説明

塗装物、印刷物及びそれらに使用する塗料、インキ

【課題】
表面の透明性に優れ、且つ優れたダウンフロップ性を呈しうる塗装物、印刷物、及びそれらに使用する塗料、インキを提供する。
【解決手段】
金属顔料と樹脂とを含有する金属表面層を備えた光沢物に塗料が塗布されてなる塗装物であって、前記塗料は、一次粒子径1〜180nmの二酸化チタンが0.1〜70重量%配合されており、且つ、前記二酸化チタンが、ビヒクルに分散することで二次粒子となっており、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれている塗装物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキが塗布された塗装物や印刷物、詳しくは、視角によって色が変化するというダウンフロップ性を呈する塗装物、印刷物、及びそれらの塗装物、印刷物に使用する塗料、インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダウンフロップ性を呈する塗料として、例えば、特許文献1又は特許文献2に記載のものが知られている。
即ち、前記特許文献等には、所定の樹脂に、金属顔料(金属単体からなる顔料)と所定の粒径の金属酸化物顔料とが配合されてなる塗料が開示されており、該塗料の塗布された塗装物が、ダウンフロップ性を呈する旨も記載されている。
【0003】
ところで、ダウンフロップ性を得るためには、前提として光沢、特に金属光沢が必要であるため、上記従来の塗料は、光沢を付与するために多くの金属顔料が配合され、同時に、金属酸化物顔料が配合されることによって、ダウンフロップ性を呈するものとなっている。
【0004】
しかしながら、上記従来の塗料が塗布された塗装物では、白濁した乳白色を呈しており表面の透明性がなく、そのため確かにダウンフロップ性を呈するもののその効果に限界があることから、近年においては、表面の透明性に優れ、且つ優れたダウンフロップ性を呈する塗装物が要望されている。
この種の優れたダウンフロップ性は、印刷物においても同様に要望されている。
【0005】
【特許文献1】特公平8−26283号公報
【特許文献2】特開平4−214779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、表面の透明性に優れ、且つ優れたダウンフロップ性を呈する塗装物、印刷物、及びそれらに使用する塗料、インキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ダウンフロップ性は、下層側で反射した光が上層側の金属酸化物顔料の層を透過する場合に発現すること、また、金属顔料と金属酸化物顔料とが混在する場合において、金属顔料は、光を反射することからダウンフロップ性を呈する前提となる光沢を呈する一方で、光の透過を阻害し易くダウンフロップ性低下の原因となること、更には、所定の一次粒子径の金属酸化物顔料を配合した塗料等において、該金属酸化物顔料をビヒクルに分散させ、所定の粒度分布を有する二次粒子を形成させることにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、金属顔料と樹脂とを含有する金属表面層を備えた光沢物に塗料が塗布されてなる塗装物であって、前記塗料は、一次粒子径1〜180nmの二酸化チタンが0.1〜70重量%配合されており、且つ、前記二酸化チタンが、ビヒクルに分散することで二次粒子となっており、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていることを特徴とする塗装物を提供する。
ここで、二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれているとは、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.03μm以上、累積90%(d90)が1.50μm以下であって、二次粒子が100個あれば80個以上が該範囲内に含まれることを意味する。
【0009】
斯かる構成からなる塗装物は、塗料により形成された塗料層の乳白色の濁りが抑制され、塗装物に照射された光は、塗料層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度塗料層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性及び優れた表面の透明性を呈するものである。
【0010】
また、本発明は、金属光沢又は樹脂光沢を有する表面を備えた光沢物にインキが塗布されてなる印刷物であって、前記インキは、一次粒子径1〜180nmの二酸化チタンが0.1〜70重量%配合されており、且つ、前記二酸化チタンが、ビヒクルに分散することで二次粒子となっており、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていることを特徴とする印刷物を提供する。
【0011】
斯かる構成からなる印刷物は、インキにより形成されたインキ層の乳白色の濁りが抑制され、印刷物に照射された光は、インキ層を透過して光沢物の表面で反射し、反射した光は、再度インキ層を透過し易いことから、優れたダウンフロップ性及び優れた表面の透明性を呈するものである。
【0012】
尚、本発明において、ダウンフロップ性とは、光沢に付随する性質で、視角により色が変化する性質を意味する。
本発明において、金属顔料及び二酸化チタンの配合割合は、塗料、インキの全固形分中における割合(重量%)を意味する。
本発明において、塗装物とは表面に塗装が施されてなるものを意味し、印刷物とは表面に印刷が施されてなるものを意味する。また、塗料とは、表面の塗装に用いる組成物を意味し、インキとは、印刷に用いる組成物を意味する。
本発明において、光沢物とは光沢を有する表面を備えたものを意味する。ここで、光沢を有するとは、通常、JIS Z 8741(85度鏡面光沢度、好ましくは60度鏡面光沢度)に基づく鏡面光沢度が測定可能な範囲であることを意味する。従って、測定可能である限り、表面が平滑でない艶消し面であっても光沢を有する表面に含まれる。
本発明において、一次粒子径とは、原料として用いる二酸化チタンの平均粒子径と同義である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る塗装物、印刷物は、優れた表面の透明性及び優れたダウンフロップ性を呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る塗装物、印刷物の実施形態について説明する。
本発明において、光沢を有する表面は、金属又は非金属の何れからなるものであってもよいが、金属からなるものが好ましい。前記金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、クロム合金(ステンレス)等及びこれらを含有する合金が好ましい。特に、ダウンフロップ性に優れるという観点から、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを含有する合金が好ましい。前記非金属としては、木材、樹脂、ガラス、タイル、石、紙、絹糸等を挙げることができる。
【0015】
光沢物は、例えば、被塗装物又は被印刷物に、金属、パール、木材、樹脂等の光沢を有する表面層等を形成することにより、又は表面を平滑にすることにより得ることができる。
前記被塗装物又は被印刷物としては、金属、ガラス、セラミックス、アスベスト、木材、紙、石、更には、プラスチック材料などいずれのものから構成されていてもよい。
尚、被塗装物又は被印刷物自体が、光沢を有する表面を備えている場合には、そのまま光沢物として採用できる。例えば、光沢を有するアルミニウム板、アルミニウム箔、アルミ蒸着紙、金箔、銀箔、銅箔、クロム合金板、パール、プラスチック等であれば、そのまま光沢物として採用できる。
【0016】
前記被塗装物、被印刷物に光沢を呈する金属の表面層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、金属蒸着、金属メッキ、金属貼合わせ、金属練込み、スパッタリング又は金属塗装等の方法を挙げることができる。前記金属蒸着できる材料としては、金属、ガラス、セラミック、紙、石等を挙げることができる。
金属塗装を用いる場合、使用する金属表面層形成用の塗料として、例えば、全固形分中、樹脂10〜95重量%、アルミニウム、黄銅、ステンレス、銀等の金属顔料(金属フレーク顔料)1〜40重量%配合されたものを用いることができる。
なお、該樹脂としては、熱可塑性或いは熱硬化性のものを用いることができる。
【0017】
更に、前記金属塗装として、これらの塗料に着色顔料等の着色剤が配合されたものを用いた着色メタリック塗装を採用してもよい。また、金属顔料として、表面に着色被膜の形成された着色金属顔料が配合された塗料を用いた着色メタリック塗装を採用してもよい。
この着色被膜は、金属顔料表面に、異種金属又は異種、同種の金属酸化物や金属窒化物を蒸着やスパッタリング等により付与したり、或いは着色顔料と樹脂バインダとで形成された着色剤を金属顔料表面に付与したりすること等により形成できる。
【0018】
本実施形態において、塗料、インキとして、好ましくは、全固形分中、ビヒクルが5〜50重量%、好ましくは20〜40重量%配合されてなるもの、特に透明のものが好ましく使用される。
【0019】
本実施形態において用いられる二酸化チタンは、白色金属酸化物顔料である。
前記二酸化チタンは、有機処理剤または無機処理剤で表面処理(即ち、表面コーティング)したものを用いてもよい。 有機処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。また、無機処理剤としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア等を挙げることができる。
具体的には、表面処理ルチル型酸化チタン、石原産業(株)製:商品名「TTOシリーズ」、テイカ(株)製:商品名「MTシリーズ」等を挙げることができる。
なお、前記二酸化チタンは、アナターゼ型よりもルチル型が好ましい。
【0020】
前記二酸化チタンは、一次粒子径が1〜180nm、好ましくは10〜100nm、更に好ましくは10〜60nmのものが用いられる。該一次粒子径が10〜100nmの二酸化チタンを使用した場合は、特に優れたダウンフロップ性を呈する塗装物や印刷物を得ることができる。
また、該一次粒子径が1〜19nmの二酸化チタンを使用した場合は、一次粒子径が20nm以上の二酸化チタンを使用した場合に比べるとダウンフロップ性は若干劣りはするものの、一次粒子径が20nm以上の二酸化チタンを使用した場合に起こる光沢物の色が何色であれ、全体的に僅かに金色味を帯びて見えるという現象が殆ど起こらず、意匠性の幅が広がる。
尚、一次粒子径の変動係数は、60%以下が好ましく、更に好ましくは45%以下である。ここで変動係数は(一次粒子径の標準偏差)/(一次粒子径)×100(%)により定義される。
【0021】
前記二酸化チタンの一次粒子径が1nm未満の場合や180nmを超える場合では、ダウンフロップ性が劣るものとなる。
ここで、一次粒子径は、実施例記載の方法により測定される。
尚、所定粒子径の二酸化チタンは、コロイド法(化学処方)、硫酸法、塩素法等により調製される。
【0022】
また、塗料、インキにおける二酸化チタンの配合量は、塗料又はインキの全固形分中0.1〜70重量%であり、好ましくは0.5〜60重量%であり、より好ましくは1〜55重量%である。
斯かる範囲であれば、より優れたダウンフロップ性を呈する。
一方、二酸化チタンの配合量が0.1重量%未満であれば、光沢物等への付着量を増やしても十分なダウンフロップ性を呈し得ず、70重量%を超える場合には、塗料等としての作業性、付着性等が極端に低下する。
【0023】
本実施形態においては、前記二酸化チタンをビヒクルに分散し二次粒子を形成させ、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれており、好ましくは、80%以上が0.04〜1.20μmの粒度分布内に含まれている。
二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれておれば、深みがあり、且つ、透明感に優れたダウンフロップ性を呈する。更に、高級感を有するため意匠性にも優れている。
なお、二次粒子及び該二次粒子の粒度分布は、実施例記載の方法により測定される。
【0024】
前記ビヒクルとしては、塗料用ビヒクルとインキ用ビヒクルとを挙げることができる。
前記塗料用ビヒクルとしては、アクリル、アルキド、ポリエステル、アクリルメラミン、ウレタン、シリコーン、エポキシ、不飽和ポリエステル、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー、フッ素系等の樹脂を挙げることができる。
また、前記インキ用ビヒクルとしては、アクリル、ポリアミド、不飽和ポリエステル、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー、塩酢ビ(塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合物)、塩素化ポリプロピレン、ウレタン、セルロース誘導体、マレイン酸誘導体、ロジン誘導体、樹脂ワニス等を挙げることができる。
該ビヒクルは、二酸化チタンと顔料とを分散させるものである。
該ビヒクルは、前記樹脂と必要に応じて架橋剤等とから構成されている。
【0025】
前記二酸化チタンと前記ビヒクルとの配合量は、塗料の場合、ビヒクル100重量部に対して、二酸化チタン0.5〜60重量部であり、好ましくはビヒクル100重量部に対して、二酸化チタン1〜10重量部である。
二酸化チタンの配合量が、0.5重量部未満であれば、ダウンフロップ性を示さなくなる。
二酸化チタンの配合量が、60重量部を超えると透明性を示さなくなる。 また、前記二酸化チタンと前記ビヒクルとの配合量は、インキの場合、ビヒクル100重量部に対して、二酸化チタン0.5〜200重量部であり、好ましくはビヒクル100重量部に対して、二酸化チタン10〜100重量部である。
二酸化チタンの配合量が、0.5重量部未満であれば、ダウンフロップ性を示さなくなる。二酸化チタンの配合量が、200重量部を超えると透明性を示さなくなる。
【0026】
前記二酸化チタンをビヒクルに分散させる分散剤を用いることもできる。
分散剤としては、ポリアクリル酸系、ポリアルキレンポリアミン系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、脂肪酸金属石鹸、ポリリン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸、カルボキシメチルセルロース、ひまし油誘導体、ソルビタンエステル、コハク酸エステル、脂肪酸アミン系、スルホン酸アミド系、ε−カプロラクタム系、ハイドロステアリン酸系、ポリカルボン酸系、ポリビニルアルコール等の各種分散剤を用いることができる。
具体的には、アビシア社製:商品名「ソルスパース3000、9000、17000、20000、24000」、ビックケミー社製:商品名「Disperbyk−161、−162、−163、−164」等を挙げることができる。
分散剤を加えることにより、二次粒子の凝集を防止し、該二次粒子を安定化させることができる。
【0027】
前記分散剤を添加する場合の配合量は、二酸化チタン100重量部に対して、分散剤0.5〜10重量部である。
分散剤の配合量が、0.5重量部未満であれば、二次粒子の凝集を防止できず、該二次粒子の径が大きくなる虞がある。
分散剤の配合量が、10重量部を超えると、塗料やインキの耐光性、密着性等の諸物性を低下させる虞がある。
【0028】
前記二酸化チタンをビヒクルに分散させる方法としては、ロールミル、超音波ミル、ハイスピードストーンミル、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライタ、ディスクミル、ビーズミル、ペイントシェーカー等の粉砕機、または分散機を用いることができる。
二次粒子の粒子径を調整する方法は、例えば、ボールミルを用いた場合には、粉砕時間、ボールミルの中に入れるボールの量等で調整することができる。
【0029】
本実施形態の塗装物における塗料の乾燥膜厚としては、該塗料に含まれるビヒクル100重量部に対して二酸化チタンが0.5〜10重量部未満の塗料を用いた場合は、5〜20μmが好ましく、該塗料に含まれるビヒクル100重量部に対して二酸化チタンが10重量部以上の塗料を用いた場合は、0.5〜10μmが好ましい。
また、本実施形態の印刷物におけるインキの乾燥膜厚としては、該インキに含まれるビヒクル100重量部に対して二酸化チタンが0.5〜50重量部未満のインキを用いた場合は、0.5〜10μm、好ましくは5μm以下であり、該インキに含まれるビヒクル100重量部に対して二酸化チタンが50〜200重量部のインキを用いた場合は、2μm以下が好ましい。
【0030】
本実施形態の塗料及びインキには、通常、金属顔料は配合されていないことが好ましいが、ダウンフロップ性を阻害しない範囲(0.6重量%以下、好ましくは、0〜0.3重量%)で金属顔料が配合されていても良い。金属顔料の配合量が、0.6重量%以下であれば、光の透過性を殆ど低下させず、ダウンフロップ性が阻害される虞も低減する。
【0031】
また、金属顔料と二酸化チタンとの配合割合としては、二酸化チタン1重量部に対して、金属顔料0〜0.2重量部が好ましい。斯かる範囲であれば、比較的膜厚(塗料層、インキ層の厚さ)を厚くした場合であっても、ダウンフロップ性を阻害する虞が殆どない。
ここで、金属顔料とは、酸化されていない金属単体からなる顔料を意味し、該金属顔料としては、金属フレーク、金属被覆粒子等を、具体的には、アルミニウムフレーク顔料を挙げることができる。
【0032】
また、本実施形態の塗料及びインキには、更に、着色顔料又は着色染料を配合してもよい。斯かる構成によれば、ダウンフロップ性を呈する際に、視角によって、ベースとなる色(光沢物の色)から、配合された着色顔料又は着色染料の色に大きく変化し易いものとなる。
そのため、カラーコピー機等で複写しても、視角によって大きく色調が変化するものが得られないため、偽造が困難な印刷物等になる。
【0033】
更に、本実施形態の塗料及びインキには、本発明の目的を妨げない範囲内で、当業者によく知られている、溶剤及び各種添加剤等を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、消泡剤、沈降防止剤、つや消し剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤等を挙げることができる。
【0034】
本実施形態において、光沢物に塗料を塗布する方法としては、スプレー塗装、静電塗装、ローラーコート、電着塗装、粉体塗装等の通常の方法を用いることができる。
また、予め前記塗料をフィルム状等の成形体に成形し、該成形体を光沢物の表面に積層させてもよく、さらに、前記成形体の裏側に液状の光沢物を塗布・硬化させてもよい。
【0035】
本実施形態において、光沢物にインキを塗布する方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法を用いることができ、それらの中でも、オフセット印刷、インクジェット印刷が好適に用いられる。本発明に係るインキを用いて、オフセット印刷やインクジェット印刷を行えば、印刷模様が非常に繊細なものとなりうる。
【0036】
本実施形態においては、光沢物の表面に直接、本発明に係る塗料又はインキを塗布する構成のみならず、光沢物の表面に透明な層を介して塗料又はインキを塗布する構成を採用してもよい。例えば、透明な樹脂フィルムの一方に、本発明に係る塗料又はインキを塗布しておき、該樹脂フィルムの他方を光沢物の表面に重ねる(ラミネートする)ことにより構成されるものであってもよい。
前記樹脂フィルムとしては、着色顔料又は着色染料等が配合された有色透明な樹脂フィルムが好ましい。
斯かる構成からなる塗装物又は印刷物は、光沢物から金属光沢を呈すると共に、有色透明な層(樹脂フィルムの層)によって、メタリックカラーを呈するものとなり、しかも、前記二酸化チタンが配合された塗料等の層によって、偏光する色彩が更に多色化した装飾性の極めて優れたものとなる。
【0037】
更に、本実施形態においては、光沢物の表面に本発明に係る塗料又はインキを塗布させた表面側に、更に、クリヤー層を備えるものであってもよい。
該クリヤー層を備えることにより、耐食性、耐候性、耐衝撃性に優れたものとなる。
従って、自動車の外装等にも適用できる。
前記クリヤー層は、例えば、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等の樹脂を吹き付けたり、はけ塗りしたり、更には、透明な樹脂フィルムを貼着すること等により形成できる。
尚、本発明に係る塗料及びインキは、例えば、自動車、缶、装飾品、コンテナ、看板、包装材、ラベル、カタログ、容器、家電製品、通信機器、筆記具、絵の具、マニキュア等の表面装飾に適用できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例、比較例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(一次粒子径及び一次粒子の分布の測定方法)
一次粒子の分布は、電子顕微鏡による一次粒子の画像を「画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ社製)により解析し、ランダムに配向した一次粒子を一定軸方向の長さについて測定する「定方向径」を用いて、個数を基準でd10、d50、d90を求めた。
また、一次粒子径は、個数を基準で累積50%(d50)値とした。
【0040】
(二次粒子の粒径及び粒度分布の測定方法)
二次粒子の粒度分布(d10、d90)は、マイクロトラックUPA150粒度分析計(日機装株式会社製、測定範囲0.003〜6μmの範囲をレーザードップラー/周波数解析法で測定)を用い、希釈溶剤10ml中に測定試料5滴をスポイトで滴下し、超音波をかけて均一に希釈してから、測定用セルに入れ、3分後に測定して求めた。
【0041】
(実施例1)
(インキ調整法)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.040μm)15重量部、商品名「REX−21」(合同インキ製グラビアインキメジュウム、NV(非揮発成分)17%)100重量部、溶剤(トルエン/イソプロピルアルコール/酢酸エチルの混合溶媒)5重量部、1.6mm径チタンビーズ150重量部を200mlガラス製マヨネーズ瓶に仕込み、ペイントシェーカー(東洋精機社製)を用いて3時間分散した。
(粒度分布測定)
上記の方法で調整したインキの二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.04μm、累積90%(d90)が0.50μmであった。
(透明性測定)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いて、上記方法で調整したインキを塗布、自然乾燥後のインキ厚が約1μmになるようにした。
塗布後のPETフィルムを透過濃度計(Kollmorgen社製、商品名「Macbeth TR927」)を用いて測定した。測定値は、0.21であった。
なお、測定値が0.23以上の場合には、透明性不良と判定した。
(ダウンフロップ性評価)
PETフィルムにバーコーターを用いて、上記方法で調整したインキを自然乾燥後のインキ厚が約1μmになるように、前記フィルムの一面に塗布し、該フィルムの他面にアルミ蒸着紙(パナック社製、商品名「メタルミー75TS」、厚み75μm)を積層した。
積層したフィルムを変角測色計(X−Rite社製、「MA60」)を用いて、観測角15度(フェイスカラー)と観測角110度(フロップカラー)の差(△b)を求めた。
その結果、△bは34であった。
△bが25以上あればダウンフロップ性が大きいとした。
上記測定及び評価の結果を表1に記載した。
【0042】
(実施例2)
ペイントシェーカー(東洋精機社製)を用いて5時間分散した以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムを用いて実施例1と同様の測定及び評価を行った。
二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.03μm、累積90%(d90)が0.20μmであった。
測定及び評価の結果を表1に記載した。
【0043】
(実施例3)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.015μm)3.5重量部、ATニス(武蔵塗料製アクリルメラミン塗料、NV48%)89重量部、溶剤(メトキシプロピルアセテート)6.5重量部、分散剤(ソルスパーズ20000)0.5重量部、1.6mm径チタンビーズ200重量部をガラス製マヨネーズ瓶に仕込み、ペイントシェーカー(東洋精機社製)を用いて3時間分散した。
(粒度分布測定)
上記の方法で調整した塗料の二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.06μm、累積90%(d90)が0.40μmであった。
(透明性測定及びダウンフロップ性評価)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いて、上記方法で調整した塗料を塗布、自然乾燥後の塗膜厚が約10μmになるようにした以外、実施例1と同様の方法で測定及び評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0044】
(実施例4)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.035μm)を用いた以外は、実施例3と同様の方法により試料を作製し、同様の測定及び評価を行い、その結果を表1に示した。
二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.10μm、累積90%(d90)が1.00μmであった。
【0045】
(実施例5)
アルミナ、ジルコニア処理した表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.055μm)25重量部、紫外線硬化樹脂(東南インキ社製、商品名「UVワニス」、ロジン変性フェノール樹脂とエポキシアクリレートの混合物)25重量部、トリメチロールプロパントリアクリレートとネオペンチルジアクリレートの1対1混合物)30重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュアー」)10重量部、補助剤(安定剤等の添加剤)5重量部を三本ミルで混練し、UVインキを作製した。
二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.08μm、累積90%(d90)が1.00μmであった。
前記UVインキを用いてPETフィルムに乾燥後のインキ厚が2μmになるようにオフセット印刷し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
その結果を表1に示した。
【0046】
(実施例6)
アルミナ、ジルコニア処理した表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.054μm、一次粒子の分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.03μm、累積90%(d90)が0.08μm)8重量部、インク樹脂((株)ミノグループ製、商品名「UPGL」、樹脂分50重量%)200重量部、分散剤(ソルスパース24000)4重量部を用いて実施例3と同様の方法を用いてインクを調整した。
二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.1μm、累積90%(d90)が0.7μmであった。
前記インクを用いてPETフィルムに300メッシュスクリーンを用いて該インクを塗布し、自然乾燥後のインク厚が約5μmになるように印刷し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
その結果を表1に示した。
ここで、一次粒子の分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.03μm、個数を基準とする累積90%(d90)が0.08μmであって、一次粒子が100個あれば80個以上が該範囲内に含まれることを意味する。
【0047】
(比較例1)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.15μm)4重量部、ATニス(武蔵塗料製アクリルメラミン塗料、NV48%)89重量部、溶剤(メトキシプロピルアセテート)7重量部、1.6mm径チタンビーズ200重量部をガラス製マヨネーズ瓶に仕込み、ペイントシェーカーを用いて3時間分散して試料を得た。
なお、二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%
(d10)が0.07μm、累積90%(d90)が2.1μmであった。その内の75%が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていた。
上記試料を用いて実施例3と同様の測定及び評価を行った。
その結果を表1に示した。
【0048】
(比較例2)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.015μm)を用いた以外は、比較例1と同様方法で試料を得て、該試料を用いて実施例3と同様の測定及び評価を行った。
なお、二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%
(d10)が0.10μm、累積90%(d90)が3.4μmであった。
その内の31%が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていた。
その結果を表1に示した。
【0049】
(比較例3)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.015μm)を用いた以外は、実施例5と同様方法で試料を得て、該試料を用いて実施例5と同様の測定及び評価を行った。
なお、二次粒子の粒径の粒度分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%
(d10)が0.01μm、累積90%(d90)が0.06μmであった。
その内の12%が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていた。
その結果を表1に示した。
【0050】
(比較例4)
表面処理ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.16μm、一次粒子の分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.10μm、累積90%(d90)が0.20μm)を用いた以外は、実施例5と同様方法で試料を得て、該試料を用いて実施例5と同様の測定及び評価を行った。
なお、二次粒子の粒径は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.15μm、累積90%(d90)が1.82μmであった。
その結果を表1に示した。
【0051】
(比較例5)
ルチル型酸化チタン(一次粒子径0.19μm、一次粒子の分布は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.03μm、累積90%(d90)が0.25μm)を用い、分散剤を用いなかった以外は、実施例6と同様方法で試料を得て、該試料を用いて実施例5と同様の測定及び評価を行った。
なお、二次粒子の粒径は、個数を基準とする粒度分布において累積10%(d10)が0.15μm、累積90%(d90)が1.40μmであった。
その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例1〜6に示すように透明性及びダウンフロップ性に優れていることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料と樹脂とを含有する金属表面層を備えた光沢物に塗料が塗布されてなる塗装物であって、
前記塗料は、一次粒子径1〜180nmの二酸化チタンが0.1〜70重量%配合されており、且つ、前記二酸化チタンが、ビヒクルに分散することで二次粒子となっており、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていることを特徴とする塗装物。
【請求項2】
前記二酸化チタンの一次粒子径が1〜19nmである請求項1記載の塗装物。
【請求項3】
前記二酸化チタンをビヒクルに分散させる分散剤が用いられている請求項1又は2に記載の塗装物。
【請求項4】
前記二酸化チタンは、有機処理剤又は無機処理剤で表面処理された表面処理二酸化チタンである請求項1〜3の何れかに記載の塗装物。
【請求項5】
前記光沢物は、全固形分中アルミニウム金属顔料が1〜40重量%、樹脂が10〜95重量%配合されてなる金属表面層形成用の塗料を塗装して形成されている請求項1〜4の何れかに記載の塗装物。
【請求項6】
金属光沢又は樹脂光沢を有する表面を備えた光沢物にインキが塗布されてなる印刷物であって、
前記インキは、一次粒子径1〜180nmの二酸化チタンが0.1〜70重量%配合されており、且つ、前記二酸化チタンが、ビヒクルに分散することで二次粒子となっており、該二次粒子の粒径の80%以上が0.03〜1.50μmの粒度分布内に含まれていることを特徴とする印刷物。
【請求項7】
前記二酸化チタンの一次粒子径が1〜19nmである請求項6記載の印刷物。
【請求項8】
前記二酸化チタンをビヒクルに分散させる分散剤が用いられている請求項6又は7に記載の印刷物。
【請求項9】
前記二酸化チタンは、有機処理剤又は無機処理剤で表面処理された表面処理二酸化チタンである請求項6〜8の何れかに記載の印刷物。
【請求項10】
前記インキを、オフセット印刷又はインクジェット印刷により前記光沢物に塗布する請求項6〜9の何れかに記載の印刷物。
【請求項11】
前記光沢物は、パールインキ印刷物、アルミ蒸着物又はアルミニウム箔である請求項6〜10の何れかに記載の印刷物。

【公開番号】特開2006−70255(P2006−70255A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224219(P2005−224219)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(591224559)日本コレス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】