説明

増幅動電流体のポンプ供給切り換えおよび脱塩

【解決手段】 本発明は、溶液を脱塩するための装置および方法を提供する。この方法は、導管に連結されたマイクロ流路を包含する装置を利用することなどで、導管における電界の誘起の結果、マイクロ流路内に空間電荷層が形成される。空間電荷層は塩イオンのためのエネルギー障壁となり、マイクロ流路と導管との間の連結領域に近接したイオン欠乏ゾーンを発生させる。こうしてこの方法は、マイクロ流路内において、導管に近接した領域からの塩イオンの除去と、導管から離間した領域での塩の蓄積とを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体装置において液体流を加速するための方法を提供する。本発明は、増幅ポンプ供給のため、流方向の切り換えのため、直接的(無膜)海水淡水化のための方法を提供する。この方法は、流体流の増強を起こす溶液中の帯電種の電気誘導による局在化に基づく。局在化した帯電種はさらに分離および隔離されて溶液から除去される。
【背景技術】
【0002】
プロテオミクスにおける主な難題の一つは、血清または細胞抽出液などの生体分子試料液の高い複雑性である。一般的な血液試料液は10,000種類もの異なるタンパク質種を含み、濃度は9桁にわたって変化する。このようなタンパク質の多様性は、広大な濃度範囲とともに、プロテオミクスにおける試料液の準備に多大な難題を課す。
【0003】
多次元分類ステップおよび質量分析法(MS)に基づく従来のタンパク質分析技術は、分離ピーク容量(〜3000まで)および検出のダイナミックレンジ(〜104)が制限されるため、不充分である。マイクロ流体生体分子分析システム(いわゆるμTAS)には、自動化生体分子処理の可能性がある。様々な生体分子分離および精製のステップは、化学反応および増幅とともに、マイクロチップに小型化され、試料液の分離および処理が桁違いに高速であることが説明されている。また、マイクロ流体についての2種類の異なる分離ステップを多次元分離装置に統合できることが説明されている。しかし、大部分のマイクロ流体分離および試料液処理の装置には、試料液体積の不一致という重大な問題が見られる。マイクロ流体装置は1pL〜1nLの試料液流体の取り扱いおよび処理において非常に効率的であるが、大部分の生体分子試料液は1μL以上の液体体積で利用可能であるか取り扱われる。そのため、マイクロチップに基づく分離技術では有効試料液のわずかな画分のみが分析されることが多く、これは全体的な検出感度を著しく制限する。プロテオミクスでは、情報の多いシグナル分子(サイトカインおよびバイオマーカなど)がわずかな濃度(nM〜pMの範囲)でのみ存在して、タンパク質およびペプチドについてはポリミラーゼ連鎖反応(PCR)などのシグナル増幅技術が存在しないという事実により、この問題が悪化する。
【0004】
必要とされるのは、マイクロリットル以上という典型的な試料液体積を採取し、このような分子がさらに高い感度で分離および検出されるようにこれらの分子を濃縮して体積を少なくする効率的な試料液濃縮器である。電界増幅試料液スタッキング(FAS)、等速電気泳動(ITP)、動電学的トラッピング、ミセル動電学的掃引、クロマトグラフィ予備(事前)濃縮、膜予備濃縮を含めて、液体に試料液予備濃縮を行うためのストラテジーが現在、いくつか利用可能である。これらの技術の多くは、元々は毛管電気泳動のために開発され、特殊な緩衝液構成および/または反応物を必要とする。クロマトグラフィおよび濾過に基づく予備濃縮技術の効率は、目標分子の疎水性およびサイズに左右される。動電学的トラッピングは帯電した生体分子の種に使用され、動作にはナノ多孔性の電荷選択性膜を一般に必要とする。全体的に、既存の予備濃縮方式について説明された濃縮係数は〜1000に制限され、反応物および材料の要件など様々な動作上の制約のため、統合マイクロシステムへの適用は困難である。
【0005】
他方、合成および分析のための純粋な流体を生成するため、マイクロ流体装置では帯電種、特に塩の除去が必要とされる。流体が水である時には、飲用の精製水が必要である。
【0006】
淡水は生命にとって重大な資源である。しかし人口の増加、生活基準の向上、そして工業および農業活動の拡大により、前例のないほどの浄水供給源の需要が世界中で高まっている。現在、25の国、特に中東およびアフリカで、3億5千万人が水不足に悩んでおり、2025年には52の国でその数は39億人(世界人口の2/3)まで増えるだろうと、OECDおよびUNは報告している。
【0007】
淡水の不足は、世界が現在直面している深刻な難題の一つであり、ゆえにエネルギー効率のよい淡水化ストラテジーは水危機に実質的な回答を与えることができる。地球上の水資源全体の約97%が海水であり、水資源全体の0.5%のみが飲用に適した淡水であるので、豊富な海水を淡水に転化すると世界的な水不足問題に対する解答が得られる。歴史的に見て、蒸留は、資本およびエネルギーコストが高いにもかかわらず、蒸留に必要な燃料が比較的低価格である中東諸国に適した、海水淡水化のために選択される方法であった。他の標準的な海水淡水化アプローチは、逆浸透(RO)および電気透析(ED)であり、エネルギー効率が比較的良好(ROについては−5Wh/L、EDについては10〜25Wh/L)である。ROプロセスでは、使用される半透膜における海水浸透圧(気圧の〜27倍)に打ち勝つため、高い圧力の発生が必要である。EDプロセスは、選択透過性膜においてイオンを選択的に移動させて純水を残すのに電流を利用する。上述した三つの海水淡水化技術は、電力消費量の多い大規模システムと、このようなシステムの運転コストを著しく高める他の大規模インフラストラクチャ検討事項を必要とする。このような特徴のため、これらの方法は災害地または開発途上国には適していない。
【0008】
深刻な水不足に襲われている地域はたいてい、最も貧しく最も開発途上の国々であるので、これは重大な地球規模の難題である。浄水の不足は、これらの国々の人々にとって重大な健康、エネルギー、経済上の難題でもある。この意味において、電力消費量が少なく処理量の多い小規模または可搬式の海水淡水化システムがあれば、災害地または資源不足状況での人道活動を含む多くの重要な政府、民間、軍隊のニーズにおいて、非常に有益であろう。海水淡水化の別の重大な難題は、源水に含まれるマイクロ/マクロ粒子、バクテリア、他の病原体の検出および除去である。これらの粒子および微生物は膜の汚れを引き起こし、これはROとEDの両方のシステムにとって大きな問題である。海水淡水化プロセスでは正浸透プロセス(逆浸透の前に、海水を抽出してさらに塩分の高い液体にする)が濾過に利用されたが、エネルギー消費量が追加されるため、その動作は高いコストを伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、本発明は、イオン濃縮分極法(concentration polarization)を利用して海水(〜500mMの塩分濃度)を飲料水(<10mMの塩分濃度)に転化するマイクロ/ナノ流体システムを提供する。海水の連続ストリーム(流れ)が、イオン欠乏現象に基づく方法により、脱塩ストリームと濃縮ストリームとに分割され、分割された2本のストリームが別々のマイクロ流路へ流入する。この方式の主な特徴は、塩とこれより大きな粒子(細胞、ウイルス、微生物)の両方が、連続的な安定状態の流動作でナノ多孔性膜から押し出されて(通過するのでなく)、逆浸透および他の膜濾過方法において膜にとって有害である膜の汚れや塩蓄積の可能性を大いに低下させる。簡単なマイクロ流体ユニット装置を用いて、5Wh/L未満の電力消費量での海水の連続的な淡水化が説明された。このような淡水化は、最新技術の電気透析および逆浸透による淡水化システムに匹敵する。提示する方法は、大型の淡水化プラントの必要性を回避するバッテリ式の動作を可能にする小規模/中規模の淡水化の用途に適しており、理想的であろう。
【0010】
一実施形態において、本発明は、マイクロ流体装置において液体流を加速するための方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii帯電種を包含する液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路(チャネル)と、
iii.緩衝液(バッファ)を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路または槽、又はそれらの組合せ、に電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に第1電界を誘起することで試料液マイクロ流路に電気浸透流が誘起され、電気浸透流がさらに装置に液体を導入して、第1電界の強度により電気浸透流が制御されるステップと、
・導管に第2電界を誘起することで導管に近接した領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生し、イオン欠乏が試料液マイクロ流路での流れを加速するステップと
を包含する。
【0011】
一実施形態では、試料液マイクロ流路の第1側に高電圧を、試料液マイクロ流路の第2側に低電圧を印加することにより、試料液マイクロ流路に第1電界が発生する。一実施形態では、高電圧、低電圧、又はそれらの組合せは、正電圧である。一実施形態では、正電圧は50mVと500Vの間である。一実施形態では、高電圧は正であり、試料液マイクロ流路の第2側を電気接地することによって低電圧が達成される。
【0012】
一実施形態では、導管の、試料液マイクロ流路に連結された側に高電圧を、導管の、緩衝液マイクロ流路に連結された側に低電圧を印加することにより、導管に第2電界が発生する。一実施形態では、高電圧は正であり、導管に連結された緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することにより低電圧が印加される。一実施形態において、高電圧は、試料液マイクロ流路の第1側および第2側に2種類の電圧が印加された結果である。一実施形態では、試料液マイクロ流体の第1側および第2側に印加される2種類の電圧の値の間に位置する中間値を高電圧が有する。
【0013】
一実施形態では、試料液マイクロ流路の第1側に60Vの電圧を印加することにより、そして試料液マイクロ流体の第2側に40Vの電圧を印加することにより、第1および第2電界が誘起され、緩衝液マイクロ流路または槽は電気接地されている。
【0014】
一実施形態では、帯電種を包含する溶液の試料液マイクロ流路への導入と、導管の電界と試料液マイクロ流路の電界の非依存的な誘起との際に、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に帯電種が集中する。
【0015】
一実施形態において、試料液マイクロ流路はさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する。
【0016】
一実施形態では、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、またはそれらの組合せ、の幅は1〜100μmの間である。一実施形態では、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、又はそれらの組合せ、の深さは0.5〜50μmの間である。一実施形態では、導管の幅は100〜400ナノメートルの間である。一実施形態では、導管の幅は1〜100マイクロメートルの間である。一実施形態では、導管の深さは20〜100ナノメートルの間である。一実施形態では、導管の深さは1〜100マイクロメートルの間である。
【0017】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の表面は、対象の種の表面への吸着を低下させる機能を有している。一実施形態では、導管および/または第1の緩衝液マイクロ流路の表面は、装置の動作効率を向上させる機能を有している。
【0018】
一実施形態において、装置の動作効率を高めるため、外部ゲート電圧が装置の基板に印加される。
【0019】
一実施形態において、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、導管、又はそれらの組合せは、リソグラフィおよびエッチングのプロセスによって形成される。
【0020】
一実施形態では、透明材料で装置が構成される。一実施形態において透明材料は、パイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、またはSU−8である。一実施形態では、自家蛍光性の低い材料で装置がコーティングされる。
【0021】
一実施形態では、装置がポンプに結合される。一実施形態では、センサ、分離システム、検出システム、分析システム、又はそれらの組合せに、装置が結合される。一実施形態において、検出システムは、照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、以上の組合せを包含する。
【0022】
一実施形態において、試料液マイクロ流路での液体の流速は100μm/秒と10mm/秒の間である。
【0023】
一実施形態において、多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、以上の組合せを装置が包含する。一実施形態では、多数のマイクロ流路、導管、又はそれらの組合せが特定の幾何学形状またはアレイで配設される。一実施形態では、少なくとも1000本の試料液マイクロ流路、少なくとも1000本の緩衝液マイクロ流路、又は少なくとも1000本の導管をアレイが包含する。
【0024】
一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、以上の組合せは、10cmと30cmの間の範囲である。
【0025】
一実施形態において、幾何学形状またはアレイは、導管に対するマイクロ流路の垂直配向を包含する。
【0026】
一実施形態において、液体の体積流量は少なくとも1L/分である。一実施形態では、液体の体積流量は60〜100L/分の間の範囲である。一実施形態では、帯電種を包含する液体は海水である。一実施形態では、装置の動作に必要とされる電力は10wから100wの間の範囲である。一実施形態では、試料液マイクロ流路での流れは連続的である。
【0027】
一実施形態において、装置は機器の一部である。一実施形態において機器は手持ち式/可搬式である。一実施形態において機器は、卓上機器である。
【0028】
一実施形態において、本発明は、塩濃度を低下させるつまり溶液を脱塩する方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii塩イオンを包含する液体が通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路と、
iv.少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、又はそれらの組合せに電界を誘起するユニットと、
vi動電学的なまたは圧力駆動の流れを試料液マイクロ流路に誘起するユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に電界を誘起することで電気浸透流が試料液マイクロ流路に誘起され、電気浸透流がさらに装置に液体を導入して、電界の強度により電気浸透流が制御されるステップと、
・導管に電界を誘起することで、イオン種に対するエネルギー障壁となる空間電荷層が試料液マイクロ流路に形成され、導管に近接する領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生して、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中するステップと、
を包含する。
【0029】
一実施形態において、海水の供給は重力によって行われる。一実施形態では、重力誘起の海水供給は、試料液の送出に電力の追加を必要としないため、ROまたはED方法を超える長所を持つ。
【0030】
一実施形態では、光電池(つまり太陽電池)によってICP淡水化プロセスが実施される。本発明のICP淡水化の最も重要な特徴の一つは電力消費量が少ないことであり、これは、充電式電池と光電池のいずれかによって動作電力が供給されることを意味する。最新の光電池は平均して〜25mW/cmを発生させる。この効率では、本発明の装置を作動させるのに必要とされる光電池の総面積は〜2700cm2(2250μW×3×104/25mW/cm2)のはずである。このような光電池面積は、300mL/分の流量で装置に電力供給する。必要な可撓性光電池のこのサイズ(〜50cm×50cm)は可搬式システムに適しており、この可搬式淡水化システムを太陽光発電式にする。
【0031】
一実施形態において、塩を含有する液体は海水である。一実施形態において、飲用に海水を脱塩するのに同方法が使用される。一実施形態において、試料液マイクロ流路はさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する。一実施形態において、低塩濃度溶液のための第1出口は試料液マイクロ流路のイオン欠乏ゾーンに連結され、高塩濃度溶液のための第2出口は、塩イオンが集中した導管から離間した領域に連結されている。
【0032】
一実施形態において、試料液マイクロ流路における流れは連続的である。一実施形態では、合成、検出分析、精製、又はそれらの組合せのため溶液を濾過するのに本方法が使用される。一実施形態では、水から不純物を除去するのに本方法が使用される。
【0033】
一実施形態において、本発明は、液体流を停止させるかその方向を切り換える方法を提供し、この方法は、
・液体流方向が試料液マイクロ流路の第1側から第2側となるように、
i.基板と、
ii.帯電種を包含する液体が第1側から第2側へ通されることで第1流を発生させる少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路または容器、又はそれらの組合せにおいて電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に第1電界を、導管に第2電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生して、試料液マイクロ流路に第2動電流が誘起され、第2流方向がマイクロ流路の第2側から第1側であって、第1および第2電界の強度によって第2電気浸透流が制御され、マイクロ流路の第2側から第1側へ誘起される第2流が、第1側から第2側への第1流と反対であり、第2側から第1側へ誘起される第2流が、第1流を停止させるかその方向を逆転させるステップと、
を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】液体流を加速するための装置の実施形態を概略図示している。マイクロ/ナノ流体ハイブリッド流路システムとこの流路内での流体作用についての概略図が示されている。接線電界(ET)および垂直電界(EN)がそれぞれ、中央のマイクロ流路に沿って、また導管を横切って印加された。(b)増幅動電流(〜70nL/分;平衡状態、〜350nL/分;増幅動電流)を用いた流体ポンプ供給。この場合に、VHは500V、VLは400V、これらのEOFの間の移行時間は1.5秒未満であった。側面槽が非接地状態で平衡EOFが測定され、側面槽が接地された状態で増幅動電流が測定された。(c)ETと相関させた増幅動電流の2種類のポンプ供給モード(VHは500Vで一定であったが、VLは変化した)。
【図2】液体を脱塩するための装置の実施形態を概略的に示す。(a)片側および(b)両側導管装置におけるマイクロ/ナノ流体脱塩システムの概略図。(c)片側脱塩装置における粒子運動の実験的検証。印加される電圧は、VH=60VおよびVL=40Vである。
【図3】液体の流方向を逆転させるための装置の実施形態を概略的に示す。図3(a)外部シリンジポンプを備える流量測定システムの概略図。(b)ETと相関させた流体ポンプ供給ヒステリシスと、ETとは反対方向の外部圧力場における緩衝液イオン濃度(V1は0Vで一定であるのに対してVHは変化した)。増幅動電流により、流量の正の値が2秒以内に負の値に切り換えられた。(c)外部圧力場における増幅動電学流を用いた流体切り換えの連続画像。圧力場に対してETを上昇させることにより、正味流の方向が切り換えられる。各画像の数字は、図3(b)のものに対応する。
【図4】高処理量動作のための装置の実施形態を概略的に示す。図4(a)高流量のためのマルチナノ接合部装置の概略図。最初に、V1を介して流体がポンプ供給されてから(段階1)、イオン欠乏ゾーンが形成されてポンプ供給を開始する。しばらくしてからV2がV1未満に設定され(段階2)、V1が維持された(VH>VL>V1>V2)。V1とV2の機能の組合せは、段階1よりも高い流量をもたらす。(b)高処理量の用途のための大規模な並列流路装置。ナノ接合部により接続された各マイクロ流路からの流体が、一つのマイクロ流路に合流される。
【図5】平衡および非平衡状態EOF(内側/外側欠乏領域)の速度をETと相関させて概略的に示す。
【図6】(A)一重ゲート(SG)装置および(B)二重ゲート(DG)装置を概略的に示す。
【図7】SG装置の実施形態における基本的なイオン富化およびイオン欠乏の作用を説明している。試料液マイクロ流路の第1および第2側に同じ電圧が印加され、緩衝液流路の両側が電気接地された。導管に近接したエリアにおいて緩衝液マイクロ流路には、イオン富化ゾーン(明部分)が形成された。導管に近接したエリアにおいて試料液マイクロ流路には、イオン欠乏ゾーン(暗部分)が形成された。欠乏と富化の両方の領域は急速に拡大した。
【図8】イオン欠乏電圧条件での(a)SGおよび(b)DG装置の実施形態におけるイオン欠乏を説明している。(b)において、試料液マイクロ流体(VH)の第1側に印加される電位は20V、試料液マイクロ流体(VL)の右側では10V、VHは15Vであった。緩衝液流路は電気接地された。
【図9】(a)SGおよび(b)DG装置の実施形態を用いた動電学的イオン移動を説明している。示された粒子のおよその推定速度は、(a)VH=10VでVL=5Vでは140μm/秒、(b)VH=10VでVL=5Vでは500μm/秒であった。
【図10】(a)電位低下を測定するための埋設マイクロ電極を備えるマイクロ/ナノ流体淡水化システムおよび(b)外部圧力場と関連する動電学的淡水化操作の一実施形態の概略図である。
【図11】(a)75V/cmの電界が印加された20μL/分の外部流量での淡水化プロセスを追跡した蛍光画像についての顕微鏡画像を示す。入口マイクロ流路は、幅500μm×深さ100μmという寸法を持つ。海水試料液が噴射され、「含塩」および「脱塩」ストリームに分割される。(b)ICPが作動すると、蛍光色素(塩を表す)とWBC(ミクロンサイズの粒子を表す)とが含塩ストリームのみを流れる。ミクロンサイズの粒子を視覚的に明瞭にするため、細いマイクロ流路(幅100μ×深さ15μm)が使用された。1時間の淡水化操作の後の、含塩ストリームの清潔さを示す各槽((c)含塩および(d)脱塩)の顕微鏡画像。
【図12】印加される電界と相関させた、(a)海水試料液および(b)100mMリン酸塩緩衝液による実験における脱塩ストリームの導電性についての実施形態を図示する。両方のケースで、電界値が閾値に達すると、脱塩ストリームの導電性が数mMのレベルまで低下した。この結果は、蛍光トラッカによって観察されたICPゾーンの発生と一致する。
【図13】海水、海水+NaOHの混合物、脱塩試料液について、リトマス紙を用いたpH値の推定を説明している。
【図14】各マイクロ流路の端部における実際の流量を図示する。流量センサの仕様のため、幅100μm×深さ15μmの装置を用いて500nL/分の入口流量で測定が行われた。入口流量は、各マイクロ流路にほぼ均等に分割された(250nL/分)。
【図15】(左)重力供給ICP淡水化システムの一実施形態の図である。μCPスタックは、塩/病原体の除去のための多くの並列マイクロ流体ICP装置を有する。前置フィルタは、大きな粒子を除去できる。(右)ユニット装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一実施形態において、提案される装置およびシステムは、可搬性が高く電力消費量が非常に低い。一実施形態において、提案される装置およびシステムは、交戦地域での軍事活動および災害地での人道活動など、いくつかのニッチ用途に非常に適している。米国での一日あたりの一人の平均水使用量は、飲用、入浴、調理などを含めて約500Lである。これらの消費量のうち、人間の日常生活を維持するには少なくとも4Lの飲料水が必要とされる。ハリケーン「カトリーナ」が2005年にニューオーリンズを襲って、110,000軒の家屋が全壊した。この時、大規模淡水化プラントの建設が不可能な地域で400,000人以上の人々が飲料水の欠乏に苦しんだ。本発明の装置の別の用途は、軍用と民間用の両方の船舶淡水化システムである。洋上における長期の戦闘で、航空機は5,000〜10,000もの海軍兵を運搬できる。この期間、豊富な海水の淡水化による淡水供給が、不可欠な供給源である。上に挙げられた二つの例のような場合には、電力消費量が少ない可搬式の淡水化システムが非常に必要とされ、太陽発電式動作が最良の動作選択となる。
【0036】
一実施形態において、本発明の装置の動作が有効であることが実証された。この面により、一実施形態において、海水を用いたユニット動作が有効であることが実証された。一実施形態において、本発明では、広いエリア(直径6〜8”のプレート)に多数のユニット装置が統合される。一実施形態において、費用の高いMEMS製造プロセスを伴わずにプラスチック成形プロセスのみを製造プロセスが必要とするユニット装置のアレイのための製造プロセスが提供される。加えて、装置の材料(ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのプラスチック材料)のコストは少なくとも、Siなどの標準的なMEMS材料より桁数が少ない。一実施形態では、(例えばプラスチック成形による)装置の大量生産プロセスが提供される。一実施形態において、ユニット装置の最小形状は、(射出)成形などの標準的なプラスチック製造プロセスで対応できる〜0.1mm程度である。
【0037】
2005年には、世界全体での淡水化設備の総最大出力は4000万トン/日(1億〜1億5000万人に使用)であり、2015年には1億トン/日まで増加すると予想される。市場収入に関しては、淡水の需要が増大し続けているため、2006年の250億ドル市場は2015年には600億ドルに成長するだろう。これらの市場のうち、市場全体の約10%が人間用の飲料水についてのものである。残りの90%の収入は、大規模プラントにより提供されるべきである農業用および工業用の水供給についてのものである。
【0038】
一実施形態において、本発明の装置、システム、プロセスは、特定のエンジニアリングおよびスケーラビリティに関する検討に従って変形されると、プロセス単純化、汚れの回避、エネルギー効率において競争優位を持つ用途が、この水淡水化市場に見出される。本発明のICP淡水化プロセスはエネルギー効率がはるかに高く、汚れが生じない。そのため、本発明によるICP淡水化プロセスは、一部の国(インドなど)で使用されている、現時点で実現性のある海水淡水化技術であるEDプロセスと比較して、好都合である。
【0039】
一実施形態において、本発明の目的は、無膜の直接的海水淡水化のためのイオン濃縮分極法(ICP)を利用する新規の淡水化方式の可能性を実証することである。ICPはイオン選択性膜をイオン流が通過する時に発生する基本的な電気化学的輸送現象である。たいていイオン欠乏または富化と呼ばれるが、この現象は、境界面での電荷担体の不一致によるものである。膜(ナノ流路であってもナノ多孔性膜であっても)は陽イオンのみを優先的に伝導する(陽イオン交換膜)が、これは電極全体でのイオン伝導性と一致していない。その結果、膜の両側にイオン濃度勾配が発生する。陽イオン交換膜の近くでICPが作動すると、陽イオンと陰イオンの両方の濃度が接合部の陽極側で低下し(イオン欠乏)、陰極側で増加する(イオン富化)。加えて、帯電粒子、細胞、他の小さなコロイドも、イオンとともに欠乏する。外部の圧力による流れと組み合わされると、図10(a)および(b)に示されたような装置を用いた明確な定常状態欠乏ゾーンが形成される。一実施形態において、研究対象のシステムは、図10(a)に示されているようにナノ流路(またはナノ多孔性膜)により接続された2本の平行なマイクロ流路で構成される。直線流路を塞ぐ旧来の膜形状と比較して、当方の設計による流体流は膜に塞がれず、その接線方向に流れる。
【0040】
本発明は一実施形態において、マイクロ流体装置における液体流を加速するための方法を提供する。本発明は、増幅ポンプ供給のため、流方向の切り換えのため、そして溶液の脱塩のための方法を提供する。この方法は、流体流の増強をもたらす、溶液中の帯電種の電気誘導による局在化に基づいている。局在化された帯電種はさらに、分離および隔離されて溶液から除去される。
【0041】
一実施形態において、本発明はマイクロ流体装置において液体流を加速するための方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii.帯電種を包含する液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路または槽、又はそれらの組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流体に第1電界を誘起することで試料液マイクロ流路に電気浸透流が誘起され、電気浸透流がさらに液体を装置へ導入して、第1電界の強度によって浸透流が制御されるステップと、
・導管に第2電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生し、イオン欠乏が試料液マイクロ流路の流れを加速するステップと、
を包含する。
【0042】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側に高電圧を、試料液マイクロ流路の第2側に低電圧を印加することによって、試料液マイクロ流路に第1電界が発生する。一実施形態において、高電圧、低電圧、あるいはそれらの組合せは正電圧である。一実施形態において、正電圧は50mVと500Vの間である。一実施形態において、高電圧は正であって、試料液マイクロ流路の第2側を電気接地することにより低電圧が達成される。
【0043】
一実施形態において、導管の、試料液マイクロ流路に連結された側に高電圧を、導管の、緩衝液マイクロ流路に連結された側に低電圧を印加することにより、第2電界が導管に発生する。一実施形態において、高電圧は正であって、導管に連結された緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することにより低電圧が印加される。一実施形態において、高電圧は、試料液マイクロ流路の第1側および第2側に2種類の電圧が印加された結果である。一実施形態において、試料液マイクロ流体の第1側および第2側に印加される2種類の電圧の値の間に位置する中間値を高電圧が有する。
【0044】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側に60Vの電圧を印加することにより、また試料液マイクロ流路の第2側に40Vの電圧を印加することにより第1および第2電界が誘起され、緩衝液マイクロ流路または槽は電気接地される。
【0045】
一実施形態において、帯電種を包含する溶液を試料液マイクロ流路へ導入して、導管に電界を、試料液マイクロ流路に電界を非依存的に誘起すると、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に帯電種が集中する。
【0046】
一実施形態において、試料液マイクロ流路はさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する。
【0047】
一実施形態において、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの幅は1〜100μmの間である。一実施形態において、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの深さは、0.5〜50μmの間である。一実施形態において、導管の幅は100〜4000ナノメートルの間である。一実施形態において、導管の幅は1〜100マイクロメートルの間である。一実施形態において、導管の深さは20〜100ナノメートルの間である。一実施形態において、導管の深さは1〜100マイクロメートルの間である。
【0048】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の表面は対象の種の表面への吸着を低下させる機能を有している。一実施形態において、導管および/または第1または緩衝液マイクロ流路の表面は、装置の動作効率を高める機能を有している。
【0049】
一実施形態において、装置の動作効率を高めるため、装置の基板に外部ゲート電圧が印加される。
【0050】
一実施形態において、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、導管、あるいは以上の組合せは、リソグラフィおよびエッチングのプロセスによって形成される。
【0051】
一実施形態において、装置は透明材料で構成される。一実施形態において、透明材料はパイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、SU−8である。一実施形態において、自家蛍光性の低い材料で装置がコーティングされる。
【0052】
一実施形態において、装置は第2基板を包含する。一実施形態において、第2基板は装置を被覆または密封するのに使用される。一実施形態において第2基板は、第1基板と同じ材料で構成される。いくつかの実施形態において、第1および第2実施形態は多様な材料で構成される。
【0053】
いくつかの実施形態において、第2基板は透明材料で構成される。一実施形態において、透明材料はパイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、SU−8である。一実施形態において、自家蛍光性の低い材料で第2基板がコーティングされる。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1基板を第2基板にプラズマ接合することなどにより、装置の製造が完了する。いくつかの実施形態では、第1および第2基板の間の化学的接着性により2枚の基板が一緒に密封される。いくつかの実施形態では、ガラス、ポリスチレン、他のポリマー材料、あるいはシリコンへの第1基板の接着は、可逆的である。一実施形態において、第2基板がガラス、ポリスチレン、あるいは他のポリマー材料で製作される場合、または第2基板がシリコンで接着される場合には、第2基板への第1基板の接着は可逆的である。いくつかの実施形態において、一タイプの第2基板は最初に第1基板に装着される。後で第2基板が外されて、別のタイプの第2基板と交換される。一実施形態において、第1および第2基板がクランプされる。一実施形態において、クランプは、装置のための効率的かつ可逆的な密封方法となる。いくつかの実施形態において、第1または第2基板は、所望する光学的用途に影響する厚さであり、例えばいくつかの実施形態では、装置または装置内容物の共焦点画像解析が実用的となるように、装置の第2基板またはカバーはカバーガラスで構成される。いくつかの実施形態において、本発明は部品のキット、例えば第1基板と流路とを包含するキットを提供する。この面によるといくつかの実施形態では、第2基板は別に用意される。様々な第2基板がキットまたは使い捨てカバーパッケージで用意される。第2基板は、材料、サイズ、幾何学形状、表面粗さ、基板に埋設された電気結線または電気回路、その光学的性質において異なり得る。
【0055】
一実施形態において、装置はポンプに結合される。一実施形態において、センサ、分離システム、検出システム、分析システム、あるいは以上の組合せに装置が結合される。一実施形態において、検出システムは、照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、あるいは以上の組合せを包含する。
【0056】
一実施形態において、試料液マイクロ流路における液体流速は100μm/秒と10mm/秒の間である。
【0057】
一実施形態において、装置は、多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを包含する。一実施形態において、多数のマイクロ流路、導管、あるいは以上の組合せは、特定の幾何学形状またはアレイで配設される。一実施形態において、アレイは、少なくとも1000本の試料液マイクロ流路と少なくとも100本の緩衝液マイクロ流路と少なくとも1000本の導管とを包含する。
【0058】
一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは、10cmと30cmの間の範囲である。
【0059】
一実施形態において、幾何学形状またはアレイは、導管に対するマイクロ流路の垂直配向を包含する。
【0060】
一実施形態において、液体の体積流量は少なくとも1L/分である。一実施形態において、液体の体積流量は60〜100L/分の範囲である。一実施形態において、帯電種を包含する液体は海水である。一実施形態において、装置の動作に必要とされる電力は10wと100wの間の範囲である。一実施形態において、試料液マイクロ流路での流れは連続的である。
【0061】
一実施形態において、装置は機器の一部である。一実施形態において、機器は手持ち/可搬式である。一実施形態において、機器は卓上機器である。
【0062】
一実施形態において、本発明は、塩濃度を低下させる、つまり溶液を脱塩する方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii.塩イオンを包含する液体が通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路と、
iv.少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せに電界を誘起するユニットと、
vi.動電学的または圧力駆動流を試料液マイクロ流路に誘起するユニットと、
を包含するマイクロ流体装置に、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に電界を誘起することで試料液マイクロ流路に電気浸透流が誘起され、電気浸透流がさらに液体を装置へ導入し、電界の強度によって電気浸透流が制御されるステップと、
・導管に電界を誘起することで、試料液マイクロ流路に空間電荷層が形成されてイオン種に対するエネルギー障壁となり、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生し、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中するステップと、
を包含する。
【0063】
一実施形態において、塩を包含する液体は海水である。一実施形態において、飲用に海水を脱塩するための方法が使用される。一実施形態において、試料液マイクロ流路はさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する。一実施形態において、低塩濃度溶液のための第1出口は試料液マイクロ流路のイオン欠乏ゾーンに連結され、高塩濃度溶液のための第2出口は、イオンが集中した導管から離間した領域に連結される。
【0064】
一実施形態において、試料液マイクロ流路における流れは連続的である。一実施形態では、合成、検出分析、精製、あるいは以上の組合せのために溶液を濾過するのに本方法が使用される。一実施形態では、水から不純物を除去するのに本方法が使用される。
【0065】
一実施形態において、本発明は、液体流を停止させるかその方向を切り換える方法を提供し、この方法は、
・液体流方向が試料液マイクロ流路の第1側から第2側であるように、
i.基板と、
ii.帯電種を包含する液体が第1側から第2側へ通されて第1流を発生させる少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.試料液マイクロ流路および緩衝液マイクロ流路または槽に連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路または容器、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置に、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に第1電界を、導管に第2電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生し、試料液マイクロ流路に第2動電流が誘起され、第2流方向がマイクロ流路の第2側から第1側であり、第1および第2電界の強度によって第2電気浸透流が制御され、
マイクロ流路の第2側から第1側へ誘起された第2流が、第1側から第2側への第1流と反対であり、第2側から第1側へ誘起された第2流が、第1流を停止させるか第1流の方向を逆転させるステップと、
を包含する。
【0066】
I.定義
一実施形態において、液体流の加速は、流量を増加または増強することを意味する。一実施形態において、液体流の加速は、より速くつまりより高速で液体が流れることを意味する。一実施形態において、液体流の加速は、流体の速度が上昇することを意味する。一実施形態において、速度または速さは連続的に上昇する。一実施形態において、流れの速さまたは速度の連続的上昇は、時間および/または印加される電圧に対して線形である。一実施形態では連続的上昇は線形でない。一実施形態において、加速は段階的に実施される。一実施形態では、低い一定値から高い一定値へ流量が増加する。一実施形態では、加速ステップはほとんど実施されない。一実施形態において、各ステップでは流量が増加する。一実施形態では、試料液マイクロ流路の液体に誘起される電界によって段階的加速が支配される。
【0067】
一実施形態において、マイクロ流体装置は、ミクロンスケールの寸法を持つ特徴を包含する装置である。一実施形態において、マイクロ流体装置は、1マイクロメートル(1μm)と1000マイクロメートル(1000μm)の間の少なくとも一つの寸法を持つ特徴を包含する装置である。一実施形態において、マイクロ流体装置は、ミクロンスケールの幅または深さと、ミクロン、ミリメートル、あるいはセンチメートルスケールの長さとを持つ流路を包含する。一実施形態において、このような流路はマイクロ流路と呼ばれる。一実施形態において、液体がマイクロ流路を通される。一実施形態では、マイクロ流体装置は流体が通される装置である。一実施形態において、流体は液体である。一実施形態において、液体は純粋である。一実施形態において、液体は混合物である。一実施形態において、液体は溶液である。一実施形態において、溶液は分子またはイオンを含有する。一実施形態において、溶液は水性または有機的である。一実施形態において、イオンを含有する水溶液は塩溶液である。一実施形態において、塩は海塩である。一実施形態において、海塩は主にNaClである。一実施形態において、塩はアルカリ金属塩を包含する。一実施形態において、塩はアルカリ土類陽イオンを包含する。一実施形態において、塩はハロゲンイオンを包含する。一実施形態において、塩は錯イオンを包含する。一実施形態において、塩はH+、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Fe2+/3+、Cu2+、Ba2+、Au3+、F-、Br-、Cl-、I-、OH-、NO3、CO32-、SO42-、あるいは以上の組合せのイオンを包含する。
【0068】
一実施形態において、液体は帯電種を包含する。一実施形態において、帯電とは電気を帯びることを意味する。一実施形態において、帯電種とは、電界により影響される種である。一実施形態において、帯電種は電界内で移動する。一実施形態において、帯電種は反対電荷を持つ領域に誘引される。一実施形態において、帯電種は反対電荷を持つ領域または極の方へ移動して、同じ電荷の領域とは反発する、つまり離間するように移動する。一実施形態において、帯電種は、余剰電荷を持つ分子、イオン、粒子、集合体、凝集体である。一実施形態において、帯電種は、電気的に中立でない種である。一実施形態において、帯電種はペプチド、タンパク質、Cヌクレオチド、DNA、またはRNAセグメント、ナノ粒子、マイクロ粒子、ビーズである。一実施形態において、帯電種は生体分子である。
【0069】
一実施形態において、基板はマイクロ流体装置の支持構造である。一実施形態において、基板は、マイクロ流体装置が中または上に構築される材料である。一実施形態において、基板は、装置またはその一部が製作される材料の一部である。一実施形態において、基板または装置は透明材料で構成される。一実施形態において、透明材料はパイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、またはSU−8である。一実施形態において、自家蛍光性の低い材料で装置がコーティングされる。一実施形態では、基板、装置、または装置の一部はシリコンで製作される。一実施形態において、基板、装置、または装置の一部はポリマーで製作される。一実施形態において、ポリマーはPDMSである。
【0070】
一実施形態において、槽は、液体を保管する何らかの容器である。一実施形態において槽は器である。一実施形態において、槽は流路構造である。一実施形態において、本発明の槽、つまり緩衝液槽または緩衝液流路は丸みを帯びている。一実施形態において、槽または緩衝液流路は二つの端部を有する。一実施形態において、槽または緩衝液流路の二つの端部には、異なるか等しい電圧が印加される。一実施形態において、槽は緩衝液マイクロ流路である。一実施形態において、緩衝液マイクロ流路または槽は一つの電極を用いて接地される。一実施形態において、槽または緩衝液流路は二つ以上の電極を用いて接地される。一実施形態において、緩衝液槽、緩衝液マイクロ流路、または本発明の何らかの槽に、一つ以上の電極を用いて電圧が印加される。
【0071】
一実施形態において、導管は少なくとも一つのナノメートル寸法を有する。一実施形態において、導管は1nmと1000nmの間の範囲の厚さを有する。一実施形態において、導管はミクロンスケールの寸法を有するが、その孔はナノメートルスケールである。一実施形態において、ナノメートルサイズの孔は透過性である。一実施形態において、ナノメートルサイズの孔は相互接続されている。
【0072】
一実施形態において、電界は電荷を囲繞する空間である。一実施形態において、電界は、他の帯電物体に力を加える。一実施形態において、電界内の静止帯電粒子は、その電荷に比例する力を受ける。一実施形態では、電圧の印加によって電界が誘起される。一実施形態において、不均等な電圧が印加される二つの電極の間のエリアで、電界が誘起される。一実施形態では、空間内での正または負の電荷のある種の分散によって、電界が生じる。
【0073】
一実施形態において、EOFと短縮されることの多い電気浸透流は、非常に狭い流路を通る溶剤環境でのイオンの運動であり、流路に印加される電圧がイオン移動を起こす。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンは、イオンが欠乏している溶液内の領域である。一実施形態において、ある種の電界の影響を受けてイオンは欠乏ゾーンから離れる。一実施形態において、欠乏ゾーンはイオンを含有しない。一実施形態において、欠乏ゾーンは含有イオン濃度が非常に低い。一実施形態において、電界を誘起する前に欠乏ゾーンに存在していたイオンの数よりも少ないイオンをこのゾーンが含有する。一実施形態において、試料液マイクロ流路内のイオン欠乏ゾーンは、導管に近接した領域である。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンは、試料液マイクロ流路と導管との間の境界面を包含する。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜2μmの間である試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜25μmである試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜50μmの間である試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜100μmの間である試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜200μmまたは0〜500μmの間である試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、導管に近接したイオン欠乏ゾーンまたはエリアは、導管から0〜1000μmの間である試料液マイクロ流路内のエリアである。一実施形態において、「導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中する」という句は、イオン欠乏ゾーンの外側の領域のことを記述している。一実施形態において、「離間した」の語は、導管との間の距離が少なくともイオン欠乏ゾーンの長さである試料液マイクロ流路内のエリアを表す。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンは、イオンが欠乏している導管周囲のエリアであり、導管からより離間したエリアまでイオンが欠乏している。一実施形態において、塩イオンが集中したエリアは、イオン欠乏ゾーンを包含していないエリアである。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンと、塩イオンが集中したエリアとは相補的である。
【0074】
一実施形態において、脱塩とは「〜から塩イオンを除去する」ことを意味する。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンからイオンを欠乏させることは、このエリアを脱塩することと同等である。
【0075】
一実施形態において、「接地する」、「接地された」、「電気接地された」は、マイクロ流路の片側または導管の片側に印加される相対電圧、あるいは本発明の方法で使用される領域または電極に印加される相対電圧を指すのに使用される語である。一実施形態において、接地は、他の電圧が測定される電気回路、電流の共通帰路(アース帰路または接地帰路)、あるいは地上に対する直接的な物理的接続である。測定目的として、アースもしくは接地は、他の電位が測定される一定電位基準として機能する。一実施形態において、電気接地システムは適切なゼロ電圧基準レベルとして機能する。
【0076】
一実施形態において、外部ゲート電圧は、本発明のマイクロ流路または導管の外部に印加される電圧であって、帯電種を担持する液体に直接印加されるものではない。一実施形態において、「ゲート」は、イオンを移動させるかある方向への移動を停止させることにより、このような電圧の印加が液体流をゲート制御することを意味する。一実施形態において、「ゲート」または「ゲート制御」は、流れの方向を切り換えること、または移動イオンの方向を切り換えることを意味する。一実施形態において、ゲート制御は流れを停止させる。一実施形態において、ゲート電圧は、電界を誘起することによって帯電種に影響する。ゲート電圧により誘起される電界は、マイクロ流体の規定エリアへ、またはこのエリアからの帯電種の蓄積、移動、欠乏、あるいは以上の組合せを引き起こす。
【0077】
一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は、リソグラフィおよびエッチングのプロセスにより製作される。一実施形態において、リソグラフィおよびエッチングプロセスは、半導体製造業で使用される従来プロセスである。
【0078】
一実施形態において、溶液を脱塩するつまりその濃度を低下させるのに本発明の方法が使用される。一実施形態において、溶液の脱塩またはその塩濃度の低下は、所定量の溶液内での塩イオンの数を減少させることを包含する。一実施形態において、溶液の脱塩またはその塩濃度の低下は、溶液の電解質強度を低下させることを包含する。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、マイクロ流路を接続する導管を包含する。いくつかの実施形態において、「導管」の語は、流路、コネクタ、電線、連結部、溶液充填毛細管、流体が充填された多孔性材料、導電性または半導体材料を指す。当業者に理解できるように、一実施形態において導管は、マイクロ流路に直接装着されるか、一実施形態ではアダプタ、フィルタ、接合部、あるいは他の所望の材料を介して装着される。いくつかの実施形態において、導管は試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路との間の接合部である。いくつかの実施形態において、導管において流れが誘起される。一実施形態において、イオン流は導管を流通できる。導管を収容するための装置の構造は、「試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽に連結される導管」という語句に含まれると理解されるものであり、本発明の一部である。
【0080】
一実施形態において、導管はナノ流路である。この面により、一実施形態では、1nmと1000nmとの間の範囲である少なくとも一つの寸法を導管が有する。一実施形態において、導管はポリマー系選択透過材料を包含する。一実施形態において、ポリマー系選択透過材料はナフィオンを包含する。一実施形態において、ポリマー系選択透過材料は、陽イオン選択性または陰イオン選択性の材料を包含する。一実施形態において、正イオンまたは負イオン伝導性であることが好ましい電気接合部を導体が包含する。
【0081】
一実施形態において、緩衝液は緩衝溶液を包含する。一実施形態において、緩衝溶液は、ヒドロニウムイオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)の濃度変化に耐える溶液である。そのため、緩衝溶液はpH変化に耐える。緩衝溶液は、少量の酸または塩基の追加の際、または希釈の際のpH変化に耐え得る。緩衝溶液は、弱酸、その共役塩基、弱塩基、その共役酸とで構成される。一実施形態において、緩衝溶液はリン酸塩緩衝液を包含する。一実施形態において、緩衝溶液は酢酸塩緩衝液、トリス緩衝液、PIPESまたはHEPES緩衝液を包含する。
【0082】
一実施形態において、電気接合部は、電気信号を通す接合部、電圧が印加される二つ以上の点の間の接合部、あるいは接合部の片側からの電気信号を反対側の電気状態に影響させる接合部である。一実施形態において、電気接合部は二つ以上の電線、流路、エリアを接続し、電線/流路/エリアの少なくとも二つは、電界、電圧、電流、電荷蓄積など、非ゼロの電気的性質を有する。一実施形態において、本発明の装置は正と負のいずれかのイオンに対して伝導性であることが好ましい電気接合部を包含する。一実施形態において、多孔性材料から電気接合部が製作される。一実施形態では多孔性材料は有機材料であり、別の実施形態では無機材料である。一実施形態において、無機材料はアルミナ、シリカ、あるいはその両方を包含する。一実施形態において、多孔性材料は粒子である。一実施形態において、有機材料はポリマーを包含する。一実施形態において、多孔材料はジまたはトリブロック共重合体を包含する。
【0083】
一実施形態において、μは「マイクロ」、「ミクロン(単数)」、「ミクロン(複数)」を規定する。一実施形態において、μは粘度を示すための語として使用される。一実施形態において、μmはマイクロメートルを表し、一実施形態においてμLはマイクロリットルを表す。粘度を示すのにμが使用される一実施形態では、関連の語句からμの使用は明らかである。一実施形態において、当該技術分野の当業者には、粘度としてのμの使用が理解される。
【0084】
一実施形態において、「無膜」の語は、精製/淡水化される水が水の膜通過を必要としない装置を示すのに使用される。本発明の「無膜」淡水化プロセスまたはシステムは膜の使用を必要とするが、淡水化される水は、淡水化のために膜を通過する必要はない。無膜は、本発明のプロセスによれば、淡水化される水が膜の隣を、または膜に接しながら通って、膜を通過せずに淡水化を受けることを意味する。これは、塩分を含む水が膜を通って、塩または他のイオンが膜または膜の入口に残り、膜を通過した後で膜の出口に淡水化された水が現れるという従来の濾過プロセスと対照的である。
【0085】
一実施形態において、汽水とは、塩分が淡水より高いが海水ほどではない水である。一実施形態において汽水は、河口域など海水と淡水との混合の結果生じるか、帯水層で見られる。
【0086】
一実施形態において、WHOとは世界保健機関である。ROは逆浸透を意味する。一実施形態では、EDは電気解析を意味する。一実施形態において、ICPはイオン濃縮分極法を意味する。
一実施形態において、cpは濃度の単位である。一実施形態においてcpはセンチポイズを意味する。一実施形態において、1p=1g/(cm秒)および1000cp=1p。
【0087】
II.寸法および値
一実施形態において、本発明の装置は、複数のマイクロ流路、複数の導管、あるいは以上の組合せを含む複数の流路を包含する。一実施形態において、「複数の流路」の語句は2本以上の流路、別の実施形態では5本以上、あるいは他の実施形態では10、96、100、384、1,000、1,536、10,000、100,000、1,000,000本の流路を指す。
【0088】
一実施形態において、マイクロ流路の幅は1〜100μmの間、別の実施形態では1と15μmの間、別の実施形態では20と50μmの間、別の実施形態では25と75μmの間、別の実施形態では50と100μmの間である。一実施形態においてマイクロ流路の幅は1〜5μm、別の実施形態では10と20μmの間、別の実施形態では0.5と10μmの間、別の実施形態では10と99μmの間、別の実施形態では75と100μmの間である。一実施形態においてマイクロ流路の深さは0.5〜50μmの間、別の実施形態では0.5と5μmの間、別の実施形態では5と15μmの間、別の実施形態では10と25μmの間、別の実施形態では15と50μmの間である。一実施形態において、マイクロ流路の深さは0.5〜1.5μmの間、別の実施形態では1と9μmの間、別の実施形態では10と20μmの間、別の実施形態では10と50μmの間、別の実施形態では15と100μmの間である。
【0089】
別の実施形態において導管の幅は1μm〜50μmの間、別の実施形態では1と15μmの間、別の実施形態では10と25μmの間、別の実施形態では15と40μmの間、別の実施形態では25と50μmの間である。別の実施形態において導管の幅は1μm〜10μmの間、別の実施形態では0.1と1μmの間、別の実施形態では0.5と5μmの間、別の実施形態では0.01と0.1μmの間、別の実施形態では25と99μmの間である。別の実施形態において導管の深さは20〜100ナノメートルの間、別の実施形態では20と50ナノメートルの間、別の実施形態では20と75ナノメートルの間、別の実施形態では30と75ナノメートルの間、別の実施形態では50と100ナノメートルの間である。別の実施形態において、導管の深さは1〜5μの間、別の実施形態では0.1と1μmの間、別の実施形態では0.01と0.1μmの間、別の実施形態では10と75μmの間、別の実施形態では25と100μmの間である。
【0090】
一実施形態において装置は、多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを包含し、多数の流路はアレイまたは特定の幾何学形状で配設される。
【0091】
一実施形態において、導管は第1または緩衝液マイクロ流路の少なくとも一つに対して垂直に配向される。一実施形態において導管は、90度とは異なる角度で配向される。一実施形態において、少なくとも1本の導管、少なくとも1本の第1または緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せは直線状である。別の実施形態において、少なくとも1本の導管、少なくとも1本の第1または緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の一部または組合せは曲線状である。一実施形態において、多数の流路アレイは装置において上下に配置される。一実施形態において、このような設計は3D設計と呼ばれる。一実施形態において、流路のアレイを包含するマイクロ流体装置は三次元アレイ構造を包含し、別の実施形態では、流路アレイを包含するマイクロ流体装置は二次元構造を包含する。一実施形態において、二次元構造とは、流路の大部分または全部が一つの面に配設される構造である。一実施形態において、二次元構造は、流路の大部分または全部が同じ表面上または表面に構築される構造である。一実施形態において、いくつかの基板、いくつかの表面、いくつかの二次元装置を上下に配置することにより、三次元構造が得られる。別の実施形態において、リソグラフィ、エッチング、析出方法などにより1枚の基板の上または基板に三次元構造が構築される。
【0092】
一実施形態において、装置内のアレイの数は1である。一実施形態において、装置内のアレイの数は1〜10である。一実施形態において、装置内のアレイの数は10〜100である。一実施形態において、装置内のアレイの数は10〜1000である。一実施形態において、装置内のアレイの数は1〜50である。一実施形態において、装置内のアレイの数は50〜100である。一実施形態において、装置内のアレイの数は1000〜10000である。一実施形態において、装置内のアレイの数は10000〜1000000である。
【0093】
一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは10cm〜30cmの間の範囲である。一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは1cmと10cmの間の範囲である。一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは25cm〜50cmの間の範囲である。一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは50cm〜100cmの間の範囲である。一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは0.1cmと1cmの間の範囲である。一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは1cmと5cmの間の範囲である。
【0094】
III.装置の詳細および動作方法についての実施形態
一実施形態において、本発明の実施形態に使用される装置は、図1に図示されたように構築される。試料液マイクロ流路1−10は、帯電種を包含する試料液が通される流路である。試料液マイクロ流路は、図1に示された試料液マイクロ流路の左側である第1側を有する。試料液マイクロ流路は、図1に示された試料液マイクロ流路の右側である第2側を有する。試料液マイクロ流路の第1側(左)は、少なくとも一つの試料液槽に接続される。一実施形態において、マイクロ流路の寸法を有するか異なる寸法を有する導管によって試料液槽が試料液マイクロ流路に接続される。一実施形態において、試料液槽は、対象の種、つまり帯電種を包含する流体または液体を第1側から試料液マイクロ流路へ放出する。一実施形態において、マイクロ流路へ流入する流体または液体は、図1に示されたマイクロ流路の左から右側への初期流方向を有する。
【0095】
一実施形態において、少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽(1−20)は試料液マイクロ流路の付近に、つまり近接して配置される。一実施形態において、緩衝液マイクロ流路または槽には緩衝液が充填される。
【0096】
一実施形態において、少なくとも1本の導管(1−30)が試料液マイクロ流路(1−10)および少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路(1−20)に連結される。
【0097】
一実施形態において、緩衝溶液が充填された平坦なナノフィルタで導管が構成される。一実施形態において、ナノ流体フィルタは、選択されたイオンを導管内の一つのエリアから別のエリアへ通すことのできるイオン選択性膜として機能する。一実施形態において、導管内でのイオンの運動または移動は、導管内で誘起された電界の結果である。一実施形態において、導管でのイオンの運動または移動が、導管の付近の電界の規模を変化させるか制御する。
【0098】
一実施形態では、導管において電界が誘起されると、導管に近接した試料液マイクロ流路の領域に影響する。一実施形態において、このような電界は、導管に近接する試料液マイクロ流路に欠乏ゾーンを発生させる。一実施形態において、欠乏ゾーンとは帯電種が欠乏している領域である。一実施形態において、帯電種はイオン欠乏ゾーンから押し出される。一実施形態では、導管における電界の作用は,帯電種を導管エリアから押し出すことにより、導管に近接したエリアでのイオンまたは帯電種の濃度を低下させることである。一実施形態では、図1に示されたイオン欠乏ゾーンと脱塩ゾーンとは、帯電種またはイオンが蓄積される試料液マイクロ流路の左側の暗領域と比較して帯電種の濃度が低い試料液マイクロ流路内の領域を表す。このプロセスは、導管に誘起された電界の結果である。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンまたは脱塩ゾーンは帯電種を有していない。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンまたは脱塩ゾーンは低濃度の帯電種を有する。一実施形態において、イオン欠乏ゾーンまたは脱塩ゾーンは、試料液マイクロ流路の単数または複数の非欠乏または非脱塩エリアにおける帯電種濃度より低い帯電種濃度を有する。一実施形態において、図1に示されているように、導管に誘起される電界はENと記されている。
【0099】
一実施形態において、導管における電界ENの誘起は、試料液マイクロ流路の一領域内での対象の帯電種の濃縮を誘起する一方で、試料液マイクロ流路の別の領域から帯電種を欠乏させる。
【0100】
一実施形態において、第1側(図1の左)から第2側(図1の右側)へのマイクロ流路内の流体流は、圧力駆動される。別の実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側から第2側への流体流は、電界によって誘起される。一実施形態において、マイクロ流路で誘起されるこのような電界はETと記されている。一実施形態において、ETは試料液マイクロ流路の第1および第2側の間の電位差の結果、誘起される。一実施形態において、マイクロ流路の第1側に高電圧を、第1導管の第2側に低電圧を印加することにより、電位差が達成される。一実施形態において、高電圧はVHと記され、低電圧はVLと記される。一実施形態において、VHは60Vであり、VLは40Vである。
【0101】
一実施形態において、試料液マイクロ流路に印加される圧力および電界の結果、流れが生じる。
【0102】
一実施形態において、ENによる欠乏領域の発生は、左側から右側へ、つまり試料液マイクロ流路の第1側から第2側への流体流を引き起こしてこれを加速する。一実施形態において、右側から左側へ、つまり試料液マイクロ流路の第2側から第1側への流体流を加速するのに、ENが使用される。一実施形態において、ENはその規模に応じて、流体を停止させるか、流方向を逆転させるか切り換える。
【0103】
一実施形態において、マイクロ流路で発生して高い流速で試料液槽からマイクロ流路へ流体を引き入れる非線形の電気浸透流(通常の電気浸透流よりもはるかに強力)のため、また導管に並置された領域においてマイクロ流路で誘起された空間電荷層によって陰イオン分子のためのエネルギー障壁が発生するため、試料液マイクロ流路内に欠乏領域と加速液体流とがこの方法で効率的に発生される。
【0104】
一実施形態において、図1に示されているように二つの別々の電界ENおよびETが装置に印加される。ナノ流体流路(EN)の電界は、イオン欠乏領域(図1の試料液マイクロ流路内の白色エリア)と、帯電種を捕捉する拡張空間電荷層とを発生させる。マイクロ流体流路の接線電界(ET)は、槽から捕捉領域(図1の試料液マイクロ流路内の濃淡部分)に帯電種を引き入れる電気浸透流を発生させる。
【0105】
本発明の装置では、緩衝液条件を操作することによって空間帯電領域がさらに安定化する。一実施形態において、装置は、各々が導管によって試料液マイクロ流路に接続された連続する2本の緩衝液マイクロ流路を包含する。本発明によれば、時間の経過により、試料液マイクロ流路でのイオン欠乏は緩衝液マイクロ流路でのイオン富化につながり、ゆえに種分離プロセスが長時間実施されると、第2マイクロ流体流路での緩衝液濃度が上昇する。一実施形態ではあらかじめ定められた周期で、別の実施形態では連続的に、電気浸透により、別の実施形態では圧力で駆動される流れにより、緩衝液マイクロ流路に低濃度緩衝液を供給することにより、この実施形態ではこの作用が緩和される。
【0106】
本発明の別の実施形態において、例えば図1に示されているように、試料液マイクロ流路の両側において試料液および緩衝液マイクロ流路との流体連通状態にナノ流体流路を配置することにより、試料液マイクロ流路内の領域への帯電種の集中が増強される。試料液マイクロ流路と導管との間の境界面におけるイオン欠乏の開始は、試料液マイクロ流路のいずれかの側に導管を配置することによって促進され、いくつかの実施形態では、より安定した空間電荷領域が生成される。
【0107】
一実施形態において、導管に誘起される電界は、試料液および緩衝液マイクロ流路に印加される電圧の結果、生じる。一実施形態において、試料液マイクロ流路に印加される電圧はVH=60V、VL=40Vである。図1に示されているように、2本の緩衝液マイクロ流路は両端部で接地されている。試料液マイクロ流路に連結された導管側と、緩衝液マイクロ流路に連結された導管側との間の電圧差は、試料液マイクロ流路に印加される電圧が緩衝液マイクロ流路に対して高い結果、生じる。導管でのこの電圧差は導管に電界を発生させ、今度はこの電界が試料液マイクロ流路にイオン欠乏ゾーンを発生させる。
【0108】
一実施形態において、流れは圧力駆動であっても、当該技術分野の当業者に周知の何らかの手段によって達成されてもよい。別の実施形態において、流れは、圧力駆動によるものと、電気浸透すなわち動電学的なものとのハイブリッドでよい。
【0109】
一実施形態において、「圧力駆動流」(圧力で駆動される流れ)という語句は、一実施形態では「動電学的駆動流」と呼ばれる、該当の流路セグメントにおける電界の印加によりこの流路セグメントに発生する流れとは対照的に、流れが駆動される流路セグメントの外側の圧力発生源により駆動される流れを指す。
【0110】
該当の流路セグメントの外側にポンプがあるとして、該当の流路セグメントから分離したポンプ供給流路における動電学的駆動流により圧力を発生させるポンプなどの動電学的圧力ポンプを含めて、該当の流路セグメントの外側の負および正の圧力供給源またはポンプが、圧力供給源の例に含まれる(参考として全体が取り入れられている米国特許第6,012,902号および第6,171,067号を参照)。
【0111】
一実施形態において、「動電流」の語は、印加される電界における流体または流体保持材料の運動を指す。概して、帯電種が配置された媒体または流体における帯電種の運動などの電気泳動と、成分すべてを含む流体全体の電気による運動などの電気浸透の一方または両方が動電流に包含される。したがって、動電流という語に言及する時に念頭にあるのは、主としてまたはほぼ完全な種の電気泳動による運動から、非帯電材料の場合など主として電気浸透による材料の運動までの動電流の全範囲と、これら両極端の間に含まれる2種類の動電学的な運動の範囲および様々な比率のすべてであることは、認知されるだろう。
【0112】
一実施形態において、「液体流」の語の言及は、通路、導管、流路を通る、または表面を通る流体または他の材料の流特性のいずれかまたはすべてを包含する。このような特性は、流量、フローボリューム(流れの体積)、流れている流体または他の材料の形態および付随する分散プロフィールとともに、層流、クリープ流、乱流など、他のより一般的な流特性を限定的ではなく含む。
【0113】
ハイブリッド流は、一実施形態において、動電学的な材料の運動が後に続く、流路ネットワークへの液体試料液の圧力に基づく供給を、別の実施形態では、圧力駆動流が後に続く液体の動電学的な運動を包含する。
【0114】
一実施形態では、電圧供給源から装置へ電圧を印加することにより、それぞれの流路で電界が誘起される。一実施形態では、少なくとも数本の流路において少なくとも一方向に電界を印加することのできる少なくとも一対の電極を配置することによって、電圧が印加される。電極金属接点は,少なくとも一つの試料液または緩衝液マイクロ流路と、別の実施形態では少なくとも1本の導管と、あるいは別の実施形態では以上の組合せと接触するように標準的な製造技術を用いて一体化され、そのため方向性を持つ電界を確立するように配向される。交流(AC)、直流(DC)、あるいは両タイプの電界が印加される。電極はほぼいかなる金属で製作されてもよく、一実施形態では規定の直線経路上に析出された薄いAl/Au金属層を包含する。一実施形態において、一つの電極の少なくとも一つの端部は、槽の緩衝液との接触状態にある。
【0115】
一実施形態において、電極の一部分は何らかの導電材料で製作される。一実施形態では、金属、ドーピング半導体、あるいは導電性有機材料で電極が製作される。一実施形態において、電極は材料の組合せで製作される。一実施形態において、金、炭素、ガラス状炭素、熱分解炭素、Al、Cu、Pd、Pt、Ag、あるいは以上の組合せで、電極が製作される。一実施形態において、電極は水銀を包含する。一実施形態において、電極は塩の溶液を包含する。一実施形態において、少なくとも一つの電極は銀/塩化銀電極(Ag/AgCl)である。一実施形態において、少なくとも一つの電極は飽和カロメル電極(SCE)、標準水素電極(SHE:Standard Hydrogen Electrode)としても知られている標準水素電極(NHE:Normal Hydrogen Electrode)、銅−硫酸銅(II)電極、あるいは以上の組合せである。一実施形態において、少なくとも一つの電極は、マイクロ電極または超マイクロ電極である。一実施形態では複数のマイクロ電極が使用される。一実施形態において、少なくとも一つの電極は基板の一部として製造される。この面により、一実施形態において、少なくとも一つの電極は、装置が製作される基板、基板上、基板と平行、基板と垂直に構築される。一実施形態において、平坦面または湾曲面によって装置が密封または被覆される。一実施形態において、試料液または緩衝液マイクロ流路、単数または複数の導管、あるいは以上の組合せと、電極の少なくとも一部分が境界面を持つように、少なくとも一つの電極がカバーまたは密封材料に埋設されるか、これに製造される。
【0116】
別の実施形態において、本発明の方法は少なくとも二対の電極を利用する。一実施形態において、一実施形態では空間帯電層を配向するため、別の実施形態では所望の速度または方向でマイクロ分子を運動させるため、あるいは別の実施形態で以上の組合せのために、電界の方向および幅を非依存的に調整するのに、追加の電気接点が使用される。
【0117】
一実施形態において、いずれかの電極に印加される電圧は50mVと500Vの間である。一実施形態において、いずれかの電極に印加される電圧は50Vと500Vの間である。一実施形態において、いずれかの電極に印加される電圧は10mVと100Vとの間である。一実施形態において、いずれかの電極に印加される電圧は1Vと30Vの間である。一実施形態において、いずれかの電極に印加される電圧は10Vと40Vの間である。一実施形態において、少なくとも一つの電極は接続されず、「浮遊」電極と呼ばれる。一実施形態において、少なくとも一つの電極は接地される。一実施形態では、電気回路に接続されていない「浮遊」(フローティング)電極を有する代わりに、「浮遊する」必要のあるマイクロ流路の位置が電極に接続されていない。
【0118】
一実施形態において、電圧源とは、所望の電圧を提供するのに使用されるなんらかの電源である。電源は、所望の電圧を発生させることのできる電気の供給源である。電源は例えば、圧電供給源、バッテリ、家庭用電流により駆動される装置である。一実施形態では、ガス点火器からの圧電放電が使用される。
【0119】
一実施形態では、装置における帯電種の動電学的捕捉と試料液収集とは数分間行われ、別の実施形態では数時間にわたって維持される。一実施形態では、時間とともに行われる一つの領域での種の欠乏と別の領域でのその蓄積の結果、種の濃縮係数は106〜108もの高さとなり、別の実施形態では、マイクロ流路と導管との間の境界面、印加される電圧、印加される付加的ゲート電圧、液体の塩濃度、液体のpH、導管の数、サイズ、幾何学形状、試料液マイクロ流路の形状、あるいは以上の組合せを修正することなどにより、濃縮中に採用される条件を最適化すると、これよりさらに高くなる。
【0120】
別の実施形態において、本発明の方法はさらに、マイクロ流体装置の単数または複数の試料液マイクロ流路、単数または複数の緩衝液マイクロ流路、あるいは単数または複数の導管との流体連通状態にある少なくとも一つの処理槽を包含する。一実施形態において、処分槽は流体を収容できる。
【0121】
一実施形態では、処理槽の代わりに、またはこれに追加して、対象の種、イオン、脱塩溶液、純粋液体、あるいは以上の組合せを収集するため、収集槽が試料液マイクロ流路に接続される。一実施形態では、収集槽は試料液マイクロ流路の第2側に接続され、別の実施形態では、収集槽は試料液マイクロ流路の第1側に接続される。本発明のこの側面により、一実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側への収集槽の接続は、液体流が逆転されるか、切り換えられるか、停止されて、試料液マイクロ流路の第1側で種または液体が収集される場合に、好都合である。
【0122】
別の実施形態では装置、別の実施形態では単数または複数のマイクロ流路の撮像が可能である。装置またはその一部の撮像は、いくつかの実施形態ではマイクロ流体からの光線を収集するための光学要素など、発せられた信号の収集に適した装置にこれを提示することによって実施される。
【0123】
装置は、一実施形態においては使い捨てであり、別の実施形態では個別包装され、別の実施形態では1〜50,000という数の個別の流体試料液を装填する試料液装填能力を有する。一実施形態において、従来の市販のカートリッジまたはカセットとなるように、プラスチックなどの適当なハウジングに装置が収容される。一実施形態において、本発明の装置は、例えば、試料液装填室が、本発明の装置に結合される別の装置の槽と整合されるように、装置を挿入、誘導、整合させるための適当な特徴を、ハウジングの上または中に有するだろう。例えば本発明の装置は、挿入スロット、トラック、あるいは以上の組合せ、または本発明の装置を介した濃縮プロセスの自動化のための他の構造を装備してもよい。
【0124】
当該技術分野の当業者には認知されるように、一実施形態では、脱塩および分析の用途で有益なものなど、多数の試料液についての高処理量操作に装置を適応させてもよい。
【0125】
本発明の一実施形態において、本発明の装置は、流路内の種を励起してその結果の信号を検出および収集する機器を含む大型システムの一部である。一実施形態において、試料液種濃縮領域に、別の実施形態では集束レンズを用いて、レーザビームが集束される。マイクロ流路内の種から発生した光線信号は集束/収集レンズによって収集され、別の実施形態ではダイクロイックミラー/バンドパスフィルタで光路へと反射して、別の実施形態ではCCD(電荷結合素子)カメラに送られる。
【0126】
一実施形態において、励起信号源は、本発明の装置の上部から、ダイクロイックミラー/バンドパスフィルタボックスおよび集束/収集機構を通る。デジタルカメラ、PMTs(光電子倍増管)、APDs(アバランシェフォトダイオード)など、様々な光学部品および装置が光信号を検出するためシステムで使用されてもよい。
【0127】
別の実施形態において、システムはさらにデータプロセッサを含む。一実施形態において、データプロセッサは、CCDからの信号を処理して、濃縮された種のデジタル画像をディスプレイへ送るのに使用される。一実施形態において、データプロセッサは、サイズ統計、ヒストグラム、核型、マッピング、診断情報などの特徴情報を提供するためデジタル画像を分析し、データ読み取りに適した形でこの情報を表示する。
【0128】
一実施形態において、液体は帯電または非帯電種、あるいはその組合せを包含する。一実施形態において、液体は、イオン、錯イオン、中性分子、帯電分子、原子集合体、粒子集合体、ビーズ、ナノ球体、生体分子またはその断片、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、複合タンパク質、酵素、DNA、ベクター、RNA、ヌクレオチド、脂質、リン脂質、コレステロール、モノ−、ジ−、オリゴ−、ポリ−糖類、有機または無機塩、NaCl、KCl、KI、NaI、Caを含有する塩、H+イオン、アンモニウムイオン、硝酸塩、硫酸塩、酸塩基、強電解質、弱電解質、非電解質を包含する。
【0129】
本発明のある実施形態において、本方法は、マイクロ流路から処理槽へ溶液または純粋液体を輸送するための機器を利用する。
【0130】
一実施形態において、本発明は、現実的な用途に適した少なくとも1,000個の装置に拡張することが可能なアレイアーキテクチャを提供する。
【0131】
一実施形態において、周知の比でマイクロ流路または槽へ導入される標識付きタンパク質、ポリペプチド、あるいは蛍光マーカを使用することと、UV/VisまたはIR分光分析法または蛍光発光など当該技術で周知の検出技術を用いて、標識付きタンパク質、ポリペプチド、あるいは蛍光マーカの濃度を検出することにより、流体速度、脱塩およびポンプ供給効率が判断される。背景ノイズの中の信号強度が、時間と相関させて判断される。
【0132】
一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は、温度、pH、塩濃度、あるいは以上の組合せを包含する物理化学パラメータの制御を受ける。
【0133】
一実施例において、導管は選択透過性材料で製作される。一実施例において、導管には流体が充填される。一実施例において、導管は一つのタイプのイオンに対して透過性で、別のタイプのイオンに対しては透過性でない。一実施形態において、導管はH+イオンに対して透過性を持つ構造である。一実施形態において、導管は帯電ゲルまたはランダムナノ多孔性材料で製作され、ナノ多孔性材料に帯電グループが埋設される。一実施形態において、本発明のこの面によれば、帯電ゲルまたはナノ多孔性材料は類似の孔サイズを有する。本発明のこの面によれば、上述および例示された導管に形成されるものと類似した空間帯電層が、帯電ゲルまたはランダムナノ多孔性材料に形成され、導管に誘起されるものと類似した電界が、ナノ多孔性帯電ゲルまたは帯電材料に誘起される。
【0134】
一実施形態において、本発明は、一実施形態では10μm/秒と10mm/秒の間の液体流速を有する、本発明の装置を包含するマイクロ流体ポンプを提供する。
【0135】
一実施形態において、細いナノ流体流路内では、デバイ層の中の対イオンによって生じるイオン流の選択透過性部分は、導管内のイオン流全体と比較してわずかなものではなく、そのため、電界が印加されると副イオンよりも多くの(デバイ層からの)対イオンが導管内を移動して、陽極側から陰極側への電荷の正味の移送と、濃縮分極化作用とが得られる。本発明のこの面によれば、ナノ流体流路付近のイオン欠乏はデバイ層を厚くして、ナノ流体流路におけるこの層の被覆をさらに広げ、濃縮分極作用を高速化し、一定の閾値であるEn値より上では、二次反応速度による電気浸透となる。
【0136】
本発明のこの面によれば、ナノ流体流路からの対イオンの欠乏と、試料液マイクロ流路内における溶液全体での拡張空間帯電層の生成とは、この領域での対イオンの移動を阻止する。一実施形態において、二つの力(空間電荷層からの陰イオン反発と槽からの非線形電気浸透流)のバランスを取るため電界(ENおよびET)を制御すると、本発明の一面によれば対象の陰イオン種が捕捉および収集される場所である境界面を安定させる。
【0137】
一実施形態において、液体は溶液である。別の実施形態では液体は懸濁液であり、別の実施形態では有機ホモジェネート、細胞抽出液、あるいは血液試料液である。一実施形態において、対象の種はタンパク質、ポリペプチド、核酸、ウイルス粒子、あるいは以上の組合せである。一実施形態において、対象の種は、細胞に見られるか細胞から分泌されたタンパク質、核酸、ウイルス、またはウイルス粒子であり、別の実施形態では、非常に少量だけ見られるため、細胞のタンパク質抽出液から抽出されたタンパク質の10%未満である。
【0138】
50nmより細い導管では、これらの導管の流路厚さと比較してデバイ層厚さが無視できないものであるという事実のため、適度なイオン強度において独自のイオン選択透過性を示す。これらの現象はたいてい、(平衡)デバイ長さと流路寸法との比を臨界パラメータとするデバイ層重複として説明される。一般的なイオン作用は、導管の陽極側でイオン種がほぼ完全に欠乏するのに対して導管の陰極側でイオン富化が発生するようなもので、これは、いくつかの実施形態では導管のドバイ層重複により生じる低イオン強度条件での導管の選択透過性に起因する。本発明のこの面によれば、この濃度勾配のため、陰極側で正味ゼロの陰イオン束を維持しながら、導管における優先的陰イオン輸送がシステム全体で達成される。
【0139】
本発明のこの面によれば、一実施形態において、溶液全体と対向する選択透過性膜には一般的に拡散層が存在し、その外側では、対流混合により濃度勾配が無くなって、溶液全体のものに匹敵するイオン濃度となる。いくつかの実施形態では、拡散長が一定で直流バイアスが増加するような装置動作である時には、膜また導管の陽極側における局所的イオン濃度を低下させることによってシステムが反応する。これが起こった時には、それを越えるとシステムに高い電圧が印加されてもさらなるイオン流の増加が可能ではない制限電流にシステムが達することが予想されるだろうが、驚くべきことに、大部分の選択透過性膜では著しい過剰な制限電流が観察され、この場合、導管付近のイオン濃度がかなり低下し、ゆえに高い「局所的」ゼータ電位となるため、動電応答が増幅される。
【0140】
いくつかの実施形態において本発明の方法では、マイクロ流路の液体流の加速という結果が生じる。一実施形態において、本発明の方法では、マイクロ流路の液体流の制御という結果が得られる。
【0141】
図1は、液体流が加速される本発明の方法の実施形態である。図1(a)に図示されているように、垂直電界(EN)が導管を通る結果、試料液マイクロ流路では濃縮多極化が開始され、陽極側(マイクロ流路の左側)のイオン濃度が欠乏し始める(イオン欠乏ゾーン)。接線電界(ET)の補助により、帯電種が蓄積されて予備濃縮プラグ(試料液マイクロ流路内の濃淡エリア)を形成する。その間に、残りのマイクロ流路はほぼ脱塩されて、イオン濃度はほぼDI水(脱イオン化水)のものとなる。緩衝液ゾーンと脱塩ゾーンとの間の導電性の差のため、イオン欠乏ゾーン内の電界が著しく増幅されて、強い動電流を生じる。図1(b)に示されているように、増幅動電(AEK)流の体積流量は、平衡EOF(ENが印加されない)のものの5倍であった。2種類の流れモード(平衡EOFとAEK)の間の切り換えにかかったのは1.5秒未満であり、これは多くの増幅動電ポンプの用途に適した速度である。EN電界における流量の増強が、試料液マイクロ流路の二つの端部の間の電圧差と相関させて図1(c)にも図示されている。500V(cm当たりのVが記入)までのすべての電圧差(VH−VL)について、AEK流量は平衡EOF流量より高かったことが示されている。
【0142】
当該技術の当業者には認知されるように、液体流の制御は幅広い分野で多数の用途を持っている。一実施形態において、液体流を制御する方法および/または対象の種を濃縮する方法は、バイオセンサ装置において有益である。一実施形態において、マイクロ流体システムの槽へのまたは槽からの試料液および様々な反応物質の流れおよび混合が必要であるバイオセンサでは、液体流の制御は不可欠である。別の実施形態では、検出のために対象の種をわずかな量だけ濃縮することは、バイオセンサ装置の重要な要素である。一実施形態において、このような方法は、他の方法では有機体の検出が困難である潜伏または胞子状態の有機体の検出に、特に有益である。
【0143】
他の実施形態では、本発明から逸脱することなく本発明の方法の様々な用途が可能である。流体流を制御する方法のため、例えば、付加的マイクロ流路が接続された中央槽へ流体流が誘導されるように多数のマイクロ流路が配置される。この面によれば、いったん槽に入った流体は次に混合され、そして第2組のマイクロ流路を通って、これに接続された別の槽へ他の操作のためにポンプ供給される。本発明のポンプ供給方法が、水および生物流体を含む様々なタイプの流体とともに機能することは言うまでもない。
【0144】
例を挙げると、本発明の濃縮およびポンプ供給方法により、高処理量のロボット分析システムは、本発明の装置と直接に境界を接して、対象の種および/またはポンプ液体を濃縮できる。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明の方法では、液体の高速ポンプ供給が得られる。一実施形態において、本発明は、一実施形態では10μm/秒と10mm/秒との間の液体流速を有する本発明の装置を包含するマイクロ流体ポンプを提供する。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の装置およびこれを利用する方法では、所望の溶液の脱塩が行われる。いくつかの実施形態において、脱塩とは、塩濃度を1桁低下させることを指す。いくつかの実施形態において脱塩は、ミリモルからマイクロモルスケールへ、他の実施形態ではマイクロモルからナノモルスケールへの溶液中の塩の減少を指す。いくつかの実施形態において、脱塩とは、高いミリモル濃度から低いミリモル濃度への溶液中の塩の減少を指す。一実施形態において脱塩は、1mMから1mM未満への溶液中の塩の減少を指す。いくつかの実施形態では、溶液中の塩濃度をさらに低下させるため、本発明の装置に脱塩溶液が再使用される。
【0147】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の左側の帯電種を含有する濃淡領域は、イオン濃縮プラグと呼ばれる。
【0148】
一実施形態では、試料液マイクロ流路の両側の間の電圧差に応じて、二つのモードで脱塩が進行する。図1(c)に示されているようにET(VH−VL)に応じて、増幅動電学的ポンプ供給が行われる。「脱塩」モードでは、欠乏ゾーンおよびイオン濃縮プラグが維持されて、ポンプ供給される下流の流れを脱塩されたものとする。「バースト」モード(接線電界が高い)では、イオン欠乏ゾーンが妨害されて、溶液中のイオンおよび他の溶質が放出され、下流のイオン強度とポンプ供給流の生体分子含有量とを維持する。バーストモードでは、速度は飽和状態となったが、それでも平衡EOFよりは高かった。ある種の操作および分析ステップでは脱塩モードが有益であるが、一般的なマイクロ流体システムで生物流体(細胞培地など)をポンプ供給するのにはバーストモードの方が適している。バーストと脱塩のモードの間の移行点は、マイクロ−ナノ接合部を注意深く設計することによる制御が可能なナノ接合部(導管と試料液マイクロ流路との間の連結ポートなど)付近の対流によって決定されると予想される。図1(c)に示されているように、流れの体積流量(時間当たりの体積)と速度(μm/秒)とは、導管によりAEKが誘起された時により高くなる。
【0149】
図2(a)および(b)に示されているように、バーストモードを用いた試料液脱塩が、片側または両側導管装置で実行される。図2(a)は、片側導管が採用された実施形態を表す。試料液流路2−10は、左側に試料液流体用の入口を有する。試料液マイクロ流路2−10は、一連の導管2−30によって緩衝液流路または槽2−20に結合されている。試料液マイクロ流路の第1側(左側)にはVHが印加されるのに対して、出口、つまり試料液マイクロ流路の第2側つまり右側に形成された試料液マイクロ流路の2本の岐路には、VLが印加される。これら二つの電圧(VHおよびVL)は、左から右へ、つまりマイクロ流路の第1側から第2側へ、流路にEOF流を発生させる。緩衝液マイクロ流路2−20が電気接地されると、導管2−30には電位差が形成される。こうして、導管を含む図1(a)の中央部の拡大図である挿入図Aに図示されているように、導管に近接してイオン欠乏ゾーンが生成される。挿入図から分かるように、脱塩ストリームであるイオン欠乏ゾーンは、試料液マイクロ流路の下部を占める。含塩ストリームであるイオン富化ゾーンは、試料液マイクロ流路の上部を占める。2本の流路を試料液マイクロ流路の出口に接続することにより、または液体が通される上下の岐路へとマイクロ流路を分岐することにより、脱塩流体は塩富化流体から分離されてから収集され、後で使用される。図1において、脱塩ストリームは、イオンが存在しないか低濃度のイオンが存在するストリームであり、含塩ストリームは高濃度のイオンまたは試料イオンすべてが存在するストリームである。図2(b)は、導管2−30が両側で試料液マイクロ流路2−10に連結された両側導管装置の実施形態である。導管2−30は、導管の他端部で2本の緩衝液流路2−20に連結されている。図2(b)の挿入図Bに示されているように、このような構成は試料液マイクロ流路に二つの欠乏ゾーンを発生させる。この面により一実施形態では、試料液マイクロ流路の右側、つまり第2側または出口で、2本の脱塩ストリームが合流する。1本はマイクロ流路の上部から、1本は下部からである。中央の含塩ストリームは、試料液マイクロ流路の中央部に接続された第3出口または第3マイクロ流路または第3岐路によって合流する。出口岐路の接続は、試料液マイクロ流路の断面に応じて様々に設計される。例えば。試料液マイクロ流路の断面が矩形の場合には、出口岐路の断面は矩形または方形である。
【0150】
脱塩試料液は、「脱塩ストリーム」とともに収集されるべきであるのに対して、イオンまたは塩を含有する噴射試料液は、含塩ストリームから収集される(図2c)。脱塩の概念についての実験的検証が、図2(c)に示されている。図1(c)は、作用中の脱塩装置を示す顕微鏡画像である。塩を表す帯電粒子が、左の槽から試料液マイクロ流路2−10へ注入され、導管領域を越えた直後に上方の試料液マイクロ流路壁の方へ経路を変える。導管からの強い欠乏力のため、脱塩ストリームには粒子が存在できない。この実験ではVHは60V、VLは40Vであり、緩衝液マイクロ流路(2−20)の両端部は電気接地された。
【0151】
一実施形態では、マイクロチップ設定で脱塩プロセスが実施されるため、上述したマイクロ流路および導管がマイクロチップ内にある。いくつかの実施形態では、マイクロチップ設定での脱塩は、例えばマイクロチップを収容する機械類での溶液または対象の種について後で行われる分析を介して、チップ−トゥー−ワールド(chip-to-world)インターフェース処理の間の試料液の損失を最小にする。
【0152】
いくつかの実施形態において、本発明の方法の結果としての/装置を利用する塩濃度は、MALDI試料液検出が達成するものより充分に低い。
【0153】
いくつかの実施形態において、脱塩方法・本発明の方法を達成する装置は、外部の電界構成のみによって制御される。いくつかの実施形態では、対象の種の脱塩または隔離は、複雑な機械的システムの導入を必要としない。
【0154】
いくつかの実施形態において、本発明の脱塩方法/装置、または対象の種の隔離のための装置/方法は、いくつかの実施形態では最新の電気浸透ポンプ供給装置よりも優れた付加的な機械的ポンプ供給機構が存在しなくても、高い流量を持つ。いくつかの実施形態では、高流量はマイクロトータル分析システムのための高処理量の試料液準備に有益である。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明の脱塩方法/装置は、高処理量試料液準備のためのナノ流体ポンプの準備に有益である。いくつかの実施形態では、例えば濃縮されて脱塩緩衝溶液中に懸濁された対象の種のための質量分析法の用途での脱塩緩衝溶液の準備に、本発明の脱塩方法/装置が有益である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の方法の結果、マイクロ流路内の液体流の方向が逆転する。いくつかの実施形態では、本発明の方法の結果、流路内の液体流が切り換えられるか停止される。
【0157】
一実施形態において、圧力駆動流の方向の逆転が達成される。図3は、圧力駆動流の方向を切り換えるのに本発明の方法が使用される一実施形態を図示している。図1(a)には、単数または複数の導管(3−30)を通して2本の緩衝液マイクロ流路(3−20)に結合された試料液マイクロ流路(3−10)を備える両側装置が示されている。試料液マイクロ流路の右(第2)側から、流量センサが接続された試料液マイクロ流路の左(第1)側へ液体または流体を制御可能に押入するのに、シリンジポンプが使用される。図3(c)は、装置の動作における四つの段階を示す。段階1では、VH=VL=0である。この段階では、圧力駆動流のみが存在し、流量センサは右から左への100nL/秒の流れを検知する。段階2では、VH=30V、VL=0である。この段階では、圧力駆動流の方向(つまり左から右)と反対の方向に動電流が形成される。二つの要因の最終結果により最初の流量が低下し、右から左へのわずか50nL/分の流れをセンサが検知する。段階3では、VH=60、VL=0である。この段階では、動電流が圧力駆動流を上回って、全体的な流方向が逆転する(つまり今度は流方向が左から右になる)。段階3では、左から右への100nL/分の流れをセンサが検知する。段階4では、VH=90V、VL=0である。この段階では、動電流作用の方が強くなり、全体的な流量は、圧力と反対方向である左から右への150nL/分である。試料液マイクロ流路の左側から電圧VHを取り除くことにより、流方向および流量は、圧力駆動のみによる最初の流れに戻ることに注意すること。こうして、プロセス全体は可逆性で制御される。流方向は周期的または段階的に切り換えられ、VHを変えるだけで、各方向での流量範囲全体が達成される。
【0158】
図3(b)は、nL/分での流量と試料液マイクロ流路に印加される電圧差との図である。電圧差(VH−VL)が、cmあたりのVとして電界単位で示されている。上述した段階1,2,3,4がグラフ上に記されている。段階1および2では、流方向はシリンジポンプによって定められ、右から左の方向である。第3および4では、流方向は動電誘起流によって定められ、左から右の方向である(負の流れ値は流方向の逆転を表す)。VHが低下すると、流方向が切り換えられ元に戻る。周期的な図からプロセスの可逆性が観察され、下向き矢印は動電流の増加を表し、上向き矢印はVHの値の減少と、圧力により制御される方向つまり右から左への流方向の切り換えを表す。図2(b)の連続する二つの周期的な図は、試料液イオン濃度が異なるため流方向に影響して電圧を切り換えるプロセスに対応している。試料液イオン濃度が高くなると、流方向の切り換えのために印加される電圧VHが高くなる必要がある。
【0159】
本発明の方法では、様々な構成の装置が採用される。本発明の方法に使用される装置は、多様な特徴、多様な寸法、多様なマイクロ流路および導管の数、多様な入口および出口と、試料液、緩衝液、収集、処理のための様々な槽または容器を有してよい。
【0160】
一実施形態において、本発明の方法は二つの別々の導管エリアと二つの別々の緩衝液マイクロ流路とを有する装置を使用する。図4(a)は、より高い流量を達成するために設計されたマルチナノ接合部装置の概略図である。本文においてナノ接合部は、試料液マイクロ流路と導管との連結部または結合エリアである。段階1では、第1緩衝液マイクロ流路(4−20)にV1を印加することによって流体がポンプ供給された。イオン欠乏ゾーンが生成されて、ポンプ供給が開始された。段階2では、第2緩衝液マイクロ流路(4−40)に印加されるV2はV1より低くなるように設定され、V1は維持された。電圧の値は以下のように保たれた。(VH>VL>V1>V2)。V1とV2との効果的な組合せにより、段階1で得られた流量よりも高い流量が得られた。一実施形態では、2本以上の緩衝液流路と2個以上のナノ接合部とが使用される。一実施形態では10個以上のナノ接合部が使用される。一実施形態では、同じ試料液マイクロ流路に使用されるナノ接合部の数は、1〜10の間の範囲である。一実施形態では、同じ試料液マイクロ流路に使用されるナノ接合部の数は、10〜100の間の範囲である。一実施形態において、同じ試料液マイクロ流路に使用されるナノ接合部の数は5〜15の間の範囲である。一実施形態において、同じ試料液マイクロ流路に使用されるナノ接合部の数は1〜5の間の範囲である。
【0161】
図4(b)は、高処理量の用途のための大規模並列流路装置の使用を包含する方法の実施形態を表す。すべてが別々の導管(4−30)により接続されている試料液マイクロ流路(4−10)の各々から来る流体が、1本の試料液マイクロ流路に合流された。
【0162】
一実施形態において、マイクロ流路の表面は、対象の種の表面への吸着を低下または向上させる機能を有している。別の実施形態では、導管および/またはマイクロ流路の表面は、装置の動作効率を向上または低下させる機能を有している。別の実施形態では、装置の動作効率を向上または低下させるため、装置の基板に外部ゲート電位が印加される。別の実施形態では、装置は透明材料で構成される。別の実施形態では、透明材料はパイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、SU−8である。
【0163】
他の実施形態において、本発明の試料液マイクロ流路と連続する下流の分離装置は、高性能液体クロマトグラフィカラム、例えば逆相イオン交換アフィニティカラムを含むがこれに限定されるわけではない。
【0164】
試料液マイクロ流路の下流に結合されるシステム、装置などの正確な構成は本発明の一部と考えられることと、所望の用途に合わせてこの構成を変化させてもよいこととは理解されるはずである。一実施形態において、濃縮装置の下流に位置する濃縮ペプチドの分離のためのモジュールは、分離媒体と、両端部に電界が印加される毛細管とを包含する。毛細管システムにおける分離媒体の輸送と、検査される試料液(ペプチドおよび/または部分的消化ポリペプチドとを包含する試料液バンドなど)の分離媒体への注入とは、ポンプおよびバルブの補助により、または別の実施形態では毛細管の様々な点に印加される電界を介して実行される。
【0165】
別の実施形態では、検出リミットを下回る濃度で対象の種が液体中に存在する時にこの種を検出するのに本方法が利用される。
【0166】
一実施形態において、本発明は、溶液の塩濃度を低下させる、つまり脱塩する方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii.塩イオンを包含する液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽に連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、緩衝液槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路へ重力によって液体流を導入することで、液体流が、試料液マイクロ流路を通って装置へ液体を導入するステップと、
・導管に電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路に塩イオン欠乏が発生して、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中するステップと、
を包含する。
【0167】
一実施形態において、このような重力利用装置では、従来のROおよびEDシステムと異なって、試料液の送出に追加電力が必要ない。
【0168】
一実施形態において、本発明は溶液の塩濃度を低下させるつまり脱塩する方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii.塩イオンを包含する液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または緩衝液槽と、
iv.試料液マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路または槽に連結された少なくとも一つの導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、緩衝液槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットであって、光電池/太陽電池によって作動するユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
・試料液マイクロ流路に液体流を誘起することで、液体流が試料液マイクロ流路を通って装置へ液体を導入するステップと、
・導管に電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路に塩イオン欠乏が発生して、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中するステップと、
を包含する。
【0169】
この面により一実施形態において、このような太陽電池式装置ではICP淡水化プロセスが光電池(太陽電池など)から電力供給される。ICP淡水化の最も重要な特徴の一つは低い電力消費量であり、これは充電式バッテリと光電池のいずれかによって動作電力が供給されることを意味する。最新の光電池は平均して〜25mW/cmを発生できる。この効率では、300mL/分の動作に電力供給するため、光電池の総面積は〜2700cm2(2250μW×3×104/25mW/cm2)とすべきである。必要とされるこのサイズ(〜50cm×50cm)の可撓性光電池は可搬システムに適しており、この可搬淡水化システムを太陽光発電式にする。
【0170】
一実施形態において、本発明は溶液の塩濃度を低下させるつまり脱塩する方法を提供し、この方法は、
・i.基板と、
ii.塩イオンを包含する液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液流体流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液流体流路または緩衝液槽と、
iv.試料液流体流路と緩衝液流体流路または槽に連結された少なくとも一つの選択透過性の導管と、
v.導管、試料液マイクロ流路、緩衝液マイクロ流路、緩衝液槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含する流体流路へ、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
・導管に電界を誘起することで、導管に近接した領域において試料液マイクロ流路に塩イオン欠乏が発生して、導管から離間した試料液マイクロ流路内の領域に塩イオンが集中するステップと、
を包含する。
【0171】
一実施形態において、供給源から流体装置への液体の導入は、圧力誘起ユニット、電気浸透流誘起ユニット、重力供給ユニット、あるいは以上の組合せを包含する。
【0172】
一実施形態において、流体装置はさらに、第1基板またはその一部分に近接配置または接着された第2基板を包含する。一実施形態において、塩を包含する液体は海水である。
【0173】
一実施形態において、飲用に海水を脱塩するのにこの方法が使用される。一実施形態において、試料液流体流路はマイクロ流路である。一実施形態において、試料液流体流路はさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する。一実施形態において、低塩濃度溶液のための第1出口は、試料液流路のイオン欠乏ゾーンに連結され、高塩濃度溶液のための第2出口は、塩イオンが集中する選択透過性導管から離間した領域に連結される。
【0174】
一実施形態において、試料液流路および選択透過性導管の電界は、試料液流路へ高電圧を、緩衝液流路および緩衝液槽へ低電圧を印加することにより発生する。一実施形態において、高電圧、低電圧、あるいは以上の組合せは正電圧である。一実施形態において、正電圧は50mVと500Vの間である。一実施形態において、高電圧は正であり、緩衝液流路を電気接地することによって低電圧が達成される。一実施形態において、導管の、試料液流路に連結された側に高電圧を、導管の、緩衝液流路に連結された側に低電圧を印加することにより、選択透過性導管に電界が発生する。一実施形態において、高電圧は正であり、選択透過性導管に連結された緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することによって低電圧が印加される。
【0175】
一実施形態では、高電圧は、試料液流路の第1側、第2側、入口に3種類の電圧が印加された結果である。一実施形態において、高電圧は、試料液流路の第1側および第2側に電圧が印加された結果である。試料液流路が(脱塩および含塩ストリームのための)2本の流路に分割される実施形態では、マイクロ流路と選択透過性導管との交差点での高電圧は、試料液流路の入口(第1側)での電圧と、試料液マイクロ流路の二つの出口(二つの「第2側」)での電圧の結果である。一実施形態において、3種類の電圧すべてが等しく、緩衝液流路/緩衝液槽での(第4)電圧はゼロである(流路が接地される)。一実施形態において、高電圧は、試料液流路の第1側および第2側に印加される2種類の電圧の値の間に位置する中間値を有する。
【0176】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側と試料液マイクロ流路の第2側に(または流路が含塩および脱塩ストリームに分割される場合には、第1側と二つの「第2側」に)50mVと500Vとの間の範囲の電圧を印加することにより、また緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することにより、電界が誘起される。
【0177】
一実施形態において、図10に図示された装置は、一つの入口と二つの出口とを備える試料液流路と、緩衝液流路とを有する。一実施形態において、第1および第2側について述べられて第2側が2本の流路に分割される実施形態では、入口は「第1側」に対応し、二つの出口は「第2側」に対応する。
【0178】
一実施形態において、入口は第1側である。一実施形態において、「第2側」あるいは単数または複数の出口は、含塩流路と脱塩流路とを形成する。この面によれば、含塩と脱塩の両方の流路は、流路の出口および「第2側」と呼ばれる。
【0179】
一実施形態において、試料液流路、緩衝液流路、あるいは以上の組合せの幅は1〜1000μmの間である。一実施形態において、試料液流路、緩衝液流路、あるいは以上の組合せの深さは、0.5〜500μmの間である。
【0180】
一実施形態において、導管の幅は100〜4000ナノメートルの間である。一実施形態において、導管の幅は1〜100マイクロメートルである。一実施形態において、導管の深さは20〜100ナノメートルである。一実施形態において、導管の深さは1〜100マイクロメートルである。
【0181】
一実施形態において、導管は、選択透過性を有するようにナノ流路またはナノ多孔性材料を包含する。この面により一実施形態では、導管自体は1〜1000μmの幅および1〜1000μmの深さという寸法を有し、1〜100nmの寸法(直径(円筒形)または一辺の長さ/幅(矩形))を有するナノメートルサイズの孔を包含する(またはナノ流路を包含する)。
【0182】
一実施形態において、導管は1本のナノ流路を包含する。一実施形態において、導管は非常に多くのナノ流路を包含する。一実施形態において、導管は多数のナノ流路を包含する。一実施形態において、導管はたくさんのナノ流路を包含する。
【0183】
一実施形態において、導管はポリマー系選択透過性材料を包含する。一実施形態において、ポリマー系選択透過性材料はナフィオン、テフロン(登録商標)、ヒドロゲルを包含する。一実施形態において、ポリマー系選択透過性材料は、陽イオン選択性または陰イオン選択性の材料を包含する。一実施形態において、正イオンまたは負イオン伝導性であることが好ましい電気接合部を導管が包含する。
【0184】
一実施形態において、試料液流路の表面は、対象の種の表面への吸着を低下させる機能を有している。一実施形態において、導管および/または第1、第2、緩衝液流路の表面は、装置の動作効率を高める機能を有している。
【0185】
一実施形態において、装置の動作効率を高めるため、外部ゲート電圧が装置の基板に印加される。一実施形態において、試料液流路、緩衝液流路、導管、あるいは以上の組合せは、リソグラフィ、エッチング、プラスチック成形プロセスにより形成される。
【0186】
一実施形態において、装置は透明材料で構成される。別の実施形態では、非透明材料で装置が構成される。一実施形態では、透明材料の使用は装置動作の画像形成のためである。一実施形態において、透明材料の使用は分析のためである。一実施形態において、透明材料はパイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、SU−8である。
【0187】
一実施形態において、自家蛍光性の低い材料で装置がコーティングされる。一実施形態では、シリンジポンプまたは重力利用ポンプに装置が結合される。一実施形態において装置は、センサ、分離システム、検出システム、分析システム、あるいは以上の組合せに結合される。一実施形態において検出システムは、照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、以上の組合せを包含する。
【0188】
一実施形態において、試料液マイクロ流路の液体流速は、10μ/秒と10mm/秒の間である。一実施形態において装置は、多数の試料液流路、多数の緩衝液流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを包含する。一実施形態において、多数の流路、導管、あるいは以上の組合せは、特定の幾何学形状またはアレイで配設される。一実施形態において、アレイは少なくとも100本の試料液流路と少なくとも100本の緩衝液流路と少なくとも100本の導管とを包含する。一実施形態において、幾何学形状またはアレイは、導管に対する流路の垂直配向を包含する。
【0189】
一実施形態において、装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せは10cmから30cmの間の範囲である。
【0190】
一実施形態において、液体の体積流量は少なくとも100mL/分である。一実施形態において、液体の体積流量は60〜100L/分の間の範囲である。一実施形態において、装置の動作に必要とされる電力は10wと100wの間の範囲である。一実施形態において、試料液流路での流れは連続的である。
【0191】
一実施形態において、本発明の脱塩装置は電気浸透により誘起される電界を利用せず、圧力により、重力を用いて、圧力ポンプ、シリンジ、あるいは他の圧力誘起または流誘起機構により、流体が装置へ導入される。一実施形態において、装置の主な要素は2本の流体流路の間の選択透過性ナノ接合部または「導管」の存在であるため、導管に電界を印加すると、一方(または両方)の流路でイオン欠乏が誘起され、少なくとも1本の流体ストリームを脱塩するのにこれが使用される。
【0192】
別の実施形態において、試料液流体流路に流体流を誘起するため、この流路に第2電界が印加される。一実施形態において、試料液流体流路はマイクロメータ範囲の幅、深さ、あるいはその両方を有する。一実施形態において、流路の幅/深さは1ミクロンと1000ミクロンの間の範囲である。一実施形態において、試料液流体流路の長さは1ミクロンと1000ミクロンの間、または1ミクロンと10,000ミクロンとの間の範囲である。
【0193】
IV.本発明の方法の実施形態
一実施形態において、本方法は生体分子の分析に適している。一実施形態において、マイクロ流体装置において生体分子が存在する溶液の塩濃度が本発明の方法により低下する。一実施形態において、装置の別の部分に設けられた対象の生体分子または物質を含有する溶液と混合される前に、マイクロ流体装置の一部分で塩または帯電種の濃度を低下させる。一実施形態において、生体粒子溶液が脱塩溶液と混合される時に、化学反応が開始される。一実施形態において、混合は生体分子の保存を助ける。一実施形態において、分子溶液と脱塩溶液との混合は生体分子の安定性を高める。一実施形態において、生体分子溶液と脱塩溶液とを混合すると、生体分子溶液の保存期間が長くなる。一実施形態において、生体分子溶液と脱塩溶液との混合は、マイクロ分子に結合した蛍光マーカを活性化する。一実施形態において、このような混合は生体分子溶液のpHを変化させる。一実施形態において、混合は溶液の色を変化させる。この面により一実施形態では、混合は溶液の分光応答を変化させる。一実施形態において、変化した分光応答はIR領域におけるものである。一実施形態において、分光応答はUV/VIS領域におけるものである。一実施形態において、混合は、生体分子溶液に存在する一つ以上の物質の沈殿を起こす。一実施形態において、脱塩溶液と生体分子含有溶液との混合は、生体分子溶液との接触状態で存在する固形物質の溶解を起こす。一実施形態において、脱塩溶液との混合は溶液を希釈する。一実施形態において、分析、診断、合成のため、または被検者への注入のため、または他の医療用途に、希釈溶液が必要とされる。一実施形態において、混合は分析のため生体分子を準備する。一実施形態において、混合では分析のため生体分子を準備する。一実施形態において、脱塩溶液は純水のレベルまで希釈される。一実施形態において、溶液の希釈により、脱イオン水、導電性の非常に低い水、18Mオーム以上の電気抵抗を持つ水、1000μMより低い塩濃度を持つ水が得られる。一実施形態において、上述した性質を持つ精製水が、対象の溶液または分子を希釈するのに使用される。一実施形態において、固形物質を溶解するのに精製水が使用される。一実施形態において、マイクロ流体装置の部品をリンスまたはクリーニングするためと、装置内の材料または溶液をリンスおよびクリーニングするのに、精製水が使用される。一実施形態において、このような精製水は、マイクロ流体装置内で行われる抽出手順に使用される。一実施形態において抽出とは、2種類の別々の非混合性の液体、通常は水と有機溶剤における相対的溶解度に基づいて化合物を分離する方法である。一実施形態において、物質は一つの液相から別の液相へ抽出される。
【0194】
一実施形態において、方法はミクロンスケールでの合成に適している。一実施形態において、ミクロンスケールでの合成は、マイクロリットル範囲の体積を用いた合成を包含する。一実施形態において、ミクロンスケールでの合成は、1マイクロメートルと1000マイクロメートルの間の範囲の少なくとも一つの寸法を有する反応器、バイオ反応器、合成容器、および/または試料液管、流路、導管を包含する。一実施形態において、ミクロンスケールでの合成つまりマイクロ合成は、小規模の合成、つまり少量の反応物質が使用されて少量の生成物が生成される合成を指す。一実施形態において、このような合成は高価な材料、感応材料、希少材料、危険材料、高純度製品、医薬品、薬物、不安定材料、あるいは以上の誘導体に対するものである。
【0195】
一実施形態において、方法は化学的または生物学的分析に適している。一実施形態において、本発明の方法は、化学的および生物学的な分析を助ける流れの加速、流れのポンプ供給、流れの切り換え、流体の脱塩、流体の希釈を行う。
【0196】
一実施形態において、流体流のポンプ供給および加速は、分析に必要な時間を短縮する。一実施形態において、時間短縮は分析のコストも軽減する。一実施形態において、試料液流の加速により、不安定材料または感応材料、つまり一定時間後に劣化または分解する材料の分析を実行できる。一実施形態において、流体のポンプ供給および加速の結果、より効率的な分析が得られる。一実施形態において、本発明のポンプ供給機構は、他の方法ではアクセス不可能な箇所から試料液流体を引き出すのに使用される。一実施形態において、このようなポンプ供給は、医療用分析のため被検者から流体を引き出すのに利用できる。一実施形態において、このようなポンプ供給は環境分析のための環境内の箇所から流体を取り出すのに使用される。一実施形態において、このようなポンプ供給は、分析のため危険な試料液から流体を取り出すのに利用できる。一実施形態において、本発明のポンプ供給機構による流体の取り出しは、本発明の装置に電圧を遠隔的に印加することにより遠隔的に実施される。一実施形態において、遠隔分析は、爆発物、危険化学物質、生物学的薬剤、有害物質、または移植装置へ流体をポンプ供給するのに有益である。一実施形態において、本発明の方法は、電力消費量の少ない装置で進行する流れの加速および流れのポンプ供給を行う。
【0197】
一実施形態において、本発明の方法により流れの方向を切り換えて流れを停止させられることが、分析に利用される。一実施形態において、流れの停止および流方向の切り換えによって、分析手順を制御できる。一実施形態において、一つのエリアから別のエリアへ、または一つの分析モジュールから別のモジュールへの流体試料液の移動を伴う分析ステップを開始または終了させることによって、手順を制御できる。一実施形態において、流体流を電気的に切り換えるか停止させると、機械的流体ポンプの必要性が回避されて分析技術を単純化する。
【0198】
一実施形態において、本発明の方法を用いて試料液の流体脱塩または希釈が達成される。一実施形態において、低濃度の種が必要とされる分析には、脱塩または希釈が重要である。一実施形態において、正確な分析のために希釈または脱塩溶液に存在する必要のある電気的中性種の分析には、脱塩または希釈が重要である。種の濃度または付随する帯電種の濃度が分析結果に影響する分析技術の例は、分光学、クロマトグラフィ、電気化学、乾燥材料のための表面分析技術、その他である。一実施形態において、本発明の方法による試料液の脱塩および/または希釈は、検出または分析に必要な所望の試料液純度をもたらす。
【0199】
一実施形態において、本方法は試料採取または診断に適している。一実施形態において、上述したように、ポンプ供給および流れの加速は流体の効率的な試料採取に使用できる。一実施形態において、試料液マイクロ流路の第1側は試料液槽または他の試料液源に接続され、試料液マイクロ流路の両側と緩衝液マイクロ流路とに電圧を印加することにより、試料液源から試料液マイクロ流路へ流体が引き出されて試料採取を実行できる。一実施形態において、このような試料液は、本発明の方法により試料液マイクロ流路の第2側から診断のための分析箇所へ移動される。
【0200】
一実施形態において、本方法は、装置へ、または装置からの溶液の注入または高速ポンプ供給が要求される埋込み装置に適している。一実施形態において、このような埋込み装置は遠隔操作される。一実施形態において、このような埋込み装置は定期的な体液の試料採取に使用できる。一実施形態において、本発明の方法により機能する埋込み装置は、正しい用量および正確な時刻に患者の血流または組織へ薬物を放出するのに使用される。
【0201】
一実施形態において、乾燥環境の地域、乾燥した実験条件、極端な温度、圧力、湿度の条件において、非常に少量の試料液源からわずかな量の流体をポンプ供給するのに本方法が適している。
【0202】
一実施形態において、方法は純水の準備に適している。一実施形態において純水は電解質濃度がゼロの水である。一実施形態において、純水は電解質濃度が非常に低い水である。一実施形態において、純水は電気抵抗が非常に高い水である。一実施形態において、精製水は不純物を除去する物理的処理を受けた水である。一実施形態において、精製水の中のトレース汚染物質の濃度が、十億分率(ppb)または一兆分率(ppt)で測定される。イオンの除去によって水の低効率が上昇して、脱イオンの正確な程度について測定され、好都合である。脱イオン処理後の超純水は、水道水の約15kΩ−cmおよび70マイクロジーメンス/cmと比較して、18.31MΩ−cmの理論的最大抵抗と、0.0545マイクロジーメンス/cmの理論的最低導電性とを有する。一実施形態において、本発明の方法に使用される純水は、15kΩ−cmと18.31MΩ−cmの間の範囲の抵抗値を有する。
【0203】
米国材料試験協会(ASTM)と米国臨床検査標準委員会(NCCLS)とは、純度レベルに応じて精製水をタイプI〜IIIに分類している。タイプI〜IIIの精製特徴を以下にまとめる。
【表1】

【0204】
一実施形態において、本発明の方法により生成される精製水は飲用である。一実施形態において、本発明の方法は、海水が導入される並流の試料液マイクロ流路アレイを備える装置を使用する。一実施形態において、試料液マイクロ流路の出口つまり第2側は、脱塩ストリーム流路または管と含塩ストリーム流路または管に連結される。一実施形態において、脱塩ストリームは脱塩流路に誘導される。一実施形態において、すべての試料液マイクロ流路からの脱塩ストリームが収集容器に接続される。一実施形態において、試料液マイクロ流路の第2側から出た飲料水が、収集容器に充填される。一実施形態において、飲料水を準備するための本発明の方法は、飲料水が不足している地域で使用される。一実施形態では、安全に飲めるように改良するように汚染物質または危険イオンまたは帯電種を水から除去するのに、このような方法が使用される。一実施形態において、飲料水の準備は、水の味または臭いを損なうイオンまたは帯電種の除去を包含する。
【0205】
一実施形態において、本発明の方法は低電力動作に関するものである。一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は10wから100wの範囲の電力を消費する。一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は100wから1000wの間の範囲の電力を消費する。一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は1000wから10000wの間の範囲の電力を消費する。一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は10wから50wの間の範囲の電力を消費する。一実施形態において、本発明の方法に使用される装置は50wから100wの間の範囲の電力を消費する。一実施形態において、飲用の水の脱塩は、蒸留または逆浸透などの他の淡水化技術よりも、消費電力がはるかに低い。一実施形態において、本発明の淡水化方法は小型システムを利用し、大型フィルタまたは大型のイオン交換シリンダまたは材料を必要としない。一実施形態において、本発明の方法に利用される淡水化装置は、繰り返し使用される。一実施形態において、このような装置は部品交換を必要とせず、高い維持費も必要としない。
【0206】
一実施形態において、本発明は、海水の無膜直接淡水化について説明したICP現象を利用する小規模のマイクロ/ナノ流体ユニット装置を提供する。提案されるこのシステムは、直接的な海水淡水化の用途についていくつかの独自で魅力的な特徴を有する。最も重要なのは、淡水化されるよう液が膜を通過する必要のある従来方法のように膜の汚れや詰まりを生じることなく、細かい塩イオンから大きな粒子/細胞までの範囲のサイズの帯電種を除去できることである。こうして、直接海水淡水化の複雑性とコストを大幅に削減できる。EDまたはRO技術と異なり、難所であるナノ接合部から粒子および塩が別のストリームへ連続的に送られて、ナノ接合部の詰まりおよび汚れを本質的に防止する。こうして、膜のクリーニング/交換を必要とせずに丈夫な長期間の動作が可能である。提示される技術は、高圧ポンプ供給または再循環要素を必要としないシステムにおいて簡易な海水淡水化を可能にする。本発明の技術は、電力消費量が少なくてバッテリ式動作が可能な小型の可搬式ユニットにおいて実現される。そのため、大規模淡水化システムの動作に必要なインフラストラクチャが不足している被災/貧困地域での海水淡水化に適している。この技術は、EDまたはROの高効率な代替案となる。
【0207】
一実施形態において、本発明は、純水または純粋溶剤を必要とする産業におけるフィルタまたは膜の代用品として、クロマトグラフィ(例えばHPLCおよびGC)などの分析技術、質量分析試料液の準備、電気化学技術、電気化学的分離、マイクロ流体という用途を持つ水または他の溶剤を精製するためのシステムおよび方法を提供する。一実施形態において、本発明は、淡水化のためと水の精製のためのシステムおよび方法を提供する。一実施形態において、本発明のシステムまたは方法による水の精製は、飲用および/または他の家庭用の目的に使用される。
【0208】
一実施形態において、“a”、“one”、“an”の語は少なくとも一つを指す(特に数を明記しない場合は、「少なくとも1つ」であることを示す)。一実施形態において“two or more(二つ以上)”の語句は、特定の目的を満たす種類のものを指す。一実施形態において、“about(約)”、“approximately(およそ)”は、指示された語からの、+1%、いくつかの実施形態では−1%、いくつかの実施形態では±2.5%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±7.5%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±15%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±25%の偏差を包含する。
【0209】
発明を実効する様々な態様は、発明と見なされる主題を詳しく指摘して明確に請求する以下の請求項の範囲内にあると考えられる。
【0210】

材料および方法:
装置の製造:
製造方法は、記載されたようなものである(J.Han,H.G.Craighead,J.Vac.Sci.Technol.,A17,2142−2147(1999年)、J.Han,H.G.Craighead,Science 288,1026−1029(2000年))。2種類の反応性イオンエッチングが使用された。標準的なリソグラフィツールにより5〜20μm幅の導管をパターン形成した後に、40nmの導管をエッチングするため第1反応性イオンエッチング(RIE)エッチングが約10秒実施され、第2エッチングでは、平行な2本の1.5μmマイクロ流体流路がナノフィルタに形成された。緩衝液濃度および流路深さの影響を実証するため、30と70nmの間の深さを持つナノフィルタが製造された。RIEエッチングを完了した後、装着穴にエッチングするためKOHエッチングが使用された。窒化物剥離に続いて熱酸化が実施されて、適切な電気絶縁が設けられた。標準的な陽極接合技術を用いて、装置の底部がパイレックス(登録商標)ウェハに接合された。
【0211】
一実施形態において、選択透過性ナノ接合部を備えるポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロ流体チップが、すでに公開された方法を用いて製造された。マイクロ流路の金型を有するPDMS基板に機械的切断によって形成された間隙の間にナフィオンポリマー溶液(Sigma Aldrich,5%w.t.)を浸透させることにより、ポリマーナノ接合部が形成された。PDMS/PDMS間隙の不均一ポリマーナノ多孔性材料により、PDMSは自己密封される。次に、プラズマ処理によりPDMS基板がガラスプレートと接合された。入口マイクロ流路と緩衝液マイクロ流路とは、幅500μm×深さ100μmの寸法を有しており、分岐マイクロ流路は同じ深さであるが幅は250μmであった。ミクロンサイズ粒子およびWBCを見やすくするため、幅100μm×深さ15μmの装置も製造された。電位測定のための接着層としてのチタンの上の金のマイクロ電極(幅100μm、高さ110nm、電極間隙100μm)が、標準的な蒸着/リフトオフプロセス(Ti:10nm、Au:100nm)を用いて、入口の脱塩および含塩マイクロ流路に析出された。図1に示されたマイクロ流体分岐流路(各流路のサイズは幅250μm×深さ100μmであった)を用いると、「脱塩」ストリームを「含塩」ストリームから分離して、連続的な定常状態の淡水化を達成できる。その重要特徴の一つは、塩イオン(および他の帯電ゴミ)が膜から離れて(近づくのではなく)、膜(ナノ接合部)の汚れの可能性を基本的に排除することである。
【0212】
生体分子および反応物の準備
細菌の成長を防止するため10μMのEDTAが追加されたpH9.1の10mMリン酸塩緩衝液(リン酸水素二ナトリウム)が主に使用された。pH4.6の10mMリン酸塩緩衝液の条件でも、予備濃縮の成功が実証された。pH3.5の酢酸塩緩衝液10mMと、1X TBE緩衝液(〜80mM)には、顕著な予備濃縮作用は見られなかった。
【0213】
10mMのリン酸塩緩衝液の条件では、おそらく低いpH(表面イオン化を抑制する)、または高い緩衝液イオン強度(デバイ長さが足りないためナノフィルタの選択透過性が低くなる)のため、50nmより大きな深さを持つ流路では分極作用は観察されなかった。
【0214】
使用された分子および色素は、rGFP(BD bioscience,Palo Alto,CA)、FITC−BSA(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、FITC−Ovalbumin(Molecular Probes,Eugene,OR)、FITC−BSA(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、FITC色素(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、Mito Orange(Molecular Probes,Eugene,OR)、Lambda−DNA(500μg/ml)を含む。製造者による使用説明書に従って、YOYO−1挿入色素(Molecular Probles,Eugene,OR)により、DNA分子が標識付けされた。
【0215】
また、NH2−GCEHH−COOH(SEQ ID NO:1)(pI 4.08)ペプチドが、マサチューセッツ工科大学のバイオポリマー研究所で合成され、以下の手順によりチオール共役色素で標識付けされた。HPLC精製ペプチド試料液が最初に、保存溶液として10mMペプチド濃縮溶液(0.1MのpH7.4のリン酸塩緩衝液)に再構成されてから、1mMまで希釈された。希釈された保存溶液が、10mMのTCEP(Molecular Probes,Eugene,OR)および5−TMRIA色素(Molecular Probes,Eugenem,OR)と1対1の比で混合された。光線に露出されないように遮蔽された状態において4℃で24時間、反応が進行してから、未反応の色素が、100mMの2−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)の追加によって終了し、1kDaのカットオフのミニ透析キット(Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)を用いて透析された。
【0216】
光学検出設備
蛍光励起光源が装着された倒立顕微鏡(IX−71)において、すべての実験が実施された。熱電冷却CCDカメラ(Cooke Co, Auburn Hill,MI)が、蛍光撮像に使用された。IPLab3.6(Scanalytics,Fairfax,VA)によって連続画像が分析された。異なる電位を槽に分配するため、家庭用分圧器が使用された。内蔵の100W水銀灯が光源として使用され、光線強度を低下させて検出のダイナミックレンジを増大するため、減光フィルタが使用された。
【0217】
分子濃度の数量化
流路内の分子濃度の流量化が図Xに図示されている。検出に使用されるCCDアレイを飽和させる試料液プラグを装置が発生させるので、励起光線強度を低下させるため、70%NA孔(50%透過)を備える、少なくとも12%の透過が可能な減光フィルタ(Olympus(32ND12))が使用された。光線強度を0.6%まで低下させることにより、検出器のダイナミックレンジが増大し、光脱色速度が低下した。
【0218】
3.3μMおよび0.33μMのGFP溶液が流路に充填され、流路内の溶液からの蛍光信号が測定された。収集される分子の光脱色を最小にするため、周期的な露光(〜1秒)の間のみカメラシャッタが開かれた。
【0219】
タンパク質の非特異結合を防止するため、残効を無くすように、新品の充填装置を使用することに加えて、各実験の前後には、壁への蛍光タンパク質の非特異結合による残留蛍光発光を完全に消滅させるのに充分な時間、チップがレーザに露出された。
コーティング流路における予備濃縮
【0220】
未処理のシリカ表面への試料液の吸着を防止するため、標準的なポリアクリルアミドコーティング(S.Hjerten,J.Chromatogr.347,191−198(1985年))が形成された。接着促進剤としての3−(トリメトキシシリル)プロピル メタクリル酸塩で、装置がコーティングされた。次に、重合化を開始させるため、5%のポリアクリルアミド溶液が0.2%のVA−086光開始剤(WAKO,Richmond,VA)と混合されて、UVランプに5分間露出された。コーティングの後には、装置への顕著なレベルの吸着は見られなかった。ポリアクリルアミドコーティングプロセスは表面電位と表面電荷密度とを低下させると予想されたが、高い動作電位を印加することにより、類似の電荷分極と試料液捕捉パターンとが観察された(効率は低いが)。さらに低い緩衝液イオン強度を採用することで、効率の低さは克服された。
多様な緩衝液条件による予備濃縮
【0221】
多様な緩衝液条件に対する装置の適合性を実証するため、様々なpH(5〜9)、様々な緩衝液、様々なイオン強度での緩衝液濃度が評価された。一般的なプロテオミクス研究環境でのように、装置内でのゲル電気泳動から直接の生体試料液を用いたシミュレーションにより、還元、アルキル化、トリプシン処理、ペプチド分離の実施後に、ポリアクリルアミドのゲルスライスから直接得られる抽出液を用いて、装置の動作も検査された。抽出液はタンパク質を含有していなかったが、試料液および電気泳動緩衝液(トリス、グリシン、ドデシル硫酸ナトリウム、グリセロール、ジチオトレイトール、あるいはケラチン不純物)からの、染色(クーマシーブルー)からの、および/または還元およびアルキル化ステップ(トリス(2−カルボキシ−エチル)−ホスフィン塩酸塩、ヨードアセトアミド、重炭酸アンモニウム)からの少量の塩および細かい分子がゲル中に存在した。20μLの20%ギ酸による酵素不活性化に続いて、トリプシン処理溶液(60μL;重炭酸アンンモニウム緩衝液中の10ng/μLのトリプシンおよび/またはトリプシンペプチド)において音波処理による抽出が実施された。この抽出溶液が収集され、SpeedVac(遠心濃縮装置)で濃縮された。100mMの重炭酸アンモニウムを200μL、水中の0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)、水とアセトニトリルが50:50の0.1%のTFを2回、連続して用いて、音波処理による抽出が連続的に実施された。そのたびに、抽出溶液がSpeedVacに収集されて、前のステップからの抽出溶液とともに蓄積され、およそ10μLまで濃縮された。次に、標識付けされたGFP分子を追加することにより、この複合溶液が「試料緩衝液」として使用された。予備濃縮ステップのため、このシミュレーション試料溶液が10mMのリン酸塩緩衝液(1:9の比)で希釈されて、流路へ投入された。
【0222】
例1
淡水化の実証
ユニット装置規模でのマイクロ/ナノ流体装置の淡水化操作が、実験的に検査された。図11(a)は、自然海水(Crane beach,Ipswich,MAから採取、pH=8.4〜8.5)により行われた淡水化実験を示す。塩水溶液に顕著な沈殿を起こすことが知られているCa2+イオンを沈殿させるため、自然海水にNaOHが1mMの最終濃度で追加された。しかし、この追加によって海水の塩分濃度は大きく低下しなかった。続いて、沈殿物と、泥、砂、海草などの(流路寸法より大きい)大きなゴミを除去するため、海水試料液が物理的に前置フィルタで処理された。次に、FITC(分子マーカとしての蛍光色素、1μg/mL、Invitrogen)、ポリスチレンナノ粒子、r−フィコエリトリン(r−PE,1ng/mL、Invitrogen)、Hoechstにより蛍光染色された白血球(WBC)を有する人間の全血と、海水試料液が意図的に混合された。次に、外部の圧力ポンプを用いて、規定の流量(使用される流路の寸法に応じて0.1〜10μL/分)で、混合物(pH=9.1〜9.2)が装置の槽へ投入された。
【0223】
外部流量は、シリンジポンプ(Harvard apparatus、PHD 2200)によって発生された。すべての流パターンおよび粒子運動が、倒立型蛍光顕微鏡(Olympus、LX−51)とCCDカメラ(SensiCam、Cooke corp.)とにより撮像された。Image Pro Plus 5.0(Media Cybernetics inc.)により連続画像が分析された。注文品の分圧器を通して各槽に電位を印加するのに、直流電源(Stanford Research Systems,Inc.)が使用された。図1(a)に示されているように、正しい外部電気接続のため白金線(Sigma Aldrich)が各槽に設けられた。
【0224】
ICPが開始されると、図11(a)に示されているように、1秒以内に欠乏ゾーンが形成されて、帯電イオン(色素分子で表される)を「含塩」ストリームへ迂回させる。図11(b)に示されているように、海水中に見られる大部分の固体粒子、微生物、生体粒子(タンパク質、細菌、ウイルス、RBC、WBCなど)を含む帯電粒子(負と正の両方)のための仮想障壁としてICP層が作用することも分かる。図11(b)に示されている装置は、WBCの運動を分かりやすく視覚化するため、幅100μm×深さ15μmの入口マイクロ流路寸法を持つ。これは、大部分の水中微生物またはマイクロ粒子は非ゼロ(通常は若干負)のゼータ電位を有するからである。そのため、小さい塩イオンと大きな微生物の両方が出力脱塩ストリームから除去され、自然供給源からの直接的な海水淡水化にとってこのプロセスは非常に魅力的となる。脱塩ストリームから大部分のイオンが除去されるので、出力脱塩ストリームのpH値は7.0〜7.5であると測定され、これはWHO推奨の飲料水の酸度の範囲内である。膜の詰まりを生じずに淡水化操作が1時間にわたって維持されることが確認された。1時間の操作の後、図11(c)に見られるように塩水(含塩)流路の端部の槽には粒子および色素が凝集したのに対して、図11(d)に示されているように脱塩流路の槽にはゴミが付着しなかった。
【0225】
例2
脱塩ストリームの導電率測定
イオン欠乏ゾーンから塩が排除されるため、脱塩ストリームでの海水のイオン濃度は最初の濃度よりも著しく低い。脱塩ストリームの濃度を数量化するため、埋込みマイクロ電極(図10(a)に示されている)を用いて、脱塩ストリームの導電率測定がその場で行われた。マイクロ電極の間の電位低下(△V)がKeithley 6514電位計によって測定され、「脱塩」ストリームでの電流(i)がKeithley 6487ピコ電流計で求められた。導電率σは、関係式σ=i/|E|A(iはマイクロ電極を通った電流、Aはマイクロ流路の断面積、)により簡単に計算できる。電位低下をマイクロ電極間の間隙で割ることで、Eが推定される。校正のため、希釈の異なる海水の導電率が卓上導電率計(VWR sympHony導電率計)を用いて測定され、その値は、1×、5×、50×、500×、5000×、50000×の希釈についてそれぞれ、45mS/cm、9.91mS/cm、1292μS/cm、127.8μS/cm、12.4μS/cm、1.8μS/cmであった。測定された導電率を脱塩ストリームの塩濃度に変換するのに、この数字が使用された。
【0226】
上記の閾値電圧が印加され、イオン欠乏ゾーンが確立されると、出力脱塩ストリームの導電率は、最初の海水の導電率である〜45mS/cm(〜500mM)から〜0.5mS/cm(〜3mM塩分濃度)まで低下する。100mMのリン酸塩緩衝液(〜15mS/cm、汽水のモデル)による別の実験では、出力脱塩ストリームの導電率はやはり〜0.3mS/cm(〜2mM)まで低下した。比較として挙げると、水道水の塩分濃度は10mMレベルより低いはずである。この最初の概念説明のための装置で実現される脱塩ストリームの流量は、〜10μL/分(入口流量は20μL/分で、これが2本の10μL/分ストリームに均等に分割された)で、|E|は〜75V/cmであった。
【0227】
卓上pH計(VWR sympHony導電率計)によって、脱塩試料液のpH値が測定された。自然海水と海水+NaOHの混合物(Ca2+を除去した後に細胞を追加)のそれぞれについては、8.4〜8.5、9.1〜9.2であった。同時に純粋な海水、海水+NaOHの混合物、そして脱塩試料液のpH値が、図13に示されたリトマス紙(colorpHast,EMD chemicals inc.)を用いて測定された。観察すると、脱塩試料液のpHは、7.0〜7.5の間と推定される両方の海水試料液のpHよりも明らかに低かった。
【0228】
各マイクロ流路から出る実際の流量をその場で測定するため、Nanoflowセンサ(Upchurch,N−565)に各マイクロ流路が接続された。図14に示されているように入口流量は、分岐マイクロ流路にほぼ均等に分割された。
【0229】
例3
電力消費量
当方のユニットに必要とされる定常状態電流は、1μA(マイクロ流路の断面積が100μm×15μmの装置において0.25μL/分での海水淡水化出力)、または〜30μA(断面積が500μm×100μmの装置において10μL/分)であることが分かった。ゆえに、電力消費量はユニット装置あたりおよそ75μW〜2250μWであった。そのため、この脱塩機構のエネルギー効率は5Wh/L(75μW/0.25μL/分)〜3.75Wh/L(2250μW/10μL/分)である。これに加えて、マイクロ流路における流体送出のエネルギーも必要とされ、0.041mWh/L〜1.55mWh/Lである。100μm×15μmの装置におけるQ=0.25μL/分の流量の場合には、マイクロ流路を通るポンプ供給に必要な電力は、圧力と流量(p×Q)の積によって計算される。マイクロ流路全体での圧力低下は12μQL/(wd3)で求められ、μは海水の粘度、そしてL,w,dはそれぞれマイクロ流路の長さ、幅、深さである。μ=1.88cp、L=2cm、w=100μm、d=15μmを代入すると、電力消費量は23.2nWであった。ゆえに電力効率(W/Q)は1.55mWh/Lであった。同様にして、断面積が500μm×100μmの装置では、Q=10μL/分の時に効率は0.041mWh/Lであった。そのため、主としてRO膜と比較して開放マイクロ流路の流体抵抗は低いため、一般的な流体送出に必要な電力はわずかである。
【0230】
対照的に、ROプロセスのみの実際のエネルギー消費量は〜2.5Wh/Lであるが、必要とされる流入、前処理、再循環、分配のプロセスを追加するため、5Wh/Lまで大きく上昇した。加えて、ROプロセスのこのような電力効率は大型プラント規模のRO設備のみで達成される。船舶淡水化システムなどの小規模ROシステムは、電力効率がはるかに低くなる傾向がある。378L/日(262mL/分)と17000L/日(11.8L/分)の間の範囲の淡水化処理能力と、[40cm×60cm×40cm]と[140cm×110cm×90cm]の間の範囲のシステム体積とを持つ市販の小規模(可搬式ではない)淡水化システムは、RO操作のための2〜3hp(1491.4W〜2231.7W)のポンプ用モータを必要とする。これらの数字は35Wh/L〜95Wh/Lの電力効率につながる。そのため、ICP淡水化システムの総エネルギー消費量は、最新技術のRO設備に少なくとも匹敵し、現存の小規模ROシステムよりはるかに低い。ROシステムと同様に、海水より塩分濃度の低い源水(汽水など)では電力消費量はさらに低下する。淡水化に必要とされるエネルギーの理論的な低域限度は、25、50、75%の淡水回収率について、それぞれおよそ0.81、0.97、1.29Wh/Lである。またさらに、いくつかの改良を実行することによって、ユニットマイクロ流体装置がさらに最適化される。1)第一に、既存のバッテリ技術または小規模の太陽光発電との適合性を求めて電圧と電力効率の両方を激減させるため、ナノ接合部の付近に電圧を印加するようにマイクロ電極を一体化できる。2)第二に、ナフィオンナノ接合部の長さを制御して、イオン欠乏ゾーンの開始および維持による電力損失を著しく低下させることができる。3)最後に、ユニットチップサイズ全体を最小化するためメイン/塩水流路の設計を最適化すると、所与のシステムサイズ内で最大限の並列化を達成できる。
25%、50%、75%という上に挙げた淡水の回収率についての百分率に関して、この百分率は入力された海水と比較した淡水の相対量を意味する。75%回収率は、入力された海水の75%が淡水として出てきて、残りの25%は高含塩の塩水として出てきたことを意味する。別の実施形態では、回収率はプロセスの結果としての塩分濃度の低下を示し、例えば75%回収率は、処理後に溶液の濃度が1/4(25%)になった、つまり淡水化プロセスの結果、100mMが25mMになったことを意味する。
【0231】
例4
ユニット装置の並列化
重要な塩除去ステップはマイクロ流路内の比較的短い距離で発生するため、ユニットマイクロ流体装置に必要な横方向空間(エリア)はおよそ1mm×1mmであると推定された。6〜8インチウェハスケール(17600〜32400mm2、1.5×104〜3×104までの拡張が可能)におけるユニット装置の大規模並列化により、小規模システムにおいて150mL/分〜300mL/分の処理量が可能であり、これは可搬式の海水淡水化用途には理想的である。このようなシステムにおいて、図15に示されているように病原体と塩の両方を除去するため、流体は、大きな粒子/ゴミを除去するための前置フィルタスタックと大規模並列ICP脱塩アレイスタックとを、(家庭用濾過システムと同様に)重力によって通過する。
【0232】
比較してみると、重力式の市販の家庭用浄水システム(淡水化システムではない)は、〜200mL/分の処理量を持ち、市販されている最新のRO技術を利用した卓上サイズ(可搬式ではない)海水淡水化システムの一つは、260mL/分〜1L/分の流量を持つ。ユニット装置の大規模並列化は確かに技術的な労力を大いに必要とするが、このようなレベルで小型ユニット装置を広いエリアに並列化することは前例がないわけではなく、太陽光発電ではすでに行われている。
【0233】
例5
特定配向の流路による空間電荷領域の安定性向上
図6は、製造された本発明の装置の実施形態を示している。流路の開口状態に基づいて、装置は一重ゲート装置(SG、図6A)または二重ゲート装置(DG、図6B)に分類された。試料液マイクロ流路は、SG装置の一つの側壁で、またDG装置の両方の側壁で導管に接続されている。寸法は、マイクロ流路が幅50μm×深さ2μmで、深さ40nm×幅2μm×高さ10μmである。
【0234】
非線形の流れを詳細に調査するため、メイン緩衝液(pH=8.7の1mMリン酸塩((リン酸水素ナトリウム))が追加された標識付き粒子および色素分子の蛍光性を追跡することにより、イオン欠乏領域の内側および外側の動電流パターンが視覚化された。チップの幾何学的性質に応じて、40nm(Duke Scientific Corp)または500nm(Invitrogen)のカルボキシ末端ポリスチレンビーズが使用された。
【0235】
SG装置(図7)で、イオン欠乏およびイオン富化作用が検査された。試料液マイクロ流路の両側に同じ電圧が印加され、緩衝液マイクロ流路は両側で接地された(欠乏条件)。この結果、導管に近接した緩衝液マイクロ流路(明部分)ではイオン濃度の上昇が、導管に近接した試料液マイクロ流路(暗部分)ではイオン欠乏が生じて、欠乏ゾーンのサイズは急激に膨張した。
【0236】
試料液マイクロ流路の両側に多様な電圧を印加することにより発生する接線電界(ET)は、帯電粒子およびイオンを移動させた。帯電粒子およびイオンは、試料液マイクロ流路の第1(左)側の近くで収集される(図8)。
【0237】
試料液マイクロ流路の領域内の流パターンを追跡するため、粒子が欠乏ゾーンを越えて予備濃縮電圧構成に戻った(図9)。粒子が欠乏ゾーンを通って下流の低濃度ゾーンに入ると、濃縮ゾーンよりもおよそ25倍高い速度で移動する。印加される電圧は以下の通りであった。図9(a)では、VH=10V、VL=5Vで緩衝液流路は接地された。図9(b)では三つのステップが実施された。最初は、VH=20V、VL=15Vで、欠乏ゾーンを形成するため緩衝液流路が接地された。次にVH=20V、VL=15Vで、粒子を欠乏ゾーンに通すため緩衝液流路は接続されないまま(浮遊)であった。最終ステップでは、電圧条件はVH=20V、VL=15Vへ戻り、欠乏ゾーンを再形成するため緩衝液流路が接地された。
【0238】
図9aのSG装置では、高濃度ゾーンの粒子速度は6μm/秒であるのに対して、低濃度ゾーンでは140μm/秒であった。DG装置(図9b)の高濃度ゾーンでの粒子の速度は20μm/秒であり、低濃度ゾーンでは500μm/秒であった。試料液マイクロ流路の左側(濃縮ゾーン)では、動電学的駆動力を打ち消す、イオン欠乏を左右する力(常に導管から離れるように作用して性質上は静電気力)により、粒子を捕捉することができる。しかし右側では、これら二つの力が同じ方向に作用することで、(帯電)粒子を領域から即座に除去する。
【0239】
試料液槽の液体レベル変化が測定された。濃縮領域ではイオンおよび帯電粒子のみが捕捉されたのに対して、水は高速で濃縮ゾーンを通過して、試料液マイクロ流路の右側へ移動した。測定された流量はおよそ0.5μL/時間であり、これは同じ電位差での垂直電気浸透流(0.02μL/時間)の流量の25倍であった。
【0240】
導管連結エリアの右側である試料液マイクロ流路の右側は、下流ゾーンと呼ばれる。予備濃縮(欠乏)SGおよびDG装置の下流ゾーンは、ほぼ無塩であることが分かった。導管の電圧をオフにしてから両方の領域で粒子および色素分子を動電学的に移動させることにより、下流領域での緩衝液濃度を推定できる。粒子速度は、緩衝液の電気抵抗率およびイオン濃度と相互関連しているので、下流領域のイオン濃度は、二つのゾーンの二つの異なる粒子速度を比較することにより評価されるように、少なくとも40μMであると推定された。速度は電界と正比例しており、電界は濃度と反比例しているので、二つの構成の粒子速度の間の差に基づいてイオン濃度が推定された。μM範囲のイオン濃度は、方法についての本実施形態を用いて予測される濃度である。選択透過性導管(およびその中の選択透過性電流全体)のコンダクタンスは、本発明のいくつかの実施形態では、SGおよびDG装置の導管接合部へ入る液体全体からイオンを「脱塩」するのに充分な大きさである。この下流での脱塩は、領域中の動電流を増強する。
【0241】
選択透過性導管(およびその中の選択透過性電流全体)のコンダクタンスは、本発明のいくつかの実施形態では、SGおよびDG装置の導管接合部に入る液体全体からのイオンおよび液体流の方向を切り換える。方向性を持つ種の蓄積および制御下にある合成、分析および精製技術において、マイクロ流体装置の操作にはこの切り換えが使用される。
【0242】
例6
低電力による飲用のための海水の淡水化
マイクロ流体装置は、例1で説明したマイクロ流路/導管アセンブリのアレイから構築される。アレイは三次元である。装置は手持ち式である。マイクロ流路装置は海水槽に接続される。海水は最初に、ミクロンサイズおよびこれより大きな粒子を除去するために濾過される。海水は複数のマイクロ流路へ入る。次に、導管に電界を印加することにより海水が淡水化される。各流路の出口では、淡水化ストリームが一つの容器で、含塩ストリームを別の容器で収集される。淡水化された水が収集される容器すべての内容物が、飲用の出口容器へ誘導される。装置は低電力で作動し、バッテリまたは他の一時的電源装置で機能する。膨大な数のマイクロ流路が構築されて一つの装置内で並列に機能するため、装置は大量の水を淡水化できる。流体流を増強すると、装置の効率が高まる。いったんある程度まで淡水化された水が、淡水化ストリームを再循環させることにより、または第2組の淡水化マイクロ流路に淡水化ストリームを誘導することにより、さらに淡水化されてもよい。淡水化溶液の塩濃度を評価するため、装置はコンダクタンスメータまたは他の帯電種濃度計に接続される。
【0243】
例7
合成のためのマイクロ流体装置
マイクロ流体装置は、例1で説明した多数のマイクロ流路/導管から構築される。一部のマイクロ流路の出口は、室または槽に接続される。第1タイプの反応混合物が装置に投入されて、1本のマイクロ流路を通して室へ送られる。第2タイプの反応混合物が同じか追加のマイクロ流路を通して装置へ投入されて、同じ室または槽へ送られる。室に二種類の反応混合物が存在することで反応が生じる。装置の少なくとも一部分は透明なので、反応物および反応生成物の有無および位置をマーカが示すように、撮像技術が使用される。いくつかの実施形態では、室から、収集容器に通じるマイクロ流路へ、生成物が放出される。反応の効率を高めるためにすべてが協働する反応容器アレイを、装置が含むとよい。流体流を増強し、流体の方向を切り換えて、そこから帯電種を除去することにより溶液の一部を精製できるので、合成は効率的かつ高速で、生成物の純度および生成物の収率の点で高レベルの制御が得られる。
【0244】
例8
薬物放出および診断の制御のための埋込みマイクロ流体装置
本発明の装置は、被制御薬物放出システムの一部として被検者に移植されるか、被検者の皮膚に装着される。本発明の導管への電圧の被制御印加は、装置のマイクロ流路に流体流を誘起する。増強された流体流も誘起する。このような作用は、薬物を含有する流体を、測定量および指定の時間間隔で被検者へ送る。被検者からの流体試料液が、分析のため被検者から取り出される。わずかな流体試料液が診断のため装置のマイクロ流路へポンプ供給される。ポンプ供給は、導管およびマイクロ流路への電圧の印加によって達成される。試料液が分析され、被検者へ戻される。あるいは、試料液が使い捨てであってもよい。
【符号の説明】
【0245】
1−10 試料液マイクロ流路、1−20 緩衝液マイクロ流路、1−30 導管、2−10 試料液マイクロ流路、2−20 緩衝液流路、2−30 導管、3−10 試料液マイクロ流路、3−20 マイクロ流路、3−30 導管、4−10 試料液マイクロ流路、4−20 第1緩衝液マイクロ流路、4−30 導管、4−40 第2緩衝液マイクロ流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体装置において液体流を加速するための方法であって、
i.第1基板と、
ii.帯電種を包含する前記液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.前記試料液マイクロ流路と前記緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.前記導管、前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路または槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
前記試料液マイクロ流路に第1電界を誘起することで前記試料液マイクロ流路に電気浸透流が誘起され、前記電気浸透流がさらに前記試料液マイクロ流路を通して前記装置へ前記液体を導入し、前記第1電界の強度により前記電気浸透流が制御されるステップと、
前記導管に第2電界を誘起するステップであって、前記導管に隣接する領域において前記試料液マイクロ流路にイオン欠乏が発生して、該イオン欠乏が前記試料液マイクロ流路の流れを加速するステップと、
を包含する方法。
【請求項2】
供給源から前記マイクロ流体装置への前記液体導入が、圧力誘起ユニット、電気浸透流誘起ユニット、あるいは以上の組合せの使用を包含する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記マイクロ流体装置がさらに、前記第1基板または該第1基板の一部分に隣接配置されるか接着される第2基板を包含する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側に高電圧を、前記試料液マイクロ流路の前記第2側に低電圧を印加することにより、前記試料液マイクロ流路に前記第1電界が発生する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記高電圧、前記低電圧、あるいは以上の組合せが正電圧である、請求項4の方法。
【請求項6】
前記正電圧が50mVと500Vとの間である、請求項5の方法。
【請求項7】
前記高電圧が正であり、前記試料液マイクロ流路の前記第2側を電気接地することにより前記低電圧が達成される、請求項4の方法。
【請求項8】
前記導管の、前記試料液マイクロ流路に連結された側に高電圧を、前記導管の、前記緩衝液マイクロ流路に連結された側に低電圧を印加することにより、前記導管に前記第2電界が発生する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記高電圧が正であり、前記導管に連結された前記緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することにより前記低電圧が印加される、請求項8の方法。
【請求項10】
前記高電圧が、前記試料液マイクロ流路の前記第1側と前記第2側に2種類の電圧が印加された結果である、請求項8の方法。
【請求項11】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側および前記第2側に印加される前記2種類の電圧の値の間に位置する中間値を前記高電圧が有する、請求項8の方法。
【請求項12】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側に60Vの電圧を印加することにより、また前記試料液マイクロ流路の前記第2側に40Vの電圧を印加することにより、前記第1および第2電界が誘起され、前記緩衝液マイクロ流路または槽が電気接地される、請求項1の方法。
【請求項13】
帯電種を包含する溶液の前記試料液マイクロ流路への導入と、前記導管での前記電界および前記試料液マイクロ流路での前記電界の非依存的誘起の際に、前記導管から離間した前記試料液マイクロ流路内の領域に前記帯電種が集中する、請求項1の方法。
【請求項14】
前記試料液マイクロ流路がさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する、請求項1の方法。
【請求項15】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの幅が1〜100μmである、請求項1の方法。
【請求項16】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの深さが0.5〜50μmである、請求項1の方法。
【請求項17】
前記導管の幅が100〜4000ナノメートルの間である、請求項1の方法。
【請求項18】
前記導管の幅が1〜100マイクロメートルである、請求項1の装置。
【請求項19】
前記導管の深さが20〜100ナノメートルである、請求項1の方法。
【請求項20】
前記導管の深さが1〜100マイクロメートルである、請求項1の装置。
【請求項21】
前記導管がナノ流路である、請求項1の方法。
【請求項22】
前記導管がポリマー系選択透過性材料を包含する、請求項1の方法。
【請求項23】
前記ポリマー系選択透過性材料がナフィオンを包含する、請求項22の方法。
【請求項24】
前記ポリマー系選択透過性材料が、陽イオン選択性または陰イオン選択性の材料を包含する、請求項22の方法。
【請求項25】
正イオンまたは負イオン伝導性であることが好ましい電気接合部を前記導管が包含する、請求項1の方法。
【請求項26】
前記試料液マイクロ流路の表面が、対象の種の前記表面への吸着を減少させる機能を有している、請求項1の方法。
【請求項27】
前記導管および/または前記第1または緩衝液マイクロ流路の表面が、前記装置の動作効率を向上させる機能を有している、請求項1の方法。
【請求項28】
前記装置の動作効率を向上させるため、前記装置の前記基板に外部ゲート電圧が印加される、請求項1の方法。
【請求項29】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、前記導管、あるいは以上の組合せが、リソグラフィおよびエッチングのプロセスにより形成される、請求項1の方法。
【請求項30】
前記装置が透明材料で構成される、請求項1の方法。
【請求項31】
前記透明材料が、パイレックス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、SU−8である、請求項30の方法。
【請求項32】
自家蛍光性の低い材料で前記装置がコーティングされる、請求項1の方法。
【請求項33】
前記装置がポンプに結合される、請求項1の方法。
【請求項34】
センサ、分離システム、検出システム、分析システム、あるいは以上の組合せに前記装置が結合される、請求項1の方法。
【請求項35】
照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、あるいは以上の組合せを前記検出システムが包含する、請求項34の方法。
【請求項36】
前記試料液マイクロ流路における液体流速が100μm/秒と10mm/秒の間である、請求項1の方法。
【請求項37】
多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを前記装置が包含する、請求項1の方法。
【請求項38】
前記多数のマイクロ流路、導管、あるいは以上の組合せが、特定の幾何学形状またはアレイで配設される、請求項37の方法。
【請求項39】
少なくとも1000本の試料液マイクロ流路、少なくとも1000本の緩衝液マイクロ流路、そして少なくとも1000本の導管を前記アレイが包含する、請求項38の方法。
【請求項40】
前記装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せが10cmから30cmの間の範囲である、請求項37の方法。
【請求項41】
前記幾何学形状または前記アレイが、前記導管に対する前記マイクロ流路の垂直配向を包含する、請求項38の方法。
【請求項42】
液体体積流量が少なくとも1L/分である、請求項37の方法。
【請求項43】
液体体積流量が60〜100L/分の範囲である、請求項37の方法。
【請求項44】
帯電種を包含する前記液体が海水である、請求項1の方法。
【請求項45】
装置の動作に必要とされる電力が10wから100wの間の範囲である、請求項1の方法。
【請求項46】
前記試料液マイクロ流路での流れが連続的である、請求項1の方法。
【請求項47】
前記装置が機器の一部である、請求項1の方法。
【請求項48】
前記機器が手持ち式/可搬式である、請求項47の機器。
【請求項49】
前記機器が卓上機器である、請求項47の機器。
【請求項50】
溶液の塩濃度を低下させる、つまり溶液を脱塩する方法であって、
i.第1基板と、
ii.塩イオンを包含する前記液体が第1側から第2側へ通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または緩衝液槽と、
iv.前記試料液マイクロ流路と前記緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.前記導管、前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路または緩衝液槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、塩イオンを包含する液体を供給源から導入するステップと、
前記試料液マイクロ流路に第1電界を誘起することで前記試料液マイクロ流路に電気浸透流が誘起され、前記電気浸透流がさらに前記試料液マイクロ流路を通って前記装置へ前記液体を導入し、前記第1電界の強度により前記電気浸透流が制御されるステップと、
前記導管に第2電界を誘起することで、前記導管に隣接する領域において前記試料液マイクロ流路に塩イオン欠乏が発生して、前記導管から離間した前記試料液マイクロ流路内の領域に前記塩イオンが集中するステップと、
を包含する方法。
【請求項51】
供給源から前記マイクロ流体装置への前記液体の導入が、圧力誘起ユニット、電気浸透流誘起ユニット、あるいは以上の組合せを包含する、請求項50の方法。
【請求項52】
前記マイクロ流体装置がさらに、前記第1基板または該第1基板の一部分に近接配置されるか接着される第2基板を包含する、請求項50の方法。
【請求項53】
塩を包含する前記液体が海水である、請求項50の方法。
【請求項54】
飲用のため海水を脱塩するのに前記方法が使用される、請求項50の方法。
【請求項55】
前記試料液マイクロ流路がさらに、低塩濃度溶液のための第1出口と、高塩濃度溶液のための第2出口とを包含する、請求項50の方法。
【請求項56】
前記低塩濃度溶液のための前記第1出口が、前記試料液マイクロ流路の前記イオン欠乏ゾーンに連結され、前記高塩濃度溶液のための前記第2出口が、塩イオンが集中している前記導管から離間した前記領域に連結される、請求項55の方法。
【請求項57】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側へ高電圧を、前記試料液マイクロ流路の前記第2側へ低電圧を印加することにより、前記試料液マイクロ流路の前記第1電界が発生する、請求項50の方法。
【請求項58】
前記高電圧、前記低電圧、あるいは以上の組合せが正電圧である、請求項57の方法。
【請求項59】
前記正電圧が50mVと500Vの間である、請求項58の方法。
【請求項60】
前記高電圧が正であり、前記試料液マイクロ流路の前記第2側を電気接地することにより前記低電圧が達成される、請求項57の方法。
【請求項61】
前記導管の、前記試料液マイクロ流路に連結された側に高電圧を、前記導管の、前記緩衝液マイクロ流路に連結された側に低電圧を印加することにより、前記導管に前記第2電界が発生する、請求項50の方法。
【請求項62】
前記高電圧が正であり、前記導管に連結された前記緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することにより前記低電圧が印加される、請求項61の方法。
【請求項63】
前記高電圧が、前記試料液マイクロ流路の前記第1側および前記第2側に2種類の電圧が印加された結果である、請求項61の方法。
【請求項64】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側および前記第2側に印加される前記2種類の電圧の値の間に位置する中間値を前記高電圧が有する、請求項61の方法。
【請求項65】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側に60Vの電圧を印加することにより、また前記試料液マイクロ流路の前記第2側に40Vの電圧を印加することにより、前記第1および第2電界が誘起され、前記緩衝液マイクロ流路または槽が電気接地される、請求項50の方法。
【請求項66】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの幅が1〜100μmである、請求項50の方法。
【請求項67】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの深さが0.5〜50μmである、請求項50の方法。
【請求項68】
前記導管の幅が100〜4000ナノメートルの間である、請求項50の方法。
【請求項69】
前記導管の幅が1〜100マイクロメートルの間である、請求項50の方法。
【請求項70】
前記導管の深さが20〜100ナノメートルの間である、請求項50の方法。
【請求項71】
前記導管の深さが1〜100マイクロメートルの間である、請求項50の方法。
【請求項72】
前記導管がナノ流路である、請求項50の方法。
【請求項73】
前記導管がポリマー系選択透過性材料を包含する、請求項50の方法。
【請求項74】
前記ポリマー系選択透過性材料がナフィオンを包含する、請求項73の方法。
【請求項75】
前記ポリマー系選択透過性材料が陽イオン選択性または陰イオン選択性の材料を包含する、請求項73の方法。
【請求項76】
正イオンまたは負イオン伝導性であることが好ましい電気接合部を前記導管が包含する、請求項50の方法。
【請求項77】
前記試料液マイクロ流路の前記表面が、対象の種の前記表面への吸着を減少させる機能を有している、請求項50の方法。
【請求項78】
前記導管および/または前記第1または緩衝液マイクロ流路の表面が、前記装置の動作効率を向上させる機能を有している、請求項50の方法。
【請求項79】
前記装置の動作効率を向上させるため、前記装置の基板に外部ゲート電圧が印加される、請求項50の方法。
【請求項80】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、前記導管、あるいは以上の組合せが、リソグラフィおよびエッチングのプロセスにより形成される、請求項50の方法。
【請求項81】
前記装置が透明材料で構成される、請求項50の方法。
【請求項82】
前記透明材料がパイレックス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、またはSU−8である、請求項50の方法。
【請求項83】
自家蛍光性の低い材料で前記装置がコーティングされる、請求項50の方法。
【請求項84】
前記装置がポンプに結合される、請求項50の方法。
【請求項85】
センサ、分離システム、検出システム、分析システム、あるいは以上の組合せに前記装置が結合される、請求項50の方法。
【請求項86】
照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、あるいは以上の組合せを前記検出システムが包含する、請求項85の方法。
【請求項87】
前記試料液マイクロ流路の液体流速が100μm/秒と10mm/秒の間である、請求項50の方法。
【請求項88】
多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを前記装置が包含する、請求項50の方法。
【請求項89】
前記多数のマイクロ流路、導管、あるいは以上の組合せが、特定の幾何学形状またはアレイで配設される、請求項88の方法。
【請求項90】
少なくとも1000本の試料液マイクロ流路、少なくとも1000本の緩衝液マイクロ流路、そして少なくとも1000本の導管を前記アレイが包含する、請求項89の方法。
【請求項91】
前記装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せが10cmと30cmの間の範囲である、請求項88の方法。
【請求項92】
前記幾何学形状またはアレイが、前記導管に対する前記マイクロ流路の垂直配向を包含する、請求項89の方法。
【請求項93】
液体の体積流量が少なくとも1L/分である、請求項50の方法。
【請求項94】
液体の体積流量が60〜100L/分の間の範囲である、請求項50の方法。
【請求項95】
装置の動作に必要とされる電力が10wから100wの間の範囲である、請求項50の方法。
【請求項96】
前記試料液マイクロ流路での流れが連続的である、請求項50の方法。
【請求項97】
合成、検出分析、精製、あるいは以上の組合せのため溶液を濾過するのに前記方法が使用される、請求項50の方法。
【請求項98】
水から不純物を除去するのに前記方法が使用される、請求項50の方法。
【請求項99】
液体流を停止させるか液体流の方向を切り換える方法であって、
前記液体の流方向が試料液マイクロ流路の第2側から第1側であるように、
i.基板と、
ii.帯電種を包含する前記液体が通される少なくとも一つの試料液マイクロ流路であって、第1側と第2側とを包含する試料液マイクロ流路と、
iii.緩衝液を包含する少なくとも一つの緩衝液マイクロ流路または槽と、
iv.前記試料液マイクロ流路と前記緩衝液マイクロ流路または槽とに連結された少なくとも一つの導管と、
v.前記導管、前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路または槽、あるいは以上の組合せに電界を誘起する少なくとも一つのユニットと、
を包含するマイクロ流体装置へ、帯電種を包含する液体を供給源から導入するステップと、
前記試料液マイクロ流路に第1電界を誘起するステップと、
前記導管に第2電界を誘起することで、前記導管に隣接する領域において前記試料液マイクロ流路に塩イオン欠乏が発生して、前記導管から離間した前記試料液マイクロ流路内の領域に前記塩イオンが集中して、前記試料液マイクロ流路において前記第1側から前記第2側へ第2液体流が誘起され、前記第1および第2電界の強度により前記第2流が制御されるステップと、
を包含し、
前記マイクロ流路の前記第1側から前記第2側へ誘起される第2流が、前記第2側から前記第1側への前記第1流と反対であり、前記第1側から前記第2側へ誘起される第2流が、前記第1流を停止させるか、前記第1流の方向を逆転させるか切り換える、
方法。
【請求項100】
供給源から前記マイクロ流体装置への前記液体導入が、圧力誘起ユニット、電気浸透流誘起ユニット、あるいは以上の組合せを包含する、請求項99の方法。
【請求項101】
前記マイクロ流体装置がさらに、前記第1基板または該第1基板の一部分に近接配置されるか接着される第2基板を包含する、請求項99の方法。
【請求項102】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側へ高電圧を、前記試料液マイクロ流路の前記第2側へ低電圧を印加することにより、前記試料液マイクロ流路に前記第1電界が発生する、請求項99の方法。
【請求項103】
前記高電圧、前記低電圧、あるいは以上の組合せが正電圧である、請求項102の方法。
【請求項104】
前記正電圧が50mVと500Vの間である、請求項103の方法。
【請求項105】
前記高電圧が正であり、前記試料液マイクロ流路の前記第2側を電気接地することによって前記低電圧が達成される、請求項102の方法。
【請求項106】
前記導管の、前記試料液マイクロ流路に連結された側に高電圧を、前記導管の、前記緩衝液マイクロ流路に連結された側に低電圧を印加することにより、前記導管の前記第2電界が発生する、請求項99の方法。
【請求項107】
前記高電圧が正であり、前記導管に連結された前記緩衝液マイクロ流路または槽を電気接地することによって前記低電圧が印加される、請求項106の方法。
【請求項108】
前記高電圧が、前記試料液マイクロ流路の前記第1側および第2側に2種類の電圧が印加された結果である、請求項106の方法。
【請求項109】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側および前記第2側に印加される前記2種類の電圧の値の間に位置する中間値を前記高電圧が有する、請求項106の方法。
【請求項110】
前記試料液マイクロ流路の前記第1側に60Vの電圧を印加することにより、また前記試料液マイクロ流路の前記第2側に40Vの電圧を印加することにより、前記第1および第2電界が誘起され、前記緩衝液マイクロ流路または槽が電気接地される、請求項99の方法。
【請求項111】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの幅が1〜100μmの間である、請求項99の方法。
【請求項112】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、あるいは以上の組合せの深さが0.5〜50μmの間である、請求項99の方法。
【請求項113】
前記導管の幅が100〜4000ナノメートルの間である、請求項99の方法。
【請求項114】
前記導管の幅が1〜100マイクロメートルの間である、請求項99の方法。
【請求項115】
前記導管の深さが20〜100ナノメートルの間である、請求項99の方法。
【請求項116】
前記導管の深さが1〜100マイクロメートルの間である、請求項99の方法。
【請求項117】
前記導管がナノ流路である、請求項99の方法。
【請求項118】
前記導管がポリマー系選択透過性材料を包含する、請求項99の方法。
【請求項119】
前記ポリマー系選択透過性材料がナフィオンを包含する、請求項118の方法。
【請求項120】
前記ポリマー系選択透過性材料が陽イオン選択性または陰イオン選択性の材料を包含する、請求項118の方法。
【請求項121】
正イオンまたは負イオン伝導性であることが好ましい電気接合部を前記導管が包含する、請求項99の方法。
【請求項122】
前記試料液マイクロ流路の表面が、対象の種の前記表面に対する吸着を減少させる機能を有している、請求項99の方法。
【請求項123】
前記導管および/または前記第1または緩衝液マイクロ流路の表面が、前記装置の動作効率を向上させる機能を有している、請求項99の方法。
【請求項124】
前記装置の動作効率を向上させるため、前記装置の前記基板に外部ゲート電圧が印加される、請求項99の方法。
【請求項125】
前記試料液マイクロ流路、前記緩衝液マイクロ流路、前記導管、あるいは以上の組合せが、リソグラフィおよびエッチングのプロセスにより形成される、請求項99の方法。
【請求項126】
前記装置が透明材料で構成される、請求項99の方法。
【請求項127】
前記透明材料がパイレックス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、またはSU−8である、請求項99の方法。
【請求項128】
自己蛍光性の低い材料で前記装置がコーティングされる、請求項99の方法。
【請求項129】
前記装置がポンプに結合される、請求項99の方法。
【請求項130】
センサ、分離システム、検出システム、分析システム、あるいは以上の組合せに前記装置が結合される、請求項99の方法。
【請求項131】
照明源、カメラ、コンピュータ、ルミノメータ、分光光度計、あるいは以上の組合せを前記検出システムが包含する、請求項130の方法。
【請求項132】
前記試料液マイクロ流路での液体流速が100μm/秒と10mm/秒の間である、請求項99の方法。
【請求項133】
多数の試料液マイクロ流路、多数の緩衝液マイクロ流路、多数の導管、あるいは以上の組合せを前記装置が包含する、請求項99の方法。
【請求項134】
前記多数のマイクロ流路、導管、あるいは以上の組合せが特定の幾何学形状またはアレイで配設される、請求項133の方法。
【請求項135】
少なくとも1000本の試料液マイクロ流路、少なくとも1000本の緩衝液マイクロ流路、そして少なくとも100本の導管を前記アレイが包含する、請求項134の方法。
【請求項136】
前記装置の長さ、幅、高さ、あるいは以上の組合せが10cmと30cmの間の範囲である、請求項133の方法。
【請求項137】
前記幾何学形状またはアレイが、前記導管に対する前記マイクロ流路の垂直配向を包含する、請求項134の方法。
【請求項138】
液体の体積流量が少なくとも1L/分である、請求項99の方法。
【請求項139】
液体の体積流量が60〜100L/分の間の範囲である、請求項99の方法。
【請求項140】
装置の動作に必要とされる電力が10wと100wの間の範囲である、請求項99の方法。
【請求項141】
前記試料液マイクロ流路での流れが連続的である、請求項99の方法。

【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−528989(P2011−528989A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520168(P2011−520168)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/051420
【国際公開番号】WO2010/011760
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】