説明

基礎隙間防止板保持具、および基礎隙間防止具セット

【課題】ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間から白蟻や水分が侵入することを容易に且つ長期間に亘って防止する。
【解決手段】基礎隙間防止板保持具10は、ベタ基礎と布基礎との境界面に交差するようにベタ基礎と布基礎の内部に配置される基礎隙間防止板7を、境界面を横切る縦方向の鉄筋6に保持させるためのものであって、鉄筋6を把持する把持部20と、基礎隙間防止板7を挟持する挟持部30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間が生じるのを防止するために用いられる保持具、これを含む基礎隙間防止具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎構造として、ベタ基礎の上面に布基礎を立設する構造がよく用いられている。この基礎構造の標準的な施工方法としては、先ず、床下となる領域の周縁を囲むように型枠を組み、鉄筋を配筋し、ベタ基礎用コンクリートを流し込み硬化させてベタ基礎を設け、次に、ベタ基礎上に型枠を組み、布基礎用コンクリートを流し込んで硬化させて布基礎を立設するようにしている。
【0003】
このようにベタ基礎と布基礎とを別々に打設しているため、コンクリートの経時的な収縮変形もあって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間が生じることがある。隙間が生じると、この隙間から白蟻が床下へ侵入したり、水分が床下へ侵入するといった問題が生じる。
【0004】
上記の問題に対して、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じた隙間を通って白蟻や水分が床下に侵入しないように、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目を屋外側から止水機能を有する防蟻剤によって塞ぐ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目を屋外側又は屋内側(床下空間側)から止水シートにより塞ぐ構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−40791号公報
【特許文献2】特開2009−221814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、止水機能を有する防蟻剤によってベタ基礎と布基礎との継ぎ目を塞ぐ場合、防蟻剤は、時間の経過とともに防蟻効果が減衰するために、所定の期間経過すると取り替える必要が生じる。また、防蟻剤は、環境に対しても好ましいものとは言えない。更に、止水機能を持たせるためには、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に屋外側から隙間なく覆う必要があるが、この防蟻剤は、基礎が完成した後に塗りつけるものであるために、その際、基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要があり、その作業が煩わしく、作業者による出来栄えのムラが生じることが危惧される。
【0007】
また、止水シートを、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間なく覆うように貼り付ける場合も、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要があり、その作業が煩わしく、作業者による出来栄えのムラが生じることが危惧される。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間から白蟻や水分が侵入することを容易に且つ長期間に亘って防止することが可能な基礎隙間防止板保持具、および、これを含む基礎隙間防止具セットを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、ベタ基礎と布基礎との境界面に交差するように前記ベタ基礎と前記布基礎の内部に配置される基礎隙間防止板を、前記境界面を横切る縦方向の鉄筋に保持させるための基礎隙間防止板保持具であって、前記鉄筋を把持する把持部と、前記基礎隙間防止板を挟持する挟持部とを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目を交差するように基礎隙間防止板を簡易に配置することができる。その結果、基礎隙間防止板保持具が保持し、ベタ基礎と布基礎に埋設される基礎隙間防止板によって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間が遮断されるため、外部から白蟻や水分が床下へ侵入するのを防止することができる。
また、基礎隙間防止板保持具および基礎隙間防止板は、ベタ基礎および布基礎を形成する過程で配置するため、防蟻剤や止水シートを用いる場合のように基礎表面の汚れや埃を取り除く必要がなく、取付作業を簡易化できる。
また、基礎隙間防止板保持具および基礎隙間防止板は、外観に現れないので、作業者による出来栄えの差を軽減できる。
また、基礎隙間防止板保持具および基礎隙間防止板は、ベタ基礎および布基礎の内部に配置されるため、外部に露出したり、土と接触する場合に比べて、止水効果および防蟻効果の経時的劣化を抑制できる。
また、基礎隙間防止板保持具は、基礎隙間防止板を挟持して保持するため、基礎隙間防止板の位置ずれを防止できる。
【0011】
第2の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第1の発明において、前記挟持部は、前記基礎隙間防止板を挟持する面の少なくとも一部が、他の部分よりも柔らかい軟質部で構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によると、基礎隙間防止板を挟持する面の少なくとも一部が、弾性変形しやすい軟質部で構成されているため、基礎隙間防止板が滑ったりずれたりすることを防止でき、基礎隙間防止板をより安定して挟持することができる。
【0013】
第3の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第2の発明において、前記軟質部の表面に、凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、軟質部において基礎隙間防止板をより一層安定して挟持することができる。
【0015】
第4の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記挟持部が、前記把持部に連結された固定片と、前記固定片との間に前記基礎隙間防止板が配置される隙間を形成し、一端が前記固定片に連結され、他端が前記固定片に対して係脱可能な可動片とを有することを特徴とする。
【0016】
この構成によると、固定片と可動片との隙間に基礎隙間防止板を配置して、固定片と可動片とを係止することによって、固定片と可動片との間で基礎隙間防止板を挟持することができるため、基礎隙間防止板の取付作業を容易に行うことができる。
【0017】
第5の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第4の発明において、前記固定片と前記可動片の前記一端部とよって、基礎隙間防止板を保持できるU字状の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、基礎隙間防止板を取り付ける際に、U字状の溝部に基礎隙間防止板を挿入して仮置きした状態で、固定片と可動片とを係止する作業を行うことができる。そのため、基礎隙間防止板の取付作業をより容易に行うことができる。
【0019】
第6の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第5の発明において、前記可動片が、前記溝部より前記他端側に、他の部分よりも厚みの薄い薄肉ヒンジ部を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、可動片における薄肉ヒンジ部より前記他端側の部分は、薄肉ヒンジ部を中心に揺動可能であるため、この部分と固定片との間で基礎隙間防止板を確実に挟持することができる。
【0021】
第7の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第6の発明において、前記挟持部は、前記薄肉ヒンジ部よりも前記他端側の部分における前記基礎隙間防止板を挟持する面が、他の部分よりも柔らかい軟質部で構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、挟持部における薄肉ヒンジ部よりも前記他端側の部分は、基礎隙間防止板を確実に挟持できる部分であるため、この部分を軟質部で構成することにより、基礎隙間防止板をより安定して挟持することができる。
【0023】
第8の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第7の発明において、前記軟質部が、他の部位よりも前記基礎隙間防止板に対する摩擦抵抗が大きく、前記溝部が、前記軟質部で構成されていないことを特徴とする。
【0024】
この構成によると、U字状の溝部が摩擦抵抗の大きい軟質部で構成されていないため、U字状の溝部に基礎隙間防止板をスムーズに挿入することができる。そのため、溝部が軟質部で構成されている場合に比べて、取付作業性を向上させることができる。
【0025】
第9の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第1〜第8のいずれかの発明において、前記把持部が、前記挟持部の背面から突出して、前記鉄筋を把持する一対の脚部を含むことを特徴とする。
【0026】
この構成によると、一対の脚部の間に鉄筋を押し込むことで、基礎隙間防止板保持具を容易に鉄筋に取り付けることができる。
【0027】
第10の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第9の発明において、前記一対の脚部が、前記鉄筋の長手方向に複数組設けられていることを特徴とする。
【0028】
この構成によると、一対の脚部が1組しか設けられていない場合に比べて、基礎隙間防止板保持具をより強固に鉄筋に取り付けることができ、位置ずれを防止できる。
【0029】
第11の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第9または第10の発明において、前記一対の脚部が、前記鉄筋を挟んで対向しない位置に配置されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によると、一対の脚部が対向配置されている場合に比べて、一対の脚部の内側(鉄筋側)の面に指を引っ掛けやすい。そのため、鉄筋に取り付けた後で取付位置を調整したり、取付位置を間違った場合に鉄筋から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0031】
第12の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第9〜第11のいずれかの発明において、前記脚部が、前記鉄筋を把持する部分よりも突出先端側に、開放片を有することを特徴とする。
【0032】
この構成によると、突出先端に設けられた開放片を押圧して一対の脚部の間隔を拡張することにより、開放片がない場合よりも鉄筋への取付作業を容易に行うことができる。また、鉄筋を取り付けた後に開放片に指をかけて一対の脚部の間隔を拡張させることができるため、取付位置の調整や、取付位置を間違った場合に鉄筋から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0033】
第13の発明に係る基礎隙間防止板保持具は、第12の発明において、前記一対の脚部の前記開放片同士の間隔が、突出先端に近付くほど大きくなっていることを特徴とする。
【0034】
この構成によると、一対の脚部の開放片同士の間に鉄筋を押し込むことにより、開放片同士の間隔をスムーズに広げることができるため、鉄筋を把持する部分に鉄筋を容易に配置することができる。
【0035】
第14の発明に係る基礎隙間防止具セットは、第1〜第13のいずれかの発明に係る基礎隙間防止板保持具と、基礎隙間防止板とを含むことを特徴とする。
【0036】
本発明では、第1の発明で述べた効果を奏する基礎隙間防止具セットが得られる。
【0037】
第15の発明に係る基礎隙間防止具セットは、第14の発明において、前記基礎隙間防止板が金属製の薄板でロール状に巻き取られた形態を有することを特徴とする。
【0038】
この構成によると、長い長さに亘って配置する必要がある基礎隙間防止板をコンパクトに収容、包装できるとともに、使用時には、折り曲げることによって容易に基礎の外縁に沿って配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る基礎隙間防止具セットが用いられた基礎構造を模式的に示す断面図である。
【図2】基礎隙間防止板保持具の斜視図である。
【図3】基礎隙間防止板保持具の側面図である。
【図4】基礎隙間防止板保持具に基礎隙間防止板と鉄筋を取り付けた状態を示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の基礎隙間防止具セットが用いられた基礎構造1を示している。基礎構造1は、下から順に、割栗石2、捨てコンクリート3、ベタ基礎4、布基礎5が設けられた構造を有する。また、基礎構造1は、ベタ基礎4と布基礎5の内部に設けられた縦方向および水平方向の鉄筋6と、ベタ基礎4と布基礎5との境界面に交差するようにベタ基礎4と布基礎5の内部に配置された基礎隙間防止板7と、ベタ基礎4と布基礎5との境界面を横切る縦方向の鉄筋6に取り付けられるとともに基礎隙間防止板7を保持する基礎隙間防止板保持具10とを有している。基礎基礎隙間防止具セットは、基礎隙間防止板保持具10と基礎隙間防止板7とで構成される。なお、図1では、断面を示すハッチングを省略している。基礎隙間防止板7は、ベタ基礎4と布基礎5との隙間から白蟻や水分、湿気が侵入することを防止するための部材であり、基礎隙間防止板保持具10および基礎隙間防止板7は、屋内と屋外の境界の基礎にのみ配置され、屋内の仕切壁などの基礎には配置されない。
【0041】
基礎構造1は、以下の手順で施工される。
まず、建築物が建てられる領域(基礎形成領域)を掘り下げて、割栗石2を敷設し、割栗石2の上に捨てコンクリート3を打設する。そして、捨てコンクリート3の上にスペーサーブロック8を介して鉄筋6を配筋する。
【0042】
次に、建築物の外壁の基礎となる領域に設けられた縦方向の鉄筋6に基礎隙間防止板保持具10を所定の間隔で取り付ける。そして、基礎隙間防止板保持具10に、建築物の外周部に沿って隙間なく基礎隙間防止板7を取り付ける。
【0043】
基礎隙間防止板保持具10が取り付けられる高さは、ベタ基礎4が形成される高さによって決まる。具体的には、基礎隙間防止板保持具10によって保持される基礎隙間防止板7の略半分がベタ基礎4に埋まるような位置に、基礎隙間防止板保持具10は取り付けられる。次に、捨てコンクリート3の上に外側型枠(図示省略)を設置し、この外側型枠内に、基礎隙間防止板7および基礎隙間防止板保持具10の下側略半分が埋設するようにコンクリートを打設することで、ベタ基礎4を形成する。
【0044】
なお、図1では、基礎隙間防止板7は鉄筋6よりも屋内側に取り付けられているが、屋外側に取り付けてもよい。屋内側に取り付けた場合、ベタ基礎用のコンクリートを流し込んだときに屋外側へ向かって作用する応力を、基礎隙間防止板7に受け止めさせるだけでなく、基礎隙間防止保持具10が取り付けられた縦方向の鉄筋6にも受け止めさせることができるためより好ましい。
【0045】
その後、ベタ基礎4上に内側型枠(図示省略)を設置し、内側型枠と外側型枠の間に、コンクリートを打設することで、布基礎5を形成する。鉄筋6と基礎隙間防止板7と基礎隙間防止板保持具10のベタ基礎4の上面から突出した部分は、布基礎5に埋設される。以上により、基礎構造1が完成する。
【0046】
次に、基礎隙間防止板7の詳細について説明する。
基礎隙間防止板7は、樹脂材料または金属材料で形成されており、薄くしても強度が保たれ、折り曲げたり加工が容易で、ロール状に巻き取った状態で持ち運べるなど強度面および取扱い面で有利な金属材料で形成するのが好ましく、具体的には例えば溶融亜鉛めっき鋼板からなるものを例示することができる。基礎隙間防止板7の幅は、特に限定されることなく、ベタ基礎と布基礎の継ぎ目を、施工誤差を考慮して確実に交差して配置できる長さあればよく、3〜8cmとするのが好ましく、5〜6cmとするのがより好ましい。基礎隙間防止板7の板厚は、特に限定されず、その材料の種類によって適宜決定でき、板状乃至シート状のものを使用することができる。例えば、金属材料のものであれば、薄くしても強度が保たれて所望の役割を維持できることから、0.1〜1mmとするのが好ましく、0.1〜0.5mmの薄板状とするのが特に好ましい。薄板状とすることで、例えば15〜25mの長さをロール状に巻き取った形態としてもコンパクトにできるため持ち運びが容易で、しかも使用時には容易に折り曲げられて外周に沿わせて配置することができる。また、基礎隙間防止板7の幅方向中心には、ベタ基礎用のコンクリートを流し込む際の高さの目安となる目印(ライン)を設けることが好ましい。また、基礎隙間防止板7には、コンクリートとの密着性を向上させるために、孔や凹凸を設けることが好ましい。なお、孔を設ける場合には、基礎隙間防止板7の幅方向中央部を避けた位置に設ける。
【0047】
次に、基礎隙間防止板保持具10の詳細について説明する。
図2〜図4に示すように、基礎隙間防止板保持具10は、縦方向の鉄筋6を把持するための把持部20と、基礎隙間防止板7を挟持するための挟持部30とを備える。なお、以下の説明において、基礎隙間防止板保持具10を縦方向の鉄筋6に取り付けた状態での上下方向および水平方向を、単に上下方向および水平方向と称する。
【0048】
基礎隙間防止板保持具10は、2種類の材料で形成されており、硬質部と、硬質部よりも柔らかい軟質部とを有する。硬質部には、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルなどの樹脂材料または金属材料が用いられるが、軽量で成型が容易な樹脂材料とするのが好ましい。軟質部には、各種合成ゴムや、天然ゴムや、シリコンなどを広く用いることができ、例えばデュロメーターA硬度(JIS K6253)で50度以下のものを好ましく用いることができる。軟質部は、硬質部よりも基礎隙間防止板7に対する摩擦抵抗が大きい。また、硬質部と軟質部の色は異なっているが、同色であってもよい。
【0049】
把持部20は、全て硬質部で構成されている。把持部20は、挟持部30(詳細には、後述する固定片31の背面)から突出する一対の脚部21を2組備えている。鉄筋6は、一対の脚部21の間に把持される。2組の一対の脚部21は、上下方向(鉄筋6の長手方向)に並んで配置されている。一対の脚部21は、鉄筋6を挟んで対向しない位置に配置されている。一対の脚部21は、対称に形成されている。
【0050】
脚部21は、当接部22と、開放片23とで構成されている。当接部22は、鉄筋6を把持するための部分であって、挟持部30に連結されている。図4に示すように、当接部22の内側(鉄筋6側)の面は、鉄筋6の外周面に沿う円弧状に形成されている。
【0051】
開放片23は、当接部22に連結され、脚部21の突出先端に設けられている。図4に示すように、開放片23の内側(鉄筋6側)の面は、突出先端に近付くほど、対をなす開放片23から離れるように形成されている。つまり、一対の脚部21の開放片23同士の間隔は、突出先端に近付くほど大きくなっている。
【0052】
鉄筋6に把持部20を取り付けるには、一対の脚部21の間に鉄筋6を押し込む。これにより、一対の脚部21の間隔が拡張されて、鉄筋6は一対の脚部21の当接部22の間に配置され、脚部21の弾性復元力によって把持される。このように、鉄筋6に押し込むことで把持部20を取り付けることができるため、鉄筋6への取付作業を容易に行うことができる。
【0053】
また、脚部21は、鉄筋6を把持する部分(当接部22)よりも突出先端側に、開放片23を有するため、開放片23を押圧して一対の脚部21の間隔を拡張することにより、開放片23がない場合よりも、鉄筋6への取付作業を容易に行うことができる。また、鉄筋6に取り付けた後に開放片に指をかけて一対の脚部21の間隔を拡張させることができるため、取付位置の調整や、取付位置を間違った場合に鉄筋6から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0054】
また、一対の脚部21の開放片23同士の間隔は、突出先端に近付くほど大きくなっているため、一対の脚部21の開放片23同士の間に鉄筋6を押し込むことにより、開放片23同士の間隔をスムーズに広げることができる。そのため、当接部22に鉄筋6を容易に配置することができる。
【0055】
また、一対の脚部21は、鉄筋6を挟んで対向しない位置に配置されているため、一対の脚部21が対向配置されている場合に比べて、一対の脚部21の内側(鉄筋6側)の面に指を引っ掛けやすい。そのため、鉄筋6に取り付けた後で取付位置を調整したり、取付位置を間違った場合に鉄筋6から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、一対の脚部21は2組設けられているため、1組しか設けられていない場合に比べて、基礎隙間防止板保持具10をより強固に安定した状態で鉄筋6に取り付けることができ、位置ずれを防止できる。
【0057】
次に、挟持部30について説明する。挟持部30は、固定片31と可動片32とを有している。固定片31と可動片32との間には、基礎隙間防止板7が配置される隙間が形成されており、基礎隙間防止板7は、固定片31と可動片32との間で挟持される。
【0058】
固定片31は、上下方向に延在する断面略半円形の棒状部材である。固定片31の背面(可動片32と反対側の面)には、2組の一対の脚部21が突出して設けられている。一対の脚部21に把持された鉄筋6は、固定片31の背面に当接する。また、固定片31の上端には、突起33が設けられている。
【0059】
固定片31の下側略半分と突起33は、硬質部で構成されている。固定片31の上側略半分(但し、突起33を除く)は、中心部が硬質部で構成されており、その周囲(表面)が軟質部31a(図3および図4中、ドットのハッチングで表示)で覆われた構造となっている。
軟質部31aの基礎隙間防止板7に当接する面には、凹凸形状が形成されている。この凹凸形状の凹部および凸部は、それぞれ水平方向に延在している。
【0060】
可動片32は、固定片31とほぼ同じ長さの略棒状部材である。可動片32の下端は、固定片31の下端と連結されている。可動片32の下端部と固定片31の下端部とによって、U字状の溝部34が形成されている。溝部34の隙間は、基礎隙間防止板7の板厚より若干大きく、上下方向に渡ってほぼ一定である。
【0061】
可動片32は、長手方向中央部より若干下側の部分に、他の部分よりも厚みの薄い薄肉ヒンジ部35を有する。そのため、可動片32における薄肉ヒンジ部35より上側部分は、薄肉ヒンジ部35を中心に揺動可能となっている。また、薄肉ヒンジ部35は、力を受けていない状態では、薄肉ヒンジ部35より上側部分が固定片31から離れるように曲がっている。薄肉ヒンジ部35より下側の部分が、上述のU字状の溝部34を構成しており、溝部34の深さは、薄肉ヒンジ部35の下端から溝部34の底面までの長さである。
【0062】
可動片32の上端には、固定片31の突起33に係止されるフック36が設けられている。フック36と突起33とによって、固定片31と可動片32の上端同士は係脱可能となっている。
【0063】
可動片32は、薄肉ヒンジ部35および薄肉ヒンジ部35より下側の部分が、硬質部で構成されている。また、可動片32のフック36も、硬質部で構成されている。可動片32における薄肉ヒンジ部35より上側の部分(但し、フック36を除く)は、中心部が硬質部で構成されており、その周囲(表面)が軟質部32a(図3および図4中、ドットのハッチングで表示)で覆われた構造となっている。
軟質部32aの基礎隙間防止板7に当接する面には、凹凸形状が形成されている。この凹凸形状の凹部および凸部は、それぞれ水平方向に延在している。
【0064】
また、フック36と突起33とを係止した状態では、挟持部30における薄肉ヒンジ部35よりも上側の部分(固定片31の軟質部31aと可動片32の軟質部32a)の隙間は、基礎隙間防止板7の板厚よりも小さくなる。したがって、フック36と突起33とを係止して、挟持部30で基礎隙間防止板7を挟持している状態では、固定片31の軟質部31aと可動片32の軟質部32aは弾性変形している。
【0065】
挟持部30に基礎隙間防止板7を取り付ける際には、まず、U字状の溝部34に基礎隙間防止板7を挿入する。基礎隙間防止板7は、溝部34によって、固定片31に沿うように保持される。このように基礎隙間防止板7を溝部34に仮置きした状態で、可動片32の上側部分を固定片31側に押圧して、薄肉ヒンジ部35を変形させて、可動片32と固定片31との間で基礎隙間防止板7を挟持させる。そして、フック36を突起33に引っ掛ける。
【0066】
このように、固定片31と可動片32との隙間に基礎隙間防止板7を配置して、固定片31と可動片32とを係止することによって、固定片31と可動片32との間で基礎隙間防止板7を挟持することができるため、基礎隙間防止板7の取付作業を容易に行うことができる。
【0067】
また、溝部34は基礎隙間防止板7を保持できるため、基礎隙間防止板7を取り付ける際に、溝部34に基礎隙間防止板7を挿入して仮置きした状態で、固定片31と可動片32とを係止する作業を行うことができる。そのため、基礎隙間防止板7の取付作業をより容易に行うことができる。
【0068】
また、U字状の溝部34は、摩擦抵抗の大きい軟質部で構成されていないため、溝部34に基礎隙間防止板7をスムーズに挿入することができる。そのため、溝部34が軟質部で構成されている場合に比べて、取付作業性を向上させることができる。
【0069】
また、薄肉ヒンジ部35は、力を受けていない状態では、薄肉ヒンジ部35より上側部分が固定片31から離れるように曲がっているため、溝部34に基礎隙間防止板7を挿入する際に、可動片32の上側略半分が邪魔になるのを防止できる。
【0070】
また、可動片32における薄肉ヒンジ部35より上側の部分は、薄肉ヒンジ部35を中心に揺動可能であるため、この部分と固定片31との間で基礎隙間防止板7を確実に挟持することができる。
【0071】
また、基礎隙間防止板保持具10は、基礎隙間防止板7を挟持して保持するため、基礎隙間防止板7の位置ずれを防止できる。
【0072】
また、基礎隙間防止板保持具10は、基礎隙間防止板7を挟持する面の一部が、弾性変形しやすい軟質部で構成されているため、基礎隙間防止板7を安定して挟持することができ、位置ずれを防止できる。特に、基礎隙間防止板7として、金属製の薄板状のものを使用する場合であっても、滑ったりずれたりすることなく安定して保持することができる。
【0073】
また、本実施形態では、挟持部30における薄肉ヒンジ部35より上側の部分が軟質部31a、32aで構成されている。挟持部30における薄肉ヒンジ部35より上側の部分は、上述したように、基礎隙間防止板7を確実に挟持できる部分であるため、この部分を軟質部で構成することにより、基礎隙間防止板7をより安定して挟持することができる。
【0074】
また、軟質部31a、32aの基礎隙間防止板7に当接する面には、凹凸形状が形成されているため、基礎隙間防止板7をより一層安定して挟持することができる。
【0075】
また、硬質部と軟質部31a、32aの色が異なっているため、挟持部30の長手方向略中央部に色の境界ラインがある。この境界ラインは、ベタ基礎用のコンクリートを流し込む際の高さの目安とすることができる。
【0076】
本実施形態の基礎構造1では、ベタ基礎4と布基礎5との継ぎ目を交差するように基礎隙間防止板7を簡易に配置することができる。その結果、基礎隙間防止板保持具10が保持し、ベタ基礎4と布基礎5に埋設される基礎隙間防止板7によって、ベタ基礎4と布基礎5との継ぎ目に生じる隙間が遮断されるため、外部から白蟻や水分が床下へ侵入するのを防止することができる。
また、基礎隙間防止板保持具10および基礎隙間防止板7は、ベタ基礎4および布基礎5を形成する過程で配置するため、防蟻剤や止水シートを用いる場合のように基礎表面の汚れや埃を取り除く必要がなく、取付作業を簡易化できる。
また、基礎隙間防止板保持具10および基礎隙間防止板7は、外観に現れないので、作業者による出来栄えの差を軽減できる。
また、基礎隙間防止板保持具10および基礎隙間防止板7は、ベタ基礎4および布基礎5の内部に配置されるため、外部に露出したり、土と接触する場合に比べて、止水効果および防蟻効果の経時的劣化を抑制できる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。なお、上記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0078】
上記実施形態の基礎隙間防止板保持具10には、一対の脚部21が2組設けられているが、3組以上設けてもよく、1組だけ設けてもよい。
【0079】
上記実施形態では、一対の脚部21は、対向しない位置に配置されているが、少なくとも一部分が対向するように配置されていてもよい。例えば、一方の脚部21の上端部と他方の脚部21の下端部のみが対向するように配置しいてもよい。
【0080】
上記実施形態では、脚部21は、鉄筋6を把持する部分(当接部22)よりも突出先端側に、開放片23を有するが、開放片23を有していなくてもよい。
【0081】
把持部20は、ずれることなく鉄筋6を把持できる構造を有するものであれば、上記実施形態の構造に限定されない。例えば、ネジ留め構造を有していてもよい。
【0082】
軟質部31aまたは軟質部32aの基礎隙間防止板7を挟持する面に形成される凹凸形状は、図2等に示すものに限定されない。例えば、多数の四角推や円柱が立設された構造であってもよい。
【0083】
軟質部31aまたは軟質部32aの表面には、凹凸形状が形成されていなくてもよい。
【0084】
上記実施形態では、軟質部31a、32aは、固定片31および可動片32の全周に設けられているが、基礎隙間防止板7を挟持する部分にのみ設けられていてもよい。
【0085】
上記実施形態では、挟持部30の上側略半分が軟質部で構成されているが、挟持部30が全て軟質部で構成されていてもよい。
【0086】
上記実施形態では、固定片31に突起33が設けられ、可動片32にフック36が設けられているが、反対に、固定片31にフックが設けられ、可動片32に突起が設けられていてもよい。また、固定片31と可動片32とを係止するための構成は、フックと突起に限定されない。
【0087】
上記実施形態では、可動片32の上端は、固定片の上端に係止されるが、固定片の上下方向の途中に係止される構造であってもよい。
【0088】
上記実施形態では、薄肉ヒンジ部35は、可動片32の長手方向中央部より若干下側に設けられているが、薄肉ヒンジ部35の位置はこれに限定されない。例えば、可動片32の下端に設けてもよい。
【0089】
上記実施形態では、可動片32は、薄肉ヒンジ部35を有することにより、固定片31に対して相対移動可能となっているが、可動片32を固定片31に対して相対移動させるための構成は、これに限定されない。
【0090】
上記実施形態では、可動片32の下端は、固定片の下端に連結されているが、固定片の上下方向の途中に連結されていてもよい。
【0091】
挟持部30は、ずれることなく基礎隙間防止板7を挟持できる構造を有するものであれば、上記実施形態の構造に限定されない。例えば、ネジ留め構造を有していてもよい。この場合、基礎隙間防止板7を挟持する面の少なくとも一部を、他の部分よりも柔らかい軟質部で構成することが好ましい。
【0092】
上記実施形態では、基礎隙間防止板保持具10は、硬質部と軟質部の2種類の材料で構成されているが、3種類以上の材料で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 基礎構造
4 ベタ基礎
5 布基礎
6 鉄筋
7 基礎隙間防止板
10 基礎隙間防止板保持具
20 把持部
21 脚部
22 当接部
23 開放片
30 挟持部
31 固定片
31a 軟質部
32 可動片
32a 軟質部
33 突起
34 U字状の溝部
35 薄肉ヒンジ部
36 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタ基礎と布基礎との境界面に交差するように前記ベタ基礎と前記布基礎の内部に配置される基礎隙間防止板を、前記境界面を横切る縦方向の鉄筋に保持させるための基礎隙間防止板保持具であって、
前記鉄筋を把持する把持部と、
前記基礎隙間防止板を挟持する挟持部とを有することを特徴とする基礎隙間防止板保持具。
【請求項2】
前記挟持部は、前記基礎隙間防止板を挟持する面の少なくとも一部が、他の部分よりも柔らかい軟質部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項3】
前記軟質部の表面に、凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項4】
前記挟持部が、
前記把持部に連結された固定片と、
前記固定片との間に前記基礎隙間防止板が配置される隙間を形成し、一端が前記固定片に連結され、他端が前記固定片に対して係脱可能な可動片とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに基礎隙間防止板保持具。
【請求項5】
前記固定片と前記可動片の前記一端部とよって、基礎隙間防止板を保持できるU字状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項6】
前記可動片が、前記溝部より前記他端側に、他の部分よりも厚みの薄い薄肉ヒンジ部を有することを特徴とする請求項5に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項7】
前記挟持部は、前記薄肉ヒンジ部よりも前記他端側の部分における前記基礎隙間防止板を挟持する面が、他の部分よりも柔らかい軟質部で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項8】
前記軟質部が、他の部位よりも前記基礎隙間防止板に対する摩擦抵抗が大きく、
前記溝部が、前記軟質部で構成されていないことを特徴とする請求項7に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項9】
前記把持部が、前記挟持部の背面から突出して、前記鉄筋を把持する一対の脚部を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項10】
前記一対の脚部が、前記鉄筋の長手方向に複数組設けられていることを特徴とする請求項9に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項11】
前記一対の脚部が、前記鉄筋を挟んで対向しない位置に配置されていることを特徴とする請求項9または10に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項12】
前記脚部が、前記鉄筋を把持する部分よりも突出先端側に、開放片を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項13】
前記一対の脚部の前記開放片同士の間隔が、突出先端に近付くほど大きくなっていることを特徴とする請求項12に記載の基礎隙間防止板保持具。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の基礎隙間防止板保持具と、基礎隙間防止板とを含むことを特徴とする基礎隙間防止具セット。
【請求項15】
前記基礎隙間防止板が、金属製の薄板でロール状に巻き取られた形態を有することを特徴とする請求項14に記載の基礎隙間防止具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36217(P2013−36217A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172625(P2011−172625)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(390004145)城東テクノ株式会社 (53)
【Fターム(参考)】