説明

塗布装置

【課題】基板上、又は、ステージと基板との間に異物が存在している場合に、ガード部材から基板が押圧されることにより基板が損傷するのを抑えることができ、さらに、異物の存在を誤検知するのを抑制する塗布装置を提供する。
【解決手段】ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、スリットノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布ユニットと、スリットノズルよりも塗布進行方向側に取付けられ、スリットノズルを保護するガード部と、ガード部が衝突対象物に接触したことを検知する検知部と、を備えており、ガード部は、衝突対象物を接触させる衝突部と、この衝突部を基板から離れる側に変位させる変形促進部とを有しており、衝突部に衝突対象物が接触した状態から、さらに塗布ユニットが塗布進行方向に移動すると、衝突部が基板から離れる側に変位し、検知部はガード部に衝突対象物が接触したことを検知する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス等からなる基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板という)が使用されている。この塗布基板は、レジスト液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。すなわち、塗布装置は、基板を載置するステージと、レジスト液を吐出する塗布ユニットとを有しており、塗布ユニットの口金部のスリットノズルからレジスト液を吐出させながら、基板と塗布ユニットとを相対的に移動させることにより、所定厚さのレジスト液膜が基板上に形成されるようになっている。
【0003】
この塗布装置の口金部は、非常に高価であるため、口金部のスリットノズルを保護するためにガード部材が取付けられている。具体的には、特許文献1に記載されているように、口金部のスリットノズルよりも塗布進行方向側には、板状のガード部材がスリットノズルの長手方向に沿って固定されている。そして、ガード部材には振動センサが設けられており、ガード部材に異物等の衝突対象物が衝突した場合には、その衝突時の振動により振動センサが反応し、塗布ユニットの走行が強制的に停止されるように構成されている。すなわち、基板上に異物が存在している場合には、その異物それ自体であり、ステージと基板との間に異物が存在する場合には基板の表面である衝突対象物をガード部材に衝突させることにより、直接衝突対象物がスリットノズルに衝突してスリットノズルが損傷するのを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−198460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、衝突対象物がガード部材に衝突すると基板が損傷を受ける場合があった。すなわち、ガード部材に異物が衝突すると、塗布ユニットの走行が停止される前にガード部材と基板との間に異物等が噛み込んでしまう場合がある。このような噛み込みが生じた場合には、基板が異物を介してガード部材に押圧されることにより、基板が割れてしまう場合があった。また、異物がステージと基板との間に存在している場合も同様に、基板がガード部材に直接押圧されることにより、基板が割れてしまう場合があった。このように基板が割れてしまった場合には、基板を洗浄して再利用できないという問題が生じるとともに、新たな生産を開始するにあたって割れた基板を完全に取り除かなければならないという問題が生じ、いずれにせよ、生産コストに影響するという問題があった。
【0006】
一方、このような問題を解消するために、ガード部材に取付けられている振動センサの感度を上げることにより、ガード部材から基板が押圧される前に塗布ユニットの走行を停止させることも考えられる。しかし、振動センサの感度を上げると、塗布ユニットが加速する時や減速する時に振動が発生するため、この振動を感知して衝突対象物が存在すると誤検知してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、基板上、又は、ステージと基板との間に異物が存在している場合に、ガード部材から基板が押圧されることにより基板が損傷するのを抑えることができ、さらに、異物の存在を誤検知するのを抑制できる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、スリットノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布ユニットと、前記スリットノズルよりも塗布進行方向側に取付けられ、スリットノズルを保護するガード部と、前記ガード部が衝突対象物に接触したことを検知する検知部と、を備えており、前記ガード部は、衝突対象物を接触させる衝突部と、この衝突部を基板から離れる側に変位させる変形促進部とを有しており、前記衝突部に衝突対象物が接触した状態から、さらに塗布ユニットが塗布進行方向に移動すると、前記衝突部が基板から離れる側に変位することにより、前記検知部はガード部に衝突対象物が接触したことを検知することを特徴としている。
【0009】
上記塗布装置によれば、ガード部に変形促進部を有しているため、ガード部の衝突部に衝突対象物が接触した状態から、さらに塗布ユニットが塗布進行方向に移動すると、衝突部が基板から離れる側に変位する。すなわち、ガード部が衝突対象物に接触すると、衝突部が基板から離れる側に変位することにより、基板がガード部から受ける押圧力が緩和される。したがって、変形促進部のない従来のガード部材に比べて基板がガード部から受ける押圧力が小さくなるため、基板が損傷するのを抑えることができる。
【0010】
また、検知部は、衝突部が基板から離れる側に変位したことによりガード部に衝突対象物が接触したことを検知するため、塗布ユニットの加速時及び減速時の振動により、衝突対象物を誤検知するという問題を解消することができる。
【0011】
なお、衝突対象物とは、基板上に異物が存在している場合には、その異物であり、ステージと基板との間に異物が存在する場合には異物により盛り上がった基板の表面をいう。
【0012】
また、前記ガード部は、前記衝突部に連結されるとともに、前記塗布ユニットに支持されるガード部本体を有しており、前記変形促進部は、前記衝突部と前記ガード部本体との間に形成されるとともに、変形促進部の肉厚が、前記衝突部及びガード部本体の肉厚よりも小さく形成されている構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、変形促進部の肉厚が衝突部及びガード部本体の肉厚よりも小さく形成されているため、衝突部及びガード部本体よりも変形促進部が変形しやすくなる。したがって、衝突部に衝突対象物が衝突したときに、ガード部本体が塗布ユニットに支持されているため、衝突部が基板から離れる側に変位しやすくなる。
【0014】
また、前記ガード部は、前記衝突部に連結されるとともに、前記塗布ユニットに支持されるガード部本体を有しており、前記変形促進部は、前記衝突部と前記ガード部本体との間に形成されるとともに、前記ステージと反対側に開口し、かつ、塗布進行方向と交差する方向に延びるスリットとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、変形促進部であるスリットがステージと反対側に開口し、塗布進行方向と交差する方向に延びるように形成されているため、衝突部に衝突対象物が衝突するとスリットが閉じるように変形する。これにより、衝突部が基板から離れる側に変位するのを簡単に構成することができる。
【0016】
また、前記検知部は、前記衝突部が基板から離れる側に変位すると、この衝突部に押圧されることにより、ガード部に衝突対象物が接触したことを検知する構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、ガード部の衝突部の変位により衝突対象物の存在を検知できるため、塗布ユニットの加速時及び減速時の振動により衝突対象物を誤検知する問題を解消することができる。
【0018】
具体的には、前記検知部は、前記衝突部に設けられたピエゾケーブルであり、前記衝突部が基板から離れる側に変位すると、ピエゾケーブルが衝突部と塗布ユニットとに挟圧されることにより、ガード部に衝突対象物が接触したことを検知する構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、検知部にピエゾケーブルを用いているため、衝突部の僅かな変位に対しても反応することができる。したがって、振動による誤検知の問題を解消できるとともに、衝突部に衝突対象物が衝突するとガード部が基板を押圧する前に停止させることができるため、基板が損傷する問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗布装置によれば、基板上、又は、ステージと基板との間に異物が存在している場合に、ガード部材から基板が押圧されることにより基板が損傷するのを抑えることができ、さらに、異物の存在を誤検知するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を示す斜視図である。
【図2】塗布ユニットの脚部付近を示す概略図である。
【図3】口金部に取付けられたガード部を示す図である。
【図4】ガード部が変形する状態を説明するための図であり、(a)は、塗布ユニットを塗布進行方向側に走行させて塗布動作を行なっている際、ガード部が衝突対象物に衝突する前の状態を示す図であり、(b)は、衝突対象物にガード部の衝突部が衝突した状態を示す図であり、(c)は、衝突対象物に衝突部が衝突した状態から、さらに塗布ユニットを塗布進行方向に移動させた状態を示す図である。
【図5】上記塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す斜視図であり、図2は、
塗布ユニットの脚部付近を示す図であり、図3は、口金部に取付けられたガード部を示す図である。
【0024】
図1〜図3に示すように、塗布装置は、基板10上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板10を載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0025】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0026】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板10を載置するものである。このステージ21には、基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板10が保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の表面に形成された複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板10をステージ21の表面に吸着させて保持できるようになっている。
【0027】
また、ステージ21には、基板10を昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピンを突出させた状態で基板10が搬入されるとリフトピンの先端部分が基板10に当接して基板10を保持することができる。そして、その状態からリフトピンを下降させてピン孔に収容させることにより、基板10をステージ21の表面に載置することができるようになっている。
【0028】
また、塗布ユニット30は、基板10上に塗布液を吐出して塗布膜を形成するものである。この塗布ユニット30は、図1,図2に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる口金部34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータが取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0029】
また、塗布ユニット30の脚部31には、図2に示すように、塗布液を塗布する口金部34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と口金部34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、口金部34が、ステージ21に保持された基板10に対して接離可能に支持されている。
【0030】
口金部34は、塗布液を吐出して基板10上に塗布膜を形成するものである。この口金部34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向とほぼ直交するように設けられている。この口金部34には、長手方向に延びるスリットノズル34aが形成されており、口金部34に供給された塗布液がスリットノズル34aから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル34aの長手方向に亘って基板10上に一定厚さの塗布膜が形成されるようになっている。なお、塗布液を塗布するために、スリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30を移動させる方向を本実施形態では、塗布進行方向と呼ぶことにする。
【0031】
また、口金部34には、ガード部40が取付けられている。具体的には、図3に示すように、ガード部40は、スリットノズル34aよりも塗布進行側に取付けられており、このガード部40により、スリットノズル34aが保護されるようになっている。すなわち、口金部34よりも塗布進行方向側に基板10上に異物が存在している場合や、ステージ21と基板10との間に異物が存在しており、基板10表面が凸状に盛り上がっている場合に、そのまま塗布ユニット30を塗布進行側に移動させると、これら異物や盛り上がった基板10表面にスリットノズル34aが衝突するが、これを前もってガード部40に衝突させることにより、スリットノズル34aを保護することができる。なお、本実施形態では、前述の異物や盛り上がった基板10表面を衝突対象物Mと呼ぶことにする。
【0032】
ガード部40は、一方向に延びる略平板状部材であり、スリットノズル34aの長手方向に沿って取付けられている。このガード部40は、衝突対象物Mを衝突させるための衝突部41と、口金部34に支持されるガード部本体42とを有しており、衝突部41とガード部本体42とが変形促進部43によって連結されている。そして、図3に示すように、ガード部本体42が口金部34にボルト45で締結されることにより、ガード部40が口金部34に固定されている。
【0033】
衝突部41は、平板状に形成されており、塗布進行方向側には基板10側に突出する突出部41aを有している。具体的には、突出部41aがスリットノズル34aの長手方向に沿って連続的して形成されており、ガード部40が取付けられた状態では、突出部41aがスリットノズル34aよりも基板10側に突出するように形成されている。これにより、衝突対象物Mが存在している場合には、衝突対象物Mが突出部41aに接触し、衝突対象物Mがガード部40を通過してスリットノズル34aに衝突することを防止できるようになっている。
【0034】
変形促進部43は、容易に衝突部41を変位させるものである。具体的には、衝突部41とガード部本体42との間には、スリット43aが形成されており、これにより衝突部41に衝突対象物Mが接触した時に、衝突部41を容易に変位させられるようになっている。すなわち、変形促進部43は、スリット43aが形成されていることにより、変形促進部43の肉厚が、衝突部41及びガード部本体42の肉厚に比べて小さくなるように形成されている。これにより、衝突部41に作用する力が小さい場合でも、衝突部41がガード部本体42に対して変位しやすくなる。また、スリット43aは、口金部34と対向する面(ステージ21と反対側の面)に開口するように形成され、かつ、突出部41aに沿って形成されている。これにより、衝突部41に僅かな力が作用すると、衝突部41は、スリット43aを閉じる方向、すなわち、基板から離れる側に変位するように変位することができる。すなわち、図4(a)〜図4(c)に示すように、塗布進行方向前方に衝突対象物Mが存在している状態(図4(a))で、塗布ユニット30を塗布進行方向に走行させると、衝突部41に衝突対象物Mが衝突する(図4(b))。そして、さらに塗布ユニット30を塗布進行方向に走行させようとすると、衝突対象物Mが突出部41aと基板10との間に入り込もうとするため、接触部41が衝突対象物Mから力を受ける。この力により、図4(c)に示すように、衝突部41が変形促進部43の変形により基板10から離れるように変位する。なお、本実施形態のガード部40は、弾性材料で形成されており、衝突対象物Mが取り除かれたり、口金部34を上昇させることにより、衝突部41から衝突対象物Mが離れると、変形促進部43が元の形状に復元し、衝突部41が元の位置に復帰するようになっている。
【0035】
また、ガード部40には、検知部50が取付けられている。この検知部50は、衝突部41に衝突対象物Mが接触したことを検知するものであり、本実施形態では、ピエゾケーブル51が用いられている。具体的には、ガード部40の衝突部41には、口金部34と対向する面に、所定深さのセンサ取付溝41bがスリットノズル34aが延びる方向に沿って形成されており、このセンサ取付溝41bに、ピエゾケーブル51が横たわった状態で埋設されている。そして、センサ取付溝41bに埋設された状態では、ピエゾケーブル51の一部が、衝突部41の口金部34と対向する対向面41cよりも口金部34側に突出した状態で埋設されている。また、このピエゾケーブル51は、後述の制御装置90と連結されており、制御装置90は、ピエゾケーブル51が押圧力を受けることにより発生する電圧を出力信号として受信するようになっている。これにより、衝突部41が衝突対象物Mと接触することにより、衝突部41が基板10から離れる側に変位すると、図4(c)に示すように、ピエゾケーブル51が口金部34と衝突部41とによって挟圧される。そして、制御装置90が、挟圧されたピエゾケーブル51からの出力信号を受けることにより、衝突部41が衝突対象物Mと接触したことを検知できるようになっている。したがって、ガード部40の衝突部41は、衝突対象物Mが接触することによる小さな力を受けた場合であっても、基板10から離れる側に変位するため、衝突対象物Mを確実に検知できると共に、基板10にはガード部40による押圧力が緩和されるため、基板10が損傷するのを防止することができる。また、衝突部41が基板10から離れる側に変位しない場合には、衝突対象物Mを検知することはないため、塗布ユニット30の加速時や減速時の誤検知を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態の塗布装置では、制御装置90が設けられており、予め記憶されたプログラムに従って一連の塗布動作を実行すべく、各種ユニットの駆動装置等を駆動制御するとともに、この塗布動作において必要な各種演算及び判定が行われるようになっている。具体的には、検知部50であるピエゾケーブル51からの信号を受信すると、ガード部40の衝突部41に衝突対象物Mが接触したと判定する。そして、衝突対象物Mがガード部40に衝突した場合には、異物回避動作が行なわれる。例えば、本実施形態では、塗布ユニット30の走行を停止させるようにリニアモータを駆動制御するとともに、口金部34を上昇させるようにサーボモータを駆動させる。
【0037】
次に、この塗布装置における動作について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態では、基板10上に異物が存在している場合を想定して説明する。
【0038】
まず、ステップS1において基板10の搬入が行われる。具体的には、ステージ21の表面から複数のリフトピンが突出した状態で待機されており、図示しないロボットハンドにより、リフトピンの先端部分に基板10が載置される。
【0039】
次に、ステップS2において基板10がステージ21上に保持される。具体的には、リフトピンの先端部分に基板10が載置された状態から、リフトピンを下降させることにより基板10がステージ21の表面に載置される。このとき、図示しない位置決め手段により基板10が所定の位置に位置決めされる。そして、真空ポンプを作動させて吸引孔21aに吸引力を発生させることにより、基板10がステージ21上の所定の位置に位置決めされた状態で保持される。
【0040】
次に、ステップS3により、塗布動作が行なわれる。すなわち、塗布ユニット30を塗布進行方向に走行させつつ、スリットノズル34aから塗布液を吐出させることにより、基板10上に塗布膜を形成させる。
【0041】
そして、塗布動作中、ステップS4により、衝突対象物Mの検知動作が同時に行なわれる。具体的には、塗布ユニット30の走行中(図4(a))、基板10上に衝突対象物M(異物)が存在している場合には、図4(b)に示すように、その衝突対象物Mにガード部40の衝突部41が接触すると、衝突部41が衝突対象物Mから押圧力を受けるとともに、衝突部41(ガード部40)からの押圧力が衝突対象物Mを介して基板10に作用する。さらにその状態から塗布進行方向に塗布ユニット30を走行させると、変形促進部43の変形により衝突部41が基板10から離れる方向に変位する。これにより、基板10に作用する衝突部41からの押圧力が緩和され、基板10の損傷を抑えることができる。そして、衝突部41が変位すると、ピエゾケーブル51が衝突部41と口金部34とに挟圧されることにより、ピエゾケーブル51から制御装置90に信号が発信される。これにより、衝突部41に衝突対象物Mが接触したことが検知される。
【0042】
このようにして、基板10上に衝突対象物Mを検知した場合には、ステップS5に示すように、回避動作が行なわれる。すなわち、塗布ユニット30の走行を停止させるとともに、口金部34を上昇させて衝突対象物Mから口金部34(スリットノズル34a)を回避させる。そして、口金部34を上昇させた後、ステップS6に示すように、基板10の取出し動作が行なわれ、基板10がステージ21から排出される。
【0043】
また、基板10上に衝突対象物Mが存在していない場合には、回避動作は行なわれず、基板10上に塗布膜が形成された後、基板10がステージ21から排出される。
【0044】
なお、上記実施形態では、異物が基板10上に存在している場合について説明したが、異物が基板10とステージ21との間に存在している場合であっても同様である。この場合、上記説明において、異物により盛り上がった基板10の表面が衝突対象物Mである。
【0045】
このような塗布装置によれば、ガード部40に変形促進部43を有しているため、ガード部40の衝突部41に衝突対象物Mが接触した状態から、さらに塗布ユニット30が塗布進行方向に移動すると、衝突部41が基板10から離れる側に変位する。すなわち、ガード部40が衝突対象物Mと接触した場合であっても、衝突部41が基板10から離れる側に変位することにより、基板10がガード部40から受ける押圧力が緩和される。したがって、変形促進部43のない従来のガード部材に比べて基板10がガード部40から受ける押圧力が小さくなるため、基板10が損傷するのを抑えることができる。
【0046】
また、検知部50は、衝突部41が基板10から離れる側に変位したことによりガード部40に衝突対象物Mが接触したことを検知するため、塗布ユニット30の加速時及び減速時の振動により、衝突対象物Mを誤検知するという問題を解消することができる。
【0047】
上記実施形態では、変形促進部43について、衝突部41とガード部本体42との間にスリット43aを形成する場合について説明したが、スリット43aとは言えないまでも、衝突部41とガード部本体42との間に凹部が形成されていればよい。すなわち、変形促進部43の肉厚が、衝突部41及びガード部本体42の肉厚に比べて、小さく形成されていればよい。
【0048】
また、上記実施形態では、検知部50にピエゾケーブル51を用いることにより、衝突対象物Mを検知する例について説明したが、ピエゾケーブル51の代わりに光ファイバを用いるものであってもよい。光ファイバを用いる場合であっても、衝突部41に衝突対象物Mが衝突し、衝突部41と口金部34とで光ファイバが挟圧されると、光ファイバを流れる光量が変化するため、この光量変化により衝突対象物Mを検知できるものであってもよい。また、これ以外にも、衝突部41と口金部34とによって挟圧されると反応する押圧センサであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 基板
21 ステージ
30 塗布ユニット
40 ガード部
41 衝突部
43 変形促進部
43a スリット
50 検知部
51 ピエゾケーブル
M 衝突対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、スリットノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布ユニットと、
前記スリットノズルよりも塗布進行方向側に取付けられ、スリットノズルを保護するガード部と、
前記ガード部が衝突対象物に接触したことを検知する検知部と、
を備えており、
前記ガード部は、衝突対象物を接触させる衝突部と、この衝突部を基板から離れる側に変位させる変形促進部とを有しており、前記衝突部に衝突対象物が接触した状態から、さらに塗布ユニットが塗布進行方向に移動すると、前記衝突部が基板から離れる側に変位することにより、前記検知部はガード部に衝突対象物が接触したことを検知することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記ガード部は、前記衝突部に連結されるとともに、前記塗布ユニットに支持されるガード部本体を有しており、前記変形促進部は、前記衝突部と前記ガード部本体との間に形成されるとともに、変形促進部の肉厚が、前記衝突部及びガード部本体の肉厚よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ガード部は、前記衝突部に連結されるとともに、前記塗布ユニットに支持されるガード部本体を有しており、前記変形促進部は、前記衝突部と前記ガード部本体との間に、前記ステージと反対側に開口し、かつ、塗布進行方向と交差する方向に延びるスリットにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記衝突部が基板から離れる側に変位すると、この衝突部に押圧されることにより、ガード部に衝突対象物が接触したことを検知することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記衝突部に設けられたピエゾケーブルであり、前記衝突部が基板から離れる側に変位すると、ピエゾケーブルが衝突部と塗布ユニットとに挟圧されることにより、ガード部に衝突対象物が接触したことを検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214342(P2010−214342A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67243(P2009−67243)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】