説明

基板除去方法及び記憶媒体

【課題】基板を静電チャックから容易に除去することができる基板除去方法を提供する。
【解決手段】直流電圧が印加される静電電極板22を内包する静電チャック23及び該静電チャック23を内蔵するチャンバ11を備える基板処理装置10において、プラズマエッチング処理中に第1の所定の電位へ維持された静電チャック23の静電電極板22の電位をプラズマエッチング処理後に接地電位に設定してウエハW及びチャンバ11の間の電位差の絶対値を増大させ、ウエハW及びチャンバ11の間においてDC放電40を生じさせ、DC放電40が生じた後にウエハWに生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を静電電極板22へ印加してウエハW及びチャンバ11の間の電位差の絶対値を増大させてDC放電42を生じさせ、ウエハWを静電チャック23から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸着された基板を静電チャックから除去する基板除去方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としての半導体デバイス用ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)は、基板処理装置の減圧された処理室内において所定の処理、例えば、プラズマ処理が施される。ウエハは所定の処理の間、所望の位置からずれることがないように、処理室内に配置された静電チャックによって静電吸着される。
【0003】
静電チャックは、静電電極板を内部に有する誘電体、例えば、セラミックスからなる板状部材であり、ウエハを上面に載置する。静電電極板には直流電源が接続されており、該静電電極板へ正の直流電圧が印加されると、載置されたウエハにおける静電チャック側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板及びウエハの裏面の間に電位差が生じる。しかしながら、静電電極板及びウエハの間には静電チャックの誘電体が存在するため、静電電極板及びウエハの間では電荷が移動せず、静電電極板及びウエハの裏面の間の電位差が維持される。その結果、該電位差に起因する静電気力によってウエハが静電チャックに静電吸着される。
【0004】
ところで、基板処理装置では、処理室内において静電チャックに対向するように接地電位の上部電極板が配置されている。基板処理装置においてプラズマ処理がウエハに施される場合、図6(A)に示すように、ウエハW及び上部電極板50の間には常時プラズマ51が存在するため、該プラズマ中の電子や陽イオンによってウエハW及び上部電極板50の間における電荷の移動は自在であり、その結果、静電電極板52の電位(以下、図中において「HV」で示す。)を、例えば、2.5kVに設定していても、ウエハWの電位(以下、図中において「Wafer」で示す。)は、上部電極板50の電位(以下、図中において「UEL」で示す。)と同じ0Vとなる。
【0005】
プラズマ処理後にウエハWを静電チャック53から除去しやすくするために、例えば、静電電極板52へプラズマ処理中の印加電圧とは逆の極性の電圧を印加したり(例えば、特許文献1参照。)、若しくは静電電極板52の電位を0Vへ変化させたりするが、静電電極板52の電位を2.5kVから0Vへ変化させる場合、ウエハW及び静電電極板52の間では電荷が移動せず、ウエハW及び静電電極板52の間の電位差が維持されるため、ウエハWの電位も静電電極板52の電位と同じ量だけ変化する。すなわち、図6(B)に示すように、ウエハWの電位は0Vから−2.5kVへ変化する。
【0006】
このとき、ウエハW及び上部電極板50の間の電位差が大きくなるため、ウエハW及び上部電極板50の間で直流的な放電(以下、「DC放電」という。)54が発生する(図6(C))。DC放電54が発生すると、ウエハW及び上部電極板50の間で電荷の移動が発生するため、上部電極板50及びウエハWの間の電位差は小さくなる。そして、上部電極板50及びウエハWの間において発生するDC放電54は、上部電極板50及びウエハWの間の電位差が放電を維持できない電位差まで低下すると停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−230051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DC放電54が発生すると上部電極板50及びウエハWの間の電位差は直ちに小さくなるため、当該電位差は放電を維持できない電位差にまで低下してDC放電54は直ちに消滅する。その結果、以降の電荷の移動が停止するため、上部電極板50及びウエハWの間の電位差は完全に解消せず、ウエハWには所定の電位(以下、「残存電位」という。)(例えば、−0.5kV)が残存する。
【0009】
一方、静電電極板52の電位は0kVに設定されているため、ウエハW及び静電電極板52の間に電位差(絶対値で0.5kV)が残存し、ウエハWが静電チャック53によって静電吸着されるため、ウエハWを静電チャック53から容易に除去することができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、基板を静電チャックから容易に除去することができる基板除去方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板除去方法は、直流電圧が印加される静電電極板を内包する誘電体からなる静電チャック及び該静電チャックを内蔵する接地電位のチャンバを備え、前記静電チャックに静電吸着された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置における基板除去方法であって、前記プラズマ処理後の前記静電電極板の電位を、前記プラズマ処理中の前記静電電極板の電位である第1の所定の電位に維持する電位維持ステップと、前記静電電極板の電位を接地電位に設定して前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において直流的な放電を生じさせる第1の放電ステップと、前記第1の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後に前記基板に生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を前記静電電極板へ印加することによって前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において前記直流的な放電を再度生じさせる第2の放電ステップと、前記基板を前記静電チャックから除去する除去ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の基板除去方法は、請求項1記載の基板除去方法において、前記除去ステップに先立って、前記第2の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後の前記静電電極板の電位を接地電位へ変化させる電位変化ステップをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の基板除去方法は、請求項1又は2記載の基板除去方法において、少なくとも前記第2の放電ステップにおける前記処理室内の圧力は13.3Pa(100mTorr)以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の基板除去方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板除去方法において、前記プラズマ処理前において前記静電電極板へ印加される前記直流電圧の電位は1000V以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の基板除去方法は、請求項4記載の基板除去方法において、前記プラズマ処理前において前記静電電極板へ印加される前記直流電圧の電位は2000V以上であることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6記載の記憶媒体は、直流電圧が印加される静電電極板を内包する誘電体からなる静電チャック及び該静電チャックを内蔵する接地電位のチャンバを備え、前記静電チャックに静電吸着された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置における基板除去方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、前記基板除去方法は、前記プラズマ処理後の前記静電電極板の電位を、前記プラズマ処理中の前記静電電極板の電位である第1の所定の電位に維持する電位維持ステップと、前記静電電極板の電位を接地電位に設定して前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において直流的な放電を生じさせる第1の放電ステップと、前記第1の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後に前記基板に生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を前記静電電極板へ印加することによって前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において前記直流的な放電を再度生じさせる第2の放電ステップと、前記基板を前記静電チャックから除去する除去ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1の放電ステップにおいて直流的な放電が生じた後に基板に生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を静電電極板へ印加することによって基板及びチャンバ(上部電極板を含む)の間の電位差の絶対値を増大させ、基板及びチャンバの間において直流的な放電を再度生じさせる。該直流的な放電が再度生じると基板の電位は第2の所定の電位となる。このとき、静電電極板の電位は第2の所定の電位であるため、基板の電位及び静電電極板の電位を同じ電位とすることができる。その結果、基板が静電チャックに静電吸着されず、基板を静電チャックから容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板除去方法が実行される基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の基板処理装置におけるプラズマエッチング処理前及びプラズマエッチング処理中におけるウエハの静電吸着処理を説明するための工程図である。
【図3】本実施の形態に係る基板除去方法としてのウエハ除去処理を説明するための工程図である。
【図4】プラズマエッチング処理前におけるDC放電後の残存電位と、チャンバ内圧力との関係を示すグラフである。
【図5】静電電極板へ印加される直流電圧と、DC放電発生後のウエハの電位との関係を示すグラフである。
【図6】従来の基板除去方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る基板除去方法が実行される基板処理装置の構成を概略的に示す図である。本基板処理装置は、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマエッチング処理を施す。
【0021】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容し且つ接地電位であるチャンバ11を有し、該チャンバ11内にはウエハWを上面に載置する円柱状のサセプタ12が配置されている。基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成される。この側方排気路13の途中には排気プレート14が配置される。
【0022】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部材であり、チャンバ11内部を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11内部の上部(以下、「処理室」という。)15の内部空間には後述するようにプラズマが発生する。また、チャンバ11内部の下部(以下、「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続される。排気プレート14は処理室15に発生するプラズマを捕捉又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0023】
排気管17にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0024】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源18が第1の整合器19を介して接続され、第1の高周波電源18は比較的低い周波数、例えば、2MHzのイオン引き込み用の高周波電力をサセプタ12に供給する。また、サセプタ12には第2の高周波電源20が第2の整合器21を介して接続され、第2の高周波電源20は比較的高い周波数、例えば、40MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタ12に供給する。2種類の高周波電力が供給されたサセプタ12は下部電極として機能する。
【0025】
サセプタ12の上部周縁部には、該サセプタ12の中央部分が図中上方へ向けて突出するように段差が形成される。該サセプタ12の中央部分の先端には静電電極板22を内部に有する誘電体、例えば、セラミックスからなる円板状の静電チャック23が配置されている。静電電極板22には直流電源24が接続されており、静電電極板22に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック23側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板22及びウエハWの裏面の間に電位差が生じる。当該電位差は静電電極板22及びウエハWの間において静電気力であるクーロン力を生じさせ、該クーロン力によってウエハWは静電チャック23に吸着保持される。
【0026】
また、サセプタ12は内部に冷媒流路からなる冷却機構(図示しない)を有し、該冷却機構はプラズマと接触して温度が上昇するウエハWの熱を吸収することによってウエハWの温度が所望の温度以上になるのを防止する。
【0027】
サセプタ12は伝熱効率や電極機能を考慮して導電体、例えば、アルミニウムから構成されるが、導電体をプラズマが発生する処理室15へ晒すのを防止するために、該サセプタ12は側面を誘電体、例えば、石英(SiO)からなる側面保護部材25によって覆われる。
【0028】
さらに、サセプタ12の上部には、静電チャック23に吸着保持されたウエハWを囲むように環状のフォーカスリング26がサセプタ12の段差や側面保護部材25へ載置され、さらに、フォーカスリング26を囲むようにシールドリング27が側面保護部材25へ載置されている。フォーカスリング26はシリコン(Si)又は炭化珪素(SiC)からなり、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング26上まで拡大する。
【0029】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド28が配置される。シャワーヘッド28は、表面が絶縁膜で覆われた導電体、又は単体の半導体、例えば、シリコンからなる円板状の上部電極板29と、該上部電極板29を着脱可能に釣支するクーリングプレート30と、該クーリングプレート30を覆う蓋体31とを有する。上部電極板29は厚み方向に貫通する多数のガス孔32を有する円板状部材からなり、電気的に接地されているため、上部電極板29の電位は接地電位である。クーリングプレート30の内部にはバッファ室33が設けられ、このバッファ室33には処理ガス導入管34が接続されている。
【0030】
基板処理装置10はさらに制御部35を備え、該制御部35は内蔵するメモリ等に記憶されたプログラムに従って各構成要素の動作を制御し、プラズマエッチング処理を実行する。具体的に、制御部35は、各構成要素の動作を制御して処理ガス導入管34からバッファ室33へ供給された処理ガスを処理室15の内部空間へ導入し、該導入した処理ガスを、第2の高周波電源20からサセプタ12を介して処理室15の内部空間へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力により、励起してプラズマを生成し、プラズマ中の陽イオンを第1の高周波電源18がサセプタ12に印加するイオン引き込み用の高周波電力によってウエハWに向けて引き込み、又はプラズマ中のラジカルをウエハWに到達させて該ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0031】
図2は、図1の基板処理装置におけるプラズマエッチング処理前及びプラズマエッチング処理中におけるウエハの静電吸着処理を説明するための工程図である。なお、本実施の形態ではチャンバ11と上部電極板29が共に接地電位であり、上部電極板29がチャンバ11の一部を構成すると見なすことができ、さらに、上部電極板29はウエハWに近接するため、以下、ウエハW及びチャンバ11の間の電位差はウエハW及び上部電極板29の間の電位差によって代表されるものとして説明する。
【0032】
まず、サセプタ12の静電チャック23における静電電極板22へ直流電源24から直流電圧を印加せず、静電電極板22の電位(以下、図中において「HV」で示す。)を接地電位、すなわち、0Vに維持したまま、静電チャック23上にウエハWを載置する。ここで、載置されたウエハWの電位(以下、図中において「Wafer」で示す。)は接地電位、すなわち、0Vである(図2(A))。
【0033】
次いで、チャンバ11内が減圧され、チャンバ11の処理室15内へ処理ガスが導入される。また、直流電源24は正の直流電圧、例えば、2.5kVの直流電圧を静電電極板22へ印加する(図2(B))。ところで、静電電極板22及びウエハWの間には静電チャック23のセラミックスが存在するため、静電電極板22及びウエハWの間では電荷が移動せず、静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持される。ここでは、静電電極板22の電位が接地電位から2.5kVへ変化するため、ウエハWの電位も絶対値で2.5kVだけ変化して接地電位から2.5kVとなる(図2(B))。
【0034】
次いで、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値が大きくなると、ウエハW及び上部電極板29の間で直流的な放電(以下、「DC放電」という。)37が発生する(図2(C))。ここで、DC放電37が発生すると、ウエハW及び上部電極板29の間で電荷の移動が発生するため、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差は小さくなる。DC放電37が発生するとウエハW及び上部電極板29の間の電位差は直ちに小さくなるため、当該電位差は放電を維持できない電位差にまで低下してDC放電37は直ちに消滅する。その結果、電荷の移動が直ちに停止するので、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差は完全に解消せず、ウエハWには所定の電位、例えば、0.5kVの電位(以下、「DC放電後の残存電位」という。)が残存する。
【0035】
一方、2.5kVの直流電圧が静電電極板22へ印加されているため、静電電極板22の電位は2.5kVのままであり、DC放電後の残存電位とは異なるため、DC放電後においてウエハW及び静電電極板22の間には電位差、例えば、絶対値で2.0kVが生じ、該電位差に基づいて静電気力が生じる。その結果、ウエハWは静電チャック23へ吸着される。
【0036】
また、DC放電後の残存電位に関し、ウエハWの電位が2.5kVからDC放電後の残存電位に至るまでの間、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差はDC放電が発生可能な電位差よりも大きいため、DC放電が維持できると考えられる。一方、この間の上部電極板29の電位は接地電位であることから、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差がDC放電後の残存電位の絶対値よりも大きければDC放電が発生可能と考えられる。すなわち、DC放電後の残存電位の絶対値はDC放電が発生可能な電位差の最小値となる。なお、本実施の形態ではDC放電後の残存電位の絶対値を0.5kVとして以下の説明を行う。
【0037】
次いで、処理ガスを処理室15の内部空間へ導入し、該導入した処理ガスをプラズマ生成用の高周波電力により、励起させてプラズマ38を生成し、該プラズマ38によってウエハWにプラズマエッチング処理を施す。このとき、プラズマ38中の電子や陽イオンによってウエハW及び上部電極板29の間における電荷の移動は自在であり、その結果、DC放電後の残存電位であったウエハWの電位は、上部電極板29の電位と同じ接地電位(0V)となる(図2(D))。また、プラズマエッチング処理中、静電電極板22へは2.5kVの直流電圧が印加されているため、静電電極板22の電位として2.5kVが維持される。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る基板除去方法としてのウエハ除去処理を説明するための工程図である。
【0039】
図1の基板処理装置10において、サセプタ12へのプラズマ生成用の高周波電力の供給等を停止してプラズマエッチング処理を終了する。このとき、静電電極板22への2.5kV(第1の所定の電位)の電圧の印加が維持されているため、静電電極板22の電位として2.5kVが維持される(電位維持ステップ)。一方、ウエハWの電位は上部電極板29の電位と同じ接地電位(0V)である(図3(A))。
【0040】
次いで、静電電極板22への直流電圧の印加を停止して静電電極板22の電位を2.5kVから変更して接地電位に設定する。ここで上述したように、静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持されるため、ウエハWの電位も2.5kV(第1の所定の電位の絶対値)だけ変化して接地電位から−2.5kVへ変化する(図3(B))。このとき、上部電極板29の電位は接地電位のままなので、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値が増大して2.5kVとなる。この電位差の絶対値である2.5kVはDC放電後の残存電位の絶対値、すなわち、DC放電が発生可能な電位差の最小値である0.5kVよりも大きいため、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電40が発生する(図3(C))(第1の放電ステップ)。DC放電40が発生すると、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値は0.5kVまで小さくなる。但し、DC放電40が発生する前のウエハWの電位は−2.5kVであり、上部電極板29の電位は接地電位が維持されるので、DC放電40が発生した後のウエハWの電位(以下、「DC放電後の他の残存電位」という。)は−0.5kV(第2の所定の電位)となる。このとき、静電電極板22の電位は接地電位なので、静電電極板22及びウエハWの間の電位差は0.5kVとなる。
【0041】
次いで、直流電源24からDC放電後の他の残存電位と同じ電位である−0.5kVの直流電圧を静電電極板22へ印加し、該静電電極板22の電位を接地電位から−0.5kVとする。ここで、DC放電40の発生後の静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持されるので、ウエハWの電位も絶対値で0.5kVだけ変化して−0.5kVから−1.0kVへ変化する(図3(D))。このときも、上部電極板29の電位は接地電位のままなので、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値が増大して1.0kVとなる。この電位差の絶対値である1.0kVはDC放電が発生可能な電位差の最小値である0.5kVよりも大きいため、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電42が発生する(図3(E))(第2の放電ステップ)。DC放電42が発生すると、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値は、DC放電40の発生時と同様に、0.5kVまで小さくなる。但し、DC放電42が発生する前のウエハWの電位は−1.0kVであり、上部電極板29の電位は接地電位が維持されるので、DC放電42が発生した後のウエハWの電位はDC放電後の他の残存電位(−0.5kV)と同じ電位となる。このとき、−0.5kVの直流電圧が静電電極板22へ印加されているので、静電電極板22の電位は−0.5kVとなり、ウエハWの電位及び静電電極板22の電位が同じ電位(−0.5kV)となる。
【0042】
次いで、静電電極板22への直流電圧の印加を停止して静電電極板22の電位を−0.5kVから接地電位へ変化させる(電位変化ステップ)。ここでも、静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持されるため、ウエハWの電位も0.5kVだけ変化して−0.5kVから接地電位へ変化する。その後、ウエハWを静電チャック23から突出するピン(図示しない)等によって持ち上げ(図3(F))、処理室15内へ進入するアーム(図示しない)等によって処理室15から搬出することによってウエハWを除去し(除去ステップ)、本処理を終了する。
【0043】
基板処理装置10では直流電源24及び静電電極板22の間には抵抗が介在しないので、直流電源24及び静電電極板22の電荷の移動は速やかに行われる。したがって、本処理における静電電極板22の電位の変化に要する時間は1秒未満である。すなわち、静電電極板22を所望の値へ設定、変更するためには、静電電極板22への所望の値の直流電圧の印加を少なくとも1秒以上維持すればよい。
【0044】
図3のウエハ除去処理によれば、DC放電40が生じた後にウエハWに生じるDC放電後の他の残存電位と同じ電位である−0.5kVの直流電圧を静電電極板22へ印加することによってウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値を1.0kVまで増大させ、ウエハW及び上部電極板29の間においてDC放電42を再度生じさせる。該DC放電42が再度生じるとウエハWの電位は再びDC放電後の他の残存電位(−0.5kV)となる。このとき、静電電極板22の電位は−0.5kVであるため、ウエハWの電位及び静電電極板22の電位を同じ電位とすることができる。すなわち、ウエハW及び静電電極板22の間の電位差を無くすことができるので、ウエハWが静電チャック23に静電吸着されず、ウエハWを静電チャック23から容易に除去することができる。
【0045】
また、図3のウエハ除去処理では、DC放電42が再度生じた後であって、ウエハWの静電チャック23からの除去前に静電電極板22の電位を接地電位へ変化させる。このとき、静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持されるため、ウエハWの電位も接地電位へ変化する。その結果、ウエハWが電荷を帯びていない状態、すなわち、ウエハWにおいて異常放電が生じる可能性がない状態でウエハWを静電チャック23から除去することができる。
【0046】
上述した図3のウエハ除去処理では、DC放電後の残存電位やDC放電後の他の残存電位の絶対値が0.5kVであったが、DC放電後の残存電位やDC放電後の他の残存電位の絶対値は0.5kVに限られず、チャンバ11内の圧力又は処理ガスに含まれるガスの種類に応じて変化する。
【0047】
図4は、プラズマエッチング処理前におけるDC放電後の残存電位と、チャンバ内圧力との関係を示すグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸はDC放電後の残存電位であるウエハWの電位を示し、横軸はチャンバ11内の圧力を示す。また、静電電極板22へは2.5kVの直流電圧が直流電源24から印加されている。
【0048】
上述したように、ウエハWの電位及び静電電極板22の電位が接地電位であるときに、2.5kVの直流電圧を静電電極板22へ印加すると、静電電極板22及びウエハWの間の電位差が維持されるため、ウエハWの電位も2.5kVとなってウエハW及び上部電極板29の間の電位差の絶対値が大きくなり、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電37が発生し、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差は小さくなり、ウエハWの電位は接地電位である上部電極板29の電位に近づくが、図4のグラフに示すように、チャンバ11内の圧力が低くなるほど、ウエハWにおけるDC放電後の残存電位が高くなる。すなわち、ウエハWの電位は接地電位である上部電極板29の電位に近づいていないことが分かった。これはチャンバ11内の圧力が低いと、DC放電37が発生し難くなり、ウエハW及び上部電極板29の間で電荷が移動し難いためと考えられた。
【0049】
一方、チャンバ11内の圧力が大きくなるほど、ウエハWにおけるDC放電後の残存電位が低くなり、チャンバ11内の圧力が100mTorr(13.3Pa)以上となると、約500V(0.5kV)で一定となることが分かった。これはチャンバ11内の圧力が高いと、処理室15内においてウエハW及び上部電極板29の間の電位差に起因するDC放電37が発生し易くなり、ウエハW及び上部電極板29の間で電荷が移動し易くなり、ウエハWの電位が上部電極板29の電位へ近づくためと考えられた。
【0050】
したがって、チャンバ11内の圧力を100mTorr以上とすればDC放電37を確実に発生させることができ、また、DC放電後の残存電位の絶対値を小さくできることが分かった。
【0051】
また、本発明者は、プラズマエッチング処理前において、チャンバ11内の圧力を200mTorrとし、静電電極板22へ2.5kVの直流電圧が直流電源24から印加されている場合において、アルゴンガス(Ar)をメインとする処理ガスを用いてDC放電37を発生させたとき、DC放電後の残存電位が0.42kVとなるのに対して、酸素ガス(O)をメインとする処理ガスを用いてDC放電37を発生させたとき、DC放電後の残存電位が0.46kVとなることを確認した。すなわち、DC放電後の残存電位は処理ガスに含まれるガスの種類に応じて変化することを確認した。
【0052】
図5は、静電電極板へ印加される直流電圧と、DC放電発生後のウエハの電位との関係を示すグラフである。図5のグラフにおいて、縦軸はウエハWの電位を示し、横軸はプラズマエッチング処理前やプラズマエッチング処理後において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位を示す。また「◆」はプラズマエッチング処理前において静電電極板22へ直流電圧が印加されたとき(図2(B)及び図2(C)の状態に相当する。)におけるDC放電37の発生後のウエハWの電位(DC放電後の残存電位)を示し、「■」はプラズマエッチング処理後において静電電極板22の電位を第1の所定の電位から接地電位へ設定したとき(図3(B)及び図3(C)の状態に相当する。)におけるDC放電40の発生後のウエハWの電位(DC放電後の他の残存電位)を示す。
【0053】
まず、図5のグラフにおける「◆」の分布から、プラズマエッチング処理前において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位が1000V未満の場合、静電電極板22の電位とウエハWの電位に余り差が生じていないことが分かった。これは、静電電極板22の電位が低いと、ウエハWの電位も低くなり、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差が小さくなるので、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電37が殆ど発生せず、ウエハWの電位があまり変化しないためだと考えられた。
【0054】
一方、プラズマエッチング処理前において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位が1000V以上の場合、静電電極板22の電位にかかわらず、ウエハWの電位が約400〜500Vの間に収まることが分かった。これは、静電電極板22の電位が高いと、ウエハWの電位も高くなり、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差が大きくなるので、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電37が確実に発生し、DC放電37の維持が可能な電位(DC放電後の残存電位)でウエハWの電位の変化が止まるためだと考えられた。
【0055】
したがって、プラズマエッチング処理前にウエハW及び上部電極板29の間においてDC放電37を確実に発生させるためには、プラズマエッチング処理前において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位を1000Vとすればよいことが分かった。
【0056】
次に、図5のグラフにおける「■」の分布から、プラズマエッチング処理後において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位が1000V未満だった場合、ウエハWの電位が接地電位である静電電極板22の電位とほぼ同じであることが分かった。これは、上述したように、プラズマエッチング処理前において静電電極板22の電位が低いと、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電37が殆ど発生せず、ウエハWの電位が余り変化することがなく、静電電極板22の電位とウエハWの電位とがほぼ同じ電位である状態が、プラズマエッチング処理後も維持されるためだと考えられた。
【0057】
一方、プラズマエッチング処理後において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位が1000V以上の場合、ウエハWの電位と接地電位である静電電極板22の電位と差が大きくなり、特に、2000V以上の場合、ウエハWの電位は一定値に収束することが分かった。これは、上述したように、プラズマエッチング処理前において静電電極板22の電位が高いと、ウエハW及び上部電極板29の間でDC放電37が確実に発生し、ウエハWの電位が接地電位である上部電極板29の電位へ近づくように大きく変化して、ウエハWの電位と静電電極板22の電位との差が大きくなり、当該差がプラズマエッチング処理後のDC放電40の発生後も維持されるためだと考えられた。
【0058】
また、プラズマエッチング処理後において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位が2000V以上の場合、ウエハWの電位が一定値に収束することに関しては、ウエハW及び上部電極板29の間の電位差が大きくなるため、DC放電37がより確実に発生してDC放電37の維持が可能な電位(DC放電後の残存電位)にウエハWの電位が収束し、
ウエハWの電位がDC放電後の残存電位に収束した状態が、プラズマエッチング処理後のDC放電40の発生後のウエハWの電位にも反映されるためだと考えられた。
【0059】
したがって、プラズマエッチング処理前にウエハW及び上部電極板29の間においてDC放電37をより確実に発生させるためには、プラズマエッチング処理前において静電電極板22へ印加される直流電圧の電位を2000Vとすればよいことが分かった。
【0060】
以上、本発明について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0061】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出して実行することによっても達成される。
【0062】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0063】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0064】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0065】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0066】
上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0067】
W ウエハ
10 基板処理装置
11 チャンバ
22 静電電極板
23 静電チャック
24 直流電源
29 上部電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される静電電極板を内包する誘電体からなる静電チャック及び該静電チャックを内蔵する接地電位のチャンバを備え、前記静電チャックに静電吸着された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置における基板除去方法であって、
前記プラズマ処理後の前記静電電極板の電位を、前記プラズマ処理中の前記静電電極板の電位である第1の所定の電位に維持する電位維持ステップと、
前記静電電極板の電位を接地電位に設定して前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において直流的な放電を生じさせる第1の放電ステップと、
前記第1の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後に前記基板に生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を前記静電電極板へ印加することによって前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において前記直流的な放電を再度生じさせる第2の放電ステップと、
前記基板を前記静電チャックから除去する除去ステップとを備えることを特徴とする基板除去方法。
【請求項2】
前記除去ステップに先立って、前記第2の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後の前記静電電極板の電位を接地電位へ変化させる電位変化ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の基板除去方法。
【請求項3】
少なくとも前記第2の放電ステップにおける前記処理室内の圧力は13.3Pa(100mTorr)以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の基板除去方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理前において前記静電電極板へ印加される前記直流電圧の電位は1000V以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板除去方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理前において前記静電電極板へ印加される前記直流電圧の電位は2000V以上であることを特徴とする請求項4記載の基板除去方法。
【請求項6】
直流電圧が印加される静電電極板を内包する誘電体からなる静電チャック及び該静電チャックを内蔵する接地電位のチャンバを備え、前記静電チャックに静電吸着された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置における基板除去方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、前記基板除去方法は、
前記プラズマ処理後の前記静電電極板の電位を、前記プラズマ処理中の前記静電電極板の電位である第1の所定の電位に維持する電位維持ステップと、
前記静電電極板の電位を接地電位に設定して前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において直流的な放電を生じさせる第1の放電ステップと、
前記第1の放電ステップにおいて前記直流的な放電が生じた後に前記基板に生じる第2の所定の電位と同じ電位の直流電圧を前記静電電極板へ印加することによって前記基板及び前記チャンバの間の電位差の絶対値を増大させ、前記基板及び前記チャンバの間において前記直流的な放電を再度生じさせる第2の放電ステップと、
前記基板を前記静電チャックから除去する除去ステップとを備えることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212710(P2012−212710A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76320(P2011−76320)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】