説明

変電所監視制御システム、変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置および変電所監視制御システムにおける試験方法

【課題】通常運用を正常に継続しつつ、指令員の業務負荷を低減して変電所内の装置の試験を行なうことができる変電所監視制御システムを得ること。
【解決手段】ネットワークで接続された複数の変電所の変電所機器10−1〜10−Nを監視制御する変電所監視制御システムであって、運用系の変電所機器を監視制御する中央処理装置1と、試験系の変電所機器を監視制御する中央処理装置2と、携帯端末8から着信の電話番号が試験系の作業に用いる電話番号として登録済みの番号である場合に接続を許可し、携帯端末8から受信した試験番号を中央処理装置2へ送信し、中央処理装置2から受信した応動結果を携帯端末8へ送信する電話自動応答装置4と、を備え、中央処理装置2は、試験番号に対応する制御信号を試験系の変電所機器へ送信し、当該制御信号に対する応動結果を電話自動応答装置4へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所監視制御システム、変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置および変電所監視制御システムにおける試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の変電所内の装置等の制御は、複数の場所に配置された装置を1箇所の中央処理装置により集中制御する方式により行なわれている。このような制御システムで制御対象の装置を稼動や停止させる作業を行なう場合の作業管理システムが、たとえば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1に記載の作業管理システムにおける電話自動応答装置は、例えば、下記特許文献1に記載されているように、現地作業員の携帯電話で入力された番号を認識し、入力された番号に割り付けられている現地作業を判別し、指令員が承認することによって現地作業に必要な機器を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−32101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、変電所内の機器の増設や改修、また変電所内の機器の点検時には、通常運用を継続しつつ、シーケンス確認試験等の試験が行なわれることがある。このようなシーケンス試験時に、上記特許文献1に記載されている電話自動応答装置を用いて、遮断器の開閉等を操作できるようにすると、操作ミスを犯したときに運用中の変電所にまで影響を与えてしまい、列車運行等の通常運用に支障を来たす可能性がある、という問題点があった。
【0006】
通常運用を正常に継続しつつ、試験を行なう場合には、現場試験員からの電話連絡を受け、指令員が通常運用に支障が無いことを確認したうえで中央処理装置を操作することにより該当機器の制御を行う方法が考えられる。しかし、この場合、指令員の業務負荷が増大してしまう、という問題点があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通常運用を正常に継続しつつ、指令員の業務負荷を低減して変電所内の装置の試験を行なうことができる変電所監視制御システム、変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置および変電所監視制御システムにおける試験方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、変電所内に設置された変電所機器と、運用系の前記変電所機器を監視制御する第1の中央処理装置と、試験系の前記変電所機器を監視制御する第2の中央処理装置と、を備える変電所監視制御システムであって、携帯端末から着信があった場合に、前記携帯端末の電話番号が試験系の操作に用いる電話番号として登録済みの電話番号である場合に当該携帯端末の接続を許可する電話接続制御部と、接続を許可された前記携帯端末から受信した試験番号を前記第2の中央処理装置へ送信し、また前記第2の中央処理装置から受信した当該試験番号に対応する応動結果を前記携帯端末へ送信する中央処理装置通信部と、を備える電話自動応答装置、を備え、前記第2の中央処理装置は、受信した前記試験番号に対応する操作内容を指示する制御信号を生成し、試験系として登録されている前記変電所機器へ前記制御信号を送信し、前記変電所機器から送信された当該制御信号に対する応動結果を前記電話自動応答装置へ送信する機器制御部、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、通常運用を正常に継続しつつ、指令員の業務負荷を低減して変電所内の装置の試験を行なうことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、変電所監視制御システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、中央処理装置(試験系)の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、電話自動応答装置の機能構成例を示す図である。
【図4】図4は、シーケンス試験手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、運用系の制御にも電話自動応答装置を用いる場合の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる変電所監視制御システム、変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置および変電所監視制御システムにおける試験方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明にかかる変電所監視制御システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の変電所監視制御システムは、通常運用中の変電所内の各機器を集中制御する中央処理装置(運用系)1と、試験対象機器(試験系機器)を集中制御する中央処理装置(試験系)2と、通信装置3と、電話自動応答装置4と、中央処理装置1を操作するための操作卓(運用系)5と、中央処理装置2を操作するための操作卓(試験系)6と、携帯端末8と、通信装置9−1〜9−N(Nは1以上の整数)と、変電所機器10−1〜10−Nと、で構成される。
【0013】
中央処理装置1、中央処理装置2、通信装置3、電話自動応答装置4、操作卓5および操作卓6は、同一設備(以下、指令所という)内に設置されているとする。また、ここでは、通信装置9−i(i=1,2,…,N)は、変電所毎に設置されているとし、通信装置9−iには、変電所機器10−iが接続されているとする。通信装置9−iは、変電所機器10−iに制御信号を送信することにより、変電所機器10−iを制御する。変電所機器10−iは、例えば、遮断器、断路器等である。図1では、変電所機器10−iとして1つのブロックで示しているが、変電所機器10−iは1つの装置とは限らず、1以上の装置(遮断器、断路器等)で構成される。なお、ここでは、通信装置9−iは、変電所毎に設置されているとしたが、機器ごとに設置されるようにしてもよい。
【0014】
指令所内の中央処理装置1、中央処理装置2、通信装置3および電話自動応答装置4は、たとえば、LAN(Local Area Network)等のネットワークで接続されている。中央処理装置1および中央処理装置2から送信される信号は、通信装置3を経由した後、公衆回線網または専用線等を経由して各変電所に設置された通信装置9−1〜9−Nに送信される。ここでは、指令所内のネットワーク、指令所と各変電所を接続するネットワークが、ともにIP(Internet Protocol)ネットワークであるとして説明する。なお、指令所と各変電所を接続するネットワークがIPネットワーク以外のネットワークである場合には、通信装置3が、送信する信号を当該ネットワークに対応した形式に変換して各変電所に送信すればよい。
【0015】
また、電話自動応答装置4は、公衆網7を経由して、携帯電話等である携帯端末8と、の間で通信を行う。携帯端末8は、音声通話のみの携帯電話であってもよいが、ここでは画像等を表示する機能を有するとして説明する。
【0016】
図2は、本実施の形態の中央処理装置(試験系)2の機能構成例を示す図である。図2に示すように中央処理装置(試験系)2は、試験系設定部21と、機器制御部22と、電話自動応答制御部23と、を備える。また、中央処理装置(試験系)2は、電話番号作業番号テーブル、試験系アドレステーブルおよび試験番号指令対応テーブルを備える。
【0017】
図3は、本実施の形態の電話自動応答装置4の機能構成例を示す図である。図3に示すように本実施の形態の電話自動応答装置4は、電話接続制御部41と、試験番号設定部42と、応答生成部43と、中央処理装置通信部44と、を備える。また、本実施の形態の電話自動応答装置4は、電話番号作業番号テーブルおよび試験番号テーブルを保持している。
【0018】
ここで、本実施の形態の作業番号と試験番号について説明する。作業番号は、シーケンス試験等として行われる作業を識別する番号である。例えば、作業番号「A001」を「変電所#1の変電所機器制御」等というように、作業内容と作業番号を対応づけて定めておく。また、試験番号は、各々の作業で行う操作(指令)の内容を示す番号である。例えば試験番号「N1」を「遮断器#1の投入」、試験番号「N2」を「遮断器#1の開放」というように、操作内容と試験番号を対応づけて定めておく。なお、作業番号および試験番号に、変電所を識別する情報を含めるようにしてもよい(例えば、作業番号「A011」を「変電所#1の断路器#1の開閉操作」とする等)。
【0019】
図4は、本実施の形態のシーケンス試験手順の一例を示すフローチャートである。図4を用いて、試験系の制御動作について説明する。指令員は操作卓6を操作することにより試験系として設定する変電所を指定するとともに試験に用いる携帯端末8の電話番号および作業番号を入力し、中央処理装置2の試験系設定部21は、操作卓6経由でこれらの情報を受信することにより当該変電所を試験系として設定し、また入力された電話番号および作業番号を対応付けて保持するとともに電話自動応答装置4へ送信する(ステップS1)。具体的には、中央処理装置2の試験系設定部21は、操作卓6から指定された変電所に対応する通信装置のIPアドレスを試験系アドレステーブルとして保持し、入力された電話番号および作業番号を対応付けて電話番号作業番号テーブル(作業番号情報)として保持する。また、電話自動応答制御部23は、電話番号作業番号テーブルの内容(作業番号情報)を電話自動応答装置4へ送信する。電話自動応答装置4の中央処理装置通信部44は、作業番号情報を受信すると、当該情報に基づいて自装置内の電話番号作業番号テーブルを更新する。
【0020】
たとえば、変電所#Nに対応する変電所機器10−Nを試験系として設定する場合には、中央処理装置2の試験系設定部21は、操作卓6から変電所#Nが試験系として指定された旨を通知されると、変電所#Nに設置されている通信装置9−Nに対応するIPアドレスを求め、試験系アドレステーブルとして保持する。なお、中央処理装置2は、変電所の識別情報と当該変電所に設置されている通信装置9−NのIPアドレスとの対応を保持しているとし、この対応を用いて通信装置9−Nに対応するIPアドレスを求める。
【0021】
なお、ここでは、変電所単位で試験系を設定(指定)するようにしたが、機器毎に通信装置9−1〜9−Nを備える場合には、変電所内の各機器(遮断器等)単位で試験系を指定するようにしてもよい。
【0022】
つぎに、試験対象の変電所に存在する作業員が、携帯端末8を操作することにより、電話自動応答装置4に対し通話を開始する。通話の開始後、携帯端末8経由で作業番号が入力されると、電話自動応答装置4の電話接続制御部41は、当該通話の発信元の電話番号と、入力された作業番号と、の組み合わせが、電話番号作業番号テーブルに存在するか否かを確認し(ステップS2)、存在する場合(ステップS2 Yes)は電話自動応答装置4との接続を許可し、携帯端末8からの試験番号の入力を待機する。
【0023】
そして、携帯端末8から指令員により試験番号が入力される(ステップS3)と、携帯端末8は試験番号を電話自動応答装置4へ送信する。電話自動応答装置4の試験番号設定部42は、入力された試験番号が保持している試験番号テーブルに存在するか否かを確認し(ステップS4)、存在しない場合(ステップS4 No)には、当該試験番号を破棄し、応答生成部43を経由して試験番号が不正であることを携帯端末8へ通知し、携帯端末8との接続を終了し、処理を終了する。なお、この際、試験番号が不正であることを携帯端末8へ通知した後、接続を終了せずに、試験番号の再入力を促し、ステップS3に戻るようにしてもよい。
【0024】
なお、試験番号テーブルには、試験で用いられる試験番号(試験番号情報)があらかじめ格納されているとする。または、上述のステップS1で試験番号についても設定するようにし、中央処理装置2が電話自動応答装置4へ、設定された試験番号を通知するようにしてもよい。
【0025】
ステップS4で、入力された試験番号が保持している試験番号テーブルに存在する場合(ステップS4 Yes)には、試験番号設定部42は当該試験番号を中央処理装置2へ送信するよう中央処理装置通信部44へ指示し、中央処理装置通信部44が中央処理装置2へ当該試験番号を通知する(ステップS5)。
【0026】
試験番号を通知された中央処理装置2では、機器制御部22が、受信した試験番号を検索キーとして試験番号指令対応テーブルを検索し、検索して得られた情報に基づいて操作対象の機器に対して制御信号を送信する(ステップS6)。具体的には、機器制御部22は、操作対象の機器と操作内容を格納した制御データを生成する。そして、機器制御部22は、試験系アドレステーブルを参照して、試験系として設定されている通信装置(ここでは一例として通信装置9−Nとする)のIPアドレスを取得し、生成した制御信号データを、当該IPアドレスを宛先として送信する。制御信号データを受信した通信装置9−Nは、受信した制御信号データに基づいて操作対象機器を操作するための制御信号を送信する。
【0027】
なお、試験番号指令対応テーブルは、試験番号と当該番号に対応する操作内容との対応を格納したテーブルであり、あらかじめ操作卓6を経由して指令員が設定しておくようにしてもよいし、上述のステップS1で試験番号指令対応テーブルの設定を行なうようにしてもよい。
【0028】
また、試験番号が変電所を識別する情報を含む場合には、ステップS6の前に、試験番号に対応する変電所の通信装置のIPアドレスが試験系アドレステーブルに格納されているか否かを確認し、試験番号に対応する変電所の通信装置のIPアドレスが試験系アドレステーブルに格納されている場合にステップS6を実施するようにしてもよい。この場合、試験番号に対応する変電所の通信装置のIPアドレスが試験系アドレステーブルに格納されていない場合には、試験番号が不正であることを携帯端末8へ通知して処理を終了する。
【0029】
また、ここでは、1回の試験で1つの変電所を試験対象とすることを前提としているが、2つ以上の変電所を試験対象とする場合には、試験番号に変電所を識別する情報を含めておき、試験番号に基づいて宛先の通信装置のIPアドレスを求めればよい。
【0030】
通信装置9−Nから制御信号を受信した変電所機器10−Nを構成する機器は、制御信号に基づいた動作を行い、その動作の応動を通信装置9−N経由で中央処理装置2へ送信する(ステップS7)。例えば、電源投入の操作の場合には、電源が投入されたことを示す(または投入されなかったことを示す)信号を応動として送信する。
【0031】
中央処理装置2では、機器制御部22が、通信装置3経由で通信装置9−Nから受信した応動を、電話自動応答制御部23を経由して電話自動応答装置4へ送信する(ステップS8)。電話自動応答装置4では、中央処理装置通信部44が応動を受信すると、受信した応動を応答生成部43へ通知し、応答生成部43は、応答テーブルを検索して、通知された応動に対応する応答メッセージ等を取得し、携帯端末8へ送信する。携帯端末8は、受信した応答メッセージ等を画面表示または音声出力し(ステップS9)、処理を終了する。ステップS9により、試験現場の試験員が応動結果を確認することができる。
【0032】
応答テーブルには、応動と当該応動に対応する携帯端末8へ送信する応答メッセージや画像データ等と、が対応づけられて格納されているとする。応答テーブルは、あらかじめ設定しておくこととする。
【0033】
一方、ステップS2で、通話の発信元の電話番号と、入力された作業番号と、の組み合わせが、電話番号作業番号テーブルに存在しない場合(ステップS2 No)は、電話接続制御部41は、携帯端末8との接続を終了し、処理を終了する。なお、この際、応答生成部43に接続不可を通知し、応答生成部43が接続不可である旨を携帯端末8へ通知するようにしてもよい。
【0034】
なお、1つの試験番号に対応する操作が終了した後(携帯端末8に応動結果が表示された後)に、通話を継続して次の試験番号に対応する操作を受け付けるようにしてもよい。例えば、ステップS9の後に、電話自動応答装置4は、次の試験番号を入力するか否かの選択を促す画面または音声等のデータを携帯端末8へ送信する。そして、電話自動応答装置4は、携帯端末8からの次の試験番号を入力するか否かの選択結果を受信し、次の試験番号を入力する選択結果を受信した場合に、ステップS3以降の処理を繰り返すようにする。
【0035】
なお、上述の例では、ステップS2で、電話番号と作業番号の組み合わせに基づいて、携帯端末8からの試験番号の入力を受け付けるか否かを判断するようにしたが、電話番号、作業番号のいずれか一方に基づいて携帯端末8からの試験番号の入力を受け付けるか否かを判断するようにしてもよい。また、作業番号の代わりに、別途定めた暗証番号等を用いることとし、中央処理装置2が携帯端末8と暗証番号等の対応を保持し、携帯端末8から入力された暗証番号が保持している暗証番号に一致するか否かに基づいて試験番号の入力を受け付けるか否かを判断するようにしてもよい。
【0036】
また、上述の例では、試験系アドレステーブルを用いて試験番号に対応する制御信号データを送信することにより、試験系として設定されている装置以外へ制御信号データが誤って送信されることを防いでいる。すなわち、試験系アドレステーブルは、試験系の装置を識別する試験系装置情報としての役割も有する。なお、試験系装置情報としてIPアドレス以外の装置の識別情報を用いるようにしてもよい。そして、制御信号データの送信時には、別途保持している装置毎のIPアドレス情報を用いて、試験系装置情報に格納されている装置のIPアドレスを求めるようにしてもよい。
【0037】
また、上述の例では、ステップS4で、試験番号テーブルに入力された試験番号が存在するかを確認しているが、ステップS4の処理を行わずにステップS3の後にステップS5へ進むようにしてもよい。この場合、試験番号設定部42を備える必要はない。ただし、この場合、電話自動応答装置4が、試験番号が不正であるか否かの確認を行わないため、中央処理装置2が、試験番号が不正か否かを判断することになる。例えば、中央処理装置2の機器制御部22または電話自動応答制御部23が、試験番号指令対応テーブルを参照して、当該テーブルに受信した試験番号が存在する場合に、ステップS6の処理を行うこととし、当該テーブルに受信した試験番号が存在しない場合には、電話自動応答装置4にその旨を通知する。電話自動応答装置4は、この通知を受信すると、試験番号が不正である旨を示すメッセージ等を携帯端末8に送信する。
【0038】
つぎに、本実施の形態の運用系の制御について説明する。指令員が操作卓5を操作することにより各機器の動作を指示し、中央処理装置1が、操作卓5が受け付けた動作指示に基づいて、ここでは、変電所機器10−1〜10−(N−1)が運用系であるとすると、変電所機器10−1〜10−(N−1)を操作するための制御信号を生成し、通信装置3経由で各変電所へ送信する。変電所機器10−1〜10−(N−1)の操作の制御方法は、中央処理装置2が行う試験系の制御方法と同様である。
【0039】
なお、運用系についても、試験系と同様に操作卓5により運用系の対象装置として、通信装置9−1〜9−(N−1)を指定してもよい。または、中央処理装置1は、中央処理装置(試験系)2から試験系として設定された変電所機器の情報を取得し、変電所機器10−1〜10−Nのうち試験系として設定されたた変電所機器を除いた変電所機器を運用系の変電所機器として把握するようにしてもよい。
【0040】
また、運用系の制御にも電話自動応答装置4を用いるようにしてもよい。この場合、中央処理装置1は、運用系の装置が設定の際に、運用系の操作を行う携帯端末8の電話番号と作業番号との対応についても操作卓5経由で取得し、この対応を電話番号作業番号テーブルとして保持する。また、中央処理装置1は、電話番号作業番号テーブルの内容を運用系作業番号情報として電話自動応答装置4へ送信する。電話自動応答装置4では、電話番号作業番号テーブルを運用系と試験系とを区別して保持することとし、電話番号作業番号テーブルの運用系の情報としては中央処理装置1から取得した運用系作業番号情報を格納し、試験系の情報としては中央処理装置2から取得した作業番号情報を格納する。なお、電話自動応答装置4は、電話番号作業番号テーブルを運用系と試験系で別テーブルとして保持するようにしてもよい。
【0041】
図5は、運用系の制御にも電話自動応答装置4を用いる場合の制御手順の一例を示すフローチャートである。図5を用いて運用系の制御にも電話自動応答装置4を用いる場合の動作を説明する。通常運用については、上述のように運用系の装置の設定や電話番号作業番号テーブルの設定が終了しているとする。まず、図4の例と同様にステップS1を実施する。その後、電話接続制御部41は、携帯端末8から入力された作業番号と、送信元の携帯端末8の電話番号と、の組み合わせが、電話番号作業番号テーブルの試験系の情報に存在する(試験系用番号である)か否かを確認し(ステップS11)、試験系用番号である場合(ステップS11 Yes)には、試験系用処理を実施する(ステップS12)。試験系用処理としては、図4を用いて説明したステップS3以降の処理を実施する。
【0042】
ステップS11で、試験系用番号でない場合(ステップS11 No)、携帯端末8から入力された作業番号と、送信元の携帯端末8の電話番号と、の組み合わせが、電話番号作業番号テーブルの運用系の情報に存在する(運用系用番号である)か否かを確認し(ステップS13)、運用系用番号である場合(ステップS13 Yes)、運用系用処理を実施する(ステップS14)。運用系用処理としては、図4を用いて説明したステップS3以降の処理と同様の処理を実施するが、ステップS3では試験番号の代わりに運用系の操作内容を示す運用操作番号が入力されることとする。運用操作番号については、試験番号と同様に電話自動応答装置4が運用操作番号テーブルを保持することとし、ステップS4では、運用操作番号テーブルに、入力された運用操作番号が存在するかを確認する。運用操作番号が、運用操作番号テーブルに存在するか否かの判断は、試験番号設定部42が行なってもよいし、別途運用操作番号設定部を設けて、運用操作番号設定部が行なってもよい。
【0043】
そして、ステップS5では、中央処理装置通信部44が、運用操作番号を中央処理装置1へ送信する。また、ステップS6〜ステップS8では、中央処理装置2の動作を中央処理装置1が実施する。これら以外の運用系用処理は、試験系用処理と同様である。
【0044】
ステップS13で、運用系用番号でない場合(ステップS13 No)、電話接続制御部41は、携帯端末8との接続を終了し、処理を終了する。なお、この際、応答生成部43に接続不可を通知し、応答生成部43が接続不可である旨を携帯端末8へ通知するようにしてもよい。
【0045】
なお、作業番号については、運用用と試験用とで、とり得る値が互いに重ならないような番号として設定しておくことが望ましい。例えば、試験用の作業番号は「A001」のように、Aで始まる番号とし、運用用の作業番号は「B001」のように、Bで始まる番号とする。このように作業番号を定めておくと、作業番号に基づいて、運用系の作業か試験系を作業かを識別することができる。この場合、ステップS11とステップS13の代わりに、まず作業番号が運用用であるか試験用であるかを判定し、運用用である場合には電話番号作業番号テーブルの運用系の情報を参照して運用系用処理(ステップS14)を行なうか否かを判定し、試験用である場合には電話番号作業番号テーブルの試験系の情報を参照して運用系用処理(ステップS12)を行なうか否かを判定する処理を行うことができる。また、運用操作番号と試験番号についても、互いに異なる体系の番号として設定しておいてもよい。
【0046】
なお、シーケンス試験は常時行われるわけではないため、シーケンス試験が実施されていない場合には、中央処理装置2を中央処理装置1のバックアップ系として運用してもよい。この場合、中央処理装置2は、本実施の形態で説明した機能に加え、運用系を制御する機能(中央処理装置1としての機能)をさらに備える。
【0047】
以上のように、本実施の形態では、運用系として設定されている通信装置9−1〜9−NのIPアドレスを中央処理装置1が管理し、試験系として設定されている通信装置9−1〜9−NのIPアドレスを中央処理装置2が管理することにより、運用系として設定されている機器と試験系として設定されている機器とを分離して管理することができる。そのため、通常運用を継続しつつ、シーケンス試験を実施する場合にも、運用系に影響を及ぼすことなくシーケンス試験を実施することができる。
【0048】
また、運用系の制御にも電話自動応答装置4を用いる場合には、1台の電話自動応答装置4を用いて、運用系および試験系の両方の制御について指令員の作業負荷を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかる変電所監視制御システム、変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置および変電所監視制御システムにおける試験方法は、鉄道設備として設置される変電所監視制御システムに有用であり、特に、通常運用を継続しつつ、シーケンス試験を実施する変電所監視制御システムに適している。
【符号の説明】
【0050】
1,2 中央処理装置
3,9−1〜9−N 通信装置
4 電話自動応答装置
5,6 操作卓
7 公衆網
8 携帯端末
10−1〜10−N 変電所機器
21 試験系設定部
22 機器制御部
23 電話自動応答制御部
41 電話接続制御部
42 試験番号設定部
43 応答生成部
44 中央処理装置通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を介してネットワークで接続された複数の変電所の変電所機器を監視制御する変電所監視制御システムであって、
前記複数の変電所のうち、通常運用を行なう運用系の前記変電所の変電所機器を、前記ネットワークを介して監視制御する第1の中央処理装置と、
この第1の中央処理装置で監視制御する運用系の前記変電所以外の変電所で試験を行なう試験系の前記変電所の変電所機器を前記ネットワークを介して監視制御する第2の中央処理装置と、
作業員が所持する携帯端末からの着信の電話番号が試験系の前記変電所の変電所機器の作業に用いる電話番号として電話番号作業番号テーブルに予め登録済みの場合には前記携帯端末の接続を許可して前記携帯端末からの試験番号の送信を待機する電話接続制御部と、
前記携帯電話から送信された試験番号が試験番号テーブルに予め登録済みの場合には前記試験番号を前記第2の中央処理装置へ送信する中央処理装置通信部と、
を有する電話自動応答装置と、
を備え、
前記第2の中央処理装置は、
前記携帯端末から受信した前記試験番号に基づいて、試験番号指定対応テーブルの情報の中から、対応する対象機器に対する制御信号を前記試験系の前記変電所の前記対象機器へ送信して、前記制御信号に対する前記対象機器の応動結果を前記電話自動応答装置へ送信し、
前記電話自動応答装置は、
前記第2の中央処理装置から受信した前記試験番号に対応する前記対象機器の前記応動結果を前記携帯端末へ送信して、
運用系の前記変電所で通常運用を継続しながら試験系の前記変電所で試験を行なう、
ことを特徴とする変電所監視制御システム。
【請求項2】
前記電話接続制御部は、前記電話番号作業番号テーブルとして、試験系の操作に用いる電話番号と作業番号との対応を保持し、前記携帯端末から作業番号を受信し、前記作業番号と前記電話番号作業番号テーブルとに基づいて前記作業番号が当該携帯端末の電話番号に対応する作業番号であるか否かを判断し、当該携帯端末の電話番号に対応する作業番号である場合に当該携帯端末の接続を許可する、
ことを特徴とする請求項1に記載の変電所監視制御システム。
【請求項3】
接続可と判定された前記携帯端末から受信した前記試験番号が、前記試験番号テーブルに格納されている場合に当該試験番号を前記中央処理装置通信部へ渡し、格納されていない場合に当該試験番号を破棄し前記携帯端末へ試験番号が不正である旨を通知する試験番号設定部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の変電所監視制御システム。
【請求項4】
前記電話接続制御部は、前記携帯端末の電話番号が運用系の操作に用いる電話番号として登録済みの電話番号である場合に、当該携帯端末の接続を許可し、
前記中央処理装置通信部は、接続を許可された前記携帯端末から受信した運用操作番号を前記第1の中央処理装置へ送信し、また前記第1の中央処理装置から受信した当該試験番号に対応する応動結果を前記携帯端末へ送信し、
前記第1の中央処理装置は、
受信した前記運用操作番号に対応する操作内容を指示する運用系制御信号を生成し、運用系として登録されている前記変電所機器へ前記運用系制御信号を送信し、前記変電所機器から送信された当該運用系制御信号に対する応動結果を前記電話自動応答装置へ送信する機器制御部、
を備える、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の変電所監視制御システム。
【請求項5】
前記電話接続制御部は、運用系の操作に用いる、電話番号と作業番号との対応を運用系作業番号情報として保持し、前記携帯端末から作業番号を受信し、前記作業番号と前記運用系作業番号情報とに基づいて前記作業番号が当該携帯端末の電話番号に対応する作業番号であるか否かを判断し、当該携帯端末の電話番号に対応する作業番号である場合に当該携帯端末の接続を許可する、
ことを特徴とする請求項4に記載の変電所監視制御システム。
【請求項6】
通信装置を介してネットワークで接続された複数の変電所の変電所機器を監視制御する変電所監視制御システムにおいて、前記複数の変電所のうち、通常運用を行なう運用系の前記変電所の変電所機器を、前記ネットワークを介して監視制御する第1の中央処理装置と、この第1の中央処理装置で監視制御する運用系の前記変電所以外の変電所で試験を行なう試験系の前記変電所の変電所機器を前記ネットワークを介して監視制御する第2の中央処理装置と、ともに前記変電所監視制御システムを構成する電話自動応答装置であって、
作業員が所持する携帯端末からの着信の電話番号が試験系の前記変電所の変電所機器の作業に用いる電話番号として電話番号作業番号テーブルに予め登録済みの場合には前記携帯端末の接続を許可して前記携帯端末からの試験番号の送信を待機する電話接続制御部と、
作業員が所持する携帯端末からの着信の電話番号が試験系の前記変電所の変電所機器の作業に用いる電話番号として電話番号作業番号テーブルに予め登録済みの場合には前記携帯端末の接続を許可して前記携帯端末からの試験番号の送信を待機する電話接続制御部と、
前記携帯電話から送信された試験番号が試験番号テーブルに予め登録済みの場合には前記試験番号を前記第2の中央処理装置へ送信する中央処理装置通信部と、
を備え、
前記第2の中央処理装置から受信した前記試験番号に対応する対象機器の応動結果を前記携帯端末へ送信する、
ことを特徴とする変電所監視制御システムにおける電話自動応答装置。
【請求項7】
通信装置を介してネットワークで接続された複数の変電所の変電所機器を監視制御する変電所監視制御システムにおける試験方法であって、
前記変電所監視制御システムは、
前記複数の変電所のうち、通常運用を行なう運用系の前記変電所の変電所機器を、前記ネットワークを介して監視制御する第1の中央処理装置と、
この第1の中央処理装置で監視制御する運用系の前記変電所以外の変電所で試験を行なう試験系の前記変電所の変電所機器を前記ネットワークを介して監視制御する第2の中央処理装置と、
電話自動応答装置と、
を備え、
前記電話自動応答装置が、作業員が所持する携帯端末からの着信の電話番号が試験系の前記変電所の変電所機器の作業に用いる電話番号として電話番号作業番号テーブルに予め登録済みの場合には前記携帯端末の接続を許可して前記携帯端末からの試験番号の送信を待機する第1のステップと、
前記電話自動応答装置が、前記携帯電話から送信された試験番号が試験番号テーブルに予め登録済みの場合には前記試験番号を前記第2の中央処理装置へ送信する第2のステップと、
前記第2の中央処理装置が、前記携帯端末から受信した前記試験番号に基づいて、試験番号指定対応テーブルの情報の中から、対応する対象機器に対する制御信号を前記試験系の前記変電所の前記対象機器へ送信して、前記制御信号に対する前記対象機器の応動結果を前記電話自動応答装置へ送信する第3のステップと、
前記電話自動応答装置が、前記第2の中央処理装置から受信した前記試験番号に対応する前記対象機器の前記応動結果を前記携帯端末へ送信する第4のステップと、
を含み、
運用系の前記変電所で通常運用を継続しながら試験系の前記変電所で試験を行なう、
ことを特徴とする変電所監視制御システムにおける試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39442(P2012−39442A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178528(P2010−178528)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】