説明

変性ブチルゴム組成物

【課題】有機過酸化物で架橋でき、引張物性を更に改良した変性ゴム組成物を廉価に得る。
【解決手段】酸素の存在下、常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を反応させて変性することにより得られる変性ブチルゴムに、少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を配合してなる変性ブチルゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性ブチルゴム組成物に関し、更に詳しくはラジカル開始剤による架橋を可能にした変性ブチルゴム組成物の引張物性を廉価に向上させた変性ブチルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴムは不飽和度が極めて低いために、耐候性、耐熱性、耐オゾン性などに優れており、また気体透過性が低いことからシール剤や接着剤などに好適に用いられている。しかるに、ブチルゴムを架橋する方法として、硫黄架橋、キノイド架橋、樹脂架橋などが知られているが、いずれの方法も実用上満足し得るものとはいい難いのが現状である。即ち、硫黄架橋は高温での長時間の架橋が必要である。またキノイド架橋はキノイドの活性化のために、酸化剤として有害な鉛丹を通常用いるので、環境衛生上問題がある。更に樹脂架橋は反応速度が著しく遅く、高温長時間の加熱が必要であり、完全に架橋されていない状態で製品化されるおそれがあるため、使用中に架橋反応が進行して、物性が大きく変化するおそれがあるなどの問題がある。また、ジエン系ゴム等の架橋方法の中で耐熱性が非常に優れている有機過酸化物による架橋は、ブチルゴムの架橋方法としてはほとんど用いられていない。これは、ブチルゴムに当該架橋を適用すると主鎖の分解反応が優先し、架橋よりもむしろ軟化してしまうおそれがあるからである。一方、過酸化物架橋が可能なブチルゴムとして部分架橋ブチルゴムが市販されているが、これには加工性が十分でないという問題がある。また、特許文献1には、有機過酸化物と電子吸引性基を含有する多官能性モノマーとの存在下で、未架橋ブチルゴムを架橋させる方法が開示されているが、この方法では激しいリバージョンが起こるおそれがある。
【0003】
かかる状況のもと、本発明者らは先きに、耐候性、耐熱性、耐オゾン性などに優れ、気体透過性が低い通常のブチルゴムを有機過酸化物で架橋できるようにした変性ゴム組成物を提案した(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−172547号公報
【特許文献2】特願2006−131780号出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、更に、前記有機過酸化物で架橋できる変性ゴム組成物の引張物性を更に改良した変性ゴム組成物を廉価に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、酸素の存在下、常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を反応させて変性することにより得られる変性ブチルゴムに、少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を配合してなる変性ブチルゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、またTEMPO誘導体のような、酸素の存在下においても常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物と、ラジカル開始剤を通常のブチルゴムに添加して反応させた後、前記ニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物がグラフトした変性ブチルゴムに、二官能以上のラジカル重合性モノマー(c)を2種類又はそれ以上と有機過酸化物を加え反応させることにより、同じような架橋反応が進行して、引張物性の高い架橋物をラジカル重合性モノマーの総量を減じても得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは先きに、通常のブチルゴムを有機過酸化物で架橋できるようにすべく、鋭意検討を重ねた結果、TEMPO誘導体のような、酸素の存在下においても常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を通常のブチルゴムに添加して反応させた後、一種類の二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を添加し反応させることにより得られる変性ブチルゴムを含む変性ブチルゴム組成物、更には上記化合物(a)、ラジカル開始剤(b)及び一種類の二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を、ブチルゴムに反応させて得られる変性ブチルゴムを含む変性ブチルゴム組成物を提案したが、更に研究を進めた結果、2種類又はそれ以上のラジカル重合性モノマー(c)を用いることにより、ラジカル重合性モノマー(c)の使用量を少なくしても、架橋物の引張物性を高めることができることを見出した。
【0009】
本発明によって変性するブチルゴムは、いわゆるブチルゴム(IIR)と呼ばれるイソブチレンと少量(ゴム全体の例えば0.6〜2.5モル%)のイソプレンとの共重合体ゴム又は塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのその誘導体で、これらは業界においてよく知られており、多数の市販品もある。
【0010】
本発明において使用する酸素の存在下に常温で安定なニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(a)としては、これらに限定するわけではないが、以下の化合物を例示することができる。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
(上記式(1)〜(6)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、チオール基、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、カルボキシル基、カルボニル基含有基(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタン酸、無水フタル酸などの環状酸無水物)、アミド基、エステル基、イミド基、ニトリル基、チオシアン基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、ニトロ基などの官能基を含む有機基を示す。)
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
その他の例をあげれば以下の通りである。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
本発明において使用する化合物(a)の使用量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対し0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.005〜0.1モルであるのが更に好ましい。この使用量が少ないとブチルゴムの変性量が低くなるおそれがあり、逆に多いと後の架橋が進行しなくなるおそれがある。
【0027】
本発明において使用することができるラジカル開始剤(b)としては、上記化合物(a)をブチルゴムの分子鎖に導入することができる任意のラジカル開始剤を用いることができ、具体的にはベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピパレート、t−ブチルパーオキシピパレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジサクシン酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジベンゾイルパーオキサイドの混合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレートなどを例示することができる。また、レドックス触媒の作用により低温で分解が可能なもののうち代表的なものとしては、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどを例示することができる。これらを反応系(混合系、接触系)に添加することによってブチルゴムに炭素ラジカルを発生させることができ、安定なフリーラジカルを有する化合物(a)がその炭素ラジカルと反応することにより、変性ブチルゴムが得られる。
【0028】
本発明において使用するラジカル開始剤(b)の添加量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対し、好ましくは0.001〜0.5モル、更に好ましくは0.005〜0.2モルである。この配合量が少な過ぎるとブチルゴム鎖からの水素原子引抜き量が低くなるおそれがあり、逆に多過ぎるとブチルゴムの主鎖が分解し、分子量が大きく低下するおそれがある。
【0029】
本発明において使用する、2種類又はそれ以上の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)としては特に限定はないが、例えばエチレンジ(メタ)アクリレート(ここでエチレンジ(メタ)アクリレートという表記はエチレンジメタアクリレート及びエチレンジアクリレートの両方を意味する。以下、同様)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリル(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンジ(メタ)アクリレート、各種ウレタン(メタ)アクリレート、各種金属(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−フェニレンジマレイミド、ビスマレイミドジフェニルメタン、N,N’−フェニレンジアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートなどをあげることができる。これらのうち分子中に電子吸引基(例えばカルボニル基(ケトン、アルデヒド、エステル、カルボン酸、カルボン酸塩、アミド)、ニトロ基、シアノ基など)を含むモノマーが変性率を高めるという観点から好ましい。
【0030】
前記少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)の使用量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.005〜0.2モルであるのが更に好ましい。この使用量が少な過ぎると後の架橋が進行しないおそれがあり、逆に多過ぎると架橋物の物性が悪化するおそれがある。
【0031】
本発明において、ブチルゴムを変性する方法及びそれにラジカル重合性モノマー(c)を混合する方法には特に制限はないが、例えばブチルゴムの変性は、例えば以下のようにして変性することができる。予備混合したブチルゴム、化合物(a)、開始剤(b)の混合物を窒素置換した密閉式混練機中で、150〜220℃の温度で反応させる。窒素置換することが好ましいが、酸素が希薄な条件でも行なうことができる。2種又はそれ以上のモノマー(c)の混合は、一般的な方法で混練により行なうことができ、各種添加剤、補強充填剤、架橋剤と同時に混練しても良い。これら、変性及び混合は、密閉式混練機、二軸押出型混練機、一軸押出型混練機、ロール、バンバリー、ニーダーなどを用いて行なうことができる。
【0032】
本発明に係るゴム組成物には前記変性ブチルゴムを含むゴム成分100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカなどの補強充填剤を5〜300重量部、好ましくは30〜200重量部並びに架橋剤(例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどの有機過酸化物及びアゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、アゾビス−シアン吉草酸、1,1’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ系ラジカル開始剤など)を、好ましくは0.05〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部配合するのが好ましい。
【0033】
本発明に係る変性ブチルゴム組成物には他のゴム成分としてスチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ芳香族ビニル、ポリオレフィン、ポリイソプレン、各種スチレン−ブタジエン共重合体、各種ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、各種ポリメタクリル酸エステル、各種ポリエーテル、各種ポリスルフィド、各種ポリビニルエーテル、各種ポリエステル、各種ポリアミド、セルロース、デンプン、各種ポリウレタン、各種ポリウレア、各種ポリアミンなどを配合することができるが、変性ブチルゴムの配合量がゴム成分中に10重量%以上であるのが好ましい。
【0034】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、その他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0036】
以下の例において使用した原料は以下の通りである。
IIR:ブチルゴム〔バイエル製、BUTYL301〕
1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:〔化薬アクゾ(株)製、パーカドックス14−G〕
OH−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル〔旭電化工業(株)製、LA7RD〕
【0037】
変性IIR組成物の調製例(OHT−IIR)
IIR350.0g、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン24.2g、OH−TEMPO32.2gを60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れ10分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリー中で混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を165℃まで上昇させ20分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行うことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.317mol%であった。
【0038】
実施例1〜6比較例1及び参考例1〜11
表1に示す配合(重量部)において150ccのニーダーで6分間混練した。アクリレートを添加し、8インチのオープンロールにて更に混練しゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を180℃で20分間、プレス加硫し、厚さ2mmのシートに成形した。このシートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K 6251に準拠して引張試験を行った。結果は表Iに示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表I脚注
※1)調製例参照
※2)旭#50:旭カーボン(株)製
※3)タルクF:日本タルク(株)製
※4)ビーズステアリン酸YR:日本油脂(株)製
※5)ジクミルパーオキサイド:日本油脂(株)製、パークミルD
※6)酸化亜鉛3種:正同化学工業(株)製
※7)トリメチロールプロパントリメタクリレート:新中村化学工業(株)製、NKエステルA−TMPT
※8)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:サートマー(株)製、SR−355
※9)ジペンタエリストールヘキサアクリレート:新中村化学工業(株)製、A−DPH
【産業上の利用可能性】
【0043】
前述の如く、本発明によれば、通常のブチルゴムに、TEMPO誘導体などの酸素の存在下、常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を用いて変性したブチルゴムに、少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を配合することにより、有機過酸化物で架橋できる変性ブチルゴム組成物を得ることができ、2種類以上の、ラジカル重合性モノマーを使用することにより、重合性モノマーの使用量を減らしても架橋物の引張物性を高くすることができるので、ブチルゴムの特性である耐熱性、耐気体透過性、防振性などを十分に保つことができ、タイヤチューブ、ブラダー、ルーフィング、コンベアベルト、ホース、電線、防振ゴム、電子部位、各種工業用品などとして使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の存在下、常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を反応させて変性することにより得られる変性ブチルゴムに、少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)を配合してなる変性ブチルゴム組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2種類の、二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)が電子吸引基を有するモノマーである請求項1に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項3】
架橋剤を更に含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
変性ブチルゴムを含むゴム成分100重量部に対して、架橋剤0.05〜15重量部を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項5】
変性ブチルゴムを含むゴム成分100重量部に対して、補強充填剤5〜300重量部を更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が有機過酸化物である請求項3〜5のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。

【公開番号】特開2008−266441(P2008−266441A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110605(P2007−110605)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】