説明

塗装方法

【課題】建築現場における既設の無機質建材の壁面に対し、その凹凸模様を活かしつつ、安定した斑点模様を付する簡便な塗装方法を提供する。
【解決手段】線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面の塗装方法において、当該壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に第1着色塗料を塗装した後、当該線状凹部を除く凸部に対し、透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2〜1:200であり、当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色である上塗材をローラー塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地模様を有する無機質建材で構成された壁面の改装に適した塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面を構成する材料として、サイディングボード、ALC板等の無機質建材が汎用的に使用されている。このような無機質建材においては、その意匠性を高めるため、表面にタイル調等の凹凸模様を形成させ、凹部と凸部で異なる色調に着色する手法、さらには凹部及び/または凸部に斑点模様を付する手法等が採用されている。このうち、凹凸模様を有する無機質建材に斑点模様を付する手法としては、例えば特許文献1〜3等に記載の方法が挙げられる。
【0003】
しかし、これらの手法は、いずれも工場内での塗装方法に関するものであり、着色塗料を機械的に制御しながらスパッタ塗装することにより斑点模様を付しているものである。建築現場で壁材として設置された無機質建材については、経時的に劣化が進行するため塗り替えの必要が生じるが、このような建築現場での塗装において上記特許文献の手法を適用しようとしても、安定した斑点模様を得ることは難しく、実用性に欠くのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平3−186381号公報
【特許文献2】特開平7−232127号公報
【特許文献3】特開2000−70840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、建築現場における既設の無機質建材の壁面に対し、その凹凸模様を活かしつつ、安定した斑点模様を付する簡便な塗装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、目地模様が形成された無機質建材が複数並設されて構成された壁面に対し、その壁面の全面に第1着色塗料を塗装した後、目地凹部を除く凸部に対して特定の上塗材をローラー塗装する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0008】
1.線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面の塗装方法であって、
当該壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に第1着色塗料を塗装した後、
当該線状凹部を除く凸部に対し、
透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、
当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2〜1:200であり、
当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色である上塗材をローラー塗装することを特徴とする塗装方法。
【0009】
2.線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面の塗装方法であって、
当該壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に第1着色塗料を塗装した後、
当該線状凹部を除く凸部に対し、
前記第1着色塗料とは異色の第2着色塗料をローラー塗装し、次いで、
透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、
当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2〜1:200であり、
当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色であって、前記第2着色塗料の近似色である上塗材をローラー塗装することを特徴とする塗装方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築現場における既設の無機質建材の壁面に対し、その凹凸模様を活かしつつ、安定した斑点模様を形成することができ、美観性の高い仕上りを簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
本発明で塗装対象となる被塗面は、線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面である。
無機質建材としては、例えば、セメントボード、押出成形板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板等が挙げられる。本発明では、このような無機質建材のうち、線状凹部によって、タイル調、レンガ調等の目地模様が形成されたものを対象とする。線状凹部の幅は通常5〜15mm程度であり、線状凹部の深さは通常2〜20mm程度である。
このような無機質建材の表面には、通常、基材の保護等を目的として何らか塗膜が形成されているが、このような塗膜は、太陽光、降雨等の影響により、経時的に劣化が進行してしまう。本発明は、特に、このように経時的に劣化した塗膜(旧塗膜)を有する無機質建材で構成された壁面の改装に適している。
【0013】
本発明では、まず、上述の無機質建材で構成された壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に対して第1着色塗料を塗装する。この第1着色塗料は、最終的な仕上面において目地色となるものである。この工程では、塗装効率等を考慮し、第1着色塗料を壁面全体に対して塗装することもできる。
【0014】
第1着色塗料は、結合材及び着色顔料を必須成分として含むものである。このうち、結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等の各種結合材、あるいはこれらを複合化した結合材等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、結合材の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0015】
着色顔料としては、通常塗料に使用可能なものであれば特に制限されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。これら着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、着色塗料を所望の色調に調整することができる。
着色顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜500重量部、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部程度である。着色顔料の混合比率がこのような範囲内であれば、着色塗料の色調を任意色に調整しつつ、塗膜の隠ぺい性を十分に確保することができる。
【0016】
第1着色塗料には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。第1着色塗料はこのような成分を常法により均一に混合して得ることができる。
【0017】
第1着色塗料の塗装方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。第1着色塗料を塗装する際の塗付け量は適宜選択すればよいが、通常は0.1〜0.5kg/m程度である。塗付時には、水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。第1着色塗料を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよい。本発明では、第1着色塗料の塗装に先立ち、シーラー、サーフェーサ、フィラー等の各種下塗材によって無機質建材表面を処理しておくこともできる。
【0018】
本発明では、上記第1着色塗料の塗装後、無機質建材の線状凹部を除く凸部に対し、特定の上塗材を塗装する。以下、本発明における上塗材につき説明する。
【0019】
本発明における上塗材は、透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子(p)(以下「斑点用粒子(p)」と略す)、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子(q)(以下「背景用粒子(q)」と略す)が分散されてなるものである。本発明では、このような上塗材を使用することにより、斑点模様の大きさや分布におけるムラ、偏り等が抑制され、美観性の高い仕上状態を安定して得ることができる。
【0020】
斑点用粒子(p)の平均粒子径は0.2mm以上であればよいが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。斑点用粒子(p)の平均粒子径の上限は、形成模様の美観性、塗装作業性等を勘案して適宜設定すればよいが、通常は8mm以下、好ましくは5mm以下である。背景用粒子(q)は、斑点用粒子(p)よりも相対的に平均粒子径が小さくなるように設定すればよいが、その平均粒子径は通常1mm以下、好ましくは0.8mm未満、より好ましくは0.5mm未満、さらに好ましくは0.2mm未満である。背景用粒子(q)の平均粒子径の下限は、特に限定されるものではないが、通常は0.001mm以上である。また、上塗材における斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)との重量比は、1:2〜1:200(好ましくは1:5〜1:150)に設定する。各粒子の大きさと重量比をこのような値に設定しておくことにより、美観性に優れた斑点模様を安定した状態で形成することができる。なお、各粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡での観察により算出することができる。
【0021】
本発明の上塗材では、背景用粒子(q)によって背景色が形成され、その中に斑点用粒子(p)による斑点模様が形成される。本発明では、明瞭な斑点模様を得るため、背景用粒子(q)が斑点用粒子(p)とは異色となるようにそれぞれの粒子の色調を設定する。具体的に、背景用粒子(q)と斑点用粒子(p)との色差は5以上(好ましくは10以上、より好ましくは20以上)となるように設定することが望ましい。なお、本発明における色差(△E)は、色差計を用いて測定される値である。
背景用粒子(q)による背景色は、巨視的に単色と認識できる程度であればよい。斑点用粒子(p)による斑点模様が認識可能であれば、2色以上の背景用粒子(q)を用いて背景色を構成することもできる。
【0022】
本発明では、背景用粒子(q)による背景色と前記第1着色塗料が異色となるようにそれぞれの色調を設定すれば、線状凹部とそれ以外の部分(凸部)とのコントラストが明瞭となり、美観性向上の点で好適である。この場合、背景用粒子(q)による背景色と第1着色塗料との色差は5以上(好ましくは10以上、より好ましくは20以上)となるように設定すればよい。
【0023】
透明被膜を形成する分散媒は、上記斑点用粒子(p)及び背景用粒子(q)を上塗材塗膜に固定化する役割を担うものである。このような分散媒は、媒体中に1種以上の結合材を含むものであればよい。結合材としては、前述の第1着色塗料で使用可能な結合材と同様のものが使用できる。なお、この分散媒により形成される透明被膜の透明性は、上塗材塗膜において斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)が視認でき、これら粒子の色の違いが認識可能な程度であればよい。
また、斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)の合計量は、分散媒中の結合材の固形分100重量部に対し、通常100〜2000重量部、好ましくは150重量部〜1500重量部とすればよい。
【0024】
上塗材としては、上述のような条件を満足するものを使用することができるが、本発明では、特に、合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)を、合成樹脂エマルション(a’)及びゲル化剤(d)を含有する水性分散媒(II)に分散して得られるもの(以下「上塗材M」という)が好適である。このような上塗材Mでは、着色水性塗料(I)のゲル物が粒状に分散されたもの、すなわち着色ゲル粒子が生成し、これら着色ゲル粒子が斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)を構成する。また、これら着色ゲル粒子は、水性分散媒(II)の合成樹脂エマルション(a’)によって、上塗材塗膜中に確実に固定化される。
このような上塗材Mは、水を媒体とする環境対応形の塗材であり、作業衛生上においても好ましいものである。また、上塗材Mでは、着色水性塗料(I)の色調を調製することで、所望の色調の粒子が得られるため、色調設定の自由度も高い。
【0025】
上塗材Mにおいては、とりわけ、合成樹脂エマルション(a)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下の合成樹脂エマルションであれば、少量のゲル化剤で着色ゲル粒子が生成でき、塗膜の耐候性、耐水性等の塗膜物性において有利である。水性分散媒(II)における合成樹脂エマルション(a’)についても、これと同様の合成樹脂エマルションを使用することが望ましい。
【0026】
このような合成樹脂エマルション(a)(以下「(a)成分」という)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合して得られるものである。なお、ここでは、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。モノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.9重量%以下(好ましくは99.5重量%以下)程度である。
【0028】
カルボキシル基含有モノマーは、分子内にカルボキシル基と重合性不飽和結合を併有する化合物である。その具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。
モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率は、通常3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下である。モノマー群においてカルボキシル基含有モノマーを含まない態様も好適である。カルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%を超える場合は、安定した着色ゲル粒子を生成させるために多量のゲル化剤が必要となり、耐水性、耐候性等の塗膜物性において十分な性能を得ることが困難となる。
【0029】
(a)成分は、必要に応じ上記以外の重合性モノマーを構成成分とするものであってもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。
【0030】
このような重合性モノマーのうち、(a)成分を構成するモノマーとしては水酸基含有モノマーが好適である。水酸基含有モノマーの使用により、着色ゲル粒子生成に必要なゲル化剤の量を抑制しつつ、着色水性塗料(I)の諸物性(製造安定性、顔料混和性等)において有利な効果を得ることができる。モノマー群における水酸基含有モノマーの比率は、通常0.1〜20重量%(0.1重量%以上20重量%以下)、好ましくは0.5重量〜10重量%である。
【0031】
(a)成分は、上記重合性モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、架橋剤、カップリング剤、触媒等を使用することもできる。このうち、乳化剤については、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両性乳化剤等が挙げられ、非反応性のもの、あるいは反応性を有するものから適宜選択して使用することができる。このうち乳化剤としてノニオン性乳化剤、とりわけノニオン性反応性乳化剤を含む場合は、耐水性、耐候性等の点で好適である。
【0032】
着色水性塗料(I)におけるゲル形成物質(b)(以下「(b)成分」という)は、ゲル化剤(d)との作用により、着色ゲル粒子の生成に寄与する成分である。(b)成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸もしくはその誘導体、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、アルブミン等、あるいはこれらを酸化、メチル化、カルボキシメチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、硫酸化、リン酸化、カチオン化等によって化学変性したもの等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(b)成分の混合比率は、通常、(a)成分の固形分100重量部に対し、固形分で0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0033】
着色水性塗料(I)における着色顔料(c)(以下「(c)成分」という)としては、一般的に塗料に配合可能なものであれば特に限定されず使用することができる。(c)成分としては、前述の第1着色塗料の着色顔料と同様のものが使用できる。(c)成分の混合比率は通常、(a)成分の固形分100重量部に対し5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0034】
水性分散媒(II)におけるゲル化剤(d)(以下「(d)成分」という)としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム等の金属の硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、珪酸塩、硼酸塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。水性分散媒(II)中における(d)成分の比率は、通常0.01〜1.5重量%、好ましくは0.03〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%となるようにする。
【0035】
水性分散媒(II)に含まれる合成樹脂エマルション(a’)(以下「(a’)成分」という)は、塗膜形成時に着色ゲル粒子を被塗面に確実に固定化するとともに、その被膜によって着色ゲル粒子を保護するものであり、耐水性、耐候性等の塗膜物性向上に寄与する成分である。水性分散媒(II)中における(a’)成分の比率は、固形分で通常5〜50重量%、好ましくは10〜48重量%である。
【0036】
水性分散媒(II)における(a’)成分としては、前述の(a)成分と同様に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下である合成樹脂エマルション、さらには水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%である合成樹脂エマルションが好適である。このような(a’)成分を使用すれば、少量のゲル化剤で、安定した着色ゲル粒子を得ることができ、形成塗膜の耐水性、耐候性等をいっそう高めることができる。
【0037】
(a’)成分を構成するモノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.9重量%以下(好ましくは99.5重量%以下)程度である。
カルボキシル基含有モノマーの比率は、通常3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下であり、カルボキシル基含有モノマーを含まない態様も好適である。水酸基含有モノマーの比率は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5重量〜10重量%である。乳化剤として、ノニオン性乳化剤、とりわけノニオン性反応性乳化剤を含む場合は、耐水性、耐候性等の点で好適である。
【0038】
着色ゲル粒子の粒子径を所望のものとするには、上塗材M製造時の攪拌羽根の形状、攪拌槽に対する攪拌羽根の大きさや位置、攪拌羽根の回転速度、着色水性塗料(I)の粘性や添加方法、水性分散媒(II)の粘性、(d)成分の濃度等を適宜選択・調整すればよい。
【0039】
色調が異なる2種以上の着色ゲル粒子を含む上塗材Mを得るためには、例えば、単色の着色ゲル粒子が分散した分散液をそれぞれ製造した後、これらを混合する方法、あるいは、色調が異なる2種以上の着色水性塗料を、同時または順に水性分散媒に添加し分散させる方法等の方法を採用すればよい。
【0040】
本発明における上塗材としては、合成樹脂エマルション、及び骨材を含む塗材(以下「上塗材N」という)を使用することもできる。このような上塗材Nでは、骨材が斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)を構成し、これら骨材は、合成樹脂エマルションによって上塗材塗膜中に固定化される。上塗材Nにおける合成樹脂エマルションとしては、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を樹脂成分とするものが使用できる。骨材としては、例えば、天然石粉砕物、陶磁器粉、珪砂、セラミック粉、ゴム粒、プラスチック粒、金属粒等、あるいはこれらの表面を着色コーティングしたもの等が使用できる。
【0041】
上塗材Nでは、斑点用粒子(p)として有色骨材を使用し、背景色用粒子(q)として、長石、珪石、寒水石等の半透明骨材を使用することもできる。このような上塗材Nでは、背景色が白を基調とする適度な隠ぺい性と透明性を有するものとなり、斑点模様も明瞭となる。このような半透明骨材としては、光透過率が3%以上(好ましくは3〜50%、より好ましくは10〜30%)であるものが好適である。なお、ここに言う光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、半透明骨材の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。但し試料としては、粒子径が0.5〜1.0mmのものを選別して用いる。
【0042】
本発明における上塗材は、例えば、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。分散媒中にマイカ等を含む場合は、斑点模様との取り合わせにより意匠性を高めることもできる。
【0043】
本発明における上塗材は、線状凹部を除く凸部に対してローラー塗装する。ローラーとしては、例えば、ウールローラー、砂骨ローラー等を使用することができ、線状凹部に上塗材が塗着しないものを適宜選択すればよい。塗装の際には、水等を用いて上塗材を希釈することも可能である。上塗材の塗付け量は、通常0.2〜1.6kg/m、好ましくは0.3〜1.2kg/mである。上塗材を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよい。乾燥時間は、通常1〜5時間程度である。
【0044】
本発明では、第1着色塗料の塗装後、上塗材の塗装前に、無機質建材の線状凹部を除く凸部に対し、第1着色塗料とは異色の第2着色塗料をローラー塗装することもできる。この場合、第2着色塗料の色調は、上塗材の背景用粒子(q)によって形成される背景色の近似色に設定する。このような第2着色塗料の塗膜を介して上塗材を塗装することにより、上塗材塗膜の隠ぺい性が低く、下地が透けて見える場合であっても、最終的には違和感のない仕上りを得ることができる。第2着色塗料と上塗材の背景色との色差は、最終的な仕上状態において違和感のない範囲内であればよいが、具体的には色差20未満(好ましくは10未満、より好ましくは5未満)に設定すればよい。
また、本発明では、上塗材の塗装後、必要に応じ透明塗料等を塗装することも可能である。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0046】
(上塗材の製造)
・黒色粒子分散液1
まず、容器内に合成樹脂エマルション1を85.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤8.3重量部、水5.7重量部、ゲル化剤として硫酸アルミニウム0.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより、水性分散媒1を製造した。
次に、別の容器内に合成樹脂エマルション1を40.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液12.0重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより黒色水性塗料1を製造した。
上述の水性分散媒1(100重量部)に対し、黒色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;600rpm)することにより、粒径約2mmの黒色粒子が分散した黒色粒子分散液1を得た。
【0047】
・褐色粒子分散液1
容器内に合成樹脂エマルション1を40.0重量部を仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、酸化チタン60重量%分散液3.5重量部、黄色酸化鉄60重量%分散液11.5重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液0.2重量部、弁柄60重量%分散液1.5重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより褐色水性塗料1を製造した。この褐色水性塗料1と上記黒色水性塗料1との色差は40であった。
上述の水性分散媒1(100重量部)に対し、褐色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;1600rpm)することにより、粒径約0.1mmの褐色粒子が分散した褐色粒子分散液1を得た。
【0048】
・上塗材1
黒色粒子分散液1と褐色粒子分散液1とを1:20の重量比率にて混合することにより、上塗材1を得た。
【0049】
なお、合成樹脂エマルション1としては、アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.2:0.8)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%)を使用した。
【0050】
(上塗材2〜7)
表1に示す配合に従い、それぞれ黒色粒子分散液、褐色粒子分散液を製造し、これらを1:20の重量比率で混合することにより上塗材を製造した。なお、上塗材2〜7では、上記合成樹脂エマルション1の他に、以下の合成樹脂エマルション2〜7を使用した。
【0051】
(上塗材8)
容器内に合成樹脂エマルション2を30.0重量部仕込み、これに平均粒子径0.4mmの着色珪砂(黒色)2.0重量部、平均粒子径0.18mmの着色珪砂(褐色)60.0重量部、造膜助剤を3.0重量部、水3.5重量部、増粘剤1.0重量部、消泡剤0.5重量部を混合し、常法により均一に攪拌して上塗材8を製造した。
【0052】
(上塗材9)
容器内に合成樹脂エマルション2を30.0重量部仕込み、これに平均粒子径0.4mmの着色珪砂(黒色)1.0重量部、平均粒子径0.15mmの寒水石(光透過率16%)60.0重量部、造膜助剤を3.0重量部、水、4.3重量部、増粘剤1.2重量部、消泡剤0.5重量部を混合し、常法により均一に攪拌して上塗材9を製造した。
【0053】
・合成樹脂エマルション2
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.7:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:34℃、固形分:50重量%
【0054】
・合成樹脂エマルション3
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0055】
・合成樹脂エマルション4
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モノマー重量比33:38:27:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0056】
・合成樹脂エマルション5
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:アニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0057】
・合成樹脂エマルション6
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:37:28:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0058】
・合成樹脂エマルション7
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比32:36:28:4)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0059】
【表1】

【0060】
(試験例1)
窯業系サイディングボートが複数枚併設されて構成された壁面を塗装対象の基材とした。窯業系サイディングボートとしては、格子状の目地模様(線状凹部の幅10mm、線状凹部の深さ5mm)が形成され、その表面にアクリル系塗料の旧塗膜を有するものを用いた。
この基材の全面に対し、黒色の着色塗料1(合成樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装した。次に、3時間養生後、線状凹部を除く部分に対し、多孔質ローラーを用いて上塗材1を塗付け量0.6kg/mで塗付した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
以上の工程により、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部(線状凹部)からなる仕上面が得られた。着色塗料1と背景色との色差は43であった。
【0061】
また、仕上面の塗膜物性を確認するため、上記窯業系サイディングボードの凸部部分を60×40mmに切り出したものを試験基材とし、これに着色塗料1、上塗材1を上記方法と同様に塗付して試験体を作製した。得られた試験体につき以下の試験を実施した。
【0062】
・耐水性試験
試験体を50℃の温水に6時間浸漬し、浸漬後の外観変化を目視にて観察した。評価は、外観変化が認められなかったものを「A」、著しい外観変化(白化等)が認められたものを「D」とする4段階(A>B>C>D)で行った。試験結果を表2に示す。
【0063】
・耐候性試験
試験体を耐候性試験に供した。耐候性試験は、促進耐候性試験機「メタルウェザー」(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用い、光照射4時間・結露4時間(計8時間)を1サイクルとして80サイクルまで実施した。評価は、初期色相に対する80サイクル後の色差を測定することによって行い、色差が1未満のものを「A」、1以上2未満のものを「B」、2以上5未満のものを「C」、5以上のものを「D」とした。試験結果を表2に示す。
【0064】
(試験例2)
上塗材1に替えて上塗材2(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例2においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0065】
(試験例3)
上塗材1に替えて上塗材3(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例3においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0066】
(試験例4)
上塗材1に替えて上塗材4(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例4においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0067】
(試験例5)
上塗材1に替えて上塗材5(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例5においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0068】
(試験例6)
上塗材1に替えて上塗材6(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例6においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0069】
(試験例7)
上塗材1に替えて上塗材7(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例7においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0070】
(試験例8)
試験例1と同様の基材の全面に対し、黒色の着色塗料1を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装した。3時間養生後、線状凹部を除く部分に対し、褐色の着色塗料2(合成樹脂エマルション塗料)を短毛ローラーを用いて塗付け量0.2kg/mで塗装した。次いで、2時間養生後、多孔質ローラーを用いて上塗材4を塗付け量0.3kg/mで塗付した。なお、以上の工程はすべて標準状態下で行った。着色塗料2と背景色との色差は2であった。
以上の工程により、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0071】
(試験例9)
試験例1と同様の基材の全面に対し、黒色の着色塗料1を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装した。3時間養生後、線状凹部を除く部分に対し、多孔質ローラーを用いて上塗材8を塗付け量1.0kg/mで塗付した。
以上の工程により、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、黒色の目地部からなる仕上面が得られた。着色塗料1と背景色との色差は45であった。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0072】
(試験例10)
試験例1と同様の基材の全面に対し、灰色の着色塗料3(合成樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装した。3時間養生後、線状凹部を除く部分に対し、白色の着色塗料4(合成樹脂エマルション塗料)を短毛ローラーを用いて塗付け量0.2kg/mで塗装した。次いで、2時間養生後、多孔質ローラーを用いて上塗材9を塗付け量1.0kg/mで塗付した。なお、以上の工程はすべて標準状態下で行った。着色塗料4と背景色との色差は2であった。
以上の工程により、白色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する凸部と、灰色の目地部からなる仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験の試験結果は表2に示す。
【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面の塗装方法であって、
当該壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に第1着色塗料を塗装した後、
当該線状凹部を除く凸部に対し、
透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、
当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2〜1:200であり、
当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色である上塗材をローラー塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
線状凹部による目地模様を有する無機質建材が複数並設されて構成された壁面の塗装方法であって、
当該壁面のうち、少なくとも線状凹部を含む領域に第1着色塗料を塗装した後、
当該線状凹部を除く凸部に対し、
前記第1着色塗料とは異色の第2着色塗料をローラー塗装し、次いで、
透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、
当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2〜1:200であり、
当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色であって、前記第2着色塗料の近似色である上塗材をローラー塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2008−142691(P2008−142691A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80346(P2007−80346)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】