塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法、及び、磁気テープ
【課題】塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法を提供する。
【解決手段】搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その幅方向の両端側に曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、塗布液を塗布する。
【解決手段】搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その幅方向の両端側に曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、塗布液を塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法、及び、磁気テープに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ等の磁気記録媒体は、支持体表面に用途に応じた組成からなる塗布液を塗布して形成されている。
【0003】
磁気テープ等の磁気記録媒体を製造する際には、先ず、製品の幅寸法よりも広い幅寸法の帯状の支持体を搬送させ、支持体表面に磁性材料等を含む塗布液を塗布装置によって塗布して磁性層等を形成する。そして、磁性層等が形成された支持体をスリッタ工程で磁気テープ等の製品幅に合わせて裁断したものである。
【0004】
支持体に塗布液を塗布する方法としては、ローラコート法、グラビアコート法、ローラコートプラスドクター法、エクストルージョン型塗布法、スライドコート法等の方法が用いられている。また、塗布手段としては、これらの塗布法で塗布液を塗布する塗布装置が用いられている。
【0005】
そして、近年、エクストルージョン型塗布法が多く用いられている。エクストルージョン型の塗布法では、搬送される支持体に対向してスリットが設けられ、スリットの開口部から支持体表面に塗布液を塗布する塗布ヘッドを備えた塗布装置を用いる。このエクストルージョン型の塗布法は、薄い塗布層を高速に形成できる利点があり、特に、高記録密度の磁性層を有する磁気テープの製造に適している。エクストルージョン型の塗布法としては、例えば、下記特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−125218号公報
【特許文献2】特開昭61−293577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エクストルージョン型塗布法のように、高速で支持体を搬送しながら塗布する場合、塗布液が塗布された支持体を支持体ロールに巻回するときに、搬送される支持体の表面に同伴されたエアが支持体とともに巻き込まれる現象が生じる。この同伴エアとともに支持体を巻き取ると、混入したエアに起因して巻き重なる支持体同士の接触による摩擦力が低減し、少しの外乱で支持体の位置が幅方向にずれてしまう、所謂、巻きずれ故障が生じる虞がある。
【0008】
また、磁気テープの製造では、支持体に塗布層を塗布し、ロール状に巻き取った後、塗布層を熱硬化させるサーモ工程を行うことがある。この場合、支持体ロールに巻き回された支持体における、同伴エアが混入した部位が熱変形することに起因して、製造される磁気テープの直線性が劣化してしまう虞がある。
【0009】
上記引用文献1及び2には、支持体がロール状に巻き取られた際の安定形状を確保するため、支持体の幅方向の中央部分に両端部分よりも厚く塗布することが記載されている。しかし、更なる品質向上の要望に応えるため、より効率的に同伴エアを排除しつつ、巻き取り形状を高い精度で安定させることが求められており、引用文献1及び2の塗布方法では同伴エアの排除は必ずしも十分ではなく、改善の余地があった。
【0010】
本発明は、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【0012】
搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
【0013】
表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、かつ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
【0014】
上記の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】製造される磁気テープを示す断面模式図である。
【図2】磁気テープの製造装置を示す図である。
【図3】塗布装置を示す図である。
【図4】塗布装置の断面図である。
【図5】塗布装置の液溜め部を示す模式図である。
【図6】図5に示す液溜め部を設けた塗布ヘッドにおける、幅方向位置とスリット長との関係を示すグラフである。
【図7】支持体の幅方向における塗布層の厚みの関係を表す厚み分布を示すグラフである。
【図8】支持体ロールの断面模式図である。
【図9】塗布装置の他の構成例を示す図である。
【図10】実施例で用いる塗布装置の液溜め部の幅方向距離と液溜め部の曲率半径との関係を示すグラフである。
【図11】実施例で用いた塗布装置を用いて塗布層が塗布された支持体の、塗布層の厚み分布を示すグラフである。
【図12】実施例で用いた塗布装置の液溜め部の構成を示す模式図である。
【図13】比較例で用いた塗布装置を用いて塗布層が塗布された支持体の、塗布層の厚み分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、磁気記録媒体の一例として磁気テープの製造手順とそれに用いる製造装置の概略的な構成を説明する。
【0018】
図1は、製造される磁気テープの断面を概略的に示す図である。
製造される磁気テープMTは、支持体B上に、非磁性層1と、磁性層2とが積層されている。
【0019】
図2は、磁気テープの製造装置を示す図である。
製造装置10は、長尺帯状の支持体Bが巻回された送り出しロール11と、非磁性層と磁性層とが順に形成された支持体Bを巻き取る、巻き取りロール19を有している。この製造装置10は、送り出しロール11から送り出された支持体Bを搬送経路に沿って搬送しながら、磁気テープを製造するものである。
【0020】
製造装置10は、搬送される支持体Bの搬送方向の上流側から順に、非磁性塗布液塗布部12と、非磁性塗布液乾燥部13と、磁性塗布液塗布部14と、磁性塗布液乾燥部15とを備えている。また、支持体Bの搬送経路には、搬送される支持体Bの記録面(磁性層及び非磁性層が設けられている側の面)の反対側を支持するガイドローラが適宜設けられている。
【0021】
非磁性塗布液塗布部12は、非磁性粒子を含む非磁性塗布液を支持体Bの上面に塗布し、非磁性塗布層を形成する。非磁性塗布液の塗布は、エクストルージョン型の塗布方法が好ましい。しかし、非磁性塗布液の塗布としては、エクストルージョン型に限らず、グラビアコート方式、ロールコート方式、ディップコート方式、スライドコート方式、バーコート方式、カーテンコート方式等が利用できる。
【0022】
非磁性塗布液乾燥部13は、非磁性塗布液塗布部12で形成された非磁性塗布層を乾燥させる。非磁性塗布層は、非磁性塗布液乾燥部13で乾燥されることで非磁性層になる。非磁性層が形成された支持体Bは、下流側の磁性塗布液塗布部14へ搬送される。
【0023】
磁性塗布液塗布部14は、非磁性層上に、磁性粒子を含む磁性塗布液を塗布し、磁性塗布層を形成する。磁性塗布層は、湿潤状態のまま下流側へ搬送される。磁性塗布液の塗布としては、非磁性塗布液と同じ上述の塗布方法を利用できる。
【0024】
磁性塗布液乾燥部15は、磁性塗布層を乾燥させる。ここで、磁性塗布液乾燥部15は、磁性塗布層を完全には乾燥させず、次の配向部16で配向が可能な程度に湿潤状態となるまで乾燥させる。
【0025】
配向部16は、磁性塗布層に含まれる磁性粒子を永久磁石等の磁石が形成する磁界をかけることで配向する。また、配向部16は、配向と同時に、磁性塗布層の乾燥を促すため乾燥風を吹き付ける構成としてもよい。磁性塗布層は、乾燥して固化することで磁性層となる。
【0026】
磁性層及び非磁性層が形成された支持体Bは、巻き取りロール19に巻き取られる。
【0027】
図示しないが、支持体Bは、巻き取りロール19に一回巻き取られた後で、ロールで表面を平滑化するカレンダ工程や非磁性層及び磁性層を熱硬化させるためのサーモ工程に送られ、スリッタ工程において所望のテープ幅に裁断され、磁気テープが完成する。なお、支持体Bの記録面とは反対側の面にバックコート層が形成されてもよい。
【0028】
図3は、塗布装置を示す図である。図3の塗布装置は、非磁性塗布液塗布部12や磁性塗布液塗布部14で非磁性塗布液や磁性塗布液を塗布する塗布装置として利用される。なお、以下の説明では、非磁性塗布液や磁性塗布液を含む総称して単に塗布液と称し、支持体上に塗布液を塗布する簡略化した例に基づいて説明する。
【0029】
図3に示すように、塗布装置20は塗布ヘッド11を備え、この塗布ヘッド11によって搬送される帯状の支持体Bに塗布液を塗布する。
【0030】
塗布ヘッド11は、フロントエッジ6と、ドクターエッジ5と、塗布液を収容する液溜め部3とで概略構成される。フロントエッジ6と、ドクターエッジ5との間には、液溜め部3に連通するスリット4が設けられている。スリット4における塗布ヘッド11の先端側には、塗布液を吐出する開口部7が形成されている。
【0031】
液溜め部3は、断面略円形状であり、支持体Bの幅方向Wに略同一の断面形状を有し、幅方向Wに沿って延設された空洞部分である。液溜め部3の断面は、半径が4mm〜18mmであることが好ましい。
【0032】
スリット4は、液溜め部3から開口部7に向かって所定の開口幅をもって塗布ヘッド11を貫通している。スリット4は、支持体Bの幅方向Wに延設された、液溜め部3に比べて狭い流路である。スリット4の開口幅は、ドクターエッジ5とフロントエッジ6との間隔の寸法である。スリット4の開口幅は、0.05mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0033】
塗布ヘッド11の材質は、特に限定されないが、金属材料が好ましい。また、塗布ヘッド11の材質は、加工精度を向上させる観点では、ステンレス鋼のような高い硬度の材質であることがより好ましい。更に、塗布ヘッド11は、先端に超硬材等を貼り付けたものやセラミックスを用いてもよい。
【0034】
図4は、塗布装置で支持体に塗布液を塗布している状態を示す断面図である。塗布液Pは、液溜り部3からスリット4の開口部7から吐出され、搬送される支持体Bにおける塗布装置20に面する被塗布面(図4では下面)に塗布される。
【0035】
図4に示すように、塗布ヘッド11には、搬送される支持体Bの上流側から順に、フロントエッジ6の先端に位置するフロントエッジ面6aと、ドクターエッジ5の先端に位置するドクターエッジ面5aとが形成されている。フロントエッジ面6aとドクターエッジ面5aは、断面がそれぞれ所定の曲率を有するように円弧状に形成されている。塗布ヘッド11は、フロントエッジ面6aの搬送方向後端エッジとドクターエッジ面5aの搬送方向前端エッジとの間に段差を設けることで、支持体Bに所定の厚さで塗布液Pを塗布する。
【0036】
塗布装置20は、開口部7から支持体Bに塗布される塗布液Pの、支持体Bの幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から支持体Bの幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、塗布液を塗布する。このような塗布量分布となるように、塗布量を調整する例を、以下に説明する。
【0037】
図5は、ドクターエッジに形成された液溜り部の形状を示す模式図である。図5は、図4に示す塗布ヘッド11をV−V線の矢印方向で、ドクターエッジ5を平面視したものに相当する。図5では、液溜り部3の上側エッジ及び下側エッジがともに等しい円弧形状であって、所定の曲率半径Rを有する。液溜り部3における、支持体の幅方向Wの位置をxで示す。液溜り部3における、幅方向wの中心の曲率半径をR(0)とし、中心から幅方向wに向かって距離xだけ離れた位置の曲率半径をR(x)とし、幅方向wの端部の曲率半径R(w/2)とする。液溜り部3は、幅方向wの中心に対して線対称な形状である。
【0038】
液溜り部3の曲率半径R(0)、R(x)、R(w/2)は、中心の曲率半径R(0)が最小となり、その中心から両端側に向かうに伴い大きくなり、端部における曲率半径であるR(w/2)が最大となる。つまり、曲率半径は、R(0)<R(x)<R(w/2)となる。言い換えると、液溜り部3の形状は、単一の曲線に沿って設けられ、かつ、曲率半径が最小となる位置から、液溜り部3の両方の端部にそれぞれ向かうに伴い曲率半径が大きくなる。
【0039】
図5のように液溜め部3を構成すると、液溜め部3からスリット4の開口部7までの距離をスリット長とした場合、スリット長は、幅方向wの位置に応じて変化する。この例では、スリット長は、幅方向wの中心で最も短く、両方の端部へ向かうに伴って長くなる。
【0040】
液溜め部3は、フロントエッジ6と、ドクターエッジ5との少なくとも一方に、NC加工等によって形成することができる。
【0041】
図6は、図5に示す液溜め部を設けた塗布ヘッドにおける、支持体の幅方向位置とスリット長との関係を示すグラフである。図6において、実線で示す曲線は、支持体の幅方向に対するスリット長の変化率を示している。図6の破線で示す曲線は、実線で示す曲線の幅方向の中心の曲率半径Rsと等しく、この中心から幅方向両端部に該曲率半径Rsを変化させることなく描かれた、比較用の曲線である。
【0042】
スリット長は、幅方向の中心で最も短く、幅方向の端部で最も長くなる。スリット長の変化率を示す曲線は、幅方向中心から距離xの位置の曲率半径をRs(x)としたとき、幅方向の中心の曲率半径Rs(0)が最も小さく、中心から両方の端部に向かうに伴って大きくなり、幅方向の端部の曲率半径Rs(w/2)が最大となる。つまり、スリット長が最短となる中心から開口部の幅方向に向かうに伴って変化率が小さくなる。
【0043】
開口部において、スリット長が短い位置では、該位置に対応する開口部から吐出される塗布液の塗布量は多くなり、スリット長が長い位置では、該位置に対応する開口部から吐出される塗布液の塗布量は少なくなる。このため、スリットの開口部における、支持体の幅方向の中心は、端部に比べてスリット長が短くなるため、塗布量が多くなる。そして、スリットの開口部において、支持体の幅方向の端部に向かうに伴ってスリット長が長くなり、塗布量が少なくなる。
【0044】
次に、上記塗布ヘッドも用いて支持体に塗布液を塗布したときの、支持体上の塗布層の厚みについて説明する。
【0045】
図7は、支持体の幅方向の位置と塗布層の厚みとの関係を表す厚み分布曲線を示すグラフである。図7では、横軸が支持体の幅方向の位置を示し、縦軸が塗布層の厚みを示している。ここで、厚み分布曲線とは、支持体の幅方向の厚み実測によりプロットした塗布量分布データを基に算出された近似曲線をいう。近似曲線は、一例として、塗布量分布データから最小二乗法を用いて算出することができる。
【0046】
図7に示すように、支持体の幅方向の中心の位置0とし、幅方向端部の位置をw/2とする。塗布層は、幅方向の中心で最も厚く、この中心から幅方向の端部に向かって曲線状に薄くなる厚み分布で形成される。また、中心からの距離xの位置の曲率半径をRt(x)としたとき、中心の曲率半径Rt(0)が最も小さく、支持体において幅方向の中心から幅方向の端部へ向かうに伴って曲率半径Rt(x)が大きくなり、幅方向端部の位置の曲率半径Rt(w/2)が最も大きくなる。つまり、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、最大厚みとなる部位(図7では幅方向の中心の位置0とした。)を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の幅方向の両端側の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、塗布液が塗布されている。また、図7の例は、塗布層表面の分布曲線が、幅方向の中心から端部に向かって曲率半径が徐々に大きくなるように構成したものである。曲率半径の変化は、段階的であっても連続的であってもよい。曲率半径の変化が段階的である場合、曲率半径の変化点は、分布曲線上に明確に現れるようにしてもよいし、明確には現れないようにならされた形状としてもよい。また、曲率半径の変化が段階的である場合は、例えば、xがw/6乃至w/4となる位置では少なくとも曲率半径が中心より大きくなっている(つまり、中心と端部との間の1/2乃至2/3の領域で、曲率半径が中心より大きくなっている)ようにしてもよい。
【0047】
次に、上述の塗布装置を利用し、図7の塗布厚み分布で塗布された塗布層を有する支持体を支持体ロールとして巻き回したときの作用と効果を説明する。
図8は、支持体ロールの断面模式図である。支持体ロールBRは、円柱形状の軸芯Sの周面に支持体Bを巻き回したものである。図8では、支持体ロールBRの幅方向の位置をxで示すと、幅方向の中心をx=0とし、支持体Bの幅方向の端部をx=w/2とする。
【0048】
支持体Bが所定の回数だけ巻き回した支持体ロールBRを断面視した状態において、最も外側に巻き回されている支持体Bの表面を示す曲線に着目する。この曲線の幅方向の位置xに対する曲率半径をr(x)とすると、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)が最も小さく、曲率半径Rr(x)は、中心から端部へ向かうに伴って大きくなり、端部の曲率半径Rr(w/2)が最も大きくなる。
【0049】
搬送される支持体Bを支持体ロールBRに巻き取るときには、支持体Bに同伴するエアが巻き回される支持体B同士の間に巻き込まれる。このとき、巻き込まれるエアは、順次巻き取られる支持体Bからかかる圧力をうけて、支持体Bの幅方向に圧力の小さな方向へ流れる。
巻き込まれたエアに発生する圧力Pは、支持体Bを巻き取る回数(つまり、巻き取り長さ)に応じて発生する圧力p1と、支持体Bの幅方向の形状に応じて発生する圧力p2との合算よりなる。
【0050】
圧力p1は、支持体ロールBRの径方向にかかる圧力であって、支持体Bを巻き取る回数が増加するほど、(つまり、巻き回す支持体の長さが長くなるほど)、概ね反比例して小さくなる。
【0051】
圧力p2は、支持体ロールBRの幅方向にかかる圧力であって、支持体ロールの形状に影響をうけ、支持体表面の曲率半径R(x)が大きくなるほど、概ね反比例して小さくなる。
圧力p1は、支持体の全長が長くなるほど小さくなるため無視できる。一方で、圧力p2は、支持体ロールの形状に依存するため、巻き込まれたエアは圧力p2による影響が支配的になる。つまり、支持体ロールを所定の形状とすることで圧力p2を調整し、巻き込まれたエアが巻き回される支持体Bから円滑に抜けるようになる。
【0052】
支持体ロールBRの形状は、上述のように塗布される塗布液の厚み分布によって調整される。すなわち、支持体B表面に塗布される塗布液の、支持体Bの幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体Bの幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなるように、塗布液を塗布する。
【0053】
支持体ロールBRの形状は、支持体ロールBRを断面視した状態において、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)が最も小さく、曲率半径Rr(x)を中心から端部へ向かうに伴って大きくしたため、巻き込まれたエアが支持体Bの幅方向の中心から端部へ流れる。また、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)よりも端部の曲率半径Rr(w/2)を最も大きくすることで、エアが支持体Bの幅方向端部に残留することを抑え、端部から外部へ排出されやすくなる。したがって、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる。また、支持体ロールにおける、残留エアによる熱変形も抑止できる。
この塗布方法及び塗布装置は、磁気テープを製造する過程である支持体や支持体ロールの製造工程で特に効果があり、また、塗布速度が100m/分以上で、かつ、搬送される支持体の幅寸法が500mm以上の高速な広幅塗布にも有効である。
【0054】
次に、塗布方法及び塗布装置の変形例について説明する。
【0055】
この例では、スリットの開口部の開口幅を支持体の幅方向に所定の変化率で間隔の寸法を変えることで塗布厚み分布を調整する。
【0056】
図9は、塗布装置の変形例を示す図である。塗布装置20は、図3に示す塗布装置の構成と基本的に同じであるが、ドクターエッジ5の外面に、スリット4の開口部7の間隔Swを変えるための調整部材8が、幅方向に複数(図9では3個)、設けられている。調整部材8はそれぞれ、調整ねじを締め付け可能に取り付けられている。調整ねじを締め付けることで、ドクターエッジ5を弾性変形させ、スリットの4の開口部7開口部の開口幅Swを調整することができる。調整部材8は、スリット4の開口部7の開口幅Swを、幅方向の中心で最大幅となるようにし、かつ、中心から該開口部7の幅方向の端部に向かうに伴って狭くなる変化率が小さくなるように調整する。ここで、開口幅Swを、開口部7の幅方向wの中心から端部に向かうに伴って狭くなる変化率が小さくするとは、開口幅Swをdとしたとき、スリット4の開口部7の幅方向の中心から端部に向けてd3(dの3乗)の変化を徐々に緩やかにすることと同義である。
【0057】
このようにスリットの開口部の開口幅に分布がある塗布装置としては、フロントエッジと、ドクターエッジとのそれぞれにNC加工にて液溜り部とスリットを形成し、開口幅の分布を調整してもよい。又は、フロントエッジ及びドクターエッジには、加工を行わず、両者の合わせ面にスリットの開口幅をなすように厚み分布を有する別の板材を挟み込んでもよい。
【0058】
次に、支持体、非磁性塗布層の非磁性塗布液、磁性塗布層の磁性塗布液のそれぞれについて説明する。
【0059】
非磁性塗布層の非磁性塗布液に含まれる非磁性材料の構成は制限されないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、この層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよい。
【0060】
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組合せで使用される。
【0061】
非磁性粉末の表面には表面処理が施され、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましくはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせてしようしてもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般的には好ましい。
【0062】
非磁性粉末は結合剤に対して重量比率で20〜0.1、体積比率で10〜0.2の範囲で用いられる。又、特開昭59−142741号、同61−214127号、同63−140420号には非磁性塗布層にSnO2を含むことを規定している。これらは磁性塗布層に酸化鉄、若しくはBaFeを用いており、SnO2より比重は小さいものであるが、いずれも磁性塗布層の下塗処方であり、その厚みは磁性塗布層に比べてはるかに薄いものであり、本発明とは別の発明である。
【0063】
磁性層に使用する磁性粒子としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Fe又はNi又はCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金微粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、窒化鉄など公知の強磁性粉末が使用できる。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性微粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、同45−18372号、同47−22062号、同47−22513号、同46−28466号、同46−38755号、同47−4286号、同47−12422号、同47−17284号、同47−18509号、同47−18573号、同39−10307号、同48−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0064】
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、又は酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0065】
磁性塗布層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば25〜80m2/gであり、好ましくは35〜60m2/gである。25以下ではノイズが高くなり、80以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100オングストロームであり、好ましくは350〜150オングストロームである。酸化鉄磁性粉末のσ Sは50emu/g以上、好ましくは70emu/g以上であり、強磁性金属微粉末の場合は100emu/g以上が好ましい。
【0066】
強磁性粉末のr1500は1.5以下であることが好ましい。更に好ましくはr1500が1.0以下である。r1500とは磁気記録媒体を飽和磁化したのち反対の向きに1500Oeの磁界をかけたとき反転せずに残っている磁化量の%を示すものである。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上が更に好ましい。
【0067】
γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%であり、更に好ましくは5〜10%である。鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHの範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
【0068】
また、強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。強磁性粉末の形状は、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状、板状いずれでもかまわない。強磁性粉末のSFD0.6以下を達成するためには、強磁性粉末の抗磁力(保持力)Hcの分布を小さくする必要がある。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を遅くするなどの方法がある。
【0069】
磁性粒子としては、板状六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、六方晶Co粉末が使用できる。バリウムフェライトを用いる場合、その粒子サイズは0.001〜1μmの直径で厚みが直径の1/2〜1/20である。比重は4〜6g/ccで、比表面積は1〜60m2/gである。
【0070】
非磁性塗布層及び磁性塗布層に使用される結合剤としては、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としてはフエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0071】
これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を非磁性塗布層、又は磁性塗布層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の群から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組合せたものがあげられる。
【0072】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SO3M、OSO3M、P=O(OM)2、O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3、Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0073】
結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、日本ゼオン社製:MR110、MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフエラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP−150、旭化成社製:サランF310、F210などがあげられる。
【0074】
結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが好ましい。
【0075】
ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/cm2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。磁気記録媒体は二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性塗布層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性塗布層と磁性塗布層とで変えることはもちろん可能である。
【0076】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つ若しくはそれ以上の組合せで非磁性塗布層、磁性塗布層ともに用いることができる。
【0077】
磁性塗布層に使用されるカーボンブラックはゴム用フアーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμm〜300mμm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製:BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製:♯80、♯60、♯55、♯50、♯35、三菱化成工業社製:♯2400B、♯2300、♯900、♯1000、♯30、♯40、♯10B、コンロンビアカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理してもよく、又は、樹脂でグラフト化して使用してもよく、又は、表面の一部をグラフアイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性塗布層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、カーボンブラックは非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることは当然可能である。例えば、非磁性層に導電性の高いカーボンブラックを用いることにより帯電を防止し、磁性塗布層に粒子径の大きいカーボンブラックを用い摩擦係数を下げるなどがあげられる。磁性塗布層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0078】
磁性塗布層に用いられる研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組合せてもよいし、単独の研磨剤で粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、又はサイコロ状のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものは研磨性が高く、好ましい。
【0079】
研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP−20,AKP−30,AKP−50,HIT−50、日本化学工業社製:G5,G7,S−1、戸田工業社製:100ED,140EDなどがあげられる。研磨剤は非磁性塗布層、磁性塗布層で種類、量及び組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。磁気記録媒体の磁性塗布層の表面及びその端面に存在する研磨剤は5個/100μm2以上が好ましい。
【0080】
添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などを有するものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及び、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuなど)又は、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、があげられる。
【0081】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。
【0082】
潤滑剤、界面活性剤は非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性塗布層、磁性塗布層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、ここに示した例のみに限られるものではない。
【0083】
添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製:NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122,NAA−142,NAA−160,NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸,NAA−42,NAA−44,カチオンSA,カチオンMA,カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL−201,ナイミーンL−202,ナイミーンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2,ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R,ノニオンOP−80R,ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウレート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂社製:FAL−205,FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブLO,エヌジョルブIPM,サンソサイザーE4030、信越化学社製:TA−3,KF−96,KF−96L,KF−96H,KF410,KF420,KF965,KF54,KF50,KF56,KF−907,KF−851,X−22−819,X−22−822,KF−905,KF−700,KF−393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935、ライオンアーマー社製:アーマイドP,アーマイドC,アーモスリップCP、ライオン油脂社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオネットMS−400,イオネットMO−200,イオネットDL−200,イオネットDS−300,イオネットDS−1000,イオネットDO−200などがあげられる。
【0084】
有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。有機溶媒は必要ならば磁性塗布層と非磁性塗布層でその種類、量を変えてもかまわない。非磁性塗布層に揮発性の高い溶媒を用い表面性を向上させる、磁性塗布層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、磁性塗布層の溶解性パラメータの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるが、これらの例に限られない。
【0085】
磁気記録媒体の厚み構成は支持体が1〜100μm、好ましくは5〜20μm、非磁性層の厚みが0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、磁性層の厚みは0.05μm以上1.0μm以下、好ましくは0.05μm以上0.6μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.3μm以下である。磁性層と非磁性層を合わせた厚みは支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。
【0086】
また、支持体と非磁性層との間に密着性向上のための非磁性塗布層を設けてもかまわない。非磁性塗布層の厚みは0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0087】
支持体の磁性層が形成される側とは反対側にバックコート層を設けてもかまわない。バックコート層の厚みは0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの非磁性塗布層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0088】
支持体は、ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの公知のフイルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などをおこなってもよい。支持体は、中心線平均表面粗さが0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、更に好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要がある。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si,Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体のテープ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2、テープ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mm2であり、テープ長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0089】
支持体の熱収縮率は、テープ走行方向及び幅方向に100℃30分で、好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2が好ましい。
【0090】
磁気記録媒体の磁性塗料(磁性材料を含む塗布液)を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0091】
従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することにより、磁気記録媒体の高い残留磁化密度(Br)を得ることができる。連続ニーダ又は加圧ニーダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号、特開平1−79274号に記載されている。
【0092】
逐次重層構成の磁気記録媒体の製造装置に用いる塗布装置には、従来の公知の製造技術を用いることができる。例えば、磁性塗料の塗布で一般的に用いられる、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等が挙げられる。
【0093】
なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号や特開平1−236968号に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望ましい。更に、磁性塗料の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。
【0094】
配向の磁界を発生させる磁石としては、1000G以上のソレノイドと2000G以上のコバルト磁石を併用することが好ましく、更には乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。
【0095】
磁気記録媒体の表面平滑化処理を行うカレンダ処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属ロール同志で処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、更に好ましくは300kg/cm以上であり、その速度は20m/分以上700m/分以下の範囲である。
【0096】
製造された磁気記録媒体の磁性層及びその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.5以下、更に0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは10−5〜10−12オーム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2000Kg/mm2、破断強度は好ましくは1〜30Kg/cm2、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長手方向とも好ましくは100〜1500Kg/mm2、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0097】
製造された磁気記録媒体の磁性層に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層及び非磁性層が有する空隙率は、ともに好ましくは30容量%以下、更に好ましくは10容量%以下である。磁性層の空隙率が非磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが、逆の場合でも非磁性層の空隙率が20%以下であれば支障はない。
【0098】
(実施例)
本発明者は、厚み分布と、支持体の巻き取り形状と、熱硬化後の状態との関係を調べるため、次のような評価試験を行った。本試験では、支持体上に平均厚みが1μmとなるように非磁性層のみを塗布して、次のような評価を行った。
【0099】
本評価試験に使用する塗布装置の塗布ヘッドは、支持体の幅方向の寸法が900mmで、塗布幅800mmで搬送される支持体に塗布液を塗布した。液溜り部の断面形状は半径が10mmの円形とした。塗布速度を、300m/分とし、塗布厚みを5μmとした。
支持体は、幅寸法が820mmのポリエチレンナフタレートを用いた。支持体は、塗布液を塗布した後で、直径300mmの軸芯に巻き回し、支持体ロールを製造した。
支持体に塗布された塗布層の幅方向の厚み分布を膜厚計で測定したところ、0.10μmの厚みムラが不均一についていた。その後、支持体ロールを、カレンダ工程にて表面処理した後、60℃の恒温室に48時間入れて熱処理した。
【0100】
熱処理後の支持体の変形の評価では、支持体を軸芯に巻き回すときに、巻きズレの発生率を測定した。また、熱処理後に、支持体ロールに巻き回された支持体上の塗布層をレーザー変位計によって測定し、軸芯側の支持体における塗布層及び外周側に巻き回された支持体の塗布層においてそれぞれ熱処理による変形の有無を評価した。
【0101】
巻きズレの評価では、軸芯に支持体を100回巻き回せたときに支持体のズレの回数をカウントした。
【0102】
(実施例1)
実施例1では、塗布装置の塗布ヘッドが、図3〜5に示す構成のように曲線状に加工された液溜り部を備える。この液溜り部は、図5と同様にドクターエッジ5を平面視した状態で、液溜り部3の上側エッジ及び下側エッジがともに等しい円弧形状であって、この円弧形状の曲率半径が、幅方向の中心から端部に向かうに伴って大きくなるように構成されている。
【0103】
図10は、実施例1の液溜り部の、幅方向の位置と曲率半径との関係を示すグラフである。図10では、横軸が液溜り部の幅方向の位置(mm)を示し、縦軸が曲率半径(mm)を示している。液溜り部の円弧形状の中心の曲率半径は約12000mmであり、中心から端部に向かうに伴って曲率半径が大きくなり、端部において、曲率半径が約15000mmである。
【0104】
図11は、実施例1の塗布装置を用いて塗布された塗布層の厚み分布を示すグラフである。図11では、横軸が液溜り部の幅方向の位置x(mm)を示し、縦軸が厚み分布を示している。図11において実線のグラフは、厚み分布の実測値を示している。また、点線の曲線は、実測値に基づいて最小二乗法によって算出された、厚み分布の近似曲線を示している。厚み分布の近似曲線は、支持体の幅方向の中心(x=400mm)における曲率半径が最小となり、中心から端部に向かうに伴って曲率半径が大きくなり、端部(x=0mm、及びx=800mm)において曲率半径が最大となった。
【0105】
(実施例2)
図12は、実施例2の液溜り部の形状を示す模式図である。図12に示すように、実施例2では、液溜り部の形状は、支持体の幅方向に対して平行な直線に形成されている。つまり、実施例2の液溜り部では、スリットのスリット長は、幅方向にわたって等しい。また、実施例2で用いる塗布装置は、図9に示すようにスリット4の開口部7の間隔Swを変えるための調整部材8を備えている。調整部材8によって、スリットの開口部の開口幅を、最大幅を有する部位から該開口部の幅方向の端部に向かうに伴って開口幅が狭くなる変化率を小さくように調整した。この調整部材8によって、実施例2では、実施例1の塗布層の厚み分布とほぼ同等となるように、支持体上に塗布される塗布液の塗布量を調整した。
【0106】
(比較例1)
比較例1では、塗布装置の塗布ヘッドが、曲線状に加工された液溜り部を備えるが、平面視した状態で、液溜り部の円弧形状の曲率半径が、幅方向の中心から端部まで一定とした。
【0107】
図13は、実施例1の塗布装置を用いて塗布された塗布層の厚み分布を示すグラフである。図13では、横軸が液溜り部の幅方向の位置x(mm)を示し、縦軸が厚み分布を示している。図13において実線のグラフは、厚み分布の実測値を示している。また、点線の曲線は、実測値に基づいて最小二乗法によって算出された、厚み分布の近似曲線を示している。厚み分布の近似曲線は、支持体の幅方向の中心(x=400mm)から両方の端部(x=0mm、及び、x=800mm)まで、曲率半径がほぼ等しくなった。
【0108】
評価の結果を下記に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1,2では、支持体上に塗布される塗布層を上述のような厚み分布で形成することで、巻きズレの発生を防止できた。また、熱処理後において、軸芯側及び外周側で支持体に変形が生じることを防止できた。
比較例1では、軸芯に100回巻き回された支持体のうち3回巻きズレが確認された。また、熱処理後において、外周側で支持体に変形が生じることを防止できたものの、軸芯側で支持体の変形が確認できた。
【0111】
この結果、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなるように、塗布液を塗布することで、巻きズレの発生を抑え、熱処理後において支持体の変形を抑えることができることが確認できた。
【0112】
本発明は、上記例のものに限定されず、適宜変更可能である。
【0113】
例えば、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位は、支持体の幅方向の中心に限定されない。この場合、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくするように塗布すればよい。
【0114】
例えば、塗布層の厚み分布曲線において、幅方向の両端部の曲率半径が、最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる部分には、巻き込みエアの排気を妨げない範囲で、直線部分(曲率半径がほぼ無限大となる線分)が含まれていてもよい。
【0115】
例えば、支持体の幅方向の両端側に設けられた、最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、塗布液を塗布してもよい。このように、塗布層の厚み分布曲線において、最大厚みとなる部位の幅方向の両側において、右側の曲率半径と左側の曲率半径との、値や組み合わせ方や変化の段階数が異なっていてもよい。
【0116】
本明細書は、次の事項を開示する。
(1)搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(2)(1)に記載の塗布方法であって、
前記支持体の前記幅方向の両端側に設けられた、前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、前記両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(3)(1)に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が徐々に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(4)(1)に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が連続的又は段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(5)搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
(6)(5)に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記スリットの前記開口部の開口幅が最大幅を有する部位から該開口部の前記幅方向の端部に向かうに伴って前記開口幅を狭くする変化率を小さくした構成である塗布装置。
(7)(5)に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記液溜め部から前記開口部までの長さをスリット長としたとき、前記スリット長が最短となる部位から該開口部の前記幅方向に向かうに伴って長くなる変化率を小さくした構成である塗布装置。
(8)表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、かつ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
(9)(8)に記載の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【符号の説明】
【0117】
3 液溜り部
4 スリット
7 開口部
20 塗布装置
B 支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法、及び、磁気テープに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ等の磁気記録媒体は、支持体表面に用途に応じた組成からなる塗布液を塗布して形成されている。
【0003】
磁気テープ等の磁気記録媒体を製造する際には、先ず、製品の幅寸法よりも広い幅寸法の帯状の支持体を搬送させ、支持体表面に磁性材料等を含む塗布液を塗布装置によって塗布して磁性層等を形成する。そして、磁性層等が形成された支持体をスリッタ工程で磁気テープ等の製品幅に合わせて裁断したものである。
【0004】
支持体に塗布液を塗布する方法としては、ローラコート法、グラビアコート法、ローラコートプラスドクター法、エクストルージョン型塗布法、スライドコート法等の方法が用いられている。また、塗布手段としては、これらの塗布法で塗布液を塗布する塗布装置が用いられている。
【0005】
そして、近年、エクストルージョン型塗布法が多く用いられている。エクストルージョン型の塗布法では、搬送される支持体に対向してスリットが設けられ、スリットの開口部から支持体表面に塗布液を塗布する塗布ヘッドを備えた塗布装置を用いる。このエクストルージョン型の塗布法は、薄い塗布層を高速に形成できる利点があり、特に、高記録密度の磁性層を有する磁気テープの製造に適している。エクストルージョン型の塗布法としては、例えば、下記特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−125218号公報
【特許文献2】特開昭61−293577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エクストルージョン型塗布法のように、高速で支持体を搬送しながら塗布する場合、塗布液が塗布された支持体を支持体ロールに巻回するときに、搬送される支持体の表面に同伴されたエアが支持体とともに巻き込まれる現象が生じる。この同伴エアとともに支持体を巻き取ると、混入したエアに起因して巻き重なる支持体同士の接触による摩擦力が低減し、少しの外乱で支持体の位置が幅方向にずれてしまう、所謂、巻きずれ故障が生じる虞がある。
【0008】
また、磁気テープの製造では、支持体に塗布層を塗布し、ロール状に巻き取った後、塗布層を熱硬化させるサーモ工程を行うことがある。この場合、支持体ロールに巻き回された支持体における、同伴エアが混入した部位が熱変形することに起因して、製造される磁気テープの直線性が劣化してしまう虞がある。
【0009】
上記引用文献1及び2には、支持体がロール状に巻き取られた際の安定形状を確保するため、支持体の幅方向の中央部分に両端部分よりも厚く塗布することが記載されている。しかし、更なる品質向上の要望に応えるため、より効率的に同伴エアを排除しつつ、巻き取り形状を高い精度で安定させることが求められており、引用文献1及び2の塗布方法では同伴エアの排除は必ずしも十分ではなく、改善の余地があった。
【0010】
本発明は、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【0012】
搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
【0013】
表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、かつ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
【0014】
上記の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる塗布方法、塗布装置、支持体ロールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】製造される磁気テープを示す断面模式図である。
【図2】磁気テープの製造装置を示す図である。
【図3】塗布装置を示す図である。
【図4】塗布装置の断面図である。
【図5】塗布装置の液溜め部を示す模式図である。
【図6】図5に示す液溜め部を設けた塗布ヘッドにおける、幅方向位置とスリット長との関係を示すグラフである。
【図7】支持体の幅方向における塗布層の厚みの関係を表す厚み分布を示すグラフである。
【図8】支持体ロールの断面模式図である。
【図9】塗布装置の他の構成例を示す図である。
【図10】実施例で用いる塗布装置の液溜め部の幅方向距離と液溜め部の曲率半径との関係を示すグラフである。
【図11】実施例で用いた塗布装置を用いて塗布層が塗布された支持体の、塗布層の厚み分布を示すグラフである。
【図12】実施例で用いた塗布装置の液溜め部の構成を示す模式図である。
【図13】比較例で用いた塗布装置を用いて塗布層が塗布された支持体の、塗布層の厚み分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、磁気記録媒体の一例として磁気テープの製造手順とそれに用いる製造装置の概略的な構成を説明する。
【0018】
図1は、製造される磁気テープの断面を概略的に示す図である。
製造される磁気テープMTは、支持体B上に、非磁性層1と、磁性層2とが積層されている。
【0019】
図2は、磁気テープの製造装置を示す図である。
製造装置10は、長尺帯状の支持体Bが巻回された送り出しロール11と、非磁性層と磁性層とが順に形成された支持体Bを巻き取る、巻き取りロール19を有している。この製造装置10は、送り出しロール11から送り出された支持体Bを搬送経路に沿って搬送しながら、磁気テープを製造するものである。
【0020】
製造装置10は、搬送される支持体Bの搬送方向の上流側から順に、非磁性塗布液塗布部12と、非磁性塗布液乾燥部13と、磁性塗布液塗布部14と、磁性塗布液乾燥部15とを備えている。また、支持体Bの搬送経路には、搬送される支持体Bの記録面(磁性層及び非磁性層が設けられている側の面)の反対側を支持するガイドローラが適宜設けられている。
【0021】
非磁性塗布液塗布部12は、非磁性粒子を含む非磁性塗布液を支持体Bの上面に塗布し、非磁性塗布層を形成する。非磁性塗布液の塗布は、エクストルージョン型の塗布方法が好ましい。しかし、非磁性塗布液の塗布としては、エクストルージョン型に限らず、グラビアコート方式、ロールコート方式、ディップコート方式、スライドコート方式、バーコート方式、カーテンコート方式等が利用できる。
【0022】
非磁性塗布液乾燥部13は、非磁性塗布液塗布部12で形成された非磁性塗布層を乾燥させる。非磁性塗布層は、非磁性塗布液乾燥部13で乾燥されることで非磁性層になる。非磁性層が形成された支持体Bは、下流側の磁性塗布液塗布部14へ搬送される。
【0023】
磁性塗布液塗布部14は、非磁性層上に、磁性粒子を含む磁性塗布液を塗布し、磁性塗布層を形成する。磁性塗布層は、湿潤状態のまま下流側へ搬送される。磁性塗布液の塗布としては、非磁性塗布液と同じ上述の塗布方法を利用できる。
【0024】
磁性塗布液乾燥部15は、磁性塗布層を乾燥させる。ここで、磁性塗布液乾燥部15は、磁性塗布層を完全には乾燥させず、次の配向部16で配向が可能な程度に湿潤状態となるまで乾燥させる。
【0025】
配向部16は、磁性塗布層に含まれる磁性粒子を永久磁石等の磁石が形成する磁界をかけることで配向する。また、配向部16は、配向と同時に、磁性塗布層の乾燥を促すため乾燥風を吹き付ける構成としてもよい。磁性塗布層は、乾燥して固化することで磁性層となる。
【0026】
磁性層及び非磁性層が形成された支持体Bは、巻き取りロール19に巻き取られる。
【0027】
図示しないが、支持体Bは、巻き取りロール19に一回巻き取られた後で、ロールで表面を平滑化するカレンダ工程や非磁性層及び磁性層を熱硬化させるためのサーモ工程に送られ、スリッタ工程において所望のテープ幅に裁断され、磁気テープが完成する。なお、支持体Bの記録面とは反対側の面にバックコート層が形成されてもよい。
【0028】
図3は、塗布装置を示す図である。図3の塗布装置は、非磁性塗布液塗布部12や磁性塗布液塗布部14で非磁性塗布液や磁性塗布液を塗布する塗布装置として利用される。なお、以下の説明では、非磁性塗布液や磁性塗布液を含む総称して単に塗布液と称し、支持体上に塗布液を塗布する簡略化した例に基づいて説明する。
【0029】
図3に示すように、塗布装置20は塗布ヘッド11を備え、この塗布ヘッド11によって搬送される帯状の支持体Bに塗布液を塗布する。
【0030】
塗布ヘッド11は、フロントエッジ6と、ドクターエッジ5と、塗布液を収容する液溜め部3とで概略構成される。フロントエッジ6と、ドクターエッジ5との間には、液溜め部3に連通するスリット4が設けられている。スリット4における塗布ヘッド11の先端側には、塗布液を吐出する開口部7が形成されている。
【0031】
液溜め部3は、断面略円形状であり、支持体Bの幅方向Wに略同一の断面形状を有し、幅方向Wに沿って延設された空洞部分である。液溜め部3の断面は、半径が4mm〜18mmであることが好ましい。
【0032】
スリット4は、液溜め部3から開口部7に向かって所定の開口幅をもって塗布ヘッド11を貫通している。スリット4は、支持体Bの幅方向Wに延設された、液溜め部3に比べて狭い流路である。スリット4の開口幅は、ドクターエッジ5とフロントエッジ6との間隔の寸法である。スリット4の開口幅は、0.05mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0033】
塗布ヘッド11の材質は、特に限定されないが、金属材料が好ましい。また、塗布ヘッド11の材質は、加工精度を向上させる観点では、ステンレス鋼のような高い硬度の材質であることがより好ましい。更に、塗布ヘッド11は、先端に超硬材等を貼り付けたものやセラミックスを用いてもよい。
【0034】
図4は、塗布装置で支持体に塗布液を塗布している状態を示す断面図である。塗布液Pは、液溜り部3からスリット4の開口部7から吐出され、搬送される支持体Bにおける塗布装置20に面する被塗布面(図4では下面)に塗布される。
【0035】
図4に示すように、塗布ヘッド11には、搬送される支持体Bの上流側から順に、フロントエッジ6の先端に位置するフロントエッジ面6aと、ドクターエッジ5の先端に位置するドクターエッジ面5aとが形成されている。フロントエッジ面6aとドクターエッジ面5aは、断面がそれぞれ所定の曲率を有するように円弧状に形成されている。塗布ヘッド11は、フロントエッジ面6aの搬送方向後端エッジとドクターエッジ面5aの搬送方向前端エッジとの間に段差を設けることで、支持体Bに所定の厚さで塗布液Pを塗布する。
【0036】
塗布装置20は、開口部7から支持体Bに塗布される塗布液Pの、支持体Bの幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から支持体Bの幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、塗布液を塗布する。このような塗布量分布となるように、塗布量を調整する例を、以下に説明する。
【0037】
図5は、ドクターエッジに形成された液溜り部の形状を示す模式図である。図5は、図4に示す塗布ヘッド11をV−V線の矢印方向で、ドクターエッジ5を平面視したものに相当する。図5では、液溜り部3の上側エッジ及び下側エッジがともに等しい円弧形状であって、所定の曲率半径Rを有する。液溜り部3における、支持体の幅方向Wの位置をxで示す。液溜り部3における、幅方向wの中心の曲率半径をR(0)とし、中心から幅方向wに向かって距離xだけ離れた位置の曲率半径をR(x)とし、幅方向wの端部の曲率半径R(w/2)とする。液溜り部3は、幅方向wの中心に対して線対称な形状である。
【0038】
液溜り部3の曲率半径R(0)、R(x)、R(w/2)は、中心の曲率半径R(0)が最小となり、その中心から両端側に向かうに伴い大きくなり、端部における曲率半径であるR(w/2)が最大となる。つまり、曲率半径は、R(0)<R(x)<R(w/2)となる。言い換えると、液溜り部3の形状は、単一の曲線に沿って設けられ、かつ、曲率半径が最小となる位置から、液溜り部3の両方の端部にそれぞれ向かうに伴い曲率半径が大きくなる。
【0039】
図5のように液溜め部3を構成すると、液溜め部3からスリット4の開口部7までの距離をスリット長とした場合、スリット長は、幅方向wの位置に応じて変化する。この例では、スリット長は、幅方向wの中心で最も短く、両方の端部へ向かうに伴って長くなる。
【0040】
液溜め部3は、フロントエッジ6と、ドクターエッジ5との少なくとも一方に、NC加工等によって形成することができる。
【0041】
図6は、図5に示す液溜め部を設けた塗布ヘッドにおける、支持体の幅方向位置とスリット長との関係を示すグラフである。図6において、実線で示す曲線は、支持体の幅方向に対するスリット長の変化率を示している。図6の破線で示す曲線は、実線で示す曲線の幅方向の中心の曲率半径Rsと等しく、この中心から幅方向両端部に該曲率半径Rsを変化させることなく描かれた、比較用の曲線である。
【0042】
スリット長は、幅方向の中心で最も短く、幅方向の端部で最も長くなる。スリット長の変化率を示す曲線は、幅方向中心から距離xの位置の曲率半径をRs(x)としたとき、幅方向の中心の曲率半径Rs(0)が最も小さく、中心から両方の端部に向かうに伴って大きくなり、幅方向の端部の曲率半径Rs(w/2)が最大となる。つまり、スリット長が最短となる中心から開口部の幅方向に向かうに伴って変化率が小さくなる。
【0043】
開口部において、スリット長が短い位置では、該位置に対応する開口部から吐出される塗布液の塗布量は多くなり、スリット長が長い位置では、該位置に対応する開口部から吐出される塗布液の塗布量は少なくなる。このため、スリットの開口部における、支持体の幅方向の中心は、端部に比べてスリット長が短くなるため、塗布量が多くなる。そして、スリットの開口部において、支持体の幅方向の端部に向かうに伴ってスリット長が長くなり、塗布量が少なくなる。
【0044】
次に、上記塗布ヘッドも用いて支持体に塗布液を塗布したときの、支持体上の塗布層の厚みについて説明する。
【0045】
図7は、支持体の幅方向の位置と塗布層の厚みとの関係を表す厚み分布曲線を示すグラフである。図7では、横軸が支持体の幅方向の位置を示し、縦軸が塗布層の厚みを示している。ここで、厚み分布曲線とは、支持体の幅方向の厚み実測によりプロットした塗布量分布データを基に算出された近似曲線をいう。近似曲線は、一例として、塗布量分布データから最小二乗法を用いて算出することができる。
【0046】
図7に示すように、支持体の幅方向の中心の位置0とし、幅方向端部の位置をw/2とする。塗布層は、幅方向の中心で最も厚く、この中心から幅方向の端部に向かって曲線状に薄くなる厚み分布で形成される。また、中心からの距離xの位置の曲率半径をRt(x)としたとき、中心の曲率半径Rt(0)が最も小さく、支持体において幅方向の中心から幅方向の端部へ向かうに伴って曲率半径Rt(x)が大きくなり、幅方向端部の位置の曲率半径Rt(w/2)が最も大きくなる。つまり、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、最大厚みとなる部位(図7では幅方向の中心の位置0とした。)を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の幅方向の両端側の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、塗布液が塗布されている。また、図7の例は、塗布層表面の分布曲線が、幅方向の中心から端部に向かって曲率半径が徐々に大きくなるように構成したものである。曲率半径の変化は、段階的であっても連続的であってもよい。曲率半径の変化が段階的である場合、曲率半径の変化点は、分布曲線上に明確に現れるようにしてもよいし、明確には現れないようにならされた形状としてもよい。また、曲率半径の変化が段階的である場合は、例えば、xがw/6乃至w/4となる位置では少なくとも曲率半径が中心より大きくなっている(つまり、中心と端部との間の1/2乃至2/3の領域で、曲率半径が中心より大きくなっている)ようにしてもよい。
【0047】
次に、上述の塗布装置を利用し、図7の塗布厚み分布で塗布された塗布層を有する支持体を支持体ロールとして巻き回したときの作用と効果を説明する。
図8は、支持体ロールの断面模式図である。支持体ロールBRは、円柱形状の軸芯Sの周面に支持体Bを巻き回したものである。図8では、支持体ロールBRの幅方向の位置をxで示すと、幅方向の中心をx=0とし、支持体Bの幅方向の端部をx=w/2とする。
【0048】
支持体Bが所定の回数だけ巻き回した支持体ロールBRを断面視した状態において、最も外側に巻き回されている支持体Bの表面を示す曲線に着目する。この曲線の幅方向の位置xに対する曲率半径をr(x)とすると、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)が最も小さく、曲率半径Rr(x)は、中心から端部へ向かうに伴って大きくなり、端部の曲率半径Rr(w/2)が最も大きくなる。
【0049】
搬送される支持体Bを支持体ロールBRに巻き取るときには、支持体Bに同伴するエアが巻き回される支持体B同士の間に巻き込まれる。このとき、巻き込まれるエアは、順次巻き取られる支持体Bからかかる圧力をうけて、支持体Bの幅方向に圧力の小さな方向へ流れる。
巻き込まれたエアに発生する圧力Pは、支持体Bを巻き取る回数(つまり、巻き取り長さ)に応じて発生する圧力p1と、支持体Bの幅方向の形状に応じて発生する圧力p2との合算よりなる。
【0050】
圧力p1は、支持体ロールBRの径方向にかかる圧力であって、支持体Bを巻き取る回数が増加するほど、(つまり、巻き回す支持体の長さが長くなるほど)、概ね反比例して小さくなる。
【0051】
圧力p2は、支持体ロールBRの幅方向にかかる圧力であって、支持体ロールの形状に影響をうけ、支持体表面の曲率半径R(x)が大きくなるほど、概ね反比例して小さくなる。
圧力p1は、支持体の全長が長くなるほど小さくなるため無視できる。一方で、圧力p2は、支持体ロールの形状に依存するため、巻き込まれたエアは圧力p2による影響が支配的になる。つまり、支持体ロールを所定の形状とすることで圧力p2を調整し、巻き込まれたエアが巻き回される支持体Bから円滑に抜けるようになる。
【0052】
支持体ロールBRの形状は、上述のように塗布される塗布液の厚み分布によって調整される。すなわち、支持体B表面に塗布される塗布液の、支持体Bの幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体Bの幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなるように、塗布液を塗布する。
【0053】
支持体ロールBRの形状は、支持体ロールBRを断面視した状態において、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)が最も小さく、曲率半径Rr(x)を中心から端部へ向かうに伴って大きくしたため、巻き込まれたエアが支持体Bの幅方向の中心から端部へ流れる。また、支持体Bの幅方向の中心の曲率半径Rr(0)よりも端部の曲率半径Rr(w/2)を最も大きくすることで、エアが支持体Bの幅方向端部に残留することを抑え、端部から外部へ排出されやすくなる。したがって、塗布層が塗布された支持体を巻き取る際に、効率的に同伴エアを排除でき、巻き取り形状を高い精度で安定させることができる。また、支持体ロールにおける、残留エアによる熱変形も抑止できる。
この塗布方法及び塗布装置は、磁気テープを製造する過程である支持体や支持体ロールの製造工程で特に効果があり、また、塗布速度が100m/分以上で、かつ、搬送される支持体の幅寸法が500mm以上の高速な広幅塗布にも有効である。
【0054】
次に、塗布方法及び塗布装置の変形例について説明する。
【0055】
この例では、スリットの開口部の開口幅を支持体の幅方向に所定の変化率で間隔の寸法を変えることで塗布厚み分布を調整する。
【0056】
図9は、塗布装置の変形例を示す図である。塗布装置20は、図3に示す塗布装置の構成と基本的に同じであるが、ドクターエッジ5の外面に、スリット4の開口部7の間隔Swを変えるための調整部材8が、幅方向に複数(図9では3個)、設けられている。調整部材8はそれぞれ、調整ねじを締め付け可能に取り付けられている。調整ねじを締め付けることで、ドクターエッジ5を弾性変形させ、スリットの4の開口部7開口部の開口幅Swを調整することができる。調整部材8は、スリット4の開口部7の開口幅Swを、幅方向の中心で最大幅となるようにし、かつ、中心から該開口部7の幅方向の端部に向かうに伴って狭くなる変化率が小さくなるように調整する。ここで、開口幅Swを、開口部7の幅方向wの中心から端部に向かうに伴って狭くなる変化率が小さくするとは、開口幅Swをdとしたとき、スリット4の開口部7の幅方向の中心から端部に向けてd3(dの3乗)の変化を徐々に緩やかにすることと同義である。
【0057】
このようにスリットの開口部の開口幅に分布がある塗布装置としては、フロントエッジと、ドクターエッジとのそれぞれにNC加工にて液溜り部とスリットを形成し、開口幅の分布を調整してもよい。又は、フロントエッジ及びドクターエッジには、加工を行わず、両者の合わせ面にスリットの開口幅をなすように厚み分布を有する別の板材を挟み込んでもよい。
【0058】
次に、支持体、非磁性塗布層の非磁性塗布液、磁性塗布層の磁性塗布液のそれぞれについて説明する。
【0059】
非磁性塗布層の非磁性塗布液に含まれる非磁性材料の構成は制限されないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、この層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよい。
【0060】
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組合せで使用される。
【0061】
非磁性粉末の表面には表面処理が施され、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましくはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせてしようしてもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般的には好ましい。
【0062】
非磁性粉末は結合剤に対して重量比率で20〜0.1、体積比率で10〜0.2の範囲で用いられる。又、特開昭59−142741号、同61−214127号、同63−140420号には非磁性塗布層にSnO2を含むことを規定している。これらは磁性塗布層に酸化鉄、若しくはBaFeを用いており、SnO2より比重は小さいものであるが、いずれも磁性塗布層の下塗処方であり、その厚みは磁性塗布層に比べてはるかに薄いものであり、本発明とは別の発明である。
【0063】
磁性層に使用する磁性粒子としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Fe又はNi又はCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金微粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、窒化鉄など公知の強磁性粉末が使用できる。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性微粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、同45−18372号、同47−22062号、同47−22513号、同46−28466号、同46−38755号、同47−4286号、同47−12422号、同47−17284号、同47−18509号、同47−18573号、同39−10307号、同48−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0064】
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、又は酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0065】
磁性塗布層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば25〜80m2/gであり、好ましくは35〜60m2/gである。25以下ではノイズが高くなり、80以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100オングストロームであり、好ましくは350〜150オングストロームである。酸化鉄磁性粉末のσ Sは50emu/g以上、好ましくは70emu/g以上であり、強磁性金属微粉末の場合は100emu/g以上が好ましい。
【0066】
強磁性粉末のr1500は1.5以下であることが好ましい。更に好ましくはr1500が1.0以下である。r1500とは磁気記録媒体を飽和磁化したのち反対の向きに1500Oeの磁界をかけたとき反転せずに残っている磁化量の%を示すものである。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上が更に好ましい。
【0067】
γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%であり、更に好ましくは5〜10%である。鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHの範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
【0068】
また、強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。強磁性粉末の形状は、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状、板状いずれでもかまわない。強磁性粉末のSFD0.6以下を達成するためには、強磁性粉末の抗磁力(保持力)Hcの分布を小さくする必要がある。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を遅くするなどの方法がある。
【0069】
磁性粒子としては、板状六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、六方晶Co粉末が使用できる。バリウムフェライトを用いる場合、その粒子サイズは0.001〜1μmの直径で厚みが直径の1/2〜1/20である。比重は4〜6g/ccで、比表面積は1〜60m2/gである。
【0070】
非磁性塗布層及び磁性塗布層に使用される結合剤としては、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としてはフエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0071】
これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を非磁性塗布層、又は磁性塗布層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の群から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組合せたものがあげられる。
【0072】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SO3M、OSO3M、P=O(OM)2、O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3、Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0073】
結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、日本ゼオン社製:MR110、MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフエラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP−150、旭化成社製:サランF310、F210などがあげられる。
【0074】
結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが好ましい。
【0075】
ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/cm2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。磁気記録媒体は二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性塗布層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性塗布層と磁性塗布層とで変えることはもちろん可能である。
【0076】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つ若しくはそれ以上の組合せで非磁性塗布層、磁性塗布層ともに用いることができる。
【0077】
磁性塗布層に使用されるカーボンブラックはゴム用フアーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμm〜300mμm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製:BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製:♯80、♯60、♯55、♯50、♯35、三菱化成工業社製:♯2400B、♯2300、♯900、♯1000、♯30、♯40、♯10B、コンロンビアカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理してもよく、又は、樹脂でグラフト化して使用してもよく、又は、表面の一部をグラフアイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性塗布層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、カーボンブラックは非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることは当然可能である。例えば、非磁性層に導電性の高いカーボンブラックを用いることにより帯電を防止し、磁性塗布層に粒子径の大きいカーボンブラックを用い摩擦係数を下げるなどがあげられる。磁性塗布層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0078】
磁性塗布層に用いられる研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組合せてもよいし、単独の研磨剤で粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、又はサイコロ状のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものは研磨性が高く、好ましい。
【0079】
研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP−20,AKP−30,AKP−50,HIT−50、日本化学工業社製:G5,G7,S−1、戸田工業社製:100ED,140EDなどがあげられる。研磨剤は非磁性塗布層、磁性塗布層で種類、量及び組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。磁気記録媒体の磁性塗布層の表面及びその端面に存在する研磨剤は5個/100μm2以上が好ましい。
【0080】
添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などを有するものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及び、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuなど)又は、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、があげられる。
【0081】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。
【0082】
潤滑剤、界面活性剤は非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性塗布層、磁性塗布層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、ここに示した例のみに限られるものではない。
【0083】
添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製:NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122,NAA−142,NAA−160,NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸,NAA−42,NAA−44,カチオンSA,カチオンMA,カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL−201,ナイミーンL−202,ナイミーンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2,ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R,ノニオンOP−80R,ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウレート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂社製:FAL−205,FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブLO,エヌジョルブIPM,サンソサイザーE4030、信越化学社製:TA−3,KF−96,KF−96L,KF−96H,KF410,KF420,KF965,KF54,KF50,KF56,KF−907,KF−851,X−22−819,X−22−822,KF−905,KF−700,KF−393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935、ライオンアーマー社製:アーマイドP,アーマイドC,アーモスリップCP、ライオン油脂社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオネットMS−400,イオネットMO−200,イオネットDL−200,イオネットDS−300,イオネットDS−1000,イオネットDO−200などがあげられる。
【0084】
有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。有機溶媒は必要ならば磁性塗布層と非磁性塗布層でその種類、量を変えてもかまわない。非磁性塗布層に揮発性の高い溶媒を用い表面性を向上させる、磁性塗布層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、磁性塗布層の溶解性パラメータの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるが、これらの例に限られない。
【0085】
磁気記録媒体の厚み構成は支持体が1〜100μm、好ましくは5〜20μm、非磁性層の厚みが0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、磁性層の厚みは0.05μm以上1.0μm以下、好ましくは0.05μm以上0.6μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.3μm以下である。磁性層と非磁性層を合わせた厚みは支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。
【0086】
また、支持体と非磁性層との間に密着性向上のための非磁性塗布層を設けてもかまわない。非磁性塗布層の厚みは0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0087】
支持体の磁性層が形成される側とは反対側にバックコート層を設けてもかまわない。バックコート層の厚みは0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの非磁性塗布層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0088】
支持体は、ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの公知のフイルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などをおこなってもよい。支持体は、中心線平均表面粗さが0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、更に好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要がある。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si,Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体のテープ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2、テープ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mm2であり、テープ長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0089】
支持体の熱収縮率は、テープ走行方向及び幅方向に100℃30分で、好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2が好ましい。
【0090】
磁気記録媒体の磁性塗料(磁性材料を含む塗布液)を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0091】
従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することにより、磁気記録媒体の高い残留磁化密度(Br)を得ることができる。連続ニーダ又は加圧ニーダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号、特開平1−79274号に記載されている。
【0092】
逐次重層構成の磁気記録媒体の製造装置に用いる塗布装置には、従来の公知の製造技術を用いることができる。例えば、磁性塗料の塗布で一般的に用いられる、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等が挙げられる。
【0093】
なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号や特開平1−236968号に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望ましい。更に、磁性塗料の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。
【0094】
配向の磁界を発生させる磁石としては、1000G以上のソレノイドと2000G以上のコバルト磁石を併用することが好ましく、更には乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。
【0095】
磁気記録媒体の表面平滑化処理を行うカレンダ処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属ロール同志で処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、更に好ましくは300kg/cm以上であり、その速度は20m/分以上700m/分以下の範囲である。
【0096】
製造された磁気記録媒体の磁性層及びその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.5以下、更に0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは10−5〜10−12オーム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2000Kg/mm2、破断強度は好ましくは1〜30Kg/cm2、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長手方向とも好ましくは100〜1500Kg/mm2、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0097】
製造された磁気記録媒体の磁性層に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層及び非磁性層が有する空隙率は、ともに好ましくは30容量%以下、更に好ましくは10容量%以下である。磁性層の空隙率が非磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが、逆の場合でも非磁性層の空隙率が20%以下であれば支障はない。
【0098】
(実施例)
本発明者は、厚み分布と、支持体の巻き取り形状と、熱硬化後の状態との関係を調べるため、次のような評価試験を行った。本試験では、支持体上に平均厚みが1μmとなるように非磁性層のみを塗布して、次のような評価を行った。
【0099】
本評価試験に使用する塗布装置の塗布ヘッドは、支持体の幅方向の寸法が900mmで、塗布幅800mmで搬送される支持体に塗布液を塗布した。液溜り部の断面形状は半径が10mmの円形とした。塗布速度を、300m/分とし、塗布厚みを5μmとした。
支持体は、幅寸法が820mmのポリエチレンナフタレートを用いた。支持体は、塗布液を塗布した後で、直径300mmの軸芯に巻き回し、支持体ロールを製造した。
支持体に塗布された塗布層の幅方向の厚み分布を膜厚計で測定したところ、0.10μmの厚みムラが不均一についていた。その後、支持体ロールを、カレンダ工程にて表面処理した後、60℃の恒温室に48時間入れて熱処理した。
【0100】
熱処理後の支持体の変形の評価では、支持体を軸芯に巻き回すときに、巻きズレの発生率を測定した。また、熱処理後に、支持体ロールに巻き回された支持体上の塗布層をレーザー変位計によって測定し、軸芯側の支持体における塗布層及び外周側に巻き回された支持体の塗布層においてそれぞれ熱処理による変形の有無を評価した。
【0101】
巻きズレの評価では、軸芯に支持体を100回巻き回せたときに支持体のズレの回数をカウントした。
【0102】
(実施例1)
実施例1では、塗布装置の塗布ヘッドが、図3〜5に示す構成のように曲線状に加工された液溜り部を備える。この液溜り部は、図5と同様にドクターエッジ5を平面視した状態で、液溜り部3の上側エッジ及び下側エッジがともに等しい円弧形状であって、この円弧形状の曲率半径が、幅方向の中心から端部に向かうに伴って大きくなるように構成されている。
【0103】
図10は、実施例1の液溜り部の、幅方向の位置と曲率半径との関係を示すグラフである。図10では、横軸が液溜り部の幅方向の位置(mm)を示し、縦軸が曲率半径(mm)を示している。液溜り部の円弧形状の中心の曲率半径は約12000mmであり、中心から端部に向かうに伴って曲率半径が大きくなり、端部において、曲率半径が約15000mmである。
【0104】
図11は、実施例1の塗布装置を用いて塗布された塗布層の厚み分布を示すグラフである。図11では、横軸が液溜り部の幅方向の位置x(mm)を示し、縦軸が厚み分布を示している。図11において実線のグラフは、厚み分布の実測値を示している。また、点線の曲線は、実測値に基づいて最小二乗法によって算出された、厚み分布の近似曲線を示している。厚み分布の近似曲線は、支持体の幅方向の中心(x=400mm)における曲率半径が最小となり、中心から端部に向かうに伴って曲率半径が大きくなり、端部(x=0mm、及びx=800mm)において曲率半径が最大となった。
【0105】
(実施例2)
図12は、実施例2の液溜り部の形状を示す模式図である。図12に示すように、実施例2では、液溜り部の形状は、支持体の幅方向に対して平行な直線に形成されている。つまり、実施例2の液溜り部では、スリットのスリット長は、幅方向にわたって等しい。また、実施例2で用いる塗布装置は、図9に示すようにスリット4の開口部7の間隔Swを変えるための調整部材8を備えている。調整部材8によって、スリットの開口部の開口幅を、最大幅を有する部位から該開口部の幅方向の端部に向かうに伴って開口幅が狭くなる変化率を小さくように調整した。この調整部材8によって、実施例2では、実施例1の塗布層の厚み分布とほぼ同等となるように、支持体上に塗布される塗布液の塗布量を調整した。
【0106】
(比較例1)
比較例1では、塗布装置の塗布ヘッドが、曲線状に加工された液溜り部を備えるが、平面視した状態で、液溜り部の円弧形状の曲率半径が、幅方向の中心から端部まで一定とした。
【0107】
図13は、実施例1の塗布装置を用いて塗布された塗布層の厚み分布を示すグラフである。図13では、横軸が液溜り部の幅方向の位置x(mm)を示し、縦軸が厚み分布を示している。図13において実線のグラフは、厚み分布の実測値を示している。また、点線の曲線は、実測値に基づいて最小二乗法によって算出された、厚み分布の近似曲線を示している。厚み分布の近似曲線は、支持体の幅方向の中心(x=400mm)から両方の端部(x=0mm、及び、x=800mm)まで、曲率半径がほぼ等しくなった。
【0108】
評価の結果を下記に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1,2では、支持体上に塗布される塗布層を上述のような厚み分布で形成することで、巻きズレの発生を防止できた。また、熱処理後において、軸芯側及び外周側で支持体に変形が生じることを防止できた。
比較例1では、軸芯に100回巻き回された支持体のうち3回巻きズレが確認された。また、熱処理後において、外周側で支持体に変形が生じることを防止できたものの、軸芯側で支持体の変形が確認できた。
【0111】
この結果、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなるように、塗布液を塗布することで、巻きズレの発生を抑え、熱処理後において支持体の変形を抑えることができることが確認できた。
【0112】
本発明は、上記例のものに限定されず、適宜変更可能である。
【0113】
例えば、支持体表面に塗布される塗布液の、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位は、支持体の幅方向の中心に限定されない。この場合、支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、幅方向の両端部の曲率半径が最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくするように塗布すればよい。
【0114】
例えば、塗布層の厚み分布曲線において、幅方向の両端部の曲率半径が、最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる部分には、巻き込みエアの排気を妨げない範囲で、直線部分(曲率半径がほぼ無限大となる線分)が含まれていてもよい。
【0115】
例えば、支持体の幅方向の両端側に設けられた、最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、塗布液を塗布してもよい。このように、塗布層の厚み分布曲線において、最大厚みとなる部位の幅方向の両側において、右側の曲率半径と左側の曲率半径との、値や組み合わせ方や変化の段階数が異なっていてもよい。
【0116】
本明細書は、次の事項を開示する。
(1)搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(2)(1)に記載の塗布方法であって、
前記支持体の前記幅方向の両端側に設けられた、前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、前記両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(3)(1)に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が徐々に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(4)(1)に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が連続的又は段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
(5)搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、かつ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
(6)(5)に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記スリットの前記開口部の開口幅が最大幅を有する部位から該開口部の前記幅方向の端部に向かうに伴って前記開口幅を狭くする変化率を小さくした構成である塗布装置。
(7)(5)に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記液溜め部から前記開口部までの長さをスリット長としたとき、前記スリット長が最短となる部位から該開口部の前記幅方向に向かうに伴って長くなる変化率を小さくした構成である塗布装置。
(8)表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、かつ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
(9)(8)に記載の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【符号の説明】
【0117】
3 液溜り部
4 スリット
7 開口部
20 塗布装置
B 支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記支持体の前記幅方向の両端側に設けられた、前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、前記両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項3】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が徐々に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項4】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が連続的又は段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項5】
搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、且つ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記スリットの前記開口部の開口幅が最大幅を有する部位から該開口部の前記幅方向の端部に向かうに伴って前記開口幅を狭くする変化率を小さくした構成である塗布装置。
【請求項7】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記液溜め部から前記開口部までの長さをスリット長としたとき、前記スリット長が最短となる部位から該開口部の前記幅方向に向かうに伴って長くなる変化率を小さくした構成である塗布装置。
【請求項8】
表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、且つ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【請求項1】
搬送される帯状の支持体に、塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布曲線が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って厚みが薄くなる形状で、かつ、前記最大厚みとなる部位の曲率半径を最小値とし、その前記幅方向の両端側に曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域が設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記支持体の前記幅方向の両端側に設けられた、前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域のうち少なくとも一方が、異なる曲率半径からなる少なくとも2つの領域を含み、その少なくとも2つの領域は、前記両端側に向かうに伴って曲率半径が段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項3】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が徐々に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項4】
請求項1に記載の塗布方法であって、
前記最大厚みとなる部位から前記幅方向の両端側に向かうに伴って曲率半径が連続的又は段階的に大きくなるように、前記塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項5】
搬送される帯状の支持体に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液を収容する液溜め部と、
前記液溜め部に連通し、前記支持体に前記塗布液を開口部から吐出するスリットと、
前記開口部から前記支持体に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の塗布量分布曲線が、最大量となる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って塗布量が少なくなる形状で、且つ、前記最大量となる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大量となる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布量調整手段と、を備えた塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記スリットの前記開口部の開口幅が最大幅を有する部位から該開口部の前記幅方向の端部に向かうに伴って前記開口幅を狭くする変化率を小さくした構成である塗布装置。
【請求項7】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記吐出量調整手段が、前記液溜め部から前記開口部までの長さをスリット長としたとき、前記スリット長が最短となる部位から該開口部の前記幅方向に向かうに伴って長くなる変化率を小さくした構成である塗布装置。
【請求項8】
表面に塗布層が塗布された帯状の支持体を巻き取ってなる支持体ロールの製造方法であって、
前記支持体表面に塗布される前記塗布液の、前記支持体の幅方向の厚み分布が、最大厚みとなる部位から前記支持体の幅方向両側に向かうに伴って薄くなり、且つ、前記最大厚みとなる部位を含み最小の曲率半径となる領域と、その領域の前記幅方向の両端側の曲率半径が前記最大厚みとなる部位の曲率半径よりも大きくなる領域とが設けられるように、前記塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記支持体を巻き取る巻き取り工程と、を有する製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法を利用して製造される磁気テープであって、
前記塗布工程で磁性粒子を含む前記塗布液を塗布し、乾燥、固化させて形成された磁性層を有し、
前記塗布工程の後、前記支持体を所定の幅寸法で裁断することで得られる磁気テープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−206666(P2011−206666A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76464(P2010−76464)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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