説明

塗工装置および電極の製造方法

【課題】 流路内の塗工液の圧力を適切に制御することができる塗工装置、およびこれを用いて高品質な電極を歩留まりよく形成することができる電極の製造方法を提供する。
【解決手段】 塗工部220内の流路221に塗工液Mを供給し、吐出孔222から吐出して集電体110に電極層120を形成する。流路221と吐出孔222との境界に保持溝241および遮断部材242を設ける。電極層120を形成する工程では、保持溝241内で遮断部材242の閉鎖面242Aを吐出孔222の上壁面222Aに接触させて流路221と吐出孔222との間を遮断する。露出領域130を形成する工程では、遮断部材242の閉鎖面242Aを上壁面222Aから離して流路221と吐出孔222とを連通させる。遮断機構240に協調して圧力調整弁252を開閉すると共に移動機構260により塗工部220と集電体110との間の間隙Gの大きさを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体に活物質を含む電極層を間欠的に形成するための塗工装置、およびこの塗工装置を用いた電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等のポータブル電子機器の電源として使用される二次電池の研究開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を実現することができるものとして注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極と負極とをセパレータを間にして配置した構成を有している。正極および負極は、金属箔よりなる集電体に活物質を含む塗工液を塗工して電極層を形成したものである。また、正極および負極には、電極層が形成されず集電体が露出した露出領域が設けられている。この露出領域は、電流を外部に取り出すためのリードを取り付けるために必要とされる。
【0004】
図10は、電極層の形成に用いられている従来の塗工装置の一例を表したものである。この塗工装置は、集電体310を保持ロール411上で搬送しながら、塗工部(スロットダイ)420から塗工液Mを吐出して集電体310に電極層320を形成するものである。塗工部420の内部には、塗工液Mが供給される流路421および吐出孔(スロット)422が形成されている。流路421の入口には、弁棒441および駆動機構442よりなる往復式遮断弁440が設けられている。この往復式遮断弁440は、流路421を開放または閉鎖することにより塗工液Mを供給または遮断し、集電体310に電極層320または集電体310が露出した露出領域330を形成するためのものである。
【特許文献1】特開2003−331830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の塗工装置では、運転開始直後に塗工された電極層320の厚みが所定の値に不足しており、不良品として廃棄せざるを得ず、歩留りを低下させてしまうという問題があった。すなわち、塗工液Mの吐出が停止している時には、流路421内の塗工液Mの圧力は狭い吐出孔422の流路抵抗とつり合った状態となっている。ここで吐出を再開すると、流路421内の塗工液Mの圧力は、吐出孔422の流路抵抗圧力を上回ることで徐々に吐出が始まり、図11に示したように、定常塗工圧力に達するまで上昇を続ける。よって、定常塗工圧力に達した時点から所定の塗工量が得られるが、運転開始直後から定常塗工圧力に達するまでに塗工された電極層320は、塗工量が不足しているため薄くなってしまう。
【0006】
また、従来の塗工装置は、図12(A)に示したように、電極層320の塗工開始端部320Aの厚みが局部的に大きくなってしまうという問題を有していた。すなわち、往復式遮断弁440により流路421が開放されて塗工液Mが供給されると、流路421内の塗工液Mの圧力が上昇する。このとき、塗工液Mは擬塑性流体の挙動を示すので、吐出孔422内で剪断力が働かず停止している塗工液Mの見掛粘度は短時間のうちに高まってしまう。そのため、流路421内に供給される塗工液Mの圧力によって吐出孔422内の塗工液Mに剪断力が加えられて流動を始めるまでは、吐出孔422内の流路抵抗も高い状態にある。塗工液Mの圧力が吐出孔422の流路抵抗に打ち勝つことで塗工液Mの吐出に至るので、吐出開始直前、瞬間的に吐出孔422内の塗工液Mの圧力は定常塗工圧力を超過する。そののち、吐出孔422内の塗工液Mの圧力は、流動開始と共に定常塗工圧力に近づいていき塗工量が安定する。しかし、吐出開始時に発生する塗工液Mの圧力の超過は、塗工開始端部320Aの塗工量過剰を招き、厚みが部分的に大きくなってしまっていた。
【0007】
このように電極層320の塗工開始端部320Aの厚みが局部的に厚くなっていると、図12(B)に示したように、電極層320の形成後にローラで加圧して単位体積当たりの密度を高める圧密工程において、塗工開始端部320Aに局部的に強い圧延が加えられて破断してしまい、歩留りを低下させるおそれがあった。
【0008】
更に、従来では、塗工部420と集電体310との間の間隙Gを予め一定に保持するようにしていたので、図12(B)に示したように、電極層320の塗工終了端部320Bを直線的に形成することができなかったり、塗工液Mの飛沫Sが付着してしまうという問題が生じていた。これは、往復式遮断弁440により流路421を閉鎖して塗工を停止しようとしても、吐出孔422内の塗工液Mの残圧のため塗工液Mを瞬時に遮断することができないからである。
【0009】
塗工終了端部320Bに付着した飛沫Sは、次のような問題を引き起こしていた。例えば正極において塗工終了端部320Bに飛沫Sが付着してしまった場合、図13に示したように、この正極521と負極522とをセパレータ523を間にして対向配置して電池を構成したときに、正極521上の飛沫Sに対向する負極522側の電極層が存在しないことになってしまう。よって、このまま充放電を行うと正極521側の飛沫Sから遊離したリチウムイオンは負極522側の電極層に吸蔵されず金属リチウムとして析出してしまい、セパレータ523を貫通して短絡不良の原因となり、歩留り低下の要因となっていた。
【0010】
この問題を解決するため、例えば特許文献1では、塗工部420と集電体310との間の間隙Gを積極的に制御し、飛沫Sの付着を抑えるようにした方法が提案されている。しかし、この方法を実現するためには、塗工部420と集電体310との配置関係、集電体310の走行経路など、装置構成において更に改良の余地があった。
【0011】
加えて、従来では、同じく図12(B)に示したように、電極層320の塗工開始端部320Aや塗工終了端部320Bの角にR形状部320Cが形成されてしまうという問題もあった。これは、吐出孔422の両端は、壁面の影響で流路抵抗が大きいことから、塗工開始時には中央に比べて吐出が遅れ、また、塗工終了時には中央に比べて吐出が早く途絶えてしまうからである。この問題は、生産性をあげるために集電体310の巻取速度を上げるにつれて顕著になっていた。
【0012】
このようなR形状部320Cが形成されてしまうと、図14に示したように、電極300を所定幅に裁断して複数の電極条340を形成する際に、両端の電極条340は、電極層320の長さが所定値に不足するので廃棄しなければならかった。よって、電極層320の有効塗工幅Wが小さくなってしまい、これも歩留り低下の原因となってしまっていた。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、流路内の塗工液の圧力を適切に制御することができ、塗工性能を高めることができる塗工装置、およびこの塗工装置を用いて高品質な電極を歩留りよく形成することができる電極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による塗工装置は、塗工液が供給される流路、および流路の下流側端部に接続されると共に平坦な壁面を有する吐出孔を有する塗工部と、流路と吐出孔との境界に設けられた保持溝、並びに、保持溝内で第1位置および第2位置にそれぞれ変位可能であると共に、保持溝から露出した部分の一部に閉鎖面が設けられた遮断部材を含み、遮断部材は、第1位置において閉鎖面が吐出孔の保持溝に対向する壁面に接触することにより流路と吐出孔との間を遮断し、第2位置において閉鎖面が壁面から離れることにより流路と吐出孔とを連通させる遮断機構とを備えたものである。
【0015】
この塗工装置では、保持溝内で遮断部材が第1位置にあるときには、遮断部材の閉鎖面が吐出孔の保持溝に対向する壁面に接触して流路と吐出孔との間が遮断され、塗工液が吐出孔から吐出されなくなる。また、遮断部材が第2位置にあるときには、閉鎖面が壁面から離れ、流路と吐出孔とが連通し、塗工液が吐出孔から吐出される。
【0016】
本発明による電極の製造方法は、集電体に活物質を含む電極層と、前記集電体が露出した露出領域とを形成した電極を製造するものであって、本発明の塗工装置を用い、露出領域を形成する工程では、遮断部材を第1位置に変位させることにより閉鎖面を吐出孔の保持溝に対向する壁面に接触させて流路と吐出孔との間を遮断し、電極層を形成する工程では、遮断部材を第2位置に変位させることにより閉鎖面を壁面から離して流路と吐出孔とを連通させるようにしたものである。これにより、電極層を間欠的に有する電極が製造される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗工装置によれば、流路と吐出孔との境界に保持溝を設け、この保持溝内で遮断部材の閉鎖面を吐出孔の壁面に接触させることにより流路と吐出孔との間を遮断し、または遮断部材の閉鎖面を壁面から離すことにより流路と吐出孔とを連通させるようにしたので、流路内の塗工液の圧力を適切に制御することができ、塗工性能を高めることができる。よって、この塗工装置を用いた本発明の電極の製造方法によれば、高品質な電極を歩留りよく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図5は本発明の一実施の形態に係る塗工装置を用いて製造される二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池10は、いわゆる円筒型といわれるリチウムイオン電池であり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0020】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0021】
巻回体20は、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し、巻回したものであり、中心にはステンレス鋼等よりなるセンターピン24が挿入されている。正極21は、例えば、アルミニウム箔等よりなる正極集電体にリチウム含有化合物等の正極活物質を含む電極層が設けられたものであり、負極22は、例えば、銅箔等よりなる負極集電体にリチウムを吸蔵・離脱可能な炭素材料等の負極活物質を含む電極層が設けられたものである。また、セパレータ23は、例えば、ポリプロピレン等の多孔質膜により構成されており、セパレータには、例えば、リチウム塩などの電解質塩を炭酸エステルなどの非水溶媒に溶解させた電解液が含浸されている。巻回体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0022】
図1は、このような二次電池10の正極21または負極22の製造に用いられる塗工装置の全体構成を表したものである。この塗工装置は、集電体110に活物質を含む電極層120と、集電体110が露出した露出領域130とを形成するものであり、集電体110を保持ロール211により保持しつつ搬送する搬送部210と、保持ロール211上の集電体110に対向配置された塗工部220とを有している。
【0023】
搬送部210は、集電体110の巻出装置および巻取装置(いずれも図示せず)を備えており、集電体110は巻出装置から一定速度で巻き出され、保持ロール211上で塗工部220により塗工液Mが塗布されたのち巻取装置に一定速度で巻き取られるようになっている。保持ロール211は、例えば矢印Aに示したように時計回りに回転することにより、集電体110を保持しつつ上方へ搬送して塗布部220を通過させる。なお、搬送部210には、保持ロール211のほか、適宜の個数のガイドロール(図示せず)が、集電体110の搬送経路に応じて配設されている。
【0024】
塗工部220は、例えば密閉型スロットダイにより構成され、活物質を含む塗工液Mが供給される流路221を有している。流路221の下流側端部には、吐出孔222が接続されている。吐出孔222は流路221よりも細く、その壁面は平坦である。また、吐出孔222は、流路221の下流側端部から流路221に交差する方向に延び、その先端は保持ロール211上の集電体110に向けて開かれている。一方、流路221の上流側端部には、配管231を介して定量供給ポンプ230が接続されている。単位時間当たりの塗工量は、この定量供給ポンプ230からの塗工液Mの供給量により調整される。更に、この流路221の途中には、流路221内の塗布液Mの圧力を検出する圧力検出器223が取り付けられている。
【0025】
流路221と吐出孔222との境界には、遮断機構240が設けられている。遮断機構240は、流路221と吐出孔222とを遮断または連通させるためのものであり、両者が交差する角部に設けられた例えば断面円弧状の保持溝241と、この保持溝241内に設けられた遮断部材242とにより構成されている。遮断部材242は、保持溝241内で回動することにより第1位置および第2位置にそれぞれ変位可能であり、回動の際に保持溝241に接触する部分は例えば断面円弧状とされている。また、遮断部材242には、保持溝241から露出した部分の一部に平坦な閉鎖面242Aが設けられており、図2に示したように、第1位置において閉鎖面242Aを吐出孔222の上壁面222Aに接触させて流路221と吐出孔222との間を遮断し、図1に示したように、第2位置において閉鎖面242Aを上壁面222Aから離して流路221と吐出孔222とを連通させる。これにより、この塗工装置では、流路221内の塗工液Mの圧力を適切に制御することができ、高品質な電極を歩留りよく形成することができるようになっている。
【0026】
また、遮断機構240は流路221と吐出孔222との境界に設けられているので、流路221内の塗工液Mの圧力の影響を受けることなく吐出孔222からの塗工液Mの吐出およびその停止を直接的に制御することができる。これに対して、従来では、流路の上流側端部の往復式遮断弁により塗工開始・中断を制御していたので、往復式遮断弁と吐出孔との間には大きな圧力損失を有する配管や流路などが介在しており、塗工開始・中断の制御に時間的遅れが生じ、高速塗工には対応することができなかった。
【0027】
更に、この遮断部材242は、保持溝241から露出した部分の閉鎖面242Aよりも上流側に、流路221を下流側に向けて緩やかに狭める塗工液案内部242Bを有している。この塗工液案内部242Bを設けていない場合には流路221の大きさが急に変化するので、粘性の高い塗工液Mが通過しにくくなる虞がある。塗工液案内部242Bを設けることによりなだらかな流路221を形成し、塗工液Mの流れを阻害することなく吐出孔222に導入することができる。
【0028】
塗工液案内部242Bは、曲面でも平面でもよいが、平面により構成されていることが好ましい。曲面よりも平面のほうが作製しやすいからである。
【0029】
また、塗工液案内部242Bは、一つの平面になっていてもよいが、複数、例えば二つの平面242B1,242B2により構成されていることが好ましい。よりなだらかな流路221を形成することができ、壁面効果により粘性境界層を安定的に発達させるのに有利であると共に、遮断部材242の強度も高くすることができるからである。
【0030】
更に、これら二つの平面242B1,242B2は、上流側ほど面積が大きくなっていることが好ましい。このようにすれば、図3に拡大して示したように、上流側の平面242B2には、流路221内の塗工液Mの圧力Pmの影響により、(a−b)×Pm[Pa]で表される偶力Fがかかる。この偶力Fは、遮断部材242を、回動軸Cを中心として、閉鎖面242Aを上壁面222Aにより密着させる方向に回動させようとする方向に働く。よって、流路221と吐出孔222との間の遮断性・密閉性を更に向上させることができる。
【0031】
このような遮断部材242としては、例えば、断面円形の部材、好ましくは円柱に、閉鎖面242Aおよび塗工液案内部242Bの平面242B1,242B2を面取りしたものが好ましい。
【0032】
更に、この塗工装置は、図1に示したように、流路221に連結された調整路251を有しており、この調整路251に圧力調整弁252が設けられている。調整路251は、例えば、流路221につながる配管231から分岐して設けられている。圧力調整弁252は、遮断機構240と協調して調整路251を開放または閉鎖することにより、流路221内の塗工液Mの圧力を制御するものであり、流路221に直結して設けられているので流路221内の塗工液Mの圧力を反応よく、かつ高い再現性をもって制御することができる。なお、調整路251から排出された塗工液Mは回収され、塗工部220に再供給されるようになっている。
【0033】
このような塗工部220は、例えばエアシリンダーなどにより構成された移動機構260に固定されている。移動機構260は、塗工部220を、吐出孔222の延長方向に平行な矢印B方向に移動させることにより、塗工部220と集電体110との間の間隙Gの大きさを変化させるものである。例えば、移動機構260は、間隙Gの大きさを、後述するように、電極層120を形成する工程では、電極層120の目的とする厚みに応じた定常塗工間隙G1とし、露出領域130を形成する工程では、定常塗工間隙G1よりも大きな非塗工時間隙G2とするようになっている。なお、非塗工時間隙G2は、定常塗工間隙G1と等しくてもよい。
【0034】
更に、移動機構260は、間隙Gの大きさを、電極層120の形成中においても任意に変化させることができるようになっている。例えば、電極層120を形成する工程の開始直後の期間には、間隙Gの大きさを、定常塗工間隙G1よりも小さな塗工開始時間隙G3とする。一方、電極層120を形成する工程の終了直前の期間には、間隙Gの大きさを、定常塗工間隙G1よりも小さな塗工終了時間隙G4とする。このようにすることにより、この塗工装置では、電極層120の厚みの局部的なばらつきを改善すると共に、形状精度を高めることができるようになっている。なお、塗工開始時間隙G3は定常塗工間隙G1と等しくてもよい。また、塗工終了時間隙G4は定常塗工間隙G1に等しくてもよい。
【0035】
定常塗工間隙G1,非塗工時間隙G2,塗工開始時間隙G3および塗工終了時間隙G4は、塗工液Mの種類や集電体110の巻取速度によって異なるが、それぞれ、例えば0.01≦G≦1.00[mm]の範囲内で設定される。
【0036】
図4は、この塗工装置を用いた電極の製造方法を説明するためのタイミングチャートである。この電極の製造方法では、運転停止の状態から、時刻t1で起動し、時刻t2まで予備運転工程を行う。時刻t2から時刻t3まで電極層120を形成する初回の工程を行い、時刻t3から時刻t4まで露出領域130を形成する工程を行う。時刻t4から時刻t5まで、再び電極層120を形成する工程を行い、時刻t5から時刻t6まで、再び露出領域を形成する工程を行う。そののち、同様にして、電極層120を形成する工程と、露出領域130を形成する工程とを交互に行う。
【0037】
運転停止の状態では、塗工部220の流路221内の塗工液Mの圧力は流路221内の流路抵抗と釣り合った状態となっている。このとき、遮断機構240の遮断部材242を第1位置とし、閉鎖面242Aを上壁面222Aに接触させることにより流路221と吐出孔222との間を遮断する(遮断機構;閉鎖)。また、圧力調整弁252により調整路251を閉鎖し(圧力調整弁;閉鎖)、定量供給ポンプ230は停止とする。間隙Gの大きさは、非塗工時間隙G2としておく。
【0038】
予備運転工程では、定量供給ポンプ230の運転を開始すると共に圧力調整弁252により調整路251を開放し(圧力調整弁;開放)、流路221への塗工液Mの供給を開始する(時刻t1)。流路221内の塗工液Mの圧力を圧力検出器223により検出し、所定の定常塗工圧力Pに達するまで遮断機構240の遮断部材242を第1位置とすることにより流路221と吐出孔222との間を遮断しておく(遮断機構;閉鎖)。これにより、流路221内の塗工液Mの圧力を十分に高めてから電極層120を形成することができ、初回から電極層120を所望の厚みで形成することができ、運転開始直後の電極層120の厚み不足をなくすことができる。なお、予備運転工程においては、間隙Gの大きさは、非塗工時間隙G2のまま維持する。
【0039】
ここで定常塗工圧力Pは、塗工液Mの種類や集電体110の巻取速度により異なるが、例えば0.02≦P≦0.10[MPa]の範囲内で設定する。
【0040】
流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pに達したら、電極層120を形成する工程を開始する前に、遮断機構240の遮断部材242を第2位置に変位させることにより閉鎖面242Aを上壁面222Aから離して流路221と吐出孔222とを連通させ(時刻t11、遮断機構;開放)、続いて、圧力調整弁252により調整路251を閉鎖したのち(時刻t12、圧力調整弁;閉鎖)、塗工液Mの塗工を開始して(時刻t2)電極層120を形成する工程を行う。
【0041】
このとき、圧力調整弁252により調整路251を閉鎖するタイミングを適切に設定することにより、流路221内の塗工液Mの圧力を定常塗工圧力Pに維持しつつ塗工を開始することができる。これにより、流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pよりも低い場合に塗工開始端部120Aの角に発生しやすいR形状を抑制し、電極層120の有効塗工幅を長くすることができる。なお、圧力調整弁252の適正な閉鎖タイミングは、塗工液Mの種類や集電体111の巻取速度により異なる。
【0042】
また、このように圧力調整弁252により調整路251を閉鎖するタイミングを適切に設定することは、流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pを超過するのを抑え、塗工部220と集電体110との間の間隙Gに存在する塗工液Mの量を抑制することにもなる。これに加えて、電極層120を形成する工程の開始直後の期間(時刻t2〜時刻t21)には、移動機構260により塗工部220を移動させて、間隙Gの大きさを定常塗工間隙G1よりも小さな塗工開始時間隙G3とする。以上により、電極層120の塗工開始端部120Aの厚みが局部的に大きくなることを抑えることができ、この後の圧密工程において塗工開始端部120Aに局部的に強い圧延が加えられて破断してしまうのを防ぐことができる。
【0043】
電極層120を形成する工程では、遮断機構240の遮断部材242を第2位置として流路221と吐出孔222とを連通させ(遮断機構;開放)、圧力調整弁252により調整路251を閉鎖する(圧力調整弁;閉鎖)。間隙Gの大きさは定常塗工間隙G1とする。
【0044】
電極層120を形成する工程を終了する前に、遮断機構240の遮断部材242を第1位置に変位させることにより流路221と吐出孔222との間を遮断し(時刻t22、遮断機構;閉鎖)、圧力調整弁252により調整路251を開放したのち(時刻t23、圧力調整弁;開放)、塗工液Mの塗工を終了して(時刻t3)電極層120を形成する工程を終了する。
【0045】
このとき、圧力調整弁252により調整路251を開放するタイミングを適切に設定することにより、流路221内の塗工液Mの圧力を定常塗工圧力Pに維持しつつ塗工を終了することができる。これにより、流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pよりも低い場合に塗工終了端部120Bの角に発生しやすいR形状を抑制し、電極層120の有効塗工幅を長くすることができる。
【0046】
また、このように圧力調整弁252により調整路251を開放するタイミングを適切に設定することで、流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pを超過するのを抑え、塗工部220と集電体110との間の間隙Gに存在する塗工液Mの量を抑制するもできる。これに加えて、電極層120を形成する工程の終了直前の期間(時刻t24〜時刻t3)には、移動機構260により塗工部220を移動させて、間隙Gの大きさを、定常塗工間隙G1よりも小さな塗工終了時間隙G4とする。以上により、塗工部220と集電体110との間の間隙Gに存在する塗工液Mを集電体110上ですり切り、塗工終了端部120Bの直線性を高めると共に塗工液Mの飛沫が付着するのを抑えることができる。
【0047】
なお、塗工終了時間隙G4および塗工開始時間隙G3はそれぞれ独立に設定することができ、例えば、塗工終了時間隙G4は塗工開始時間隙G3よりも狭くてもよいし、または同一あるいはより広くてもよい。なお、塗工開始時間隙G3を定常塗工間隙G1と等しくしてもよい。また、塗工終了時間隙G4を定常塗工間隙G1に等しくしてもよい。
【0048】
露出領域130を形成する工程では、遮断機構240の遮断部材242を第1位置として流路221と吐出孔222との間を遮断し(遮断機構;閉鎖)、圧力調整弁252により調整路251を開放する(圧力調整弁;開放)。間隙Gの大きさは非塗工時間隙G2とする。なお、非塗工時間隙G2を定常塗工間隙G1と等しくしてもよい。
【0049】
再び電極層120を形成する工程を開始する前に、遮断機構240の遮断部材242を第2位置に変位させることにより流路221と吐出孔222とを連通させ(時刻t31、遮断機構;開放)、続いて、圧力調整弁252により調整路251を閉鎖したのち(時刻t32、圧力調整弁;閉鎖)、塗工液Mの塗工を開始して(時刻t4)電極層120を形成する工程を行う。
【0050】
これ以降は、電極層120を形成する初回の工程およびそれに続いて露出領域130を形成する工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0051】
このように本実施の形態では、流路221と吐出孔222との境界に保持溝241を設け、この保持溝241内で遮断部材242の閉鎖面242Aを吐出孔222の上壁面222Aに接触させることにより流路221と吐出孔222との間を遮断し、または遮断部材242の閉鎖面242Aを上壁面222Aから離して流路221と吐出孔222とを連通させるようにしたので、流路221内の塗工液Mの圧力を適切に制御することができ、塗工性能を高めることができる。よって、この塗工装置を用いて二次電池10の正極21または負極22を製造することにより、高品質な正極21または負極22を歩留りよく形成することができる。
【0052】
特に、遮断部材242の閉鎖面242Aよりも上流側に、流路221を下流側に向けて緩やかに狭める塗工液案内部242Bを設けたので、塗工液Mの流れを阻害することなく吐出孔222から吐出させることができる。
【0053】
また、塗工液案内部242Bを二つの平面242B1,242B2により構成し、これら二つの平面242B1,242B2を、上流側ほど面積が大きくなるようにしたので、上流側の平面242B2にかかる偶力Fにより、流路221と吐出孔222との間の遮断性・密閉性を更に向上させることができる。
【0054】
更に、電極層120を形成する初回の工程を行う前の予備運転工程において、流路221への塗工液Mの供給を開始したのち、流路221内の塗工液Mの圧力が定常塗工圧力Pに達するまで遮断機構240により流路221と吐出孔222との間を遮断しておくようにしたので、流路221内の塗工液Mの圧力を十分に高めてから電極120を形成することができ、初回から電極層120を所望の厚みで形成することができ、運転開始直後の電極層120の厚み不足をなくすことができる。
【0055】
加えて、遮断機構240と協調して圧力制御弁252により調整路251を開放または閉鎖することにより流路221内の塗工液Mの圧力を制御し、かつ移動機構260により間隙Gの大きさを適切に制御するようにしたので、電極層120の塗工開始端部120A厚みが局部的に厚くなるのを抑えて圧密工程における電極の破断を防止したり、塗工終了端部120Bの直線性を高めて飛沫の付着を抑えたり、塗工開始端部120Aや塗工終了端部120Bの角にR形状部が形成されるのを抑えることができる。
【実施例】
【0056】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0057】
(実施例)
上記実施の形態で説明した塗工装置により正極21を作製した。その際、図4に示した製造方法により、厚み18μmのアルミニウム箔よりなる集電体110に、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を含む電極層120と、集電体110が露出した露出領域130とを形成した。
【0058】
本実施例に対する比較例として、図10に示したような、往復式遮断弁440により塗工開始・終了を制御するようにした従来の塗工装置を用いたことを除いては、本実施例と同様にして正極を形成した。
【0059】
実施例および比較例のそれぞれについて、塗工時間による平均塗工量の推移を調べた。その結果を図6に示す。また、得られた実施例および比較例の正極について、電極層を乾燥させたのち、塗工開始端部からの距離と厚みとの関係、塗工終了端部の形状、並びに、塗工開始端部および塗工終了端部の角の形状を調べた。その結果をそれぞれ図7,図8および図9に示す。なお、図8および図9は該当部位の写真を模写したものである。
【0060】
図6から分かるように、実施例では、運転開始直後から安定した平均塗工量が得られたのに対して、比較例では、運転開始直後の平均塗工量が少なく、徐々に増加して安定した値に達するまでに時間がかかった。すなわち、上記実施の形態で説明した塗工装置を用い、予備運転工程を行って流路221内の塗工液Mの圧力を十分に高めてから電極層120の形成を始めるようにすれば、運転開始から終了まで平均塗工量を一定に維持することができ、運転開始直後の電極層220の厚み不足を抑えることができることが分かった。
【0061】
また、実施例では、比較例に比べて、図7から分かるように、電極層120の塗工開始端部120Aの厚みのばらつきが低減され、図8に示したように、塗工終了端部120Bに飛沫Sが付着せず直線性が改善されていた。更に、図9に示したように、塗工開始端部120Aや塗工終了端部120Bの角は矩形状となり、R形状部が形成されることもなかった。すなわち、上記実施の形態で説明した塗工装置を用い、遮断機構240と協調して圧力制御弁252を開放または閉鎖することにより流路221内の塗工液Mの圧力を制御し、かつ移動機構260により間隙Gの大きさを適切に制御すれば、電極層120の厚みの局部的なばらつきを抑え、形状精度も高めることができることが分かった。
【0062】
なお、負極22として、厚み13μmの銅箔よりなる集電体110に、負極活物質として炭素材料を含む電極層120と、集電体110が露出した露出領域130とを上記実施例と同様にして形成したところ、上記実施例と同様の結果が得られた。
【0063】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、塗工装置の構成を具体的に挙げて説明したが、塗工装置の構成は上記実施の形態および実施例に限られない。例えば、上記実施の形態および実施例では、遮断機構240を吐出孔222の下壁面の側に設けると共に、遮断部材242の閉鎖面242Aを吐出孔222の上壁面222Aに接触させるようにした場合について説明したが、遮断機構240を設ける位置は、遮断部材242の閉鎖面242Aを吐出孔222の保持溝241に対向する壁面に接触させることができる限り、特に限定されない。よって、例えば、遮断機構240を吐出孔222の上壁面の側に設けると共に、遮断部材242の閉鎖面242Aを吐出孔222の下壁面に接触させるようにしてもよい。
【0064】
また、例えば、上記実施の形態および実施例では、圧力調整弁252が、定量供給ポンプ230から塗工部220へ塗工液Mを供給する配管231に接続されている場合について説明したが、圧力調整弁252は、例えば、流路221に直結される独立した配管経路によって接続されていてもよい。
【0065】
また、例えば、上記実施の形態および実施例では、閉鎖面242Aが平坦面であり、閉鎖面242Aと上壁面222Aとが面接触することにより流路221と吐出孔222との間を遮断する場合について説明したが、閉鎖面242Aは流路221と吐出孔222との間を遮断することができればよく、また、そのとき閉鎖面242Aと上壁面222Aとは必ずしも面接触している必要はなく、線接触でもよい。また、遮断部材242の上壁面222Aへの接触部を柔軟な弾性変形素材により構成すれば、閉鎖面242Aは完全な平坦面でなくてもよく、粗い平面であってもよい。また、遮断部材242は、上壁面222Aにならう形状であれば、波形の断面形状などでもよい。
【0066】
更に、例えば、上記実施の形態および実施例では、吐出孔222は、流路221の下流側端部から流路221に交差する方向に延びており、両者の交差する角部に保持溝241が設けられている場合について説明したが、流路221と吐出孔222とを同一直線上に形成し、両者の境界に保持溝241を設けるようにしてもよい
【0067】
加えて、例えば、上記実施の形態および実施例では、保持溝241は断面円弧状であり、遮断部材242の回動の際に保持溝241に接触する部分も断面円弧状とされている場合について説明したが、保持溝241および遮断部材242の形状は上記実施の形態および実施例で説明した例に限られない。すなわち、遮断部材242の回動の際に保持溝241に接触する部分の形状は、保持溝241と遮断部材242との間の隙間から保持溝241内に塗工液Mが入り込まないようにする必要がある。そのためには、少なくとも回動の際に保持溝241の円弧の両端に接触する部分だけが断面円弧状であればよく、それ以外の部分は平面または多角形などでもよい。一方、保持溝241は、内部で遮断部材242が回動するのを妨げない形状である限り、特に断面円弧状に限定されない。
【0068】
更にまた、例えば、上記実施の形態および実施例では、定量供給ポンプ230により塗工液Mを継続的に供給する場合について説明したが、上述した電極の製造方法と並行して、ポンプにより流路221内の塗工液Mの圧力を制御することができるようにしてもよい。
【0069】
加えてまた、上記実施の形態および実施例では、搬送部210の保持ロール211が、矢印Aに示したように時計回りに回転することにより、集電体110を保持しつつ上方へ搬送して塗布部220を通過させる場合について説明したが、保持ロール211の回転方向および集電体110の搬送方向は特に限定されない。例えば、保持ロール211は反時計回りに回転することにより集電体110を下方へ搬送するものであってもよい。
【0070】
更にまた、塗工部220と集電体110との配置関係、塗工液Mの吐出方向、集電体110の走行経路などは、上記実施の形態および実施例で説明した例に限られない。
【0071】
加えてまた、例えば、上記実施の形態では、二次電池の構成を具体的に挙げて説明したが、二次電池の構成は上記実施の形態に限られない。例えば、上記実施の形態では、円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、他の形状の二次電池にも適用することができる。また、例えば、上記実施の形態では、巻回体20が正極21および負極22を積層し、巻回した構造を有する場合について説明したが、正極21および負極22を折り畳んだりあるいは積み重ねたものであってもよい。
【0072】
更にまた、例えば、上記実施の形態および実施例では、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、本発明は、リチウムイオン二次電池以外の他の二次電池にも適用することができる。
【0073】
加えてまた、例えば、上記実施の形態および実施例では、本発明の塗工装置によって二次電池10の正極21および負極22の製造を行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、二次電池10と同様の構造を有する一次電池の正極および負極の製造を行うことも可能である。
【0074】
更にまた、例えば、上記実施の形態では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0075】
加えてまた、例えば、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質、正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【0076】
更にまた、例えば、上記実施例では、正極21および負極22の両方を本発明の塗工装置および製造方法により製造するようにした場合について説明したが、正極21および負極22の少なくとも一方を本発明の塗工装置および製造方法により製造するようにしてもよい。
【0077】
加えてまた、上記実施の形態および実施例では、本発明の塗工装置を電池電極の製造に適用し、集電体110に活物質を含む塗工液Mを塗工して電極層120および露出領域130を形成する場合について説明したが、本発明は、電池の製造に限らず、対象物に塗工液を間欠的に塗工する必要がある場合に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態に係る塗工装置の構成を概略的に表す図である。
【図2】図1に示した遮断部材の動作を説明するための図である。
【図3】遮断部材を拡大して表す図である。
【図4】塗工装置による電極の製造方法を説明するための図である。
【図5】塗工装置を用いて製造された二次電池の構成を表す断面図である。
【図6】本発明の実施例の結果を表す図である。
【図7】本発明の実施例の結果を表す図である。
【図8】本発明の実施例で製造した電極層の塗工終了端部の形状を、比較例と対照しつつ説明するための図である。
【図9】本発明の実施例で製造した電極層の塗工開始端部および塗工終了端部の端の形状を、比較例と対象しつつ説明するための図である。
【図10】従来の塗工装置の構成を概略的に表す図である。
【図11】従来の塗工装置における流路内の塗工液の圧力の変化を説明するための図である。
【図12】従来の塗工装置により形成された電極層の形状およびその問題点を説明するための図である。
【図13】従来の塗工装置により形成された正極を用いて電池を構成した場合の問題点を説明するための図である。
【図14】従来の塗工装置により形成された電極層の他の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…電極体、21…正極、22…負極、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード、110…集電体、120…電極層、120A…塗工開始端部、120B…塗工終了端部、130…露出領域、210…搬送部、211…保持ロール、220…塗工部、221…流路、222…吐出孔、223…圧力検出器、230…定量供給ポンプ、240…遮断機構、241…保持溝、242…遮断部材、242A…閉鎖面、242B…塗工液案内部、242B1,242B2…平面、251…調整路、252…圧力調整弁、260…移動機構、M…塗工液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液が供給される流路、および前記流路の下流側端部に接続されると共に平坦な壁面を有する吐出孔を有する塗工部と、
前記流路と前記吐出孔との境界に設けられた保持溝、並びに、前記保持溝内で第1位置および第2位置にそれぞれ変位可能であると共に、前記保持溝から露出した部分の一部に閉鎖面が設けられた遮断部材を含み、前記遮断部材は、第1位置において前記閉鎖面が前記吐出孔の前記保持溝に対向する壁面に接触することにより前記流路と前記吐出孔との間を遮断し、第2位置において前記閉鎖面が前記壁面から離れることにより前記流路と前記吐出孔とを連通させる遮断機構と
を備えたことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記流路に連結された調整路と、
前記調整路に設けられ、前記遮断機構と協調して前記調整路を開放または閉鎖することにより、前記流路内の塗工液の圧力を制御する圧力調整弁と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工部を、前記吐出孔の延長方向に平行に移動させる移動機構を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
【請求項4】
前記遮断部材は、前記保持溝から露出した部分の前記閉鎖面より上流側に、前記流路を下流側に向けて緩やかに狭める塗工液案内部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
【請求項5】
前記塗工液案内部は、複数の平面により構成され、前記複数の平面は、上流側ほど面積が大きくなっている
ことを特徴とする請求項4記載の塗工装置。
【請求項6】
集電体に活物質を含む電極層と、前記集電体が露出した露出領域とを形成した電極の製造方法であって、
活物質を含む塗工液が供給される流路、および前記流路の下流側端部に接続されると共に平坦な壁面を有する吐出孔を有する塗工部と、前記流路と前記吐出孔との境界に設けられた保持溝、並びに、前記保持溝内で第1位置および第2位置にそれぞれ変位可能であると共に、前記保持溝から露出した部分の一部に閉鎖面が設けられた遮断部材を含む遮断機構とを備えた塗工装置を用い、
前記露出領域を形成する工程では、前記遮断部材を第1位置に変位させることにより前記閉鎖面を前記吐出孔の前記保持溝に対向する壁面に接触させて前記流路と前記吐出孔との間を遮断し、
前記電極層を形成する工程では、前記遮断部材を第2位置に変位させることにより前記閉鎖面を前記壁面から離して前記流路と前記吐出孔とを連通させる
ことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項7】
前記電極層を形成する初回の工程を行う前の予備運転工程を含み、
前記予備運転工程では、前記流路への塗工液の供給を開始したのち、前記流路内の塗工液の圧力が所定値に達するまで前記遮断機構により前記流路と前記吐出孔との間を遮断しておく
ことを特徴とする請求項6記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記流路から分岐する調整路に圧力調整弁を設け、前記露出領域を形成する工程では、前記圧力調整弁により前記調整路を開放し、前記電極層を形成する工程では、前記圧力調整弁により前記調整路を閉鎖する
ことを特徴とする請求項6記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記電極層を形成する工程を開始する前に、前記遮断機構により前記流路と前記吐出孔とを連通させ、続いて、前記圧力調整弁により前記調整路を閉鎖し、そののち、塗工液の塗工を開始して前記電極層を形成する工程を行い、
前記電極層を形成する工程を終了する前に、前記遮断機構により前記流路と前記吐出孔との間を遮断し、続いて、前記圧力調整弁により前記調整路を開放し、そののち、塗工液の塗工を終了して前記電極層を形成する工程を終了する
ことを特徴とする請求項8記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記塗工部を、前記吐出孔の延長方向に平行に移動させることにより、前記塗工部と前記集電体との間の間隙の大きさを、前記電極層を形成する工程では、前記電極層の目的とする厚みに応じた定常塗工間隙とし、前記露出領域を形成する工程では、前記定常塗工間隙よりも大きな非塗工時間隙とする
ことを特徴とする請求項6記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記電極層を形成する工程の開始直後の期間には、前記間隙の大きさを、前記定常塗工間隙よりも小さな塗工開始時間隙とする
ことを特徴とする請求項10記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記電極層を形成する工程の終了直前の期間には、前記間隙の大きさを、前記定常塗工間隙よりも小さな塗工終了時間隙とする
ことを特徴とする請求項10記載の電極の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−66744(P2007−66744A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252354(P2005−252354)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】