説明

基準信号発生装置および基準信号発生方法

【課題】基準信号発生装置全体の消費電力を削減する。
【解決手段】OCXO120が、GPSモジュール110が同期信号を受信している間、当該同期信号を用いて基準信号を発生し、GPSモジュール110が同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて基準信号を発生し、温度制御部130が、GPSモジュール110が同期信号を受信している間、OCXO120の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させ、GPSモジュール110が同期信号を受信していない間は、OCXO120の温度をGPSモジュール110が同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置が送受信する信号のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生装置および基準信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線基地局等の通信装置が送受信する信号のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生装置では、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星から送信されてきた同期信号から1pps信号を取り出し、この同期信号を水晶発振器に同期させて高安定な基準信号を発生させている。
【0003】
また、GPS衛星から送信された同期信号を受信できない場合のホールドオーバ特性を確保する(同期信号を受信できないときも基準信号の周波数の安定度を保つ)ため、水晶発振器としてOCXO(Oven Control Crystal Oscillator:温度制御型水晶発信器)が用いられるものが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図11は、水晶発振器としてOCXOが用いられた一般的な基準信号発生装置の内部構成の一例を示す図である。
【0005】
図11に示した基準信号発生装置1000には、GPSモジュール1100と、OCXO1200と、CPU1301と、温度センサ1320と、ヒータ1330と、制御部1340と、D/Aコンバータ1500と、カウンタ1600とが設けられている。
【0006】
GPSモジュール1100は、GPS衛星から送信されてきた同期信号を受信し、その同期信号から1pps信号を取り出す。また、GPSモジュール1100は、取り出した1pps信号をCPU1310へ出力する。
【0007】
CPU1301は、GPSモジュール1100から出力されてきた1pps信号に基づいた所定のデータをD/Aコンバータ1500へ出力する。
【0008】
D/Aコンバータ1500は、CPU1301から出力されてきたデータを、デジタル信号からアナログ信号へ変換してOCXO1200へ出力する。
【0009】
OCXO1200は、水晶発振器であるXTAL1201から構成されている。
【0010】
XTAL1201は、D/Aコンバータ1500から出力されてきた信号を用いて、基準信号を生成し、カウンタ1600へ出力する。
【0011】
温度センサ1320は、OCXO1200の内部の温度を測定する。また、温度センサ1320は、測定した温度を制御部1340へ通知する。
【0012】
制御部1340は、温度センサ1320から通知された温度に基づいて、ヒータ1330へ所定の温度を指示する。
【0013】
ヒータ1330は、OCXO1200の内部の温度を、制御部1340から指示された温度に保つ。
【0014】
なお、温度センサ1320およびヒータ1330は、OCXO1200に含まれているものであっても良い。
【0015】
カウンタ1600は、OCXO1200から出力されてきた基準信号に基づいた分周信号を生成して、CPU1301および外部へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−217713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したような基準信号発生装置においては、水晶発振器が発生する基準信号の精度が外の環境に左右されないように、内部温度が90℃程度の高い温度に保たれている。
【0018】
そのため、水晶発振器をこのような高温に保温するための電力が必要となり、基準信号発生装置全体の消費電力が大きくなってしまうという問題点がある。
【0019】
本発明の目的は、上述した課題を解決する基準信号発生装置および基準信号発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の基準信号発生装置は、
処理のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生装置であって、
GPS衛星から送信された同期信号を受信するGPSモジュールと、
前記GPSモジュールが前記同期信号を受信している間、該同期信号を用いて前記基準信号を発生し、前記GPSモジュールが前記同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて前記基準信号を発生する発振器と、
前記GPSモジュールが前記同期信号を受信している間、前記発振器の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させ、前記GPSモジュールが前記同期信号を受信していない間は、前記発振器の温度を前記GPSモジュールが前記同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる温度制御部とを有する。
【0021】
また、本発明の基準信号発生方法は、
処理のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生方法であって、
GPS衛星から送信された同期信号を受信する処理と、
前記同期信号を受信している間、該同期信号を用いて前記基準信号を発振器から発生させる処理と、
前記同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて前記基準信号を前記発振器から発生させる処理と、
前記同期信号を受信している間、前記発振器の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる処理と、
前記同期信号を受信していない間、前記発振器の温度を前記同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる処理とを行う。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明においては、基準信号発生装置全体の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の基準信号発生装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した基準信号発生装置において、GPSモジュールが同期信号を受信してから、周波数をコントロールするための値がD/Aコンバータのテーブルに記憶されるまでの処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】水晶発振器の経時変化について、時間と周波数との変化の様子の一例を示す図である。
【図4】本発明においてOCXO内の温度の決定方法の概念を示す図である。
【図5】図1に示した基準信号発生装置において、ホールドオーバかどうかを判定する処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートに示したステップS16の処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図7】OCXOの設定温度と周囲温度との温度差と、消費電力との関係を示す図である。
【図8】年間を通じての消費電力の遷移の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の基準信号発生装置の実施の他の形態を示す図である。
【図10】図9に示したCPUの内部構造の一例を示す図である。
【図11】水晶発振器としてOCXOが用いられた一般的な基準信号発生装置の内部構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の基準信号発生装置の実施の一形態を示す図である。
【0026】
本形態における基準信号発生装置100には図1に示すように、GPSモジュール110と、OCXO120と、温度制御部130と、温度計140と、D/Aコンバータ150と、カウンタ160とが設けられている。
【0027】
GPSモジュール110は、GPS衛星から送信されてきた同期信号を受信する。また、GPSモジュール110は、受信した同期信号から1pps信号を取り出す。また、GPSモジュール1100は、取り出した1pps信号を温度制御部130へ出力する。
【0028】
OCXO120は、GPSモジュール110が同期信号を受信している間、受信した同期信号を用いて基準信号を発生し、GPSモジュール110が同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて基準信号を発生する発振器である。この基準信号は、無線基地局等の通信装置にて、処理のタイミングの基準となる信号である。
【0029】
また、OCXO120は、水晶発振器であるXTAL121から構成されている。
【0030】
温度計140は、基準信号発生装置100の外部の温度を測定する。
【0031】
温度制御部130は、GPSモジュール110が同期信号を受信している間、OCXO120の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる。また、温度制御部130は、GPSモジュール110が同期信号を受信していない間は、OCXO120の温度をGPSモジュール110が同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる。
【0032】
また、温度制御部130は、OCXO120の温度を温度計140が測定した温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる。
【0033】
また、温度制御部130は、OCXO120の温度を、温度計140が所定の期間、測定した温度のうちの最高となる温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる。
【0034】
なお、温度制御部130は、CPU131と、OCXO120の内部の温度を測定する温度センサ132と、OCXO120の内部の温度を所定の温度に設定する(保つ)ヒータ133とから構成され、これらを用いて、上述した動作を行う。また、CPU131は、GPSモジュール110から出力されてきた1pps信号に基づいた所定のデータをD/Aコンバータ150へ出力する。
【0035】
D/Aコンバータ150は、CPU131から出力されてきたデータを、デジタル信号からアナログ信号へ変換してOCXO120へ出力する。
【0036】
カウンタ160は、OCXO120から出力されてきた基準信号に基づいた分周信号を生成して、CPU131および外部へ出力する。
【0037】
以下に、図1に示した基準信号発生装置100における動作について説明する。
【0038】
図2は、図1に示した基準信号発生装置100において、GPSモジュール110が同期信号を受信してから、周波数をコントロールするための値がD/Aコンバータ150のテーブルに記憶されるまでの処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0039】
まず、GPSモジュール110によって、GPS衛星から送信されてきた同期信号が受信されると、受信された同期信号から1ppsの信号(UTC(Universal Time, Coordinated:協定世界時)の1秒に同期した信号、以下、1pps信号と称する)が取り出される(ステップS1)。
【0040】
すると、GPSモジュール110によって取り出された1pps信号がGPSモジュール110からCPU131へ出力される。ここで、GPS衛星から送信されてくる同期信号は、長期的には非常に精度の良い時刻信号であるが、短期的な揺らぎを持っている。そこで、このGPSモジュール110によって取り出された1pps信号にOCXO120が同期するように制御し、OCXO120から出力された信号をカウンタ160を用いて分周して1秒周期としたものを無線基地局等の通信装置で用いる1pps基準とする。これにより、常に精度の良い基準信号を得ることができる。
【0041】
すると、CPU131にて、GPSモジュール110から出力されてきた1pps信号と、OCXO120(周波数を10MHzとする)の出力信号をカウンタ160にて1/10000000分周した信号とが比較され(ステップS2)、OCXO120の発振周波数が制御されて同期する。つまり、比較周波数が1HzのPLL(Phase Locked Loop)を形成しており、非常に低速であるため、ハードウェアロジックでなくともCPUの演算制御にて実現ができる。ここで、比較周波数が1Hzと非常に低いため、PLLのループバンドはmHzオーダとなる。
【0042】
CPU131における演算でループフィルタが構成され、演算されたデジタル値がD/Aコンバータ150にてアナログ変換され、OCXO120の周波数制御端子に入力されて、周波数がコントロールされる(ステップS3)。
【0043】
この経時変化は、OCXO120の制御値すなわちD/Aコンバータ150の設定値が変わっていくことにより判る。そのため、GPSモジュール110がGPS衛星から送信されてきた同期信号を受信できない場合(ホールドオーバ時)のD/Aコンバータ150の設定値推定に使用するためテーブルに記憶しておく(ステップS4,S5)。
【0044】
また、カウンタ160から出力された1pps信号の位相と、GPSモジュール110から出力された1pps信号の位相とを合わせる必要があるが、これは、起動時にCPU131からカウンタ160にプリセット値がセットされて合わせ込みが実施される。
【0045】
GPSモジュール110がGPS衛星から送信されてきた同期信号を受信できない場合は、ホールドオーバモードとなり、PLLによってOCXO120が制御されるのではなく、CPU131からD/Aコンバータ150へ固定値が送られて周波数が固定される。
【0046】
また、OCXO120は温度が一定に保たれてはいるが、経時変化にて周波数が変化してしまう。
【0047】
そこでCPU131は、その経時変化を補償するようにD/Aコンバータ150から出力される出力電圧を制御する。
【0048】
制御電圧はGPS衛星を捕捉した時に、常時データを取得しておき、GPS衛星から送信されてきた同期信号が受信できない場合は、過去に取得したデータからの近似式で推定をおこなう。
【0049】
図3は、水晶発振器の経時変化について、時間と周波数との変化の様子の一例を示す図である。
【0050】
図3に示すように、初期状態では周波数は大きく動くが、時間が経過していくにつれて、周波数変化が徐々に少なくなっていく。また、XTAL121の発振周波数は温度により変化する。そのため、無線基地局に使用する基準信号発生装置にとっては温度による影響は無視できない。
【0051】
ここで、OCXO120内の温度を一定に保つことで、XTAL121の温度の影響による周波数変化をなくすことができるため、OCXO120内の温度を一定にするように制御を行う。OCXO120が保持される温度は、CPU131にて制御される。また、XTAL121の直近に温度を測定する温度センサ132があり、温度センサ132にて測定された測定値はCPU131へ通知される。また、ヒータ133にてOCXO120の内部温度を一定に保つように上昇させる。このように、CPU131は、あらかじめ設定された一定の温度になるよう、温度センサ132における計測値に基づいてヒータ133を制御する。
【0052】
図4は、本発明においてOCXO120内の温度の決定方法の概念を示す図である。
【0053】
図1に示した温度計140は、長期的な周囲温度、つまり気温を測定している。特に、屋外設置装置は1日のうちで周囲温度が大きく変化するが、OCXO120の内部設定温度は周囲温度の影響を受けないように1日の周囲最高温度よりも所定の温度だけ高めに設定しておく。
【0054】
図4に示すように、周囲温度の移動平均気温(破線で示したもの)をとり、OCXO120の内部設定温度を、この温度よりも20℃高めに設定する。周囲温度の長期移動平均をとるためOCXO120の設定温度の変化は、日単位の非常にゆっくりしたものとする。なお、この20℃は、その使用状況に応じて適宜変更可能である。
【0055】
ここで、OCXO120内の内部温度が設定した温度で一定になるように、CPU131はヒータ133のON・OFF制御をする。図4に実線で示したように、季節により周囲温度が下がれば設定温度も下がるため、常に90℃程度の高い温度に設定していた従来の装置と比べて、消費電力を削減することができる。
【0056】
次に、ホールドオーバ状態の温度制御について説明する。
【0057】
図5は、図1に示した基準信号発生装置100において、ホールドオーバかどうかを判定する処理を説明するためのフローチャートである。
【0058】
まず、GPSモジュール110によって信号が受信され(ステップS11)、受信された信号から同期信号が捕捉できたかどうかがCPU131によって判定される(ステップS12)。この判定は、上述した1pps信号を取り出すことができたかどうかに基づいて判定するものであっても良い。
【0059】
同期信号が捕捉できたと判定された場合、温度制御部130によって、OCXO120の温度が、温度計140が測定した周囲温度に応じた設定値(可変)となり(ステップS13)、通常の処理が行われる(ステップS14)。つまり、温度制御部130によって、OCXO120の温度が、周囲温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化する。この通常の処理では、図2に示したフローチャートを用いて説明した処理が行われる。
【0060】
一方、ステップS12にて、同期信号が捕捉できなかったと判定された場合は、ホールドオーバモードとなり、温度制御部130によって、OCXO120の設定温度がホールドオーバになった際(同期信号を受信しなくなったとき)の値で固定される(ステップS15)。そして、ホールドオーバ処理が行われる(ステップS16)。
【0061】
図6は、図5のフローチャートに示したステップS16の処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0062】
ホールドオーバ時は、GPSモジュール110が取り出す1pps信号を用いてOCXO120の周波数同期ができないため、温度変化をなくすことで周波数安定度を良くする。経時変化に関しては、過去に取得したデータからの近似式に基づいて、OCXO120を制御する。ホールドオーバ時の性能保証は最長で24時間程度であるが、温度の影響は排除し、経時変化の影響だけを制御することで周波数の安定度を保つ。
【0063】
具体的には、現在の温度データが取得され(ステップS21)、D/Aテーブルの読み出しを行うことにより(ステップS22)、経時変化が推定される(ステップS23)。また、推定されたデジタル値がD/Aコンバータ150にてアナログ変換され、OCXO120の周波数制御端子に入力されて、周波数がコントロールされる(ステップS24)。
【0064】
以上説明したように、本発明では、周囲温度の変化に応じて、OCXO120内の温度を制御することで消費電力を削減することができる。
【0065】
通常運用時は、GPS衛星から送信されてきた同期信号に同期させる。一方、ホールドオーバ時は、OCXO120内の温度を固定にすることで周波数の安定度も高めることができる。
【0066】
図7は、OCXO120の設定温度と周囲温度との温度差と、消費電力との関係を示す図である。
【0067】
図7に示すように、温度差が大きくなればなるほど消費電力が上がる傾向がある。
【0068】
図8は、年間を通じての消費電力の遷移の一例を示すグラフである。
【0069】
一般的な技術では、周囲温度が高い夏場はOCXOの内部温度と周囲温度との温度差が少なく、冬場は90℃付近に設定されるOCXOの内部温度と周囲温度との温度差が大きいため、特に冬場は消費電力が増大してしまう。
【0070】
一方、本発明では夏冬通してOCXO120の設定温度が周囲温度にあわせて可変され、OCXO120の設定温度と周囲温度との差がほぼ一定に保たれる。そのため、消費電力は年間を通じてほぼ一定となる。このように、本発明では年間トータルの消費電力を削減できる効果がある。
【0071】
図9は、本発明の基準信号発生装置の実施の他の形態を示す図である。
【0072】
本形態における基準信号発生装置200には図9に示すように、GPSモジュール110と、OCXO120と、温度制御部230と、D/Aコンバータ150と、カウンタ160とが設けられている。
【0073】
GPSモジュール110、OCXO120、D/Aコンバータ150およびカウンタ160は、図1に示したものと同じである。
【0074】
なお、GPSモジュール110は、GPS衛星から基準信号発生装置100の位置を示す位置情報を取得する。
【0075】
温度制御部230は、OCXO120の温度を、GPSモジュール110が取得した位置情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる。このとき、温度制御部230は、OCXO120の温度を、GPSモジュール110が取得した位置情報のうちの緯度経度情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させるものであっても良い。また、このとき、温度制御部230は、OCXO120の温度を、GPSモジュール110が取得した位置情報のうちの高度情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させるものであっても良い。これらの制御は、CPU231によって行われる。
【0076】
つまり、CPU231は、GPSモジュール110が取得した緯度経度情報と年月情報とに基づいて地域ごとの平均気温情報をテーブルから読み出して使用する。地域ごとの平均気温データベースは、日本国内に設置される場合、それほど細かい地域が必要なわけではなく、全国を10個程度のブロックに分けたデータベースでも実用的に十分である。さらに、CPU231は、GPSモジュール110が取得した高度情報をもとに標高補正(0.6℃/100m)を実施して平均気温を算出するものであっても良い。
【0077】
図10は、図9に示したCPU231の内部構造の一例を示す図である。
【0078】
図9に示したCPU231には図10に示すように、GPS情報取得部232と、地域別平均気温データベース233と、高度補正部234とが設けられている。
【0079】
GPS情報取得部232は、GPSモジュール110が取得した情報(緯度経度情報、年月情報、高度情報等)を取得する。
【0080】
地域別平均気温データベース233は、緯度経度情報および年月情報に応じた気温情報をあらかじめ記憶するデータベースである。また、地域別平均気温データベース233は、GPS情報取得部232が取得した緯度経度情報および年月情報を検索キーとして、それらに応じた平均気温を検索する。また、地域別平均気温データベース233は、検索した平均気温を高度補正部234へ出力する。
【0081】
高度補正部234は、GPS情報取得部232が取得した高度情報に基づいて、地域別平均気温データベース233から出力されてきた平均気温を補正する。この補正方法は、高度に対する気温の変化のデータをあらかじめ取得しておき、取得したデータに基づいて補正するものであっても良い。
【0082】
なお、図10に示した構成要素が行う処理は、ハードウェアによって実現されるものであっても良いし、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって実現されるものであっても良い。
【0083】
なお、本発明は特にWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やWIMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)の無線基地局など、低消費電力が求められる装置への応用が有用である。
【符号の説明】
【0084】
100,200 基準信号発生装置
110 GPSモジュール
120 OCXO
130,230 温度制御部
131,231 CPU
132 温度センサ
133 ヒータ
140 温度計
150 D/Aコンバータ
160 カウンタ
232 GPS情報取得部
233 地域別平均気温データベース
234 高度補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生装置であって、
GPS衛星から送信された同期信号を受信するGPSモジュールと、
前記GPSモジュールが前記同期信号を受信している間、該同期信号を用いて前記基準信号を発生し、前記GPSモジュールが前記同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて前記基準信号を発生する発振器と、
前記GPSモジュールが前記同期信号を受信している間、前記発振器の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させ、前記GPSモジュールが前記同期信号を受信していない間は、前記発振器の温度を前記GPSモジュールが前記同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる温度制御部とを有する基準信号発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基準信号発生装置において、
当該基準信号発生装置の外部の温度を測定する温度計を有し、
前記温度制御部は、前記発振器の温度を前記温度計が測定した温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基準信号発生装置において、
前記温度制御部は、前記発振器の温度を、前記温度計が所定の期間、測定した温度のうちの最高となる温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基準信号発生装置において、
前記発振器は、前記GPSモジュールが前記同期信号を受信していない間、過去に取得したデータに基づいて推定された値を用いて前記基準信号を発生することを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基準信号発生装置において、
前記GPSモジュールは、前記GPS衛星から当該基準信号発生装置の位置情報を取得し、
前記温度制御部は、前記発振器の温度を前記位置情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基準信号発生装置において、
前記温度制御部は、前記発振器の温度を前記位置情報のうちの緯度経度情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項7】
請求項5に記載の基準信号発生装置において、
前記温度制御部は、前記発振器の温度を前記位置情報のうちの高度情報に応じた温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項8】
請求項1に記載の基準信号発生装置において、
前記発振器は、OCXOであることを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項9】
処理のタイミングの基準となる基準信号を発生する基準信号発生方法であって、
GPS衛星から送信された同期信号を受信する処理と、
前記同期信号を受信している間、該同期信号を用いて前記基準信号を発振器から発生させる処理と、
前記同期信号を受信していない間は、あらかじめ設定された値を用いて前記基準信号を前記発振器から発生させる処理と、
前記同期信号を受信している間、前記発振器の温度を所定の温度よりもあらかじめ設定された温度だけ高い温度で変化させる処理と、
前記同期信号を受信していない間、前記発振器の温度を前記同期信号を受信しなくなった際の温度に固定させる処理とを行う基準信号発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−151797(P2012−151797A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10784(P2011−10784)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】