説明

塗布フィルム

【課題】 ポリビニルブチラール層に対して優れた接着性を有するフィルムおよび積層体を、経済性、生産性良く提供する。
【解決手段】 ポリエステル樹脂(A)、オキサゾリン基含有ポリマー(B)およびエポキシ化合物(C)を含有する塗布液を塗布し、乾燥して形成された塗布層をポリエステルフィルムの片面に有することを特徴とする塗布フィルム、および当該塗布フィルムの塗布層上にポリビニルブチラール層を有することを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
窓ガラス、特に自動車等の車両の窓ガラスには、車内温度上昇を防止するために熱線遮断機能を付与する取り組みが行われている。合わせガラスには、飛散防止効果や耐貫通性を向上させるために、中間膜としてポリビニルブチラール(以下、PVBと略記することがある)などの軟質樹脂が使用されており、軟質樹脂に有機染料や無機酸化物を配合して熱線を吸収する方法や、ポリエステル等のプラスチックフィルムに熱線遮断層を真空蒸着法やスパッタリング法等で積層したものを新たに中間膜として追加する方法が知られている。
【0002】
これらの中で、ポリエステル等のプラスチックフィルムに熱線遮断層を真空蒸着法やスパッタリング法等で積層したものを新たに中間膜として追加する方法は、可視領域での透過率が高く、熱線遮断機能を有する合わせガラスとして優れた性能を有する。この場合、PVBなどの軟質樹脂とプラスチックフィルムを接着する必要があるが、PVBはガラスとの接着性に優れる反面、ポリエステル等のプラスチックフィルムとの接着性に劣るため、一般に何らかの易接着処理が必要とされる。この方法として、従来、プラスチックフィルムにアミノ官能性シランを下塗りする方法(特許文献4)、ポリアリルアミンコーティングで下塗りする方法(特許文献5)、PVBとフィルムの間にエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる層を設ける方法(特許文献6)等が提案されているが、これらの方法は、接着性、経済性、生産性において必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−32352号公報
【特許文献2】特開平6−191906号公報
【特許文献3】特開平8−217500号公報
【特許文献4】特開平2−38432号公報
【特許文献5】特表2007−513813号公報
【特許文献6】特開2003−176159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、ポリビニルブチラール層に対して優れた接着性を有するフィルムおよび積層体を、経済性、生産性良く提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステル樹脂(A)、オキサゾリン基含有ポリマー(B)およびエポキシ化合物(C)を含有する塗布液を塗布し、乾燥して形成された塗布層をポリエステルフィルムの片面に有することを特徴とする塗布フィルム、および当該塗布フィルムの塗布層上にポリビニルブチラール層を有することを特徴とする積層体に存する。
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
【0008】
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0009】
本発明におけるポリエステルフィルムには、取扱いを容易にするために易滑性を付与する目的で粒子を含有させてもよい。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0010】
用いる粒子の粒径や含有量は、フィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.005〜5.0μm、好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりすることがある。平均粒径が0.005μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性や透明性が損なわれる傾向があり、少なければ易滑性が劣る傾向がある。
【0011】
また、必要に応じて上記の粒子のほかにも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、光線遮断剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィルムは、本発明の要件を満たしていれば多層構造であってもよく、その場合は、塗布層を設ける層以外についてはポリエステル層でなくとも構わない。
【0013】
次に、本発明のフィルムの塗布層を構成する成分である樹脂について述べる。
本発明で用いる塗布液において、ポリエステル樹脂(A)を構成する成分として、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を例示できる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。常法の重縮合反応によってポリエステルを合成することができる。
【0014】
なお、上記のほか、特開平1−165633号公報に記載されている、いわゆるアクリルグラフトポリエステルや、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタンなどのポリエステル成分を有する複合高分子も本発明で用いる塗布剤ポリエステルに含まれる。
【0015】
次に、本発明において塗布剤として用いるオキサゾリン基含有ポリマー(B)について説明する。本発明におけるオキサゾリン基含有ポリマーとは、その原料モノマーの少なくとも一つとしてオキサゾリン化合物を含むモノマーを使用して合成することができるものである。オキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、3−オキサゾリン、4−オキサゾリン化合物があり、いずれを用いてもよいが、特に2−オキサゾリン化合物が反応性に富み、かつ工業的にも実用化されているので好ましい。
【0016】
例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO),5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(MVOZO)、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(DMVOZO)、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,−オキサジン(DMVOZI)、4,4,6ートリメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン(TMVOZI)、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPOZO),4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(DMIPOZO),4−アクリロイル−オキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン(AOZO),4−メタクリロイル−オキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン(MAOZO)、4−メタクリロイル−オシメチル−2−フェニル−4−メチル−2−オキサゾリン(MAPOZO),2−(4−ビニルフェニル)−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン(VPMOZO),4−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(EHMIPOZO)、4−エチル−4−カルボエトキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(EEMIPOZO)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ビニルオキサゾリン類は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)により容易にラジカル重合し、側鎖にオキサゾリン環を有するポリマーを生成する。ビニルオキサゾリン類は、n−ブチルリチウム等を触媒としたアニオン重合でも同様のポリ(ビニルオキサゾリン)類を生成する。なお、ポリ(ビニルオキサゾリン)類の合成にオキサゾリン環をもつモノマーによらない方法もある。例えば、ポリ(メタクリロイルアジリジン)の異性化反応による方法が挙げられる。
【0018】
本発明で用いる、オキサゾリン基を含有するポリマー(B)は、他の共重合可能な任意のモノマーと共重合されていてよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合されていることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルのいずれかまたは複数との共重合であることがさらに好ましい。
【0019】
オキサゾリン基の密度は高いことが好ましく、オキサゾリン価が300g(固形分)/当量未満であることが好ましく、さらに好ましくは180g(固形分)/当量未満である。
【0020】
ポリマー(B)は、水分散性または水溶性であることが好ましく、特に水溶性であることが好ましい。水と混合可能な有機溶媒を併用して、水分散性、水溶性を達成してもよい。
【0021】
ポリマー(B)の配合比率は、10〜75%の範囲が好ましく、さらに好ましくは15〜60%の範囲である。好ましい範囲を外れるとPVB接着性が低下する恐れがある。
【0022】
本発明で用いるエポキシ化合物(C)は、分子内にエポキシ基を含む化合物およびその半硬化物である。代表的な例は、エピクロロヒドリンとポリオール、ビスフェノールA等との縮合物である。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。本発明で使用されるエポキシ樹脂は、必ずしも水溶性である必要はなく、水分散体型や溶剤溶解型、自己乳化型であってもよい。
【0023】
本発明で使用されるエポキシ樹脂の具体例としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸グリシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
さらに本発明のフィルムの塗布層中には、必要に応じて、前述以外の架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は、易接着樹脂に含まれる官能基と架橋反応することで、易接着樹脂層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性をさらに改良することができる。
【0025】
本発明のフィルムの塗布層は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明における塗布液は、取扱い上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0027】
本発明における塗布液の固形分濃度に特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%の範囲である。
【0028】
また、塗布量は乾燥後で、通常0.003〜1.5g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.3g/mである。塗布量が0.003g/m未満の場合は、十分な接着性能が得られない恐れがあり、1.5g/mを超えると、フィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
【0029】
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法は、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後、延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥および延伸を同時に行う方法が経済的である。
【0030】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、リバースロールコータ、トランスファロールコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、カレンダコータ、押出コータ等のような技術が挙げられる。
【0031】
本発明の塗布フィルムにPVB層を積層する方法としては、重ね合わせて加熱および加圧することにより行うのが一般的であるが、目的が達せられれば他の方法を採用してもよい。PVBの性状により変化するが、加熱温度は通常130〜150℃であり、圧力は通常1MPa程度である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、PVB対し良好な接着性を有するフィルムを安価に効率よく提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記の通りである。
【0034】
(1)フィルムヘーズ
JIS K 7136(ISO 14782)にしたがって、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いてフィルムの濁度(ヘーズ)を測定し、塗布層を設けていないフィルムに対するヘーズの上昇を求めた。塗布層を設けていないフィルムに対して、塗布層を設けることによるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れると言える。透明性は下記基準により判定した。
○:ヘーズの上昇が0.3%未満
×:ヘーズの上昇が0.3%以上
【0035】
(2)PVBとの接着性
・評価用PVBシートの作成
粉末状のPVB(分子量約11万、ブチラール化度65モル%、水酸基量約34モル%)6重量部、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(可塑剤)4重量部を45重量部のトルエンと混合し膨潤させた後、45重量部のエタノールを加え溶解させた。この溶液をテフロン(登録商標)製シャーレに深さ4mmになるように入れ、熱風オーブンにて100℃、1時間乾燥して、厚さ約0.4mmのPVBシートを作成した。
【0036】
・接着性評価
上記PVBシートを幅1cm、長さ10cmに切り出し、2枚の供試フィルムで塗布面がPVBシートに向くように挟み、ヒートシールテスター(テスター産業(株)製 TP−701)で熱圧着した。熱圧着の条件は以下のとおりである。
荷重:1000N(接着面におおよそ1MPaの圧力がかかる);温度:140℃;時間:1分
放冷後、圧着部分を手で剥離し、下記の基準により接着性を判定した。
◎:極めて良好(無理に剥がすと供試フィルムまたはPVBシートが損傷するほど接着している)
○:良好(接着界面で剥離するが強い力を要する)
△:普通(接着界面で剥離するが軽い手応えがある)
×:不良(接着界面でほとんど手応えがなく、簡単に剥離する)
【0037】
(3)塗布フィルムの再生利用性評価
塗布層を設けていないポリエステルフィルムを粉砕し、180℃で乾燥し、小型押出機(ラボプラストミル:東洋精機社)にて約300℃にて溶融し、再ペレット化した。次いで、得られたペレットを用いて溶融製膜し、ブランクフィルムとした。一方、塗布層を設けたポリエステルフィルムを用いて、ポリエステルフィルムを作成した。このフィルムの黄変着色度を下記の基準により評価した。得られたフィルムの厚さは、約100μmであった。黄変着色度は、フィルムをロール状に巻いたときの黄変着色程度を端面方向からブランクフィルムと比較して目視評価した。
◎:端面の黄変着色度がブランクフィルム並み
○:端面のフィルムがやや黄変着色しているが、実用上問題ない
△:端面のフィルムが黄変着色しており、実用上配合量に制限が必要である
×:端面のフィルムの黄変着色度が大で実用性に欠ける
【0038】
実施例および比較例において、塗布液を構成する成分として使用した化合物は、以下のとおりである。
・ポリエステル樹脂:A1
テレフタル酸56モル%、イソフタル酸40モル%、5−ソジウムスルホイソフタル酸4モル%、エチレングリコール70モル%、1,4ブタンジオール17モル%およびジエチレングリコール13モル%からなるポリエステルの水分散体
【0039】
・ポリエステル樹脂:A2
テレフタル酸50モル%、イソフタル酸50モル%、エチレングリコール73モル%、ジエチレングリコール27モル%からなるポリエステルを、無水ピロメリット酸と反応させ、分子量15000、カルボン酸基量87mgKOH/gのポリエステルを得た。このポリエステルをアンモニアで中和させることにより、水分散させた。この水分散液中でMMAを乳化重合させてアクリルグラフトポリエステルを得た(水分散体)。ポリエステルとMMAの仕込み量比は、50/50重量%であった。
【0040】
・オキサゾリン基含有ポリマー:B1
(メタ)アクリル系モノマーとの共重合タイプ。オキサゾリン価 220g(固形分)/当量((株)日本触媒製 エポクロス WS−700)
【0041】
・オキサゾリン基含有ポリマー:B2
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合タイプ。オキサゾリン価 130g(固形分)/当量((株)日本触媒製 エポクロス WS−300)
【0042】
・エポキシ化合物:C1
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製 デナコールEX−521)
【0043】
・不活性粒子:D1
平均粒径0.05μmのシリカゾル(日産化学工業(株)製 スノーテックス)
【0044】
・ポリアクリレート系ポリマー:E1
メチルメタクリレート41モル%、エチルアクリレート46モル%、アクリロニトリル7モル%、N−メチロールアクリルアミド5モル%、メタクリル酸1モル%からなるアクリレートの水分散体。
【0045】
実施例1:
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのチップを十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。このフィルムの片面に下記表1の実施例1に示すとおりの組成からなる水性塗工液を塗布し、テンター延伸機により100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、基材フィルム厚みが100μm、塗布量が0.05g/m2の積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0046】
実施例2〜7:
下記表1に示すように塗布液の処方を変更した以外は実施例1と同様にして、基材フィルム厚みが100μm、塗布量が0.05g/mの積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0047】
比較例1:
塗布をしないこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム厚みが100μmの二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0048】
比較例2〜5:
下記表1に示すように塗布液の処方を変更した以外は実施例1と同様にして、基材フィルム厚みが100μm、塗布量が0.05g/mの積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0049】
【表1】

以上、得られたフィルムの評価特性をまとめて下記表2に示す。
【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の塗布フィルムおよび積層体は、例えば、窓ガラス、自動車等の車両のガラスの材料として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、オキサゾリン基含有ポリマー(B)およびエポキシ化合物(C)を含有する塗布液を塗布し、乾燥して形成された塗布層をポリエステルフィルムの片面に有することを特徴とする塗布フィルム。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)、オキサゾリン基含有ポリマー(B)およびエポキシ化合物(C)のそれぞれが水溶性または水分散性であることを特徴とする請求項1記載の塗布フィルム。
【請求項3】
塗布層が延伸されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の塗布フィルムの塗布層上にポリビニルブチラール層を有することを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2010−189494(P2010−189494A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33467(P2009−33467)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】