説明

増幅器

【課題】 増幅段が動作していない状態でのアイソレーションを改善する。
【解決手段】 高周波信号を増幅するプッシュプル増幅手段にスライドスイッチ54を介して電源端子50が接続され、プッシュプル増幅段44の出力側と出力端子122との間にPINダイオード104が接続されている。このPINダイオード104は、スライドスイッチ54によってプッシュプル増幅段44が電源端子50に接続されたときに、導通し、スライドスイッチ54によってプッシュプル増幅段44が電源端子50から切り離されたときに、非導通となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅器に関し、特に非動作時のアイソレーションの改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
増幅器は、例えば双方向共同受信システムにおいて家庭に設置する双方向ブースタの上り増幅器として使用されることがある。この場合、上り信号が存在していないときにも、上り増幅器を作動させていると、流合雑音が増加する。この点を改善するために、特許文献1に開示されている技術が提案されている。この技術では、端末側から上り信号が伝送されていないとき、上り増幅器の動作を自動的に停止させ、端末側から上り信号が伝送されているとき、上り増幅器の動作を自動的に開始させるものである。
【0003】
【特許文献1】実開昭59−101571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような双方向増幅器は、共同受信システムの設置者と契約して使用するのが一般的であるが、例えば契約を解除した場合、設置者は、双方向増幅器自体を取り外さず、双方向増幅器への電源供給を不能にしたままとすることが多い。逆に、家屋に入居する前に既に双方向増幅器が設置されており、双方向増幅器への電源供給がなされていない状態とすることもある。このような場合、未契約の状態で、双方向増幅器に例えばモデムを介してパーソナルコンピュータを接続すると、双方向増幅器の上り増幅器のアイソレーションが良好でないと、上り増幅器の入力側に供給されたモデムからの信号が出力側に生じ、双方向共同受信システムのヘッドエンド側と通信が可能となり、パーソナルコンピュータがインターネット接続を行えることがあり、不正使用の問題が生じる。
【0005】
本発明は、増幅手段が動作していない状態でのアイソレーションを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の増幅器では、増幅手段が高周波信号を増幅する。高周波信号としては、例えば上述したような双方向共同受信システムの上り信号がある。この増幅手段に電源スイッチを介して直流電源部が接続されている。増幅手段の出力側と出力端子との間に開閉手段が接続されている。或いは、増幅手段の入力側と入力端子との間に開閉手段を接続する。この開閉手段は、前記電源スイッチのオン時にオンし、前記電源スイッチのオフ時にオフする。即ち、電源スイッチと開閉手段とは同期している。増幅手段は、前記電源スイッチがオフ状態で、前記増幅手段に供給された信号が出力側に漏れるものとすることができる。
【0007】
このように構成された増幅器では、電源スイッチをオンにして、増幅手段を動作させているときには、開閉手段もオンされており、増幅された高周波信号を出力端子から出力することができる。電源スイッチをオフにして、増幅手段を動作させていないときには、開閉手段もオフされている。従って、流合雑音が増加することを防止することができる上に、たとえ増幅手段のアイソレーションが良好でなく、増幅手段の入力側に供給された高周波信号が出力側に漏れたとしても、オフである開閉手段によって遮断されるので、漏れた高周波信号が出力端子側に供給されることはない。
【0008】
前記増幅手段は、双方向共同受信システムの家庭用ブースタの上り増幅手段とすることができる。このように構成すると、双方向共同受信システムの使用契約の解除後や入居前の家屋での未契約状態での不正使用を防止することができる。
【0009】
開閉手段は、前記増幅手段の出力側と前記出力端子との間または増幅手段の入力側と出力端子との間に、直流カットされて接続されたダイオードを有するものとすることができる。このダイオードとしては、例えばPINダイオードを使用することができる。ダイオードは、前記電源スイッチと直列に前記直流電源部に接続されている。
【0010】
このように構成すると、電源スイッチがオンされたとき、ダイオードにも電流が流れ、その結果、ダイオードが導通し、増幅手段の出力信号は、ダイオードを介して出力端子に供給される。或いは、入力端子からの入力信号はダイオードを介して増幅手段の入力側に供給される。また、電源スイッチがオフされたとき、ダイオードには電流が流れず、その結果、ダイオードは非導通であり、増幅手段の出力側に信号が漏れていても、漏れた信号が出力端子側に供給されることはないし、このような増幅手段に入力信号が供給されることを阻止できる。なお、ダイオードに代えて、リレー回路を使用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、増幅手段が動作していない状態におけるアイソレーションを改善することができ、双方共同受信システムの上り増幅手段として使用した場合には、不正使用を防止できる上に、流合雑音の増加をより確実に抑圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態の増幅器は、図2(a)に示すような双方向共同受信システムにおいて、端末側である家庭の屋外に設置される双方向ブースタ2の上り増幅器である。この双方向共同受信システムでは、センター装置4から送信された下り信号を双方向ブースタ2の下り増幅器(図示せず)で増幅し、双方向の分配器6によって分配し、一方の分配出力は、セットトップボックス8に供給され、さらにテレビジョン受信機10に供給される。他方の分配出力は、双方向の1分岐器12を介してセットトップボックス14に供給され、更にテレビジョン受信機16に供給される。また、下り信号は、1分岐器12を介して高周波モデム18に供給され、ここで復調されて、パーソナルコンピュータ20に供給される。またパーソナルコンピュータ20からの信号は、高周波モデム18によって変調されて上り信号に変換され、1分岐器12、分配器6、双方向ブースタ2の上り増幅器に供給され、ここで増幅されて、センター装置4に伝送される。なお、双方向ブースタ2、セットトップボックス8、14、高周波モデム18は、それぞれ内蔵電源を有し、これらが有するプラグ22、24、26、28が室内のコンセント30、32、34、36に接続されて動作する。
【0013】
双方向共同受信システムの使用者が契約を解除した場合、双方向受信システムの運営者は、同図(b)に示すように、セットトップボックス8、14や高周波モデム18は回収される。但し、屋外の双方向ブースタ2や、分配器6や1分岐器12はそのまま残される。双方向ブースタ2のプラグ22はコンセント30から取り外され、コンセント30への通電は、絶たれる。この状態で、契約解除者が別の高周波モデム18aを1分岐器12に接続した場合、双方向ブースタ2の上り増幅器のアイソレーションが悪いと、センター装置4に上り信号が伝送される可能性がある。即ち、不正使用される可能性がある。
【0014】
この点を改善するように上り増幅器40は構成されている。即ち、図1に示すように、上り増幅器40では、高周波信号、例えば高周波モデム18からの上り信号が、入力トランス42を介して増幅手段、例えばプッシュプル増幅段44に供給される。プッシュプル増幅段44は、2つのNPNトランジスタ46、48を備えたもので、コンデンサ45、47を介してトランジスタ46、48のベースに上り信号が供給される。
【0015】
この上り増幅器40は、図示しない電源より電源端子50に例えば+10Vの直流電圧が供給されている。この電源端子50は抵抗器52を介して、2回路3接点のスライドスイッチ54の接点56bに接続されている。この他に接点56a、56cが設けられ、接触子56dによって接点56a、56bが接続された状態または接点56b、56cが接続された状態に切り換えられる。接点56cは空き接点とされ、接点56aは、高周波阻止コイル58を介して直列に接続された2つのツェナーダイオード60a、60bのツェナーダイオード60aのカソード側に接続されている。また、ツェナーダイオード60bのアノードは、接地電位に接続されている。
【0016】
ツェナーダイオード60aのアノードとツェナーダイオード60bのカソードとの接続点は、出力トランス62の一方の一次巻線64を介してトランジスタ46のコレクタに接続されている。トランジスタ46のコレクタとベースとの間に直列に抵抗器66、68が接続され、ベースと接地電位との間に抵抗器70が接続されている。また、エミッタと接地電位との間に抵抗器72が接続されている。これら抵抗器66、68、70、72によってバイアス回路が構成されている。
【0017】
ツェナーダイオード60aのカソードは、出力トランス62の他方の一次巻線74を介してトランジスタ48のコレクタに接続されている。コレクタとベースとの間に直列に抵抗器76、78が接続され、ベースとツェナーダイオード60bのカソードとの間に抵抗器80が接続され、エミッタとツェナーダイオード60bのカソードとの間に抵抗器82が接続されている。これら抵抗器76、78、80、82によってバイアス回路が構成されている。
【0018】
トランジスタ46、48のエミッタはコンデンサ84、86を介して接続されている。88は、利得調整用の抵抗器、90、92は利得調整用コンデンサ、94,96、98はバイパスコンデンサである。
【0019】
スライドスイッチ54は、接点100a、100b、100cも有し、接触子100dの操作によって接点100a、100bが接続されるか、または接点100b、100cが接続される。接触子100dは接触子56dと連動しており、接点54a、54bが接続されているとき、接点100a、100bが接続され、接点54b、54cが接続されているとき、接点100b、100cが接続される。
【0020】
接点100aは、高周波阻止コイル102を介して接点56aに接続され、開閉手段、例えばPINダイオード104のアノードに接続されている。またPINダイオード104のカソードは、抵抗器106を介して接地されている。
【0021】
出力トランス62の二次側巻線108の一端は接地され、他端はPINダイオード104のカソードに直流阻止コンデンサ110を介して接続されている。またスライドスイッチ54の接点100bは、直流阻止コンデンサ112を介して出力側バンドパスフィルタ114に供給される。このバンドパスフィルタ114はコイル116、118とコンデンサ120とによって構成されている。このバンドパスフィルタ114の出力は、出力端子122に供給されている。
【0022】
スライドスイッチ54の接点100cには、ダミー回路としてコンデンサ124と抵抗器126との直列回路が接続されている。また、128はバイパスコンデンサである。
【0023】
このように構成された上り増幅器40を使用する場合には、スライドスイッチ54において、接触子56dで接点56a、56bを接続し、かつ接触子100dで接点100a、100bを接続する。これによって電源端子50から抵抗器52、接点56b、接触子56d、接点56a、高周波阻止コイル58を介してツェナーダイオード60a、60bに直流電圧が印加され、プッシュプル増幅段44が動作する。同時に、電源端子50から抵抗器52、接点56b、接触子56d、接点56a、高周波阻止コイル102を介してPINダイオード104に直流電圧が印加され、PINダイオード104が導通する。従って、出力トランス62の二次側巻線108に出力された増幅上り信号は、直流阻止コンデンサ110、PINダイオード104、接点100a、接触子100d、接点100b、直流阻止コンデンサ112を介してバンドパスフィルタ114に供給され、ここでフィルタリングされて出力端子122に出力される。
【0024】
契約解除または入居前の設置等により、この上り増幅器40を使用しない場合には、スライドスイッチ54において接触子56dで接点56b、56cを接続し、かつ接触子100dで接点100b、100cを接続する。これによって、ツェナーダイオード60a、60bには直流電圧が印加されず、プッシュプル増幅段44は動作しない。また、PINダイオード104にも直流電圧が印加されず、PINダイオード104は非導通状態になる。このとき、上り増幅器40に不正使用されている高周波モデム18aから大きなレベルの上り信号が供給され、トランジスタ46、48のコレクタ−ベース間容量や帰還回路等の周辺回路によって入力トランス42からの信号が出力トランス62の二次側巻線108に誘起されていても、PINダイオード104が非導通であるので、バンドパスフィルタ114に二次側巻線108に誘起された信号は供給されない。その結果、センター装置4と不正使用された高周波モデム18aとの間での通信は不能となる。なお、このとき、接点56b、56cが接続されていることにより、バンドパスフィルタ114の入力側には、コンデンサ124と抵抗器126とのダミー回路が接続されているので、バンドパスフィルタ114は整合がとれており、センター装置4側に悪影響は生じない。
【0025】
図3(a)は、図1の上り増幅器40においてPINダイオード104を設けていない場合のプッシュプル増幅段44が非動作状態でのプッシュプル増幅段44の出力特性であり、図3(b)は、PINダイオード104を設けた場合のプッシュプル増幅段44が非動作状態でのプッシュプル増幅段44の出力特性である。両者の比較により、PINダイオード104を設けることによって、アイソレーションが改善されていることが明らかである。
【0026】
本発明の第2の実施形態の上り増幅器40aを図4に示す。この上り増幅器40aでは、高周波阻止コイル58の接点56aへの接続を除去し、PINダイオード104のカソードを高周波阻止コイル58に接続している。なお、抵抗器106、バイパスコンデンサ128は除去されている。他の構成は、第1の実施形態の上り増幅器40aと同一である。同一部分には同一符号を付して説明を省略する。上記のような変更によって、接触子56dで接点56a、56bが接続され、接触子100dで接点100a、100bが接続されると、電源端子50からの+V(例えば+10V)の電圧は、抵抗器52、接点56b、接触子56d、接点56a、高周波阻止コイル102、PINダイオード104、高周波阻止コイル58を介してツェナーダイオード60aのカソードに印加される。これによって、プッシュプル増幅段44が動作する。同時にPINダイオード104も導通している。従って、第1の実施形態の上り増幅器40と同様に、出力トランス62の二次側巻線108の増幅出力信号は、直流阻止コンデンサ110、PINダイオード104、接点100a、接触子100d、接点100b、直流阻止コンデンサ112を介してバンドパスフィルタ114に供給される。また、接触子56dで接点56b、56cが接続され、接触子100dで接点100b、100cに接続されると、PINダイオード104には電源端子50からの電圧は供給されず、非導通であり、かつツェナーダイオード60a、60bにも電圧が供給されず、プッシュプル増幅段44も動作しない。この状態でも、入力トランス42からの信号が出力トランス62の二次側巻線108に誘起されていても、PINダイオード104が非導通であるので、バンドパスフィルタ114に二次側巻線108に誘起された信号は供給されない。
【0027】
本発明の第3の実施形態の上り増幅器40bを図5に示す。この上り増幅器40bでは、PINダイオード104が、入力トランス42の一次巻線側に設けられている以外、第2の実施形態の上り増幅器40aと同一の構成である。同一部分には同一符号を付して説明を省略する。入力トランスの一次巻線の一端に直流阻止コンデンサ130を介してPINダイオード104のカソードが接続され、アノードは直流阻止コンデンサ132を介して入力端子134に接続されている。入力端子134には、高周波信号、例えば高周波モデム18からの上り信号が、供給されている。アノードは、高周波阻止コイル102を介してスライドスイッチ54の接点56aに接続されている。カソードは、高周波阻止コイル58を介してツェナーダイオード60aのカソードに接続されている。また、スライドスイッチ54の接点100bは直接にバンドパスフィルタ114の入力側に接続されている。この上り増幅器40bも、上り増幅器40、40aと同様に動作する。
【0028】
上記の実施形態では、増幅段としてプッシュプル増幅段44を使用したが、これに限ったものではなく、シングル増幅段を使用することもできる。また、PINダイオード104を開閉手段として使用したが、これに限ったものではなく、例えばリレー回路を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態の上り増幅器の回路図である。
【図2】図1の上り増幅器を使用した双方向増幅器を備えた共同受信システムのブロック図である。
【図3】図1の上り増幅器の出力特性とPINダイオードを除去した場合の出力特性図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の上り増幅器の回路図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の上り増幅器の回路図である。
【符号の説明】
【0030】
44 プッシュプル増幅段(増幅手段)
50 電源端子(直流電源部)
54 スライドスイッチ(電源スイッチ)
104 PINダイオード(開閉手段)
122 出力端子
134 入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を増幅する増幅手段と、
この増幅手段に電源スイッチを介して接続された直流電源部と、
前記増幅手段の出力側と出力端子との間または前記増幅手段の入力側と入力端子との間に接続され、前記電源スイッチのオン時にオンし、前記電源スイッチのオフ時にオフする開閉手段とを、
具備する増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の増幅器において、前記増幅手段が、前記電源スイッチがオフ状態において、前記増幅手段に供給された信号が出力側に漏れるものである増幅器。
【請求項3】
請求項2記載の増幅器において、前記増幅手段は、双方向共同受信システムの家庭用ブースタの上り増幅手段である増幅器。
【請求項4】
請求項3記載の増幅器において、前記開閉手段は、前記増幅手段の出力側と前記出力端子との間または前記増幅手段の入力側と入力端子との間に、直流カットされて接続されたダイオードを有し、前記ダイオードは、前記電源スイッチと直列に前記直流電源部に接続されている増幅器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−147579(P2010−147579A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319875(P2008−319875)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】