説明

塗膜形成装置、その塗膜形成装置により塗膜が形成された電子写真用定着部材、その電子写真用定着部材を有した画像形成装置

【課題】被塗装物の一定の速度で移動させることを可能としながらも、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を一定に保つことができる塗膜形成装置を提供する。
【解決手段】塗膜形成装置1は基体4を保持する保持部18と基体4の外周面4cに塗料を塗布する塗布ノズル19と塗布ノズル19を移動させる移動支持部26を有する。保持部18が基体4の内側に通されるマンドレル25を備えている。マンドレル25の上端部には基体4の内周面に向かって気体を噴出する噴出口28が設けられている。塗布ノズル19の塗料を吐出する塗布スリット19bがマンドレル25の上端部と相対する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物の円筒面状の外周面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成装置に関し、例えば、PPC(普通紙複写機)、LBP(レーザビームプリンタ)、ファクシミリなどの電子写真方式を採用した画像形成装置において、記録紙上の未定着トナー像を加熱、加圧により定着させる定着部材(定着ベルト、定着ローラ)の弾性層を形成するのに好適な塗膜形成装置に関する。また、その塗膜形成装置により塗膜が形成された電子写真用定着部材、及び、その電子写真用定着部材を有した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の原理に基づく複写機およびプリンタなどの画像形成装置では、加熱された定着部材とこの定着部材に圧接する加圧部材との間に、トナー像が転写された記録紙を通して、前記トナー像のトナーを溶融するとともに前記記録紙に定着させる定着プロセスを行う。この定着プロセスで用いられる定着ベルトあるいは定着ローラなどの定着部材は、アルミ、鉄などで構成される円筒形状の芯金や、ポリイミドなどの樹脂あるいはNiなどの金属で構成される無端状の基体など、の外周面にプライマ(接着剤)を塗布するとともに、その上からシリコーンゴムなどの耐熱性ゴムを含んだ塗料を塗布して、厚みが100〜300μm程度の弾性層を形成するなどして得られる。
【0003】
上記弾性層は、上述した定着プロセスにおいて、トナーを記録紙に押圧する圧力を均一にして画像の粒状度を向上させることが一般的に知られている。また、この弾性層の厚みが定着画像品質に影響を及ぼすとともに、前記定着部材の立ち上がり時間(所定の温度に達する時間)などに影響を及ぼすので、上記弾性層の厚みは均一にすることが求められている。
【0004】
そして、上述した弾性層を形成する方法として、従来、スプレー塗布法や浸漬塗布法が用いられてきた。これらの方法は、塗料を溶剤で希釈し粘度を下げることによって膜厚を制御することから、環境への負荷が大きい。一方、環状カーテン塗布法(例えば、特許文献1参照)を挙げることができる。
【0005】
この環状カーテン塗布法は、図19に例示するように、被塗装物70の外周面に円環状の塗布ノズル71から塗料を直接供給し、当該塗布ノズル71を被塗装物70に対して軸方向に移動させることによって塗布を行うために、塗料を被塗装物70への塗布分のみ供給すればよく、溶剤で希釈する必要がない。しかしながら、塗膜をむらなく均一の厚みで形成するためには、円筒形状の芯金や無端状の基体などの被塗装物を真円の状態で保持することが要求され、また、塗布ノズル71と被塗装物70の外周面との間の隙間を均一にする必要がある。
【0006】
そこで、従来では、円柱状の支持部材の外周に被塗装物を嵌合させたり、気体により支持部材72の外周に被塗装物を浮かせるなどして、当該被塗装物70を保持し、塗布ノズル71を前記支持部材72の軸芯に沿って移動させていた。しかしながら、前記被塗装物70の外径が大きくなると、塗布ノズル71が大型化して大重量となり、当該塗布ノズル71を軸芯に沿って高精度に移動させることが困難となり、精度を確保するためには、装置全体の高精度化及び高剛性化が必要で、大幅はコストの高騰を招くとともに、及び作業開始までの調整時間が長時間化する傾向であった。
【0007】
このため、特許文献1に示された塗膜形成装置では、大型でかつ大重量の塗布ノズルを固定し、円柱状の支持部材の外周に嵌合して芯だしされた被塗装物を、支持部材の軸芯に沿って移動させてきた。特許文献1に示された塗膜形成装置では、支持部材の外周に被塗装物を嵌合させて、当該被塗装物を位置決めするために、当該支持部材の全長が被塗装物の全長の約2倍程度となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般に被塗装物の内径が軸芯方向に均一となっていないために、上述した特許文献1に示された塗膜形成装置では、支持部材と被塗装物との間の摩擦力が大きくなりすぎて、被塗装物を一定速度で移動させるのが困難となる。また、図19に示すように、支持部材72と被塗装物70との間に空間を設け、当該空間内に加圧された気体を供給することで、支持部材72の外周面上に被塗装物70を滑らせることも記載されているが、支持部材72が被塗装物70の全長の約2倍の全長となっているために、被塗装物70の位置の変化によって、支持部材72と被塗装物70との間の空間即ち加圧された気体が大気開放されるまでの流路の長さが変化してしまい、被塗装物70の位置の変化によって、支持部材72と被塗装物70との間の空間内の圧力が変動してしまう。このため、被塗装物70の外周面と塗布ノズル71との間の間隔を常に一定にすることが困難であった。
【0009】
本発明は上記問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、被塗装物の一定の速度で移動させることを可能としながらも、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を一定に保つことができる塗膜形成装置を提供し、そして、その塗膜形成装置により塗膜が形成された電子写真用定着部材、及び、その電子写真用定着部材を有した画像形成装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された本発明の塗膜形成装置は、円筒状の被塗装物内に通す支持部材と、前記被塗装物の外周面に前記塗料を塗布する塗布ノズルと、前記被塗装物を当該被塗装物の軸芯に沿って前記塗布ノズルに対して相対的に移動させる移動手段とを有する塗膜形成装置において、前記支持部材の上端部には、前記被塗装物の内周面に向かって気体を噴出する噴出口が設けられ、そして、前記塗布ノズルの前記塗料を吐出する吐出口が、前記支持部材の上端部と相対する位置に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項1に記載された塗膜形成装置において、前記噴出口が、前記支持部材の周方向に等間隔に設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項1または請求項2に記載された塗膜形成装置において、前記噴出口の下方に前記支持部材を貫通した排気口が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載された塗膜形成装置において、内側に前記支持部材を通しかつ内径が前記被塗装物の外径よりも小さくかつ前記支持部材の外径よりも大きく形成されているとともに端面上に前記被塗装物が置かれて前記移動手段により前記支持部材の軸芯に沿って移動させることにより前記被塗装部材を前記塗布ノズルに対して相対的に移動させる移動支持部材を備えていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項4に記載された塗膜形成装置において、前記移動支持部材に前記支持部材の外周面に向かって気体を噴出する第2噴出口が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項5に記載された塗膜形成装置において、前記端面と前記第2噴出口との間に第2排気口が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載された本発明の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載された塗膜形成装置において、前記支持部材が内側に通された前記被塗装物の外径を計測可能な計測手段と、前記噴出口内に供給する気体の圧力を変更可能な変更手段と、前記変更手段に前記被塗装物の外径に応じて前記気体の圧力を変更させる制御手段を備えたことを特徴としている。
【0017】
請求項8に記載された本発明の電子写真用定着部材は、請求項1〜7のいずれか一項に記載された塗膜形成装置により塗膜が形成されたことを特徴としている。
【0018】
請求項9に記載された本発明の画像形成装置は、請求項8に記載された電子写真用定着部材を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された本発明によれば、噴出口を通して内側に支持部材が通された被塗装物の内周面に向かって加圧された気体を噴出させるので、支持部材の外周面上に被塗装物を浮かせることとなり、当該被塗装物を容易で確実に一定速度で移動させることができる。
【0020】
また、被塗装物の内周面に向かって気体を噴出する噴出口を支持部材の上端部に設けているので、当該支持部材の全長を被塗装物の全長の2倍よりも遥かに短くすることができ、支持部材の全長を被塗装物の全長と略等しくすることができる。このため、噴出口から噴出された気体が大気開放されるまでの流路が常に、噴出口と支持部材の上端との間の空間となるので、被塗装物の位置が変化しても、支持部材の外周面と基体との間の空間内の圧力が変動しない。よって、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜を形成することができる。
【0021】
請求項2に記載された本発明によれば、噴出口が支持部材に周方向に等間隔に設けているので、支持部材の外周面と被塗装物との間の空間の圧力が、周方向にも均一となる。よって、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を常に一定にすることができる。
【0022】
請求項3に記載された本発明によれば、噴出口の下方に排気口が設けているので、噴出口から噴出された気体が排気口を通して、支持部材と被塗装物との間から排気される。このために、支持部材と被塗装物との間の空間の圧力が高くなりすぎることを防止できる。よって、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜を形成することができる。
【0023】
請求項4に記載された本発明によれば、内径が被塗装物の外径よりも小さく支持部材の外径よりの大きい移動支持部材の端面上に被塗装物を重ねているので、当該移動支持部材を移動させることで、スムーズに被塗装物を移動させることができる。よって、移動支持部材を一定速度で移動させることで、被塗装物を容易で確実に一定速度で移動させることができる。
【0024】
請求項5に記載された本発明によれば、移動支持部材の内周面に支持部材の外周面に向かって気体を噴出する第2噴出口を設けているので、当該第2噴出口を通して気体を噴出することで、移動支持部材と支持部材とを同軸に保つことができる。
【0025】
請求項6に記載された本発明によれば、端面と第2噴出口との間に第2排気口を設けているので、第2噴出口から噴出された気体が第2排気口を通して、移動支持部材と支持部材との間から排気される。このために、移動支持部材の内側に噴出された気体が支持部材と被塗装物との間に侵入することを防止でき、当該支持部材と被塗装物との間の空間の圧力が高くなりすぎることを防止できる。よって、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜を形成することができる。
【0026】
請求項7に記載された本発明によれば、制御手段が計測手段が計測した被塗装物の外径に応じて、噴出口を通して支持部材と被塗装物との間に供給する気体の圧力を変更する。このために、被塗装物の外径が一定となるように、噴出口を通して支持部材と被塗装物との間に供給する気体の圧力を変更できる。よって、被塗装物の外周面と塗布ノズルとの間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜を形成することができる。
【0027】
請求項8に記載された本発明によれば、厚みにばらつきのない塗膜を得ることができる。
【0028】
請求項9に記載された本発明によれば、厚みにばらつきのない塗膜を得た電子写真用定着部材を有しているので、高い画像品質の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗膜形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】図1中のII部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示された塗膜形成装置が基体の外周面に塗料を塗布している状態を示す要部の断面図である。
【図4】図3に示された塗膜形成装置が内径の大きな基体の外周面に塗料を塗布している状態を示す要部の断面図である。
【図5】図3に示された塗膜形成装置が内径の小さな基体の外周面に塗料を塗布している状態を示す要部の断面図である。
【図6】図1に示された塗膜形成装置によって塗膜が形成されて得られる定着ベルトの斜視図である。
【図7】図6中のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6に示された定着ベルトを備えた画像形成装置を示す断面図である。
【図9】平行平板 間のクエットポアズイユの流れを示す説明図である。
【図10】図1に示された塗膜形成装置のマンドレルと基体の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る塗膜形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図12】図11に示された塗膜形成装置が基体の外周面に塗料を塗布している状態を示す要部の断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る塗膜形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図14】本発明品1の塗膜形成装置に取り付けられた基体の内径を示す説明図である。
【図15】本発明品1乃至本発明品3、比較例の塗膜形成装置に取り付けられた基体を移動させたときの基体の外周面の位置を示す説明図である。
【図16】(a)が本発明品1の塗膜形成装置の塗布ヘッドが基体の上端部に相対した状態を示す断面図であり、(b)が本発明品1の塗膜形成装置の塗布ヘッドが基体の下端部に相対した状態を示す断面図であり、(c)が本発明品1の塗膜形成装置の塗布ヘッドが噴出口よりも下方に位置付けられた状態を示す断面図である。
【図17】本発明品1乃至本発明品3、比較例の塗膜形成装置に取り付けられた基体の内径の偏差に対する基体の外表面の位置のばらつきを示す説明図である。
【図18】本発明品1乃至本発明品3、比較例の塗膜形成装置に取り付けられた基体の内径の偏差に対する塗膜の厚みのばらつきを示す説明図である。
【図19】従来の塗膜形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる塗膜形成装置の概略の構成を示す断面図である。図2は、図1中のII部を拡大して示す断面図である。図3乃至図5は、図1に示す塗膜形成装置が基体の外周面に塗料を塗布している状態を示す要部の断面図である。図6は、図1に示された塗膜形成装置によって弾性層5が形成されて得られる定着ベルト(定着部材)の斜視図である。図7は、図6中のVII−VII線に沿う断面図である。
【0031】
図1に示す塗膜形成装置1は、コピー機などの画像形成装置101(図8に示す)を構成する電子写真用定着部材としての定着ベルト2の基体4に、弾性層5を構成する塗料7を塗布して塗膜8を形成する装置である。
【0032】
定着ベルト2は、記録紙107(図8に示す)にトナー像を定着させる電子写真用定着部材として用いられるものであり、図6に示すように、円筒状(無端管状)に形成されている。定着ベルト2は、図7に示すように、ポリイミドなどの合成樹脂で構成されかつ円筒状に形成された基体4と、プライマ(接着剤)層3と、シリコーンゴムなどの耐熱性ゴムで構成された弾性層5と、プライマ層3と、フッ素樹脂で構成された離型層6とが順に積層されている。弾性層5の厚みは100〜300μm程度に形成されているとともに、基体4とプライマ層3とを合わせた厚みは、110μm程度に形成されている。
【0033】
また、弾性層5は、基体4の軸芯P(図1中に一点鎖線で示す)方向の一端部(塗膜形成装置1によって塗料7が塗布される際には上端部)4aから、基体4の軸芯P方向の他端部(塗膜形成装置1によって塗料7が塗布される際には下端部)4bに亘って形成されている。定着ベルト2は、加熱された状態で、トナー像を該記録紙107に押圧して、このトナー像を記録紙107に定着させる。
【0034】
塗料7は、シリコーンゴムと周知の溶媒とを混合して得られ、その粘度は、前述したプライマ層3や離型層6を形成する際に用いられる塗料の粘度より十分に大きくされている。そして、この塗料7は、塗膜形成装置1によって、表面にプライマ層3が形成された基体4(特許請求の範囲の被塗装物に相当)の外表面、即ち、前述したプライマ層3上に塗布されて、前述した弾性層5を形成する。
【0035】
塗膜形成装置1は、図1に示すように、塗料供給部としての塗料供給ユニット10と、塗布ユニット11と、加圧気体供給手段としての加圧気体供給部12と、制御手段としての制御装置13とを備えている。この塗料供給ユニット10は、工場のフロア上などに設置されるユニット本体14と、配管15などを備えている。ユニット本体14には、複数の原液タンクと、複数の汲み上げポンプと、混合機などを備えている。
【0036】
ユニット本体14は、複数の原液タンク内の前述した塗料7の元となる液体を混合機で混合して、汲み上げ機により当該混合して得た塗料7を配管15に送り出す。配管15は、ユニット本体14の混合機と塗布ユニット11が備える後述する塗布ノズル19とを互いに連結している。塗料供給ユニット10はユニット本体14からの塗料7を配管15を介して塗布ノズル19内に供給する。
【0037】
塗布ユニット11は、フレーム17と、保持部18と、塗布ノズル19とを備えている。フレーム17は、工場のフロア上などに設置される台部21と、この台部21の縁から上方に向かって延在した板状の延在板部22と、複数のノズル支持柱23と、ノズル支持テーブル24とを備えている。ノズル支持柱23は、台部21から上方に向かって延在した棒状に形成され、その軸芯が鉛直方向と平行に設けられている。また、ノズル支持柱23は、互いに間隔をあけて、後述するマンドレル25の周りに設けられている。ノズル支持テーブル24は、円環状に形成され、ノズル支持柱23の上端に取り付けられ、その両表面が水平方向と平行に設けられている。
【0038】
保持部18は、支持部材としてもマンドレル25と、移動手段としての移動支持部26とを備えている。マンドレル25は、外観が円筒状に形成されかつ台部21の上面から上方に向かって立設して、その軸芯が鉛直方向と平行となっている。マンドレル25は、その外径が、弾性変形していない状態の基体4の内径よりも若干大きく形成されている。このことは、これはマンドレル25の後述する噴出口28から噴出する気体で構成される気体層の圧力で基体4を内側から押し広げ、弾性変形によりマンドレル25の外形よりも当該基体4の内径を若干大きくすることにより、後述する基体4の内径偏差の影響を小さくする効果が顕著に得られるからである。マンドレル25は、その全長が基体4の全長の2倍よりも十分に短くかつ基体4の全長よりも若干長く(基体4の全長と略等しく)形成されている。前述したマンドレル25は、基体4内に通される。
【0039】
また、マンドレル25は、その上端に当該マンドレル25を先細とするテーパ面27が設けられている。なお、本発明でいう支持部材としてのマンドレル25の上端とは、加圧気体供給部12により供給されてマンドレル25の外周面と基体4の内周面との間を流れる気体が大気開放される位置をいい、本実施形態では、前述したテーパ面27の基部27aをいう。また、マンドレル25の上端部には、その内側を気密に保つ気密室46が設けられている。さらに、マンドレル25は、その上端部に気密室46の内外を連通しかつ当該マンドレル25の外周面に開口した噴出口28が複数設けられている。噴出口28は、加圧気体供給部12により供給された加圧された気体をマンドレル25が内側に通された基体4の内周面に向かって噴出するためのものである。複数の噴出口28は、マンドレル25の周方向に等間隔に設けられている。
【0040】
移動支持部26は、リニアアクチュエータ29と、支持板30と、移動支持部材31と、図示しないリニアエンコーダとを備えている。リニアアクチュエータ29は、延在板部22に取り付けられかつ鉛直方向に直線状に延在した固定子32と、この固定子32に当該固定子32の長手方向に沿って移動自在な移動子33とを備えている。
【0041】
支持板30は、平板状な本体部34と、この本体部34に取り付けられた円環状の円環部35とを備えている。本体部34は、その上下面が水平方向と平行に設けられている。本体部34は、その一端がリニアアクチュエータ29の移動子33に取り付けられている。円環部35は、内径がマンドレル25の外径よりも十分に大きな円環状に形成されている。円環部35は、その内側にマンドレル25を通しているとともに、本体部34のリニアアクチュエータ29から離れた側の他端部に取り付けられている。円環部35は、マンドレル25と同軸に設けられている。円環部35は、その表面上にボールローラ36が置かれている。
【0042】
移動支持部材31は、図2に示すように、内径がマンドレル25の外径よりも大きくかつプライマ層3が形成された基体4の外径よりも小さい厚手の円環状に形成されている。移動支持部26は、内側にマンドレル25が通されてボールローラ36上即ちボールローラ36を介して支持板30の円環部35上に配置される。また、移動支持部材31は、その上方に位置する端面31aが上方に向かうにしたがって当該移動支持部材31を徐々に先細とするテーパ状に形成されている。移動支持部材31は、その内周面から凹の凹み空間37が内部に設けられているとともに、当該凹み空間37を上下に仕切る仕切り壁38が設けられている。移動支持部材31は、その端面31a上に基体4の下端部4bが置かれる。
【0043】
また、移動支持部材31には、図2に示すように、複数の第2噴出口39と、第2排気口40とが設けられている。これらの第2噴出口39と、第2排気口40とは、移動支持部材31の外壁を貫通しているとともに、当該移動支持部材31の周方向に等間隔に設けられている。第2噴出口39は、移動支持部材31の外側と凹み空間37の仕切り壁38により仕切れた二つの空間37a,37bのうちの下方の空間37aとを互いに連通している。
【0044】
第2噴出口39は、加圧気体供給部12により供給された加圧された気体を前述した空間37aを介してマンドレル25の外周面に向かって噴出する。そして、第2噴出口39から噴出された加圧された気体は、前述した空間37a内に充填されて、前記仕切り壁38を乗り越えて前記空間37b内に侵入しようとするとともに、マンドレル25との間から移動支持部材31外に漏れ出ようとする。このとき、前述した加圧気体供給部12から供給された気体の圧力によって、移動支持部材31をマンドレル25と同軸となる位置に位置決めし、当該移動支持部材31の端面31a上の基体4をマンドレル25と同軸となる位置に位置決めする。第2排気口40は、移動支持部材31の外側と凹み空間37の仕切り壁38により仕切れた二つの空間37a,37bのうちの上方の空間37bとを互いに連通している。即ち、第2排気口40は、移動支持部材31の端面31aと第2噴出口39との間に設けられている。第2排気口40は、前述した空間37b内に侵入した加圧された気体を移動支持部材31外に排気する。第2排気口40は、開口を極力大きくして、排出される気体の流速を低下させて、当該排出される気体の圧力を回りの雰囲気の圧力と直ちに等しくなるようになっている。
【0045】
リニアエンコーダは、移動支持部材31の位置を検出する。リニアエンコーダは、検出した移動支持部材31の位置を、制御装置13に向かって出力する。
【0046】
このように、保持部18は、マンドレル25を基体4内に通して、当該基体4を移動支持部材31の端面31a上に重ねることで、被塗装物としての基体4を保持する。また、移動支持部26即ち保持部18は、リニアアクチュエータ29の移動子33を鉛直方向に移動させることで、移動支持部材31の端面31a上に重ねられた基体4を当該基体4の軸芯Pに沿って鉛直方向に沿って移動させる。こうして、移動支持部26は、基体4を塗布ノズル19に対して基体4の軸芯Pに沿って相対的に移動させる。
【0047】
塗布ノズル19は、図1に示すように、中空の円環状に形成されている。塗布ノズル19には、配管15が接続されており、その内側の空間に当該配管15即ち前述した塗料供給ユニット10から塗料7が供給される。配管15は、塗布ノズル19内部への塗料7供給による圧力分布の不均一性を低減させるために、複数本が塗布ノズル19の周方向に互いに間隔をあけて接続されることが望ましい。塗布ノズル19は、内側にマンドレル25を通した状態で、ノズル支持テーブル24上に固定されている。塗布ノズル19は、マンドレル25及び該マンドレル25が内側に通された基体4などと同軸に配置されているとともに、その内周面がマンドレル25の上端部と間隔をあけて相対する位置に設けられている。また、塗布ノズル19の内径は、マンドレル25が内側に通された基体4の外径よりも大きい。即ち、塗布ノズル19の内周面41は、基体4の外周面4c(プライマ層3の外表面)と間隔CGをあけて相対しているとともに、保持部18に保持された基体4と同軸に配置されている。
【0048】
また、塗布ノズル19の内周面41には、当該塗布ノズル19の内外を連通する吐出口としての塗布スリット19bが、該塗布ノズル19の全周に亘って形成されている。塗布スリット19bは、マンドレル25の軸芯方向の当該マンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと噴出口28との間に設けられている。こうして、塗布スリット19bは、マンドレル25の上端部と相対する位置に設けられている。
【0049】
塗布ノズル19は、塗料供給ユニット10から供給された塗料7を、塗布スリット19bを通して、保持部18のマンドレル25が内側に通された基体4の外周面4cに向かって水平方向に吐出する。この際、塗料7は塗布スリット19b全周から均一に吐出され、該吐出された塗料7が円錐状の塗料膜を形成する。また、本明細書では、この塗布スリット19bから吐出されて基体4の外周面4cに付着するまでの円錐状の塗料膜を「カーテン膜」と呼ぶ。
【0050】
加圧気体供給部12は、図示しない加圧気体供給源と、加圧基体供給源に連結しかつ途中で分岐した一対の配管42a,42bと、これらの配管42a,42bそれぞれに設けられた変更手段としてのレギュレータ43a,43b及びバルブ44a,44bとを備えている。加圧気体供給源は、加圧された気体が充填されたタンクやコンプレッサなどの送風機で構成されている。加圧気体供給源は、加圧された気体を配管42a,42bに供給する。
【0051】
配管42a,42bのうち一方の配管42aは、マンドレル25の下端部を貫通して、前述した気密室46に接続して、加圧気体供給源から供給された加圧された気体を当該気密室46即ち噴出口28内に供給する。他方の配管42bは、移動支持部材31に設けられた第2噴出口39に接続して、加圧気体供給源から供給された加圧された気体を当該凹み空間37の下方の空間37a内に供給する。
【0052】
レギュレータ43a,43bは、配管42a,42b内の気体の圧力即ち気密室46及び噴出口28内に供給される気体の圧力と前述した凹み空間37内に供給される気体の圧力とを変更可能である。バルブ44a,44bは、気密室46及び噴出口28内への気体の供給の遮断・開放と前述した凹み空間37内への気体の供給の遮断・開放とを切り換える。
【0053】
加圧気体供給部12は、加圧気体供給源の加圧された気体を噴出口28に導いて当該噴出口28を通してマンドレル25の外周面と基体4の内周面との間に噴出させるとともに、加圧気体供給源の加圧された気体を第2噴出口39に導いて当該第2噴出口39を通してマンドレル25の外周面と移動支持部材31との間に噴出させる。また、加圧気体供給部12は、前述した噴出口28,39内に供給する気体の圧力が変更可能となっている。
【0054】
制御装置13は、周知のRAM、ROM、CPUなどを有したコンピュータである。この制御装置13は、塗料供給ユニット10と、塗布ユニット11と、加圧気体供給部12に接続しており、これらを制御して、塗膜形成装置1全体の制御を司る。即ち、制御装置13には、保持部18の移動支持部26のリニアエンコーダからの情報が入力されるとともに、リニアエンコーダからの塗布ノズル19の位置に応じた情報に基づいて、保持部18の移動支持部26のリニアアクチュエータ29と、加圧気体供給部12のレギュレータ43a,43b及びバルブ44a,44bと、塗料供給ユニット10のユニット本体14の汲み上げポンプなどの動作を制御して、塗布ノズル19を軸芯Pに沿って移動させながら基体4の外周面4cに塗料7を塗布して、塗膜8即ち弾性層5を形成する。
【0055】
前述した実施形態の塗膜形成装置1は、以下のように、塗膜8即ち弾性層5を形成する。まず、保持部18の移動支持部26の移動支持部材31を最も下方に位置付けておく。そして、下端部4bが移動支持部材31の端面31aに重なるように、基体4をマンドレル25に被せて、当該基体4内にマンドレル25を通す。そして、塗膜形成装置1は、制御装置13がバルブ44a,44bを開放して、加圧気体供給部から加圧された気体を噴出口28及び第2噴出口39から噴出させる。
【0056】
すると、図3に示すように、噴出口28から噴出された気体により基体4の内周面とマンドレル25との間に空気層が形成され、これらが互いに同軸に保たれて互いに接触することがない。また、図3に示すように、第2噴出口39から噴出された気体によりマンドレル25と移動支時部材31との間に空気層が形成され、これらが互いに同軸に保たれて互いに接触することがない。
【0057】
そして、制御装置13が、塗料供給ユニット10から塗布ノズル19への塗料7の供給を開始するとともに、リニアアクチュエータ29の移動子33を上方に一定速度で移動させる。移動支持部材31即ち基体4の移動により、塗料7が基体4の外周面4cに付着して、当該基体4の外周面4cに塗膜8が形成される。そして、移動支持部材31が最も上方に位置付けられて、基体4の略全長に亘って塗膜8が形成されると、制御装置13が、塗料供給ユニット10から塗布ノズル19への塗料7の供給を停止するとともに、リニアアクチュエータ29の移動子33を停止する。そして、塗膜8が形成された基体4を移動支持部材31上から取り除く。そして、次工程において、加硫(加熱)することにより、塗膜8を硬化して、弾性層5を形成する。前述した工程を繰り返して、新たな基体4に弾性層5を形成する。
【0058】
塗膜8を形成するときの気体の流れを、以下、説明する。気密室46内に供給された加圧された気体は、噴出口28を通して基体4の内周面に向かって噴出される。そして、噴出口28がマンドレル25の上端部に設けられているので、噴出口28から噴出された気体が、図3中の矢印に沿ってマンドレル25の外周面と基体4の内周面との間を流れて、テーパ面27の基部27a即ちマンドレル25の上端としての基部27aから大気開放される。このように、噴出口28がマンドレル25の上端部に設けられているので、塗膜8の形成の進捗状況によって、基体4が上方に移動しても、前述した噴出口28からテーパ面27の基部27a即ちマンドレル25の上端に至る気体の流路の長さが変動しない。このために、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が、基体4が移動しても変動せずに、基体4がマンドレル25に対して常に略一定の範囲内を通過する。
【0059】
また、基体4の内径がばらついていても、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が、マンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと基体4の内周面との間から排気される気体の流量によって変化するために、基体4がマンドレル25に対して常に略一定の範囲内を通過する。具体的には、基体4の内径が大きい場合には、図4に示すように、噴出口28から噴出される気体の圧力によって、基体4が膨らんで、マンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと基体4の内周面との間から排気される気体の流量が増加する。
【0060】
そして、結果的に、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が比較的低くなって、基体4の膨らみが抑制される。また、基体4の内径が小さい場合には、図5に示すように、噴出口28から噴出される気体の圧力によって、基体4が膨らんで、マンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと基体4の内周面との間から排気される気体の流量が低下する。そして、結果的に、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が比較的高くなって、基体4の膨らみが増加される。こうして、基体4の内径がばらついても基体4がマンドレル25に対して常に略一定の範囲内を通過するとともに、内径が大きな基体4であっても内径が小さな基体4であっても、基体4がマンドレル25に対して常に略一定の範囲内を通過する。
【0061】
このことは、以下の式1(ナビエストークスの式で導かれえる平行平板間のクエット−ポアズイユの流れを示す式)、式2(基体4の周方向の張力の式)及び式3(基体4の周方向の張力と内圧の力の釣り合い式)、加圧気体供給部12から供給される加圧された気体の圧力を一定とし、マンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと基体4の内周面との間から排気される気体の流量と、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力とが反比例することから、式4のように、基体4の外周面4cの位置の変化量ΔGと、基体4の内径の変化量ΔDとの関係を求めることができる。
【0062】
【数1】

【0063】
【数2】

【0064】
【数3】

【0065】
【数4】

【0066】
ただし、ΔG:基体4の外周面4cの変位量、ΔD:基体4の内径の変位量、D:基体4の内径、μ:気体の粘性係数、L:流路の長さ(噴出口28からテーパ面27の基部27aまでの長さ)、δ:基体4のヤング率、i:係数、Q:噴出口28から噴出される気体の流量、P:噴出口28から噴出される気体の圧力、T:基体4の張力とする。
【0067】
即ち、式4によれば、基体4の外周面4cの変位量ΔGは、基体4の内径の変位量ΔDの0.4乗の関数であり、ΔDが増加するのにしたがってΔGへの影響が小さくなるため、基体4の内径に対して基体4の外周面4cの位置のばらつきを小さい範囲に収めることができる。また、式4によれば、流路の長さLが一定の値とならなければ、基体4の外周面4cの位置がばらついてしまうことが明らかとなった。このように、前述した実施形態の構成とすることにより、基体4の外周面4cと塗布ノズル19の塗布スリット19bとの間の距離を高精度に一定の距離に保つことが可能となり、均一な厚みの塗膜8即ち弾性層5を形成することができる。
【0068】
なお、前述した式1、式2、式3及び式4は、以下のように求められる。まず、式1を説明する。粘性流体の運動方程式であるナビエストークスの式で導かれる図9に示す平行平板200間のクエットポアズイユの流れは、平行平板200の長さをL、平行平板200間の間隔を2bとすると、以下の式5で示すことができる。
【0069】
【数5】

【0070】
上記式5を、本実施形態の塗膜形成装置1に適用すると、マンドレル25の外周面と基体4との間の間隔G=2bであるので、上記式5は、以下の式6となる。
【0071】
【数6】

【0072】
ここで、マンドレル25の上端であるテーパ面27の基部27aにおける圧力が大気圧であるので、上記式6において、ΔP=P−0=Pとなるので、上記式6は、上記式1となる。
【0073】
次に式2を説明する。図10に示す断面において、基体4の張力の変化をΔTとし、基体4の周方向の伸びΔXとし、基体4のバネ定数を上記ヤング率δとすると、基体の周方向の張力は、以下の式7で示すことができる。
【0074】
【数7】

【0075】
ここで、マンドレル25の外周面と基体4との間隔の変化をΔGとし、このΔGを基体4の周方向に換算すると、円周長さが2π×半径の関係から、以下の式8が成立する。
【0076】
【数8】

【0077】
上記式8を式7に代入すると、上記式2が得られる。
【0078】
次に式3を説明する。図10に示す断面において、基体4の内周面にかかる力の総和は、円周方向の長さ×圧力で示すことができるので、PπDで示すことができ、この力の総和と基体4内の張力とが釣り合っているので、以下の式9が成立する。よって、上記式3が得られる。
【0079】
【数9】

【0080】
次に式4を説明する。式2と式3とからΔTを消去すると、PπΔD=2δπΔGとなり、以下の式10となる。
【0081】
【数10】

【0082】
ここで、前述した実施形態では、マンドレル25と基体4との間から大気開放される即ちマンドレル25と基体4との間から排気される気体の流量が増えると、マンドレル25と基体4との間の圧力が低下することから、Iを定数とすると、上記流量Qと上記圧力Pとは、反比例し、以下の式11が成立する。
【0083】
【数11】

【0084】
上記式11を上記式1に代入すると、以下の式12となる。
【0085】
【数12】

【0086】
上記式10と上記式12とからPを消去すると、以下の式13となる。
【0087】
【数13】

【0088】
ここで、Iが定数であるので、(3I)0.2=i(定数)とすると、上記式4を得ることができる。
【0089】
前述したように弾性層5が形成された定着ベルト2は、図8に示される画像形成装置101を構成する。画像形成装置101は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像則ちカラー画像を、一枚の転写材としての記録紙107に形成する。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の各色に対応するユニットなどを、以下、符号の末尾に各々Y、M、C、Kを付けて示す。
【0090】
画像形成装置101は、図8に示すように、装置本体102と、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、転写ユニット104と、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kと、複数のプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kとを少なくとも備えている。
【0091】
装置本体102は、例えば、箱状に形成され、フロア上などに設置される。装置本体102は、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、転写ユニット104と、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kと、複数のプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kを収容している。
【0092】
給紙ユニット103は、装置本体102の下部に複数設けられている。給紙ユニット103は、前述した記録紙107を重ねて収容するとともに装置本体102に出し入れ自在な給紙カセット123と、給紙ローラ124とを備えている。給紙ローラ124は、給紙カセット123内の一番上の記録紙107に押し当てられている。給紙ローラ124は、前述した一番上の記録紙107を、転写ユニット104の後述する搬送ベルト129と、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kが備える感光体ドラムとの間に送り出す。
【0093】
レジストローラ対110は、給紙ユニット103から転写ユニット104に搬送される記録紙107の搬送経路に設けられており、一対のローラ110a、110bを備えている。レジストローラ対110は、一対のローラ110a、110b間に記録紙107を挟み込み、該挟み込んだ記録紙107を、トナー像を重ね合わせ得るタイミングで、転写ユニット104とプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kとの間に送り出す。
【0094】
転写ユニット104は、給紙ユニット103の上方に設けられている。転写ユニット104は、駆動ローラ127と、従動ローラ128と、搬送ベルト129と、転写ローラ130Y、130M、130C、130Kとを備えている。駆動ローラ127は、記録紙107の搬送方向の下流側に配置されており、駆動源としてのモータなどによって回転駆動される。従動ローラ128は、装置本体102に回転自在に支持されており、記録紙107の搬送方向の上流側に配置されている。搬送ベルト129は、無端環状に形成されており、前述した駆動ローラ127と従動ローラ128との双方に掛け渡されている。搬送ベルト129は、駆動ローラ127が回転駆動されることで、前述した駆動ローラ127と従動ローラ128との回りを図中半時計回りに循環(無端走行)する。
【0095】
転写ローラ130Y、130M、130C、130Kは、それぞれ、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラムとの間に搬送ベルト129と該搬送ベルト129上の記録紙107とを挟む。転写ユニット104は、転写ローラ130Y、130M、130C、130Kが、給紙ユニット103から送り出された記録紙107を各プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラムの外表面に押し付けて、感光体ドラム上のトナー像を記録紙107に転写する。転写ユニット104は、トナー像を転写した記録紙107を定着ユニット105に向けて送り出す。
【0096】
定着ユニット105は、転写ユニット104の記録紙107の搬送方向下流に設けられ、互いの間に記録紙107を挟む一対のベルト2、2aを備えている。このベルト2が前述した定着ベルト2でありかつ特許請求の範囲の電子写真用定着部材をなしている。ベルト2aが定着ベルト2に対して圧接する加圧ベルと(加圧部材)2aである。定着ユニット105は、一対のベルト2、2a間に転写ユニット104から送り出されてきた記録紙107を挟み込んで、押圧加熱することで、感光体ドラム108から記録紙107上に転写されたトナー像を、該記録紙107に定着させる。
【0097】
レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、それぞれ、装置本体102の上部に取り付けられている。レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、それぞれ一つのプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kに対応している。レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kが備える帯電ローラにより一様に帯電された感光体ドラムの外表面にレーザ光を照射して、静電潜像を形成する。
【0098】
プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、それぞれ、転写ユニット104と、レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kとの間に設けられている。プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、装置本体102に着脱自在である。プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、記録紙107の搬送方向に沿って、互いに並設されている。プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、帯電装置としての帯電ローラと、静電潜像担持体としての感光体ドラムと、クリーニング装置としてのクリーニングブレードと、現像装置と、を備えている。このため、画像形成装置101は、帯電ローラと、感光体ドラムと、クリーニングブレードと、現像装置と、を少なくとも備えている。
【0099】
画像形成装置101は、以下に示すように、記録紙107に画像を形成する。まず、画像形成装置101は、感光体ドラムを回転して、この感光体ドラムの外表面を一様に帯電ローラにより帯電する。感光体ドラムの外表面にレーザ光を照射して、該感光体ドラムの外表面に静電潜像を形成する。そして、静電潜像が現像領域に位置付けられると、現像装置の備える現像スリーブの外表面に吸着した現像剤が感光体ドラムの外表面に吸着して、静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラムの外表面に形成する。
【0100】
そして、画像形成装置101は、給紙ユニット103の給紙ローラ124などにより搬送されてきた記録紙107が、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラムと転写ユニット104の搬送ベルト129との間に位置して、感光体ドラムの外表面上に形成されたトナー像を記録紙107に転写する。画像形成装置101は、定着ユニット105で、記録紙107にトナー像を定着する。こうして、画像形成装置101は、記録紙107にカラー画像を形成する。
【0101】
本実施形態によれば、噴出口28を通して内側にマンドレル25が通された基体4の内周面に向かって加圧された気体を噴出させるので、マンドレル25の外周面上に基体4を浮かせることとなり、当該基体4を容易で確実に一定速度で移動させることができる。
【0102】
また、基体4の内周面に向かって気体を噴出する噴出口28をマンドレル25の上端部に設けているので、当該マンドレル25の全長を基体4の全長の2倍よりも遥かに短くすることができ、マンドレル25の全長を基体4の全長と略等しくすることができる。このため、噴出口28から噴出された気体が大気開放されるまでの流路が、常に、噴出口28とマンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aとの間の空間となるので、基体4の位置が変化しても、マンドレル25の外周面と基体4との間の空間内の圧力が変動しない。よって、基体4の外周面4cと塗布ノズル19との間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜8即ち弾性層5を形成することができる。
【0103】
噴出口28がマンドレル25に周方向に等間隔に設けているので、マンドレル25の外周面と基体4との間の空間の圧力が、周方向にも均一となる。よって、基体4の外周面と塗布ノズル19との間の間隔を常に一定にすることができる。
【0104】
内径が基体4の外径よりも小さくマンドレル25の外径よりの大きい移動支持部材31の端面31a上に基体4を重ねているので、当該移動支持部材31を移動させることで、スムーズに基体4を移動させることができる。よって、移動支持部材31を一定速度で移動させることで、基体4を容易で確実に一定速度で移動させることができる。
【0105】
移動支持部材31にマンドレル25の外周面に向かって気体を噴出する第2噴出口39を設けているので、当該第2噴出口39を通して気体を噴出することで、移動支持部材31とマンドレル25とを同軸に保つことができる。
【0106】
端面31aと第2噴出口39との間に第2排気口40を設けているので、第2噴出口39から噴出された気体が第2排気口40を通して、移動支持部材31とマンドレル25との間から排気される。このために、移動支持部材31の内側に噴出された気体がマンドレル25と基体4との間に侵入することを防止でき、基体4と端面31aとの間の隙間から気体が漏れ出ることを防止し、基体4の他端部4bが外側に拡がってしまうことを防止できる。よって、基体4の外周面4cと塗布ノズル19との間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜8即ち弾性層5を形成することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、厚みにばらつきのない塗膜8即ち弾性層5の定着ベルト2を得ることができる。
【0108】
さらに、画像形成装置101は、厚みにばらつきのない弾性層5を有した定着ベルト2を備えているので、高い画像品質を得ることができる。
【0109】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる塗膜形成装置1を図11及び図12に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0110】
本実施形態の塗膜形成装置1では、図11及び図12に示すように、マンドレル25の上端部に設けられた気密室46がマンドレル25の他の部分よりも大径に形成されているとともに、当該マンドレル25の上端部において気密室46の上方と下方との双方とマンドレル25の上端面に排気口47を設けている。排気口47は、マンドレル25の内外を連通した(即ちマンドレル25を貫通した)孔であり、かつ気密室46の上方と下方との双方に設けられた排気口47は、マンドレル25の周方向に等間隔に設けられ、マンドレル25の上端面に設けられた排気口47は、当該上端面の中央に設けられている。即ち、排気口47は、噴出口28の直ぐ下方に設けられている。また、本実施形態では、マンドレル25の下端部に当該マンドレル25を貫通(マンドレル25の内外を連通)した排気口47が設けられている。
【0111】
本実施形態では、噴出口28からマンドレル25の外周面と基体4の内周面との間に噴出された気体が、図12中の矢印で示すように流れて、排気口47を通してマンドレル25内に導かれる即ちマンドレル25と基体4との間からこれらの間の外に排気される。そして、気体は、排気口47を通してマンドレル25外に排気される。
【0112】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の効果に加え、噴出口28の下方に排気口47が設けているので、噴出口28から噴出された気体が排気口47を通して、マンドレル25と基体4との間から排気される。このために、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が高くなりすぎることを防止できる。よって、基体4の外周面4cと塗布ノズル19との間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜8即ち弾性層5を形成することができる。
【0113】
次に、本発明の第3の実施形態にかかる塗膜形成装置1を図13に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0114】
本実施形態の塗膜形成装置1では、図13に示すように、計測手段としてのレーザ変位計45を備えている。レーザ変位計45は、ノズル支持テーブル24にマンドレル25の上端部に相対した状態で取り付けられている。レーザ変位計45は、内側にマンドレル25が通された基体4の外周面4cに向かってレーザを照射し当該基体4の外周面4cから反射されたレーザを受光することで、当該レーザ変位計45と基体4の外周面4cとの間の距離を計測する。レーザ変位計45は、基体4の上端部との間の距離を計測することで、基体4の外径(外径に応じた情報)を計測する。レーザ変位計45は、計測して得た結果を制御装置13に向かって出力する。
【0115】
制御装置13は、レーザ変位計45が計測した基体4の外径に応じて、レギュレータ43bに気体の圧力を変更させる。具体的には、レーザ変位計45が計測した基体4の外径が予め定められた所定の値を下回っている場合には、レギュレータ43bに気体の圧力を高くさせ、レーザ変位計45が計測した基体4の外径が予め定められた所定の値を上回っている場合には、レギュレータ43bに気体の圧力を低くさせて、基体4と塗布スリット19bとの間の間隔が常に所定の値に一定となるように、気体の圧力を変更させる。
【0116】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の効果に加え、制御装置13が、レーザ変位計45が計測した基体4の外径に応じて、噴出口28を通してマンドレル25と基体4との間に供給する気体の圧力を変更する。このために、基体4の外径が一定となるように、噴出口28を通してマンドレル25と基体4との間に供給する気体の圧力を変更できる。よって、基体4の外周面4cと塗布ノズル19との間の間隔を常に一定にすることができ、厚みにばらつきがない塗膜8即ち弾性層5を確実に形成することができる。なお、本実施形態においても、前述した噴出口28を設けてもよい。
【0117】
また、前述した実施形態では、定着ベルト2の弾性層5を形成する場合を示しているが、本発明は、定着ベルト2に限ることなく、定着ローラなどの種々の被塗装物に塗膜を形成しても良いことは勿論である。
【0118】
次に本発明の発明者らは、本発明の塗膜形成装置1の効果を確認した。まず、図14に結果を示す第1の実験では、以下の本発明品1において、ポリイミドで構成され、内径が147.1mm、長さが420mm、厚みが110μmの基体4に、粘度が20000Pa・s(パスカル秒)の2液混合タイプの付加反応型熱硬化性樹脂液状シリコーンエラストマーを塗料7として塗布した。加硫後に厚み200±30μm(定着ベルト2に要求される良好な画像品質を得るための厚み)となるように、塗膜8を形成した。なお、塗布後、基体4の両端部それぞれ25mmを切断して、当該基体4の全長を370mmとする。
【0119】
本発明品1では、前述した第1の実施形態の塗膜形成装置1において、外径が147.21mm、長さが560mmのマンドレル25を用い、マンドレル25の上端部に設けられた幅が2mmのV溝の底部に開口しかつ直径1mmの噴出口28を周方向の等間隔に16個形成した。さらに、V溝とマンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aとの間の距離を15mmとし、噴出する気体の圧力を0.08MPaとし、塗布ノズル19の塗布スリット19b部分の内径を148.2mmとした。本発明品1において、均一な厚みを得るためには、塗布ノズル19の塗布スリット19bと基体4の外周面4cとの間の距離を330±20μm以内にしなければならない。また、本発明品1では、移動支持部材31の内径を147.35mmとし、噴出口28から噴出する気体の圧力を0.1MPaとし、当該移動支持部材31の上昇速度を30mm/sとし、塗料7の吐出流量を2.7cc/secとした。
【0120】
この場合、互いに内径の異なる基体4を本発明品1の塗膜形成装置1に取り付けた時の当該基体4の内径を図14に示す。なお、図14中の横軸は、塗膜形成装置1に取り付ける前の各基体4の内径を示し、図14中の縦軸は、塗膜形成装置1に取り付けた後の各基体4の内径を示している。
【0121】
図14によれば、内径が0.1mm異なる基体4であっても、本発明品1の塗膜形成装置1に取り付けると、内径の差が20μm以下となることが明らかとなった。即ち、本発明品1では、基体4の外周面4cと塗布ノズル19の塗布スリット19bとの間の間隔を一定の範囲内にできることが明らかとなった。
【0122】
次に、図15に結果を示す第2の実験では、本発明品1に加え、本発明品2、本発明品3及び比較例において、ポリイミドで構成され、内径が147.1mm、長さが420mm、厚みが110μmの基体4に、粘度が20000Pa・s(パスカル秒)の2液混合タイプの付加反応型熱硬化性樹脂液状シリコーンエラストマーを塗料7として塗布した。加硫後に厚み200±30μm(定着ベルト2に要求される良好な画像品質を得るための厚み)となるように、塗膜8を形成した。なお、塗布後、基体4の両端部それぞれ25mmを切断して、当該基体4の全長を370mmとする。
【0123】
本発明品2では、前述した第2の実施形態の塗膜形成装置1において、気密室46の全長を30mm、外径を148.21mmとし、マンドレル25の上端部に設けられた幅が2mmのV溝の底部に開口しかつ直径1mm噴出口28及び排気口47を周方向の等間隔に16個形成した。また、マンドレル25の気密室46以外の部分の外径を145.14mmとし、他の条件は前述した本発明品1と等しくした。
【0124】
本発明品3では、前述した第3の実施形態の塗膜形成装置1において、レーザ変位計として、分解能が1μmのCCDタイプを用い、レギュレータ43a,43bとして圧力調整精度が1kPaのものを用いた。他の条件は前述した本発明品1と等しくした。
【0125】
比較例では、図19に示した従来の塗膜形成装置において、支持部材72としてのマンドレルの全長を950mmとし、被塗装物70としての基体の全長の2倍以上の長さとした。
【0126】
図15では、前述した本発明品1乃至本発明品3及び比較例において、内径が互いに等しい基体4をマンドレル25の軸芯に沿って移動させた時の当該基体4の外周面4cの位置をレーザ変位計により測定した。横軸が基体4の軸芯P方向の位置を示し、縦軸が基体4の外周面4cの位置(基体4の外径及び基体4の外周面4cと塗布ノズル19との間の間隔)を示している。
【0127】
図15によれば、基体4の両端部4a,4bの端から15mm以内の部分を除くと、本発明品1乃至本発明品3のいずれも、基体4の外周面4cの位置が略一定の範囲内であるのに対し、比較例では、基体4の中央部に向かうにしたがって基体4の外径が広くなっていることが明らかとなった。これは、基体4の移動に伴って、気体を噴出する噴出口から大気開放される位置までの距離が変化して、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が変動するためである。特に、基体4の中央部が噴出口28上に差し掛かった状態では、当該気体が大気開放されるまでの抵抗が最も大きくなり、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が最も高くなるので、基体4も最も膨らんだ状態となる。
【0128】
また、図15によれば、本発明品1においても、基体4の両端部4a,4bの端から15mm以内では噴出口28上に差し掛かると、マンドレル25と基体4との間の空間の圧力が変動し、基体4の外周面4cと塗布ノズル19の塗布スリット19bとの間の間隔を一定に保つことができず、均一な厚みの塗膜8を形成できない。図16(a)及び図16(b)に示すように、塗布ノズル19がマンドレル25の上端としてのテーパ面27の基部27aと噴出口28の間に配置される場合、図中Ls,Leの範囲は均一な厚みの塗膜8が得られない。図16(c)に示すように、塗布ノズル1が噴出口28の下に配置される場合、均一な厚みの塗膜8が得られない範囲は図中のLoで示すLs+Leよりも長い範囲となってしまう。すなわち、噴出口28から気体が基体4の内周に沿って流れて大気開放されるまでの流路の軸方向最短長さは、基体4の両端部4a,4bの膜厚公差適用外長さの和以下とする必要があることが明らかとなった。
【0129】
次に、前述した本発明品1、本発明品2、本発明品3及び比較例において、それぞれ、内径が異なる基体4を保持して当該基体4をマンドレル25の軸芯に沿って移動させたときの当該基体4の外周面4cの位置のばらつきを測定した。測定結果を図17に示す。図17中の横軸は、基体4の内径のばらつき(偏差)を示し、縦軸は、基体4の外周面4cの位置のばらつきを示している。また、図17において、本発明品1を白ひし形で示し、本発明品2を白三角で示し、本発明品3を白丸で示し、比較例を黒四角で示している。図17によれば、比較例では、基体4の内径が大きくなると、基体4の外周面4cの位置のばらつきも大きくなるが、本発明品1乃至本発明品3では、基体4の内径が大きくなっても、基体4の外周面4cの位置のばらつきが40μm未満を保って大きくならないことが明らかとなった。
【0130】
また、図17に示す各基体4に、本発明品1乃至本発明品3及び比較例の塗膜形成装置1が塗膜8を形成した時の塗膜8の厚みの偏差を図18に示す。また、図18において、本発明品1を白ひし形で示し、本発明品2を白三角で示し、本発明品3を白丸で示し、比較例を黒四角で示している。
【0131】
図18によれば、比較例では、基体4の内径が大きくなると、塗膜8の厚みのばらつきも大きくなるが、本発明品1乃至本発明品3では、基体4の内径が大きくなっても、塗膜8の厚みのばらつきが60μm未満を保って大きくならないことが明らかとなった。なお、図17及び図18において、基体4の上端から40mm、210mm、380mmとなる箇所のそれぞれにおいて周方向に4箇所を測定し、合計12箇所の偏差を求めて、縦軸の値を求めている。
【0132】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本発明の塗膜形成装置は、例えば、複写機やファクシミリ、LBP等の画像形成装置において、定着、加圧、帯電、現像などに使用される円筒状部材(ベルトやチューブ)、円柱部材の塗装に応用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 塗膜形成装置
2 定着ベルト(電子写真用定着部材)
4 基体(被塗装物)
4c 外周面
7 塗料
8 塗膜
13 制御装置(制御手段)
19 塗布ノズル
19b 塗布スリット(吐出口)
25 マンドレル(支持部材)
26 移動支持部(移動手段)
27b 基部(上端)
28 噴出口
31 移動支持時部材
31a 端面
39 第2噴出口
40 第2排気口
43b レギュレータ(変更手段)
45 レーザ変位計(計測手段)
47 排気口
101 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【特許文献1】特開2004−290853号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被塗装物内に通す支持部材と、前記被塗装物の外周面に前記塗料を塗布する塗布ノズルと、前記被塗装物を当該被塗装物の軸芯に沿って前記塗布ノズルに対して相対的に移動させる移動手段とを有する塗膜形成装置において、
前記支持部材の上端部には、前記被塗装物の内周面に向かって気体を噴出する噴出口が設けられ、そして、前記塗布ノズルの前記塗料を吐出する吐出口が、前記支持部材の上端部と相対する位置に設けられていることを特徴とする塗膜形成装置。
【請求項2】
前記噴出口が、前記支持部材の周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項3】
前記噴出口の下方に前記支持部材を貫通した排気口が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗膜形成装置。
【請求項4】
内側に前記支持部材を通しかつ内径が前記被塗装物の外径よりも小さくかつ前記支持部材の外径よりも大きく形成されているとともに端面上に前記被塗装物が置かれて前記移動手段により前記支持部材の軸芯に沿って移動させることにより前記被塗装部材を前記塗布ノズルに対して相対的に移動させる移動支持部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項5】
前記移動支持部材に前記支持部材の外周面に向かって気体を噴出する第2噴出口が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の塗膜形成装置。
【請求項6】
前記端面と前記第2噴出口との間に第2排気口が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の塗膜形成装置。
【請求項7】
前記支持部材が内側に通された前記被塗装物の外径を計測可能な計測手段と、前記噴出口内に供給する気体の圧力を変更可能な変更手段と、前記変更手段に前記被塗装物の外径に応じて前記気体の圧力を変更させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された塗膜形成装置により塗膜が形成されたことを特徴とする電子写真用定着部材。
【請求項9】
請求項8に記載された電子写真用定着部材を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−58316(P2012−58316A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198891(P2010−198891)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】