説明

基準電圧発生回路

【課題】低消費電力で温度変動に対し安定した基準電圧を得る。
【解決手段】カレントミラー回路を負荷とする差動増幅器と、差動増幅器によって駆動される第1〜第4の電流源と、一端を第1の電流源および差動増幅器の反転入力端子と接続し、他端を接地するダイオードD1と、一端を第2の電流源および差動増幅器の非反転入力端子と接続し、他端を接地する、ダイオードD2と抵抗素子R1との縦続回路と、一端を第3の電流源および基準電圧の出力端子と接続し、他端を第4の電流源と接続する抵抗素子R3と、一端を前記第3の電流源と接続し、他端を接地する抵抗素子R4と、一端を第4の電流源と接続し、他端を接地するダイオードD3とを備える。カレントミラー回路および第1〜第4の電流源を構成するそれぞれの電界効果トランジスタP1〜P6にソース電位より深いバックゲートバイアスを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に形成される基準電圧発生回路に関わり、特にバンドギャップリファレンス回路を用いた基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
基準電圧発生回路の中でも温度依存性、電源電圧依存性が少ない基準電圧発生回路として知られているバンドギャップリファレンス回路は、シリコンのバンドギャップ値(=1.205V)とほぼ等しい基準電圧を発生することから命名されており、高精度の基準電圧を得る場合に広く使われる。
【0003】
近年、携帯用の電子機器に代表される各種装置の低電力化などに伴って、バンドギャップリファレンス回路を1.205V以下で使用する必要性が高まっており、出力電圧を自由に設定出来る構成の回路が開発されている。出力電圧を自由に設定できるバンドギャップリファレンス回路として、例えば特許文献1に記載の電圧発生回路が知られている。
【0004】
図7は、特許文献1に記載の電圧発生回路の回路図である。図7において、電圧発生回路は、P型エンハンスメントMOSトランジスタ(以下、P型MOSトランジスタと略す)P1、P2、P3、P4、P5、P6、N型エンハンスメントMOSトランジスタ(以下、N型MOSトランジスタと略す)N1、N2、ダイオードD1、D2、D3、抵抗素子R1、R2、R3、R4を備える。P型MOSトランジスタP1、P2、P3、P4、P5、P6は、それぞれソースおよびバックゲートを電源電圧VDDと接続する。N型MOSトランジスタN1、N2は、ソースを共通として、抵抗素子R2を介して接地され、差動増幅器を構成する。
【0005】
差動増幅器の反転入力端子であるN型MOSトランジスタN1のゲートは、電流源となるP型MOSトランジスタP1のドレインとダイオードD1のアノードとに接続され、ダイオードD1のカソードは接地される。差動増幅器の非反転入力端子であるN型MOSトランジスタN2のゲートは、電流源となるP型MOSトランジスタP2のドレインと抵抗素子R1の一端とに接続される。抵抗素子R1の他端は、ダイオードD2のアノードと接続され、ダイオードD2のカソードは接地される。差動増幅器の出力端子であるN型MOSトランジスタN1のドレインは、カレントミラー回路を構成するP型MOSトランジスタP3のドレインと接続されると共に、P型MOSトランジスタP1、P2、P5、P6のゲートと接続される。差動増幅器の反転出力端子であるN型MOSトランジスタN2のドレインは、カレントミラー回路を構成するP型MOSトランジスタP3、P4のゲートおよびP型MOSトランジスタP4のドレインと接続される。
【0006】
電流源となるP型MOSトランジスタP5のドレインは、出力端子refに接続され、さらに抵抗素子R3、R4のそれぞれの一端に接続される。抵抗素子R4の他端は接地される。また、電流源となるP型MOSトランジスタP6のドレインは、抵抗素子R3の他端およびダイオードD3のアノードに接続され、ダイオードD3のカソードは接地される。
【0007】
このような構成の電圧発生回路において、P型MOSトランジスタP1、P2、P5、P6のゲート長及びゲート幅をそれぞれ同一サイズとし、ダイオードD2をダイオードD1のM個の並列接続と等価な素子で構成する。この場合、P型MOSトランジスタP1、P2、P5、P6にそれぞれ流れる基準電流をIrefとすると、(1)式が成り立つ。
Iref=1/R1・kT/q・lnM ・・・ (1)式
ここで、q:電子の電荷量[C]、k:ボルツマン係数[J/K]、T:絶対温度[K]、ln:自然対数である。
【0008】
また、バンドギャップリファレンス回路の出力電圧(端子refの電圧)をVrefとすると、以下の(2)式が成り立つ。
Vref=R4/(R3+R4)・VD3+R3・R4/(R3+R4)・1/R1・kT/q・lnM
=R4/(R3+R4)・(VD3+R3/R1・kT/q・lnM) ・・・ (2)式
なお、VD3:ダイオードD3の順方向降下電圧[V]である。
【0009】
上式から、抵抗素子R3、R4の抵抗値を任意に指定することでVrefを自由に設定することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2002−304224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、90[nm]世代のプロセスで低消費電力化を目指し、従来のバンドギャップリファレンス回路を構成すると、高温時で基準電圧Vrefが変動してしまう虞がある。この理由を以下に説明する。まず、低消費電力化するために電源電圧VDDを下げると、回路を構成するトランジスタ1つ1つのゲート・ソース間電圧Vgsも当然小さくなる。Vgsが小さくとも適切に動作するように、トランジスタの閾値電圧(以下Vtと記す)が低いトランジスタを用いて回路を構成する。
【0012】
しかしながら、Vtの低いトランジスタは、オフリーク電流が大きいことが知られている。このことは、例えば、B.Razavi,“Design of analog CMOS Integrated Circuits”,McGraw−Hill,p.27,2001に記載された式(2.30)に示される。この式を以下の(3)式に示す。
OFF=Ids・e−(q/kT)・Vgs ・・・ (3)式
ここで、IOFF:ソース拡散層の深さとゲート幅に依存するオフリーク電流[A/μm]、Ids:ソース拡散層の深さとゲート幅に依存するドレイン−ソース間電流[A/μm]、Vgs:ゲート−ソース間電圧[V]である。
【0013】
今、Ids=1E−7[A/μm]が流れた時のVgsをVtと定義し、(3)式を書き直すと、(4)式のように表される。
OFF=1E−7・e−(q/kT)・Vt ・・・ (4)式
【0014】
(4)式において、例えばT=400[K]の時にトランジスタのソース拡散層の深さ=0.2[μm]、ゲート幅=100[μm]とすると、IOFF≒0.11[μA]となる。
【0015】
高精度なバンドギャップリファレンス回路を設計する為には、相対精度を考慮して上記のようにゲート幅の大きいトランジスタを使用することになるので、オフリーク電流は、0.1[μA](125℃時)を超えてしまう。また、ひとつひとつのトランジスタに流すIdsは、オフリーク電流を無視する為に100倍の10[μA]以上は必要となる。したがって、消費電力を抑えるためにVDD=1[V]としてもバンドギャップリファレンス回路自身の消費電力を小さく出来ない虞がある。
【0016】
図8、図9は、90[nm]プロセスのBSIM4モデルによって従来の基準電圧発生回路におけるVrefを求めたSPICE検証結果を示す図である。横軸は電源電圧を示し、縦軸はバンドギャップ回路の出力電圧Vrefを表す。ここでは、Vref=0.525[V]となるように設定している。基準電流Irefが10[μA]時(図8)と300[nA]時(図9)の結果を比較すると、Irefを小さくした場合に出力電圧Vrefの温度依存性が顕著である。すなわち、図8に比べて図9では、出力電圧Vrefが温度変化によって大きく変動していることが示される。これは、オフリーク電流が発生すると、特に高温時においてオフリーク電流の影響によってカレントミラー回路のミラー比が大きく崩れるために所望の出力電圧Vrefが得られなくなることによる。すなわち、低消費電力化を目指し、バンドギャップ回路の回路電流を少なくすると、リーク電流による小さい電流のずれが出力電圧に大きな影響を与えるようになってしまう。特に、オフリーク電流は、高温になるほど顕著に発生するため、回路電流を少なくすると図9に示されるように温度依存が大きくなる。
【0017】
本発明の課題は、低消費電力で温度変動に対し安定した出力電圧Vrefを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つのアスペクトに係る基準電圧発生回路は、バンドギャップリファレンス回路を用いた回路である。この回路は、カレントミラーを構成して電流源となる複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれに対してソース電位より深いバックゲートバイアスを与えるように構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、深いバックゲートバイアスによってトランジスタのオフリーク電流を抑えるので、温度変動に対しカレントミラー回路のミラー比が崩れるのを防ぎ、低消費電力で温度変動に対し安定した所望の基準電圧を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る基準電圧発生回路は、バンドギャップリファレンス回路を用い、カレントミラーを構成して電流源となる複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれに対してソース電位より深いバックゲートバイアスを与えるように構成する。すなわち、ソース・バックゲート接合が逆バイアスされるように構成する。バックゲートバイアスを与えるために、例えば、これら複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースと電源との間にそれぞれ抵抗素子を備え、それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを電源に接続するようにしてもよい。また、複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースを共通として接続した接続点と電源との間に抵抗素子を備え、それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを電源に接続するようにしてもよい。さらに、電界効果トランジスタのリーク電流値に応じた電圧を出力する電圧発生回路を備え、複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースを共通として電圧発生回路の出力端に接続し、それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを電源に接続するようにしてもよい。
【0021】
以上のように構成される基準電圧発生回路において、カレントミラーを構成して電流源となる複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部は、深いバックゲートバイアスがかけられるのでトランジスタのオフリーク電流を抑えることができる。したがって、低消費電力で温度変動に対し安定した基準電圧を発生させることができる。以下、実施例に即し、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。図1において、図7と同一の符号は、同一物を表し、その説明を省略する。図1に示す基準電圧発生回路では、図7におけるP型MOSトランジスタP1〜P6のそれぞれのソースと電源電圧VDD間にそれぞれ抵抗素子R51〜R56が挿入される。抵抗素子R51〜R56以外の構成及び接続は、図7と同一である。ただし、N型MOSトランジスタN1、N2のバックゲートは、接地され、N型MOSトランジスタN1、N2には、バックゲートバイアスがかけられている。
【0023】
このような構成による基準電圧発生回路では、P型MOSトランジスタP1〜P6のそれぞれのソース・バックゲート間に、それぞれ抵抗素子R51〜R56による電圧降下(電位差)を持たせることでバックゲート効果を生じさせる。
【0024】
例えば、P型MOSトランジスタP1に発生するソース・バックゲート間の電位差VP1は、(1)式で示すIrefとR51との積で決まり、以下の(5)式のように表される。
VP1=R51・Iref=R51/R1・kT/q・lnM ・・・ (5)式
【0025】
同様に、P型MOSトランジスタP2〜P6もソース側に付加した抵抗と流れる電流の積で電位差が決まる。
【0026】
なお、出力電圧Vrefが決まるまでのメカニズムは、特許文献1に記載されているのと同様である。すなわち、N型MOSトランジスタN1とN2のゲート電圧が差動増幅器の仮想短絡によって等しくなることから、基準電流Irefは、(1)式に示したように、Iref=1/R1・kT/q・lnMで求まる。そして、P型MOSトランジスタP1〜P6のゲート長及びゲート幅をそれぞれ同一サイズにすると、基準電流Irefと同じ電流がカレントミラーによってP型MOSトランジスタP5、P6にも流れる。抵抗素子R3、R4とダイオードD3からなる回路にテブナンの定理を適用して考えると、Vrefは、Vref=R4/(R3+R4)・(VD3+R3・Iref)として求まり、Irefに(1)式で求めた式を当てはめると、(2)式の、Vref=R4/(R3+R4)・(VD3+R3/R1・kT/q・lnM)が求まる。
【0027】
図2は、90[nm]プロセスのBSIM4モデルによって本実施例の基準電圧発生回路におけるVrefを求めたSPICE検証結果を示す図である。横軸は電源電圧を示し、縦軸はバンドギャップ回路の出力電圧Vrefを表す。ここでは、Vref=0.525[V]となるように設定している。なお、基準電流Iref=300[nA]である。また、図1の抵抗素子R51〜R56を200kΩに設定し、VSB=60mVのドロップ電圧を発生させている。図9に示した結果と比較しても分かる通り温度変動に対して出力が安定することが確認される。このメカニズムについて以下に説明する。
【0028】
まず、バックゲート効果が発生した時のVtを求める式は、B.Razavi,“Design of analog CMOS Integrated Circuits”,McGraw−Hill,pp.24,2001によれば、以下の(6)式で表される。
Vt=Vth0+γ{(|2φ+VSB|)0.5−(|2φ|)0.5} ・・・ (6)式
ここで、VSB:ソース・バックゲート間電圧[V]、Vth0:VSB=0[V]時のVt[V]、γ:基盤バイアス効果係数、2φ:フェルミ順位[V]である。
【0029】
(6)式から、VSBが大きいほどVtは大きくなる。また、(4)式からVtが大きいほどIOFFが小さくなるのがわかる。
【0030】
以上説明したように、本実施例の基準電圧発生回路によれば、オフリーク電流IOFFを小さくすることができる。したがって、オフリーク電流の影響によるミラー比の崩れもほとんど無く、安定した所望の出力電圧Vrefを得ることができる。
【実施例2】
【0031】
図3は、本発明の第2の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。図3において、図1と同一の符号は、同一物を表し、その説明を省略する。図3に示す基準電圧発生回路では、図1における抵抗素子R51〜R56を抵抗素子R50として並列に1つに束ねて構成した回路であり、抵抗素子R50以外の構成及び接続は、図1と同一である。
【0032】
このような構成による基準電圧発生回路における動作は、実施例1と同様である。ただし、図3の回路では電流が束ねられているために抵抗が一つで済み、小さな抵抗で電位差を持たせることができるので抵抗素子の面積が小さくて済む。したがって、実施例1と比較して基準電圧発生回路を構成する際のチップ面積をより小さくすることができる。
【実施例3】
【0033】
図4は、本発明の第3の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。図4において、図1と同一の符号は、同一物を表し、その説明を省略する。図3に示す基準電圧発生回路では、図1における抵抗素子R51〜R56を廃し、オペアンプOP、抵抗素子R6、P型MOSトランジスタP0からなる電圧発生回路が追加される。オペアンプOPは、出力端子と反転入力端子を接続し、さらにP型MOSトランジスタP1〜P6のソースを共通にして出力端に接続する。P型MOSトランジスタP0は、ソースがオペアンプの非反転入力端子に接続され、ゲートが電源電圧VDDに接続され、ドレインがGND電位GNDに接続され、バックゲートがソースと接続される。抵抗素子R6は、一端がP型MOSトランジスタP0のドレインに接続され、他端が電源電圧VDDと接続される。
【0034】
このような構成の基準電圧発生回路における動作は、実施例1と同様である。ただし、図4の回路では、P型MOSトランジスタP1〜P6のソース電圧をP型MOSトランジスタP0に流れるオフリーク電流で制御できるように構成される。すなわち、P型MOSトランジスタP0に流れるオフリーク電流に応じて、電圧発生回路すなわちオペアンプOPの出力電圧を変化させ、オフリーク電流が大きい場合にはP型MOSトランジスタP1〜P6のバックゲート効果を強く、またオフリーク電流が小さい場合にはバックゲート効果を弱くする。したがって、最低動作電圧を必要以上に下げることのないバンドギャップリファレンス回路を実現することができる。
【実施例4】
【0035】
図5は、本発明の第4の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。図5において、基準電圧発生回路は、P型MOSトランジスタP11、P12、P13と、N型MOSトランジスタN11、N12と、抵抗素子R1、R7、R8と、ダイオードD1、D2、D3を備える。P型MOSトランジスタP11、P12、P13のソースは、共通に接続され、抵抗素子R7を介して電源電圧VDDに接続される。P型MOSトランジスタP11、P12、P13のバックゲートは、電源電圧VDDに接続される。P型MOSトランジスタP11のドレインは、N型MOSトランジスタN11のドレインとゲートおよびN型MOSトランジスタN12のゲートに接続される。P型MOSトランジスタP12のドレインは、P型MOSトランジスタP12のゲート、P型MOSトランジスタP11のゲート、P型MOSトランジスタP13のゲートおよびN型MOSトランジスタN12のドレインと接続される。N型MOSトランジスタN11のソースは、ダイオードD1のアノードに接続され、ダイオードD1のカソードは接地される。N型MOSトランジスタN12のソースは、抵抗素子R1の一端に接続され、抵抗素子R1の他端は、ダイオードD2のアノードに接続され、ダイオードD2のカソードは接地される。一方、P型MOSトランジスタP13のドレインは、出力端子refに接続され、抵抗素子R8の一端に接続される。抵抗素子R8の他端は、ダイオードD3のアノードに接続され、ダイオードD3のカソードは接地される。P型MOSトランジスタP11、P12でカレントミラー回路が構成され、P型MOSトランジスタP12、P13でカレントミラー回路が構成される。また、N型MOSトランジスタN11、N12でカレントミラー回路が構成される。
【0036】
このような構成によるバンドギャップリファレンス回路において、P型MOSトランジスタP11〜P13のゲート長及びゲート幅をそれぞれ同一サイズにし、且つ、N型MOSトランジスタN1、N2を同一サイズにし、ダイオードD2をダイオードD1のM個並列接続と等価な素子で構成する。この場合、出力電圧Vrefは、B.Razavi,“Design of analog CMOS Integrated Circuits”,McGraw−Hill,pp.392,2001によれば、以下の(7)式で表される。
Vref=R8/R1・kT/q・lnM+VD3 ・・・ (7)式
【0037】
実施例4は、このカレントミラー型バンドギャップリファレンス回路に応用した例であり、動作のメカニズムを以下に説明する。
【0038】
N型MOSトランジスタN1とN2のゲート電圧が等しいことから、基準電流Irefは、(1)式に示したように、Iref=1/R1・kT/q・lnMで求まる。また、P型MOSトランジスタP11〜P13のゲート長及びゲート幅がそれぞれ同一サイズであるから、基準電流Irefと同じ電流がカレントミラー回路によってP型MOSトランジスタP13にも流れる。したがって、Vrefは、Vref=R8・Iref+VD3で求まり、このIrefに、(1)式を当てはめると、(7)式が求まる。
【0039】
本実施例の基準電圧発生回路によれば、抵抗素子R7によってP型MOSトランジスタP11、P12、P13におけるバックバイアスがソースよりも深くかけられ、オフリーク電流を小さくすることができる。したがって、オフリーク電流の影響によるミラー比の崩れもほとんど無く、安定した所望の出力電圧Vrefを得ることができる。
【実施例5】
【0040】
図6は、本発明の第5の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。図6において、図5と同一の符号は、同一物を表し、その説明を省略する。図6に示す基準電圧発生回路では、図5におけるダイオードD1、D2を廃し、替わりに共通接続される抵抗素子R9が追加される。また、N型MOSトランジスタN11、N12のそれぞれの替わりにN型MOSトランジスタN11a、N12aを備える。ここでN型MOSトランジスタN11a、N12aの動作領域を弱反転領域とし、N型MOSトランジスタN12aのゲート幅をN型MOSトランジスタN11aのゲート幅のM倍とする。
【0041】
このような構成の基準電圧発生回路において、P型MOSトランジスタP11〜P13のゲート長及びゲート幅をそれぞれ同一サイズにする。この場合、基準電流Irefおよび出力電圧Vrefは、R.JacobBaker,”CMOS Circuit Design,Layout, and Simulation”,IEEE Press,1997によれば、以下の(8)式、(9)式で与えられる。
Iref=1/R1・kT/q・lnM ・・・ (8)式
Vref=R8/R1・kT/q・lnM+VD3 ・・・ (9)式
【0042】
実施例5における基準電圧発生回路の動作のメカニズムは、実施例4と同様であるため説明を省略する。ただし、通常では、N型MOSトランジスタN11aのソースが直接GNDに接続されるのに対し、図6に示す回路では、N型MOSトランジスタN11a、N12aのソース側にも抵抗素子R9を挿入してN型MOSトランジスタによるバックゲート効果も利用する構成にしている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、回路電流を減らしてもオフリーク電流の影響を小さく出来る事で、電池駆動する時計などの低消費電力を要求される用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る基準電圧発生回路における基準電圧を求めたシミュレーション結果を示す第1の図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。
【図6】本発明の第5の実施例に係る基準電圧発生回路の回路図である。
【図7】従来の電圧発生回路の回路図である。
【図8】従来の基準電圧発生回路における基準電圧を求めたシミュレーション結果を示す第1の図である。
【図9】従来の基準電圧発生回路における基準電圧を求めたシミュレーション結果を示す第2の図である。
【符号の説明】
【0045】
D1〜D3 ダイオード
N1、N2、N11、N12、N11a、N12a N型MOSトランジスタ
OP 演算増幅器
P0、P1〜P6、P11〜P13 P型MOSトランジスタ
R1〜R4、R6〜R9、R50〜R56 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップリファレンス回路を用いた基準電圧発生回路において、
カレントミラー回路を構成して電流源となる複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれに対してソース電位より深いバックゲートバイアスを与えるように構成することを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項2】
前記複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースと電源との間にそれぞれ抵抗素子を備え、前記それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを前記電源に接続することを特徴とする請求項1記載の基準電圧発生回路。
【請求項3】
前記複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースを共通として接続した接続点と電源との間に抵抗素子を備え、前記それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを前記電源に接続することを特徴とする請求項1記載の基準電圧発生回路。
【請求項4】
電界効果トランジスタのリーク電流値に応じた電圧を出力する電圧発生回路を備え、前記複数の電流源用電界効果トランジスタの一部または全部のそれぞれの電界効果トランジスタのソースを共通として前記電圧発生回路の出力端に接続し、前記それぞれの電界効果トランジスタのバックゲートを前記電源に接続することを特徴とする請求項1記載の基準電圧発生回路。
【請求項5】
前記電圧発生回路は、
抵抗素子と、
ドレインを接地し、ゲートを電源に接続し、バックゲートをソースに接続し、ソースを前記抵抗素子を介して電源に接続する電界効果トランジスタと、
非反転入力端子をこの電界効果トランジスタのソースに接続し、反転入力端子を出力端子に接続して前記電圧発生回路の出力端とする演算増幅器と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の基準電圧発生回路。
【請求項6】
カレントミラー回路を負荷とする差動増幅器と、
前記差動増幅器によって駆動される第1乃至第4の電流源と、
前記第1の電流源の電流を流すように、一端を前記第1の電流源および前記差動増幅器の反転入力端子と接続し、他端を接地する第1のダイオードと、
前記第2の電流源の電流を流すように、一端を前記第2の電流源および前記差動増幅器の非反転入力端子と接続し、他端を接地する、第2のダイオードと第1の抵抗素子との縦続回路と、
一端を前記第3の電流源および基準電圧の出力端子と接続し、他端を前記第4の電流源と接続する第2の抵抗素子と、
一端を前記第3の電流源と接続し、他端を接地する第3の抵抗素子と、
前記第4の電流源の電流の一部を流すように、一端を前記第4の電流源と接続し、他端を接地する第3のダイオードと、
を備え、
前記差動増幅器の負荷となるカレントミラー回路および前記第1乃至第4の電流源を構成するそれぞれの電界効果トランジスタが前記電流源用電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の基準電圧発生回路。
【請求項7】
ドレインとゲートが接続された第1導電型の第1の電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1の電界効果トランジスタのゲートに接続された第1導電型の第2の電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1の電界効果トランジスタのゲートに接続された第1導電型の第3の電界効果トランジスタと、
ドレインが前記第2の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインとゲートが接続された第2導電型の第4の電界効果トランジスタと、
ドレインが前記第1の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記第4の電界効果トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第5の電界効果トランジスタと、
一端が前記第4の電界効果トランジスタのソースと接続され、他端が接地された第1のダイオードと、
一端が前記第5の電界効果トランジスタのソースと接続され、他端が接地された、第2のダイオードと第1の抵抗素子とを縦続に接続する第1の縦続回路と、
一端が前記第3の電界効果トランジスタのドレインに接続され、他端が接地された、第3のダイオードと第2の抵抗素子とを縦続に接続する第2の縦続回路と、
を備え、
前記第1乃至第3の電界効果トランジスタが前記電流源用電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の基準電圧発生回路。
【請求項8】
ドレインとゲートが接続された第1導電型の第1の電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1の電界効果トランジスタのゲートに接続された第1導電型の第2の電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1の電界効果トランジスタのゲートに接続された第1導電型の第3の電界効果トランジスタと、
ドレインが前記第2の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインとゲートが接続された第2導電型の第4の電界効果トランジスタと、
ドレインが前記第1の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記第4の電界効果トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第5の電界効果トランジスタと、
一端が前記第4の電界効果トランジスタのソースと接続され、他端が接地された第1の抵抗素子と、
一端が前記第5の電界効果トランジスタのソースと接続され、他端が前記第1の抵抗素子の一端に接続された、第2の抵抗素子と、
一端が前記第3の電界効果トランジスタのドレインに接続され、他端が接地された、ダイオードと第3の抵抗素子とを縦続に接続する縦続回路と、
を備え、
前記第1乃至第3の電界効果トランジスタが前記電流源用電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の基準電圧発生回路。
【請求項9】
前記第4及び第5の電界効果トランジスタのバックゲートが接地されたことを特徴とする請求項7または8に記載の基準電圧発生回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の基準電圧発生回路を備える半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−287095(P2007−287095A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116861(P2006−116861)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】