説明

壁厚を監視するための方法及び装置

二つの交差箇所で容器と交差する計測放射線の第1及び第2の試験経路に沿った放射線の吸収を決定する、例えばPET製のボトル等の容器の壁厚を検出するための方法である。二つの試験経路(2、3)は、各々、ほぼ共通の少なくとも一つの交差箇所(6)を有する。更に、容器の側壁から容器の底領域への移行領域の壁厚を計測する。本発明は、更に、対応する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の壁厚を検出するための方法及び装置に関する。これは、PET製のプラスチックボトルの壁厚等のボトルの壁厚に関する。
【0002】
ボトルが適正に製造されたかどうかを確かめるためにボトルを試験するため、壁厚の決定を使用する。
【背景技術】
【0003】
欧州特許第EP1 348 932 A2号には、光ビームをボトルを通してボトルの軸線に対して垂直方向に透過させることによって、壁厚を放射線の計測された吸収に基づいて確認する方法及び装置が記載されている。これは、ボトルに沿った様々な高さで行われる。
【0004】
ドイツ国特許第DE 101 16 665 A1号には、吹込成形作業を制御するための方法が記載されている。この方法では、容器の壁厚を製造直後に検出し、次いでこれを理想的壁厚と比較し、その後、実際の壁厚と理想的壁厚との間の差をできるだけ小さくする。
【0005】
この方法及び装置では、完成したボトルが、常に信頼性を以て検出されているわけではないということがわかっている。
【特許文献1】欧州特許第EP1 348 932 A2号
【特許文献2】ドイツ国特許第DE 101 16 665 A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容器の壁厚を検出するための方法及び装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項10に記載の方法、請求項13に記載の装置、請求項14に記載の装置によって達成される。好ましい実施例は、特許請求の範囲に特徴が記載してある。
【0008】
従来技術から周知の方法は、滑らかな側壁領域の壁厚の確認に特に適している。これは、放射線が吸収される二つの位置で、側壁の厚さがほぼ等しいということを利用する。そうでない場合には、この方法を使用することはできない。
【0009】
しかしながら共通の交差箇所を持つ二つの試験経路の構成により、交差箇所での吸収を他の試験経路での計測値によって決定できる。容器の壁厚が異なる領域を通過する試験経路について、共通の交差箇所の吸収寄与を考慮に入れることはできない。従って、壁厚が同じであると仮定できない位置を含む、容器の様々な位置での壁厚を確認できる。
【0010】
壁厚は、ボトルの同じ高さではほぼ同じであることがわかっており、そのため、一つの試験経路は、ほぼ同じ高さにある二つの交差箇所を持ち、その結果、共通の交差箇所での壁厚を容易に確認できる。
【0011】
更に、ボトルの下隅部/丸みのある領域において、壁厚は非常に薄く、この領域の試験を行うことは、欠陥のあるボトルの検出に特に適している。かくして、試験経路は、通常は、容器の側壁領域と底領域との移行領域に交差箇所を有する。
【0012】
従って、比較的薄いこの領域での壁厚を決定するため、有利には、共通の交差箇所での壁厚を使用して移行領域の壁厚を計算することができる。これは、計算によって行うことができるが、原理的には、計測した吸収の差を計測することによって行うこともできる。
【0013】
二つの試験経路は、様々な角度を形成してもよい。こうした角度の上限及び下限は、特許請求の範囲に記載してある。
【0014】
40°乃至50°の角度、即ち約45°の角度が特に適しているということがわかっている。
【0015】
吸収が確認されている放射線として、隅部壁によって吸収される任意の種類の電磁放射線を使用してもよい。例えば、こうした電磁放射線には、赤外線、可視光、紫外線、テトラヘルツ放射線、X線、又はX線管から5keV以下で発生できる、X線についての許容必要条件の対象とならない低エネルギイオン化放射線が含まれる。壁厚を確かめるため、放射性放射線又は他の粒子線を使用してもよい。
【0016】
粒子線及び電磁放射線、又は波長が異なる二種類の放射線等の二つの異なる種類の放射線を使用してもよい。従って、特に少なくとも方の波長での容器の材料による吸収が高い場合に計測精度を向上できる。
【0017】
これによって確認された壁厚は、有利には、ドイツ国特許第DE101 16 665A1号による容器製造工程の調節及び/又は制御に使用される。同特許に触れたことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0018】
個々のボトルの壁厚について、これによって確認された値は、製造プロセスに含まれる吹込成形金型に、及びボトル用の半加工品を加熱ゾーンを通して輸送する保持マンドレルに間違いなく適用され、この適用は、制御ユニットによって、機械回転トランスジューサーと関連して行われ、個々の吹込成形金型のずれ及び/又は性能低下を検出でき、吹込成形圧力、延伸速度、又は半加工品の温度分布等の製造パラメータを個々に最適化できる。
【0019】
適正に製造されなかった容器を特に確実に検出するため、この方法は、側壁領域が底領域へと移行する容器の領域の壁厚を検出する。壁厚が最も小さい領域、即ち特に重要な領域は、通常は、この移行領域にあるということがわかっている。
【0020】
容器の壁厚を決定するための装置は、二つの試験経路を有する。これらの試験経路に沿った放射線の吸収を決定できる。これらの試験経路は、二つの交差箇所で容器位置と交差する。装置は、これらの試験経路が、少なくとも一つの共通の交差箇所を持つことを特徴とする。
【0021】
本方法並びに本装置に関し、試験経路の交差箇所が正確に同じであることは絶対的必要条件ではないが、少なくとも、二つの交差箇所間の容器壁の厚さの変化が大きくない又は変化がないことが期待される程互いに近いのであれば十分である。
【0022】
容器の壁厚を決定するための装置は、容器の側壁領域の、容器の底領域への移行領域の壁厚を決定できるように設計されている。これにより、適切に製造されなかったボトルを確実に検出できる。
【0023】
本発明の好ましい実施例を添付図面に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1はボトル1を示す。ボトル1は、壁厚を試験できるボトル位置にある。ボトル1は、PETによって吹込成形法で形成されている。
【0025】
ボトル1は、側壁領域8及び底領域7を有する。底領域7と側壁領域8との間には移行領域9がある。これは、ボトル1の下側外縁の丸みのある縁部と対応する。
【0026】
二つの放射線源12、13がボトル1と隣接して設置してある。放射線がビームスプリッター又は半透明なミラーによって二つの部分ビームに分割される場合には、二つの放射線源12、13の代りに、一つの放射線源だけを設けてもよい。様々なビーム経路の位置12、13を継続的にとる移動自在の放射線源もまた可能である。
【0027】
更に、放射線源12、13が放射した放射線を検出できるように、2つの検出器10、11がボトル1と隣接して、又はボトル1の下に配置されている。検出器10及び放射線源13が第1試験経路2を形成し、検出器11及び放射線源12が第2試験経路3を形成する。
【0028】
交差箇所4、5、6での吸収は、放射線の減衰による交差箇所4、5、6での放射線の吸収から導き出すことができる。
【0029】
交差箇所4及び6は、ボトル1のほぼ同じ高さにある。経験によれば、この箇所での壁厚はほぼ同じである。壁厚が同じであると仮定すると、交差箇所6でのボトル1の壁厚は、試験経路2によって決定できる。
【0030】
試験経路3の場合には、交差箇所6での吸収を計算から差し引くことができるため、交差箇所5の領域の壁厚を決定できる。これを行うため、試験経路が側壁の場合と比較して斜めであるため、交差箇所6の領域での試験経路3の距離が長いことを計算に入れ、交差箇所6のところで容器の壁に入りそしてここから出る夫々の界面での反射による損失を考慮する。他の交差箇所4、5について、夫々の界面での反射による損失もまた考慮に入れる。
【0031】
上述の計測構成により、更に、交差箇所4の領域での壁厚を高精度で決定できる。これを行うため、交差箇所5での吸収が、交差箇所6での吸収と比較して無視できるものと仮定する。これは、この箇所での壁厚が非常に薄く、容器壁を通る通路が、随意であるが、本質的に直角であるためである。従って、交差箇所6の領域で吸収を決定でき、次いで試験経路2に沿った計測の結果により、交差箇所4の領域での吸収を決定できる。
【0032】
図2aは、ボトル1を下から見た図を示す。この図に底領域7が示してある。様々な花弁状脚部14が底領域7に設けられている。これらの脚部は外方膨出部によって形成されており、ボトルを倒れないように立てることができる。図2bは、底領域7、側壁8及び移行領域9の斜視図である。
【0033】
PET材料が吹込成形で延伸され、特に花弁状脚部の領域で吹込成形金型の凹所と対応するため、壁厚が全体に非常に薄い。従って、領域9での試験経路3のボトル1との交差箇所5は、好ましくは、このような花弁状脚部14の領域にある。これを図2a及び図2bに概略に示す。試験経路3の点線で示す部分は、容器1のキャビティ内を通る試験経路3の部分を示すのに対し、破線は、容器1の外側の試験経路3の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ボトルの計測構成の概略断面図である。
【図2】図2aは、ボトル及び試験経路の斜視図である。
【0035】
図2bは、ボトル及び試験経路の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ボトル
2 第1試験経路
3 第2試験経路
4、5、6 交差箇所
7 底領域
8 側壁領域
9 移行領域
10、11 検出器
12、13 放射線源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの交差箇所で容器と交差する計測放射線の第1及び第2の試験経路に沿った放射線の吸収を決定する、例えばPET製のボトル等の容器の壁厚を検出するための方法において、前記二つの試験経路(2、3)は、各々、ほぼ共通の少なくとも一つの交差箇所(6)を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1試験経路(2)は、前記共通の交差箇所(6)とほぼ同じ高さに第2交差箇所(4)を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記第2試験経路(3)は、前記容器(1)の底領域(7)に移行する、前記容器(1)の側壁領域(8)の移行領域(9)に交差箇所(5)を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記移行領域(9)の前記壁厚を決定するため、前記共通の交差箇所(6)で検出した壁厚を使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記二つの試験経路(2、3)は、15°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、又は80°以上の角度を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記二つの試験経路(2、3)は、80°、70°、60°、50°、45°、40°、30°、20°、又は15°以下の角度を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記放射線は、赤外線、可視光、紫外線、テラヘルツ放射線、X線、放射性放射線、又は他の粒子線等の電磁放射線である、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記放射線は、二つの異なる波長の電磁放射線等の二つの異なる種類の放射線を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
検出された前記壁厚の値を使用して前記容器(1)の製造プロセスを調節及び/又は制御する、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
例えばPET製のボトル等の容器の壁厚を検出するための方法において、
前記容器(1)の側壁(8)の、前記容器(1)の底領域(7)への移行領域(9)の壁厚を検出する、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
X線管が発生した5keV以下の低エネルギイオン化放射線を用いた吸収法によって前記壁厚を計測する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の方法において、
検出した容器の壁厚を、製造プロセスで用いられる吹込成形金型及び/又は容器用射出成形用半加工品を吹込成形前に加熱ステーションを通して輸送する保持マンドレルに適用し、必要であれば、半加工品の吹込圧力、延伸速度、温度分布等の製造パラメータを調節する、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
例えばPET製のボトル等の容器の壁厚を検出するための装置であって、容器位置と二つの交差箇所で交差する二つの試験経路を提供し、これらの試験経路に沿った計測放射線の吸収を決定できる、装置において、
前記二つの経路(2、3)はほぼ共通の少なくとも一つの交差箇所(6)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項14】
例えばPET製のボトル等の容器の壁厚を検出するための装置において、
容器(1)の側壁(8)の容器(1)の底領域(7)への移行領域(9)の壁厚を検出するように設計されている、ことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2009−503522(P2009−503522A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524377(P2008−524377)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006525
【国際公開番号】WO2007/014611
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(591034383)クロネス・アクチェンゲゼルシャフト (35)
【氏名又は名称原語表記】KRONES AG
【Fターム(参考)】