説明

塗装乾燥装置および塗装乾燥方法

【課題】複雑形状の被塗装物に対して変形自在な誘導コイルを用いて、均一な温度分布での誘導加熱を行うことのできる塗装乾燥装置および塗装乾燥方法を提供する。
【解決手段】被塗装物1に塗布された塗料を誘導加熱により乾燥する塗装乾燥装置10であって、被塗装物1を加熱するために必要な形状に合わせて変形が可能な誘導コイル20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装乾燥装置および塗装乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の塗装工程において、誘導コイルによる誘導加熱を利用して塗料を短時間で乾燥させる技術がある(特許文献1)。具体的には、塗料が塗布された自動車のボディの表面に、誘導コイルを設置し、磁場を発生させて金属表面部分に誘導電流を流すことで、ジュール熱による誘導加熱を利用した塗装を短時間で行っている。
【0003】
なお、関連技術としては特許文献2、3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−124512号公報
【特許文献2】特開2000−239896号公報
【特許文献3】特開平7−185439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術において、誘導コイルは自動車ボディの金属面に沿うように変化させる構成になっているため、誘導加熱が行えるのは自動車ボディの面構造をした所定部分に限定されていた。しかしながら、自動車ボディの面構造をした部分以外は複雑形状をしており、その内部では磁場の影響が弱まってしまうため、温度分布を均一にできない。このため、複雑形状の場合、誘導加熱による乾燥を行うことが難しいという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、金属面以外の複雑形状物や構造体形状の被塗装物でも良好に誘導加熱によって乾燥をすることのできる塗装乾燥装置および塗装乾燥方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、被塗装物に塗布された塗料を誘導加熱により乾燥する塗装乾燥装置である。その塗装乾燥装置は、被塗装物を加熱するために必要な形状に合わせて変形が可能な誘導コイルを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘導コイルの形状を変形させることで、誘導コイルから発する磁束密度の強さや領域を調整することができる。このため、面以外の複雑形状の被塗装物にも対応することができ、誘導加熱を起こす被塗装物の表面温度を均一にして、良好に誘導加熱によって乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】自動車ボディの塗装工程のフローチャート図である。
【図2】本実施形態の塗装乾燥装置の模式図である。
【図3】型子の一例を示す概略図である。
【図4】複数の形状のくぼみを備えた型子の概略図である
【図5】ロボットによる誘導コイルの移動経路を示す概略図である。
【図6】温度分布測定を示す概略図である。
【図7】図6の温度分布測定結果を示すグラフである。
【図8】異なる方向から測定した鋼板表面の温度分布を示すサーモグラフィの画面である。
【図9】異なる設定で誘導加熱を行った鋼板表面の温度分布を示すサーモグラフィの画面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、自動車ボディの塗装工程のフローチャート図である。図1に示すように、溶接を終了した自動車ボディは、塗装ラインへ搬入される。塗装ラインでは、前処理工程S1、電着工程(下塗り工程)S2、シーリング工程S3、中塗り工程S4、上塗り工程S5が行われ、自動車ボディへの塗装が完了する。
【0012】
それぞれの工程について簡単に説明する。それぞれの工程において、自動車ボディはコンベアやハンガなどにより間欠的に順次搬送され処理が行われる。前処理工程S1では、塗装の主な障害となる錆や油などをとる処理、塗装が自動車ボディに付きやすくするための表面処理、リン酸化膜の作成処理などを行う。電着工程S2では、自動車ボディと塗料のなじみを良くする処理、錆を防止するための塗装を行う。シーリング工程S3では、パネル合わせ面やパネルエッジにシーリング材を塗布し、水密性や防錆性を確保する。中塗り工程S4では、電着工程における塗装表面を平滑にし、上塗りの仕上がりを良くするための塗装を行う。上塗り工程S5では、自動車ボディの外観品質などを決定するための塗装を行う。それぞれの工程の末端、特に電着、中塗り、上塗り工程の末端には、塗装した塗膜を自動車ボディへ焼き付けるため、誘導加熱を利用した塗装乾燥装置10が備えられている。
【0013】
図2は、本実施形態の塗装乾燥装置の模式図である。図2に示すように、自動車ボディ1に塗装を行う塗装乾燥装置10は、誘導コイル20、コイル電源30、ロボット40、制御装置50、型子60、カメラ70、サーモグラフィ80を含んでいる。コイル電源30から交流電流を受け取り交流磁場を発生させる誘導コイル20は、ロボット40により経路tに沿って移動しながら、自動車ボディ1に対して誘導加熱を行う。カメラ70とサーモグラフィ80を使用して自動車ボディ1の表面温度を測定し、測定された表面温度に基づいて制御装置50はコイル電源30やロボット40を制御する。誘導コイル20は型子60により、自動車ボディ1を加熱するために必要な形状に合わせて変形する。自動車ボディ1および塗装乾燥装置10について更に詳細に説明する。
【0014】
自動車ボディ1は、誘導加熱により塗料の乾燥(塗料の焼付け)、塗装の硬化を行える材料であれば鉄材に限らない。たとえば、鋼材として、鉄やニッケルを含む鉄合金、銅合金、アルミ合金などを用いることができる。また、自動車ボディとして、誘導加熱により発生した熱エネルギーを熱伝導により周囲に伝え、塗装の焼付けや硬化を行うことができる誘導加熱効率の低い、または、誘導加熱ができない材料を含んでいてもよい。たとえば、銅、アルミ、ウレタン樹脂材などを用いることができる。
【0015】
自動車ボディ1へ焼き付ける塗料は、熱硬化型の樹脂を使用したものであれば、一般的な塗料を用いることができる。また、中塗り、上塗り等の異なる工程で用いられる、前処理皮膜、電着皮膜、中塗り塗料、シーリング剤、SGC塗料、ACC塗料、U/C塗料、接着剤などの乾燥も誘導加熱により可能である。塗料を自動車ボディ1に焼き付けるためには、塗料にもよるが約140〜170度の状態を所定の時間保持する必要がある。焼き付けるための時間は、たとえば約5分以内の時間である。
【0016】
誘導コイル20は、コイル電源30と接続され、コイル電源30から高周波電流を流されることによって交番磁界を発生する。その交番磁界の影響を受ける場所に自動車ボディ等の鋼板を設置することによって、鋼板表面に電磁誘導による過電流を生じさせ、誘導加熱により鋼板表面の温度を選択的に上昇させることができる。
【0017】
誘導コイル20はコイル素線をコイル状に巻回して形成される。誘導コイル20のコイル素線は、電気抵抗の低い材料が好ましく、たとえば、銅または銅合金が用いられる。また、素線の形状として、中実線や中空管(チューブ状)のものが用いられる。中実線を用いる場合、たとえば、エナメルなどで被覆した素線を撚った線材(リッツ線)が適当である。
【0018】
また、誘導コイル20の素線として、容易に変形が可能なフレキシブルチューブを使用するのが好ましい。チューブ状の素線を用いることにより、コイル素線内部に冷媒を流して冷却効果を上げ、コイル自身が発熱することによる過熱を防止することができる。さらに、チューブ状で中空なため、誘導コイルとしての形状を安定的に保持し、強固なものを作成することができる。コイル素線内部に流す冷媒として、たとえば、冷却材、水、空気などがある。コイル素線の直径は4〜20mmが好ましい。
【0019】
誘導コイル20の形状は変形自在であり、形状を変化させることによって、交番磁場の強さ、交番磁場の及ぼすことができる範囲を調整することができる。誘導コイルの形状は、例えば、平面状、柱状、円筒状、円錐状など多岐に選択することができる。円筒状や円錐状の誘導コイルの場合、コイルの断面はだ円形状も含まれる。
【0020】
また、誘導コイル20は、コイルの巻線形状を変形すること以外に、コイル径、コイルの巻数、コイルのピッチ間隔も変形可能である。これらのものを変更することによって、目的に応じた交流磁場を発生させることができ、複雑な形状の自動車ボディに対して効率よく誘導加熱を行うことができる。
【0021】
誘導コイル20は、外面に螺旋状の複数のくぼみを有する型子60(金型とも称される)にコイル素線をくぼみに合わせながら巻きつけてその形状を変更することにより、自動車ボディを加熱するために必要な形状にすることができる。図3の(a)、(b)に示すように、表面にらせん状のくぼみを有する略円筒形状の型子の径d1、d2を変更することによって、誘導コイル20の内径を変更することができる。また、図3の(a)、(b)に示すように、らせん状のくぼみのピッチ間隔p1、p2が違う型子を用意することによってコイルのピッチ間隔を変更することができる。図3(b)では、コイルのピッチ間隔を大きく取るためにくぼみの間にスペーサ66を入れている。
【0022】
図4は、複数の形状のくぼみを備えた型子の概略図である。図4に示すように、複数個の型子を用意せずに、一つの型子において、複数個の形状のくぼみ62,63,64を有する型子61を用意し、目的に応じた形状の誘導コイル20を成形することができる。さらに、その型子61とフレキシブルチューブとを使用することによって、複数のコイルを準備することなく一つのフレキシブルチューブで様々な形状の誘導コイルを作成することができる。また、自動車ボディ1は複雑形状をしているため、複数の誘導コイルを使用して自動車ボディの形状に合った誘導コイルを使用するのが適している。そこで、いくつかの形状の有する型子を用意し、一つのフレキシブルチューブで何種類もの誘導コイルを形成することによって、スペースを有効に使用できる。
【0023】
コイル電源30は、誘導コイル20に高周波電流を印加する。コイル電源から印加する高周波電流の出力値、周波数などを変化させることで、誘導コイルから発生させる交番磁場の大きさを変化させることができ、自動車ボディ1への焼き付けのための温度制御を行うことができる。
【0024】
ロボット40は、自動車ボディ1に対して交番磁場による影響がある位置まで誘導コイルを動かし近づける。誘導コイルと自動車ボディとの相対位置に関して、塗料が焼きつくために最適な状態にするべく、ロボットは誘導コイルの位置と近づけている時間を調整する。また、誘導コイルの大きさを自動車ボディよりも小さくした場合、誘導コイルと自動車ボディとの間隔を一定に保ちつつ、誘導コイルを所定の速度で動かしつつ、自動車ボディへ誘導加熱を行うこともできる。たとえば、ロボット40は、図1に示すように、誘導コイル20を経路t1に沿って、自動車ボディ1と所定の間隔を維持しながら動かすことができる。ロボット40の操作によって、自動車ボディ1の誘導加熱による温度分布を均一にすることができる。
【0025】
図5は、ロボット40による誘導コイルの移動経路を示す概略図である。図5に示すように、たとえば自動車ボディ1が誘導コイル20の内部に挿入できるように誘導コイル20を大きく作成し、ロボット40がたとえば経路t2やt3のように、誘導コイル20の内部を通しながら誘導加熱して自動車ボディ1への塗装を行っても良い。
【0026】
また、ロボット40は、自動車ボディの誘導加熱を起こす領域に応じた形状の誘導コイルを作成するために、型子にコイル素線を巻きつけて誘導コイルを作成することもできる。
【0027】
制御装置50は、誘導コイル20に接続されているコイル電源30およびロボット40の制御を行う。塗料を自動車ボディ1に焼き付けるには、所定の温度状態を所定の時間保持する必要がある。塗料にも依存するが、所定の温度は約140〜170℃の温度範囲であり、所定の時間は約5分以内の短い時間である。その所定の温度と時間を維持させるため、制御装置50は、コイル電源30から流す高周波電流のON/OFF及び電流値、周波数などを制御し、また、誘導コイル20の位置を調整するロボット40の制御を行う。
【0028】
制御装置50にカメラ70とサーモグラフィ80や赤外線センサなどの温感装置等を接続しても良い。温感装置は、誘導加熱による自動車ボディ1の表面温度を測定し、その温度分布を制御装置50に出力する。制御装置50は、温感装置からの測定結果に基づいて、塗料が自動車ボディ1に焼き付くための最適な温度状態になるように、コイル電源30から誘導コイル20に流す電流を変化させることや、誘導コイル20を自動車ボディ1に近づける位置と時間を調整するためにロボット40の制御を行うことができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例について説明するが、これらの実施例のみに制限されるものではない。
【0030】
実施例1
誘導加熱による塗膜の乾燥を調べるために、A4サイズの電着鋼板2上に塗料を塗布し、誘導コイル20の中を通しながら電着鋼板2の表面の温度変化を測定した(図6)。塗料として水系中塗N9.2(BASF)、シーリング材として1種剤を使用した。図6に示すように、A4サイズの電着鋼板2を約3cm/sで誘導コイルの中を通る経路t4で移動させながら、誘導コイルに交流電流を流し誘導加熱により塗料を乾燥させた。誘導コイルによる塗料の乾燥状態を調べるために、塗料が塗布されている部分の6箇所の位置(P1〜P6)に温度計を設置し温度の時間変化を測定した。誘導コイルは出力が5kwのものを使用した。図7は、電着鋼板上の6点(P1〜P6)の表面温度を測定した温度の時間変化を示すグラフである。図7に示すように、点P1〜P6は約3秒で表面温度が140℃に到達した。そして、その後、点P1〜P6に塗布された塗料は約12秒で乾燥していることが確認された。
【0031】
実施例2
誘導加熱による塗膜の乾燥状況をモニターするために、サーモグラフィカメラを使用して温度分布を測定するテストを行った。誘導加熱は、3回巻の誘導コイルの内部に電着鋼板を設置し、誘導加熱を行った。図8は、電着鋼板の面の鉛直方向(図8(a))からと側面方向(図8(b))から表面温度を測定したサーモグラフィカメラによる温度分布図である。図8(a)に示すように、誘導コイルの交流磁場の影響を受けた電着鋼板は、誘導コイルから離れた場所では約30℃と低いのに対し、誘導コイルの中心に相当する場所が約120〜130℃と高温で誘導加熱されていることが確認できる。
【0032】
実施例3
コイル電源から誘導コイルに流す交流電流(出力電力量)を変化させ、鋼板表面の温度サーモグラフィを測定し、誘導加熱による昇温時間と到達温度を調べるためのテストを行った。表1はコイル電源からの出力設定と、電着鋼板の異なる厚さの場所での到達温度とそれまでに要した昇温時間の結果である。電着鋼板の測定した場所は、0.7mmと鋼板の厚さが薄い場所(P7)と、1.35mmと鋼板の厚さが厚い場所(P8)の2点を、表1に示す3つの設定(S1〜S3)で測定した。また、表1のそれぞれの点の温度測定結果は、それぞれの点付近の複数の点の結果が示されている。図9は、異なる設定で誘導加熱を行った鋼板表面の温度分布図である。設定S1〜3による誘導加熱による温度分布がそれぞれの図9(a)〜(c)に対応している。
【0033】
表1に示すように、出力電力量の低い設定S1では、2つの点P7、P8とも温度差はほぼ無く同じ温度範囲(約120〜130℃)に到達しており、昇温時間は3つの設定の中では長い時間を要した。出力電力量が並の設定S2では、2つの点P7、P8の温度差が12℃であり、昇温時間が約2分であった。出力電力量が高い設定S3では、2つの点P7、P8の温度差は33℃と高く、鋼板の薄い方の点P7では133〜151℃まで温度が到達したのに対し、鋼板の厚い方の点P8では108〜118℃までしか昇温しなかった。このように、出力電力量を変化させることによって昇温時間を調整することができることが確認できた。また、自動車ボディのように複雑形状で鋼板の厚みが一定でない場合は、出力電力量は高くしないほうが好適であることが確認できた。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例4
銅製のフレキシブルチューブをコイル素線として使用し円柱形状の誘導コイルを製作し、磁束密度の分布を測定した。銅製のフレキシブルチューブとして、内径が6mm、外径が10mmのものを使用した。
【0036】
表2はそれぞれの誘導コイルA,B,Cの形状を示したものであり、表3はそれぞれの誘導コイルに流した電流値、電力値、周波数値である。誘導コイルが形成する交番磁場を安定にするために、誘導コイルに流す交流電流の周波数値はそれぞれの誘導コイルで異なる。表4〜6は、それぞれの誘導コイルA,B,Cの磁束密度を測定した結果である。磁束密度の測定場所は、コイルの軸方向をY軸、コイルの径方向をX軸として、それぞれの誘導コイルの中心(0,0)からX,Y軸共に±5mmステップで測定した。測定した磁束密度の単位はμTである。表4〜6に示すように、誘導コイルのコイル素線として、銅製のフレキシブルチューブを使用することによって、固定コイル相当の交流磁場が得られることが確認できた。さらに、同じ銅製フレキシブルチューブを使用し、任意の形状に変形しても同程度の磁束密度を有する誘導コイルを形成することできることが確認できた。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
上記実施形態および実施例によれば、下記の効果を奏する。
【0043】
塗装乾燥装置は、誘導コイルの形状を変形させることで、誘導コイルから発する磁束密度の強さや領域を調整することができる。このため、自動車ボディの面以外の複雑形状にも対応することができ、誘導加熱を起こす部分の温度を均一にすることができる。
【0044】
誘導コイルは、所定の形状を有する型子にコイル素線を巻きつけることで、自動車ボディに塗膜を焼き付けるのに適した形状にすることができる。
【0045】
1つの型子において複数の形状を有する型子を使用することで、複雑形状の自動車ボディに対して複数の誘導コイルを形成することができる。
【0046】
一巻分の形状の異なる複数のくぼみ、径の異なる複数のくぼみ、ピッチの異なる複数のくぼみのうち少なくともいずれかを有する型子を用意することで、目的に応じた誘導コイルを形成することができる。
【0047】
ロボットなどを用いて、誘導コイルを自動車ボディと所定の間隔を維持しながら移動させることで、誘導加熱による自動車ボディ表面の加熱範囲を維持し、温度分布を均一にすることができる。
【0048】
また、ロボットなどを用いて、誘導コイルの中に自動車ボディを通すように移動させることで、誘導加熱による自動車ボディ表面の加熱範囲を維持し、温度分布を均一にし、効率の良い誘導加熱を行うことができる。
【0049】
サーモグラフィ等を用いて自動車ボディの表面の温度計測を行い、その温度結果に基づいて、誘導コイルに流す電流や、誘導コイルと自動車ボディとの相対位置を変化させることによって、誘導加熱よる自動車ボディ表面の温度分布を均一にし、加熱温度や加熱時間を制御することができる。
【0050】
コイル素線として導電性のフレキシブルチューブを用いた誘導コイルを使用することで、一つのフレキシブルチューブで複数の形状の誘導コイルを作成でき、複雑形状の自動車ボディに対しても目的に応じた誘導加熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車ボディ、
10 塗装乾燥装置、
20 誘導コイル、
30 コイル電源、
40 ロボット、
50 制御装置、
60 型子、
70 カメラ
80 サーモグラフィ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物に塗布された塗料を誘導加熱により乾燥する塗装乾燥装置であって、
前記被塗装物を加熱するために必要な形状に合わせて変形が可能な誘導コイルを有することを特徴とする塗装乾燥装置。
【請求項2】
前記誘導コイルの形状は、所定の形状に形成された型子にコイル素線を巻きつけて変形することを特徴とする請求項1に記載の塗装乾燥装置。
【請求項3】
前記型子は、一つの型子において前記誘導コイルを変形させるための複数の形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装乾燥装置。
【請求項4】
前記型子は、一巻分の形状の異なる複数のくぼみ、径の異なる複数のくぼみ、ピッチの異なる複数のくぼみのうち少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の塗装乾燥装置。
【請求項5】
前記誘導コイルの形状は、前記被塗装物の加熱面に対して所定の間隔を維持して設置できる形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塗装乾燥装置。
【請求項6】
前記誘導コイルの形状は、前記誘導コイルの内部に前記被塗装物を挿入できる形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の塗装乾燥装置。
【請求項7】
前記被塗装物の表面温度を測定する温度計測手段と、
前記温度計測手段が測定した温度に基づいて、前記被塗装物の表面温度が所定の温度範囲内になるように、前記誘導コイルに流す電流の量を調整、および/または、前記被塗装物と前記誘導コイルとの相対的位置を変化させる制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の塗装乾燥装置。
【請求項8】
前記誘導コイルのコイル素線は、導電性のフレキシブルチューブであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の塗装乾燥装置。
【請求項9】
被塗装物に塗布された塗料を誘導加熱により乾燥する塗装乾燥方法であって、
前記被塗装物を加熱するために必要な形状に合わせて誘導コイルを変形するステップと、
前記誘導コイルに交流電流を流すステップと、
を有することを特徴とする塗装乾燥方法。
【請求項10】
前記変形するステップは、所定の形状に形成された型子に前記誘導コイルのコイル素線を巻きつけて変形するステップであることを特徴とする請求項9に記載の塗装乾燥方法。
【請求項11】
前記型子は、一つの型子において前記誘導コイルを変形させるための複数の形状を有することを特徴とする請求項9または10に記載の塗装乾燥方法。
【請求項12】
前記型子は、一巻分の形状の異なる複数のくぼみ、径の異なる複数のくぼみ、ピッチの異なる複数のくぼみのうち少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の塗装乾燥方法。
【請求項13】
前記誘導コイルの形状は、前記被塗装物の加熱面に対して所定の間隔を維持し近傍に設置できる形状であることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の塗装乾燥方法。
【請求項14】
前記誘導コイルの形状は、前記誘導コイルの内部に前記被塗装物を挿入できる形状であることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の塗装乾燥方法。
【請求項15】
前記交流電流を流すステップは、
前記被塗装物の表面温度を測定するステップと、
前記測定した温度に基づいて、前記被塗装物の表面温度が所定の温度範囲内になるように、前記誘導コイルに流す前記交流電流の量を調整、および/または、前記被塗装物と前記誘導コイルとの相対的位置を変化させるステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の塗装乾燥方法。
【請求項16】
前記誘導コイルのコイル素線は、導電性のフレキシブルチューブであることを特徴とする請求項9から15のいずれか1項に記載の塗装乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−281490(P2010−281490A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134420(P2009−134420)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】