説明

基板研磨装置、基板研磨方法、及び基板研磨装置の研磨パッド面温調装置

【課題】基板研磨装置の研磨テーブルの研磨面の温度を測定し、該測定した温度情報をPID制御によりフィードバックして研磨面を温調しながら基板を研磨する基板研磨装置、基板研磨方法、基板研磨装置の研磨パッド面温調装置を提供する。
【解決手段】研磨パッド11が貼付された研磨テーブル13と、基板を保持するトップリング14とを備えた基板研磨装置において、研磨パッド11面上の温度を検出する放射温度計19と、研磨パッド11面上の温度を調整するパッド温調手段26と、研磨パッド温度情報に基づいてパッド温調手段26を制御して研磨パッド11面上の温度を制御する温度コントローラ20を備え、温度コントローラ20は複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、パッド温度情報に基づいて選択したPIDパラメータを用いて研磨パッド11面上の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持機構で保持する半導体基板等の研磨対象基板を、研磨テーブルの研磨面に押圧接触させ、基板の被研磨面と研磨テーブルの研磨面の相対運動により被研磨面を研磨する研磨装置、基板研磨方法、及び基板研磨装置の研磨パッド面温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨テーブルの上面に研磨パッドを貼り付けて研磨面を形成し、この研磨面に基板保持機構(以下「トップリング」という)で保持する半導体基板等の研磨対象基板(以下「基板」という)の被研磨面を押圧接触させ、研磨面にスラリーを供給しながら、研磨テーブルの回転とトップリングの回転による研磨面と被研磨面の相対運動により、被研磨面を平坦に研磨する化学機械研磨(CMP)装置がある。
【0003】
半導体デバイスの微細化への取り組みには、CMP装置における基板の被研磨面の均一な研磨が重要である。そのため従来から、研磨面への被研磨面の接触圧力を調節して被研磨面内の面圧分布を最適化することで、基板の被研磨面を均一な状態に研磨する試みが為されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181910号公報
【特許文献2】特開2008−307630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板の被研磨面の研磨レート(研磨率)は、研磨面への接触圧力だけでなく、研磨面の温度や供給スラリーの濃度等の影響を受けるため、研磨面への接触圧力を調節するだけでは、研磨レートを完全にコントロールすることができなかった。特に、研磨レートの研磨面温度への依存性が高いCMPプロセス(例えば、研磨パッドの表面硬度がその温度に高く依存する場合)では、研磨面の温度分布によって被研磨面内の各部の研磨レートにばらつきが生じ、研磨プロファイルが均一にならなかった。研磨テーブルの研磨面の温度は、一般に、被研磨面との接触やトップリングに取り付けられた基板を保持するリテーナリングとの接触による研磨面自体の発熱や、研磨面の熱吸収率のばらつきや、研磨面に滴下つれたスラリーの流れ方などによって、均一でなく、各所で温度差が生じた状態になっている。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、本発明は基板研磨装置の研磨テーブルの研磨面の温度を測定し、該測定した温度情報をPID制御によりフィードバックして研磨面を温調しながら基板を研磨する基板研磨装置、基板研磨方法、及び基板研磨装置の研磨パッド面温調装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、基板研磨装置の全研磨時間中のパッド表面を一定温度、或いは研磨時間の部分的時間ごとに一定温度に保つことができるような温調(冷却と加熱)機能を持たせ、最適な研磨レート、段差特性をえることができ、スラリーの変質を防ぐこと、基板面内を均一に研磨することができる基板研磨装置、及び基板研磨装置の研磨パッド面温調手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、上面に研磨パッドが貼付された研磨テーブルと、基板を保持する基板保持手段とを備え、回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する前記基板保持手段で保持する基板を押圧接触させ、該基板を研磨する研磨装置において、研磨パッド面上の温度を検出する研磨パッド温度検出手段と、研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面上の温度を調整するパッド温調手段と、研磨パッド温度検出手段で検出したパッド温度情報に基づいてパッド温調手段を制御して研磨パッド面上の温度を制御する温度コントローラを備え、温度コントローラは複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、パッド温度情報に基づいて選択したPIDパラメータを用いて研磨パッド面上の温度を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上記基板研磨装置において、温度コントローラは、研磨プロセス又は研磨中の基板に形成された膜種に応じて複数種のPIDパラメータから所定のPIDパラメータを選択し、パッド温度情報に基づいて選択したPIDパラメータを用いてパッド温調手段を制御し、研磨パッド面上の温度を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記基板研磨装置において、温度コントローラは、研磨パッド面上の冷却用と加熱用で複数種のPIDパラメータを持ち、該複数種のPIDパラメータから所定のPIDパラメータを選択することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記基板研磨装置において、PIDパラメータは、予めレシピに登録しておき、該レシピにより選択可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は上記基板研磨装置において、パッド温調手段は、研磨パッド面の半径方向に接触する研磨パッド接触面を有する固体を具備し、該固体内を流れる熱交換媒体である流体の間で研磨パッド接触面を介して熱交換を行うように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は上記基板研磨装置において、基板保持手段は基板を保持する基板保持部を支持するヘッド部を備え、該ヘッド部に研磨パッド面に温風を吹き付ける温風ヒータを設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は上記基板研磨装置において、研磨パッド面に冷風を吹き付ける冷風吹付手段をけたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は上記基板研磨装置において、基板保持手段が保持する基板を加熱する基板加熱手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は上記基板研磨装置において、基板加熱手段は温水を吹き付ける温水吹付手段であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は上記基板研磨装置において、基板保持手段を複数備え、それぞれ基板保持手段に対応して研磨パッド温度検出手段、パッド温調手段、温度コントローラを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する基板保持手段で保持する基板を押圧接触させて該基板を研磨する基板研磨方法において、温度コントローラにより複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、該選択したPIDパラメータを用いて研磨パッド面上の温度情報に基づいて研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面上の温度を調整するパッド温調手段を制御して研磨パッド面上の温度を制御しながら基板を研磨することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上面に研磨パッドが貼付された研磨テーブルと、基板を保持する基板保持手段とを備え、回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する基板保持手段で保持する基板を押圧接触させ、該基板を研磨する基板研磨装置の研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面の温度を調整する基板研磨装置の研磨パッド面温調装置であって、研磨パッド面上に接触する研磨パッド接触面を有する固体を具備し、該固体をSiC或いはアルミナ製などの熱伝導性、耐磨耗性、耐食性に優れた材料とし、該固体の研磨パッド接触面の反対側を線膨張係数が該固体に近く且つ断熱性の優れた材料からなるカバーで覆った構成であり、研磨パッド接触面を介して固体内を流れる熱交換媒体である流体との間で熱交換を行うように構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、固体は研磨パッド面上に半径方向に配置され自重で接するようになっており、該研磨パッド面の円周方向と半径方向の振れに追従する追従機構を具備する構成であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、固体は研磨パッドの交換に支障とならないように該研磨パッドの外周部で、垂直方向に跳ね上げ可能な跳ね上げ機構を介して支持部に支持されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、固体には、研磨パッドの中心側と外周側の端部に熱交換媒体である流体を給・排出する流体給・排出口を設けたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、研磨パッド面を冷却するときは、固体の研磨パッドの中心側の流体給・排出口から流体を供給し、研磨パッドの外周側の流体給・排出口から排出することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、研磨パッド面を加熱するときは、固体の研磨パッドの外周側の流体給・排出口から温流体を供給し、研磨パッドの中心側の流体給・排出口から排出することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、流体給・排出口は固体の研磨パッドの中心側の端部に1個、研磨パッドの外周側の端部に2個以上設けたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、固体の平面形状は研磨パッドの中心側に接する端部が狭く外周側に接する端部が広い台形状又は扇形状であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、流体は、液体又は気体であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は上記基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、固体に流れる流体は比例制御3方弁を経由して流れ、該比例制御3方弁で温流体と冷流体が供給され、各々の流体流量が制御・混合され、温調された流体として固体内流路に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
・本発明によれば、温度コントローラは複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、パッド温度情報に基づいて選択したPIDパラメータを用いて研磨パッド面上の温度を制御するので、基板の研磨レートを最適且つ一定に保つことができ、これにより研磨時間を短縮することができる。また、この結果、スラリー使用量並びに廃液量の低減を図ることができる。
【0030】
・また、上記のように研磨時間が短縮することにより、時間当たりの基板の研磨処理量が増加し、生産性が向上し、また基板1枚当たりに掛かる研磨処理コスト(スラリーやその他消耗品)の低減を図ることができる。
【0031】
・また、基板の被研磨面内の均一性や段差特性の向上により、基板研磨処理の製品歩留まりの向上を図ることができる。
【0032】
・また、レシピにてPIDパラメータが選択可能なため、ホストコンピュータから送られてくる様々なレシピ情報を持つプロセスジョブに対応することが可能である。
【0033】
・また、研磨中においてもPIDパラメータや設定温度を研磨ステップごとに設定可能なため、基板の膜の削り状況に応じた研磨パッドの温度コントロールが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。
【図2(a)】図2(a)はレシピイメージ例を示す図である。
【図2(b)】図2(b)はレシピイメージ例を示す図である。
【図3】図3は基板研磨時間と研磨パッドの表面の関係を示す図である。
【図4】図4は基板膜の研磨速度と研磨パッドの温度の関係を示す図である。
【図5】図5はCu膜の研磨時間と研磨パッドの温度の関係を示す図である。
【図6】図6はSTI膜の研磨時間と研磨パッドの温度の関係を示す図である。
【図7】図7はパッド温調手段の構成例を示す図である。
【図8】図8はパッド温調手段と研磨テーブルの構成例を示す図である。
【図9】図9はパッド温調手段の蓋体を除いた内部構成例を示す図である。
【図10】図10はパッド温調手段の固体内を流れる流体の状態を示す図である。
【図11】図11は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。
【図12】図12はパッド温調手段の研磨パッド接触部材と棒状ヒータの構成例を示す図である。
【図13】図13は基板受渡位置にあるトップリングに温水を噴射している状態を示す図である。
【図14】図14はパッド温調手段の蓋体を除いた内部構成例を示す図である。
【図15】図15は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。
【図16】図16は図2に示すレシピイメージの場合の操作量と温度の関係を示す図である。
【図17】図17は本発明に係る基板研磨装置での基板研磨における研磨時間と研磨パッド温度の関係を示す図である。
【図18】図18は基板研磨開始直前から研磨時の研磨パッドの温度変化の状態を示す図である。
【図19】図19は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。
【図20】図20は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。図示するように、本基板研磨装置10は、上面に研磨パッド11が貼付された研磨テーブル13と、基板を保持する基板保持手段としてのトップリング14とを備え、回転する研磨テーブル13の研磨パッド11の面上に回転するトップリング14の下面に保持する基板(図示せず)を押圧・接触させ、更にスラリ供給ノズル16から研磨液としてスラリー17を研磨パッド11面上に供給し、基板と研磨パッド11の研磨面の相対的運動により、基板の被研磨面を研磨する。
【0036】
また、本基板研磨装置10には、研磨パッド11の上面温度を検出する研磨パッド温度検出手段としての放射温度計19、温度コントローラ20、電空レギュレータ22、比例3方制御弁23、温水製造タンク25、研磨パッド11の面上に接触し温度を調整するパッド温調手段26、及びパッド温調手段26から排出される水の温度を検出する温度計28を備えている。放射温度計19は研磨パッド11上面のトップリング14の近傍で研磨テーブル13の回転方向(矢印A方向)上流側の温度を検出し、検出された研磨パッド面温度情報は温度コントローラ20に入力される。
【0037】
温度コントローラ20には、後に詳述する複数種のPIDパラメータが記憶されており、温度コントローラ20に設定された研磨パッド11面の設定温度と放射温度計19で検出された実際の研磨パッド11の面温度との差に応じて、上記複数種のPIDパラメータから所定のPIDパラメータを選択し、放射温度計19で検出された研磨パッド11の面温度情報に基づいて研磨パッド11の面温度が所定の温度になるように電空レギュレータ22を介して比例3方制御弁23を制御する。比例3方制御弁23は電空レギュレータ22の制御により、研磨パッド11の上面温度が所定の温度になるように弁開度を制御し、温度製造タンク25からの所定温度の温水30の流量と所定温度の冷水31の流量の混合割合を制御し、温度を調整した温調流体をパッド温調手段26に供給する。パッド温調手段26から流出する水の温度は温度計28により検出され、温度コントローラ20にフィードバックされる。或いは放射温度計19で検出される研磨ヘッド11の面温度がフィードバックされる。これらにより、研磨パッド11の上面温度は温度コントローラ20で設定された最適温度に維持され、基板の研磨レートを最適且つ一定に保つことができ、研磨時間を短縮することができる。また、この結果、スラリ供給ノズル16から供給されるスラリー17の使用量並びに廃液量の低減を図ることができる。
【0038】
例えば、基板に形成された膜種や研磨条件(研磨テーブル13の回転数及びトップリング14の回転数)、研磨パッド11の種類等のプロセス条件が異なれば基板の研磨時に発生する熱量が異なる。よって、基板研磨時の研磨パッ11の表面温度プロファイルもプロセス条件により様々である。更に基板研磨時の研磨パッド11の最適表面温度もプロセス条件により異なるため、プロセス条件別にPIDパラメータが必要になってくる。しかし1つの基板研磨装置は多種のプロセス条件を処理する必要があるため、多種のPIDパラメータを温度コントローラ20に格納しておき、使い分ける必要がある。
【0039】
基板のロットが基板研磨装置10へ送られるときは、研磨条件レシピが上位コンピュータ(工場のホストコンピュータ)から基板研磨装置10へ送られるため、各研磨条件レシピに各PIDパラメータを書き込んでおけば、基板研磨装置10内のコンピュータと温度コントローラ20の通信によりPIDパラメータの使い分けが可能となる。
【0040】
また、基板の膜の研磨が進行するにつれて、研磨パッド11の最適表面温度を変更する必要がある場合においても、この最適表面温度の変更に応じてPIDパラメータも変更する必要が生じる。図2はレシピイメージを例示す図であり、図3は基板研磨時間[sec]と研磨パッドの表面温度の関係を示す図である。図2(a)に示すように、研磨ステップ1、2、3、・・・、10に応じて、プロセス時間、回転速度、・・・、研磨パッド温度制御の「非有効(Invalid)」及び「有効(Valid)」、PIDパラメータ、及び温度設定がされている。基板研磨時間と研磨パッド11の上面温度の関係は、図3の点線Aに示すよう設定温度はステップ2では45℃、ステップ3では40℃に設定されているのに対して、研磨パッド11の上面測定温度は曲線Bに示すようになる。
【0041】
表面に金属めっき膜が形成された基板を基板研磨装置で研磨した場合、膜の研磨速度Vと研磨パッド表面温度℃の関係は図4に示すようになる。図示するように研磨パッド11の上面温度が所定の温度T0(例えば、45℃)となると研磨速度Vが最大となり、該温度を中心とした所定の温度範囲(例えば、30〜60℃)が研磨に最適な設定温度範囲Δtとなる。
【0042】
図5はCuめっき膜が形成された基板を研磨した場合の研磨パッド11の上面温度プロファイルを示す図で、図6はSTIめっき膜が形成された基板を研磨した場合の研磨パッドの温度プロファイルを示す図である。Cuめっき膜が形成された基板を研磨した場合、図5の点線Aに示すように希望制御温度(例えば、40℃)であるにもかかわらず、研磨パッドの上面温度制御を行わないと曲線Bに示すように、研磨パッドの温度は希望制御温度以下から、該希望制御温度を超えて上昇し、再び希望制御温度以下に変化する。また、STIめっき膜が形成された基板を研磨した場合、図6の点線Aに示すように希望制御温度が所定温度(例えば、40℃)であるにもかかわらず、研磨パッドの上面温度制御を行わないと、曲線Bに示すように、研磨パッドの温度は該希望制御温度を超えて上昇する。
【0043】
本実施形態例では、研磨パッド所定エリア、例えば研磨テーブル13のエッジ(外周)から30mmの範囲とそれ以外を、研磨(ボリッシュ)時間に渡って研磨パッド11の上面温度を所定の精度(例えば±1℃以内)でこの所定の設定温度範囲(例えば30〜60℃)に維持するように制御する。また、応答性は研磨開始前加熱で5秒以内で設定温度に達すること、研磨中の温度切替が2℃/sec以上とする。また、研磨開始前から研磨パッドは希望温度(設定温度)に到達していること、また研磨中もその設定温度に維持する。更に研磨中に希望温度が変わる場合もあり、その際には2℃/sec以上で温度変化をさせる。
【0044】
図7はパッド温調手段26の構成例を示す図で、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図、図7(c)はA−A断面図である。パッド温調手段26は研磨テーブル13の研磨パッド11の上面に接触する研磨パッド接触部33aを有する固体33を具備し、該固体33の内部は後に詳述するように熱交換媒体である流体が流れる流体流路が形成され、上部が断熱性が優れた材料からなる蓋体35で覆われている。固体33は先端部の幅L1が後端部の幅L2より狭く( L1<L2)なっており、図1に示すように、パッド温調手段26は研磨テーブル13の研磨パッド11の上面に、幅の狭い(L1)先端部が中心側に幅の広い(L2)後端部が外周側に位置するように配置される。固体33の内部を流れる流体と研磨パッド11上面の間では研磨パッド接触部33aを介して熱交換され、研磨パッド11の上面温度を所定の温度に温調する。
【0045】
固体33には固定軸36が固定され、該固定軸36にブラケット38が係合し、該ブラケット38は固体支持軸39に係合している。固定軸36とブラケット38の間には所定の隙間が設けられている。これにより、固体33は所定範囲で矢印B、矢印Cに示すように所定範囲で揺動でき、更に所定範囲で上下動するようになっている。このようにブラケット38と固定軸36の間に隙間を設けることにより、パッド温調手段26の固体33は研磨パッド11に対して自重で接していて、研磨パッド11の円周と半径方向の振れ追従できる追従構造となっている。また、このような構造を採用することにより固体33の振れ以外に研磨パッド11が摩耗した場合にも、固体33は隙間部で上下方向に移動ができるため研磨パッドの摩耗に対しても追従が可能となる。固体33の後端部には上記流体流路に熱交換媒体である流体を導入するための流体流入口33a、及び流体を流出するための流体流出口33bが設けられている。
【0046】
また、パッド温調手段26は、図8の一点鎖線で示すように、研磨テーブル13の外周位置で垂直に立設させる(跳ね上げる)ことが出来る跳ね上げ機構(図示せず)を備えている。これにより研磨テーブル13の上面に貼付した研磨パッド11を交換するとき、パッド温調手段26を基板研磨装置10から取外すことなく、パッド温調手段26を研磨テーブル13の外周位置で垂直に跳ね上げて研磨パッド11の交換が可能となる。なお、図8において、記号Cは研磨テーブル13の回転中心を示す。
【0047】
図9はパッド温調手段26の蓋体35を除いた固体33の内部構成を示す図で、図9(a)は分解斜視図、図9(b)は斜視図、図9(c)はA−A断面矢視図である。なお、図7に示すパッド温調手段26の固体33と図9に示すパッド温調手段26の固体33では平面形状が両者若干異なる。図9に示すように、本固体33は、研磨パッド11に接触する接触面を有する研磨パッド接触部材33−1と、シリコンラバーヒータ33−2と、アルミ製循環水ケース33−3を備えている。研磨パッド接触部材33−1はSiC或いはアルミナ製などの熱伝導性、耐磨耗性、耐食性に優れた材料で形成され、先端部の幅L1が後端部の幅L2より狭い( L1<L2)平面台形状で、且つ外周部が立設して、全体が台形状の容器となっている。
【0048】
シリコンラバーヒータ33−2は、は平面台形状で外周が上記研磨パッド接触部材33−1の内部に挿入できる形状の大きさである。アルミ製循環水ケース33−3は、平面台形状で外周がシリコンラバーヒータ33−2の内部に挿入できる形状の大きさである。研磨パッド接触部材33−1の内面とシリコンラバーヒータ33−2の外面は、例えば接着材で接着され、シリコンラバーヒータ33−2にリード線33−2a、33−2bを通して電流を通電することにより、発熱するようになっている。アルミ製循環水ケース33−3内部には、熱交換媒体である流体(例えば、温水又は冷水)が流入する流体流入路33−3a、流出する流体流出路33−3bが形成されている。
【0049】
固体33の研磨パッド接触部材33−1の材質はSiC或いはアルミナ製などの熱伝導性、耐磨耗性、耐食性に優れた材料とし、その上部を覆う蓋体35はSiC材からなる研磨パッド接触部材33−1と研磨パッド11上面での熱交換効率を上げるために断熱性が優れた材料を用いる。樹脂を用いる場合は流体の熱による研磨パッド接触部材33−1の熱変形防止のためにPEEK或いはPPSが好ましい。或いはSiC材からなる研磨パッド接触部材33−1の熱変形防止を断熱性よりも優先させるべく線膨張係数が研磨パッド接触部材に近い材料の採用することも可能である。また、熱効率を上げるためSiCからなる研磨パッド接触部材33−1の研磨パッド11との接触面積を大きく取り、肉厚は薄くするのがよい。なお、パッド温調手段26の固定33の平面形状は台形状に限定されるものではなく、扇形状であってもよい。
【0050】
また、パッド温調手段26の固体33の研磨パッド接触部材33−1の研磨パッド11への接触面は面粗さを小さくするためラップ加工処理等を施して鏡面とする。研磨パッド接触部材33−1の研磨パッド11への接触面を研削加工で処理した場合、接触面から微小な素材が脱落する場合があり、場合によっては研磨中の基板の研磨面に傷を付けることもある。上記のように研磨パッド11への接触面をラップ加工処理等で鏡面とすることにより、パッド温調手段26の固体33が研磨パッド11の上面に滑らかに接触することになり、且つ加工により生じるクラックを含んだ破砕層も浅くなるため、素材の脱落が減少し、研磨中の基板の研磨面に傷を与えることも低減する。また、ラップ加工等以外にも同じ効果を得るために、接触面にダイヤモンド、DLC或いはSICなどのCVDコート処理も有効である。
【0051】
上記基板研磨装置において、研磨テーブル13を回転させた場合、研磨パッド11の外周側が内側に比べて気化熱による冷える傾向にある。そのため上記パッド温調手段26の固体33内の流路に流体を流入させるための流体流入口33a、該流路から流体を流出させるための流体出口33bの配置は、上記傾向を抑制するように(研磨パッド11の表面内に温度差が生じないように)配慮している。
【0052】
例えば、固体33に冷却水を流すとき、従来は図10(a)に示すように、固体33の研磨パッド11の外周側に接する端部に流体流入口33aと流体出口33bを設け、流体流入口33aから流入した流体(冷却水)が固体33内を研磨パッド11の中心側に接する端部に向って流れ、該中心近傍で折り返し研磨パッド11の外周側に接する端部に向って流れ、流体流出口33bからは流出するように、内部流路を形成している。
【0053】
しかしこれでは、研磨パッド11の外周側が内側に比べて気化熱による冷える傾向を抑制できない。そこで本実施形態では図10(b)に示すように、固体33の研磨パッド11の中心側に接する端部に1個の流体流入口33aを設け、外周側端部に2個の流体流出口33bを設ける。そして流体入口33aから流入した流体(冷却水)が固体33内を研磨パッド11の外周側に接する端部に向って流れ、2個の流体流出口33bから流出するように、内部流路を形成している。これにより、研磨パッド11の中心側には流入初期の温度の低い冷却水が流れることになり、研磨パッド中心側が外周側より強く冷却されることになる。よって、研磨パッド11の外周側が内側に比べて気化熱による冷える傾向を抑制できる。
【0054】
上記のように研磨テーブル13が回転することにより、研磨パッド11の外周側が内側に比べて気化熱による冷える傾向にあるのを抑制するために、図11に示すように、トップリング14の回転軸40を回転自在に保持するトップリング支持アーム43に温風ヒータ45を設置する。そして該温風ヒータ45から研磨パッド11の外周側でトップリング14による研磨直前の上流側位置に温風を吹き付ける。このように研磨パッド11の外周側だけを温風で加熱するために温風ヒータ45をトップリング支持アーム43に設けることにより、温風ヒータ45を支持する支持機構を別途設ける必要はなく、安価となる。また、トップリング支持アーム43は常に所定のポリッシング位置(研磨位置)を旋回してきて停止するため、温風ヒータ45の研磨パッと11に対する位置も常に一定となり再現性よく、研磨パッド11の上面温度コントロールができる。また、温風ヒータ45からの温風46は研磨パッド11の上面外周側の温度を元に、PIDパラメータを持つ温度コントローラ20にて電圧調整器27に対してPIDで制御するか、或いは常に一定温度の温風46の吹き付けを行い、温風46のON−OFFだけの制御とする。
【0055】
また、温風ヒータ45の温風46の吹付け方向は研磨パッド11が貼付されている研磨テーブル13の半径方向で外側向き或いは回転方向に対向するように吹付けることにより、研磨パッド11の表面温度の低下を極力抑えることが可能となる。
【0056】
また、図9に示すパッド温調手段26において、研磨パッド接触部材33−1の内面にのヒータ(シリコンラバーヒータ33−2)を配置するか、又は図12に示すようにSiC材からなる研磨パッド接触部材33−1の内部に設けた丸孔49に棒状ヒータ48を挿入して、棒状ヒータ48を研磨パッド接触部材33−1の内部に配置する。そして研磨パッド11の加熱はヒータ(シリコンラバーヒータ33−2又は棒状ヒータ48)にて行い、研磨パッド11の冷却は、アルミ製循環水ケース33−3内部に設けた流体流入路33−3a及び流体流出路33−3bに冷水を流すことによって研磨パッド11の表面温度をコントロールする。また、研磨パッド11上面の希望設定温度が高い場合は、ヒータ(シリコンラバーヒータ33−2又は棒状ヒータ48)によるだけでなく、温水を流すこともある。
【0057】
図14はパッド温調手段26の蓋体35を除いた固体33の他の内部構成例を示す図である。本固体33の内部構成が図9に示すそれと異なる点は、アルミ製循環水ケース33−3の両端部の幅寸法が同じで、且つ小さくなっていることである。これにより研磨パッド11の外周側に位置する冷却水路面積が小さくなり、その部分の研磨パッド11の上面冷却を抑制できる。
【0058】
図15は本発明に係る基板研磨装置の概略構成例を示す図である。本基板研磨装置10では、パッド温調手段26の温度制御を放射温度計19で検出した研磨パッド11の上面温度情報をもとに温度コントローラ20によるPID制御によって行う。具体的には温度コントローラ20からの出力により電圧調整器41からの電圧出力が制御され、該電圧出力により、パッド温調手段26のシリコンラバーヒータ33−2又は棒状ヒータ48に加熱電流を通電し、パッド温調手段26の加熱制御を行う。この場合、加熱電流を連続的に通電制御してもよいが、加熱電流のON−OFFのサイクルを変える時間比例によって制御しもよい。また、パッド温調手段26の冷却制御は温度コントローラによるPID制御より流量コントローラ50を制御し、パッド温調手段26の固体33に供給される冷水31の流量を制御して行う。
【0059】
1個の温度コントローラ20にヒータ(シリコンラバーヒータ33−2又は棒状ヒータ48)の電圧調整器41用のPIDパラメータと流量コントローラ50用のPIDパラメータ、即ち加熱電流通電用PIDパラメータと冷水流入用PIDパラメータを持たせている。レシピには加熱用と冷却用のパラメータの其々が行を分けて書き込まれ、温度コントローラ20が加熱用(加熱電流通電用)か、冷却用(冷水流入用)であるかを判別できるようになっている。
【0060】
図16は図2(b)に示すレシピイメージの場合の操作量(ここでは冷水51の水量とヒータに供給される電圧)と温度の関係を、図17は研磨時間[sec]と温度[℃]の関係を示す。図2(b)に示すように、レシピは項目とし「プロセス時間」、「回転速度」、・・・・・、「研磨パッド温度制御」、「加熱用PIDパラメータ」、「冷却用PIDパラメータ」、「設定温度値(℃)」が設けられ、ここではステップ1、2、3、・・・・、10に対応して、プロセス時間、回転速度、研磨パッド温度制御の有効・非有効、加熱用PIDパラメータ、有効、冷却用PIDパラメータ、設定温度値が設定されている。
【0061】
図17のステップ2で希望の設定温度Bに到達するために、制御特性に準じたPID加熱制御を行い、ある所定の温度に近づくと、(その温度と希望設定温度の差とPIDパラメータ値に拠り)PID冷却制御も開始されてバランスをとることになる。その際に使用されるPIDパラメータは加熱においてはパラメータA、冷却においてはパラメータaである。その後、ステップ3では希望の設定温度が低く設定されているので、冷却制御のみがパラメータbにより行われる。
【0062】
基板研磨装置において、基板研磨開始時に被研磨対象基板が研磨パッド11に当接すると時点では、図18時間t1に示すように、研磨パッド11の上面温度は曲線Bのように低下して研磨パッド11の上面が冷却する。この研磨パッド上面が冷却するのを抑えるために、研磨対象基板が研磨パッド11に当接する前に、予め加熱する手段を設ける。この加熱手段として基板を保持しているトップリング14を、図13に示すように、研磨対象基板をトップリング14に受け渡す受渡機構53の上方に待機させて、下面に保持されている基板(図示せず)に温水54をノズル56から一定時間吹き付ける。更に研磨対象基板を保持しているトップリング14が受渡機構53の上方から、研磨テーブル13の研磨位置上方へ旋回する間においても温水を吹き付けができるようにする。
【0063】
また、基板が研磨パッド11に接触することにより、該研磨パッド11の接触面が冷却するのを見込んで、温度コントローラ20に対する研磨パッド11の表面の加熱温度を基板研磨時の希望設定温度よりも高く設定しておき、基板接触後は希望設定温度に切り替えて温度制御を行うようにしてもよい。
【0064】
図19は本発明に係る基板研磨装置の他の概略構成例を示す図である。本基板研磨装置10では、パッド温調手段26の固体内には温水製造タンク25から、所定温度の温水のみを研磨パッド11の上面加熱用として供給している。この温水の流量は温度コントローラ20によりPID制御により、流量制御弁50を介して行う。温水製造タンク25の温水量を一定に保つ必要があるために温水製造タンク25から出て行く温水流量と温水製造タンク25へ回収する温水流量を同じにする必要がある。そのため、図1に示すように、3方向制御弁23を用いたシステムの場合、冷水と混合後にパッド温調手段26の固体内を通って出てきた流量に対して、温水製造タンク25から出て行った温水流量と同じ流量を回収する制御が必要になる。それに対して3方向制御弁を使用せずに温水のみを循環させて流量を制御する図19のシステムでは上記回収制御は不要となる。また、冷水と混合するこもないため、回収される温水温度も低温にならず、温水製造タンク25内のヒーター容量が小さくて済み消費電力低減にも繋がる。
【0065】
また、研磨パッド11の上面の冷却手段としては、研磨パッド11の上面に冷却気体58を吹き付ける冷却ノズル56を設け、温度コントローラ20によるPID制御により、電空レギュレータ54の開度を調節し、冷却気体58の吹付け量の制御を行う。冷却気体58としては常温又は所定温温度の気体を用いる。
【0066】
なお、上記実施形態では基板研磨装置10は、1個の研磨テーブル13と1個のトップリング14を備えているが、本発明に係る基板研磨装置はこれに限定されるものではなく、図20に示すように、1個の研磨テーブル13に複数個(図では2個)のトップリング14で保持する研磨対象基板を押圧・接触させて該基板を研磨する複数個のトップリング14を備えた基板研磨装置でもよい。この場合はそれぞれのトップリング14に対応して放射温度計19、パッド温調手段26、温度コントローラ20、電圧調整器41、流量コントローラ50を備えるようにする。
【0067】
図20に示すように、2個のトップリング14を備え、各トップリング14で保持する研磨対象基板を研磨テーブル13の研磨パッド11の上面に押圧・接触させて該基板を研磨すると、トップリング14が1個の場合に比べて基板研磨による発熱が2倍となり、研磨パッド11の温度が上昇してしまう。そこでここでは、各トップリング14に対応して放射温度計19、パッド温調手段26、温度コントローラ20、電圧調整器41、流量コントローラ50を備え、図15に示す基板研磨装置10のシステムように、各パッド温調手段26の温度制御を放射温度計19で検出した研磨パッド11の上面温度情報をもとに温度コントローラ20によるPID制御によって行う。即ち、各パッド温調手段26の加熱制御は電圧調整器41の出力電圧を制御してシリコンラバーヒータ33−2又は棒状ヒータ48に流れる加熱電流を制御し、また各パッド温調手段26の冷却制御は流量コントローラ50を制御し、パッド温調手段26の固体33の流路に流れる冷水31の流量を制御して行う。これにより、研磨パッド11の上面温度を研磨に最適な温度に維持することができる。上記図20は複数のトップリング14を備える基板研磨装置のトップリング14に対する温調手段の一例であり、複数のトップリング14に対する温調手段としては図1や図19に示す他の温調手段を採用することも可能である。
【0068】
上記ように、1個の研磨テーブルに複数個のトップリングを備えた基板研磨装置であっても、各トップリングに対応して放射温度計、パッド温調手段、温度コントローラ等を設け、パッド温調手段の温度制御を放射温度計で検出した研磨パッドの上面温度情報をもとに温度コントローラによるPID制御によって行うことにより、最適な研磨レート、段差特性を得ることができる。
【0069】
トップリングに起因、或いは基板の膜付けに起因等による研磨レートのヘッド間差が生じる可能性がある。上記のように研磨パッドの上面温度を調整制御すれば、複数のトップリングを備え、同一のプロセスを同時に処理する場合においても、トップリング毎に温度コントロールが可能であるので、トップリング間差によらず、最適な研磨レート、段差特性を得ることができる。また、1枚の基板研磨時(25枚目の基板研磨時)には2枚の基板の同時研磨時よりも研磨パッドの上面温度が上昇しない。従って、上記研磨パッドの上面温度調整制御を用いることによって、1枚のみの基板研磨でも、2枚の基板研磨と同様な最適な研磨レート、段差特性を得ることができる。例えば、1カセットで同一レベルの研磨が可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、研磨パッド面上の温度を検出する研磨パッド温度検出手段と、前記研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面上の温度を調整するパッド温調手段と、研磨パッド温度検出手段で検出したパッド温度情報に基づいてパッド温調手段を制御して研磨パッド面上の温度を制御する温度コントローラを備え、温度コントローラは複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、パッド温度情報に基づいて選択したPIDパラメータを用いて前記研磨パッド面上の温度を制御するので、基板の研磨レートを最適且つ一定に保つことができ、これにより研磨時間を短縮、時間当たりの基板の研磨処理量が増加し、生産性が向上し、基板1枚当たりに掛かる研磨処理コストの低減を図ることが基板研磨装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 基板研磨装置
11 研磨パッド
13 研磨テーブル
14 トップリング
16 スラリ供給ノズル
17 スラリー
19 放射温度計
20 温度コントローラ
22 電空レギュレータ
23 3方制御弁
25 温水製造タンク
26 パッド温調手段
27 電圧調整器
28 温度計
30 温水
31 冷水
33 固体
33−1 研磨パッド接触部材
33−2 シリコンラバーヒータ
33−3 アルミ製循環水ケース
35 蓋体
36 固定軸
38 ブラケット
39 固体支持軸
40 回転軸
41 電圧調整器
43 トップリン支持アーム
45 温風ヒータ
46 温風
48 棒状ヒータ
49 丸孔
50 流量コントローラ
53 受渡機構
54 温水
56 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に研磨パッドが貼付された研磨テーブルと、基板を保持する基板保持手段とを備え、回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する前記基板保持手段で保持する基板を押圧接触させ、該基板を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッド面上の温度を検出する研磨パッド温度検出手段と、前記研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面上の温度を調整するパッド温調手段と、前記研磨パッド温度検出手段で検出したパッド温度情報に基づいて前記パッド温調手段を制御して前記研磨パッド面上の温度を制御する温度コントローラを備え、
前記温度コントローラは複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、前記パッド温度情報に基づいて前記選択したPIDパラメータを用いて前記研磨パッド面上の温度を制御することを特徴とする基板研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板研磨装置において、
前記温度コントローラは、研磨プロセス又は研磨中の前記基板に形成された膜種に応じて前記複数種のPIDパラメータから所定のPIDパラメータを選択し、前記パッド温度情報に基づいて前記選択したPIDパラメータを用いて前記パッド温調手段を制御し、前記研磨パッド面上の温度を制御することを特徴とする基板研磨装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板研磨装置において、
前記温度コントローラは、前記研磨パッド面上の冷却用と加熱用で前記複数種のPIDパラメータを持ち、該複数種のPIDパラメータから所定のPIDパラメータを選択することを特徴とする基板研磨装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の基板研磨装置において、
前記PIDパラメータは、予めレシピに登録しておき、該レシピにより選択可能であることを特徴とする基板研磨装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板研磨装置において、
前記パッド温調手段は、前記研磨パッド面の半径方向に接触する研磨パッド接触面を有する固体を具備し、該固体内を流れる熱交換媒体である流体の間で前記研磨パッド接触面を介して熱交換を行うように構成されていることを特徴とする基板研磨装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板研磨装置において、
前記基板保持手段は基板を保持する基板保持部を支持するヘッド部を備え、該ヘッド部に前記研磨パッド面に温風を吹き付ける温風ヒータを設けたことを特徴とする基板研磨装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板研磨装置において、
前記研磨パッド面に冷風を吹き付ける冷風吹付手段をけたことを特徴とする基板研磨装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板研磨装置において、
前記基板保持手段が保持する前記基板を加熱する基板加熱手段を設けたことを特徴とする基板研磨装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板研磨装置において、
前記基板加熱手段は温水を吹き付ける温水吹付手段であることを特徴とする基板研磨装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板研磨装置において、
前記基板保持手段を複数備え、それぞれ基板保持手段に対応して前記研磨パッド温度検出手段、前記パッド温調手段、前記温度コントローラを備えたことを特徴とする基板研磨装置。
【請求項11】
回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する基板保持手段で保持する基板を押圧接触させて該基板を研磨する基板研磨方法において、
温度コントローラにより複数種のPIDパラメータから所定のルールに基づき所定のPIDパラメータを選択し、該選択したPIDパラメータを用いて前記研磨パッド面上の温度情報に基づいて前記研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面上の温度を調整するパッド温調手段を制御して前記研磨パッド面上の温度を制御しながら前記基板を研磨することを特徴とする基板研磨方法。
【請求項12】
上面に研磨パッドが貼付された研磨テーブルと、基板を保持する基板保持手段とを備え、回転する研磨テーブルの研磨パッド面上に回転する前記基板保持手段で保持する基板を押圧接触させ、該基板を研磨する基板研磨装置の前記研磨パッド面上に接触し該研磨パッド面の温度を調整する基板研磨装置の研磨パッド面温調装置であって、
前記研磨パッド面上に接触する研磨パッド接触面を有する固体を具備し、該固体は前記研磨パッドに接触する側を熱伝導性、体磨耗性、及び耐食性に優れた材料で構成し、前記研磨パッドに接触する側の反対側を線膨張係数が前記研磨パッドに接触する側の材料の線膨張係数に近く、且つ断熱性の優れた材料からなるカバーで覆った構成であり、
前記研磨パッド接触面を介して前記固体内を流れる熱交換媒体である流体との間で熱交換を行うように構成されていることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体の前記研磨パッドに接触する側をSiC製或いはアルミナ製としたことを特徴とする研磨パッド面温調装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体の前記研磨パッドに接触する面は面粗さを小さくする鏡面仕上げ或いはCVDコーティング処理としていることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体は前記研磨パッド面上に半径方向に配置され自重で接するようになっており、該研磨パッド面の円周方向と半径方向の振れ、及び該研磨パッドの磨耗による厚みの変化に追従する追従機構を具備する構成であることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体は前記研磨パッドの交換に支障とならないように該研磨パッドの外周部で、
垂直方向に跳ね上げ可能な跳ね上げ機構を介して支持部に支持されていることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項17】
請求項12乃至16のいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体には、前記研磨パッドの中心側と外周側の端部に熱交換媒体である流体を給・排出する流体給・排出口を設けたことを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項18】
請求項17に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記研磨パッド面を冷却するときは、前記固体の研磨パッドの中心側の流体給・排出口から前記流体を供給し、前記研磨パッドの外周側の流体給・排出口から排出することを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項19】
請求項17に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記研磨パッド面を加熱するときは、前記固体の研磨パッドの外周側の流体給・排出口から温流体を供給し、研磨パッドの中心側の流体給・排出口から排出することを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項20】
請求項17に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記流体給・排出口は前記固体の研磨パッドの中心側の端部に1個、研磨パッドの外周側の端部に2個以上設けたことを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項21】
請求項12乃至20のいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体の平面形状は前記研磨パッドの中心側に接する端部が狭く外周側に接する端部が広い台形状であることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項22】
請求項12乃至21のいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記流体は、液体又は気体であることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。
【請求項23】
請求項12乃至22にのいずれか1項に記載の基板研磨装置の研磨パッド面温調装置において、
前記固体に流れる流体は比例制御3方弁を経由して流れ、該比例制御3方弁には温流体と冷流体が供給され、各々の流体流量が制御・混合され、温調された流体として前記固体内流路に供給されることを特徴とする基板研磨装置の研磨パッド面温調装置。

【図1】
image rotate

【図2(a)】
image rotate

【図2(b)】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−136406(P2011−136406A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298965(P2009−298965)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】