説明

塗布装置のインク置換方法および塗布装置

【課題】インクジェット塗布装置のインクを置換する際に、配管内やインクジェットヘッド内に残留しているインクを洗浄することが必要であるが、溶解度の高い洗浄液を用いると、残留インクとの間でソルベントショックが生じ、却って凝集物が残ったり、洗浄後の洗浄液で次の新たなインクが希釈され、塗布ムラの原因となる。
【解決手段】使用したインクに用いた溶剤のなかで主溶剤単独もしくは主溶剤を含むその他の構成溶剤の混合溶剤で、配管内のインクを押し出し、その後洗浄液で洗浄し、加圧エアで洗浄液を揮発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドと前記インクジェットヘッドにインクを供給するメインタンクとを結ぶインク供給系流路(以後、インク流路)におけるインクの置換方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を採用した印字或いは塗布装置は、業務用或いは民生用の小型の印字装置として発展し、家庭内や業務用の印字装置としては勿論、工業用の捺染工程への応用や、大型の屋外広告用の媒体への印字装置として幅広く応用されている。そうした中、特に最近では液晶テレビなどの大型ディスプレイ機器のキーデバイスとしてのカラーフィルターの製造方法或いは装置の一つとして、インクジェット方式の塗布装置が注目されつつある。
【0003】
こうした分野でも、特に大面積を一度に塗布する必要のある業務用の塗布装置に求められる仕様には、インクジェット方式による塗布装置の細密な描写性に加え、応用機器としての液晶テレビなど、フラットパネルディスプレイの熾烈な競争に資する価格要求に対応する製造コストへの寄与が可能な高速性・安定性・信頼性が挙げられている。
【0004】
こうした要求に応え得る塗布装置として、既にカラーフィルタの塗布装置としてインクジェット方式の塗布装置が導入され始めており、市場の要求からは当然一度に大きな塗布面積を塗布する塗布装置が求められている。
【0005】
インクジェット方式の塗布装置の課題は、こうした塗布面積の大型化や、低コスト化を可能にする高速の塗布、或いは装置の高い耐久性に加え、インク吐出の安定した連続動作、つまりインクジェットヘッドからのインク液滴の適量の吐出について高い信頼性、さらにインク吐出の欠落等によるメンテナンスなどの機械停止頻度の極限までの低減といった生産性の向上、つまりインクジェット方式の塗布装置としての連続運転性能が、大きな課題とされている。
【0006】
最近の情報端末の画像表示技術の進展は目覚ましく、カラーフィルターにおいても市場からより高品位の製品が期待されており、このような状況の中で、インクジェット方式の塗布装置に用いるインクも、コントラストや色度などインクへの要求仕様が厳しくなってきている。このような要求に応えるため、塗布装置においては新しいインクの開発が行なわれる度に、或いはカラーフィルターの仕様に対応したインクの品種の切り替えの度に、塗布装置のインクを入れ替える必要があり、インクの置換作業が行なわれる。
【0007】
インクを供給するメインタンクとインクジェットヘッド結ぶインク流路を新しいインクで置換する際に、インク流路に新しいインクを流し続けても、継手やバルブ等の液だまり部(デッドスペース)が存在するため、流路を完全に置換することは時間的な制限もあり困難で、またインクの置換量も増えてコスト増となってしまう。また、長い期間に配管系にインクを満たしていると、配管内に気泡の混入や残留ガスによる気泡の発生などで気液界面が生じ、その部分で管内壁にインクが凝集または固化付着する場合がある。そのため、インクの入れ替えの場合には、そのようなインクの付着物に対する溶解性の強い洗浄液で、インク流路を洗浄するのが一般的である。
【0008】
特許文献1では、洗浄後の残留成分には、高粘度の物質や常温で固体物質、菌の繁殖に由来する物質が多く含まれており、これらは水や低級アルコール等の低粘度の極性溶媒に溶解することを見出し、洗浄液とする発明が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、インクジェットヘッド内の洗浄装置として、洗浄液にエアーを導入しながら強制的に通液させ、洗浄液の通液後エアーを強制的に通気させる手段を有する洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−152499号公報
【特許文献2】特開2005−58946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
インクの溶剤よりも比較的溶解性の強い洗浄液を流す場合、インクと洗浄液の境界面では急激な濃度変化が起こり、インクに含まれる顔料をインク内に分散させる界面活性剤の大半が洗浄液に溶け、顔料が凝集するなど、一種のソルベントショック現象が発生する危険性がある。この凝集物はインクジェットヘッド内もしくは配管内の壁面やデッドスペースに付着し、次のインク通液時に浮遊し、ノズルの目詰まりに発展するという問題があった。
【0012】
また、洗浄液での洗浄後に新しいインクに置換する際、流路のデッドスペースに洗浄液が残り、新しいインクの濃度が低下するという問題があった。とりわけ、カラーフィルターなど画像表示機器に用いるインクは、たとえ微少な濃度変化でも、その影響で出来上がったカラーフィルターを組み込んだ画像表示機器には色ムラやスジが発生し、製品不良となってしまう。
【0013】
特許文献1で提案されている洗浄剤はインクの組成によっては、ソルベントショックを生じさせる危険性や、デッドスペースに溜まった洗浄液によるインクの希釈が生じる可能性が残る。また、特許文献2のように洗浄後に通気することによってデッドスペースに溜る洗浄剤は低減させることができるが、特許文献1同様、洗浄液の種類によっては、ソルベントショックによる凝集物の生成が生じる可能性が残る。
【0014】
このようにインクジェットヘッドを用いた塗布装置におけるインクの入れ替えは、洗浄液と残留インクによる凝集物の生成や、配管内に溜る洗浄剤による次のインクの希釈が生じないように行われなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、残留インクと洗浄液の間で生じるソルベントショックによって生成される凝集物が原因となるノズル詰まりや、洗浄液によるインクの希釈の問題を回避できるインク置換方法および塗布装置を提供する。
【0016】
より具体的には、本発明は、
インクジェット塗布装置のインク置換方法であって、
配管内に残留インクに用いられた溶剤を通液する工程と、
次いで、前記配管内に洗浄液を通液する工程と、
次いで、前記配管内にエアを通気させる工程とを経て、
前記配管内に新たなインクを通液させる工程からなるインク置換方法を提供する。
【0017】
また、本発明のインク置換方法は、
前記溶剤を通液する工程において、
前記溶剤は、前記残留インクの主溶剤であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の塗布装置は、上記インク置換方法を提供できる塗布装置であり、具体的には、
インクジェットヘッドを有する吐液部(10)と、
前記吐液部に連通する配管(11)と、
前記配管(11)に接続された第1のバルブ(51)と第2の三方バルブ(50)と、
前記第2の三方バルブ(50)に接続された第1のインクタンク(20)と、
前記第2の三方バルブ(50)に接続された配管(61)と、
前記配管(61)にバルブ(52)を介して接続され、前記第1のインクタンク(20)のインクの主溶剤を含む溶剤を充填する溶剤タンク(21)と、
前記配管(61)に第3の三方バルブ(53)を介して接続され、洗浄液を充填する洗浄液タンク(22)と、
加圧ユニット(15)と、
前記加圧ユニット(15)に接続された第4の三方バルブ(40)と、
前記第4の三方バルブ(40)に接続されたエア配管(13)と、
前記エア配管(13)と前記第1のインクタンク(20)を接続する第1のエアバルブ(41)と、
前記エア配管(13)と前記溶剤タンク(21)を接続する第2のエアバルブ(42)と、
前記エア配管(13)と前記洗浄液タンク(22)を接続する第3のエアバルブ(43)を有する塗布装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインク置換方法によれば、インクタンクからインクジェットノズルまでのインク流路において、第1の工程として、インクの主溶剤を導入して流路のインクを排出し、第2の工程として、流路の大部分がインクの主溶剤で満たされた状態で洗浄液を導入するので、インクと洗浄液が直接に接触や混合することがない。従って、ソルベントショックが発生することがない。
【0020】
次に第3の工程として、流路内の洗浄液を気体(大気)で押し出すことによって、洗浄液が完全に流路から押し出される。その後新しいインクを導入するので、新しいインクが洗浄液で希釈されないので、インクの濃度低下の問題がなくなり、旧インクから新インクへの置換を行っても、塗りムラが発生することはない。
【0021】
また、新しいインクは洗浄液で希釈されないので、旧インクから新インクへの置換には、無駄になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のインク置換方法を行う塗布装置の一工程を示す構成図である。
【図2】本発明のインク置換方法を行う塗布装置の一工程を示す構成図である。
【図3】本発明のインク置換方法を行う塗布装置の一工程を示す構成図である。
【図4】本発明のインク置換方法を行う塗布装置の一工程を示す構成図である。
【図5】本発明のインク置換方法を行う塗布装置の一工程を示す構成図である。
【図6】本発明のインク置換方法を実現する塗布装置の一例を示す構成図である。
【図7】本発明の塗布方法を用いなかった場合の洗浄前と洗浄後の塗布状態の違いを示したグラフである。
【図8】本発明の塗布方法を用いた場合の洗浄前と洗浄後の塗布状態を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下において、装置の具体例として、カラーフィルタ製造装置の吐液ユニットを例に挙げて説明する。
【0024】
(装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る装置としてのカラーフィルタ製造装置1の吐液ユニットのブロック図を示す。吐液ユニットは、インクジェットヘッドを含む吐液部10、吐液部10にインクを配液する配管11(以下「吐液部配管ともいう。)、インクタンク20、配管とインクタンクを繋ぐバルブ12、インクタンク20に入ったインク25、インクタンク20にエアを供給するエア配管13、三方バルブ14、加圧ユニット15を含む。
【0025】
また、溶剤タンク21に入った溶剤26、洗浄液タンク22に入った洗浄液27、インクタンク23に入ったインク28が並置されている。洗浄液タンク22には三方弁17が設置されている。
【0026】
吐出部10は、多数のノズルが形成されたインクジェットヘッドと吐出制御手段が、ステージ上を2次元的に移動可能に設置されている。塗布被対象物はステージ上に保持され、その上をインクジェットヘッドが移動しながら、インクを塗布する。ここで吐出制御手段は、配管11を通ってくるインクを所定のタイミングでノズルから吐出させる機能を有する。具体的には、サブタンク、圧力調整機構、およびインクジェットヘッド内に設けられたピエゾ素子などで構成される。
【0027】
加圧ユニット15は、エアポンプなどで構成され、三方バルブ14を介して配管13を通り、加圧エア33を送出する。配管13は、インク25が貯蔵されたタンク20に導入される。加圧エア33がインク25の液面を押すことで、インク25はバルブ12を介して配管11を通り吐出部10に送られる。
【0028】
三方バルブ14は、加圧ユニット15からの加圧エア33を配管13に送るパスと、配管13内を大気圧に解放するパスを有する。タンク20内のエアを大気圧にリークさせるためである。またバルブ12は、吐出部10へインクを送出したり、止めたりする。
【0029】
配管13には、先端に接続口30が設けられている。またタンク20にはエア導入口31が設けられており、接続口30と気密状態で接続することができる。
【0030】
溶剤タンク21には、溶剤が入れられている。溶剤タンク21には、インク25に用いられた溶剤の一部若しくは全部が入れられている。具体的には、インク25を構成する溶剤のうち、最も含有量が多い溶剤(以後「主溶剤」と呼ぶ。)が好ましい。または、インク25に含まれる溶剤のうち、主溶剤と他の溶剤の混合であってもよい。この場合は、インク中での含有比と同じにするのがより好ましい。また、インク25に含まれるすべての溶剤を、インク中での含有比と同じ比率で混合した溶剤であってもよい。
【0031】
タンク22には、洗浄液27が充填されている。タンク22にもエア導入口31が設けられている。また、配管11と接続するバルブ17は三方バルブになっている。後述するように、洗浄液を送った後、加圧エアだけを配管11に通気させるためである。
【0032】
タンク23には、タンク20から変更するインク28が充填されている。4つのタンクは、手動若しくは自動的に、配管11と配管13をそれぞれ、バルブとエア導入口31に接続を変更することができる。また、加圧ユニットや、各タンク内の圧力のモニタおよび調整、吐出部10でのインクの吐出等の制御は、図示していない制御部が行う。
【0033】
(工程1:主溶剤の導入)
次にインク25を塗布していた状態から、インク28へインクを切り替える方法についてさらに説明を行う。塗布装置1の液供給配管11やインクジェットヘッド内の流路に満たされているインクを異なるインクへ置換する際、まず初めに、加圧ユニット15を停止し、バルブ14によってインクタンク20内を大気圧にリークする。インクジェットヘッドはインク入れ替えのための所定の位置に移動しているのは言うまでもない。
【0034】
次に配管11を溶剤タンク21のバルブ16に接続し、配管13を溶剤タンク21のエア導入口31に接続する(図2)。その後、三方バルブ14を大気圧解放から加圧ユニットと配管13の接続パスに切り替える。そして、加圧ユニット15を始動させ、溶剤タンク21の溶剤を配管11から吐出部10に送出する。
【0035】
この時、配管11内と吐出部10にはインク25が残留している。しかし、配管11から供給される溶剤はインク25を構成している溶剤と同じ溶剤であるので、ソルベントショックが生じる危険性はない。しかも、インク25を構成している溶剤であるので、配管内やインクジェットヘッド内の壁面に付着した、洗浄しにくいインク成分をもよく溶かすことができる。
【0036】
配管11と吐出部10内が溶剤26によって十分に置換できたのち、弁16を閉める。また加圧ユニット15による加圧エア33の送出も停止し、さらに三方バルブ14によって溶剤タンク21内を大気圧にリークする。
【0037】
(工程2:洗浄液の導入)
次に配管11と配管13を洗浄タンク22のバルブ17とエア導入口31に接続し直す(図3)。そして、また同様に、三方バルブ14の大気側を閉じ、加圧ユニット15で加圧エア33を洗浄液タンク22に導入し、三方バルブ17を介して配管11に洗浄液27を送出する。洗浄液27は、溶解性の高い洗浄力のあるものを用いてよく、インク25のソルベントショックを注意する必要はない。インク25は、溶剤26によってすでに配管11や吐出部10から押しだされているからである。
【0038】
洗浄液27によって配管11と吐出部10を十分に洗浄した後、三方バルブ17を閉じ、三方バルブ14と配管33のパスを開く。これによって洗浄タンク22内は大気圧になる。
【0039】
(工程3:エアーの導入)
次に配管13の接続口30を三方バルブ17の解放端に接続し、配管13と配管11をつなげる(図4)。そして、三方バルブ14の加圧ユニット15と配管13のパスを開く。加圧エア33は、配管13から三方バルブ17を経由し、配管11内に導入される。この加圧エア33によって、配管11内と吐出部10内の洗浄液27は押し出され、次に通液するインクは洗浄液で薄まることなく配管11内と吐出部10内に供給される。カラーフィルターでは、わずかなインクの濃度の差が塗布ムラとして認識されてしまう問題はこれによって防止することができる。
【0040】
(工程4:インクの充填)
以上のように、配管11と吐出部10からは、通液されていたインク25が押し出され、内部は、インクの溶剤、洗浄液、加圧エアで通液および通気されることで、インク25が完全に除去された。そこで、新しいインク28の入ったインクタンク23に配管11および配管13を接続する。
【0041】
手順としては、配管11をバルブ18に接続し、配管13をインクタンク23のエア通気口31に接続する。(図5)そして、三方バルブ14の加圧ユニット15と配管13のパスを開き、インクタンク23内を加圧する。この加圧によってインク28がバルブ18を通過し、配管11を経て、吐出部10に供給される。
【0042】
図6には、本発明のインク置換方法を実施する塗布装置2を示す。基本的には図1のカラーフィルタ製造装置1と同じであるが、溶剤タンク21と洗浄液タンク22を吐液部10や加圧ユニット15と共に一体的に有している。インクタンクは第1のインクタンク20と第2のインクタンク23が並置される。インクタンクはここでは2つについて説明するが、1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。また、塗布装置2全体を制御する制御部100を有する。
【0043】
吐液部10には配管11でインク、溶剤、洗浄液、加圧エアが送られる。配管11の上流側には、第1の三方バルブ51があり、次に第2の三方バルブ50が配置される。第1の三方バルブ51は第2のインクタンク23と配管11および第2の三方バルブ50を連結し、切り替える。
【0044】
第2の三方バルブ50は第2の三方バルブと配管61(以下「洗浄用配管」ともいう。)とインクタンク20を連結し、切り替える。配管61はバルブ52を介して溶剤タンク21と連結され、三方バルブ53を介して洗浄液タンク22と連結されている。
【0045】
加圧ユニット15からは、三方バルブ40を介して配管13に加圧エアが送られる。配管13はバルブ41、42、43、44、53と連結されそれぞれ、第2のインクタンク23、第1のインクタンク20、溶剤タンク21、洗浄液タンク22に結合されている。なお、バルブ53は三方バルブであり、配管61と洗浄液タンク22と加圧エアの通る配管13を連結し切り替える。
【0046】
また、バルブ40、41、42、43、44、50、51、52.53、54は制御部100と電気的に結合されており、制御部100の指示により各バルブを開閉することで、連通するパスを切り替えることができる。すなわち、各バルブは電気的な制御が可能なバルブである。なお、全てのバルブが制御部100と電気的に接続されている点を点線矢印で表した。
【0047】
より具体的には、各バルブへの指示を「C」の後にバルブの番号を記載して表わした。例えば、バルブ40と41への指示は「C40」や「C41」である。また、制御部100から送信されるバルブの開閉指示を「Cxx」で表した。小文字の「xx」はバルブ番号を表わし、「Cxx」は、例えば、「C40」や「C41」といったバルブ40や41への指示の総称である。なお、それぞの指示には、バルブの開閉という2つの情報が含まれるものとする。また、三方バルブについては、どちらからどちらへのパスを連通させるかという情報も含まれるものとする。
【0048】
次に塗布装置2の動作について説明する。最初はバルブ40は閉じている状態であるとする。第1のインクタンクのインク25で塗布が行われる場合は、まずバルブ41は開状態にする(指示C41)。その他のエアバルブ(42、43、44)は閉状態にする(指示C42、C43、C44)。次にバルブ50はインクタンク20から第1のバルブ51のパスを開く(指示C50)。バルブ51は、配管11とバルブ50のバスを開く(指示C51)。
【0049】
この状態でバルブ40で、パスを配管13側に切り替えると(指示C40)、タンク20内の圧力が増加し、インク25が配管11を通って吐液部10に送られる。インクタンク23は、次の塗布のためのインク28を用意するタンクである。
【0050】
ここで、指示C41、42、43、44、50、51、40の一連の指示は、第1のインクタンクのインク25で塗布を行う場合のコマンドである。このようにコマンドは制御部100が塗布装置2に特定の動作をさせる場合に、各バルブを操作する際の指示の集合である。なお、コマンドはこの一連の指示の一部を指すものとしてもよい。
【0051】
次にこの塗布装置2がインクの置換を行う動作について説明する。最初に三方バルブ40を閉じて配管13に加圧エアが流入しないようにする(指示C40)。そして三方バルブ40の大気側と配管13のパスを開き(指示C40)、タンク20内を大気圧に戻す。これでタンク20からのインク25の流出は止まる。
【0052】
次に溶剤で配管11内のインクを押し出す。まず、バルブ41を閉じ(指示C41)、三方バルブ50で配管61とバルブ51のパスを開き(指示C50)、バルブ52を開く(指示52)。これで、タンク21と配管61、配管11が連通状態になる。そして、バルブ42を開き(指示C42)、次いで三方バルブ40で加圧ユニットと配管13のパスを開き(指示C40)、加圧ユニット15から加圧エアを送出する。
【0053】
タンク21内の圧力が上がるので、溶剤26が配管61、バルブ50、バルブ51、配管11の経路で吐液部10に流れ、配管11および吐液部10内のインクを押しだす。溶剤は、インク25の主溶剤を含むのでソルベントショックを起こすことなくインクを押しだすことができる。
【0054】
所定時間経過後に溶剤の押し出しを止める。すなわち、バルブ40で大気と配管13のパスを開く(指示C40)。これでタンク21内が大気圧になり、溶剤26の流出は止まる。バルブ52は、出来るだけ早く閉じて(指示C52)、溶剤が逆流してタンク26に戻らないようにする。バルブ42も閉じておくのが好ましい(指示C42)。
【0055】
以上のように指示C40、40、41、50、52、42、40、待機、40、52という制御部100の一連の指示および動作は、配管と溶剤タンクを連通させるコマンドである。
【0056】
次に洗浄液を通液して配管11および吐液部10を洗浄する。バルブ40で加圧ユニット15と配管13のパスを開き(指示C40)、さらにバルブ43を開く(指示C43)。洗浄液タンク22の内圧が上がるので、バルブ53でタンク22側と配管61のパスを開く(指示C53)。洗浄液27がバルブ53を通じて、配管61、バルブ50、バルブ51、配管11、吐液部10に通液され、洗浄する。洗浄後は、バルブ40の大気と配管13のパスを開き(指示C40)、洗浄タンク22内を大気圧に戻すことで停止する。
【0057】
ここでも、指示C40、43、53、待機、40という制御部100の一連の指示および動作は、配管と洗浄液タンクを連通させるコマンドである。
【0058】
最後に洗浄した配管や吐液部に加圧エアを通気させる。バルブ43を閉じ(指示C43)、三方バルブ53で配管13と配管61のパスを開く(指示C53)。そして、バルブ40の加圧ユニット15と配管13のパスを開く(指示C40)。加圧エアは、バルブ53から配管61を通り、バルブ50、51を経て配管11と吐液部10に送られる。この加圧エアーによって、配管11と吐液部10内の洗浄液が押し出される。加圧エアも所定時間通風させれば、バルブ40を閉じて加圧エアを止める(指示C40)。
【0059】
ここでも、指示C43、53、40、待機、40という制御部100の一連の指示および動作は、配管と気体供給源を連通させるコマンドである。
【0060】
次にインクを置換する。バルブ50を閉じ(指示C40)、バルブ51の配管60と配管11のパスを開く(指示C51)。バルブ43を閉じて(指示C43)、バルブ44を開く(指示C44)。するとインクタンク23の内圧が上昇するので、インク28がバルブ54を介して配管60を流れ、バルブ51から配管11および吐液部10に送られる。以上の手順でインクを置換することができる。
【0061】
ここでも、指示C40、51、43、44という制御部100の一連の指示および動作は、配管とインクタンクを連通させるコマンドである。
【実施例】
【0062】
前記の装置1を用いて置換工程による違いを試験検討した。試験方法としては、インクから洗浄液に置換した後、インクを導入した試験と、前記工程1〜4を行なった試験とを比較した。試験では装置1の複数ノズルで構成されたインクジェットヘッドを用いて画素にインクを塗布して画素の色度を計測した。この画素色度の違いについての試験結果を以下に述べる。
【0063】
図7、図8に画素の色度の測定値を示す。図7は、配管内にインクが残留した状態から直接洗浄液で洗浄して、次のインクに切り替えた場合の結果である。また、図8は、本発明の方法であり、配管内のインクを一旦溶剤で押し出した後、洗浄液で洗浄し、加圧エアを通気後、次のインクを通液した場合の結果である。
【0064】
図7、図8の縦軸は色度を表し、横軸は画素を表す。横軸の各画素は、それぞれ、インクジェットヘッドの各ノズルに対応している。
【0065】
図7を参照して、図7(a)は、洗浄前の状態であり、図7(b)は、洗浄液で洗浄後、再度同じインクを通液した場合の結果である。同じインクであるにも関わらず、1〜50画素目までの色度を比較すると、洗浄前(図7(a))は、およそ0.618から0.620の間の値であったのに対して、洗浄後(図7(b))は、およそ0.614から0.616の値になった。つまり、平均値のレベルとしては約4/1000低下した。また洗浄後(図7(b))では、70画素目以降は急激に色度が低下した。このような色度の変化は、スジとして観察され、明らかな塗布不良となった。
【0066】
図8を参照して、図8(a)は同じく洗浄前の状態であり、図8(b)は、本願の洗浄方法を行った後、再度同じインクを通液した場合の結果である。洗浄前(図8(a))も洗浄後(図8(b))も、ともに、色度は0.6140から0.616の間の値になった。また、色度が急激に大きく変化する部分もなかった。すなわち、洗浄前も洗浄後も塗布状態に変化がなく、また塗りムラの発生もなかった。このように、本発明による前記工程1〜工程4を実施することによって、ヘッド内またはヘッド間の各ノズルから吐出されるインクの濃度むらを解消することができた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、液晶表示装置に用いるカラーフィルタのインクジェットによる塗布に対して好適に適用することができるが、インクジェットヘッドを用いた塗布であれば、あらゆる分野での使用に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 カラーフィルタ製造装置
10 吐液部
11 配管
12 バルブ
13 エア配管
14 三方バルブ
15 加圧ユニット
16 バルブ
17 三方バルブ
18 バルブ
20 インクタンク
21 溶剤タンク
22 洗浄液タンク
23 インクタンク
25 インク
26 溶剤
27 洗浄液
28 インク
30 接続口
31 エア導入口
33 加圧エア
40 三方エアバルブ
41乃至44 エアバルブ
50,51、53 三方バルブ
52、54 バルブ
60、61 配管
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット塗布装置のインク置換方法であって、
配管内に残留インクに用いられた溶剤を通液する工程と、
次いで、前記配管内に洗浄液を通液する工程と、
次いで、前記配管内に気体を通気させる工程を経て
前記配管内に新たなインクを通液させる工程からなるインク置換方法。
【請求項2】
前記溶剤を通液する工程において、
前記溶剤は、前記残留インクの主溶剤である請求項1に記載されたインク置換方法。
【請求項3】
前記溶剤を通液する工程において、
前記溶剤は、前記残留インクで用いられたのと同じ組成および組成比を有する溶剤である請求項1に記載されたインク置換方法。
【請求項4】
前記気体はエアーである請求項1に記載されたインク置換方法。
【請求項5】
インクジェットヘッドを有する吐液部と、前記吐液部に連通する配管と、
前記配管に接続された流路切換変えバルブと、
前記流路切換バルブに接続された、
第1のインクタンクと
前記第1のインクタンクのインクに用いられる溶剤を充填した溶剤タンクと、
洗浄液を充填した洗浄液タンクと、
気体供給源と、
制御部とを有し、
前記制御部は、
前記配管と前記溶剤タンクを連通させるコマンドと、
前記配管と前記洗浄液タンクを連通させるコマンドと、
前記配管と前記気体供給源を連通させるコマンドとを有する
インクジェット塗布装置。
【請求項6】
前記気体はエアーである請求項5に記載されたインクジェット塗布装置。
【請求項7】
インクジェットヘッドを有する吐液部(10)と、
前記吐液部に連通する配管(11)と、
前記配管(11)に接続された第1の三方バルブ(51)と第2の三方バルブ(50)と、
前記第2の三方バルブ(50)に接続された第1のインクタンク(20)と、
前記第2の三方バルブ(50)に接続された配管(61)と、
前記配管(61)にバルブ(52)を介して接続され、前記第1のインクタンク(20)のインクの主溶剤を含む溶剤を充填する溶剤タンク(21)と、
前記配管(61)に第3の三方バルブ(53)を介して接続され、洗浄液を充填する洗浄液タンク(22)と、
加圧ユニット(15)と、
前記加圧ユニット(15)に接続された第4の三方バルブ(40)と、
前記第4の三方バルブ(40)に接続されたエア配管(13)と、
前記エア配管(13)と前記第1のインクタンク(20)を接続する第1のエアバルブ(41)と、
前記エア配管(13)と前記溶剤タンク(21)を接続する第2のエアバルブ(42)と、
前記エア配管(13)と前記洗浄液タンク(22)を接続する第3のエアバルブ(43)を有する塗布装置。
【請求項8】
前記第1の三方バルブ(51)に接続された配管(60)と、
前記配管(60)にバルブ(54)を介して接続された第2のインクタンク(23)と、
前記エア配管(13)と前記第2のインクタンク(23)を接続する第4のエアバルブ(44)を有する請求項7に記載された塗布装置。
【請求項9】
全てのバルブと三方バルブの開け閉め若しくはパスの切り替えを制御する制御部を有する請求項7または8のいずれかの請求項に記載された塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234290(P2010−234290A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85928(P2009−85928)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】