に限られるものではない。本実施形態の方法において、図5に示すように、中継接続体12に使用されるFPC13には、その表面側の長手方向の略中間部分で導体部21a、21b、21cが露出し、それ以外の部分が絶縁性を有するレジスト27で覆われたシート状のものが提供される。FPC13の裏面側には、FPC13の裏面側の略半分の大きさに形成された金属製のフラットプレート14が配置される。FPC13とフラットプレート14は、治具の位置決めピン18にぞれぞれの孔部16,17を係合させることにより、相互に位置決めされるようになっている。位置決めされたFPC13とフラットプレート14とは、任意の固定手段、例えば粘着剤や硬化性の接着剤等で固定されている。図6には、FPC13とフラットプレート14とが接着された状態が示されている。
【0031】
続いて、図7に示すように、FPC13のフラットプレート14に接着されていない片側半分をUターンさせてフラットプレート14の裏面に固定する。図8には、FPC13がフラットプレート14の表裏両面に接着され、FPC13の長手方向の中間部分の各導体部21a,21b,21cがフラットプレート14の一方の縁部に配置された状態が示されている。
【0032】
続いて、図9に示すように、フラットプレート14の一方の縁部に配置された導体部21を含むように、フラットプレート14の一方の端部から所定距離離れた位置から切断し、中継接続体12を得る。このようにして、製造された中継接続体12は、表面にケーブル2の芯線3aおよびケーブル2に接続されたグランドバー4と接続する導体部21a、21bを有し、裏面に回路基板8の配線導体と接続する導体部21cを有するものとなる。このように作製された中継接続体12に、電線セット5およびシールドシェル6が接続して基板用電線接続構造体1が作製される。作製された基板用電線接続構造体1は、回路基板8の導体部7に電気的に接続する。本実施形態のように予めU字状に折り曲げられたFPC13を回路基板8に接着する場合、FPC13と回路基板8との接着に使用する接着手段の硬化温度もしくは溶融温度が、ケーブル2またはグランドバー4とFPC13との接着に使用する接着手段の溶融温度もしくは軟化温度よりも低いことが好ましい。そのように各接着手段を選択すると、基板用電線接続構造体1を回路基板8に接着するときの熱によって、ケーブル2またはグランドバー4とFPC13との接着部が影響を受けることを回避できるからである。
【0033】
図10には、本発明に係る基板用電線接続構造体の第2の実施形態が示されている。この実施形態は、中継接続体30の構成が第1の実施形態と相違している。本実施形態の中継接続体30は、表面側から裏面側へ貫通する貫通導体32を有するPCB31を備え、PCB31の表面側で配線導体33と同軸ケーブル2の芯線部3aとが電気的に接続し、PCB31の裏面側で配線導体33と回路基板8の導体部7とが接続するようになっている。PCB31がFPC13とフラットプレート14の機能を兼ね備えている。本実施形態では貫通導体32を介して中継接続体30の表面側と裏面側とを電気的に接続しているので、第1の実施形態の様にPCB31をU字状に折り曲げる必要はない。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0034】
図11には、本発明に係る基板用電線接続構造体の第3の実施形態が示されている。この実施形態は、中継接続体35の構成が第1の実施形態と相違している。本実施形態の中継接続体35は、図12に示すようなプレート36を使用する。プレート36は長手方向の中間部に開口部51を有し、その両脇に連結部52を有する。連結部52には、プレート36の幅方向に折曲げ用の溝(折り曲げ部)53を予め設けておくことが出来る。中継接続体35は、FPC13のU字状に折り曲げられる部位を開口部51もしくは溝53に対して位置決めして配置し、FPC8と同程度の大きさに形成されたプレート36表面にFPC13の全接着面を接着した後、プレート36の開口部51に対応する位置でFPC13の長手方向の略中間部を支点としてFPC13をプレート36共にUターンさせることで形成される。折り曲げられたプレート36同士を接着剤等で固定することができる。FPC13が貼合されたプレート36は、折曲げ前もしくは折曲げ後に所望の大きさにトリムすることができる。プレート36は、Uターン状に曲げた後、連結部52が残らないようにその両側端部を切除することができる。本実施形態の中継接続体35によれば、U字状に折り曲げられたFPC13の曲げ半径のコントロールが容易になる。また、折曲げ溝53を設けておくことでプレート36の折曲げ中心を容易に設定することができる。
【0035】
上述の実施形態では、中継接続体12,35を回路基板8に接続する前にFPC13がU字状に折り曲げられていたが、中継接続体を回路基板8に接続した後にFPC13の折り曲げ部20d(図15)からFPC13をU字状に折り曲げるようにすることも可能である。図13に示すように、FPC13の導体部21cが属する側半分がU字状に折り曲げられておらず、プレート14に接着されていない状態で中継接続体35Aを作製する。FPC13はその一端でプレート14に固定されており、FPC13の固定されていない側はプレート14の前端部から前方に延出している。そして、FPC13の導電体21cと回路基板8の導体部7とを接着手段、例えば非導電性の回路接続用接着剤による熱圧着、で接着する。図14及び図15は、FPC13の外面に回路基板8が熱圧着で接着された状態が示されている。その後、FPC13を折り曲げ部20dを支点として下向きU字状に折り曲げ、FPC13の裏面とプレート14とを接着剤等の手段により固定する。接着手段は、予めフラットプレート14の表面に配置しておくことができる。この例によれば、回路接続用接着剤を用いて熱圧着する際に、回路基板8を下側に配置し、その上にFPC13を配置して、FPC13側からヒータ26で熱を加えることができる。このような配置をすると、回路基板8の材質や熱伝導性に関わらず、基板用電線接続構造体を容易に熱圧着することができる。また、回路基板8とFPC13とを直接ヒータ等で挟むことができるので、より高い圧力を加えて圧着することや、それぞれの導電体21cを対応する導体部7に確実に押し付けて接着することが容易になる。また、FPC13と回路基板との熱圧着時の熱がFPC13とケーブルやグランドバーとの接着点に伝わりにくいため、それぞれの接着手段の選択が容易となる。
【0036】
なお、図16に示すように、FPC13の外面に回路基板8を熱圧着で接着した後、FPC13を折り曲げ部20dを支点として上向きにU字状に折り曲げて、シールドシェル6の表面側に回路基板8を固定することもできる。この例による中継接続体35Bは、折り曲げ部20dの曲げ半径を図15に示す中継接続体35Aの曲げ半径よりも大きくでき、これによりFPC13のストレスを低減することができる。
【0037】
また、更なる変形例として、中継接続体のプレートとして第3の実施形態に使用されているプレート36を使用することもできる。つまり、予めプレート36の全面にFPC13を接着しておき、それをU字状に折り曲げる前に回路基板8と接続し、その後プレート36一体となっているFPC13をU字状に折り曲げる。これらの実施形態において、回路基板8と接続される側のFPC13の大きさは、回路基板8との接続前もしくは接続後に、公知の方法によってトリムすることができる。
【0038】
次に、本発明に係る基板用電線接続構造体の第4の実施形態について説明する。図17に示すように本実施形態の基板用電線接続構造体61は、回路基板8に、FPC13をUターンさせた状態で中継接続体を保持するクランプ手段60を備えている点で、第1の実施形態の基板用電線接続構造体1と相違する。また、クランプ手段60で中継接続体65が回路基板8に固定される点で、上述した中継接続体12,35A,35Bの固定方法と異なっている。クランプ手段60は、回路基板8の板面に固定された一対のベース部材62と、一対のベース部材62との間で中継接続体65の長手方向の両端部を保持するカバー部材63とを備えている。カバー部材63は、図1に示すシールドシェル6と同様に、回路基板8との間で中継接続体65を覆うことで、中継接続体65と回路基板8及びケーブル2との接続部をシールドすることができる。
【0039】
図18及び図19に示されているように、本実施形態の中継接続体65は、長尺のプレート14と、同軸ケーブル2の芯線3aに電気的に接続しているFPC13とを有している。プレート14はFPC13より幅広で、両側部分がFPC13の幅方向に延出している。プレート14の両側の延出部分は、一対のベース部材62とカバー部材63との間でクランプされるようになっている。FPC13の一端側は、プレート14と上側のグランドバー4との間で接着剤(粘着シートなど)などにより固定されている。FPC13の一端側において、プレート14が固定されていない側の面で露出している信号用導体部21aには同軸ケーブル2の芯線部3aがろう付けされ(図19参照)、グランド用の導体部21bには上側のグランドバー4がろう付けされている。FPC13の他端側には、熱圧着により回路基板8に電気的に接続する導体部21cが形成されている。
【0040】
図20には、回路基板8上の一対のベース部材62に対してカバー部材63が開放している状態が示されている。この状態で、中継接続体65の一端側は、長尺のプレート14がカバー部材63上に位置するように取り付けられ、中継接続体65の他端側は、互いに離れている一対のベース部材62の間のスペースに配置され、かつ、FPC13の導体部21cが回路基板8に熱圧着される。一対のベース部材62とカバー部材63は、別部材として形成されているが、連結ピン64を介して開閉自在に連結されている。以下で述べるように、一対のベース部材62に対してカバー部材63の閉じた状態を保つため、一対のベース部材62とカバー部材63はロック機構を備えている。
【0041】
一対のベース部材62とカバー部材63の形態は制限されるものではないが、金属性の薄板をプレスにて打ち抜いた後、折り曲げることにより形成することができる。一対のベース部材62は左右対照形状をなしており、個々のベース部材62は一端側が連結ピン64に連結され、他端側に垂直に起立している一対の起立片67a,67bに係止爪66を有している。内側の起立片67bには、一対のベース部材62とカバー部材63との間で中継接続体65をクランプしたときに、中継接続体65のプレート14が係合する切欠部68が形成されている。平坦に形成されている底壁69は、回路基板8の上面に接着剤などで固定される接着面として使用することができる。
【0042】
カバー部材63は、幅方向両側で一対のベース部材62に連結ピン64を介して回動自在に連結する一対の腕部70を有している。また、カバー部材63は、幅方向両側において、係止爪66に係合する係止孔71を有する一対の折曲片72a,72bが上壁73に対して立ち上げ形成されている。カバー部材63を閉じたときに、折曲片72a,72bの先端が係止爪66の傾斜面を滑り、係止孔71の孔内面が係止爪66の係止面に係止されることにより、一対のベース部材62とカバー部材63の係止状態が保持されるようになっている。
【0043】
図21にはカバー部材63を開放した状態、図22にはカバー部材63を閉じた状態の断面図が示されている。カバー部材63を開放した状態では、FPC13の両端は反対方向に延びた状態となっている。カバー部材63を閉じた状態では、FPC13は折曲げ部を支点としてUターン状に折り返された状態となる。カバー部材63を閉じたときの中継接続体65の形態は、図4に示す中継接続体12の形態と概ね同様の形態となる。このように、本実施形態では、カバー部材63の回動によりUターン状の中継接続体65を形成することができる。また、本実施形態では、一対のベース部材62とカバー部材63との間で中継接続体65が保持されることで、ケーブル2に不用意な引張力が働いた場合にも中継接続体65が回路基板8から分離することが防止されるようにもなっている。
【0044】
図24〜27には、本発明に係る基板用電線接続構造体の第5の実施形態が示されている。この実施形態では、これまで説明してきたように、多数本の同軸ケーブル2が一つの中継接続体12、30,35,35A,35B,65に接続しているのではなく、多数の中継接続体がアセンブリされる点で、先の基板用電線接続構造体1,61と相違している。また、本実施形態の中継接続体81A,81B,81Cは、FPC13がプレート14(図1参照)の端部近傍で折り曲げられず、プレート14の端部から少し離れた位置で折り曲げられている。すなわち、FPC13の折り曲げた部分とプレート14の端部との間には隙間を存している。このようにすると、FPC13を回路基板8(図15など参照)に接続した後にFPC13をU字状に折り曲げる場合、ケーブル2やプレート14がFPC13と回路基板8との接続作業の邪魔にならないため、作業性を良くすることができる。なお、本実施形態の中継接続体12の変形例として、FPC13をU字状に折り曲げずに使用することもできる。
【0045】
図23には、比較のために、多数本のケーブル2が一つの中継接続体12に接続している状態が示されている。42本のケーブル2は、中継接続体の長手方向の略中間で1本に束ねられている。このようにケーブル2を束ねるのは、筐体内でケーブル2を取り回すことができるようにするためである。しかし、この例では、中継接続体12が長尺であるために、回路基板8上に実装される回路部品の配置を制限し、また、中継接続体12から導出するケーブル2の電線導出部分(末広がり部分)が回路部品の実装スペースを占有するものとなっていた。また、一列に並んでいるケーブル2の両側部分に、より強い張力が生じるものとなっていた。
【0046】
図24には、電線導出端83を対向させて配置された2つの中継接続体81Aを備えた基板用電線接続構造体80Aが示されている。個々の中継接続体81Aの電線導出端83から導出する各21本のケーブル2を1本に束ねた結束部(集合部)82は、2個の中継接続体81Aの電線導出端83の間に位置している。本実施形態の結束部82は、個々の中継接続体から導出する多数本のケーブルを集合する集合部の一例として示されているものである。すなわち、本実施形態においては、集合部が結束部材でケーブル2を束ねた部分として示されているが、集合部の形態はこれに限るものではない。他の例として、多数本のケーブルがテープ巻きされたテープ巻き部分や、他の方法で結束した部分、特段の結束手段を使わずに多数本のケーブルが密に配置された部分を集合部に含めることができる。また、集合部には、多数本のケーブルが密に集合した部分に加え、多数本のケーブルが密に集合した部分に隣接して多数本のケーブルが扇状に広がっている部分も含めることができる。
【0047】
結束されたケーブル2は、図示例において下向きとなっているが、任意の方向に取り回すことができる。本例によると、個々の中継接続体81Aの長手寸法が図23の中継接続体12の略1/2となるため、回路基板8上に実装される回路部品の配置の自由度が高まる。また、中継接続体81Aから導出するケーブル2の電線導出部分の広がり幅Wが狭くなると共に、導出長Lが短くなるため、回路部品の実装スペースを広くすることができる。また、ケーブル2の両側部分に生じる張力を低減することができる。
【0048】
図25には、図24の基板用電線接続構造体80Aの変形例として、電線導出端83を対向させて配置された4個の中継接続体81Bを備えた基板用電線接続構造体80Bが示されている。個々の中継接続体81Bの電線導出端から導出する各11本のケーブル2を1本に束ねた結束部82は、4つの中継接続体81Bで囲まれた領域内に位置している。言い換えると、4個の中継接続体81Bは結束部82の周りに放射状に配置されている。結束されたケーブル2は、任意の方向に取り回すことができる。本例によると、個々の中継接続体81Bの長手寸法が図23の中継接続体の略1/4となる。このため、回路基板8上に実装される回路部品の配置の自由度が高まると共に、回路部品の実装スペースを広くすることができる。また、ケーブル2の両側部分に生じる張力をより一層低減することができる。
【0049】
図26には、図24の基板用電線接続構造体80Aの他の変形例として、電線導出端83を対向させて配置された8個の中継接続体81Cを備えた基板用電線接続構造体80Cが示されている。2つの中継接続体81Cが1つのFPC13上に配置されており、それら2つの中継接続体81Cはケーブル導出方向が交差するように配置されている。個々の中継接続体81Cの電線導出端83から導出するケーブル2を1本に束ねた結束部82は、8個の中継接続体81Cで囲まれた領域内に位置している。言い換えると、8個の中継接続体81Cは結束部82の周りに放射状に配置されている。結束されたケーブル2は、任意の方向に取り回すことができる。本例によると、個々の中継接続体81Cの長手寸法が図23の中継接続体の略1/8となるため、回路基板8上に実装される回路部品の配置の自由度が高まると共に、回路部品の実装スペースをより広くすることができる。個々の中継接続体81Cから導出するケーブル2には、一様の張力が生じることとなり、両側部分だけに大きな張力が生ずることを回避することができる。
【0050】
図27は、図26に示す中継接続体81Cの一部を拡大し、ケーブル2の芯線3aとFPC13の導体部21cとの接続状態を示したものである。FPC13は、ケーブル2と接続する端部が幅広になっており、導体部が二股に分かれて配線されている。分岐している両方の導体部には、各5本のケーブル2が接続している。個々の中継接続体81Cは、横一列に配列された5本のケーブル2と、プレート(図示しない)及びプレートに一端が固定されたFPCとを有している。この構成にすると、ケーブル2に生じる張力を小さくしつつ、一つのFPC13に二つの中継接続体81Cが配置されているので取り扱い性を改善することができる。
【0051】
芯線3aと導体部21cはろう付けなどで接続している。ケーブル2に強い張力が生じると、その張力が芯線部3aと導体部21c接続部分に作用するものとなり、切断する心配がある。しかしながら、本実施形態の中継接続体81Cをアセンブリした電線接続構造体80Cは、多数本のケーブル2を束ねた際に同軸ケーブル2に生じる張力を小さくすることができるため、ケーブル2とFPC13の電気的接続の信頼性を高めることができるようになっている。
【0052】
以上、本発明に係る基板用電線接続構造体及び中継接続体の製造方法並びに中継接続体の固定方法について説明したが、本発明は、開示された実施形態に制限されるものでなく、他の形態での実施を許容することができる。本開示の基板用電線接続構造体1は、回路基板8の上に基板用電線接続構造体1が重なった態様として示されているが、図28(c)に完成状態の一例が示されているように、回路基板8と基板用電線接続構造体1を前後に並べることも可能である。回路基板8と基板用電線接続構造体1を前後に並べる場合は、図28(a),(b)に示すように、電線セットに接続し、真っ直ぐ延びているFPC13をヒータ26で上から加熱しながら圧力を加えることで、FPC13と回路基板8とを電気的に接続することができる。図28(c)には、基板用電線接続構造体1と回路基板8との間のFPC13に張力が生じないように、基板用電線接続構造体1がその設置場所、例えば携帯電話の筐体40に設けられた一対の突起41a,41bの間で固定されている状態が示されている。この例によれば、基板用電線接続構造体1から導出するケーブル2が回路基板8上に配索されないため、同軸ケーブル2が回路基板8上のデバイスと干渉することを防止でき、基板用電線接続構造体1を低背化することができる利点がある。このような配置は、回路基板を複数積層させて配置する場合など、回路基板8の上方に十分な空間がない場合に好適である。また、図28(c)に示すように回路基板8とプレート14との間のFPC13を撓ませた状態としておくと、筐体40の熱膨張によってもFPC13及びそれと回路基板8やケーブル2との接続部に張力が作用することを防止できる。
【0053】
また、本開示の基板用電線接続構造体の製造方法において、FPC13は、プレート14の表面側から裏面側にかけてUターン状に一方向に、又はプレート14と共に一方向にUターン状に曲げられている。しかし、本発明に係る基板用電線接続構造体が特定の折り畳み式携帯電話などに装着されることを考慮した場合には、図29(a)〜(c)に示されるように、導体部21cを有するFPC13の外面がシールドシェル6に重なるように、FPC13を上側に一時的Uターンさせてから、図29(d)に示されるように、FPC13をプレート14側(下側)へUターンさせることが可能である。FPC13を上側に一時的Uターンさせるのは、図29(c)に示されるように、基板用電線接続構造体1を同軸ケーブル2と共に上下の筐体を接続する可撓性のヒンジ部45の内側の空間を通過させるためである。この例によれば、基板用電線接続構造体1をヒンジ部45の内側の空間を通過させる際に、FPC13の外面で露出する導体部21cがヒンジ部25の内壁に接触して破損することを防止することができ、電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0054】
また、中継接続体12,30,35,35A,35B,65,81A〜81Cに接続するケーブルの他の形態として、細径同軸ケーブル2と光ファイバ24を組み合わせたハイブリッドケーブルの形態とすることも可能である。この場合、図30に示すように、光ファイバ24が接続している光電変換モジュール25を表面実装することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る基板用電線接続構造体の第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す基板用電線接続構造体の組み立てた状態の斜視図である。
【図3】基板用電線接続構造体を裏側からみた図である。
【図4】基板用電線接続構造体が回路基板に電気的に接続している状態を示す断面図である。
【図5】図1に示す基板用電線接続構造体の製造方法を説明する図であって、FPCとプレートとが対向している状態の斜視図である。
【図6】基板用電線接続構造体の製造方法を説明する図であって、FPCの略半分がプレートに接着されている状態の斜視図である。
【図7】基板用電線接続構造体の製造方法を説明する図であって、接着されていないFPCの略半分をプレートに沿って下向きに曲げている状態の斜視図である。
【図8】基板用電線接続構造体の製造方法を説明する図であって、FPCをプレートプレートの表裏両面に接着した状態の斜視図である。
【図9】FPCが接着されたプレートの先端側を切断することにより得られた、中継接続体を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る基板用電線接続構造体の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る基板用電線接続構造体の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11に示す中継接続体のプレートの斜視図である。
【図13】中継接続体のFPCをUターンさせる前の状態を示す斜視図である。
【図14】図13に示す中継接続体のFPCの導体部とFCBとを電気的に接続した状態を示す斜視図である。
【図15】FPCを回路基板と共にプレート側へUターンさせることにより得られた中継接続体の断面図である。
【図16】FPCを回路基板と共にケーブル側へUターンさせることにより得られた中継接続体の断面図である。
【図17】本発明に係る基板用電線接続構造体の第4の実施形態を示す斜視図である。
【図18】図17に示す基板用電線接続構造体の中継接続体を示す斜視図である。
【図19】同じく基板用電線接続構造体の中継接続体を裏面側から見た斜視図である。
【図20】同じく基板用電線接続構造体のベース部材に対してカバー部材を開放した状態を示す斜視図である。
【図21】同じく基板用電線接続構造体のベース部材に対してカバー部材を開放した状態を示す断面図である。
【図22】同じく基板用電線接続構造体のベース部材に対してカバー部材を閉じた状態を示す断面図である。
【図23】多数本のケーブルが一つの中継接続体に接続している状態を示す平面図である。
【図24】本発明に係る基板用電線接続構造体の第5の実施形態を示す平面図である。
【図25】図24に示す基板用電線接続構造体の変形例を示す平面図である。
【図26】図24に示す基板用電線接続構造体の他の変形例を示す平面図である。
【図27】図26に示す中継接続体の一部拡大図である。
【図28】電線セットとFCBが前後に並んでいる基板用電線接続構造体の他の形態を示す断面図であり、(a)はFPCがFCBに熱圧着される前の状態を示し、(b)はヒータでFPCをFCBに熱圧着している状態を示し、(c)は位置決め用の治具上で電線セットとFCBを前後に配置した状態を示す図である。
【図29】基板用電線接続構造体の製造方法の他の形態を説明する断面図であり、(a)はFPCを曲げる前の状態を示し、(b)はFPCを上側にUターンさせる前の状態を示し、(c)はヒンジ部の内部空間にケーブルと共に基板用電線接続構造体させている状態を示し、(d)はFPCを下側にUターンさせた状態を示す図である。
【図30】中継接続体に光電変換モジュールが装着されている基板用電線接続構造体の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1,61,80A〜80C 基板用電線接続構造体
2 同軸ケーブル
3a 芯線
5 電線セット
8 回路基板(PCB)
12,30,35,35A,35B,65,81A〜81C 中継接続体
13 FPC
14 プレート
20 電気接触面
21 導体部
62 ベース部材
63 カバー部材
66 係止爪
71 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横一列に配列された多数本の電線と、
プレートと、該プレートの表面側に第1表面の少なくとも一端が固定されたFPCとを有する中継接続体と、を備え、
前記FPCは、第2表面の一端側に前記多数本の電線と電気的に接続された第1の導体部を具備する第1の電気接触面と、第2表面の他端側に回路基板に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面と、前記一端側と前記他端側との間の部分にUターン状に曲げられる折曲げ部と、を備えている基板用電線接続構造体。
【請求項2】
横一列に配列された多数本の電線と、
プレートと、該プレートの表面側から裏面側にかけてUターン状に曲げて固定されているFPCとを有する中継接続体と、を備え、
該中継接続体は、一方の表面に前記多数本の電線と電気的に接続する第1の導体部を具備する第1の電気接触面を有し、他方の表面に回路基板に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面を有している、基板用電線接続構造体。
【請求項3】
横一列に配列された多数本の電線と、
該多数本の電線の端部に接続する多数の中継接続体と、備え、
前記多数の中継接続体からそれぞれ導出する前記多数本の電線が集合する集合部の周囲に、電線導出端を内向きにして前記多数の中継接続体が放射状に配置されている、基板用電線接続構造体。
【請求項4】
前記中継接続体が、プレートと、該プレートの表面側から裏面側にかけてUターン状に曲げて固定されているFPCとを有し、
前記中継接続体は、一方の表面に前記電線と電気的に接続する第1の導体部を具備する第1の電気接触面を有し、他方の表面に回路基板に接続する第2の導体部が露出している第2の電気接触面を有している、請求項3に記載の基板用電線接続構造体。
【請求項5】
前記FPCが前記プレートと共にUターン状に曲げられている請求項2又は4に記載の基板用電線接続構造体。
【請求項6】
前記回路基板に設けられ、前記FPCをUターンさせた状態で前記中継接続体を保持するクランプ手段を備えている請求項1〜5の何れか1項に記載の基板用電線接続構造体。
【請求項7】
前記クランプ手段が、係止部を有し、前記回路基板に固定されているベース部材と、前記係止部に係合する被係止部を有し、前記ベース部材に開閉自在に連結されているカバー部材とを備え、前記カバー部材の内面に前記FPCの一端側が取り付けられ、前記回路基板に前記FPCの他端側が固定された状態で、前記カバー部材を閉じて前記べース部材に係止することで前記FPCがUターン状に曲げられている請求項6に記載の基板用電線接続構造体。
【請求項8】
前記中継接続体が、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールを備えた請求項1〜7の何れか1項に記載の基板用電線接続構造体。
【請求項9】
多数本の電線を回路基板に中継接続する中継接続体の製造方法であって、
表面に所定間隔で並んでいる多数の導体部を有し、裏面に固定面を有するFPCを用意することと、
前記FPCの前記導体部が外側になるようにして、該FPCと該FPCが固定されるプレートとを位置合わせし、該FPCの一端側の前記固定面をプレートの表面に固定することと、
前記プレートに固定されていない前記FPCの他端側を前記プレートの縁部の近傍に位置する部分を支点として前記プレートの裏面側にUターンさせて、前記FPCの他端側の前記固定面を前記プレートの裏面に固定することと、
を備えた中継接続体の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の中継接続体の前記FPCの前記第2の導体部を回路基板の導体部に電気的に接続した後、前記FPCの略中間部分を支点として、前記FPCの一端側をUターンさせて、前記プレートの裏面側又は表面側に固定する中継接続体の固定方法。
【請求項11】
回路基板に開閉自在に連結されたカバー部材を有するベース部材を固定することと、
開放している前記カバー部材の内面上に、請求項1に記載の中継接続体の前記FPCの一端側を配置することと、
前記FPCの他端側の前記第2の導体部と前記回路基板の導体部とを電気的に接続することと、
前記カバー部材を閉じ方向に回動させることにより、前記FPCの略中間部分を支点として、前記FPCの一端側をUターンさせることと、
前記カバー部材を前記ベース部材に係止することにより、前記FPCをUターンさせた状態を保持することと、
を備えた中継接続体の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−238728(P2009−238728A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261995(P2008−261995)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】