説明

塗工ウエブの製造装置及びその製造方法

【課題】簡単な全体構成にて、塗工ウエブを効果的に製造する製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】低延焼性シガレットのための塗工ウエブに適用した製造装置は、その製造方法を実施するにあたり、塗工すべきウエブWの走行経路2の途中に規定された塗工位置にて、走行経路2を挟んで配置され、互いのバックローラとして機能するロータリスクリーン4及びグラビアローラ6を備え、ロータリスクリーン4はウエブWの一方の面に液状の燃焼抑制剤を塗布して、ウエブWの走行方向に所定の間隔を存してバンド層を形成し、一方、グラビアローラ6はウエブWの他方の面に水を塗布し、バンド層と交互に並ぶ湿潤バンドを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブに塗布処理を施した塗工ウエブを製造する製造装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の塗工ウエブとして、例えば低延焼性シガレットのための巻紙として使用されるウエブが知られている。低延焼性シガレットは、その巻紙(ウエブ)に燃焼抑制剤からなる複数のバンド層を有し、これらバンド層は低延焼性シガレットの全周を囲み且つその軸線方向に所定の間隔を存して配置されている。
このような低延焼性シガレットは、着火したままの状態で可燃物上に落下しても、可燃物への延焼を燃焼抑制剤からなるバンド層によって低減でき、安全性に優れたものとなっている。
【0003】
上述した低延焼性シガレットの製造に使用されるウエブはその走行過程にて、ウエブに液状の燃焼抑制剤を塗布してバンド層を形成し、この後、ウエブのバンド層を乾燥することで得られる。より詳しくは、特許文献1の装置及び方法では、バンド層の形成がウエブへの燃焼抑制剤の塗布を複数回に分けて実施され、各回の塗布処理の直後にバンド層の乾燥処理をも併せて実施されている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2004-512849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の装置及び方法にあっては、ウエブの走行経路に燃焼抑制剤を塗布する複数の塗布器を順次配置する一方、各塗布器の後段にも乾燥器をそれぞれ配置しなければならず、その全体構成が大掛かりなものとなる。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、全体構成を簡単にしてウエブに対する塗工処理を効果的に実施することができる塗工ウエブの製造装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の塗工ウエブの製造装置は、塗工すべきウエブの走行経路に規定された塗工位置に配置され、ウエブの一方の面に第1塗工液を塗布する第1塗布器と、走行経路の塗工位置に配置され、ウエブの他方の面に第2塗工液を塗布する第2塗布器とを備える(請求項1)。
上述の製造装置によれば、ウエブが走行経路の塗工位置を通過する際、その両面に第1及び第2塗工液が同時的に塗布される。
【0006】
具体的には、第1及び第2塗布器は共に輪転式であり、ウエブに塗布液を塗布する版胴をそれぞれ含んでいる(請求項2)。より具体的には、一方の塗布器は版胴としてのロータリスクリーンを含み、他方の塗布器の版胴は前記ロータリスクリーンのためのバックローラを兼用している(請求項3)。
好ましくは、第1及び第2塗布器はそれぞれの版胴に共通の駆動モータと、この駆動モータから第1及び第2塗布器の版胴に駆動力を伝達するギヤ列とを更に含んでいるか(請求項4)、それぞれの版胴にそれぞれ割り当てて設けられた駆動モータと、第1及び第2塗布器の版胴の回転を同期させる回転同期手段とを更に含んでいる(請求項5)。
【0007】
例えば、ウエブがシガレットの巻紙として使用される場合、第1塗布器は、ウエブの一方の面に第1塗工液としての燃焼抑制剤を塗布し、この燃焼抑制剤のバンド層をウエブの走行方向に所定の間隔を存して形成し、第2塗布器は、ウエブの他方の面においてバンド層間に対応した領域に水様液を塗布する(請求項6)、この場合、燃焼抑制剤はアルギン酸ナトリウムの水溶液であり、第2塗工液は水である(請求項7)。
【0008】
更に、本発明は塗工ウエブの製造方法をも提供し、この製造方法は、塗工すべきウエブの走行経路に規定された塗工位置にて、走行中のウエブの一方の面に第1塗工液を塗布する一方、ウエブの他方の面に第2塗工液を塗布する(請求項8)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜8の塗工ウエブの製造装置及び製造方法は、ウエブの走行経路に規定された塗工位置にて、ウエブの両面に第1及び第2塗工液をそれぞれ塗布するので、第1及び第2塗布装置は塗工位置にそれぞれ配置され、走行経路の経路方向でみて、その全体構成を簡単にできるばかりでなく、ウエブに第1及び第2塗工液を効果的に塗布でき、更には塗布処理後、ウエブの乾燥処理もまた1回で済ますことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、低延焼性シガレットのための巻紙として使用される塗工ウエブに適用した一実施例の製造装置を示す。
一実施例の製造装置は塗工ウエブの製造方法を実施するにあたり、塗工すべきウエブWの走行経路2に組み込まれており、この走行経路2はウエブWの繰出しリールと、ウエブWの巻取りリールとの間に亘って延びている。ウエブWは繰出しリールから走行経路2に沿って繰出され、そして、巻取りリールに巻取られる。なお、図1中、参照符号2aはウエブWのためのガイドローラを示す。
【0011】
走行経路2の途中には塗工位置が規定され、この塗工位置に第1塗布器の版胴、即ち、円筒状のロータリスクリーン4が回転可能に配置され、このロータリスクリーン4は走行経路2、即ち、ウエブWを横断する方向に延びている。また、ロータリスクリーン4の近傍には走行経路2を挟んで、そのバックローラとしても機能する第2塗布器の版胴、例えばグラビアローラ6が回転可能に配置されている。
【0012】
図2(a)に示されるように、ロータリスクリーン4はポンプ8を通じ、第1塗工液として、液状の燃焼抑制剤の供給を受けることができる。それ故、ウエブWが繰出しリールから巻取りリールに向けて走行し、塗工位置にてロータリスクリーン4とグラビアローラ6との間を通過する際、ロータリスクリーン4はグラビアローラ6をバックローラとし、そのスキージ10と協働してウエブWの一方の面に液状の燃焼抑制剤を塗布し、燃焼抑制剤からなるバンド層B(図2(a)中のハッチング領域)を所定のパターンにて形成する。具体的には、バンド層BはウエブWの全幅に亘って延び、且つ、ウエブWの走行方向に所定の間隔を存して分布され、このようなバンドBを形成すべくロータリスクリーン4は構成されている。
【0013】
ここで、燃焼抑制剤は2〜6質量%のアルギンナトリウムを含む水溶液であり、10000〜200000mPasの粘度を有する。具体的には、燃焼抑制剤は以下のアルギン酸ナトリウムα,βを所定の配合比率(α:β=4:6〜6:4)にて含んでいる。
α=低重合度アルギン酸ナトリウム:1質量%のαの水溶液は20℃にて、50mPas以下の粘度、300以下の重合度を有する。
【0014】
β=高重合度アルギン酸ナトリウム:1質量%のαの水溶液は20℃にて、800mPas以上の粘度、600以上の重合度を有する。
一方、図1及び図2(b)に示されるように、グラビアローラ6には走行経路2とは反対側にファーニッシャローラ12が転接されており、これらローラ6,12間のニップ領域に上方から第2塗工液としての水様液、即ち、水が供給される。具体的には、図2(b)に示すように、ニップ領域の上方には供給パイプ14が導かれており、この供給パイプ14からニップ領域に水が供給される。
【0015】
更に、ファーニッシャローラ12の下方にはニップ領域から漏出する水を受け止めるための受けパン16や、グラビアローラ6に摺接するドクタブレード18が配置され、そして、ファーニッシャローラ12は自身の駆動モータ20により回転される。なお、図2(b)中、ニップ領域に溜まった水は参照符号Lで示されている。
前述したようにウエブWの一方の面に燃焼抑制剤が塗布されると同時に、グラビアローラ6は前述のロータリスクリーン4をバックローラとしてニップ領域から供給された水をウエブWの他方の面に塗布し、この他方の面に湿潤バンドM(図2(b)中のドット分布域)を形成する。具体的には、湿潤バンドMもまたウエブWの幅全域に亘って延び、且つ、の走行方向に所定の間隔を存して分布され、図3(a),(b)から明らかなように、バンド層B及び湿潤バンドMはウエブWの走行方向でみて交互に配置される。即ち、グラビアローラ6の外周面には上述の湿潤バンドMを形成すべく、その周方向に間隔を存して凹部が形成されている。
【0016】
また、図2(a),(b)にはロータリスクリーン4及びグラビアローラ6のための駆動源22が具体的に示されている。この駆動源22は、ロータリスクリーン4及びグラビアローラ6に共通の駆動モータ24を備え、この駆動モータ24はロータリスクリーン4及びグラビアローラ6にギヤ列26を介して接続されている。より詳しくは、ギヤ列26は、駆動モータ24の出力軸に取付られた出力ギヤ28と、この出力ギヤ28に直接又は間接的に噛み合い且つロータリスクリーン4及びグラビアローラ6に同軸に取付けられた駆動ギヤ30,32を含んでいる。
【0017】
上述の駆動源22によれば、駆動モータ24がギヤ列26を介してロータリスクリーン4及びグラビアローラ6に接続されているので、これらロータリスクリーン4及びグラビアローラ6は互いに同期して回転し、ウエブWにバンド層B及び湿潤バンドMを正確に形成することができる。
更に、走行経路2にはロータリスクリーン4及びグラビアローラ6の下流に乾燥器が配置されており、この乾燥器はウエブWが通過する際、ウエブWを例えば120〜130℃に加熱し、バンド層B及び湿潤バンドMを急速に乾燥させ、ここで乾燥処理後、ウエブWは巻取りリールに巻取られる。
【0018】
上述の乾燥処理時、ウエブWはバンド層B及び湿潤バンドMにより、ほぼ一様に濡れた状態にあることから、乾燥処理を受け、ウエブWが収縮するとしても、ここでの収縮はウエブWの全体に亘って均一となり、乾燥後、ウエブWに皺が発生することもない。
しかも、湿潤バンドMはウエブWの他方の面に塗布されるので、湿潤バンドMの水がバンド層Bの燃焼抑制剤と混じり合うこともない。それ故、湿潤バンドMの形成、詰まり、水の塗布がバンド層Bの形成に悪影響を及ぼすこともなく、バンド層Bの正確な形成が可能となる。
【0019】
なお、巻取りリールに巻取られた塗工ウエブはウエブロールとしてシガレット巻上機に装着され、低延焼性シガレットの製造に使用される。
本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、図4に示されるように駆動源22は、ロータリスクリーン4及びグラビアローラ6にそれぞれ割り当てられたサーボモータ34,36を備えていてもよく、この場合、これらサーボモータ34,36はその出力軸に対応する駆動ギヤ30,32に噛み合う出力ギヤ38,40を有する。
【0020】
このようにロータリスクリーン4及びグラビアローラ6が独立して回転される場合、前述のバンドB及び湿潤バンドMの正確な形成にはロータリスクリーン4及びグラビアローラ6の回転を同期させる必要があり、それ故、駆動源22は回転同期手段43を更に備えている。
回転同期手段43は、駆動ギヤ30,32の外周にそれぞれ設けられ、ロータリスクリーン4及びグラビアローラ6の基準回転角位置を示す被検出子42,44と、これら被検出子42,44の通過を検出する同期センサ46,48と、これら同期センサ46,48からの検出信号を受取り、サーボモータ34,36の少なくとも一方の回転を制御するコントローラ50とを備える。
【0021】
具体的には、コントローラ50は同期センサ46からの検出信号を基準することで、同期センサ48から検出信号に基づきロータリスクリーン4及びグラビアローラ6間での同期回転のずれを判別し、そして、この判別結果に基づき、サーボモータ36の回転を制御することで、ウエブWの両面にバンド層B及び湿潤バンドMの正確な形成を可能にする。
なお、上述の同期センサ46に代えて、サーボモータ34,36が内蔵するアブソリュート型のロータリエンコーダ(図示しない)を使用しても、サーボモータ34,36の回転を同様に同期させることができる。
【0022】
一方、本発明の製造装置は、前述したシガレット巻上機において、低延焼シガレット用巻紙となるウエブの供給経路に組み込むことも可能であり、また、燃焼抑制剤及び水様液もまた一実施例に例示したものに限られるものではない。
更に、本発明は、低延焼性シガレットのための塗工ウエブに限らず、種々の塗工ウエブの製造にも同様に適用することができる。
【0023】
それ故、本発明の製造装置は、図5(a)に示されるようにウエブWの一方の面に第1塗布器によって第1塗工液を塗布し、一方の面の全域に塗工層Xを形成する一方、ウエブWの他方の面に第2塗布器によって第2塗工液を塗布し、他方の面にウエブWの走行方向に所定の間隔を存してバンド層Yを形成するものであってもよいし、また、図5(b)に示されるようにウエブWの両面に互い対向するようなバンド層Zを第1及び第2塗布器により形成するものであってもよい。
【0024】
更に、本発明の製造装置は、ロータリスクリーンとグラビアローラの組合せにも限らず、フレキソ又はオフセット印刷の版胴とロータリスクリーンとの組合せや、グラビア、フレキソ、オフセット印刷の版胴とフレキソ印刷の版胴との組合せであってもよい。
更にまた、第1及び第2塗工液にも種々のものを使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施例の製造装置を示した概略斜視図である。
【図2】図1の製造装置の駆動源を具体的に示し、(a)はロータリスクリーン側からみた図、(b)はグラビアローラ側からみた図である。
【図3】バンド層及び湿潤バンドが形成されたウエブを示し、(a)は湿潤バンド側のウエブの片面を示した図、(b)はウエブの側面図である。
【図4】変形例の駆動源を示した図である。
【図5】ウエブに対する変形例の塗工パターンを(a),(b)にて示した図である。
【符号の説明】
【0026】
2 走行経路
4 ロータリスクリーン(第1塗布器、バックローラ)
6 グラビアローラ(第2塗布器、バックローラ)
12 ファーニッシャローラ
22 駆動源
24 駆動モータ
26 ギヤ列
43 回転同期手段
B バンド層(燃焼抑制剤)
L 水(水様液)
M 湿潤バンド
W ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工すべきウエブの走行経路に規定された塗工位置に配置され、前記ウエブの一方の面に第1塗工液を塗布する第1塗布器と、
前記走行経路の前記塗工位置に配置され、前記ウエブの他方の面に第2塗工液を塗布する第2塗布器と
を具備したことを特徴とする塗工ウエブの製造装置。
【請求項2】
前記第1及び第2塗布器は共に輪転式であり、前記ウエブに塗布液を塗布する版胴をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1に記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項3】
一方の塗布器は版胴としてのロータリスクリーンを含み、
他方の塗布器の版胴は前記ロータリスクリーンのためのバックローラを兼用する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項4】
前記第1及び第2塗布器は、
それぞれの版胴に共通の駆動モータと、
前記駆動モータから前記第1及び第2塗布器の前記版胴に駆動力を伝達するギヤ列と
を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項5】
前記第1及び第2塗布器は、
それぞれの版胴にそれぞれ割り当てて設けられた駆動モータと、
前記第1及び第2塗布器の前記版胴の回転を同期させる回転同期手段と
を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項6】
前記ウエブはシガレットの巻紙として使用され、
前記第1塗布器は、前記ウエブの一方の面に第1塗工液としての燃焼抑制剤を塗布し、この燃焼抑制剤のバンド層を前記ウエブの走行方向に所定の間隔を存して形成し、
前記第2塗布器は、前記ウエブの他方の面において前記バンド層間に対応した領域に水様液を塗布することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項7】
前記燃焼抑制剤はアルギン酸ナトリウムの水溶液であり、
前記第2塗工液は水であることを特徴とする請求項6に記載の塗工ウエブの製造装置。
【請求項8】
塗工すべきウエブの走行経路に規定された塗工位置にて、走行中の前記ウエブの一方の面に第1塗工液を塗布する一方、前記ウエブの他方の面に第2塗工液を塗布することを特徴とする塗工ウエブの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−99630(P2010−99630A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275387(P2008−275387)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【出願人】(000237260)富士機械工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】