説明

塗布ノズル

【課題】塗布ノズル下端の進行方向後部に塗布剤が付着しないようにして、被塗布面と塗布ノズル下端との間隙を小さくできる塗布ノズルを提供すること。
【解決手段】塗布剤供給源20から塗布剤60が供給される供給部941と、該供給部941と連通し、該供給部941から流入した塗布剤60が貯留される塗布剤貯留部943と、該塗布剤貯留部943の先端に設けられ、スリット状の吐出口945aを有する塗布剤吐出部945と、を備えた塗布ノズル40であって、前記吐出口945aの、前記塗布ノズル40の進行方向後側に、吐出した塗布剤60が前記塗布ノズル40の下面945bに接触するのを防止する接触防止手段50A(50B、51C、51D、50E)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の所要部位に接着剤あるいは補強材、制振材等の塗布剤を塗布するために用いる塗布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアは、板金工程で外板と内板を組み合わせて、その周囲をヘミング加工することにより最中状に組み立てられる。外板の単体時に、該外板の内側に、該外板を補強するための補強材や、ドア閉鎖時の振動を防止する制振材等が貼り付けられる。そして、この板金工程でのドアの組み立ては殆どロボットにより自動化されつつある。
【0003】
しかしながら、外板の内側に貼り付けられる補強材や制振材は、従来は合成樹脂やガラス繊維製の平板状のシート材が用いられているため、ロボットによる貼り付け作業の自動化は困難であり、人手作業を強いられていた。
したがって、ドア組み付けの自動化ラインに人手作業が混在するため、効率的なライン編成が困難であった。
【0004】
そこで、本願発明者らは、制振材や補強材としてゴム系の接着剤やエポキシ系の補強材などの塗布剤を用いて塗布する方法を検討した。塗布剤を所定幅で塗布する塗布ノズルとして、特許文献1に記載されているようなものがある。
【特許文献1】特開平8−274014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の塗布ノズル4では、塗布液貯留部6に貯留された塗布液が多数の狭小通路9を通って塗布液保持部8に出てくるようにしたものであり、粘性の低い塗布液には利用できるが、粘性の高い補強材や制振材には適用できないという問題がある。
このため、本願発明者らは、車両の床面等に防音材を貼り付ける接着剤を塗布するために用いられている、図7示すような平板状の空隙を有する塗布剤貯留部943が設けられた塗布ノズル本体940を、図6に示すような塗布装置1のロボット10に取り付けて利用することを検討した。
【0006】
すなわち、塗布装置1は、図6に示すように、ロボット10と、該ロボット10のアーム部11に把持される塗布ガン25と、該塗布ガン25に塗布剤60を供給する塗布剤供給源20と、該塗布ガン25の先端に接続され、塗布剤60をドア外板71に塗布する塗布ノズル本体940とを備えている。
塗布ノズル本体940は、図7に示すように、塗布剤60の塗布厚さと同一寸法の間隙を有する平板状の空隙からなる塗布剤貯留部943と、該塗布剤貯留部943の先端に設けられたスリット状の吐出口945aを有する塗布剤吐出部945と、塗布剤貯留部943の塗布剤吐出部945とは反対側に設けられ、塗布剤供給源20から塗布剤60が供給される供給部941とを備えたものである。なお、塗布ノズル本体940の外形を点線で示し、内側部を実線で示してある。
【0007】
塗布ノズル本体940を用いて塗布される塗布型制振材・補強材(塗布剤)60は、図6に示すドア外板71の内側に幅約100mm、長さ約400mmで塗布されるもので、図8に示すように、塗布厚さt=1mmで外板71の内側に直接塗布されるゴム系接着剤(柔軟剤層)61と、塗布厚さT=2mmでゴム系接着剤61の上面に塗布されるエポキシ系補強拘束剤(硬化剤層)63とにより構成されるものである。
【0008】
以上のように構成された塗布装置1を用いて、塗布剤60をドア外板71(ワーク)の内面に塗布する塗布方法は、図9(A)に示すように、柔軟剤層61を、先にドア外板71に塗布しておき、この柔軟剤層61の上面に、図9(B)に示すように、同一の塗布方法で硬化剤層63を塗布する。
【0009】
ところで、塗布剤60を塗布ノズル本体940の吐出口945aから吐出させ、そのまま自然に落下させると、図10に示すように、塗布剤60は吐出口945aから均一に流れ出る。
しかし、塗布ノズル本体940から塗布剤60を吐出させて、該塗布ノズル本体940を図11の白抜きの矢印の方向に移動させながらドア外板71の内側に塗布すると、図11(A)に示すように、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となる。
【0010】
このとき、ロボット10のティーチング精度やドア外板71の位置決めの高さ等のばらつきにより、ドア外板71と塗布ノズル本体940の下端との間隙が小さくなると、塗布ノズル本体940の下面945bに塗布剤60が付着して、塗布ノズル本体940の進行に伴い、ドア外板71に付着しつつある塗布剤60を、塗布ノズル本体940と塗布剤60との接着力でドア外板71から引き離し、図11(B)に示すように、塗布剤60が塗布ノズル本体940の進行方向後部で上方に巻き上げられ(符号「M」)、これが連続して塗布剤60が波を打って塗布される現象となったり、塗布の途中で塗布剤60がちぎれる現象となり、これがドア外板歪みや補強・制振性の低下の一因となるという問題が生じる。
【0011】
また、ドア外板71と塗布ノズル本体940の下端の間隙を大きくすると、図12に示すように、塗布剤60がドア外板71に覆い被さるように塗布されるため、塗布剤60の下方に空気を巻き込みやすくなり、気泡(符号「N」)が発生し易いという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、塗布ノズル下端の進行方向後部に塗布剤が付着しないようにして、被塗布面と塗布ノズル下端との間隙を小さくして波打や気泡の発生を防止できる塗布ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る請求項1に記載の塗布ノズルは、塗布剤供給源から塗布剤が供給される供給部と、該供給部と連通し、該供給部から流入した塗布剤が貯留される塗布剤貯留部と、該塗布剤貯留部の先端に設けられ、スリット状の吐出口を有する塗布剤吐出部と、を備えた塗布ノズルにおいて、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に、吐出した塗布剤が前記塗布ノズルの下面に接触するのを防止する接触防止手段を備えたことを特徴とする。
よって、接触防止手段により塗布剤が、塗布ノズル下面の、塗布ノズルの進行方向後側に接触するのを防止することができるので、被塗布面と塗布ノズル下端との間隙を小さくして塗布することができ、塗布剤の波打や気泡の発生を防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る請求項2に記載の塗布ノズルは、請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、前記接触防止手段が、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に設けられ、前記吐出口から吐出する塗布剤の吐出方向と平行又は交差する方向に圧縮空気を吹き付ける空気吐出口であることを特徴とする。
よって、空気吐出口から吐出される圧縮空気により、吐出された塗布剤が塗布ノズルの下面から離間する方向に押圧されるので、塗布剤が塗布ノズルの下面に付着することなく塗布できる。
【0015】
また、本発明に係る請求項3に記載の塗布ノズルは、請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、前記接触防止手段が、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に設けられ、前記吐出口から吐出する塗布剤の吐出方向と平行又は交差する方向に油を吐出する油吐出口であることを特徴とする。
よって、油吐出口から吐出される油により、吐出された塗布剤と塗布ノズルの下面との間に油膜が形成されるので、塗布剤が塗布ノズルの下面に付着することなく塗布できる。
【0016】
また、本発明に係る請求項4に記載の塗布ノズルは、請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、前記接触防止手段が、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側の塗布ノズル下面に設けられた、前記塗布ノズルの進行方向と平行な多数の凹凸溝であることを特徴とする。
よって、塗布ノズルの下面に設けられた多数の凹凸溝により、吐出された塗布剤と塗布ノズルの下面との接触面積が小さくなるので、塗布ノズルの下面に接着し塗布剤を巻き上げる力が弱くなるため、塗布剤が塗布ノズルの下面に付着することなく塗布できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布ノズルによれば、吐出した塗布剤が前記塗布ノズルの下面に接触するのを防止する接触防止手段を備えたことにより、塗布剤が塗布ノズルの下面に付着することなく塗布でき、塗布剤の波打や気泡の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る塗布ノズルの一の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態の塗布ノズルは自動車用ドアの組立ラインに適用されたものである。
ここで、図1から図5は、第1から第5の実施形態の塗布ノズルを示す図である。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施の形態の塗布ノズルの構成について説明する。この第1の実施の形態では、吐出された塗布剤60に圧縮空気を吹き付けるようにしたものである。塗布ノズル40Aは、図1(A)に示すように、前述した既存の塗布ノズル本体940の塗布剤吐出部945の、進行方向後部となる後部面945cに接触防止手段として圧縮空気を吐出するエア通路ブロック50Aを取り付けたものである。
塗布剤吐出部945の進行方向後部には、図1(B)の断面図に示すように、後部面945cから下面945bに開口する複数の細孔(圧縮空気吐出口)945dが穿設されている。図1(B)では細孔945dがL字状のもので示してあるが、下記の連続孔53Aと直線で連結する傾斜状の細孔としてもよい。
【0020】
エア通路ブロック50Aは、塗布ノズル本体940の幅と略同一の幅を有する角筒状のもので、内部に両端が閉止されたエア通路51Aが設けられ、このエア通路51Aに工場の圧縮空気配管に接続される接続口52Aが設けられている。さらに、このエア通路51Aと前記細孔945dとを連続させる連続孔53Aが、細孔945dと同一ピッチで同一数だけ設けられている。
そして、エア通路ブロック50Aは、後部面945cに、連続孔53Aと細孔945dとが連続するように、さらに圧縮空気が漏れないように気密的に取り付けられている。
【0021】
以上のように構成された塗布ノズル40Aを用いて塗布剤60をドア外板71に塗布する際に、塗布ノズル40Aから塗布剤60を吐出させて、細孔945dから塗布剤60の吐出方向と平行あるいは交差する方向に圧縮空気を吹き付けながら塗布ノズル40Aを白抜きの矢印方向に移動させて、ドア外板71の内側に塗布剤60を塗布する。
すると、図1(C)に示すように、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となるが、細孔945dから吐出される圧縮空気により塗布剤60が下面945bから離間する方向に押圧されるため、塗布剤60が下面945bに付着することなく、したがって、巻き込まれることなくドア外板71の被塗布面に塗布されることとなる。
【0022】
したがって、本第1の実施の形態の塗布ノズル40Aによれば、細孔945dから吐出される圧縮空気により、吐出された塗布剤60が塗布ノズル40Aの下面から離間する方向に押圧されるので、塗布剤60が塗布ノズル40Aの下面945bに付着することなく塗布できる。
【0023】
なお、この第1の実施の形態のように、吐出された塗布剤60に圧縮空気を吹き付けるタイプの接触防止手段を採用した場合には、ドア外板71の被塗布面と塗布ノズル40Aの下面との間隙が大きい図12に示すような場合でも、塗布剤60が圧縮空気により下方に抑えられながら塗布されるので気泡が発生しにくい。
したがって、この圧縮空気による接触防止手段では、間隙の大小にかかわらず気泡や波打ちを発生させずに塗布できるので、ドア外板71の位置やロボット11の遊び等によるドア外板71の被塗布面と塗布ノズル40Aの下面との間隙のばらつきに対して許容範囲が大きくなり有用である。
【実施例2】
【0024】
つぎに、本発明の第2の実施の形態の塗布ノズルの構成について説明する。この第2の実施の形態では、吐出された塗布剤60に油を塗布するようにしたものである。塗布ノズル40Bは、図2(A)に示すように、前述した既存の塗布ノズル本体940の塗布剤吐出部945の、進行方向後部となる後部面945cに接触防止手段として油通路ブロック50Bを取り付けたものである。
油通路ブロック50Bは、塗布ノズル本体940の幅と略同一の幅を有する薄箱状のもので、図2(B)の断面図に示すように、内部に油通路51Bが設けられ、この油通路51Bが接続口(図略)を介して別に設けられた油貯留タンクに接続されている。
油通路ブロック50Bの下端は、下面945bに向かって傾斜状に折れ曲がり、油吐出口53Bが下面945bに沿って開口している。
【0025】
以上のように構成された塗布ノズル40Bを用いて塗布剤60をドア外板71に塗布する際に、塗布ノズル40Bから塗布剤60を吐出させて、油吐出口53Bから下面945bに向かって油を吐出させながら塗布ノズル40Bを白抜きの矢印方向に移動させてドア外板71の内側に塗布する。
すると、図2(C)に示すように、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となるが、油が下面945bと塗布剤60との間に入り込んで油膜を形成するため、塗布剤60が下面945bに付着することなく、したがって、巻き込まれることなくドア外板71の被塗布面に塗布されることとなる。
【0026】
したがって、本第2の実施の形態の塗布ノズル40Bによれば、油吐出口53Bから吐出される油により、吐出された塗布剤60と塗布ノズル40Bの下面945bとの間に油膜が形成されるので、塗布剤60が塗布ノズル40Bの下面945bに付着することなく塗布できる。
【実施例3】
【0027】
つぎに、本発明の第3の実施の形態の塗布ノズルの構成について説明する。この第3の実施の形態も、吐出された塗布剤60に油を塗布するようにしたものである。塗布ノズル40Cは、図3(A)に示すように、前述した既存の塗布ノズル本体940の進行方向後部となる後部面945cに接触防止手段として複数の細孔からなる油通路51Cを設けたものである。
油通路51Cは、その上部は塗布ノズル本体940の上部に開口し、別に設けられる油貯留タンク(図略)に接続されており、その下部は、図3(B)の断面図に示すように、下面945bに開口して油吐出口53Cとなっている。
【0028】
以上のように構成された塗布ノズル40Cを用いて塗布剤60をドア外板71に塗布する際に、塗布ノズル40Cから塗布剤60を吐出させて、油吐出口53Cから下面945bに油を吐出させながら塗布ノズル40Cを白抜きの矢印方向に移動させてドア外板71の内側に塗布剤60を塗布する。
すると、図3(C)に示すように、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となるが、油が下面945bと塗布剤60との間に入り込んで油膜を形成するため、塗布剤60が下面945bに付着することなく、したがって、巻き込まれることなくドア外板71の被塗布面に塗布されることとなる。
【0029】
したがって、本第3の実施の形態の塗布ノズル40Cによれば、油吐出口53Cから吐出される油により、吐出された塗布剤60と塗布ノズル40Cの下面945bとの間に油膜が形成されるので、塗布剤60が塗布ノズル40Cの下面945bに付着することなく塗布できる。
【実施例4】
【0030】
つぎに、本発明の第4の実施の形態の塗布ノズルの構成について説明する。塗布ノズル40Dは、図4(A)、(C)に示すように、前述した既存の塗布ノズル本体940の進行方向後部となる後部面945cの下面945bに、接触防止手段として後部面945cと塗布剤吐出口945aにわたって進行方向と平行に多数の凹凸溝51Dを設けたものである。
凹凸溝51Dは、図4(C)に示すように、塗布剤吐出部945の下面945bを凹凸状に削ったものであっても、あるいは、図4(B)に示すように、ワイヤ53D等を取り付けて下面945bを凹凸状にしたものであってもよい。
【0031】
以上のように構成された塗布ノズル40Dを用いて塗布剤60をドア外板71に塗布する際に、塗布ノズル40Dから塗布剤60を吐出させて、塗布ノズル40Dを移動させてドア外板71の内側に塗布すると、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となり、塗布剤60が下面945bと接触するが、凹凸溝51Dにより塗布剤60と下面945bとの接触面積が小さくなるため、塗布剤60が下面945bに付着することなく、したがって、巻き込まれることなくドア外板71の被塗布面に塗布されることとなる。
【0032】
したがって、本第4の実施の形態の塗布ノズル40Dによれば、吐出された塗布剤60と塗布ノズル40Dの下面945bとの間の接触面積が凹凸溝51Dにより小さくなるので、塗布剤60が塗布ノズル40Dの下面945bに付着しにくくなり、付着しても剥がれやすくなり、よって、巻き込まれることなく塗布できる。
【実施例5】
【0033】
本発明の第5の実施の形態の塗布ノズルの構成について説明する。この第5の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、吐出された塗布剤60にエアを吹き付けるようにしたものである。塗布ノズル40Eは、図5に示すように、前述した既存の塗布ノズル本体940の塗布剤吐出部945の、進行方向後部となる後部面945cに接触防止手段として、第1の実施の形態と類似のエア通路ブロック50Eを取り付けたものである。
エア通路ブロック50Eは、塗布ノズル本体940の幅と略同一の幅を有する角筒状のもので、内部に両端が閉止されたエア通路51Eが設けられ、エア通路51Eの下部でエア通路ブロック50Eの下面に塗布剤吐出部945の下方に向かって傾斜して開口する連続孔53Eが設けられ、このエア通路51Eに工場の圧縮空気配管に接続される接続口52A(図1参照)が設けられている。
【0034】
以上のように構成された塗布ノズル40Eを用いて塗布剤60をドア外板71に塗布する際に、塗布ノズル40Eから塗布剤60を吐出させて、連続孔53Eから塗布剤60の吐出方向と交差する方向に圧縮空気を吹き付けながら塗布ノズル40Eを白抜きの矢印方向に移動させて、ドア外板71の内側に塗布剤60を塗布する。
すると、図5に示すように、塗布剤60がドア外板71の被塗布面に付着し、塗布ノズル本体940の進行方向後部に流れる状態となるが、連続孔53Eから吐出される圧縮空気により塗布剤60が下面945bから離間する方向に押圧されるため、塗布剤60が下面945bに付着することなく、したがって、巻き込まれることなくドア外板71の被塗布面に塗布されることとなる。
【0035】
したがって、本第5の実施の形態の塗布ノズル40Eによれば、塗布ノズル本体940にエア通路ブロック50Eを取り付けるだけで圧縮空気を吐出して塗布剤60を塗布ノズル40Eの下面から離間する方向に押圧できるので、塗布剤60が塗布ノズル40Eの下面945bに付着することなく塗布できる。
【0036】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施例でエア通路ブロック50Aを塗布ノズル本体940の壁に取り付けたもので説明したが、第3実施例の油通路51Cのように、塗布ノズル本体940に直接細孔945dを穿設して、この細孔945dから圧縮空気を吐出するようにしてもよい。また、この細孔945dは幅方向に連続したスリット状のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、塗布剤供給源から塗布剤が供給される供給部と、該供給部と連通し、該供給部から流入した塗布剤が貯留される塗布剤貯留部と、該塗布剤貯留部の先端に設けられ、スリット状の吐出口を有する塗布剤吐出部と、を備えた塗布ノズルにおいて、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に、吐出した塗布剤が前記塗布ノズルの下面に接触するのを防止する接触防止手段を備えるようにしたので、塗布剤が、塗布ノズル下面の、塗布ノズルの進行方向後側に接触するのを防止することができ、被塗布面と塗布ノズル下端との間隙を小さくして塗布することが可能となり、塗布剤の波打や気泡の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗布ノズルを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図であり、(C)は塗布状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る塗布ノズルを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図であり、(C)は塗布状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る塗布ノズルを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図であり、(C)は塗布状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る塗布ノズルを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図であり、(C)は塗布ノズルを下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る塗布ノズルを示す図であり、その塗布状態を示す断面図である。
【図6】本発明の一の実施の形態に係る塗布装置の全体斜視図である。
【図7】本発明の一の実施の形態に係る塗布ノズルの、一部欠載斜視図である。
【図8】本発明の一の実施の形態に係る塗布方法により塗布された塗布剤の断面図である。
【図9】本発明の一の実施の形態に係る塗布方法による塗布状況の断面図であり、(A)は接着層、(B)は補強層の塗布状況を示す。
【図10】従来の塗布ノズルから塗布剤を吐出した状態の断面図である。
【図11】従来の塗布ノズルにより、塗布ノズルの下面と被塗布面との間隔を小さくして塗布剤を塗布する状態の断面図である。
【図12】従来の塗布ノズルにより、塗布ノズルの下面と被塗布面との間隔を大きくして塗布剤を塗布する状態の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 塗布装置
10 ロボット
20 塗布剤供給源
40A、B、C、D、E、940 塗布ノズル
941 供給部
943 塗布剤貯留部
945 塗布剤吐出部
945a 吐出口
945b 下面
945c 後部面
945d 細孔(圧縮空気吐出口)
50A、50E エア通路ブロック
50B 油通路ブロック
51A、51E エア通路
51B、51C 油通路
51D 凹凸溝
53A 連続孔
53B、53C 油吐出口
53D ワイヤ
60 塗布剤
71 ドア外板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤供給源から塗布剤が供給される供給部と、
該供給部と連通し、該供給部から流入した塗布剤が貯留される塗布剤貯留部と、
該塗布剤貯留部の先端に設けられ、スリット状の吐出口を有する塗布剤吐出部と、を備えた塗布ノズルにおいて、
前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に、吐出した塗布剤が前記塗布ノズルの下面に接触するのを防止する接触防止手段を備えたことを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、
前記接触防止手段は、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に設けられ、前記吐出口から吐出する塗布剤の吐出方向と平行又は交差する方向に圧縮空気を吹き付ける空気吐出口であることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、
前記接触防止手段は、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側に設けられ、前記吐出口から吐出する塗布剤の吐出方向と平行又は交差する方向に油を吐出する油吐出口であることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項4】
請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、
前記接触防止手段は、前記吐出口の、前記塗布ノズルの進行方向後側のノズル下面に設けられた、前記塗布ノズルの進行方向と平行な多数の凹凸溝であることを特徴とする塗布ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−110271(P2008−110271A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292985(P2006−292985)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】