壁面緑化用壁
【課題】壁面緑化用壁を施工する場合には、ウッドチップ集積板を接着剤や固定金具にて一枚一枚取り付けていたので、現場での施工に手間や時間がかかるものとなっていた。
【解決手段】板状基材1aの少なくとも一面にウッドチップ集積層1bを形成したウッドチップパネル1を複数連結してウッドチップユニット3を構成し、複数のウッドチップユニット3・3・・・を積層し、該ウッドチップユニット3・3・・・に沿って植物が成長するように構成した。
【解決手段】板状基材1aの少なくとも一面にウッドチップ集積層1bを形成したウッドチップパネル1を複数連結してウッドチップユニット3を構成し、複数のウッドチップユニット3・3・・・を積層し、該ウッドチップユニット3・3・・・に沿って植物が成長するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッドチップパネルを複数連結して構成したウッドチップユニットを複数積層することで構成される壁面緑化用壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表層がコンクリート面やモルタル面や鋼板面等で構成される壁面は、そのままでは緑化することが困難であるため、これらの壁面をウッドチップにて被覆し、ウッドチップ集積層の上に植物育成層を形成して、壁面を緑化することが行われている(特許文献1参照)。
特許文献1における被覆方法では、壁面のウッドチップによる被覆を、ウッドチップと接着材とを混合した流動性混合物を、コンクリート面や鋼板面等の壁面上に塗工し、塗工した流動性混合物を硬化させることにより行っている。
【0003】
また、ウッドチップと接着材とを混合した流動性混合物を予め板状に硬化させ、硬化させたウッドチップ集積板を、コンクリートや鋼板等で構成される遮音壁等の壁に接着剤や固定金具にて取り付けることも行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−306942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述のように、予め形成しておいたウッドチップ集積板を、接着剤や固定金具で既存の壁面に取り付ける場合、ウッドチップ集積板を接着剤や固定金具にて一枚一枚取り付けていくのは、現場での施工に手間や時間がかかるものとなっていた。
また、壁の重量を考えた場合、既存の壁面の重量にウッドチップ集積板の重量が加わるので、壁全体の重量が大きくなってしまう。
そこで、本発明では、現場での施工を容易かつ短時間で行うことができるとともに、軽量に構成することができる壁面緑化用壁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する壁面緑化用壁は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、板状基材の少なくとも一面にウッドチップ集積層を形成したウッドチップパネルを複数連結してウッドチップユニットを構成し、複数のウッドチップユニットを積層し、該ウッドチップユニットに沿って植物が成長するように構成したことにより、壁面緑化用壁を積層されたウッドチップユニットのみで構成できるので、壁の重量を低減することができ、壁面緑化用壁の施工を容易にすることができるとともに、壁面緑化用壁を自然に緑化することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、壁面緑化用壁の施工が簡単容易となって、施工の手間・時間を省いて低コスト化を図ることができる。また、壁の重量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
まず、本発明の壁面緑化用壁を構成するウッドチップパネルについて説明する。
図1に示すように、ウッドチップパネル1は平面視にて略正方形のパネル状に形成されており、基材1aの一面側にはウッドチップ集積層1bが形成されている。
【0009】
基材1aは、例えば発泡ガラス焼成板にて構成されている。
ウッドチップ集積層1bは、ウッドチップと耐候性接着剤とを混合した流動性混合物を基材1aの一面に塗布した後に、耐候性接着剤を硬化させることで形成される。
ここで、ウッドチップとは、樹木を機械的に小片化したものをいい、樹種や樹皮付きであるか否かは問わない。ウッドチップとしては、地域開発に伴って伐採された樹木、間伐材、河川流木、および建築廃木材等を小片化して得られたものを用いることも可能である。また、耐候性接着剤としては、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、およびエポキシ樹脂系接着剤等を用いることができる。
このように構成されるウッドチップパネル1は、軽量で、透水性、保水性、断熱性および吸音性に優れた特性を有している。
【0010】
壁面緑化用壁およびその施工方法について説明する。
壁面緑化用壁を施工する際には、まず、図2、図3に示すように、複数のウッドチップパネル1を、連結具であるパネル枠2により連結してウッドチップユニット3を構成する。
具体的には、長尺に形成されるパネル枠2に、複数のウッドチップパネル1を順次嵌装していくことで、複数のウッドチップパネル1が一列に並んだ状態で連結されて、ウッドチップユニット3が構成される。
【0011】
パネル枠2は、鋼板等の長尺の板状部材を屈曲して形成されており、基部2aと、基部2aにおける短手方向の両端部を同一方向へ直角に屈曲して形成されるガイド部2bと、ガイド部2bの先端部を内側に屈曲して形成される係止部2cとで構成されている。
ウッドチップパネル1は、パネル枠2の左右端部からスライドさせることでパネル枠2に嵌装され、パネル枠2の係止部2cは、ウッドチップパネル1の基材1aとウッドチップ集積層1bとの境界部に食い込むかたちで、ウッドチップパネル1を係止している。
【0012】
図4、図5に示すように、壁面緑化用壁を施工する現場においては、一対の支柱5・5が立設されている。
支柱5には、上端部から下端部にかけて凹溝5aが形成されており、一対の支柱5・5は、各支柱5・5の凹溝5aが対向するように立設されている。
支柱5・5は、ウッドチップユニット3の長手方向の寸法と略同程度の寸法だけ離隔して立設されており、ウッドチップユニット3を上方から両支柱5・5間に差し込むと、ウッドチップユニット3の両端が、それぞれ支柱5・5の凹溝5aに嵌装されるようになっている。
この一対の支柱5・5の凹溝5a・5aに、複数のウッドチップユニット3を順次嵌装して、ウッドチップユニット3を積層することで、壁面緑化用壁が構成される。
【0013】
このように、一対の支柱5・5の間にウッドチップユニット3を順次嵌装するだけで壁面緑化用壁を構成することができ、ウッドチップパネル1を既存の壁に一枚一枚貼り付けて壁面緑化用壁を構成する場合等に比べて、施工が簡単容易となる。
壁面緑化用壁は、積層されたウッドチップユニット3のみで構成されることとなるので、壁の重量を低減することができる。
なお、本実施例では、工場等で予めウッドチップパネル1を連結して完成させたウッドチップユニット3を、壁面緑化用壁を施工する現場に搬入するようにして、現場での壁面緑化用壁の施工の手間や時間を減少しているが、施工現場でウッドチップパネル1を連結してウッドチップユニット3を組み立てることも可能である。
【0014】
図6に示すように、ウッドチップユニット3を積層して構成された壁面緑化用壁における、ウッドチップ集積層1b側の面には、ブラケット7が取り付けられ、該ブラケット7の上には、植栽容器としてのプランター8が設置される。
プランター8内には土壌が充填され、付着性のツル植物や多肉植物等の植物が植栽されている。プランター8内に充填される土壌としては、例えば、多孔質な無機物およびヤシ髄加工品を含有している土壌を用いることが可能である。多孔質な無機物を含有することで、土壌の粒径分布を調整することができ、ヤシ髄加工品といった急速腐朽しない有機物を含有することで、目詰まりの発生を抑えることが可能となっている。
【0015】
そして、土壌は、安定した透水性、通気性を備えているため植栽された植物の根系育成を促進することができ、さらに、緩反応型高分子保水材と保水マットを併用することで、簡易な散水管理にて植物の維持管理を容易に行うことが可能となる。また、土壌に緩効性肥料を配合することで、肥効を長持ちさせることができる。
【0016】
図6、図7に示すように、植栽された植物が成長してプランター8の下方まで伸びると、ウッドチップパネル1のウッドチップ集積層1bに植物の根が張り、ウッドチップ集積層1b面に沿って植物が成長していく。
このように、植栽したプランター8をウッドチップ集積層1b面に設置しておくことで、ウッドチップ集積層1b面に沿って植物が成長していき、ウッドチップユニット3を積層して構成した壁面緑化用壁を自然に緑化することが可能となっている。
【0017】
また、図7、図8に示すように、ウッドチップユニット3が嵌装される凹溝5aにおける、ウッドチップユニット3の厚み方向の寸法wは、ウッドチップユニット3の厚み寸法tよりも大きく形成されており、該凹溝5aの、ウッドチップユニット3の厚み方向には隙間dが形成されている。
このように、凹溝5aにおける厚み方向の寸法wをウッドチップユニット3の厚み寸法tよりも大きく構成することで、ウッドチップユニット3を凹溝5aに嵌装する際の作業性を向上させている。
【0018】
そして、この隙間dには、支柱5の上端部から下端部にかけて、ウッドチップユニット3の固定金具6を介装している。
固定金具6は、長尺の鋼板等のある程度弾性を備えた板状部材を、平面視略「コ」字状に屈曲して形成されている。固定金具6における基部6aの短手方向の寸法は、前記隙間dの寸法と略同じに構成されており、基部6aから略直角方向へ延出する取り付け部6bは、ボルト等の締結部材によってウッドチップユニット3に取付固定されている。基部6aの取り付け部6bが延出側とは逆側からは押圧部6cが延出している。押圧部6cは、基部6aに対する直角方向から若干外側へ屈曲しており、押圧部6cの端部と取り付け部6bの端部との間隔は前記隙間dよりも大きくなっている。
【0019】
従って、固定金具6を隙間dに介装すると、押圧部6cがその弾性により、凹溝5aの壁面をウッドチップユニット3の厚み方向へ押圧することとなる。
つまり、固定金具6を隙間dに介装することで、凹部5aに嵌装したウッドチップユニット3の厚み方向の位置を固定している。
このように、板状部材を屈曲して構成した固定金具6の弾性力により、ウッドチップユニット3を押圧して位置決めするように構成することで、簡単且つ安価な構造でウッドチップユニット3の位置決めを行うことができ、壁面緑化用壁の施工を容易にすることができる。
【0020】
また、本実施例では、支柱5として、両側に凹溝5aが形成されたH鋼を用いているが、このように両側に凹溝5aが形成された支柱5を用いることで、少ない支柱5の本数で、左右に連側して壁面緑化用壁を構成することができる。
【0021】
また、図9、図10に示すように、本壁面緑化用壁は、プランター8に植栽された植物への散水を自動的に行う潅水装置9を備えている。
潅水装置9は、散水用の水を掻くプランター8へ案内する給水管22と、プランター8への給水・止水を切り換える電磁弁23と、電磁弁23の動作等を制御する制御装置21と、雨量を検出する雨量計24と、給水管22にてプランター8まで案内された水を散水するドリッパー25とを備えている。
【0022】
潅水装置9の制御装置21は、雨量計24にて検出した雨量に応じてプランター8への散水量を制御しており、散水量の制御は電磁弁23を制御装置21により開閉することで行われる。
つまり、雨が降っていないときには散水して土壌の乾燥を防ぎ、雨が降っているときには散水の必要がないので止水するように制御される。
例えば、制御装置21が、雨が降っていないときには、所定時間毎に所定量の散水を行うように制御し、雨が降っているときには各回の散水時における散水量を少なくしたり、雨が降っている間は散水を行わなかったりする制御が行われる。雨が降っている場合、その雨量に応じて散水間隔や一回の散水での散水量等を変更することも可能である。
なお、本潅水装置9においては、制御装置21に太陽電池が備えられており、太陽光により作動させることが可能となっている。
【0023】
このように、潅水装置9の制御装置21により、植栽された植物への潅水量を、雨量計24により検出された雨量に応じて制御することで、晴天・雨天にかかわらず、適切な量の水を散水することができ、土壌に余分な水分が溜まることがなく、土壌の腐朽を防止することができる。そして、植栽された植物の適切な成長を促すとともに、水の無駄な消費を抑えることができる。
【0024】
以上のように、ウッドチップユニット3を積層して構成され、ウッドチップ集積層1b面に植栽されたプランター8を設置し、散水量を雨量に応じて自動制御する潅水装置を備えた壁面緑化用壁は、例えば図11に示すように、立体駐車場の外壁として構成することが可能である。
これにより、無機質で殺風景になりがちな駐車場の景観を、温かみのある柔らかで優しい景観へと変化させることができる。
【0025】
また、本発明の壁面緑化用壁は、鋼板等の板状部材にて構成される既存の壁面に構成することもできる。
この場合は、板状部材の少なくとも一面に、細かく粉砕加工されたウッドチップ材にウレタン樹脂系バインダを混合して構成した流動性混合物を吹き付け、このウレタン樹脂系バインダを硬化させることでウッドチップ集積層を形成することができる。
このように、既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成して、壁面緑化用壁を構成することができる。
【0026】
既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成した場合も、前述のウッドチップユニット3を積層して構成した壁面緑化用壁の場合と同様に、ウッドチップ集積層形成面に、土壌が充填され、植栽がなされた植栽容器を設置するとともに、雨量計を具備した潅水装置を備えて、該潅水装置により、植栽された植物への潅水量を、雨量計により検出された雨量に応じて制御するように構成することが可能である。
【0027】
このように、既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成して壁面緑化用壁を構成して、壁面を緑化しようとした場合には、既存の壁面を基材として利用して壁面緑化用壁を構成することができるので、既存の壁面にウッドチップパネル1を一枚一枚貼り付けていくよりも、壁の重量を低減できるとともに、施工の手間・時間を省いて低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ウッドチップパネルを示す斜視図である。
【図2】ウッドチップパネルをパネル枠により連結してウッドチップユニットを構成する様子を示す側面図である。
【図3】ウッドチップパネルをパネル枠により連結してウッドチップユニットを構成する様子を示す正面図である。
【図4】ウッドチップユニットを積層して壁面緑化用壁を構成する様子を示す斜視図である。
【図5】ウッドチップユニットを一対の支柱の凹部に嵌装した状態を示す平面図である。
【図6】壁面緑化用壁に植栽がなされたプランターを設置した様子を示す斜視図である。
【図7】壁面緑化用壁に植栽がなされたプランターを設置した様子を示す側面図である。
【図8】支柱の凹部に嵌装されたウッドチップユニットが固定金具により固定された状態を示す平面図である。
【図9】壁面緑化用壁の潅水装置を示す正面図である。
【図10】潅水装置のドリッパー25を示す正面断面図である。
【図11】壁面緑化用壁を立体駐車場の外壁として構成した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ウッドチップパネル
1a 基材
1b ウッドチップ集積層
2 パネル枠
3 ウッドチップユニット
5 支柱
5a 凹部
6 固定金具
8 プランター
9 潅水装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッドチップパネルを複数連結して構成したウッドチップユニットを複数積層することで構成される壁面緑化用壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表層がコンクリート面やモルタル面や鋼板面等で構成される壁面は、そのままでは緑化することが困難であるため、これらの壁面をウッドチップにて被覆し、ウッドチップ集積層の上に植物育成層を形成して、壁面を緑化することが行われている(特許文献1参照)。
特許文献1における被覆方法では、壁面のウッドチップによる被覆を、ウッドチップと接着材とを混合した流動性混合物を、コンクリート面や鋼板面等の壁面上に塗工し、塗工した流動性混合物を硬化させることにより行っている。
【0003】
また、ウッドチップと接着材とを混合した流動性混合物を予め板状に硬化させ、硬化させたウッドチップ集積板を、コンクリートや鋼板等で構成される遮音壁等の壁に接着剤や固定金具にて取り付けることも行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−306942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述のように、予め形成しておいたウッドチップ集積板を、接着剤や固定金具で既存の壁面に取り付ける場合、ウッドチップ集積板を接着剤や固定金具にて一枚一枚取り付けていくのは、現場での施工に手間や時間がかかるものとなっていた。
また、壁の重量を考えた場合、既存の壁面の重量にウッドチップ集積板の重量が加わるので、壁全体の重量が大きくなってしまう。
そこで、本発明では、現場での施工を容易かつ短時間で行うことができるとともに、軽量に構成することができる壁面緑化用壁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する壁面緑化用壁は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、板状基材の少なくとも一面にウッドチップ集積層を形成したウッドチップパネルを複数連結してウッドチップユニットを構成し、複数のウッドチップユニットを積層し、該ウッドチップユニットに沿って植物が成長するように構成したことにより、壁面緑化用壁を積層されたウッドチップユニットのみで構成できるので、壁の重量を低減することができ、壁面緑化用壁の施工を容易にすることができるとともに、壁面緑化用壁を自然に緑化することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、壁面緑化用壁の施工が簡単容易となって、施工の手間・時間を省いて低コスト化を図ることができる。また、壁の重量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
まず、本発明の壁面緑化用壁を構成するウッドチップパネルについて説明する。
図1に示すように、ウッドチップパネル1は平面視にて略正方形のパネル状に形成されており、基材1aの一面側にはウッドチップ集積層1bが形成されている。
【0009】
基材1aは、例えば発泡ガラス焼成板にて構成されている。
ウッドチップ集積層1bは、ウッドチップと耐候性接着剤とを混合した流動性混合物を基材1aの一面に塗布した後に、耐候性接着剤を硬化させることで形成される。
ここで、ウッドチップとは、樹木を機械的に小片化したものをいい、樹種や樹皮付きであるか否かは問わない。ウッドチップとしては、地域開発に伴って伐採された樹木、間伐材、河川流木、および建築廃木材等を小片化して得られたものを用いることも可能である。また、耐候性接着剤としては、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、およびエポキシ樹脂系接着剤等を用いることができる。
このように構成されるウッドチップパネル1は、軽量で、透水性、保水性、断熱性および吸音性に優れた特性を有している。
【0010】
壁面緑化用壁およびその施工方法について説明する。
壁面緑化用壁を施工する際には、まず、図2、図3に示すように、複数のウッドチップパネル1を、連結具であるパネル枠2により連結してウッドチップユニット3を構成する。
具体的には、長尺に形成されるパネル枠2に、複数のウッドチップパネル1を順次嵌装していくことで、複数のウッドチップパネル1が一列に並んだ状態で連結されて、ウッドチップユニット3が構成される。
【0011】
パネル枠2は、鋼板等の長尺の板状部材を屈曲して形成されており、基部2aと、基部2aにおける短手方向の両端部を同一方向へ直角に屈曲して形成されるガイド部2bと、ガイド部2bの先端部を内側に屈曲して形成される係止部2cとで構成されている。
ウッドチップパネル1は、パネル枠2の左右端部からスライドさせることでパネル枠2に嵌装され、パネル枠2の係止部2cは、ウッドチップパネル1の基材1aとウッドチップ集積層1bとの境界部に食い込むかたちで、ウッドチップパネル1を係止している。
【0012】
図4、図5に示すように、壁面緑化用壁を施工する現場においては、一対の支柱5・5が立設されている。
支柱5には、上端部から下端部にかけて凹溝5aが形成されており、一対の支柱5・5は、各支柱5・5の凹溝5aが対向するように立設されている。
支柱5・5は、ウッドチップユニット3の長手方向の寸法と略同程度の寸法だけ離隔して立設されており、ウッドチップユニット3を上方から両支柱5・5間に差し込むと、ウッドチップユニット3の両端が、それぞれ支柱5・5の凹溝5aに嵌装されるようになっている。
この一対の支柱5・5の凹溝5a・5aに、複数のウッドチップユニット3を順次嵌装して、ウッドチップユニット3を積層することで、壁面緑化用壁が構成される。
【0013】
このように、一対の支柱5・5の間にウッドチップユニット3を順次嵌装するだけで壁面緑化用壁を構成することができ、ウッドチップパネル1を既存の壁に一枚一枚貼り付けて壁面緑化用壁を構成する場合等に比べて、施工が簡単容易となる。
壁面緑化用壁は、積層されたウッドチップユニット3のみで構成されることとなるので、壁の重量を低減することができる。
なお、本実施例では、工場等で予めウッドチップパネル1を連結して完成させたウッドチップユニット3を、壁面緑化用壁を施工する現場に搬入するようにして、現場での壁面緑化用壁の施工の手間や時間を減少しているが、施工現場でウッドチップパネル1を連結してウッドチップユニット3を組み立てることも可能である。
【0014】
図6に示すように、ウッドチップユニット3を積層して構成された壁面緑化用壁における、ウッドチップ集積層1b側の面には、ブラケット7が取り付けられ、該ブラケット7の上には、植栽容器としてのプランター8が設置される。
プランター8内には土壌が充填され、付着性のツル植物や多肉植物等の植物が植栽されている。プランター8内に充填される土壌としては、例えば、多孔質な無機物およびヤシ髄加工品を含有している土壌を用いることが可能である。多孔質な無機物を含有することで、土壌の粒径分布を調整することができ、ヤシ髄加工品といった急速腐朽しない有機物を含有することで、目詰まりの発生を抑えることが可能となっている。
【0015】
そして、土壌は、安定した透水性、通気性を備えているため植栽された植物の根系育成を促進することができ、さらに、緩反応型高分子保水材と保水マットを併用することで、簡易な散水管理にて植物の維持管理を容易に行うことが可能となる。また、土壌に緩効性肥料を配合することで、肥効を長持ちさせることができる。
【0016】
図6、図7に示すように、植栽された植物が成長してプランター8の下方まで伸びると、ウッドチップパネル1のウッドチップ集積層1bに植物の根が張り、ウッドチップ集積層1b面に沿って植物が成長していく。
このように、植栽したプランター8をウッドチップ集積層1b面に設置しておくことで、ウッドチップ集積層1b面に沿って植物が成長していき、ウッドチップユニット3を積層して構成した壁面緑化用壁を自然に緑化することが可能となっている。
【0017】
また、図7、図8に示すように、ウッドチップユニット3が嵌装される凹溝5aにおける、ウッドチップユニット3の厚み方向の寸法wは、ウッドチップユニット3の厚み寸法tよりも大きく形成されており、該凹溝5aの、ウッドチップユニット3の厚み方向には隙間dが形成されている。
このように、凹溝5aにおける厚み方向の寸法wをウッドチップユニット3の厚み寸法tよりも大きく構成することで、ウッドチップユニット3を凹溝5aに嵌装する際の作業性を向上させている。
【0018】
そして、この隙間dには、支柱5の上端部から下端部にかけて、ウッドチップユニット3の固定金具6を介装している。
固定金具6は、長尺の鋼板等のある程度弾性を備えた板状部材を、平面視略「コ」字状に屈曲して形成されている。固定金具6における基部6aの短手方向の寸法は、前記隙間dの寸法と略同じに構成されており、基部6aから略直角方向へ延出する取り付け部6bは、ボルト等の締結部材によってウッドチップユニット3に取付固定されている。基部6aの取り付け部6bが延出側とは逆側からは押圧部6cが延出している。押圧部6cは、基部6aに対する直角方向から若干外側へ屈曲しており、押圧部6cの端部と取り付け部6bの端部との間隔は前記隙間dよりも大きくなっている。
【0019】
従って、固定金具6を隙間dに介装すると、押圧部6cがその弾性により、凹溝5aの壁面をウッドチップユニット3の厚み方向へ押圧することとなる。
つまり、固定金具6を隙間dに介装することで、凹部5aに嵌装したウッドチップユニット3の厚み方向の位置を固定している。
このように、板状部材を屈曲して構成した固定金具6の弾性力により、ウッドチップユニット3を押圧して位置決めするように構成することで、簡単且つ安価な構造でウッドチップユニット3の位置決めを行うことができ、壁面緑化用壁の施工を容易にすることができる。
【0020】
また、本実施例では、支柱5として、両側に凹溝5aが形成されたH鋼を用いているが、このように両側に凹溝5aが形成された支柱5を用いることで、少ない支柱5の本数で、左右に連側して壁面緑化用壁を構成することができる。
【0021】
また、図9、図10に示すように、本壁面緑化用壁は、プランター8に植栽された植物への散水を自動的に行う潅水装置9を備えている。
潅水装置9は、散水用の水を掻くプランター8へ案内する給水管22と、プランター8への給水・止水を切り換える電磁弁23と、電磁弁23の動作等を制御する制御装置21と、雨量を検出する雨量計24と、給水管22にてプランター8まで案内された水を散水するドリッパー25とを備えている。
【0022】
潅水装置9の制御装置21は、雨量計24にて検出した雨量に応じてプランター8への散水量を制御しており、散水量の制御は電磁弁23を制御装置21により開閉することで行われる。
つまり、雨が降っていないときには散水して土壌の乾燥を防ぎ、雨が降っているときには散水の必要がないので止水するように制御される。
例えば、制御装置21が、雨が降っていないときには、所定時間毎に所定量の散水を行うように制御し、雨が降っているときには各回の散水時における散水量を少なくしたり、雨が降っている間は散水を行わなかったりする制御が行われる。雨が降っている場合、その雨量に応じて散水間隔や一回の散水での散水量等を変更することも可能である。
なお、本潅水装置9においては、制御装置21に太陽電池が備えられており、太陽光により作動させることが可能となっている。
【0023】
このように、潅水装置9の制御装置21により、植栽された植物への潅水量を、雨量計24により検出された雨量に応じて制御することで、晴天・雨天にかかわらず、適切な量の水を散水することができ、土壌に余分な水分が溜まることがなく、土壌の腐朽を防止することができる。そして、植栽された植物の適切な成長を促すとともに、水の無駄な消費を抑えることができる。
【0024】
以上のように、ウッドチップユニット3を積層して構成され、ウッドチップ集積層1b面に植栽されたプランター8を設置し、散水量を雨量に応じて自動制御する潅水装置を備えた壁面緑化用壁は、例えば図11に示すように、立体駐車場の外壁として構成することが可能である。
これにより、無機質で殺風景になりがちな駐車場の景観を、温かみのある柔らかで優しい景観へと変化させることができる。
【0025】
また、本発明の壁面緑化用壁は、鋼板等の板状部材にて構成される既存の壁面に構成することもできる。
この場合は、板状部材の少なくとも一面に、細かく粉砕加工されたウッドチップ材にウレタン樹脂系バインダを混合して構成した流動性混合物を吹き付け、このウレタン樹脂系バインダを硬化させることでウッドチップ集積層を形成することができる。
このように、既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成して、壁面緑化用壁を構成することができる。
【0026】
既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成した場合も、前述のウッドチップユニット3を積層して構成した壁面緑化用壁の場合と同様に、ウッドチップ集積層形成面に、土壌が充填され、植栽がなされた植栽容器を設置するとともに、雨量計を具備した潅水装置を備えて、該潅水装置により、植栽された植物への潅水量を、雨量計により検出された雨量に応じて制御するように構成することが可能である。
【0027】
このように、既存の壁面に直接ウッドチップ集積層を形成して壁面緑化用壁を構成して、壁面を緑化しようとした場合には、既存の壁面を基材として利用して壁面緑化用壁を構成することができるので、既存の壁面にウッドチップパネル1を一枚一枚貼り付けていくよりも、壁の重量を低減できるとともに、施工の手間・時間を省いて低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ウッドチップパネルを示す斜視図である。
【図2】ウッドチップパネルをパネル枠により連結してウッドチップユニットを構成する様子を示す側面図である。
【図3】ウッドチップパネルをパネル枠により連結してウッドチップユニットを構成する様子を示す正面図である。
【図4】ウッドチップユニットを積層して壁面緑化用壁を構成する様子を示す斜視図である。
【図5】ウッドチップユニットを一対の支柱の凹部に嵌装した状態を示す平面図である。
【図6】壁面緑化用壁に植栽がなされたプランターを設置した様子を示す斜視図である。
【図7】壁面緑化用壁に植栽がなされたプランターを設置した様子を示す側面図である。
【図8】支柱の凹部に嵌装されたウッドチップユニットが固定金具により固定された状態を示す平面図である。
【図9】壁面緑化用壁の潅水装置を示す正面図である。
【図10】潅水装置のドリッパー25を示す正面断面図である。
【図11】壁面緑化用壁を立体駐車場の外壁として構成した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ウッドチップパネル
1a 基材
1b ウッドチップ集積層
2 パネル枠
3 ウッドチップユニット
5 支柱
5a 凹部
6 固定金具
8 プランター
9 潅水装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状基材の少なくとも一面にウッドチップ集積層を形成したウッドチップパネルを複数連結してウッドチップユニットを構成し、複数のウッドチップユニットを積層し、該ウッドチップユニットに沿って植物が成長するように構成したことを特徴とする壁面緑化用壁。
【請求項1】
板状基材の少なくとも一面にウッドチップ集積層を形成したウッドチップパネルを複数連結してウッドチップユニットを構成し、複数のウッドチップユニットを積層し、該ウッドチップユニットに沿って植物が成長するように構成したことを特徴とする壁面緑化用壁。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図11】
【公開番号】特開2007−125031(P2007−125031A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348699(P2006−348699)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【分割の表示】特願2004−92703(P2004−92703)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【出願人】(503306113)王子木材緑化株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【分割の表示】特願2004−92703(P2004−92703)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【出願人】(503306113)王子木材緑化株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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