説明

塗布装置

【課題】 塗布ヘッドのノズル面に付着した溶液を吸液性の拭取部材により拭き取る塗布装置において、取付ブラケットに対する拭取部材の着脱作業性を簡易化し、塗布装置の生産性を向上すること。
【解決手段】 塗布装置において、拭取部材21は、その横断面形状が両側部を外方に向けて凸状に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部23F、23Fを有してなり、取付ブラケット30は、拭取部材21を下側から支持する下支持部32Aと、拭取部材21の膨らみ部23Fのそれぞれを上側から押さえる両側の上支持部36A、37Aとを備えてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に溶液を噴射塗布する塗布装置に係り、特に塗布ヘッドのノズル面に付着した溶液を拭き取る拭取手段を有してなる塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置の製造工程では、ガラス基板の表面に配向膜等の機能性薄膜が成膜される。従来、基板の表面に機能性薄膜を成膜する場合、その材料となる溶液(機能性薄膜を形成する溶液)を基板の表面に噴射して塗布するインクジェット方式の塗布装置を用いている。
【0003】
この塗布装置は、基板を搬送するテーブルを有しており、テーブルの上側には、複数の塗布ヘッドが基板の搬送方向に対して交差するように並設されている。各塗布ヘッドの下面であるノズル面には、多数のノズルが並設されており、これらのノズルから塗布ヘッドの下側を搬送される基板に向けて溶液が噴射される。
【0004】
ところで、配向膜の材料として使用されるポリイミド溶液は、有機溶剤によって希釈されている。通常、この有機溶剤は揮発性を有しているため、溶液の塗布を行わない時間が一定時間続くと、塗布ヘッドのノズル面に付着残留する溶液中のポリイミドの濃度が高まり、ノズル面又はノズルの孔内で固形化し、ノズルからの溶液の正常な吐出を困難にする。
【0005】
そこで、従来技術では、特許文献1に記載の如く、塗布ヘッドによる溶液の塗布が終了したとき、ゴム等のブレード状拭取部材によりノズル面に付着残留している溶液を拭き取ることとしている。
【0006】
また、特許文献2に記載の如く、吸液性の拭取部材により、ノズル面に付着残留している溶液を吸収して拭き取るものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-103453
【特許文献2】特開2005-305845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載の如くの拭取部材は、基板を搬送するテーブルに設けられる取付ブラケットに、ねじ止め等の締結手段により固定されている。
【0009】
吸液性を備えた拭取部材は、吸液量が限界に達したら交換されるが、ねじ止め等の締結手段の着脱に煩わしい作業を強いられていた。塗布ヘッドに装備されている個数分の拭取部材を交換するのに、相当の時間を必要とし、塗布装置の休止時間も長くなり、生産性を低下させていた。
【0010】
本発明の課題は、塗布ヘッドのノズル面に付着した溶液を吸液性の拭取部材により拭き取る塗布装置において、取付ブラケットに対する拭取部材の着脱作業性を簡易化し、塗布装置の生産性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、基板の表面に溶液を噴射塗布するノズルが形成された塗布ヘッドと、塗布ヘッドのノズル面に摺接し、このノズル面に付着した溶液を拭き取る拭取手段とを有してなる塗布装置において、拭取手段は、吸液性を備えた拭取部材と、この拭取部材を着脱自在に保持する取付ブラケットを備え、拭取部材は、その横断面形状が両側部を外方に向けて凸状に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部を有してなり、取付ブラケットは、拭取部材を下側から支持する下支持部と、拭取部材の膨らみ部のそれぞれを上側から押さえる両側の上支持部とを備えてなるようにしたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記取付ブラケットにおける両側の上支持部が、拭取部材の両側の膨らみ部がなす幅寸法より小さい間隔をなし、互いに平行配置されてなるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記取付ブラケットに固定された拭取部材を下支持部及び両側の上支持部に対して回り止めする回り止め部を、該取付ブラケットに備えてなるようにしたものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記拭取部材が弾性材料からなる芯材の周囲に繊維材料を設けて構成されてなるようにしたものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において更に、前記基板を保持し、前記塗布ヘッドに対して基板を相対移動させるテーブルを有し、前記拭取部材は、前記テーブルと一体的に移動可能に設けられてなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗布ヘッドのノズル面に付着した溶液を吸液性の拭取部材により拭き取る塗布装置において、取付ブラケットに対する拭取部材の着脱作業性を簡易化し、塗布装置の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は塗布装置を示す正面図である。
【図2】図2は塗布装置を示す側面図である。
【図3】図3は拭取手段による拭取動作を示す模式図である。
【図4】図4は拭取手段を示す正面図である。
【図5】図5は拭取手段を示し、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【図6】図6は拭取手段の押込量と荷重の関係を示す線図である。
【図7】図7は拭取手段の変形例を示す正面図である。
【図8】図8は拭取手段を示し、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1と図2に示す如く、本発明の塗布装置はベース1を有する。ベース1の上面には所定間隔で離間した一対のレール2がベース1の長手方向に沿って設けられている。レール2にはテーブル3が移動可能に設けられ、駆動源(不図示)により走行駆動されるようになっている。テーブル3の上面には多数の支持ピン4が設けられ、これら支持ピン4には液晶表示装置等に用いられるガラス製の基板Wが供給支持される。
【0019】
上記テーブル3によって搬送される基板Wの上側には、カラーレジストや配向膜等の機能性薄膜を形成するための溶液を基板Wに噴射塗布する複数、この実施の形態では3個のインクジェット方式の塗布ヘッド7が基板Wの搬送方向とほぼ直交する方向に沿って千鳥状に配設されている。
【0020】
以下、塗布装置が有する拭取手段20について説明する。拭取手段20は、テーブル3に支持され、塗布ヘッド7においてノズル14が開口している下面からなるノズル面11Aに摺接し、このノズル面11Aに付着した溶液を拭き取る。拭取手段20は、吸液性を備えた拭取部材21を、テーブル3に設けられる取付ブラケット30に着脱自在に固定可能にする。本実施例では、3個の塗布ヘッド7のそれぞれに対し、1対1で拭取手段20を配置している。
【0021】
即ち、図1、図2に示す如く、テーブル3の一端面にはL字状の支持部材40が垂直な一辺をテーブル3の端面に固定して設けられ、支持部材40の水平な他辺の中央には、昇降手段41を構成する空圧シリンダ(ボールねじ装置、リニアモータでも可)が軸線を垂直にして設けられている。
【0022】
昇降手段41のロッドには載置板43が取付けられ、載置板43の3位置のそれぞれには中間部材44を介して取付ブラケット30が固定されている。3個の各取付ブラケット30には、拭取部材21がそれぞれ後述する如くに着脱自在に固定される。各取付ブラケット30に固定された拭取部材21は、塗布ヘッド7のノズル面11Aと概ね同一幅をなし、それらのノズル面11Aに摺接できる。
【0023】
本実施例では、単一の昇降手段41が3個の拭取手段20の各取付ブラケット30に固定された拭取部材21を一括して同時に同一ストローク上昇させる。そして、各塗布ヘッド7により基板Wに溶液を塗布するときに、各拭取部材21を各塗布ヘッド7のノズル面11Aに摺接し得る高さに設定しておく。
【0024】
各拭取部材21により拭き取られたノズル面11Aの溶液は、それらの拭取部材21により吸収されるが、それらの拭取部材21から落下する溶液は、載置板43に設けられている回収槽45に滴下し、回収タンク45Aに回収される(図2)。即ち、載置板43に回収槽45の内底部が設けられ、この回収槽45の一側にはガイド板46が設けられ、このガイド板46にはガイド部材47が設けられている。このガイド部材47はテーブル3の端面の上下に延在されているガイドレール48にガイドされて上下動する。昇降手段41が駆動されるとき、載置板43が駆動されるとともに、ガイド板46がガイドレール48に沿って上下動し、拭取部材21及び取付ブラケット30とともに回収槽45が上下動する。
【0025】
従って、塗布装置にあっては、テーブル3の上面に載置された基板Wが、テーブル3とともにレール2に沿う方向に搬送される。そして、搬送される基板W上の塗布対象領域が塗布ヘッド7の下側に到達タイミングに合わせて塗布対象領域に対向するノズル14から基板Wに向けて溶液が噴射される。更に、テーブル3が駆動され、基板Wが各塗布ヘッド7の下側を通過した後、昇降手段41によって予め所定の高さに設定されている各拭取手段20の拭取部材21が各塗布ヘッド7のノズル面11Aに摺接し、そのノズル面11Aに付着残留する溶液を拭き取ることができる。尚、テーブル3が上述と逆方向に移動するときには、昇降手段41によって各拭取手段20を下降させておき、拭取部材21がノズル面11Aに接触しないようにする。
【0026】
以下、拭取手段20の詳細構造について説明する。
拭取手段20の拭取部材21は、例えば不織布等の吸液性の繊維材料で構成される。本実施例では、シリコンチューブ等の弾性材料からなる筒状芯材22の周囲に上述の如くの繊維材料からなる吸液体23を配設して構成される。尚、筒状芯材22は、金属、プラスチック等の硬い材料から構成されても良い。芯材22は、中空状に限らず、中実状でも良いが、両端面に工具係入孔となる孔部を備えることができる。この芯材22を備えた拭取部材21が取付ブラケット30に着脱されるとき、着脱用工具の係止突部をこの孔部に係入できる。
【0027】
ここで、拭取部材21は、吸液体23が芯材22を中心軸とする円柱形をなすものにし、横断面形状たる円形の両側部を外方に向けて凸状(円弧状)に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部23F、23Fとする。尚、拭取部材21は、横断面形状の両側部を外方に向けて凸状に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部とするものであれば、円柱形に限らず、五角柱、六角柱等の多角柱をなすものでも良い。
【0028】
拭取手段20の取付ブラケット30は、前述の昇降手段41に支持されている中間部材44の上端部に取付板31を固定し、取付板31の水平方向の前端部に下板32を接続し、下板32の水平方向の前後両端部に背の低い前板33及び後板34を該下板32の幅方向の全長に渡って立設し、下板32の幅方向の左右両端部に左右の側板35、35を立設している。両側板35は概ねT字状をなし、その脚部35Aを下板32に固定している。そして、両側板35の頭部35Bの前端部間に棒36を固定的に架け渡すとともに、それらの頭部35Bの後端部間に棒37を固定的に架け渡している。棒36、37は、それぞれ六角柱形状をなし、下板32の上面から、拭取部材21における吸液体23がなす円柱形の半径Rより高い高さHの位置に設けられ、互いに平行配置される。両側板35は頭部35Bの前後の中央部にU字状切欠部35Cを設けている。
【0029】
取付ブラケット30は、拭取部材21を固定した状態で、図3に示す如く、拭取部材21の芯材22の両端面を両側板35のU字状切欠部35Cから外界に臨ませる。そして、取付ブラケット30は、拭取部材21における吸液体23の横断面形状の下側外周部23Lを支持する下支持部32Aを下板32の上面により形成し、拭取部材21における吸液体23の横断面形状の両側の膨らみ部23F、23Fのそれぞれに隣接する上側外周部23U、23Uのそれぞれを上方から押さえる両側の上支持部36A、37Aを棒36、37の外周面により形成する。取付ブラケット30における両側の上支持部36A、37Aは、拭取部材21の両側の膨らみ部23F、23Fがなす幅寸法F(F=2R)より小さい間隔Aをなし、互いに平行配置されている。
【0030】
尚、取付ブラケット30は、下板32の下支持部32Aを挟む前板33と後板34の各上端部を、拭取部材21における下側外周部23Lの両側外周部に当接してこれを支持する下支持部33A、34Aとしている。
【0031】
従って、本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)拭取部材21が横断面形状の両側部を外方に向けて凸状に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部23F、23Fとしている。そして、取付ブラケット30が、拭取部材21の横断面形状の下側外周部23Lを支持する下支持部32Aと、拭取部材21の横断面形状の両側の膨らみ部23F、23Fのそれぞれに隣接する上側外周部23U、23Uのそれぞれを上方から押さえる両側の上支持部36A、37Aとを備える。
【0032】
従って、拭取部材21を取付ブラケット30に取付けるときには、拭取部材21を図4に示す如く、取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aの間隔内に対し上方から押込む。拭取部材21は、両側の膨らみ部23F、23Fが弾性変形して圧縮されながら取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aの間隔内を上から下へと通過し、下側外周部23Lが取付ブラケット30の下支持部32Aに押し当てられる取付位置に位置付けられる。この取付位置では、拭取部材21の両側の膨らみ部23F、23Fは復元し、拭取部材21は両側の膨らみ部23F、23Fのそれぞれに隣接する上側外周部23U、23Uを取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aに押さえられて抜け止めされ、かつ下側外周部23Lを取付ブラケット30の下支持部32Aに押付けられて支持され、結果として拭取部材21は外周部の少なくとも上2点、及び下1点を圧迫されて全3点支持される。拭取部材21はこの安定な3点支持状態で確実に固定され、塗布ヘッド7のノズル面11Aに摺接し、このノズル面11Aに付着した溶液を拭き取り可能にする。
【0033】
尚、本実施例では、拭取部材21は、下側外周部23Lの両側外周部の2点も取付ブラケット30の下支持部33A、34Aに圧迫されて支持され、結果として一層安定確実に全5点支持される。
【0034】
他方、拭取部材21の吸液量が設定された使用限界に達した交換時には、取付ブラケット30内の上述した取付位置にある拭取部材21を、取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aの間隔内から上方に向けて引き上げる。拭取部材21は、両側の膨らみ部23F、23Fが弾性変形して圧縮されながら取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aの間隔内を下から上へと通過し、取付ブラケット30から取外される。この後、新規の拭取部材21が新たに取付ブラケット30に取付けられて使用に供される。
【0035】
拭取部材21は、取付ブラケット30の両側の上支持部36A、37Aの間隔内に押込み、又は両側の上支持部36A、37Aの間隔内から引上げることにより、取付ブラケット30内の取付位置に簡易に着脱できる。
【0036】
尚、拭取部材21の取付ブラケット30からの取外し時には、側板35のU字状切欠部35Cから外界に臨んでいる拭取部材21の芯材22の工具係入孔に着脱用工具の係止突部を係入し、拭取部材21を取付ブラケット30から引上げる引上げ力をこの工具により拭取部材21に及ぼす。尚、着脱用工具としては、芯材22の工具係入孔に挿入可能な突起部を備えた工具であれば良い。
【0037】
(b)取付ブラケット30内の上述した取付位置に位置付けられた拭取部材21は、取付ブラケット30の下支持部32Aと両側の上支持部36A、37Aにより、外周部の少なくとも3点を弾発的に押さえられ、取付ブラケット30に対し回転不能に固定される。従って、拭取部材21は塗布ヘッド7のノズル面11Aに対する溶液の拭き取り作業を何回も繰り返すとき、前回までの拭き取った溶液により濡れている拭取作業面でノズル面11Aを拭くものになり、拭取後のノズル面11Aが過度に乾燥することなく湿潤状態に保たれ、安定した吐出性能を維持できる。拭取部材21が取付ブラケット30に対し回転し、拭取部材21の新規拭取作業面が新たなノズル面11Aに接することになる場合には、未だ濡れていない新規拭取作業面が当該ノズル面11Aの溶液を残すところなく除去し尽くし、その後の当該ノズル面11Aを乾燥させ易くして当該ノズル面11Aに固形異物を生じさせるおそれがある。
【0038】
(c)取付ブラケット30の下支持部32A、33A、34Aと両側の上支持部36A、37Aとの間の空間は拭取部材21を支持しない不支持領域になる。従って、取付ブラケット30内の取付位置に取付けられた拭取部材21が塗布ヘッド7のノズル面11Aに摺接して拭取作業するために、拭取部材21をノズル面11Aに対して一定の押込量だけ押込んだとき、ノズル面11Aが拭取部材21に作用する荷重の一部が取付ブラケット30の上記不支持領域から逃げる。ノズル面11Aに対する拭取部材21の押込量を大きくしても、ノズル面11Aが拭取部材21に適正な荷重(一定の拭取り性能を確保するに必要な最小許容荷重F1〜急速な摩耗を生じさせない最大許容荷重F2の範囲内にあって良好な拭取作業性を維持するに足る荷重)よりも過大な荷重が生ずることを回避し、拭取部材21の急速な摩耗を防止する。
【0039】
ここで、拭取部材21に作用する荷重とは、拭取部材21がノズル面11Aに押込まれるとき、ノズル面11Aが拭取部材21に及ぼす押込反力をいう。
【0040】
(d)拭取部材21が弾性材料からなる芯材22の周囲に吸液体23を配設して構成される。従って、取付ブラケット30内の取付位置に取付けられた拭取部材21が塗布ヘッド7のノズル面11Aに摺接して拭取作業するために、拭取部材21をノズル面11Aに対して一定の押込量だけ押込んだとき、ノズル面11Aが拭取部材21に及ぼす荷重の一部が、芯材22の弾性圧縮変形及び弾性曲げ変形を生じさせて逃げる。このとき、拭取部材21に実際に生ずる荷重と拭取部材21の押込量との関係は図6に示したAの如くになり、芯材22が弾性材料により構成されていない拭取部材21に生ずる荷重Bに比して緩やかに変化する。そのため、拭取部材21に生ずる荷重が適正の範囲内となる拭取部材21の押込量の幅が大きくなり、調整が容易化される。これにより、ノズル面11Aが拭取部材21に適正な荷重よりも過大な荷重が生ずることを回避し、拭取部材21の急速な摩耗を防止できる。
【0041】
(e)複数の各塗布ヘッド7のそれぞれに対し、1対1で拭取部材21を配置し、それらの複数の拭取部材21を昇降手段41により同一ストローク上昇させるとき、各塗布ヘッド7のノズル面11Aの高さ位置にバラツキがあると、各拭取部材21が対応するノズル面11Aに当接後に押込まれる押込量にバラツキを生ずる。押込量が適正値よりも小さければ、拭取部材21には適正な荷重よりも小さな荷重しか作用しないし、押込量が適正値よりも大きければ、拭取部材21には適正な荷重よりも大きな荷重が作用してしまう。拭取部材21に作用する荷重が前述の最小許容荷重F1より過小であったり、前述の最大許容荷重F2より過大であれば、前述の良好な拭取作業性を損なう。
【0042】
ところが、本発明では、弾性材料からなる芯材22を用いたことにより、拭取部材21に生ずる荷重Aが、図6に示した如く、芯材22に弾性材料を用いていない拭取部材21に生ずる荷重Bに比し、拭取部材21がノズル面11Aに押込まれる押込量の増減(バラツキ)によって拭取部材21に生ずる荷重の変化が小さい。従って、複数の塗布ヘッド7の間でそれらのノズル面11Aの高さ位置に上述の如くのバラツキがある場合でも、拭取部材21に作用する荷重が適正な荷重の範囲(F1〜F2)を超えることを生じ難くすることができる。一部の拭取部材21が対応する塗布ヘッド7のノズル面11Aとの間で過大な荷重を生じ、この荷重が当該塗布ヘッド7を突き上げる如くに衝突し、これが塗布ヘッド7の内部の液室12の溶液を振動させ、ひいては液室12に通ずるノズル14に外気を取込み、当該塗布ヘッド7の吐出動作を損なう如くを回避できる。これにより、拭取部材21の拭取性能や寿命を安定させることができる。
【0043】
図7、図8に示した拭取手段20は、図3〜図5に示した取付ブラケット30を取付ブラケット30Aに代えたものである。取付ブラケット30Aは、拭取部材21を下板32の下支持部32A、前板33の下支持部33A、後板34の下支持部34A、及び両側の棒36、37の上支持部36A、37Aに対して回り止めする回り止め部51A、52A、53Aを設けた。
【0044】
回り止め部51Aは、下板32において、拭取部材21における吸液体23の下側外周部23Lが当接する下面の一部を切欠いた角孔51により形成される。拭取部材21の吸液体23が取付ブラケット30に圧迫されて少なくとも3点支持(本実施例では5点支持)されるとき、下板32の下面に臨む角孔51のエッジが拭取部材21における吸液体23の下側外周部23Lに食い込み、回り止めする。
【0045】
回り止め部52Aは、下板32の前端部に設けられる前板33を間欠配置することにより形成される。拭取部材21の吸液体23が取付ブラケット30に圧迫されて5点支持されるとき、各前板33の上端角エッジが拭取部材21における吸液体23の外周部に食い込み、回り止めする。
【0046】
回り止め部53Aは、下板32の後端部に設けられる後板34の上端面の複数位置に設けた剣山状突起53により形成される。拭取部材21の吸液体23が取付ブラケット30に圧迫されて5点支持されるとき、各突起53が拭取部材21における吸液体23の外周部に食い込み、回り止めする。
【0047】
取付ブラケット30Aが回り止め部51A、52A、53Aを設けたことにより、拭取部材21を取付ブラケット30に対し一層確実に回転不能に固定するものになり、前述(b)の拭取部材21がノズル面11Aに対する拭取作業性を一層向上する。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、取付ブラケット30において、拭取部材21の横断面形状の下側外周部23Lを支持する下支持部32Aは下板32の如くの板によらず、2本の平行配置される棒によって構成されても良い。但し、この下支持部32Aを構成する2本の棒は、拭取部材21が弾性変形したとしても、その膨らみ部23Fが通過できない間隔で配置されていれば良い。
【0049】
また、本発明が適用される塗布装置にあっては、複数の拭取手段20のそれぞれに個別に昇降手段41を設け、各拭取手段20の取付ブラケット30に固定された取付部材21を個別に昇降させるものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、塗布ヘッドのノズル面に付着した溶液を吸液性の拭取部材により拭き取る塗布装置において、取付ブラケットに対する拭取部材の着脱作業性を簡易化し、塗布装置の生産性を向上することができる。
【符号の説明】
【0051】
W 基板
3 テーブル
7 塗布ヘッド
11 ノズルプレート
11A ノズル面
14 ノズル
20 拭取手段
21 拭取部材
22 芯材
23 吸液体
23F 膨らみ部
23L 下側外周部
23U 上側外周部
30 取付ブラケット
32A、33A、34A 下支持部
36A、37A 上支持部
51A、52A、53A 回り止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に溶液を噴射塗布するノズルが形成された塗布ヘッドと、
塗布ヘッドのノズル面に摺接し、このノズル面に付着した溶液を拭き取る拭取手段とを有してなる塗布装置において、
拭取手段は、吸液性を備えた拭取部材と、この拭取部材を着脱自在に保持する取付ブラケットを備え、
拭取部材は、その横断面形状が両側部を外方に向けて凸状に張り出すとともに、弾性変形できる膨らみ部を有してなり、
取付ブラケットは、拭取部材を下側から支持する下支持部と、拭取部材の膨らみ部のそれぞれを上側から押さえる両側の上支持部とを備えてなることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記取付ブラケットにおける両側の上支持部が、拭取部材の両側の膨らみ部がなす幅寸法より小さい間隔をなし、互いに平行配置されてなる請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記取付ブラケットに固定された拭取部材を下支持部及び両側の上支持部に対して回り止めする回り止め部を、該取付ブラケットに備えてなる請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記拭取部材が弾性材料からなる芯材の周囲に繊維材料を設けて構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記基板を保持し、前記塗布ヘッドに対して基板を相対移動させるテーブルを有し、
前記拭取部材は、前記テーブルと一体的に移動可能に設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66170(P2012−66170A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211417(P2010−211417)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】