説明

基準回路

基準回路(200,300)は、第2のトランジスタ(Q2,222)に動作可能に結合された第1のトランジスタ(Q1,220)を備え且つ基準回路の正の温度依存性に対応するそれぞれのベース電流(IbQ1,IbQ2)を有する第1の電流発生器を備える。抵抗(r3228)は、第1の電流発生器に動作可能に結合され、且つ基準回路の負の温度依存性に対応する第2の電流(Ir3)を与えるよう構成されている。第2の電流発生器(m4224)が、抵抗及び第1の電流発生器に動作可能に結合され、第2の電流(Ir3)及びベース電流(IbQ1,IbQ2)の和として組み合わされた電流(I2)を発生する。このようにして、湾曲補償した電圧及び/又は電流基準回路の出力電圧は、実質的に線形であり、そして当該基準回路の動作温度に対して実質的に独立である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧及び電流基準回路に関する。本発明は、基準回路、及び温度に対して独立で且つ湾曲補償したサブバンドギャップ電圧及び電流基準を与える構成に適用可能であるが、これらに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
電圧基準回路は、信頼性良い電圧値を与えるため多種多様な電子回路で必要とされている。特に、そのような回路は、多くの場合、信頼性良い電圧値が電子回路内の温度変化、又は電子回路内の部品に及ぼす温度変化の影響から実質的に独立にされることを保証するよう設計される。従って、とりわけ、電圧基準の温度安定性が、キー要因である。これは、特に、例えば、全データ捕捉機能の精度を要求する、システムオンチップ技術のような将来の通信製品及び技術のための一部の電子回路では重大である。
【0003】
本発明の分野では、バンドギャップ電圧基準は半導体バンドギャップ電圧に非常に近い出力電圧を生成することが知られている。シリコンについては、この値は、約1.2Vである。従って、サブバンドギャップ電圧は、シリコンについては、1.2Vより下であると理解される。
【0004】
一般的に、バンドギャップ電圧基準出力を発生するため用いられる2つの既知の基本的構成要素がある。そのような電子回路の第1の構成要素は、通常、直接にバイアスされたダイオード、例えば、負の温度係数を有する、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)デバイスのベース−エミッタ電圧である。そのような電子回路の第2の構成要素は、絶対温度電圧に比例する出力を与えるように構成されている直接にバイアスされたダイオードの電圧差である。従って、これらの構成要素の出力を適切な比で組み合わせることにより、その出力の和は、温度に対して殆ど独立である電圧基準を与えることができる。とりわけ、電流電子回路においては、そのような条件下でのバンドギャップ電圧基準の出力電圧は、ほぼ1.2Vである。
【0005】
不都合にも、バイポーラ・トランジスタのベース−エミッタ電圧は、トランジスタ温度と共に直線的に変化しない。従って、2つの構成要素のみを上記の要領で加算する単純なバンドギャップ回路は、出力の放物線状の湾曲応答及び2次の温度依存性を有する。従って、電圧基準の温度安定性を増大するため、2次の補償回路が、一般的に適用されている。
【0006】
電圧基準の温度依存性は、式(1)に示されるように、順方向にバイアスされたバイポーラ・トランジスタのベース−エミッタ電圧の温度依存性に見ることができる。
【0007】
【数1】

【0008】
ここで、
Vgo:これは、‘0’ケルビン度まで外挿されたシリコンのバンドギャップ電圧である。
【0009】
VbeR:これは、温度Tでのベース−エミッタ電圧である。
【0010】
T:これは、動作温度である。
【0011】
:これは、基準温度である。
【0012】
n:これは、プロセスに依存するが、しかし温度に対して独立であるパラメータである。
【0013】
x:これは、バイアス電流がPTATである場合1に等しく、そして電流が温度に対して独立であるとき‘0‘に行く、即ち、ダイオードを流れる電流が温度に依存しないとき、Vbeは、それ自身の温度パラメータに従って変化する。ダイオードを流れる電流が温度に依存するケースでは、Vbeは、それ自身及び電流温度パラメータに従って変化する。従って、バイアス電流が温度に直線的に比例する場合、x=1であり、バイアス電流が温度に対して独立である場合、x=0である。
【0014】
k:これは、ボルツマン定数である。
【0015】
q:これは、電子の電荷である。
【0016】
式(1)において、第1項は定数であり、第2項は温度の線形関数であり、最後の項は非線形関数であることが分かる。1次バンドギャップ基準回路においては、式(1)からの線形項(第2項)のみが、通常補償される。式(1)からの非線形項は、補償されないままであり、それにより出力の放物線状湾曲を生成する。
【0017】
図1は、従来の1次バンドギャップ基準回路の概略図100を示し、そこにおいては、出力電圧VREF125は、正確な1次温度補償を有すると仮定される。当該基準回路は、Q1120、Q2 122、m4 124、r1126、及び電流ミラー110、112に基づく正及び負の温度依存性電流発生器から成る。当該基準回路は更に、出力段130を備え、当該出力段130は、抵抗r2と、ダイオードとしてのQ3とに基づいている。Q1120は、負の温度依存性電流を生成する。Q1 120とQ2 122との間のVbe差は、抵抗r1 126に印加される。その結果、Q2エミッタ電流は、ΔVbeをr1 126で除したものに比例し、そして正の温度依存性を有する。
【0018】
電流ミラーm1 110、m2 112、及びトランジスタQ1120、Q2 122及びm4 124は、負のフィードバックを生成して、Q1120のコレクタ電流及びm1 110のドレーン電流を補償する。電流ミラーm2 112及びm3 114は、Q2 122のコレクタ電流に比例するm3ドレーン電流を生成する。トランジスタm4124及び電流ミラーm5 116及びm6 118は、Q1120及びQ2 122のベース電流に比例するm6ドレーン電流を形成する。m3 114及びm6 118の両方のドレーン電流は、出力段130を通るよう流れ、それにより負の温度依存性を有するダイオードQ3及び正の温度依存性を有する抵抗r2の上に或る電圧降下を生成する。それらの温度係数が互いに等しいケースでは、出力電圧(125)は、温度補償されるであろう。
【0019】
正確な1次の温度補償は、次式により表される。
【0020】
【数2】

【0021】
ここで、
VrefBG:これは、バンドギャップ基準の出力電圧である。
【0022】
従って、従来のバンドギャップ基準の出力電圧125は、Vgoあたりであり、それは、式(2)からの非線形項によって生じる5〜7ミリボルト(mV)の放物線状湾曲を持つほぼ1.2Vである。
【0023】
しかしながら、高性能の電気装置、特に、携帯型通信装置においては、1.5V又はそれより低い供給電圧を用いることを必要とする傾向にある。従って、オーディオ・プレーヤ又はカメラのようなバッテリ給電型携帯装置の場合の本発明の文脈においては、1.5Vは、バッテリ電圧源、例えば、‘A’サイズに関して初期電圧である。バッテリが「放電」される場合、電圧は、1Vより下に落ちる。
【0024】
米国特許No.6,157,245は、異なる温度依存性を有する3つの電流の発生を一緒に用い、そして正確な湾曲補償の方法を採用する回路を記載する。米国特許No.6,157,245で提案された回路の重大な欠点は、それが5個の「極めて一致した」キロオーム抵抗、即ち、22.35、244.0、319.08、937.1及び99.9キロオームの抵抗を提案していることである。大きい抵抗比(最大1:42)及びその比の大きい広がり(1:4.5から1:42まで)が問題であり、そして抵抗の過剰な不一致が予想されるであろう。
【0025】
更に、5個の抵抗を正確に且つ臨界的に一致させるよう試みるトリミング処置は、実際に用いるべき回路にとって高価になり過ぎる。従って、そのような回路は、大量生産のデバイスには非常に非現実的である。
【0026】
P.Malcovati他による題名が「1V供給電圧を有する湾曲補償したBiCMOSバンドギャップ(Curvature−Compensated BiCMOS Bandgap with 1−V Supply Voltage)」であり固体回路のIEEEジャーナル(IEEE Journal of Solid−State Circuits)Vol.36,No.7で2001年7月に発行された論文(1076−1081頁)はまた、演算増幅器、5個の極めて一致した抵抗、並びに3個の極めて一致されたバイポーラ・トランジスタのグループを含む複雑な回路を提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従って、本発明の分野において、とりわけ電流サブバンドギャップ電圧基準に匹敵する温度安定性を有する1.2Vのフラクション(fraction)を発生することができるサブバンドギャップ電圧基準に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
従って、本発明の好適な実施形態は、単独で、又はいずれかの組み合わせで、上記で言及した欠点の1つ又はそれより多い欠点を好ましくは緩和し、軽減し、又は排除しようとするものである。
【0029】
本発明に従って、添付の特許請求の範囲に記載された基準回路が提供される。
【0030】
本発明の例示的実施形態が、ここで添付図面を参照して説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好適な実施形態が、サブバンドギャップ電圧基準回路の設計及び動作を改善することを参照して説明される。しかしながら、本明細書で説明される発明概念はサブバンドギャップ電流基準回路に等しく適用可能であることは、本発明の意図内である。
【0032】
とりわけ、図1の従来技術の回路においては、出力電圧は、ダイオードQ3の両端間の電圧降下により制限され、それは、ダイオードのサイズ及び流れる電流に依存する値(通常0.6V−0.8V)より下に低減されることができない。しかしながら、本発明の好適な実施形態は、抵抗r2及び電流値I1及びI2に比例する出力電圧を与える回路を提案する。このようにして、r2、I1及びI2に対して適切な値を選択することにより出力電圧を0.6Vより下に調整することが可能である。
【0033】
本発明の好適な実施形態は、サブバンドギャップ基準に関して直裁的な湾曲補償を獲得するよう構成されたバイポーラ及びCMOSトランジスタ回路から成る。とりわけ、これらのサブ回路は、基準の出力電圧が実質的に線形で且つ動作温度に対して独立であるように組み合わされる。本明細書で説明される発明概念は純粋のバイポーラ回路構成に等しく適用可能であることが想定されている。それは、純粋のバイポーラ回路構成がバイポーラ・ダイオードの指数関数的温度依存性Vbeに実質的に基づいているからである。
【0034】
本発明の好適な実施形態は、3つの電流を発生するそれぞれのサブ回路を提案する。第1の電流は、絶対温度に比例する。第2の電流は、バイポーラ・トランジスタのベース−エミッタ電圧に比例する。第3の電流は、ベース−エミッタ電圧における非線形項に比例し、そして温度に依存する。とりわけ、これら電流は、それらの和が電流対温度の1次の関係及び2次の関係の両方に関して温度に対して独立であるような比で与えられる。3つの電流の和は、出力抵抗により温度に対して独立である出力電圧を与えるよう構成される。
【0035】
図2は、提案されたサブバンドギャップ電圧基準回路200の単純化されたトポロジーを示す。図2に示されるサブバンドギャップ電圧基準回路200は、PTAT電流発生器及びVbe/R電流発生器220、222、電流ミラー210−218、及び抵抗r2230を有し且つ接地に接続された出力段を備える。PTAT電流発生器は、NPNトランジスタQ1 220及びQ2 222、抵抗r1 226、NMOSトランジスタm4224及び能動電流ミラー回路CM1 210、212及び214を備える。
【0036】
抵抗r3 228は、Q1 220のVbeを抵抗r3228の値で除した値に比例する電流を生成する。その結果、m4 224のドレーン電流I2は、Q1220、Q2 222のベース及び抵抗r3 228の和である。電流I1及びI2は、それに応じて正及び負の温度依存性を有する。抵抗r2 230を流れる両方の電流I1及びI2は、バンドギャップ・レンジ(bandgap range)に比例する出力電圧225を発生する。
【0037】
電流ミラー回路CM1は、トランジスタQ1及びQ2のコレクタ電流を強制的に等しくさせる(一般的に、Q1及びQ2のコレクタ電流は、M:Kとして関連付けることができる。)。PTAT電流に関する式は、コレクタ電流のベース−エミッタ電圧依存性に従う。
【0038】
とりわけ、図2の回路トポロジーは、図1の既知の回路を超えた多数の新しく且つ強化された特徴を与える。即ち、
(i)基準電圧は、回路の温度安定性に影響を与えることなしにr2抵抗の値を変えることにより、ゼロ(接地電位)から最大VCC(供給電圧電位)までの任意の都合良い値に自由に調整されることができる。
【0039】
(ii)温度補償された単純な電流基準が、容易に得ることができる。ソース電流は、r2抵抗が除かれる場合回路の出力端子で使用可能である。シンク電流がNPN電流ミラー又はNMOS電流ミラーのいずれかを使用することで生成されることができることが有利である。
【0040】
(iii)図2のサブバンドギャップ電圧基準は、以下で説明されるように、正確な湾曲補償回路網を用いて、容易に「グレードアップ(増強)」されることができる。従って、回路の温度安定性は、実質的に改善される。
【0041】
本発明の好適な実施形態に適用される正確な湾曲補償の説明を以下に与える。
【0042】
従来の1次バンドギャップ基準の出力電圧は、次式のように表されることができる。
【0043】
【数3】

【0044】
ここで、
CSは、コレクタの飽和電流であり、
‘m’は、非理想化係数であり、
Vtは、熱電圧、即ち、Vt=kT/qであり、そして(Icqi=IcQ2=I1を仮定すると)次式のように表されることができる。
【0045】
【数4】

【0046】
ここで、
I1は、PTAT電流であり、
Nは、Q2及びQ1のエミッタ面積比である。
【0047】
図2から、Vbe/R電流発生器は、r1 226及びr3 228を有するNPNトランジスタQ1 220及びQ2 222、NMOSトランジスタm4224、及び電流ミラー回路CM2 216、218を備える。従って、Vbe/R電流発生器は、次のとおりの出力電流を生成する。
【0048】
【数5】

【0049】
ここで、
I2は、Vbe/R電流であり、
VbeQ1は、トランジスタQ1 220のベース−エミッタ電圧であり、
IbQ1及びIbQ2は、Q1 220トランジスタ及びQ2 222トランジスタのそれぞれのベース電流である。
【0050】
図1及び図2の回路を比較すると、図1からのトランジスタm4 124はQ1 120及びQ2 122に対するベース駆動を与える「ベータ・ヘルパ(beta helper)」としてのみ用いられていることを分かることができる。しかしながら、図2の回路のm4トランジスタ224は、追加の機能、即ち、Vbe/R電流の発生を与えることが有利である。従って、図2のトランジスタm4224は、2つの機能を実行する。即ち、
(i)それは、負の温度電流を発生し、
(ii)それは、非線形を同時に補償するためQ1、Q2ベース電流を与える。
【0051】
従って、機能の統合化、即ち、好適な実施形態におけるm4の増大された機能は、回路設計に過剰な複雑さを与えることなしにデバイス性能の新しい質を生成するキー要因である。とりわけ、図2におけるI1及びI2電流は、それらの和が電流対温度の1次の関係に関して温度に対して独立であるような比例で加えられる。
【0052】
(Vbe/r3)>>(IbQ1+IbQ2)
を仮定すると、温度に対する独立性の条件は、式(6)に示されるように、式(1)、(4)及び(5)から導出することができる。
【0053】
【数6】

【0054】
ここで、
‘e’は、ベース−エミッタ電圧の線形化された温度係数であり、
VbeQ1Rは、温度TにおけるトランジスタQ1のベース−エミッタ電圧である。
【0055】
I1及びI2の電流の和は、出力抵抗r2を流れ、次のような温度に対して独立である電圧降下(1次で)を生成する。
【0056】
【数7】

【0057】
ここで、VrefsBGは、サブバンドギャップ基準の出力電圧である。
【0058】
従って、提案された1次サブバンドギャップ基準の出力電圧は、VrefsBG×r2/r3であり、式(7)から非線形項により生じる類似の放物線状湾曲を有する。1次サブバンドギャップ基準の出力電圧の典型的な温度依存性が、図4に示されている。
【0059】
ここで図3を参照すると、本発明の2次補償回路の強化された実施形態の単純化された概略図が示されている。要約すると、図3に提示された回路は、図2に示された回路に似ているが、しかし追加の補償回路網を有する。この追加の補償回路網は、PMOSトランジスタm7及びm8340、ダイオード接続バイポーラ・トランジスタQ3 330及び抵抗r4 350を備える。これらの追加の全ての構成要素は、上記で説明されたように、正確な湾曲補償を達成するため図3に示される要領で組み合わさる。
【0060】
式(1)から続いて、式(4)のPTAT電流I1によりバイアスされた図2のQ1トランジスタのベース−エミッタ電圧は、次式のように与えられることができる。
【0061】
【数8】

【0062】
ここで、‘x’は、バイアス電流がPTATであるので、‘1’に等しい。
【0063】
ダイオード接続バイポーラ・トランジスタQ3は、強化された実施形態においては、3つの電流I1、I2及びI3の和によりバイアスされる。I1及びI2の和は、(式(4)、式(5)及び式(6)で示されるように)温度の1次に対して独立である。以下で示されるように、I3電流は、3つの電流I1、I2及びI3の和の温度独立性を高める。従って、Q3トランジスタのベース−エミッタ電圧は、次式により与えられることができる。
【0064】
【数9】

【0065】
ここで、‘x’は、バイアス電流が温度に対して独立であるので、‘0’に等しい。
【0066】
Q1及びQ3のベース−エミッタ電圧間の差は、式(8)及び式(9)から導出されることができる。
【0067】
【数10】

【0068】
ここで、
VbeQ1Rは、温度TにおけるトランジスタQ1のベース−エミッタ電圧であり、
VbeQ3Rは、温度TにおけるトランジスタQ3のベース−エミッタ電圧である。
【0069】
式(10)の第1項がゼロに等しくされるならば、Q1のベース−エミッタ電圧とQ3のベース−エミッタ電圧との差は、補償されねばならない湾曲電圧にのみ比例することになる。
【0070】
VbeQ1R値とVbeQ3R値とを等しくするため、基準温度におけるQ1とQ3のエミッタ電流密度は、等しくされねばならない。Q1を流れる電流は、I1である。Q3を流れる電流は、I1+I2(1次で)である。しかしながら、T=TにおいてI2=I1である。従って、VbeQ1R値とVbeQ3R値とを等しくする最も単純なやり方は、図3に示されるように、Q3を、並列に接続される2つのQ1トランジスタとして用いるやり方である。
【0071】
従って、
【0072】
【数11】

【0073】
式(11)で表された電圧差は、抵抗r4の両方のピン間に印加され、それにより次の非線形の電流I3を生成する。
【0074】
【数12】

【0075】
図2において、非線形電流I3及びVbe/R電流I2の和は、電流ミラー回路CM2に起因して、m4トランジスタ及び出力抵抗r2の両方を流れる。従って、トランジスタm4は、それがまた非線形電流発生に貢献するように、新しい追加の機能を生成する。
【0076】
ここで、基準電圧に関する式が、式(1)、(4)、(5)、(6)及び(12)を用いて、次式のように導出されることができる。
【0077】
【数13】

【0078】
とりわけ、式(13)には2つの非線形項が存在する。本発明の好適な実施形態に従って、正確な湾曲補償が、式(13)における両方の非線形項が削除されるとき達成されることができる。
【0079】
【数14】

【0080】
式(14)の表現は、図3に示されるサブバンドギャップ電圧基準の正確で且つ直裁的な湾曲補償の条件を記述する。前に言及したように、‘n’は、温度に対して独立なプロセス・パラメータであり、そして典型的には、‘3.6’から‘4.0’の範囲の値を有する。
【0081】
従って、式(14)で定義される条件の下での基準電圧に関する式は、次式のようにあなる。
【0082】
【数15】

【0083】
ここで、Vrefは、湾曲補償したサブバンドギャップ基準の出力電圧である。
【0084】
従って、式(15)から本発明において提案されるような正確な湾曲補償技術は、全ての温度依存性の対数項を理論的レベルで実質的に排除する。基準電圧は、抵抗器の抵抗比により決定され、そしてその抵抗の実際の値の影響が最小でしか及ばないことが有利である。
【0085】
ここで、図4から図7を参照すると、提案された正確な湾曲補償方法を実現する回路からの実験的結果が示されている。サブミクロンBiCMOS技術(スマートMOS 5HV+(SmartMOS 5HV+))で実現された回路からの結果が、示されている。提案された回路の実際の実現化は、湾曲補償のために演算増幅器又は複雑な回路を必要としないで、2.9ppm/Kの温度係数、及び−76dB電源変動除去比(power supply rejection ratio(PSRR))を達成している。そのような低い温度係数を達成するため、4ビット線形及び2ビット対数(非線形)トリミング回路を用いた。
【0086】
ここで図4を参照すると、プロット400は、1次サブバンドギャップ電圧基準410に対する本発明の好適な実施形態に従った発明概念を採用する正確に湾曲補償したサブバンドギャップ電圧基準420の基準電圧を示す。
【0087】
図4において、正確に湾曲補償したサブバンドギャップ電圧基準のプロット400は、湾曲補償したサブバンドギャップ電圧基準420の温度安定性が補償されてない電流基準410の安定性より著しく勝っていることを示す。
【0088】
とりわけ、予想しなかった湾曲410は、放物線状特性を有し、それは、熱的漏洩電流(thermal leakage currents)(それが実際のトランジスタのモデルに含まれることを当業者は認め得る。)により引き起こされる。従って、当業者はまた、電流ミラーにおける又はトランジスタのエミッタ面積における電圧又は面積の不一致、又は抵抗の不一致、又は温度係数のような様々な誤差及び非理想性がまた、他の予測不能な湾曲誤差を引き起こし得ることを認めるであろう。
【0089】
ここで図5を参照すると、分布図500は、本発明に従った正確な湾曲補償方法を採用する回路を用いた基準電圧のカウント数を示す。図5の分布図500は、デフォルト・トリミング状態について室温で測定した20個のサンプルを示す。なお、これらのサンプルは、同じウエーハから取り出された。実際上、分布図500は、本発明概念が機能し、そして非常に正確なサブバンドギャップ基準電圧を発生させることができることを示す。次いで、参照分布の平均値及び標準偏差を評価した。
【0090】
ここで図6を参照すると、グラフ600は、トリミング前の基準電圧対温度の実験的結果を示す。当該グラフ600は、温度範囲にわたって測定された3つのトリミング・オプションを示す。第1のグラフは、或るデフォルト数を超えた4つの追加のトリミング・ステップ610を有し、第2のグラフは、その或るデフォルト数のトリミング・ステップ620を有し、第3のグラフは、その或るデフォルト数より4つ少ないトリミング・ステップ630を有する。
【0091】
図6から湾曲が相変わらずデフォルトの非線形トリミング条件620の下では完全には補償されないことが分かることができる。従って、非線形トリミング処置が、基準電圧の最小の温度係数を達成するため実行されることが好ましい。上記で説明した本発明概念に従った正確なトリミング方法を採用した後では、グラフは、基準電圧の非線形成分及び線形成分の両方に対して最小の温度係数が達成されたことを示す。
【0092】
ここで図7を参照すると、本発明に従った回路を用い、2つの異なる測定されたサンプルについて、トリミングされた基準電圧対温度のグラフ700が、示されている。最小の温度補償(TC)点の近くでの線形トリミング・ステップ「N+1」、「N」及び「N−1」のそれぞれを表す3つの組のサンプル710、720及び730が、示されている。図7から、基準電圧の放物線状湾曲が、完全に除去されていることが分かることができる。
【0093】
上記の説明がP形金属酸化膜半導体(PMOS)トランジスタ技術を参照して説明されたが、PMOSデバイスは適切な特性を有するPNPバイポーラ・トランジスタ技術により置換され得ることが当業者により認められるであろう。同様に、当業者は、NPNバイポーラ・トランジスタ(又は実際にはHBTNPNトランジスタ)が上記の説明においてN形金属酸化膜半導体(NMOS)トランジスタに取って代わり得ることを認めるであろう。
【0094】
従って、要約すると、既知の従来技術の基準回路は、正の温度依存性を有し且つ出力段を流れるよう形成された単一の電流の発生を有する。対照的に、本発明の好適な実施形態は、温度に対して独立で(そして好ましくは湾曲補償した)出力電圧を発生するため、2つの電流(図2に従って、1つの電流は正の温度依存性を有し、もう1つの電流は負の温度依存性有する。)又は3つの電流(追加の湾曲補償電流を伴う)の発生を提案する。
【0095】
上記で説明した基準回路及びその動作は、以下の利点の1つ又はそれより多い利点を与えることを意図していることが理解されるであろう。即ち、
(i)好適な回路が、達成された或る一定の機能の統合に起因して、好適には1:3:10の比に関連付けられた3つの非常に一致した抵抗のみを用いる。
【0096】
(ii)好適な回路は、演算増幅器又は他の複雑な回路を用いないで、直裁的な湾曲補償を達成する。
【0097】
(iii)第2の電流と第1の電流発生器のベース電流(IbQ1,IbQ2)との和を生成するための好適な回路は、当該回路の動作温度に対して実質的に独立である基準回路の出力電圧を与える。
【0098】
(iv)出力電圧は、回路の温度安定性を変えることなしに、接地電位から供給電圧電位までのいずれの都合良い値に自由に調整されることができる。
【0099】
(v)湾曲補償回路網を設けることより、基準回路の出力電圧が当該出力電圧の非線形を補償し、並びに当該基準回路の動作温度に対して実質的に独立であることを可能になる。
【0100】
(vi)最小の供給電圧は、それが1.2Vより下であることができるので、まさに出力電圧値に制限されない。
【0101】
本発明の実施形態の特定で好適な実現を上記で説明したが、当業者がそのような発明概念の変形及び変更を容易に適用することができるであろうことが明らかである。
【0102】
特に、理解しやすくするための上記の記載は処理システムの異なる機能単位を参照して本発明の実施形態を説明したことが認められるであろう。従って、異なる機能単位間でのいずれの適切な機能の分配が本発明から逸脱することなしに用いられ得ることが明らかであろう。従って、特定の機能単位についての言及は、厳密な論理的又は物理的構造、組織化又は区切りを示すよりむしろ説明された機能を与える適切な手段に言及しているだけであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、従来の1次バンドギャップ電圧基準回路の既知の概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従った発明概念を採用する1次サブバンドギャップ電圧基準回路の概略図を示す。
【図3】図3は、本発明の強化された実施形態に従った発明概念を採用する2次(正確に湾曲補償した)サブバンドギャップ電圧基準回路の概略図を示す。
【図4】図4は、1次サブバンドギャップ電圧基準対正確に湾曲補償したサブバンドギャップ電圧基準の典型的なプロットを示す。
【図5】図5は、本発明に従った回路を用いる基準電圧分布図を示す。
【図6】図6は、本発明に従った回路を用いて測定された2つの異なるサンプルについての基準電圧対温度のグラフを示す。
【図7】図7は、本発明に従った回路を用いて測定された2つの異なるサンプルについてのトリミングされた基準電圧対温度のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲補償を用いるよう構成された基準回路(200,300)であって、第2のトランジスタ(Q2,222)に動作可能に結合された第1のトランジスタ(Q1,220)を備え且つ前記基準回路の正の温度依存性に対応するそれぞれのベース電流(IbQ1,IbQ2)を有する第1の電流発生器を備える基準回路(200,300)において、
前記第1の電流発生器に動作可能に結合され、且つ前記基準回路の負の温度依存性に対応する第2の電流(Ir3)を与えるよう構成された抵抗(r3228)と、
前記抵抗及び前記第1の電流発生器に動作可能に結合され、組み合わされた電流(I2)を第2の電流(Ir3)及びベース電流(IbQ1,IbQ2)の和として発生する第2の電流発生器(m4224)と、を備え、
前記ベース電流(IbQ1,IbQ2)と第2の電流との和が、湾曲補償回路網(Q3 330,r4 350)に入力され、
前記湾曲補償回路網(Q3 330,r4 350)が、伝送器電圧の非線形項に比例する第3の電流(Ir4)を発生することにより前記の出力電圧(225,325)の非線形を補償する
ことを特徴とする基準回路(200,300)。
【請求項2】
前記ベース電流(IbQ1,IbQ2)、第2の電流(I2)及び第3の電流(Ir4)の和が、出力抵抗(r2)に入力されることにより、電流を変換して、湾曲補償した且つ温度に対して独立である出力電圧を形成することを更に特徴とする請求項1記載の基準回路(200,300)。
【請求項3】
前記ベース電流(IbQ1,IbQ2)と第2電流と第3の電流との和が、温度の1次の関数並び2次の関数の両方に関して温度に対して独立であることを更に特徴とする請求項1又は2記載の基準回路(200,300)。
【請求項4】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器に動作可能に結合され、且つ或る数のトランジスタのコレクタ電流を実質的に等しくさせるよう構成された電流ミラー回路を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の基準回路(200,300)。
【請求項5】
前記電流ミラー回路がBJT電流ミラー又はMOS電流ミラーであることを更に特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基準回路(200,300)。
【請求項6】
前記の温度に対して独立であることが、
【数1】

として導出されることを更に特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の基準回路(200,300)。
【請求項7】
前記基準回路(200,300)が、ダイオード接続バイポーラ・トランジスタ(Q 330)及び抵抗(r4350)に動作可能に結合された少なくとも2つのPMOSトランジスタ(m7,m8)を有する追加の回路網を備えて2次補償を与えるよう構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の基準回路(200,300)。
【請求項8】
第3のPMOSトランジスタを有する第2の電流ミラー回路を備え、
前記第3のPMOSトランジスタのゲート端子が、前記第1の電流ミラー回路の第2のダイオード接続PMOSトランジスタのドレーン端子及びゲート端子に接続され、
前記第3のPMOSトランジスタのソースが、供給電圧バスに接続され、
前記第3のPMOSトランジスタのドレーンが、出力ノードに接続されている
ことを特徴とする請求項7記載の基準回路(200,300)。
【請求項9】
前記第2の電流ミラー回路が、第4のPMOSトランジスタを有し、
前記第4のPMOSトランジスタのドレーン及びゲートが、前記第1のPMOSトランジスタのドレーンに接続されている
ことを更に特徴とする請求項8記載の基準回路(200,300)。
【請求項10】
前記第2の電流ミラー回路が、第5のPMOSトランジスタを有し、
当該第5のPMOSトランジスタのゲートが、前記第4のPMOSトランジスタのドレーン端子及びゲート端子に接続されている
ことを更に特徴とする請求項9記載の基準回路(200,300)。
【請求項11】
前記第4のPMOSトランジスタ及び前記第5のPMOSトランジスタのそれぞれのソースが、供給電圧バスに接続されていることを更に特徴とする請求項10記載の基準回路(200,300)。
【請求項12】
前記第5のPMOSトランジスタのドレーンが、前記第3のトランジスタのドレーンに前記出力ノードで結合されていることを特徴とする請求項10又は11記載の基準回路(200,300)。
【請求項13】
前記基準回路が、第2の温度依存性電圧を発生し、
前記基準回路が、第6のPMOSトランジスタ、第7のPMOSトランジスタ及びNPNトランジスタを備え、それにより、
前記第6及び第7のPMOSトランジスタのそれぞれのゲートが、前記第2のPMOSトランジスタ及び第4のダイオード接続PMOSトランジスタのドレーン端子及びゲート端子にそれぞれ接続される
ことを特徴とする請求項7から12のいずれか一項に記載の基準回路(200,300)。
【請求項14】
前記第6及び第7のPMOSトランジスタのそれぞれのソースが、供給電圧バスに接続されていることを更に特徴とする請求項13記載の基準回路(200,300)。
【請求項15】
前記第6及び第7のPMOSトランジスタのそれぞれのドレーンが、NPNトランジスタのベース端子及びコレクタ端子に接続され、
前記NPNトランジスタのエミッタが、接地されている
請求項14記載の基準回路(200,300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−516328(P2008−516328A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535254(P2007−535254)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003282
【国際公開番号】WO2006/038057
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】