説明

塗布処理方法および塗布処理装置

【課題】比較的粘度の低い処理液を用いる場合であっても、処理液の使用量を従来技術より少なくし、且つ処理液を均一に基板の表面全体に塗布できる塗布処理方法及び塗布処理装置を提供する。
【解決手段】基板が第1速度で回転する状態で、ノズルから処理液を基板の中心部上へ吐出し、その後基板の回転速度を第1速度から第2速度まで上げて、処理液で基板表面に塗布領域を形成する第1ステップと、基板の回転速度を第2速度から第3速度へ上げて、塗布領域を拡大させる第2ステップと、基板の回転速度を第3速度から第4速度に降下して、処理液を均一に分布させる第3ステップと、基板の回転速度を第4速度から第2速度より大きい第5速度まで上げて、塗布領域を基板の周縁部まで拡大する第4ステップと、ノズルから処理液の吐出を停止して、基板の回転速度を第5速度から第6速度まで降下させて処理液を均一に分布させる第5ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハなどの被処理基板にフォトレジスト液などの処理液を塗布する塗布処理方法及び塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいて、リソグラフィ工程を行う際には、半導体ウェハ(以下基板あるいはウェハとも呼称する)の表面上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を露光して所定パターンを形成する露光処理、及び露光したレジスト膜を現像する現像処理などの処理工程を順に行って、ウェハ上に所定のレジストパターンを形成する。
【0003】
レジスト塗布処理においては、多くの場合、高速回転するウェハの中心部へ向けてノズルからレジスト液を供給し、レジスト液を遠心力でウェハ上に拡散させて、ウェハ表面全体に塗布させるスピンコーティング法を使用している。
【0004】
従来、スピンコーティング法において、レジスト液の均一な塗布を維持しつつレジスト液の使用量を減少させるための技術が創案されている。例えば、回転するウェハにレジスト液を供給する過程で、ウェハの回転速度を待機回転数に減速(あるいは停止)することで、遠心力によるレジスト液の拡散の過程で形成される所謂ヒゲ(即ち、上面視円形のレジスト液のコア部分から放射状に周方向に延びる細いレジスト液の流れ)の伸長を一時的に停止させる技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術によれば、レジスト液はウェハ中央に溜められてからゆっくりと拡散される(減速ステップ時のレジスト液の広がりパターンを示す図8参照)ので、レジスト液の広がりパターンを維持することができる。従って、上記ヒゲを通してウェハの周縁部からレジスト液が多量に飛散してしまうといった現象を防止でき、レジスト液の消費量を低減することができる。
【0005】
また、レジスト液を吐出する前にウェハを第1速度で回転させておき、レジスト液の吐出工程においては、前記第1速度からこの第1速度より速い第2速度まで回転速度が連続的に変化するように(換言すれば、縦軸に回転速度、横軸に時間を示すグラフにおいて回転速度の軌跡がS字状になるように)、加速度を徐々に上げた後に加速度を徐々に下げるように制御する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125581号公報
【特許文献2】特開2009−078250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された方法は、レジスト液がウェハ周縁部に達しない状態を所定時間に渡って維持する必要があるため、レジスト液の粘度が低い場合(例えば、粘度5cp以下の場合)には、レジスト液がウェハ全体に塗布される前に乾燥してしまい、均一な膜を塗布することができないといった問題がある。また、シンナーなどの溶剤を予めウェハ上に塗布する、所謂プリウェット処理に対応したものではない。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された方法によれば、確かに均一にレジストを塗布してレジスト液の使用量を減少することができる。然しながら、半導体回路がより精密になる中、レジスト液の使用量の節約に対する要望もより高まり、製造プロセスでは、レジスト液の使用量をわずか0.1ml減らすだけで、製造コストの低下に大きく役立つ。この観点から見れば、上記特許文献2に開示された方法は、なお改善の余地がある。
【0009】
そこで、上記の事情に鑑みて、本発明は比較的粘度の低い処理液を用いる場合であっても、処理液の使用量を従来技術より少なくし、且つ処理液を均一に基板の表面全体に塗布できる塗布処理方法及び塗布処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、粘度が5cp以下の処理液を基板に塗布する塗布処理方法であって、基板が第1速度で回転する状態で、ノズルから前記処理液を基板の中心部上へ吐出し、その後基板の回転速度を第1速度から第2速度まで上げて、前記処理液で基板表面に塗布領域を形成する第1ステップと、基板の回転速度を第2速度から第3速度へ上げて、前記塗布領域を拡大させる第2ステップと、基板の回転速度を第3速度から第4速度に降下して、前記処理液を均一に分布させる第3ステップと、基板の回転速度を第4速度から第2速度より大きい第5速度まで上げて、前記塗布領域を基板の周縁部まで拡大する第4ステップと、ノズルから前記処理液の吐出を停止して、基板の回転速度を第5速度から第6速度まで降下させて前記処理液を均一に分布させる第5ステップと、を含むことを特徴とする基板に処理液を塗布する塗布処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗布処理方法によれば、比較的粘度の低い処理液を用いる場合であっても、処理液の使用量を従来技術より少なくし、且つ処理液を均一に基板の表面全体に塗布できる塗布処理方法及び塗布処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の塗布処理方法における各ステップの基板回転速度を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法を行う塗布処理装置の概要構造の縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法を行う塗布処理装置の概要構造の横断面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法の手順のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法による、各ステップにおけるウェハの回転速度を示すグラフである。
【図6】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法における各ステップのウェハ表面上の塗布状態を表す説明図である。(f)は、塗布の瑕疵を表す説明図である。
【図7】本発明にかかる塗布処理方法をウェハに適用してレジスト液を塗布したレジスト膜の厚みの測定結果を示す。
【図8】従来技術における減速ステップ時のレジスト液の広がりパターンを示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態における減速ステップ時のレジスト液の広がりパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、本発明の目的の達成に使われる技術手段と構造の特徴を詳細に説明する。図2は本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法を行う塗布処理装置30の概要構造の縦断面図である。図3は、塗布処理装置30の概要構造の横断面図である。
【0014】
図2に示すように、塗布処理装置30はハウジング120と、前記ハウジング120内の中央部に設けられ、ウェハWを保持して回転させる回転保持部としてスピンチャック130と、を有する。スピンチャック130は水平な上面を有して、前記上面にウェハWなどの基板を吸引できる吸引口(図示せず)が設けられている。前記吸引口の吸引力により、スピンチャック130は、ウェハWをスピンチャック130上に吸引・保持することができる。
【0015】
スピンチャック130にはチャック駆動機構131が設けられ、前記チャック駆動機構131にはモータなどの装置が備えられており、チャック駆動機構131の駆動により、スピンチャック130が所定の速度で回転できる。また、チャック駆動機構131はシリンダーなどの昇降駆動源(図示せず)を有し、スピンチャック130を上下移動させることができる。このほか、スピンチャック130の回転速度は、後述する制御部160によって制御される。
【0016】
スピンチャック130の周囲にはカップ状体132を設けて、ウェハWから飛び散った液体を受け止めて該液体を回収する。カップ状体132の底面には回収した液体を排出できる排出管133及びカップ状体132内部のガスを排出できる排気管134が接続している。
【0017】
図3に示すように、カップ状体132のマイナスX方向(図3下方)側には、Y方向(図3左右方向)に沿って伸びる軌道軸140が設けられている。軌道軸140はカップ状体132のマイナスY方向(図3の左方)の外側からプラスY正方向(図3の右方)の外側へ伸びている。軌道軸140上に二つのアーム部141(プラスY方向)、142(マイナスY方向)が軌道軸140上を移動可能に設けられている。
【0018】
図2及び図3に示すように、第1ノズル143は第1アーム141の先端付近に支持され、フォトレジスト液などの処理液を吐出できる。第1アーム141は図3が示すノズル駆動部144の駆動により軌道軸140上を自由に移動する。従って、第1ノズル143はカップ状体132のプラスY方向の外側に設けられた待機部145からカップ状体132内のウェハW中心部上方まで移動し、且つウェハWの半径方向に沿って前記ウェハWの表面上方で移動するように制御される。このほか、第1アーム141はノズル駆動部144の駆動により自由に昇降して、第1ノズル143の高さを調整する。又、本実施の形態において、第1アーム141とノズル駆動部144は「処理液ノズル移動手段」を構成する。
【0019】
第1ノズル143は供給管147に接続し、供給管147は図2に示す処理液供給源146と連通する。処理液供給源146はレジスト膜を形成できるレジスト液などの処理液を保存する。このほか、供給管147上にはバルブ148が設けられ、該バルブ148の開閉により処理液の吐出をオン又はオフする。
【0020】
第2ノズル150は第2アーム142の先端付近に支持され、処理液の溶剤を吐出できる。第2アーム142は図3に示すようなノズル駆動部151の駆動により軌道軸140上で自由に移動し、第2ノズル150はカップ状体132のマイナスY方向の外側に設置された待機部152からカップ状体132内のウェハWの中心部上方へ移動できる。このほか、ノズル駆動部151の駆動により、第2アーム142が自由に昇降でき、よって第2ノズル150の高さを調整する。又、本実施の形態においては、第2アーム150とノズル駆動部151が「溶剤ノズル移動手段」を構成する。
【0021】
第2ノズル150は供給管154に接続し、供給管154は図2に示す溶剤供給源153と連通する。このほか、上記の構造において、処理液を吐出する第1ノズル143と溶剤を吐出する第2ノズル150はそれぞれ異なるアームで支持されているが、同じアームで支持されても良い。また、前記アームの移動を制御することで、第1ノズル143と第2ノズル150の移動と吐出の時間を制御する。
【0022】
スピンチャック130の回転動作、第1ノズル143を移動させるノズル駆動部144の駆動動作、第1ノズル143の処理液吐出のオン/オフのためのバルブ148の開閉動作、第2ノズル150を移動させるノズル駆動部151の駆動動作など、駆動システムの動作は、いずれも制御部160が制御している。制御部160はCPUとメモリを備えたコンピュータからなり、メモリに記憶されたプログラムを実行して、塗布処理装置30に塗布処理を実行させる。このほか、塗布処理装置30に塗布処理を実施させる各プログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体Hに保存され、前記記録媒体Hから制御部160上にインストールすることができる。
【0023】
図4は本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法の手順を表すフローチャートである。また、図5は本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法におけるウェハWの回転速度を示すグラフである。図6(a)〜(e)は本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法の各ステップにおけるウェハW表面上の塗布状態を示す説明図であり、図6(f)は塗布に瑕疵があるときの状態説明図である。以下、図4、図5、図6を順に参照しながら本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法の手順を説明する。
【0024】
まず、ウェハWを塗布処理装置30に搬入して、図2に示すスピンチャック130上に吸引・保持させる。次に、第2アーム142が待機部152にある第2ノズル150をウェハWの中心部の上方まで移動させる。その後、ウェハWが静止した状態で、第2ノズル150から所定量の溶剤をウェハWの中心部に吐出する。次に、図5に示すように、スピンチャック130が、例えば300rpm程度の第1速度v1でウェハWを回転させ、溶剤をウェハW上に拡散させることで、溶剤をウェハWの表面全体に塗布する。また、第2アーム142が第2ノズル150を待機部152に戻す。
【0025】
その後、第1アーム141が待機部145にある第1ノズル143をウェハWの中心部上方へ移動させる。次に、バルブ148を開いて、第1ノズル143からウェハWの中心部に比較的粘度の低い(粘度が5cp以下)処理液として、例えばレジスト液を吐出する。この時、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第1速度v1から1000rpm程度の第2速度v2まで上げる。そうすると、ウェハWの中心部に供給されるレジスト液が遠心力で拡散し、図6(a)に示すように、ウェハWの表面に円形に塗布領域P1が形成される(図4のステップS1)。
【0026】
その後、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第2速度v2から、例えば2700rpm程度の第3速度v3まで上げ、これによりレジスト液が更に遠心力を受けて、図6(b)に示すように、ウェハWの表面上に円形の塗布領域P1より大きい円形の塗布領域P2まで拡散する(図4のステップS2)。
【0027】
その後、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第3速度v3から例えば1200rpm程度の第4速度v4まで下げる。この際、マイナス加速度の作用によりレジスト液のウェハW表面における被覆率(塗布面積比)を上げ、図6(c)に示すように、ウェハWの表面に円形の塗布領域P3が形成される(図4のステップS3)。図9は、この時のレジスト液の広がりパターンを示す、ウェハの側面方向から見た断面図である。
【0028】
そして、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第4速度v4から、例えば2450rpm程度の第5速度v5まで上げ、これによりレジスト液が更に遠心力を受けて、ウェハWの周縁部まで拡散して、図6(d)に示すように、ウェハWの表面に塗布領域P4が形成される(図4のステップS4)。
【0029】
更にその後、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第5速度v5から、例えば400rpm程度の第6速度v6まで落とすと共に、第1ノズル143からウェハWの中心部へのレジスト液の吐出を停止する。この際、図6(e)に示すように、マイナス加速度の作用によりレジスト液がウェハWの表面全体を完全に被覆して、レジスト液が均一にウェハWの表面全体に塗布される(図4のステップS5)。このように、本実施の形態においては、5cp以下の粘度を持った処理液としてレジスト液を用い、これをノズルからレジスト液を吐出させている状態としては最後の回転数の上昇のときに、レジスト液がウェハWの周縁部まで拡散される。
【0030】
その後、図5に示すように、ウェハWの回転速度を第6速度v6から、例えば1200rpm程度の第7速度v7まで上げる。第7速度v7の大きさがレジスト膜の膜厚を決め、ウェハWを一定時間続いて回転させて、ウェハW表面のレジスト膜を乾燥させる(図4のステップS6)。
【0031】
ウェハWが乾燥するのを待って、ウェハWの回転を停止し、ウェハWをスピンチャック130から搬出して、本発明の実施の形態にかかる塗布処理方法の一連の工程が完了する。
【0032】
上記の工程において、各ステップS1〜S5の処理時間は0.1〜1.5秒程度であり、ウェハの回転速度v3とv5は回転速度v2とv4よりそれぞれ大きく、且つ速度差は1000rpm以上である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【0034】
(実施例1)
本発明の塗布処理方法は、図2に示す塗布処理装置30において適用される。本実施例においては、東京応化工業株式会社製の溶剤(商品名:OK73)を使用し、信越化学工業株式会社製のレジスト液(商品名:SAIL−X145)を使用した。粘度は約2cpであり、レジスト液の使用量は0.50ml〜1.00ml、ステップS1〜S5の処理時間を0.1〜1.5秒、ステップS1とS3におけるv2とv4を1000rpmに設定し、ステップS2とステップS4におけるv3とv5を2000rpmに設定して、各レジスト液の使用量が均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録する。均一に塗布されたものを「OK」と記録し、塗布むらや瑕疵(図6(f)に示すような瑕疵)があるものは「NG」と記録した。
【0035】
(実施例2)
ステップS2とステップS4におけるv3とv5を3000rpmと設定した以外は、その他条件は実施例1と同じであり、各レジスト液の使用量において均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録し、均一に塗布されたものを「OK」、塗布むらや瑕疵があるものは「NG」と記録した。
【0036】
(実施例3)
ステップS2とステップS4におけるv3とv5を4000rpmに設定した以外は、その他条件は実施例1と同じであり、各レジスト液の使用量において均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録し、均一に塗布されたものを「OK」、塗布むらや瑕疵があるものは「NG」と記録した。
【0037】
実施例1〜3から得られた実験結果を表1にまとめた。
【表1】

表1から分かるように、ステップS2とステップS4においてv3とv5を2000rpmに設定したときは、レジスト液の使用量が0.60ml以上で均一にウェハWの表面全体に塗布することができた。ステップS2とステップS4におけるv3とv5を3000rpm又は4000rpmに設定したときは、レジスト液の使用量が0.55ml以上で均一にウェハWの表面全体に塗布することができた。
【0038】
(比較例1)
図2に示す塗布処理装置30において、特許文献1記載の塗布処理方法を応用した。東京応化工業株式会社製の溶剤(商品名:OK73)を使用し、信越化学工業株式会社製のレジスト液(商品名:SAIL−X145)を使用した。粘度は約2cpであり、レジスト液の使用量は0.50ml〜1.00ml。図1に示すように、ウェハWの回転速度をV1からS字型でV2まで増加させる。V1を500rpmに設定し、V2を2000rpmに設定する。各レジスト液の使用量において均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録する。均一に塗布されたものを「OK」と記録し、塗布むらや瑕疵があるものは「NG」と記録した。
【0039】
(比較例2)
V2を3000rpmに設定した以外の、その他条件は比較例1と同じである。各レジスト液の使用量において均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録する。均一に塗布されたものを「OK」と記録し、塗布むらや瑕疵があるものは「NG」と記録した。
【0040】
(比較例3)
V2を4000rpmに設定した以外の、その他条件は比較例1と同じである。各レジスト液の使用量において均一にウェハWの表面全体に塗布されたか否かを記録する。均一に塗布されたものを「OK」と記録し、塗布むらや瑕疵があるものは「NG」と記録した。
【0041】
比較例1〜3から得られた実験結果を表2にまとめた。
【表2】

表2から分かるように、特許文献1に記載の技術において、V2を2000rpmと設定したとき、レジスト液の使用量は0.70ml以上でなければ、均一にウェハWの表面全体に塗布することができない。また、V2を3000rpmに設定したときは、レジスト液の使用量が0.65ml以上でなければ、均一にウェハWの表面全体に塗布することができない。また、V2を4000rpmに設定したときは、レジスト液の使用量が0.60ml以上でなければ、均一にウェハWの表面全体に塗布することができない。
【0042】
表1と表2の実験結果を比較すると分かるように、本発明にかかる塗布処理方法と特許文献1にかかる塗布処理方法では、ウェハWの最高回転速度がともに2000rpmであるとき、本発明の塗布処理方法は、特許文献1に係る塗布処理方法と比べれば、レジスト液の使用量を約0.1ml節約することができた。両者ともに3000rpmであるときは、約0.1ml節約することができた。同様に、両者ともに4000rpmであるときは、約0.05ml節約することができた。
【0043】
以下、本発明の塗布処理方法で塗布した膜層の厚みが均一であるか否か、実験を行う。図7はウェハWに本発明にかかる塗布処理方法を応用してレジスト液を塗布したレジスト膜厚の測定結果である。図7に示すように、番号(Wefer No.)1〜5の5枚のウェハWに対して本発明の塗布処理方法を実施してレジスト液を塗布した。図7中の各ステップStep1〜Step5において、Tは各ステップの実施時間(sec)、VはウェハWの回転速度(rpm)、Aは回転速度の加速度(xg)を表す。また、塗布したレジスト液の粘度を約1.2cp、吐出量をわずか0.4cc、吐出時間は計2秒とした。
【0044】
塗布完了後、各ウェハW周縁の色に異常が無いか又は塗布に瑕疵が無いかを観察して、その後各ウェハWの塗布面に49個の測量点をとり、各点での膜厚を測定して、各点での厚みの平均値(Mean)と厚みの差異範囲(Variation Range)を算出し、且つ厚みの分布図(Thickness Profile)を作成した。上記測定の結果から、各ウェハWでウェハ周縁の色の異常や、塗布の瑕疵などは見られず、各測量点の平均厚みは約2900Å、厚みの差異範囲は20Å以下で、レジスト膜が非常に均一にウェハWの表面上に形成されたことが分かる。
【0045】
上記から分かるように、本発明の塗布処理方法によれば、レジスト液の塗布量が非常に少ない場合でも、レジスト液を均一にウェハWの表面全体に塗布できることが分かる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、もちろん本発明はこれに限られない。例えば、上記実施の形態においては、半導体ウェハに対して塗布処理を行ったが、本発明はウェハ以外の例えばFPD(Flat Panel Display)基板など、その他基板にも用いることができる。また、上記の実施の形態において、5cp以下の粘度の処理液としてレジスト液を用いて説明したが、本発明ではレジスト液塗布用以外の、例えば反射防止膜、SOG(Spin On Glass)膜、SOD(Spin On Dielectric)膜などの膜層形成用や、反射防止膜や液浸露光保護膜など、その他の塗布液を用いても良い。また、上記の実施の形態においては、ウェハの回転速度v3、v5とv2、v4の速度差は1000rpm以上に設定されているが、1000rpm未満であっても速度低下の際のマイナス加速度によりレジスト液を均一に分布させることができればよい。さらに、上記の実施の形態において、ウェハWの最高回転速度は2000〜4000rpm範囲内に設定しているが、ウェハWの最高回転速度は、塗布するレジスト液の粘度や塗布処理ユニットの構造・性能にあわせて適宜設定すればよい。また、上記の実施の形態において、各ステップの処理時間は0.1〜1.5秒の範囲に設定されているが、各ステップにおける処理時間は塗布する液体の揮発性に合わせて適宜設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、半導体ウェハなどの被処理基板にフォトレジスト液などの処理液を塗布する塗布処理方法及び塗布処理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
W ウェハ
30 塗布処理装置
120 ハウジング
130 スピンチャック
131 チャック駆動機構
132 カップ状体
133 排出管
134 排気管
140 軌道軸
141 アーム
142 アーム
143 第1ノズル
144 ノズル駆動部
145 待機部
146 処理液供給源
147 供給管
148 バルブ
150 第2ノズル
151 ノズル駆動部
152 待機部
153 供給源
154 供給管
160 制御部
S1〜S6 ステップ
P1〜P4 塗布領域
X、Y 軸
H 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が5cp以下の処理液を基板に塗布する塗布処理方法であって、
基板が第1速度で回転する状態で、ノズルから前記処理液を基板の中心部上へ吐出し、その後基板の回転速度を第1速度から第2速度まで上げて、前記処理液で基板表面に塗布領域を形成する第1ステップと、
基板の回転速度を第2速度から第3速度へ上げて、前記塗布領域を拡大させる第2ステップと、
基板の回転速度を第3速度から第4速度に降下して、前記処理液を均一に分布させる第3ステップと、
基板の回転速度を第4速度から第2速度より大きい第5速度まで上げて、前記塗布領域を基板の周縁部まで拡大する第4ステップと、
ノズルから前記処理液の吐出を停止して、基板の回転速度を第5速度から第6速度まで降下させて前記処理液を均一に分布させる第5ステップと、
を含むことを特徴とする基板に処理液を塗布する塗布処理方法。
【請求項2】
粘度が5cp以下の処理液を基板に塗布する塗布処理方法であって、
基板を回転させるステップと、
ノズルから処理液を基板上に吐出しながら基板の回転速度を第2速度から該第2速度よりも大きい第3速度に上げ、その後にノズルから処理液を基板上に吐出させたまま基板の回転速度を第3速度よりも小さい第4速度に降下させ、更にノズルから処理液を基板上に吐出させたまま基板の回転速度を第4速度よりも速い第5速度に上げ、更にノズルから処理液を基板に吐出させたまま基板の回転速度を第5速度よりも遅い第6速度に降下させるステップと、
を含むことを特徴とする塗布処理方法。
【請求項3】
基板の回転速度を第6速度から第7速度まで上げて、余分な処理液を飛ばし、且つ処理液を乾燥させる第6ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布処理方法。
【請求項4】
前記処理液がレジスト液であることを特徴とする請求項3に記載の塗布処理方法。
【請求項5】
第3速度は第2速度及び第4速度との速度差が1000rpm以上であり、且つ第5速度は第2速度及び第4速度との速度差が1000rpm以上であることを特徴とする請求項4に記載の塗布処理方法。
【請求項6】
第3速度と第5速度が2000〜4000rpmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の塗布処理方法。
【請求項7】
前記各ステップの処理時間が0.1〜1.5秒であることを特徴とする請求項6に記載の塗布処理方法。
【請求項8】
粘度が5cp以下の処理液を基板に塗布する塗布処理方法であって、
基板を回転させるステップと、
ノズルから前記処理液を基板上に吐出しながら基板の回転速度を上昇させるステップと、
その後、前記処理液を基板上に吐出させたまま、基板の回転速度の上昇と下降とを少なくとも2回繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする塗布処理方法。
【請求項9】
前記ノズルから前記処理液を基板上に吐出する前に、前記基板上に前記処理液の溶剤を塗布するステップを更に含むことを特徴とする請求項8に記載の塗布処理方法。
【請求項10】
前記処理液は、粘度が2cp以下であることを特徴とする請求項8に記載の塗布処理方法。
【請求項11】
基板に処理液を塗布する塗布処理装置であって、
基板を保持して回転する回転保持部と、
前記基板に対して処理液を吐出するノズルと、
前記回転保持部と前記ノズルの動作を制御して、請求項1〜7のいずれかに記載の塗布処理方法を実施する制御部と、
を備えたことを特徴とする塗布処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196609(P2012−196609A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61251(P2011−61251)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】