説明

塗工膜の乾燥装置及び塗工膜の乾燥方法

【課題】塗工液の塗布された塗工膜を均一的に乾燥させ、乾燥ムラを防止することができる乾燥装置及び乾燥方法を提供する。
【解決手段】キャリアフィルム10上に溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、塗工膜を乾燥させる塗工膜の乾燥装置14aであって、乾燥装置14a内で塗工膜を形成したキャリアフィルム10を搬送してゆくとき、塗工膜の中心のみに向けて直接温風を吹き付けると共に、塗工膜の外周には間接的にエアーを当てる送風手段20を備える。塗工膜は、自然乾燥では通常外側から中心に向かって溶剤が揮発されてゆき乾燥されることになるが、乾燥の遅れがちな塗工膜の中心のみに向けて直接エアーを送風し、中心側の溶剤の乾燥を早めることができるので、塗工膜全体を均一的に乾燥することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製等からなるキャリアフィルムに塗布された塗工膜を乾燥させる乾燥装置及び塗工膜の乾燥方法に関し、特に、キャリアフィルムに塗工膜となり得るスラリーを塗布した後に行われる乾燥工程で、乾燥対象であるスラリーに品質ムラが発生することを防止する塗工膜の乾燥装置及び塗工膜の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話などの小型で高性能且つ省電力化が要請されている電子機器においては、それらに内蔵される大容量のコンデンサやCPU等の種々の電子部品も小型で高性能化されたものが要求され、それに伴い技術が急速に発展している状況にある。ところで、小型でチップ化された電子部品の中で、積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、セラミックス(金属酸化物)と金属電極とを層状に交互に積み重ねて一体化した構造を有しており、合成樹脂等からなるベースとなるキャリアフィルムに対し、スラリーと称する誘電体ペーストを塗布し(塗工工程)、塗布されたスラリーを乾燥装置で加熱乾燥することでセラミックスシート(所謂グリーンシート)を形成し(乾燥工程)、この加熱乾燥されたセラミックスシートに電極を印刷(印刷工程)した後、電極とセラミックスシートとからなる複合体をセラミックスシートから剥離する(剥離工程)などして製造が行われている。
【0003】
前述した乾燥工程により塗工膜としてのスラリーを乾燥させる際には、通常、乾燥装置内でスラリーの塗布されたグリーンシートを水平方向に一定速度で搬送させながら、スラリーに対し熱風を吹き付けることでその乾燥を行っているのだが、単に、スラリーに対し熱風を吹き付けただけでは、スラリーを均一的に乾燥させることが困難なため、その表面にひびや厚みにばらつきが生じ品質ムラが発生してしまう。
【0004】
上記従来技術に関連するものとして特許文献1には、長尺状の支持体に対し塗布液を塗布した後、塗布液の塗布された支持体を乾燥装置内で乾燥する塗布膜の乾燥方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−334561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1においては、塗布膜の溶剤含有量、乾燥速度、乾燥温度等の条件を設定することで、塗工膜の乾燥ムラを防止しようというものであるが、これらの条件を如何に設定したとしても、塗工膜が乾燥するときには、塗工膜の塗布された塗工領域の中心位置や外側位置などのその位置の相違によって乾燥時間が相違してくることから、塗工膜を均一に乾燥させるには好適ではない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するもの、及び方法であり、塗工膜の塗布された塗工領域に対し、乾燥し難い位置に直接エアーを吹き付け、乾燥し易い部位には間接的にエアーを当て、塗工液の塗布された塗工膜を均一的に乾燥させることができる塗工膜の乾燥装置及び塗工膜の乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本塗工膜の乾燥装置は、
キャリアフィルム上に溶剤を含む誘電体ペースト等の塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、該塗工膜から前記溶剤を乾燥させる塗工膜の乾燥装置であって、
前記乾燥装置内に前記塗工膜を形成したキャリアフィルムを搬送したとき、
前記キャリアフィルム上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、直接エアーを吹き付ける送風手段を備える。
【0009】
これにより、キャリアフィルム上で溶剤を含む塗工液の塗布された塗工膜は、自然乾燥では通常外側から中心に向かって溶剤が揮発してゆき乾燥される特性を有するが、乾燥の遅れる塗工膜の中心のみに向けて直接エアーを送風し、乾燥の遅れがちな塗工膜の中心側の溶剤の乾燥を、塗工膜の側部側(外側)の溶剤の乾燥と同じようなタイミングで完了させることができる。
【0010】
さらに、本塗工膜の乾燥装置は、前記塗工膜の中心のみに向けて吹き付けられるエアーを加熱する加熱装置を備える。
【0011】
これにより、加熱装置で加熱された温風を塗工膜に吹き付けるから、塗工膜の乾燥を促進することができる。
【0012】
さらに、本塗工膜の乾燥装置は、溶剤を含む誘電体ペースト等の塗工液を塗布して塗工膜を形成したキャリアフィルムを連続的に乾燥装置内に搬送してゆき、該乾燥装置内で搬送されてゆく前記キャリアフィルムに塗布された塗工膜の搬送方向と直交する幅方向の中心のみに向けて、直接温風を吹き付ける送風手段を備える。
【0013】
これにより、塗工膜の塗布されたキャリアフィルムが乾燥装置内で連続的に搬送されてゆくときであっても、その搬送中に常にキャリアフィルムの幅方向の中心に温風を吹き付けることができるから、加熱装置内で搬送中にある塗工膜の側部側(外側)の溶剤の乾燥と中心側の溶剤の乾燥時間が同じくらいになるようにして、塗工膜全体から溶剤を均一的に乾燥することができる。
【0014】
さらに、本塗工膜の乾燥装置は、前記塗工膜の幅方向の側部に、前記塗工膜の幅方向の中心のみに向けて直接送風された温風が吸い込まれる排気孔を設けたものである。
【0015】
これにより、塗工膜の中心に直接送付された温風が、塗工膜の幅方向側部の排気孔から排出されるので、塗工膜の中心の表面から側部の表面に沿うようにして、温風が排気孔から排出されてゆき、その際には、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができる。よって、自然乾燥では塗工膜に含まれる塗工液が側部側(外側)から中心側に向かって乾燥されてゆくが、塗工膜から均一的になるようにして溶剤を乾燥させることができる。
【0016】
さらに、本塗工膜の乾燥装置は、前記排気孔から吸い込まれた温風を吸引して外部に強制排気する排出装置を備える。
【0017】
これにより、塗工膜の中心のみに吹き付けられる送風が非常に強くした場合には、乾燥装置内で上昇しようとする対流や乱流が発生する虞があるものの、排出装置により塗工膜の中心のみに吹き付けられる送風を吸引して強制的排出することができるので、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができるので、塗工膜から溶剤を均一的に乾燥させることができる。
【0018】
また、本塗工膜の乾燥方法の発明によれば、キャリアフィルム上に溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、該塗工膜から前記溶剤を乾燥させる塗工膜の乾燥方法であって、前記キャリアフィルム上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、加熱装置で加熱された温風を直接吹き付け、塗工膜の中心に吹き付けられる温風が前記塗工膜の中心から側部に流れてゆくにつれ、塗工膜に対する風力が弱くなるようにして、前記塗工膜を乾燥させるから、塗工膜全体を均一的に乾燥させることができる。
【0019】
さらに、本塗工膜の乾燥方法の発明によれば、前記塗工膜の側部に排気孔を設け、前記塗工膜の中心から側部に流れてゆく温風を吸引させながら前記排気孔から排出するので、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができるので、塗工膜から溶剤を均一的に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗工膜の乾燥装置又は塗工膜の乾燥方法によれば、塗工液に含まれた溶剤を塗工膜の側部(外側)から中心に亘って均一的に揮発させ乾燥することができるので、塗工膜の乾燥ムラやキャリアフィルムに塗工液を塗布して塗工膜を形成し、それを乾燥させて得たキャリアフィルム(所謂、グリーンシート)に対し、ひびや厚みのばらつき等の品質ムラが発生することを抑止することができ、ひいては製造精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】塗工ユニット、レベリングユニット、搬送ユニット、乾燥ユニット、及び印刷ユニットを構成する塗工装置を示す斜視図である。
【図2】塗工ユニット、レベリングユニット、搬送ユニット、乾燥ユニット、及び印刷ユニットを構成する塗工装置を示す正面図である。
【図3】乾燥ユニットを上方から視た状態を示す斜視図である。
【図4】カバーを取り外した状態の乾燥ユニットを示す斜視図である。
【図5】カバーを取り外した状態で乾燥ユニットを下方から視た状態を示す斜視図である。
【図6】乾燥ユニットに構成される低温乾燥装置を示すA−A線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態としての実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0023】
図1に示すように、塗工装置1には、塗工ユニット2、レベリングユニット3、搬送ユニット4、乾燥ユニット5、及び印刷ユニット6が構成されており、図2に示すように、塗工ユニット2、レベリングユニット3及び搬送ユニット4、乾燥ユニット5、印刷ユニット6の順序でこれらが隣接して配設されており、図2で矢印にて搬送方向を表したように、搬送されるキャリアフィルムはUターンするようにして搬送されるものである。
【0024】
搬送ユニット4には、キャリアフィルム10の巻き出しを行うための巻出しローラ11、この巻出しローラ11から巻き出されたキャリアフィルム10を巻き取る巻取りローラ12、巻取りローラ12を駆動するための駆動モータ9等が設けられており、巻出しローラ11、巻取りローラ12、及び駆動モータ9は低位置に設置され、その上部の空き空間を用いて、レベリングユニット3が配設されている。なお、レベリングユニット3とは、塗工ユニット2でキャリアフィルム10に塗布されたスラリーと称する塗工液(詳しくは溶剤を含む誘電体ペーストであり、さらに具体的には、酸化チタン、ジルコニウム、チタン酸バリウムの内の少なくとも1つのセラミック粉末を含む誘電体ペーストである。)に含まれた溶剤を、乾燥ユニット5内で加熱乾燥させて塗工膜としてのセラミックスシートを形成する前に安定させるための、外側がカバー13で覆われた空間領域であり、密閉空間領域ではないが、所定の環境下(溶剤雰囲気中)において、塗工膜の表面粗さを安定させるものである。
【0025】
また、巻取りローラ12の駆動により巻出しローラ11から搬送されてきたキャリアフィルムは、前述したように、塗工ユニット2で溶剤を含む塗工液が塗布された後、レベリングユニット3内の空間領域で塗工液の表面の粗さが安定され、その後、乾燥ユニット5の上部に設けられた第1〜第4の低温乾燥装置14a,14b,14c,14dの順でその内部で40℃〜50℃程で乾燥され、乾燥後には、塗工液がキャリアフィルムに塗布されて乾燥された部位(セラミックスシート)に、印刷ユニット6によって印刷材料(具体的には導電体ペーストであり、乾燥されることで電極となる。)がさらに転写され、印刷材料が転写された前記セラミックスシートをキャリアフィルム10から剥離させた後、第1〜第4の高温乾燥装置15a,15b,15c,15dの順でその内部で100℃〜120℃程で高温に乾燥され、キャリアフィルム10は巻取りローラ12に巻き取られ、印刷材料(導電体ペースト)が転写され乾燥されたセラミックスシートは、図示しない所定のローラに巻き取られてゆく。
【0026】
ここで乾燥ユニット5に構成された本願発明である乾燥装置としての低温乾燥装置についてさらに説明する。なお、本実施例では、第1〜第4の低温乾燥装置14a〜14d、すなわち低温乾燥装置を4つ有しているものであるが、これらの基本構造は同じであるので、第1の低温乾燥装置4aについてのみ図3〜図6等に基づき以下に説明する。
【0027】
第1の低温乾燥装置4aの筐体16において、キャリアフィルム10の搬送方向(水平方向)側の面には、図3〜図5に示すように、上面に塗工液の塗布されたキャリアフィルムを供給したり排出するための、供給孔17と排出孔18が形成されている。
【0028】
また、供給孔17から搬送され排出孔18から排出される塗工液の塗布されたキャリアフィルム10の下部には、図6に示すように、キャリアフィルムの下面に向かって遠赤外線を放射する、円筒状の加熱ヒータ19が複数設けられ、筐体16の上部には、筐体16内に搬送されてきたキャリアフィルム10の上面の塗工膜(塗工液が塗布された部位)の中心のみ(より詳しくは、塗工膜の幅方向の中心のみ)向けて、直接エアーを吹き付ける送風手段20が設けられている。
【0029】
送風手段20には、加熱装置21で加熱されたエアーが供給されるようになっており、送風手段20に構成される筐体上面に形成された温風供給口22から、水平方向に配置されている塗工膜の中心のみに向かって垂直方向に温風が吹き付けられる。なお、送風手段20には、温風供給口22の開口量を調整するためのスライドドア23が開閉自在に設けられており、塗工膜の中心のみに向けって吹き付けられるその範囲を調整することができる。
【0030】
また、図6に示すように、筐体16内の塗工膜の幅方向(図6に示す左右方向)の両側部であって、塗工膜よりも下側には、塗工膜の幅方向の中心のみに向けて直接送風された温風を吸い込むための排気孔25が設けられており、この排気孔25から、塗工膜の中心のみに向けって吹き付けられた温風を外部に誘導しながら排出するときには(図6に示す点線の矢印)、温風を強制的に吸い出す排出装置26により、排気孔25を介して装置の外部に強制排気することができる。
【0031】
上述した乾燥装置としての低温乾燥装置14a〜14dによれば、キャリアフィルム10上に溶剤を含む誘電体ペースト等の塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、この塗工膜から溶剤等を乾燥させる塗工膜の乾燥装置であって、低温乾燥装置14a〜14d内に塗工膜を形成したキャリアフィルム10を搬送中のとき、キャリアフィルム10上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、直接エアーを吹き付ける送風手段20を備えるから、キャリアフィルム10上で溶剤を含む塗工液の塗布された塗工膜は、例えば、自然乾燥では通常外側から中心に向かって溶剤が揮発してゆき乾燥される特性を有するが、本実施例においては、乾燥の遅れる塗工膜の中心のみに向けて直接エアーを吹き付けると共に、塗工膜の外周側には間接的にエアーを当てる送風手段20を備えるから、乾燥の遅れがちな塗工膜の中心側の溶剤の乾燥を、塗工膜の側部側(外側)の溶剤の乾燥とほぼ同じタイミングで完了させることができる。
【0032】
さらに、塗工膜の中心のみに向けて吹き付けられるエアーを加熱する加熱装置21を備えるから、加熱装置21で40℃〜50℃程に加熱された温風を塗工膜に吹き付けることで、塗工膜の乾燥を促進することができる。
【0033】
さらに、溶剤を含む誘電体ペースト等の塗工液を塗布して塗工膜を形成したキャリアフィルム10を、搬送ユニット4により連続的に低温乾燥装置14a〜14d内に搬送してゆき、該低温乾燥装置14a〜14d内で搬送されてゆくキャリアフィルム10に塗布された塗工膜の搬送方向と直交する幅方向の中心のみに向けて、直接温風を吹き付ける送風手段20を備えるから、これにより、塗工膜の塗布されたキャリアフィルム10が低温乾燥装置14a〜14d内で連続的に搬送されてゆくときであっても、その搬送中に常にキャリアフィルム10の幅方向の中心のみに温風を吹き付けることができる。よって、低温乾燥装置14a〜14d内で搬送中にある塗工膜の幅方向の側部側(外側)の溶剤の乾燥と中心側の溶剤の乾燥時間が同じくらいになるようにして、塗工膜全体から溶剤を均一的に乾燥することができる。
【0034】
さらに、塗工膜の幅方向の側部に、塗工膜の幅方向の中心のみに向けて直接送風された温風を吸い込むための排気孔25を設けたから、塗工膜の中心のみに直接送付された温風が、塗工膜の幅方向側部の排気孔25から排出されるので、塗工膜の中心の表面から側部の表面に沿うようにして、排気孔25から温風が排出されてゆき、その際には、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができる。よって、自然乾燥では塗工膜に含まれる塗工液が側部側(外側)から中心側に向かって乾燥されてゆくが、塗工膜から均一的になるようにして溶剤を乾燥させることができる。
【0035】
さらに、排気孔25から吸い込まれる温風を吸引して外部に強制排気する排出装置26を備えるから、塗工膜の中心のみに吹き付けられる送風が非常に強くした場合には、低温乾燥装置14a〜14d内で上昇しようとする対流や乱流が発生する虞があるものの、排出装置26により塗工膜の中心のみに吹き付けられる送風を吸引して強制的に排出することができるので、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができるので、塗工膜から溶剤を均一的に乾燥させることができる。
【0036】
また、本塗工膜の乾燥方法の発明によれば、キャリアフィルム10上に溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、塗工膜から溶剤及び誘電体ペーsを乾燥させる塗工膜の乾燥方法であって、キャリアフィルム10上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、低温乾燥装置14a〜14dで加熱された温風を直接吹き付け、塗工膜の中心に吹き付けられる温風が塗工膜の中心から側部に流れてゆくにつれ、塗工膜に対する風力が弱くなるようにして、塗工膜を乾燥させるから、塗工膜全体を均一的に乾燥させることができる。
【0037】
さらに、塗工膜の側部に排気孔25を設け、塗工膜の中心から側部に流れてゆく温風を吸引させながら排気孔25を介して外部に排出できるので、塗工膜の中心には強い温風をあて、側部側(外側)に流れてゆくにつれ、温風を弱くすることができるので、塗工膜から溶剤を均一的に乾燥させることができる。
【0038】
そして、以上述べた塗工膜の低温乾燥装置14a〜14d又は塗工膜の乾燥方法の発明によれば、塗工液に含まれた溶剤等を塗工膜の側部(外側)から中心に亘って均一的に揮発させ誘電体ペーストを乾燥させることができるので、塗工膜の乾燥ムラやキャリアフィルム10に塗工液を塗布して塗工膜を形成し、それを乾燥させて得たセラミックスシート(所謂、グリーンシート)に対し、ひびや厚みのばらつき等の品質ムラが発生することを抑止することができ、ひいてはセラミックスシートの製造精度を向上することができるという効果を奏することができる。
【0039】
以上、本発明の一例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく種々の変形実施が可能であり、例えば、印刷材料の転写される対象物としては、可撓性のあるフィルム状のものであれば何れでもよく、適宜選定してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 塗工装置
2 塗工ユニット
3 レベリングユニット
4 搬送ユニット
5 乾燥ユニット
6 印刷ユニット
9 駆動モータ
10 キャリアフィルム
11 巻出しローラ
12 巻取りローラ
13 カバー
14a 第1の低温乾燥装置(乾燥装置)
14b 第2の低温乾燥装置(乾燥装置)
14c 第3の低温乾燥装置(乾燥装置)
14d 第4の低温乾燥装置(乾燥装置)
15a 第1の高温乾燥装置
15b 第2の高温乾燥装置
15c 第3の高温乾燥装置
15d 第4の高温乾燥装置
16 筐体
17 供給孔
18 排出孔
19 加熱ヒータ
20 送風手段
21 加熱装置
22 温風供給口
23 スライドドア
25 排気孔
26 排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルム上に溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、該塗工膜から前記溶剤を乾燥させる塗工膜の乾燥装置であって、
前記乾燥装置内に前記塗工膜を形成したキャリアフィルムを搬送したとき、
前記キャリアフィルム上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、直接エアーを吹き付ける送風手段を備えることを特徴とする塗工膜の乾燥装置。
【請求項2】
前記塗工膜の中心のみに向けて吹き付けられるエアーを加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗工膜の乾燥装置。
【請求項3】
溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成したキャリアフィルムを連続的に乾燥装置内に搬送してゆき、該乾燥装置内で搬送されてゆく前記キャリアフィルムに塗布された塗工膜の搬送方向と直交する幅方向の中心のみに向けて、直接温風を吹き付ける送風手段を備えることを特徴とする塗工膜の乾燥装置。
【請求項4】
前記塗工膜の幅方向の側部に、前記塗工膜の幅方向の中心のみに向けて直接送風された温風が吸い込まれる排気孔を設けたことを特徴とする請求項3に記載の塗工膜の乾燥装置。
【請求項5】
前記排気孔から吸い込まれた温風を吸引して外部に強制排気する排出装置を備えたことを特徴とする請求項4に記載の塗工膜の乾燥装置。
【請求項6】
キャリアフィルム上に溶剤を含む塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、該塗工膜から前記溶剤を乾燥させる塗工膜の乾燥方法であって、
前記キャリアフィルム上に塗布された塗工膜の中心のみに向けて、加熱装置で加熱された温風を直接吹き付け、塗工膜の中心に吹き付けられる温風が前記塗工膜の中心から側部に流れてゆくにつれ、塗工膜に対する風力が弱くなるようにして、前記塗工膜を乾燥させる塗工膜の乾燥方法。
【請求項7】
前記塗工膜の側部に排気孔を設け、前記塗工膜の中心から側部に流れてゆく温風を吸引させながら前記排気孔から排出する前記請求項6に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項の記載において、前記塗工液は誘電体ペーストであることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177672(P2011−177672A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45864(P2010−45864)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(501376590)株式会社ジェイシーエム (20)
【Fターム(参考)】