説明

塗装板及びジョイナー

【課題】シーリング材と接着性を有しないジョイナーを省力かつ低コストで形成することができる塗装板を提供する。
【解決手段】目地部に充填されるシーリング材と非接着性を有する塗膜1を基材2の表面に設ける。塗膜1によりシーリング材との接着を防止することができる。この塗装板AでジョイナーBを形成することにより、シーリング材とジョイナーとの接着を防止することができる。従って、建築板の伸縮に対してシーリング材が追随できてシーリング材に無理な力がかかることがなく、シーリング材に切れが生じたり建築板との剥離が生じたりすることがなくなって目地部の防水性を確保することができる。また、シーリング材と非接着性を有するジョイナーを作製するにあたって、テープなどの部材を貼り付ける必要が無く、省力かつ低コストで形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材と接着しない塗装板及びこれを用いたジョイナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の外壁などの壁を形成するにあたっては、複数枚の建築板(板状の壁材)を外壁材としてを横方向(水平方向)に並設することが行われている。この場合、隣り合う壁材の間にジョイナーを配置し、このジョイナーの表面(屋外側面)で隣り合う建築板の側端面の間にシーリング材(コーキング材ともいう)を充填し、隣り合う建築板の間の目地部の防水性を確保しようとしている。図4に示すものでは、ジョイナーBとして縦方向に長い断面ハット型のものを用いている。このジョイナーは断面コ字状の受け部7と受け部7の両端部から外側に向かって突設された固定片12とからなり、その固定片12を柱や間柱などの壁下地の屋外側面に固定して取り付けられている。そして、建築板4の側端面を受け部7の側面に当接させ、隣り合う建築板4、4の間に受け部7を介在させた状態で建築板4、4を壁下地に取り付けることによって、受け部7の表面と隣り合う建築板4、4の側端面の間に縦方向に長い目地部5を形成し、この目地部5に屋外側からシーリング材6を押し込むなどして水密的に充填する。シーリング材としては、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂などの弾性あるいは可撓性を有する合成樹脂などが用いられる。
【0003】
上記のように目地部5に充填されるシーリング材6は、左右両側に配される各建築板4、4の側端面のみに接着し、それ以外の面は非接着の状態であることが好ましい。例えば、シーリング材6がジョイナーBの受け部7の表面に接着していると、シーリング材6が建築板4の側端面と受け部7の表面との三点で固定されることになって伸縮などの挙動が制限されるため、建築板4の伸縮(膨張や収縮など)に対してシーリング材6が追随できず、シーリング材6に無理な力がかかって切れが生じたり建築板4との剥離が生じたりして目地部5の防水性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、ジョイナーの受け部の表面にシーリング材に対する接着性能を低下させるテープを貼ることが行われているが(例えば、特許文献1参照)、この場合、テープを貼るのに労力やコストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−088935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、シーリング材と接着しないジョイナーを省力かつ低コストで形成することができる塗装板及びこれを用いたジョイナーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る塗装板Aは、目地部に充填されるシーリング材と接着性を有しない塗膜1を基材2の表面に設けて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る塗装板Aは、請求項1において、塗膜1が、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)と片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)とを共重合したフッ素系樹脂を含有して成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る塗装板Aは、請求項1又は2において、塗膜1と基材2の表面との間にプライマー層3を設けて成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4に係る塗装板Aは、請求項1乃至3のいずれかにおいて、塗膜1とプライマー層3の少なくとも一方に骨材を含有して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係るジョイナーBは、隣り合う建築板4、4の目地部5に充填するシーリング材6を保持するためのジョイナーBであって、請求項1乃至4のいずれかに記載の塗装板Aを用いてシーリング材6と接触する受け部7を形成し、受け部7に塗膜1を設けて成ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項6に係るジョイナーBは、請求項5において、請求項1乃至4のいずれかに記載の塗装板Aを折り曲げ加工することにより、断面ハット型に形成して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、塗膜1によりシーリング材6との接着を防止することができ、この塗装板AでジョイナーBを形成することにより、シーリング材6とジョイナーBとの接着を防止することができる。従って、建築板4の伸縮に対してシーリング材6が追随できてシーリング材6に無理な力がかかることがなく、シーリング材6に切れが生じたり建築板4との剥離が生じたりすることがなくなって目地部5の防水性を確保することができるものである。また、シーリング材6と接着性を有しないジョイナーBを作製するにあたって、テープなどの部材を貼り付ける必要が無く、省力かつ低コストで形成することができるものである。
【0013】
請求項2の発明では、塗膜1が所定のフッ素系樹脂を含有することにより、シーリング材6との非接着性を確保することができるものである。
【0014】
請求項3の発明では、プライマー層3により塗膜1と基材2との密着性を高めることができ、塗装板AからジョイナーBを作成する際に折り曲げ加工しても、塗膜1の剥離や脱落を防止することができるものである。
【0015】
請求項4の発明では、骨材により塗膜1の表面を凹凸にすることができ、シーリング材6との非接着性をさらに向上させることができるものである。
【0016】
請求項5の発明では、受け部7とシーリング材6との接着を防止することができ、建築板4の伸縮に対してシーリング材6が追随できてシーリング材6に無理な力がかかることがなく、シーリング材6に切れが生じたり建築板4との剥離が生じたりすることがなくなって目地部5の防水性を確保することができるものである。また、シーリング材6と非接着性を有するジョイナーBを作成するにあたって、テープなどの部材を貼り付ける必要が無く、省力かつ低コストで形成することができるものである。
【0017】
請求項6の発明では、シーリング材6と非接着性を有するジョイナーBを作製するにあたって、テープなどの部材を貼り付ける必要が無く、省力かつ低コストで形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
本発明の塗装板Aは、図1に示すように、基材2の表面にシーリング材と接着性を有しない非接着性の塗膜1を設けて形成されるものである。
【0020】
基材2としては、ステンレス鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を用いることができるが、樹脂材料で形成しても良い。この基材2の表面にはプライマー層3を設けるのが好ましい。プライマー層3としては基材2と上記塗膜1との密着性が高いものであればよく、例えば、ポリエステル系樹脂塗料やエポキシ系樹脂塗料などの塗膜でプライマー層3を形成することができるが、塗膜1との密着性がより高くなるように、一般的なエポキシ樹脂塗料よりもポリエステル系樹脂塗料を用いてプライマー層3を形成するのが好ましく、特に、分子量3000以上のポリエステル系樹脂が好ましい。プライマー層3は塗膜1の剥離を防止できるのであれば、その厚みは問わないが、例えば、4〜10μmに形成することができる。
【0021】
塗膜1はシーリング材と接着性を有しないものである。ここで「接着性を有しない」とは、シーリング材と塗膜1とが全く接着しない場合だけでなく、後述の建築板の伸縮によってシーリング材と塗膜1とが剥離する程度の接着性(離型性)がある場合も含む。このような塗膜1は、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂と片末端ラジカル重合性ポリシロキサンとを共重合したフッ素系樹脂を含有する塗料で形成することができる。このような塗料としては、例えば、特開2003−292870号公報や特開2005−262134号公報に開示されている塗料を用いることができる。すなわち、この塗料は、結合材を必須成分とし、更に必要に応じて、各種溶剤や、添加剤、体質顔料等から構成されるものである。
【0022】
結合材は、上記のようなウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)と片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)とを共重合して得られるフッ素系樹脂(基本樹脂)を必須成分とし、必要に応じて、このフッ素系樹脂の硬化剤を配合したものである。また、結合材としては、上記のフッ素系樹脂の他に、他のフッ素系や、アクリルシリコン系、ウレタンシリコン系、フッ素シリコン系、無機系等の樹脂を組合せて、更には、これらの樹脂と、アクリル系や、ウレタン系の樹脂との組み合わせ、もしくはこれらと硬化剤との組み合わせ等が代表的なものとして好適に挙げることができる。
【0023】
ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)は、例えば、水酸基を有するフッ素樹脂(a−1)と、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(a−2)とを反応させる事により得られる。
【0024】
水酸基を有するフッ素樹脂(a−1)の水酸基価は、5〜250mgKOH/gとする事が好ましく、10〜200mgKOH/gとする事がより好ましく、20〜150mgKOH/gとする事が更に好ましい。水酸基価が5mgKOH/g未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(a−2)の導入量が著しく少なくなるために、グラフト化が十分に進行せず、反応混合物が濁る傾向にある。また、結果的にフッ素系樹脂の水酸基価が小さくなるために、塗膜1の非接着性が低下する傾向にある。また、水酸基価が250mgKOH/gを超えると、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)との相溶性が悪化して、相分離を起こし、グラフト共重合自体が進行しなくなる傾向にある。
【0025】
水酸基を有するフッ素樹脂(a−1)は、公知の方法で調製する事ができるが、市販品を用いる事もできる。市販品としては、例えば、ルミフロン(登録商標)LF−100や、LF−200、LF−300、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N(旭硝子社製)、セラフルコート(登録商標)PX−40、A606X、A202B、CF−803(セントラル硝子社製)、ザフロン(登録商標)FC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973(東亞合成社製)、ゼッフル(登録商標)GK−510(ダイキン工業製)、フルオネート(登録商標)K−700、K−702、K−703、K−704、K−705(大日本インキ化学工業社製)等が挙げられ、これらを単独で、又は組み合わせて使用する事も可能である。
【0026】
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(a−2)としては、例えば、メタクリロイルイソシアネートや、2−イソシアナトエチルメタクリレート、m−又はp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を単独で、又はこれらを組合わせて使用することができる。
【0027】
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(a−2)は、水酸基を有するフッ素樹脂(a−1)に対して、水酸基1当量当たり、例えば、0.001〜0.1モルで反応させることが好適である。0.001モル未満では、グラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁る傾向がある。また、0.1モルを超えると、グラフト重合の際にゲル化が起こる傾向がある。
【0028】
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)は、例えば、一般式(i)、
【0029】
【化1】

【0030】
〔式中のRは、水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基等が好適に挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基である。また、式中のR、R、R、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が挙げられ、好ましくは、R、R、R及びRは、メチル基、フェニル基、Rは、メチル基、ブチル基、フェニル基である。また、式中、nは、2以上の整数であり、好ましくは、10以上の整数、より好ましくは、30以上の整数である。〕、又は一般式(ii)、
【0031】
【化2】

【0032】
〔式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基である。R、R、R10、R11及びR12は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が挙げられ、好ましくは、R、R、R10及びR11は、メチル基、フェニル基であり、R12は、メチル基、ブチル基、フェニル基である。また、pは、0〜10の整数であり、好ましくは、3である。また、qは、2以上の整数であり、好ましくは、10以上の整数、より好ましくは、30以上の整数である。〕で示される化合物である。
【0033】
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)は、公知の方法にて調製する事ができるが、市販品を用いる事もできる。市販品の例としては、例えば、サイラプレーン(登録商標)FM−0711(数平均分子量1,000;チッソ社製)、サイラプレーン(登録商標)FM−0721(数平均分子量5,000;チッソ社製)、サイラプレーン(登録商標)FM−0725(数平均分子量10,000;チッソ社製)、X−22−174DX(数平均分子量4,600;信越化学工業社製)等が好適に挙げられる。これらは、単独もしくは組み合わせて使用する事が可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
上記のフッ素系樹脂は、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)と片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)の他に、必要に応じて、アルコキシシリル基を有する単量体(c)や水酸基を有する単量体(d)を共重合して生成しても良い。
【0035】
アルコキシシリル基を有する単量体(c)としては、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基と、ラジカル重合性二重結合とを有するものであれば特に制限なく使用することができる。このような単量体(c)としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が重合性の観点から好適に用いる事ができる。
【0036】
水酸基を有する単量体(d)としては、水酸基と、ラジカル重合性二重結合とを有するものであれば、特に制限なく使用することができ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が、重合体のTg調整という観点から特に好ましく用いられる。
【0037】
上記のフッ素系樹脂(基体樹脂)は、これら成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)を含む混合物を共重合して得ることができるが、更に、他の単量体(e)を併用するのが好ましい。このような単量体(e)は、成分(a)〜(d)とラジカル重合以外に反応しない官能基を有する単量体であり、特に、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレート類が主として好ましく用いられる。
【0038】
上記のフッ素系樹脂(基体樹脂)は、前記(a)〜(e)の成分を、下記の範囲内で重合させる事により得る事ができる。
(a)成分:フッ素系樹脂の全量に対して2〜70質量%、好ましくは10〜40質量%
(b)成分:フッ素系樹脂の全量に対して5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%
(c)成分:フッ素系樹脂の全量に対して5〜55質量%、好ましくは10〜40質量%
(d)成分:フッ素系樹脂の全量に対して3〜50質量%、好ましくは20〜30質量%
(e)成分:フッ素系樹脂の全量に対して0〜85質量%、好ましくは0〜30質量%
(a)〜(e)成分の合計量は、100質量%になるものとし、各原料の配合比率は、フッ素系樹脂のTgが40℃以上となるように調整するのが好ましい。フッ素系樹脂のTgが40℃未満になると、塗料が硬化した後の塗膜のTgが上がらないため、特に夏期において高温に曝された際に非接着性が低下する傾向にある。また、(a)〜(d)成分の比率は、塗膜の非接着性能及びその持続性を損なわない比率にて重合される。例えば、(a)/〔(b)+(c)+(d)〕の比率が70/30を超えて、(a)成分の比率が多い場合は、塗膜1の非接着性が低下し、2/98未満となるような(a)成分の比率のときには、塗膜1の非接着性の持続性が低下する傾向にある。
【0039】
上記フッ素系樹脂の硬化剤は、フッ素系樹脂の水酸基と反応できる硬化剤が適宜選択され、具体的には、例えば、アニリンアルデヒド樹脂や、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート等が代表的なものとして好適に挙げられる。この硬化剤として、例えば、メラミン樹脂を用いるときには、フッ素系樹脂100質量部に対して、5〜40質量%使用する事が望ましい。5質量%未満では、耐溶剤性が低下する傾向にあり、40質量%を超えると、塗膜1がもろくなる傾向にある。また、硬化剤として、例えば、ポリイソシアネートを用いるときには、フッ素系樹脂に対して0.5〜1.5当量使用する事が望ましい。0.5当量未満では、塗膜1がもろくなる傾向にあり、1.5当量を超えると、過剰に添加したポリイソシアネートが水分と反応して発泡することにより、平滑な塗面が得にくく、また塗膜1がもろくなる傾向にある。
【0040】
そして、上記のフッ素系樹脂と硬化剤とを、塗膜1を形成するための塗料(上塗りクリアー塗料)の結合材とする事で、塗膜1を効率よく発現させる事ができる。
【0041】
上記の塗料に配合される溶剤としては、従来から塗料に用いられている各種溶剤を使用する事が可能であり、例えば、トルオールや、キシロール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、水等が代表的なものとして好適に挙げられる。更に、必要に応じて、レベリング剤や、消泡剤、増粘剤等を配合する事が可能である。また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、体質顔料を配合する事も可能であり、これらの代表的なものとしては、硅砂や、硅酸塩、タルク、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、粉末状、フレーク状もしくはファイバー状のガラス、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂粉末等が挙げられる。
【0042】
そして、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)と片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)とを共重合したフッ素系樹脂及びその他の成分を含有する上記の塗料を、基材2のプライマー層3の表面に上塗り塗料として塗布し、その後、乾燥硬化させることによって、基材2の表面(片面又は両面)にプライマー層3を介して塗膜1を形成することができる。この塗料は、刷毛塗りや、ローラー塗装、スプレー塗装等の任意の方法を用いて塗装することができる。また、塗膜1の厚みは非接着性が損なわれず、剥離等の不具合が生じないのであれば、その厚みは問わないが、例えば、2〜10μmに形成することができる。
【0043】
上記のような本発明の塗装板Aにおいて、塗膜1とプライマー層3の一方又は両方に骨材を含有させるのが好ましく、これにより、塗膜1の表面を凹凸にして粗面化の度合いを大きくすることができ、シーリング材6との非接着性をさらに向上させることができる。ここで、骨材としてはシリカやガラスビーズやガラス粉などの無機系骨材及びナイロンビーズやアクリルビーズなどの樹脂系骨材などを用いることができる。また、骨材の粒径は10〜50μmにすることができる。骨材の粒径が10μmより小さくなると、塗膜1の表面の粗面化の効果が小さくなるおそれがあり、骨材の粒径が50μmより大きくなると、塗料に配合した場合にその塗料が塗布しにくくなるおそれがある。また、骨材は、塗膜1を形成するための塗料あるいはプライマー層3を形成するための塗料に配合することができるが、この配合量は塗料中の固形分(塗膜となる成分)の全量に対して10〜15wt%にするのが好ましい。骨材の配合量が10wt%より少なくなると、塗膜1の表面の粗面化の効果が小さくなるおそれがあり、骨材の配合量が15wt%より多くなると、塗料が塗布しにくくなるおそれがある。本発明では上記のような骨材をそれぞれ単独で用いたりあるいは二種類以上を併用したりすることができる。そして、本発明では、骨材の配合により、塗膜1の表面粗度をJIS B 0601−1982による計測で、中心線平均粗さRaを1.3μm以上6.0μm以下にするのが好ましい。
【0044】
本発明のジョイナーBは、上記の非接着性の塗装板Aをロール成形等で折り曲げ加工し、必要に応じて切断等することにより長尺に形成することができる。ジョイナーBは所望の形状に形成することができるが、例えば、図2に示すように、断面ハット形状に形成することができる。断面ハット形状のジョイナーBは、平板状の当接片10と当接片10の両端から裏面側(屋内側方向)に突出する支持片11、11とからなる断面コ字状の受け部7と、受け部7の両端部から外側(当接片10と反対側)に向かって突設された固定片12、12とからなる。そして、上記の塗膜1は少なくとも受け部7の当接片10の表面(屋外側面)に形成されていればよい。もちろん、支持片11や固定片12の表面に塗膜1が形成されていても良い。
【0045】
本発明のジョイナーBを用いて外壁等の壁を形成するにあたっては、まず、ジョイナーBを柱などの壁下地の表面(屋外側面)に配置し、固定片12をビスなどの固定具で壁下地に固定する。これにより、ジョイナーBを上下方向に長く壁下地に取り付ける。次に、図3に示すように、壁下地に取り付けたジョイナーBの両側に板状の建築板(壁板)4、4を配置し、建築板4の側端面を支持片11の外面に当接し、この状態で建築板4を壁下地にドリルビスなどの固定具で固定する。ここで、建築板4としては二枚の鋼板などの金属板の間にロックウールなどの断熱材を充填した断熱パネル(サンドイッチパネル)やセメント系の外装材などを例示することができるが、これに限定されるものではない。また、建築板4の厚み寸法は、ジョイナーBの受け部7の厚み寸法(固定片12から当接片10の表面までの寸法)よりも大きくすることができる。
【0046】
このようにしてジョイナーBの受け部7を挟んで介在させた状態で、隣り合う二枚の建築板4、4を配設することにより、当接片10の表面と隣り合う二枚の建築板4、4の側端面(ジョイナーBの当接片10よりも表面側(屋外側)に突出した部分の側端面)との間に縦方向に長い目地部5を形成した後、この目地部5にその表面側(屋外側)からシーリング材6を押し込むなどして目地部5の上下方向の全長にわたって水密的に充填する。シーリング材6としては、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂などの弾性あるいは可撓性を有する合成樹脂などが用いる。このようにして建物の外壁などの壁を形成することができる。
【0047】
そして、このように形成される壁では、シーリング材6が建築板4、4の側端面に接着し、水密性が確保されるが、受け部7の当接片10の表面には塗膜1が形成されているために、シーリング材6と受け部7の当接片10の表面とは接着しない。従って、建築板4、4の伸縮に対してシーリング材6が伸縮して追随することにより、シーリング材6に無理な力がかかることがなく、シーリング材6に切れが生じたり建築板4との剥離が生じたりすることがなくなって目地部5の防水性を確保することができる。また、ジョイナーBを作成するにあたって、シーリング材6との非接着性のために、テープなどの部材を貼り付ける必要が無く、省力かつ低コストで形成することができる。
【実施例】
【0048】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0049】
(実施例1〜10)
厚さ0.35mmの鋼板(基材2)の表面に下塗り塗料としてポリエステル系樹脂塗料(大日本塗料製の品番「Vニット#7520」、分子量12000の高分子ポリエステル含有)を塗布し、焼付け30秒間、最高到達温度220℃の条件で、乾燥硬化させることによって、プライマー層3を形成した。次に、プライマー層3の表面にフッ素系樹脂塗料(大日本塗料製の品番「Vマジック#10」)を上塗り塗料として塗布し、焼付け30秒間、最高到達温度230℃の条件で、乾燥硬化させることによって、塗膜1を形成した。このようにして塗装板Aを形成した。
【0050】
プライマー層3の膜厚(単位面積あたりの重量)及び骨材の種類と粒径と配合量、塗膜1の膜厚(単位面積あたりの重量)及び骨材の種類と粒径と配合量及び表面粗度(Ra)を表1に示す。
【0051】
尚、上記の上塗り塗料に用いられるフッ素系樹脂塗料は以下の(1)〜(3)の工程により調製されるものである。以下の「部」は質量部を示す。
【0052】
(1)ウレタン結合を介してラジカル重合性を有するフッ素樹脂(a)の合成
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803 1,554部、キシレン 233部、2−イソシアナトエチルメタクリレート 6.3部を入れ、乾燥窒素雰囲気下80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、不揮発分50%の成分(a)を得た。
【0053】
(2)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂(a)と片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)とを共重合したフッ素系樹脂の合成
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記(1)で合成した成分(a) 40部、酢酸n−ブチル 80部を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、予め混合したメチルメタクリレート 20部、2−エチルヘキシルメタクリレート 7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 23部、FM−0721 10部,γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 20部、パーブチルO 2部、キシレン 22部の混合物を同温度で2時間かけて滴下した。2時間同温度で保持した後パーブチルO 1部を追加し、更に90℃で5時間保持することによって、不揮発分が45%、重量平均分子量が58,000である目的とするフッ素系樹脂(基体樹脂)の溶液を得た。
【0054】
(3)フッ素系樹脂塗料の調製
上記(2)で得られたフッ素系樹脂(基体樹脂)に該樹脂の水酸基当量に対して1.0当量のコロネート(登録商標)HXを加え、更に塗料中の不揮発分が35重量%になるように酢酸n−ブチルで希釈した。このようにして得られるフッ素系樹脂塗料に必要に応じて骨材を配合することにより上塗り塗料を調製するものである。
【0055】
尚、上記(1)〜(3)で用いた材料は以下の通りである。
・水酸基を有するフッ素樹脂(a−1)
セフラルコート(商標)CF−803 (セントラル硝子社製,水酸基価;60,数平均分子量;15,000)
・片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(b)
サイラプレーン(登録商標)FM−0721 (チッソ社製,数平均分子量5,000)
・ラジカル重合開始剤
パーブチル(登録商標)O (t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂社製)
・硬化剤
コロネート(登録商標)HX (ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート;日本ポリウレタン社製)
(実施例11)
下塗り塗料としてエポキシ系樹脂塗料(大日本塗料製の品番「Vニット#20プライマー」、焼付け30秒間、最高到達温度220℃)を用いた以外は、実施例9と同様にして塗装板Aを形成した。
【0056】
(実施例12)
下塗り塗料として実施例1のものを、上塗り塗料として実施例6のものを組み合わせて用いた以外は、実施例1と同様にして塗装板Aを形成した。
【0057】
(比較例1)
下塗り塗料としてエポキシ系樹脂塗料(日本ファインコーティングス製の品番「GL64P」、焼付け45秒間、最高到達温度250℃)を、上塗り塗料としてフッ素系樹脂塗料(日本ファインコーティングス製の品番「ディックフローEF」、2フッ化タイプ(PVDF)のフッ素系樹脂含有、焼付け45秒間、最高到達温度250℃)を用いた以外、実施例1と同様にして塗装板Aを形成した。尚、この2フッ化タイプのフッ素系樹脂は官能基にポリシロキサン(上記(b)成分)等を有していない点で実施例1のフッ素系樹脂と相違する。
【0058】
(比較例2)
下塗り塗料としてエポキシ系樹脂塗料(日本ファインコーティングス製の品番「667P」、焼付け30秒間、最高到達温度200℃)を、上塗り塗料としてポリエステル系樹脂塗料(日本ファインコーティングス製の品番「FLC300HQ」、焼付け30秒間、最高到達温度220℃)を用いた以外、実施例1と同様にして塗装板Aを形成した。
【0059】
(比較例3)
上塗り塗料に表1に示す骨材を配合した以外は、比較例2と同様にして塗装板Aを形成した。
【0060】
実施例1〜12及び比較例1〜3の塗装板について、以下の性能を評価した。
【0061】
[加工部密着性]
実施例1〜12及び比較例1〜3の塗装板について、JIS G 3322の13.2.2に基づいて曲げ試験を行い、その後、2T折り曲げ部にテープを貼って指で擦り、この後、テープを剥がした時に上塗り塗膜が剥離するか否かを判定した。そして、上塗り塗膜が全く剥離しないものを○(良好)と、上塗り塗膜が部分的に剥離するものを△(普通)と、上塗り塗膜の大部分が剥離するものを×(不良)と判定した。
【0062】
[スクラッチ性]
塗装板の上塗り塗膜に10円玉を45°の角度で軽く擦り、上塗り塗膜が剥離するか否かを判定した。そして、上塗り塗膜が全く剥離しないものを○(良好)と、上塗り塗膜が剥離するものを×(不良)と判定した。
【0063】
[シーリング材非接着性(離型性)]
塗装板に折り曲げ加工等を施して断面ハット型のジョイナーBを作製した。この後、ジョイナーBの受け部7の当接片10の表面に各種のシーリング材6を塗布し、7日間養生させた後に、シーリング材6を指でつまんで引張ったときのジョイナーBからのシーリング材6の剥離性を感覚で官能的に評価した。そして、完全に剥離した場合を○(良好)と、部分的に剥離した場合を△(普通)と、完全に密着している場合を×(不良)と判定した。また、シーリング材6としては、ウレタン樹脂製のもの、変性シリコーン樹脂製のもの、ポリサルファイド樹脂製のものをそれぞれ用いた。
【0064】
上記の性能を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1〜10、12は加工部密着性やスクラッチ性が実用上問題がなく、シーリング材非接着性が良好であった。特に、プライマー層3をポリエステル樹脂塗料で形成することにより、塗膜1の密着性が向上し、加工部密着性やスクラッチ性が高くなった。一方、実施例11はシーリング材非接着性が高いものの、加工部密着性やスクラッチ性が低くなった。また、比較例1〜3では加工部密着性やスクラッチ性が高いものの、シーリング材非接着性が低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の塗装板を示す断面図である。
【図2】同上のジョイナーを示す一部の斜視図である。
【図3】同上の施工状態を示す一部の斜視図である。
【図4】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
A 塗装板
B ジョイナー
1 塗膜
2 基材
3 プライマー層
4 建築板
5 目地部
6 シーリング材
7 受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部に充填するシーリング材と接着性を有しない塗膜を基材の表面に設けて成ることを特徴とする塗装板。
【請求項2】
塗膜が、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合を有するフッ素樹脂と片末端ラジカル重合性ポリシロキサンとを共重合したフッ素系樹脂を含有して成ることを特徴とする請求項1に記載の塗装板。
【請求項3】
塗膜と基材の表面との間にプライマー層を設けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装板。
【請求項4】
塗膜とプライマー層の少なくとも一方に骨材を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗装板。
【請求項5】
隣り合う建築板の目地部に充填するシーリング材を保持するためのジョイナーであって、請求項1乃至4のいずれかに記載の塗装板を用いてシーリング材と接触する受け部を形成し、受け部に塗膜を設けて成ることを特徴とするジョイナー。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の塗装板を折り曲げ加工することにより、断面ハット型に形成して成ることを特徴とする請求項5に記載のジョイナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62707(P2009−62707A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230452(P2007−230452)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】