説明

塗布方法、導電性ローラの製造方法

【課題】被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する時、被塗布体の非塗膜形成領域に複雑な精度を必要とする加工を必要とせず、又、表面層が複数の層で構成される場合でも離脱の心配がなく、着脱が容易な塗布規制部材を用いて被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法の提供。
【解決手段】両端に保持部を有する被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、前記被塗布体の両端に前記保持部である非塗膜形成領域を形成する塗布方法において、前記被塗布体の少なくとも一方の非塗膜形成領域を熱収縮チューブで覆った状態で、前記被塗布体の表面に前記塗布液を塗布した後、前記熱収縮チューブを除去することを特徴とする塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端に保持部を有する被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被塗布体の上に塗布液を塗布する方法は種々知られている。例えば、浸漬塗布法、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法、エクストルージョン塗布法、スライドビード塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法等が知られている。これらの塗布方法の中で被塗布体が円筒状又は円柱状の基体に対しては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、リバースロール塗布法等が使用されている。例えば、特開2000−293030号公報には、円筒状基体を回転させながらその表面に塗布液を噴霧し塗布する噴霧するスプレー塗布法が記載されている。特開2005−238145号公報には、円筒状基体を塗布液の入った塗布槽中に浸漬した後に引き上げる浸漬塗布法が記載されている。特開2005−246277号公報にはアプリケーションロールと、ピックアップロールとを有するロールコータ塗布装置で円筒状基体の表面に塗布液を塗布するロールコータ塗布法が記載されている。特開2005−295052号公報には円筒状基体を回転させながロールコータを上下方向に移動することで円筒状基体の表面に塗布液を塗布するロールコータ塗布法が記載されている。特開2005−326821号公報には、環状の塗布槽に入った塗布液を塗布槽の中心から円筒状基体を引き上げる円筒状基体の周面に塗布液を塗布する環状塗布法が記載されている。
【0003】
これらスプレー塗布法、浸漬塗布法、ロールコータ塗布法、環状塗布法の中で異物混入による塗布故障の影響が比較的少ない、装置構成が比較的簡単である、生産性が高い等の点で他の塗布方法より有利であることから浸漬塗布法が広範にわたり使用されている。
【0004】
浸漬塗布法により被塗布体の表面に塗布膜(樹脂層)を形成した製品の一例として電子写真、複写機などの画像形成装置に用いる現像、帯電、転写、定着、加圧、クリーニング、除電等に用いる導電性ローラが挙げられる。
【0005】
通常、導電性ローラは円筒状の基体の両端に画像形成装置に備え付けるための保持部を有しており、保持部を付けた状態で塗布が行われ塗布膜(樹脂層)が形成されている。導電性ローラに塗布膜(樹脂層)を形成する場合、表面の塗布膜(樹脂層)の厚さ均一性、欠陥箇所がないことは勿論であるが、導電性ローラの両端に付けられた保持部を含め必要としない部分(非塗膜形成領域)には塗布膜(樹脂層)が形成されていないことが以下に示す理由から求められている。
1)保持部には塗布膜(樹脂層)が形成されている場合、画像形成装置に取り付けた時、周辺機器との取り付け精度が不足することで、例えば回転時の揺れ、対象物との距離のムラ等が発生し、正常な機能を発現することが出来なくなり画像形成装置とし得られる画像の品質が低下する。
2)画像形成装置に取り付ける時、取り付け部とのコスレにより塗布膜(樹脂層)が剥がれ、画像形成装置内に飛散し、感光体、現像ロール等に再付着する場合がある。感光体、現像ロール等に付着した場合は画像欠陥となる。
3)画像形成装置に取り付ける時に剥がれなくても、稼働中に取り付け部のベアリング等でコスレて剥がれ画像形成装置内に飛散し、感光体、現像ロール等に付着する場合がある。感光体、現像ロール等に付着した場合は画像欠陥となる。
4)保持部には塗布膜(樹脂層)が形成されている場合、電圧が漏洩しリークし、例えば導電性ローラが現像ロールの場合は、現像材(トナー)の搬送不良が不安定になったり、極端に搬送性が低下し正常な画像が得られなくなる場合がある。
【0006】
浸漬塗布方法で導電性ローラを作製した場合、浸漬塗布方法の方式により異なるが、少なくとも一方の保持部を取り付けた端部は塗布膜(樹脂層)形成用の塗布液に浸漬されるため保持部を取り付けた端部には塗布膜(樹脂層)が形成されてしまう。この様に浸漬塗布方法で塗布膜(樹脂層)形成用の塗布液を塗布する場合、保持部を付けた端部に塗布しない方法が検討されてきた。
【0007】
例えば、芯金と、該芯金の上に形成された弾性体基層と、弾性体基層の上に形成された表層とを有する導電性ローラを浸漬塗工する際、導電性ローラの塗工液に浸漬する端部に着脱自在の塗工キャップを嵌合し表面層形成用の塗工液を塗布した後、塗工キャップを外すことで芯金の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法が知られている(例えば、特許文献1参照、特許文献2参照。)。特許文献1、特許文献2に記載の方法は次の欠点を有している。
1.表面層が複数の層で構成される場合、層の数に合わせ浸漬塗工・乾燥が行われるため、乾燥時の熱により芯金と塗工キャップと膨張率、収縮率が異なることで塗工キャップが外れる危険がある。
2.芯金に嵌合させるため、嵌合部からの塗工液の進入を防止するため寸法精度及び表面形状精度が求められ、加工に精度が求められコストが掛かる。
3.塗工キャップの芯金への嵌合が不十分の場合、浸漬塗工中に芯金の内部の空気が嵌合部から出て塗工面に付着し故障になる危険があるため、塗工キャップの芯金への嵌合を注意深く行うため時間が掛かり作業効率の低下の原因の一つになる。
【0008】
この様な状況から、被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する時、被塗布体の非塗膜形成領域に複雑な精度を必要とする加工を必要とせず、又、表面層が複数の層で構成される場合でも離脱の心配がなく、着脱が容易な塗布規制部材を用いて被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2005−115068号公報
【特許文献2】特開2005−316123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する時、被塗布体の非塗膜形成領域に複雑な精度を必要とする加工を必要とせず、又、表面層が複数の層で構成される場合でも離脱の心配がなく、着脱が容易な塗布規制部材を用いて被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0011】
1.両端に保持部を有する被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、前記被塗布体の両端に前記保持部である非塗膜形成領域を形成する塗布方法において、前記被塗布体の少なくとも一方の非塗膜形成領域を熱収縮チューブで覆った状態で、前記被塗布体の表面に前記塗布液を塗布した後、前記熱収縮チューブを除去することを特徴とする塗布方法。
【0012】
2.前記熱収縮チューブの径方向の収縮率が20%〜80%であることを特徴とする前記1に記載の塗布方法。
【0013】
3.前記熱収縮チューブの加工前の厚さが20μm〜500μmであることを特徴とする前記1又は2に記載の塗布方法。
【0014】
4.前記被塗布体が導電性ローラの基体であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の塗布方法。
【0015】
5.両端に保持部を有する被塗布体の表面に塗布方法により塗膜層形成用の塗布液を塗布し、前記被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成した導電性ローラの製造方法において、前記塗布方法が前記1〜3の何れか1項に記載の塗布方法であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する時、被塗布体の非塗膜形成領域に複雑な精度を必要とする加工を必要とせず、又、表面層が複数の層で構成される場合でも離脱の心配がなく、着脱が容易な塗布規制部材を用いて被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成する塗布方法を提供することが出来、両端に非塗膜形成領域を形成した被塗布体が安定して生産することが出来、生産効率の向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を被塗布体として両端に保持部材を有する円筒状基体を使用し、導電性ロールである現像ロールを作製する塗布方法と現像ロールの作製方法に付き図1〜図6を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
図1は現像ロールの概略図である。図1(a)は現像ロールの概略斜視図である。図1(b)は図1(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
【0019】
図中、1は現像ロールを示す。現像ロール1は、本体101と、本体101の両側に取り付け部材(図4を参照)を介して取り付けられた保持部材101cとを有している。101bは本体101の端面を示す。本体101は円筒状基体101aと、円筒状基体101aの周面に形成された第1樹脂層101a1と、第2樹脂層101a2と、表面層101a3とを有している。第1樹脂層101a1は接着層として機能を有しており、必要に応じて設けることが可能となっている。第2樹脂層101a2は必要に応じて複数の層から形成されることもある。表面層101a3は必要に応じて設けることが可能となっている。保持部材101cの形状は現像ロールを取り付ける側の形式により変わるため特に限定はなく、本図に示される保持部材101cは、径が異なる第1保持部材101c1と第2保持部材101c2とから構成されている場合を示している。本図に示される現像ロール1で、樹脂層が形成されている部分は円筒状基体101aの周面と両端の端面101bであり、保持部材101cは樹脂層が形成されていない状態となっている。即ち、本図に示される現像ロール1では保持部材101cが非塗膜形成領域となっている。
【0020】
円筒状基体(円柱状基体)の直径は1.0mm〜30mmが好ましい。第1樹脂層(乾燥塗膜)の厚さは、0.5μm〜100μmが好ましい。第2樹脂層樹脂層(乾燥塗膜)の厚さは、0.5μm〜200μmが好ましい。第2樹脂層(乾燥塗膜)は単一層であっても複数層からなる多層構成であってもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。表面層の厚さは、0.5μm〜200μmが好ましい。
【0021】
図2は図1(a)に示される他の構成の現像ロールの概略断面図である。
【0022】
図中、第2保持部材は図2(a)に示される現像ロールの本体を示す。本体102は円筒状基体(円柱状基体)102aと、円筒状基体(円柱状基体)102aの周面に形成された弾性層102a1と、弾性層102a1の周面に形成された樹脂層(乾燥塗膜)102a2と、樹脂層(乾燥塗膜)102a2の周面に形成された表面層102a3とを有している。尚、表面層102a3は必要に応じて設けることが可能となっている。
【0023】
円筒状基体(円柱状基体)は直径が1.0mm〜30mmが好ましい。弾性層の厚さは、10μm〜1000μmが好ましい。樹脂層(乾燥塗膜)の厚さは、0.5μm〜200μmが好ましい。樹脂層(乾燥塗膜)は単一層であっても複数層からなる多層構成であってもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。表面層の厚さは、0.5μm〜200μmが好ましい。
【0024】
図3は浸漬塗布装置の一例を示す模式図である。
【0025】
図中、2は浸漬塗布装置を示す。浸漬塗布装置2は、塗布部201と、現像ロール用基体4の供給部202とを有している。塗布部201は塗布槽201aと、塗布槽201aの開口部201a3から溢れる塗布液を受けるため塗布槽201aの上部に配設されたオーバーフロー受け槽201bと、塗布液供給タンク201cと、送液ポンプ201dとを有している。
【0026】
塗布槽201aは底部201a1と、底部の周面から立ち上げられ側壁201a2を有し、上部が開口部201a3となった構造となっている。201a4は塗布槽201aの底部201a1に設けられた送液ポンプ201dから送られてくる塗布液の塗布液供給口を示す。塗布槽201aの形状は特に限定はなく、例えば円筒、逆円錐台が挙げられる。本図は円筒の場合を示している。
【0027】
201b1はオーバーフロー受け槽201bの蓋を示し、中央に孔201b2を有している。201b3はオーバーフロー受け槽201bの塗布液を塗布液供給タンク201cに戻す塗布液戻し口を示す。3は塗布液を示す。201c1は攪拌用の羽根を示す。
【0028】
供給部202は、ボールネジ202aと、ボールネジ202aを回転させる駆動部202bと、ボールネジの回転速度を制御する制御部202cと、ボールネジ202aに螺合されている昇降部材202dと、ボールネジ202aの回転に伴い昇降部材202dを上下方向(図中の矢印方向)に移動させるガイド部材202eとを有している。202fは昇降部材202dに取り付けられた現像ロール用基体4の取り付け部材を示す。尚、現像ロール用基体4は図1に示す現像ロール1の円筒状基体101aに相当し、両端に径が異なる第1保持部材401aと第2保持部材401bとから構成されている保持部材401を有している。取り付け部材202fは、現像ロール用基体4のどちらか一方の保持部材401を保持し、保持した現像ロール用基体4を塗布槽201aのほぼ中央に位置する様に昇降部材202dに取り付けられている。ボールネジ202aの回転に伴い、昇降部材202dが上下方向に移動することで、昇降部材202dに取り付けられた取り付け部材202fに保持された現像ロール用基体4は、塗布槽201aの中の塗布液に浸漬され、その後引き上げられることで現像ロール用基体4の表面に塗布液が塗布される。
【0029】
送液ポンプ201dとしては特に限定はなく、例えば、ベーンポンプ、ロータリーポンプ、スクリュウポンプ、ギアポンプ等が挙げられる。
【0030】
本図に示す浸漬塗布装置を使用した場合は、一方の保持部材(図面の下側の保持部材が該当する)は塗布槽201aの中の塗布液に浸漬されるため非塗膜形成領域である保持部材に塗布液が塗布され塗膜が形成される。
【0031】
現像ロール用基体4の表面に塗布液が塗布された後、乾燥工程(不図示)及び加熱処理工程(不図示)で、塗膜形成用塗膜の中の溶剤を除去することで塗膜を形成する。この後、現像ロール用基体4の両端の近傍の表面の非塗膜形成領域に形成された塗膜を除去することで現像用ロールが出来上がる。
【0032】
本図に示す浸漬塗布装置を使用し、現像ロール用基体4の表面に図1(b)に示す層構成を形成するには、第1樹脂層形成用の塗布液を塗布した後、乾燥工程(不図示)及び加熱処理工程(不図示)で、第1樹脂層形成用塗膜の中の溶剤を除去することで第1樹脂層を形成する。以降、同じ様にして第2樹脂層、表面層を形成した後、非塗膜形成領域である保持部材の周面に形成されている樹脂層(第1樹脂層、第2樹脂層、表面層)を除去することで図1(b)に示す層構成を有する現像ロールが出来上がる。
【0033】
本発明は、本図に示される様に、塗布方式により塗膜形成領域には樹脂層を形成し、非塗膜形成領域に樹脂層を形成させない塗布方法に関する。具体的には、非塗膜形成領域を熱収縮チューブで覆った状態で塗布を行い樹脂層を形成した後、熱収縮チューブを除去することで非塗膜形成領域に樹脂層を形成させない塗布方法に関するものである。
【0034】
図4は現像ロール用基体の保持部材を熱収縮チューブで覆った状態を示す拡大概略断面図である。図4(a)は現像ロール用基体の保持部材へ熱収縮チューブを装着し熱処理を行う前の状態を示す拡大概略断面図である。図4(b)は現像ロール用基体の保持部材へ熱収縮チューブを装着し熱処理を行った状態を示す拡大概略断面図である。
【0035】
図中、401cは保持部材401の取り付け部材を示し、現像ロール用基体4に圧入や溶接、接着等により固定されているか、又は削り出しにより段付に加工される。401c1は現像ロール用基体4の端面を示す。401b1は、第2保持部材401bの端面を示す。5は非塗膜形成領域である保持部材401を覆う熱収縮チューブを示す。図4(a)に付き説明する。熱収縮チューブ5を第1保持部材401aの根本まで装着する。この時使用する熱収縮チューブ5の直径を第1保持部材401aの直径に近づけたものを用意することが、装着後の脱落、位置ズレを防ぐことから好ましい。又、熱収縮チューブ5の長さは、熱処理を行い収縮した状態で第2保持部材401bの端面401b1の一部分が出る様に使用する熱収縮チューブ5の収縮率に合わせ適宜決めることが好ましい。図4(b)に付き説明する。図4(a)に示される状態に保持部材401に熱収縮チューブ5を装着した後、使用した熱収縮チューブ5に合わせた温度で熱処理を行うことで熱収縮チューブ5は収縮し、保持部材401は形状に沿って熱収縮チューブ5に覆われた状態となる。
【0036】
熱収縮チューブ5の厚さは、取り扱い性、保持部材との密着性、コスト等を考慮し、20μm〜500μm、好ましくは30μm〜200μmであることが好ましい。加工前の厚さは、ミツトヨ(株)製のマイクロメーターを使用し、周方向は90°等配に4箇所、長さ方向は両端から5mmと中央部の3箇所、合計12箇所を測定し平均した値を示す。
【0037】
熱収縮チューブの径方向の収縮率は、取り扱い性、保持部材との密着性等を考慮し、20%〜80%、好ましくは25%〜70%であることが好ましい。収縮時の温度は、材質によって異なるが、上記の収縮率が達成される温度であれば任意に選定することが出来る。径方向の収縮率D0は、D0=((D1−D2)/D1)×100%として計算により算出することが出来る。ここで、収縮前の外径をD1とし、2つ折りされている両端から5mmと中央部の3箇所の幅を2倍し平均値とした。収縮後の外径をD2とし、ミツトヨ(株)製のレーザー測長機を使用し、両端から5mmと中央部の3箇所を60rpmの回転数で5sec間測定した外径値の平均値とした。
【0038】
本発明に係わる熱収縮チューブの材質としては特に限定はなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0039】
上市されている熱収縮チューブとしては、例えば、スミチューブ(住友電工ファインポリマー(株)製)、テレチューブ(帝人化成(株)製)、ペンチューブSMT、SST、PFA、TFE、TFE4X、WTF(ペンニットー(株)製)、グンゼFEP・PFA収縮チューブ、(グンゼ(株)製)等が上げられる。熱収縮チューブの使用に際しては、上市されている熱収縮チューブから適宜選択して使用することが可能である。
【0040】
本図に示される様に保持部材401を熱収縮チューブで覆う方法は、保持部材401に未処理の熱収縮チューブを被せた後、熱収縮チューブを被せた部分を加熱処理を施すことで保持部材401を熱収縮チューブで覆うことが可能である。加熱処理としては、例えば誘導加熱、遠赤外線による加熱、近赤外線による加熱、熱風による加熱等が挙げられ使用する熱収縮チューブの材質に合わせ適宜選択して使用することが可能である。遠赤外線による加熱で、保持部材401を熱収縮チューブで覆う方法の一例を図5で説明する。
【0041】
図5は図4に示す現像ロール用基体の一方の端部を熱収縮チューブで覆う熱収縮チューブの装着装置の概略図である。
【0042】
図中、6は装着装置を示す。装着装置6は、取り付け部材602に保持された現像ロール用基体4を回転させるモータ601と、モータ601を取り付ける支柱603と、支柱603を取り付ける台座604と、加熱手段605とを有している。本図の場合は、加熱手段605として遠赤外線ヒータによる加熱を使用している。本図を使用して、保持部材401を熱収縮チューブで覆う方法を以下に説明する。
【0043】
S1では、現像ロール用基体4の一方の保持部材401に未収縮の熱収縮チューブが装着された状態の現像ロール用基体4の他の一方の保持部材が取り付け部材602に保持された状態で現像ロール用基体4はほぼ垂直の状態で取り付け部材602に保持される。尚、一方の保持部材401に未収縮の熱収縮チューブの装着は、取り付け部材602に現像ロール用基体4が保持された後からであっても構わない。使用する熱収縮チューブの径は第1保持部材401aに装着し、取り付け部材602に保持された際、装着した位置がズレたり、脱落しない様な径を有していることが保持部材401への塗布を避ける点から必要である。又、長さは熱収縮チューブの収縮率から収縮が終了した時点で第2保持部材401bの端面401b1(図4を参照)の一部が熱収縮チューブで覆われる様に決める必要がある。
【0044】
S2では、予め熱収縮チューブの特性に合わせ実験的に決められた遠赤外線ヒータによる温度、加熱時間及び現像ロール用基体4の回転速度に従ってモータ601により現像ロール用基体4の回転が開始され、同時に加熱手段605の遠赤外線ヒータによる加熱が開始される。
【0045】
S3では、熱収縮チューブの収縮処理が終了した後、現像ロール用基体4は取り付け部材602から外される。この段階で図4に示される如き、現像ロール用基体4の片側の保持部材401が熱収縮チューブで覆われた状態の現像ロール用基体4が得られる。
【0046】
図6は図4に示す現像ロール用基体の一方の端部が熱収縮チューブで覆われた現像ロール用基体の塗布の手順を示す概略フロー図である。尚、本図は現像ロール用基体の動きを示すため塗布槽以外の周辺機器は省略してある。
S′1は、現像ロール用基体が熱収縮チューブ5で覆われた保持部材側を下にして、塗布槽201aの中心に合わせ浸漬塗布装置の昇降部材の取り付け部材に取り付けられた状態を示す。
S′2は、昇降部材が下降し、熱収縮チューブ5で覆われた保持部材が塗布槽201aの塗布液に浸積された状態を示す。
S′3は、更に昇降部材が下降し、現像ロール用基体の他の一方の端部まで塗布槽201aの塗布液に浸積された状態を示す。この状態で塗布槽201aの中に所定の時間、静止状態でとどまっている。
S′4は、塗布槽201aの中に所定の時間、浸漬した後、昇降部材が上昇し現像ロール用基体が引き上げられる。この時、熱収縮チューブ5で覆われた保持部材の部分が塗布液の液面に達した時点で引き上げ速度を、現像ロール用基体の塗布面の引き上げ速度に対して、0.1〜0.5倍にすることが好ましい。引き上げ速度を遅くすることで熱収縮チューブ5の上に塗布される塗布液の量を減らすことが出来、最後に熱収縮チューブ5を取り除く時の作業が容易になる。
S′5は、更に昇降部材が上昇し、熱収縮チューブ5で覆われた保持部材の部分が塗布液の液面から完全に離れ、S′1に示される最初の位置に戻った状態を示す。この時点で、現像ロール用基体4の表面と熱収縮チューブ5の表面とに溶剤を含んだ塗膜形成用塗膜7が形成された状態となっている。この後、乾燥工程(不図示)及び加熱処理工程(不図示)で、塗膜形成用塗膜の中の溶剤を除去することで塗膜を形成する。この後、S′1〜S′5を繰り返し行うことで必要に応じて複数の層を積層した後、熱収縮チューブ5と第2保持部材401bの端面401b1(図4を参照)の熱収縮チューブ5で覆われていない部分に形成された塗膜を除去することで図1に示す層構成を有する現像用ロールの製造が可能となっている。S′1〜S′5を繰り返し行う際、乾燥工程(不図示)及び加熱処理工程(不図示)で処理されても、保持部材の部分が熱収縮チューブで覆われているため、保持部材の加熱に伴う膨張、浸漬処理による収縮が返されても保持部材からの熱収縮チューブの離脱、位置ズレが生じない非塗布形成領域への安定した非塗布が可能となった。
【0047】
図2〜図6に示される塗布方法は電子写真、複写機などの画像形成装置に用いる現像、帯電、転写、定着、加圧、クリーニング、除電等に用いる両端に保持部を有する導電性ローラの製造にも勿論適用が可能である。
【0048】
図2〜図6に示される様に、被塗布体の非塗膜形成領域を熱収縮チューブで覆い、塗布方法により被塗布体の非塗膜形成領域への塗布を防止する方法で次の効果が挙げられる。
1)被塗布体の表面に複数の層を積層するに際し、熱処理工程で繰り返し処理されても被塗布体の非塗膜形成領域への塗布がなくなりからの熱収縮チューブの離脱、位置ズレが生じないため非塗膜形成領域への塗布がなくなり製品品質が安定した。
2)非塗膜形成領域への塗布がなくなることで、従来の除去作業がなくなり、作業効率の向上及び生産効率の向上が可能となった。
3)電子写真、複写機などの画像形成装置に用いる現像、帯電、転写、定着、加圧、クリーニング、除電等に用いる両端に保持部を有する導電性ローラの製造に適用することで、両端の保持部への塗布がなくなり製品品質が安定した。
4)非塗膜形成領域を覆う部材に対する煩雑な加工がなくなり、又、非塗膜形成領域への装着が容易で且つ安定し、作業効率の向上が可能となった。
【0049】
次に、本発明に係わる導電性ロールの内、現像ロールを構成している材料に付き説明する。
【0050】
(現像ロール用基体である円筒状又は円柱状基体)
現像ロール用基体である円筒状又は円柱状基体は、現像ロールの表面に蓄積される電荷をリークさせる部材も兼ねるため、導電性の金属で構成されることが好ましい。代表的なものとして、直径1.0〜30mmのステンレス鋼(例えばSUS304)、鉄、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、ニッケル合金等の導電性金属があり、又金属の粉体物やカーボンブラック等の導電性材料を樹脂中に充填させた導電性樹脂で構成されるものでもよい。
【0051】
(弾性層)
弾性層としては一般的にシリコーンゴムが使用されており、例えば、オルガノポリシロキサンに無機充填剤や、過酸化ベンゾイルなどの硬化剤を添加してよく混練、成形後加熱して加硫し硬化させたものが挙げられる。例えば、ジメチルポリシロキサンとメチルビニルシロキサンからなるメチルビニルポリシロキサンを有機過酸化物により架橋させて得ることが出来る。架橋の度合いによりその弾性率は異なるが、JIS A 硬度が10〜60°程度の弾性体であることが好ましい。
【0052】
又、この弾性層は抵抗を調整し、低抵抗化したものが使用される。低抵抗化するためには、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンなどの低抵抗成分を含有させることが好ましい。この場合、これらの材料の抵抗としては1×10-4〜1×104Ω・cmの体積固有抵抗を有する材料を使用することが好ましい。特に好ましいものとして、グラファイト、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどを挙げることが出来る。又、添加量は特に限定されるものではないが、弾性層を構成するシリコーンゴム100質量部に対して10〜100質量部が好ましい。
【0053】
(樹脂層)
樹脂層を構成する樹脂としては架橋性の樹脂が好ましい。架橋性の樹脂とは、熱や触媒、空気、湿気、電子線等により自己架橋する樹脂、或いは架橋剤や他の架橋性の樹脂との反応により架橋する樹脂を言う。例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノ樹脂、尿素樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられる。又、樹脂−シリカハイブリッド体等が挙げられる。樹脂層中には、必要に応じて、導電剤、非導電性フィラー、粗さ粒子(無機粒子、有機粒子)、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分の樹脂材料に適宜配合することが出来る。
【0054】
導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることが出来る。これらの内、カーボンブラックは、比較的容易に入手出来、又、主成分の樹脂材料の種類によらず、良好な帯電性が得られるため、好適に利用出来る。又導電性を付与する手段として、導電剤に代えて、或いは、導電剤とともに、導電性高分子化合物を添加する手法も利用出来る。例えば、導電性高分子化合物としては、ホストポリマーとして、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2、6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールaカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(n−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)などを使用し、これらにドーパントして、asf5、i2、br2、so3、na、k、clo4、fecl3、f、cl、br、i、kr等の各イオン、li、tcnq(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)等をドープしたものが、従来から用いられている。
【0055】
非導電性フィラーとしては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることが出来る。
【0056】
粗さ粒子としての無機粒子としては、上記導電剤、非導電性フィラーに使用した各種無機粒子の使用が可能である。粗さ粒子としての有機粒子としては次の樹脂粒子の使用が可能である。例えば、SBR、BR、NBR、CR、EVA、EP、ACR、EPDM、シリコーンゴム等からなるゴム粒子、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマー粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコ−ン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂等からなる樹脂粒子等を挙げることが出来る。
【0057】
架橋剤としては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリアルデヒド化合物、ポリアミン化合物、ポリエポキシ化合物などが挙げられる。又、触媒としては、過酸化物などのラジカル触媒、塩基触媒、酸触媒などが挙げられる。
【0058】
(表面層等)
表面側に用いられる樹脂としては、樹脂層に使用した樹脂を使用することが可能であり、これらの中でJIS A 硬度が60〜90°、100%モジュラスが5×106〜30×106Paのものが好ましい。
【0059】
(塗布液調製用の溶媒)
塗布液の調製に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、イソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、水及びこれらの混合物などが挙げられる。必要に応じ、レベリング剤として高沸点溶媒やシリコーン化合物などを混合してもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
実施例1
(現像ロール用基体である円筒状基体の準備)
図1に示される現像ロール用の基体として、両端に直径9mmの第1保持部材と直径7mmの第2保持部材とから構成された保持部材が設けられた、直径16mm、肉厚1.5mm、長さ240mmのステンレス鋼(SUS304)製の円筒状基体を準備した。
【0062】
(熱収縮チューブの準備)
住友電工ファインポリマー(株)製の熱収縮チューブ(幅8mm(外径換算16mm)、材質を軟質ポリオレフィン、厚さ100μm、収縮率50%)を準備した。
【0063】
(円筒状基体の保持部材への熱収縮チューブの装着)
準備した円筒状基体の片方の保持部材へ図4(a)に示す状態になるように熱収縮チューブを装着する。その後、図5に示す装着装置により加熱処理を行い、非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態(図4(b)に示す状態)の円筒状基体を得た。加熱処理は循環式熱風乾燥器を使用し、加熱温度120℃で、20分間行った。
【0064】
(現像ロールの作製)
準備した非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態の円筒状基体を、図3に示す浸漬塗布装置を使用し、円筒状基体の表面に以下に示す条件で順次、第1樹脂層と、第2樹脂層と、表面層(図1(b)に示す層構成)とを形成した後、保持部材を覆っている熱収縮チューブを取り除き現像ロールを作製し試料No.101とした。使用した塗布槽は、塗布槽の開口部の直径60mm、底部の直径30mm、高さ400mmとした。
【0065】
第1樹脂層形成条件
第1樹脂層形成用塗布液の組成
プライマーNo.4(信越化学工業) 100質量部
粘度2mPa・s(CBC(株)製ラボ用高精度粘度計VM−200T3で23℃で測定した。)尚、塗布槽の塗布液の平均流速は、5mm/secとした。平均流速は塗布槽の中央部の5箇所を、超音波式流速計で測定し、平均値とした値を示す。塗布液の温度は23℃で準備した円筒状基体を所定の高さまで浸漬し、10sec間停止させた。この後、塗布槽からの引き上げ速度は、保持部材取り付け部までを7mm/secとし、保持部材取り付け部は1mm/secとした。塗布後は、120℃で10分間乾燥を行い第1樹脂層を形成した。
【0066】
第2樹脂層形成条件
第1樹脂層形成用塗布液の組成
ポリウレタン樹脂 100質量部
カーボンブラック(ファーネスブラック) 30質量部
架橋アクリル樹脂(粗さ粒子) 20質量部
MEK 400質量部
総固形分濃度は23質量%とした。
【0067】
粘度100mPa・s(CBC(株)製ラボ用高精度粘度計VM−200T3で23℃で測定した。)尚、塗布槽の塗布液の平均流速は、15mm/secとした。平均流速は塗布槽の中央部の5箇所を、超音波式流速計で測定し、平均値とした値を示す。塗布液の温度は23℃で準備した円筒状基体を所定の高さまで浸漬し、10sec間停止させた。この後、塗布槽からの引き上げ速度は、保持部材取り付け部までを7mm/secとし、保持部材取り付け部は1mm/secとした。塗布後は、140℃で30分間乾燥を行い第2樹脂層を形成した。
【0068】
表面層形成条件
表面層形成用塗布液の組成
熱可塑性ポリウレタン樹脂 100質量部
カーボンブラック(ファーネスブラック) 30質量部
THF 1000質量部
総固形分濃度は11.5質量%とした。
【0069】
粘度70mPa・s(CBC(株)製ラボ用高精度粘度計VM−200T3で23℃で非測定した。)
尚、塗布槽の塗布液の平均流速は、5mm/secとした。平均流速は塗布槽の中央部の5箇所を、超音波式流速計で測定し、平均値とした値を示す。塗布液の温度は23℃で準備した円筒状基体を所定の高さまで浸漬し、10sec間停止させた。この後、塗布槽からの引き上げ速度は、保持部材取り付け部までを6mm/secとし、保持部材取り付け部は1mm/分とした。塗布後は、140℃で60分間乾燥を行い表面層を形成した。
【0070】
(比較現像ロールの作製)
円筒状基体の保持部材を覆う部材を以下に示す部材に変えた他は試料No.101と同じ条件で試料No.101と同じ層構成を有する現像ロールを作製し比較試料No.102とした。
【0071】
保持部材を覆う部材の準備
チューブを2つ折りにした状態で適当な長さを巻物として準備し、装着側を専用の送り出し装置にて所定の長さ送り出す。
【0072】
保持部材への装着
つぶれている自由端を専用の開口装置にて所定の開口径に空ける。その後、上端部を把持した状態でチューブの所定の位置まで下端部を挿入する。この作業は、立てた状態でも横にした状態でも可能である。その後、帯状の予備加熱手段で所定の部分を予備加熱し、ほぼ抜けない径まで収縮したところで予備加熱手段より取り出して、覆う部分より1〜10mm長めの長さでチューブを切り取る。尚、予備加熱温度は、決められた収縮温度より、10〜50℃、好ましくは15〜30℃低めの温度がよい。その後、決められた収縮温度に加熱し、決められた時間保持することによって希望の収縮率を得た。
【0073】
保持部材の汚れ観察方法
汚れ部位を塗布で用いた溶媒中に10分間漬けて、溶媒の汚れ具合を透過率にて評価した。透過率の測定には、日立製分光光度計 U−3500を用い、評価波長780nmにて全く汚れていない溶媒の透過率を100%Tとして相対値にて評価した。
【0074】
保持部材の汚れ評価ランク
◎:透過率 95%T以上
○:透過率 90%T以上、95%T未満
△:透過率 80%T以上、〜90%T未満
×:透過率 80%T未満
細線再現性の評価方法
評価装置として、市販のカラーレーザープリンタ「Magicolor 2300DL2300DL(コニカミノルタビジネステクノロジー(株)製)」を用い、作製した現像ロールNo.201〜207を現像装置に装填して、常温低湿環境(20℃、10%RH)にて画素率20%(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色5%のフルカラーモード)でA4サイズにて3000枚の連続プリントを行い、初期と3000枚プリント後に画素率が10%のオリジナル画像(細線画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるA4サイズのオリジナル画像)をプリントして10倍のルーペを用いて細線部を拡大し、カスレの有無を目視で評価することにより、解像度の評価を行った。
【0075】
細線再現性の評価ランク
◎:殆どカスレなし
○:エッジに僅かにカスレあり(ルーペを用いない場合、カスレは認識出来ない)
△:1/4未満のカスレ
×:1/4以上のカスレ
カブリ濃度
細線再現性の評価に使用したオリジナル画像のベタ白画像部をマクベス反射濃度計「RD−918」で測定し、転写紙の反射濃度を0として相対反射濃度で評価した。
【0076】
カブリ濃度の評価ランク
◎:0.00以上、0.1未満
○:0.1以上、0.2未満
△:0.2以上、0.3未満
×:0.3以上
【0077】
【表1】

【0078】
尚、試料No.102は第2樹脂層を形成するまでは保持部材の被覆部材は装着されていたが、表面層形成用塗布液を塗布する時に離脱してしまった。本発明の有効性が確認された。
【0079】
実施例2
(現像ロール用基体である円筒状基体の準備)
実施例1と同じ円筒状基体を準備した。
【0080】
(熱収縮チューブの準備)
表2に示す様に厚さを変えた熱収縮チューブを準備しNo.2−a〜2−gとした。尚、材質は軟質ポリオレフィン(スミチューブ)を使用した。熱収縮チューブの直径は実施例1に使用した熱収縮チューブの直径と同じにした。
【0081】
【表2】

【0082】
(保持部材への熱収縮チューブを装着した円筒状基体の準備)
準備した円筒状基体の片方の保持部材へ図4(a)に示す状態になるように準備した熱収縮チューブNo.2−a〜2−gを装着する。その後、図5に示す装着装置により表3に示す条件で加熱処理を行い、非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態(図4(b)に示す状態)の円筒状基体を作製しNo.2−1〜2−7とした。加熱源としては循環式熱風乾燥器を使用した。
【0083】
【表3】

【0084】
(現像ロールの作製)
準備した非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態の円筒状基体No.2−1〜2−7を、図3に示す浸漬塗布装置を使用し、円筒状基体の表面に実施例1で作製した試料No.101と同じ条件で第1樹脂層と、第2樹脂層と、表面層(図1(b)に示す層構成)とを形成した後、保持部材を覆っている熱収縮チューブを取り除き現像ロールを作製し試料No.201〜207とした。
【0085】
評価
作製した各試料No.201〜207に付き、保持部材の汚れ、細線再現性、カブリ濃度、を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
試料No.201は、薄すぎて塗布液の液圧に耐えられず、隙間から塗布液が浸入し保持部材の一部に実用的に問題とならない程度の汚れが発生した。試料No.207は厚すぎて基体と保持部材との段差の形状にならって収縮が十分に行われない箇所が発生し、塗布液が浸入し保持部材の一部に実用的に問題とならない程度の汚れが発生した。本発明の有効性が確認された。
【0088】
実施例3
(現像ロール用基体である円筒状基体の準備)
実施例1と同じ円筒状基体を準備した。
【0089】
(熱収縮チューブの準備)
表5に示す様に収縮率を変えた熱収縮チューブを準備しNo.3−a〜3−fとした。熱収縮チューブの直径は実施例1に使用した熱収縮チューブの直径と同じにした。
【0090】
【表5】

【0091】
(保持部材への熱収縮チューブを装着した円筒状基体の準備)
準備した円筒状基体の片方の保持部材へ図4(a)に示す状態になるように準備した熱収縮チューブNo.3−a〜3−fを装着する。その後、図5に示す装着装置により表6に示す条件で加熱処理を行い、非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態(図4(b)に示す状態)の円筒状基体を作製しNo.3−1〜3−6とした。加熱源としては循環式熱風乾燥器を使用した。
【0092】
【表6】

【0093】
(現像ロールの作製)
準備した非塗膜形成領域である保持部材が熱収縮チューブで覆われた状態の円筒状基体No.3−1〜3−6を、図3に示す浸漬塗布装置を使用し、円筒状基体の表面に実施例1で作製した試料No.101と同じ条件で第1樹脂層と、第2樹脂層と、表面層(図1(b)に示す層構成)とを形成した後、保持部材を覆っている熱収縮チューブを取り除き現像ロールを作製し試料No.301〜306とした。
【0094】
評価
作製した各試料No.301〜306に付き、保持部材の汚れ、細線再現性、カブリ濃度を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
【0095】
【表7】

【0096】
試料No.301は収縮率が小さすぎるため、基体と保持部材との段差の形状にならって収縮が十分に行われない箇所が発生し、塗布液が浸入し保持部材の一部に実用的に問題とならない程度の汚れが発生した。試料No.306は収縮率が大きすぎるため、凹凸部分が多数発生し、隙間から塗布液が浸入し保持部材の一部に実用的に問題とならない程度の汚れが発生した。本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】現像ロールの概略図である。
【図2】図1(a)に示される他の構成の現像ロールの概略断面図である。
【図3】浸漬塗布装置の一例を示す模式図である。
【図4】現像ロール用基体の保持部材を熱収縮チューブで覆った状態を示す拡大概略断面図である。
【図5】図4に示す現像ロール用基体の一方の端部を熱収縮チューブで覆う熱収縮チューブの装着装置の概略図である。
【図6】図4に示す現像ロール用基体の一方の端部を熱収縮チューブで覆う熱収縮チューブの装着装置の概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 現像ロール
101 本体
101a、102a 円筒状基体
101a1 第1樹脂層
101a2 第2樹脂層
101a3、102a3 表面層
101c、401c 保持部材
101c1、401a 第1保持部材
101c2、401b 第2保持部材
102a1 弾性層
102a2 樹脂層(乾燥塗膜)
2 浸漬塗布装置
201a 塗布槽
3 塗布液
4 現像ロール用基体
5 熱収縮チューブ
6 装着装置
601 モータ
602 取り付け部材
605 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に保持部を有する被塗布体の表面に少なくとも1層の塗膜層形成用の塗布液を塗布し、前記被塗布体の両端に前記保持部である非塗膜形成領域を形成する塗布方法において、
前記被塗布体の少なくとも一方の非塗膜形成領域を熱収縮チューブで覆った状態で、前記被塗布体の表面に前記塗布液を塗布した後、前記熱収縮チューブを除去することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記熱収縮チューブの径方向の収縮率が20%〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記熱収縮チューブの加工前の厚さが20μm〜500μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記被塗布体が導電性ローラの基体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
両端に保持部を有する被塗布体の表面に塗布方法により塗膜層形成用の塗布液を塗布し、前記被塗布体の両端に非塗膜形成領域を形成した導電性ローラの製造方法において、
前記塗布方法が請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布方法であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−66548(P2009−66548A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239019(P2007−239019)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】