外壁材の固定構造
【課題】火災時において外壁材の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができる外壁材の固定構造を提供する。
【解決手段】外壁材1をビス2を用いて木製の柱3に固定して形成された外壁材の固定構造に関する。ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱3の非欠損部分4に到達する深さまで前記ビス2が前記柱3に打入されている。
【解決手段】外壁材1をビス2を用いて木製の柱3に固定して形成された外壁材の固定構造に関する。ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱3の非欠損部分4に到達する深さまで前記ビス2が前記柱3に打入されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅等の建物において外壁パネルは次のようにして固定されている。すなわち、杉材で形成された柱に木製の平板で形成された通気胴縁を釘により固定した後、この通気胴縁に外壁パネルを釘等により固定するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の外壁パネルの固定方法では、火災時において柱の一部が燃焼や炭化により欠損すると、外壁パネルを固定している釘等が抜け落ちるなどして外壁パネルが脱落するおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、火災時において外壁材の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができる外壁材の固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る外壁材の固定構造は、外壁材をビスを用いて木製の柱に固定して形成された外壁材の固定構造であって、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱の非欠損部分に到達する深さまで前記ビスが前記柱に打入されていることを特徴とするものである。
【0007】
前記外壁材の固定構造において、前記外壁材が複数突き合わされて配置され、前記外壁材の突き合わせ部と前記柱との間に目板材が介在していることが好ましい。
【0008】
前記外壁材の固定構造において、前記柱に前記ビスを用いて留め金具が固定され、前記留め金具に前記外壁材が取り付けられて固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、火災時において柱の一部が燃焼や炭化により欠損しても、外壁材を直接的又は間接的に柱に固定しているビスが柱の非欠損部分に打入されていることによって、外壁材の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る外壁材の固定構造の一例を示すものであり、(a)は水平断面図、(b)は斜視図、(c)は柱の最下部の斜視図である。
【図2】本発明に係る外壁材の固定構造の他の一例を示す水平断面図である。
【図3】(a)は目板材の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図4】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図5】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図6】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図7】耐火性能試験におけるISO標準加熱曲線を示すグラフである。
【図8】耐火性能試験後の柱の一例を示す水平断面図である。
【図9】試験体の一例を示す正面図である。
【図10】(a)は実施例の各層平均温度を示すグラフ、(b)は実施例の各部最高温度を示すグラフである。
【図11】(a)は比較例の各層平均温度を示すグラフ、(b)は比較例の各部最高温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明に係る外壁材の固定構造の一例を示すものであり、これは外壁材1をビス2を用いて木製の柱3に固定して形成されている。外壁材1の固定構造を形成するにあたっては、さらに目板材6及び留め金具7も用いられている。なお、本発明においてビス2を用いた外壁材1の柱3への固定には、図1のように留め金具7を用いて外壁材1を間接的に柱3に固定する場合と、図2のように外壁材1の屋外面からビス2を打入して外壁材1を直接的に柱3に固定する場合の両方が含まれる。
【0013】
まず外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7について説明する。
【0014】
外壁材1としては、セメントを主成分とする窯業系材料を略平板状の矩形状に形成したものを用いることができる。外壁材1の上端面の屋内側には実部8が突設されている。外壁材1の下端面の屋外側には覆い部(図示省略)が突設され、屋内側には溝部(図示省略)が凹設されている。
【0015】
柱3としては、76〜165mm×84〜165mmの断面矩形状の杉材等を用いることができる。
【0016】
目板材6としては、図3(a)及び図6(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を複数長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーや、図4(a)及び図5(a)のように長尺平板部9に断面略U字状の突条部11を1つ又は複数長手方向に設けて形成されたハット型ジョイナー等を用いることができる。これらの目板材6は、鋼板やアルミ板等を折曲加工して形成することができる。なお、目板材6の幅は、30〜100mm程度である。
【0017】
留め金具7としては、固定片12、上向き係止片13及び下向き係止片14を設けて形成されたものを用いることができる。なお、柱3の最下部に固定される留め金具7(スタータ金具15)は、図1(c)のように固定片12及び上向き係止片13を設けて形成され、下向き係止片14を有しない。
【0018】
次に、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用いて、図1のような外壁材の固定構造を形成する方法について説明する。
【0019】
まず、所定間隔で立設された柱3の屋外側に防水紙16を張設し、この防水紙16を介して柱3の屋外面に木製長尺状の縦胴縁17を設置する。図示省略しているが、防水紙16より屋内側において隣り合う柱3間には断熱材としてロックウール(RW)を設置する。
【0020】
次に、縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付ける。この留付は、上下方向に300〜1000mmピッチの釘留めにより行うことができるが、釘留めによらずに後述のように目板材6に留め金具7(スタータ金具15も含む)を重ねて押圧することにより行うこともできる。以下では目板材6として、図5(a)のように長尺平板部9の略中央部に断面略U字状の突条部11を1つ長手方向に設けて形成されたハット型ジョイナーを用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
次に、図1(c)のように柱3の最下部において目板材6の両側にスタータ金具15を重ね、これらのスタータ金具15をビス2を用いて柱3に固定する。このとき目板材6とスタータ金具15との重なり部分の寸法(かかり寸法)は、10〜30mm程度である。また、ビス2はこれ以降もスタータ金具15以外の留め金具7を柱3に固定する際に用い、本発明ではビス2と柱3との関係が重要であるが、この関係については後述する。なお、ビス2は目板材6を貫通してもしなくてもよい。
【0022】
その後、複数の外壁材1を突き合わせて配置する。このとき形成される突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が当接するように形成されていてもよいが、図1では隣り合う外壁材1の対向する側端面で目板材6の突条部11を挟み込むように形成されている。いずれの場合も外壁材1の突き合わせ部5と柱3との間には目板材6が介在しているので、火炎が屋外から外壁材1の突き合わせ部5を通って侵入しても、目板材6の遮炎性によって柱3の燃焼や炭化を抑制したり遅延させたりすることができるものである。そして、外壁材1の下端面の溝部にスタータ金具15の上向き係止片13を嵌合させてスタータ金具15に外壁材1を取り付けて仮固定する。
【0023】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねる。このとき目板材6と留め金具7との重なり部分の寸法(かかり寸法)は、10〜30mm程度である。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定する。このような外壁材1の固定を下から上に必要に応じて繰り返すことによって、外壁材1の固定構造を形成することができる。
【0024】
目板材6として図3(a)、図4(a)、図5(a)及び図6(a)を用いて形成された外壁材1の固定構造をそれぞれ図3(b)、図4(b)、図5(b)及び図6(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0025】
ここで、ビス2と柱3との関係について説明する。本発明では、実際に外壁材1の固定構造を木造住宅等の建物において形成する前に、同一の素材で図9のような試験体18を製造し、この試験体18を加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行う。ISO標準加熱曲線は、図7に示すように、T=345log10(8t+1)+20(T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分))という式で表される。そしてこの耐火性能試験を行うと、図8のように試験体18の柱3のうち特に屋外面の角部が燃焼や炭化により欠損し、その他の部分が残存することが確認される。図8の上部が屋外側、下部が屋内側である。このように、この耐火性能試験により柱の欠損部分19と非欠損部分4とをあらかじめ把握することができるので、実際の外壁材1の固定構造では、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する柱3の非欠損部分4に到達する深さまでビス2を柱3に打入するようにしている。本発明ではビス2と柱3とがこのような関係を有しているため、火災時において柱3の一部が燃焼や炭化により欠損しても、外壁材1を直接的又は間接的に柱3に固定しているビス2が柱3の非欠損部分4に打入されていることによって、外壁材1の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができるものである。
【0026】
図8のように柱3の屋外面において中央部は欠損しにくいので短いビス2を用いることができ、両端部は欠損しやすいので長いビス2を用いる必要がある。例えば、105mm×105mmの断面矩形状の杉材を柱3として用いる場合、中央部からの距離D1と欠損寸法D2との関係は以下の通りである。
【0027】
【表1】
【0028】
表1からD1=10mm、20mm、30mmの箇所にビス2を打入する場合にはそれぞれ8.5mm超、11.0mm超、17.5mm超の長さのビス2を用いるようにすれば、火災時において柱3の一部が欠損してもビス2が抜け落ちないものと考えられる。なお、D1=0mmの箇所には、通常、突き合わせ部5が形成されるので、この位置にはビス2は打入されない。
【0029】
本発明では外壁材1を直接的又は間接的に柱3に固定することができるが、図2のように外壁材1を直接的に柱3に固定する場合に比べて、図1のように留め金具7を用いて外壁材1を間接的に柱3に固定する場合の方が、ビス2を打入すべき箇所を容易に確認することができるものである。すなわち、ビス2を打入すべき箇所は、柱3の屋外面において欠損しにくい特定の箇所であるが、留め金具7に比べて面積の大きい外壁材1では上記の箇所が上下方向において大幅に隠れてしまうので、上記の箇所を狙ってビス2を打入することが困難になる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0031】
(実施例)
外壁材1として、セメントを主成分とする窯業系材料を略平板状の矩形状に形成したものを用いた。外壁材1の上端面の屋内側には実部8が突設されている。外壁材1の下端面の屋外側には覆い部が突設され、屋内側には溝部が凹設されている。
【0032】
柱3として、105mm×105mmの断面矩形状の杉材を用いた。
【0033】
目板材6として、図6(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を2つ長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーを用いた。この目板材6は、鋼板を折曲加工して形成されている。目板材6の幅は66mmである。
【0034】
留め金具7としては、固定片12、上向き係止13片及び下向き係止片14を設けて形成されたものを用いた。
【0035】
そして、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用い、次のようにして外壁材の固定構造が形成された試験体18を製造した。
【0036】
まず、柱3の屋外面に防水紙16を介して木製長尺状の縦胴縁17を設置した。防水紙16より屋内側には断熱材としてロックウール(RW)を設置した。縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付けた。この留付は、上下方向に600mmピッチの釘留めにより行った。
【0037】
次に、目板材6の両側に留め金具7を重ね、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定した。かかり寸法は20mmである。
【0038】
その後、2枚の外壁材1を突き合わせて配置した。突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が略当接するように形成されている。そして、外壁材1の下端面の溝部に留め金具7の上向き係止片13を嵌合させて留め金具7に外壁材1を取り付けて仮固定した。
【0039】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に別の留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねた。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定した。留め金具7の固定に用いたビス2の長さは38mmであり、柱3の屋外面における中央部から打入箇所までの距離D1=28mmである。上記のようにして図9のような試験体18を製造した。この試験体18における外壁材の固定構造を図6(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0040】
その後、上記の試験体18を小型加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行った。試験中における外壁材1の屋内面、RWの屋外面及び屋内面等の各層平均温度を図10(a)に示し、試験中における柱3及び縦胴縁17の各部最高温度を図10(b)に示す。試験の結果、いずれのビス2も抜け落ちず、外壁材1が脱落しないことが確認された。
【0041】
(比較例)
外壁材1、柱3及び留め金具7として、実施例と同様のものを用いた。
【0042】
目板材6として、図3(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を4つ長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーを用いた。この目板材6は、鋼板を折曲加工して形成されている。目板材6の幅は76mmである。
【0043】
そして、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用い、次のようにして外壁材の固定構造が形成された試験体18を製造した。
【0044】
まず、柱3の屋外面に防水紙16を介して木製長尺状の縦胴縁17を設置した。防水紙16より屋内側には断熱材としてロックウール(RW)を設置した。縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付けた。この留付は、上下方向に600mmピッチの釘留めにより行った。
【0045】
次に、目板材6の両側に留め金具7を重ね、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定した。かかり寸法は10mmである。
【0046】
その後、2枚の外壁材1を突き合わせて配置した。突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が略当接するように形成されている。そして、外壁材1の下端面の溝部に留め金具7の上向き係止片13を嵌合させて留め金具7に外壁材1を取り付けて仮固定した。
【0047】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に別の留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねた。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定した。留め金具7の固定に用いたビス2の長さは25mmであり、柱3の屋外面における中央部から打入箇所までの距離D1=43mmである。上記のようにして図9のような試験体18を製造した。この試験体18における外壁材の固定構造を図3(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0048】
その後、上記の試験体18を小型加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行った。試験中における外壁材1の屋内面、RWの屋外面及び屋内面等の各層平均温度を図11(a)に示し、試験中における柱3及び縦胴縁17の各部最高温度を図11(b)に示す。試験の結果、いずれのビス2も抜け落ちたり又は抜け落ちそうなものであり、外壁材1が脱落しそうであることが確認された。
【0049】
【表2】
【符号の説明】
【0050】
1 外壁材
2 ビス
3 柱
4 非欠損部分
5 突き合わせ部
6 目板材
7 留め金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅等の建物において外壁パネルは次のようにして固定されている。すなわち、杉材で形成された柱に木製の平板で形成された通気胴縁を釘により固定した後、この通気胴縁に外壁パネルを釘等により固定するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の外壁パネルの固定方法では、火災時において柱の一部が燃焼や炭化により欠損すると、外壁パネルを固定している釘等が抜け落ちるなどして外壁パネルが脱落するおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、火災時において外壁材の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができる外壁材の固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る外壁材の固定構造は、外壁材をビスを用いて木製の柱に固定して形成された外壁材の固定構造であって、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱の非欠損部分に到達する深さまで前記ビスが前記柱に打入されていることを特徴とするものである。
【0007】
前記外壁材の固定構造において、前記外壁材が複数突き合わされて配置され、前記外壁材の突き合わせ部と前記柱との間に目板材が介在していることが好ましい。
【0008】
前記外壁材の固定構造において、前記柱に前記ビスを用いて留め金具が固定され、前記留め金具に前記外壁材が取り付けられて固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、火災時において柱の一部が燃焼や炭化により欠損しても、外壁材を直接的又は間接的に柱に固定しているビスが柱の非欠損部分に打入されていることによって、外壁材の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る外壁材の固定構造の一例を示すものであり、(a)は水平断面図、(b)は斜視図、(c)は柱の最下部の斜視図である。
【図2】本発明に係る外壁材の固定構造の他の一例を示す水平断面図である。
【図3】(a)は目板材の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図4】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図5】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図6】(a)は目板材の他の一例を示す水平断面図、(b)は(a)の目板材を用いて形成された外壁材の固定構造の一例を示す水平断面図である。
【図7】耐火性能試験におけるISO標準加熱曲線を示すグラフである。
【図8】耐火性能試験後の柱の一例を示す水平断面図である。
【図9】試験体の一例を示す正面図である。
【図10】(a)は実施例の各層平均温度を示すグラフ、(b)は実施例の各部最高温度を示すグラフである。
【図11】(a)は比較例の各層平均温度を示すグラフ、(b)は比較例の各部最高温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明に係る外壁材の固定構造の一例を示すものであり、これは外壁材1をビス2を用いて木製の柱3に固定して形成されている。外壁材1の固定構造を形成するにあたっては、さらに目板材6及び留め金具7も用いられている。なお、本発明においてビス2を用いた外壁材1の柱3への固定には、図1のように留め金具7を用いて外壁材1を間接的に柱3に固定する場合と、図2のように外壁材1の屋外面からビス2を打入して外壁材1を直接的に柱3に固定する場合の両方が含まれる。
【0013】
まず外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7について説明する。
【0014】
外壁材1としては、セメントを主成分とする窯業系材料を略平板状の矩形状に形成したものを用いることができる。外壁材1の上端面の屋内側には実部8が突設されている。外壁材1の下端面の屋外側には覆い部(図示省略)が突設され、屋内側には溝部(図示省略)が凹設されている。
【0015】
柱3としては、76〜165mm×84〜165mmの断面矩形状の杉材等を用いることができる。
【0016】
目板材6としては、図3(a)及び図6(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を複数長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーや、図4(a)及び図5(a)のように長尺平板部9に断面略U字状の突条部11を1つ又は複数長手方向に設けて形成されたハット型ジョイナー等を用いることができる。これらの目板材6は、鋼板やアルミ板等を折曲加工して形成することができる。なお、目板材6の幅は、30〜100mm程度である。
【0017】
留め金具7としては、固定片12、上向き係止片13及び下向き係止片14を設けて形成されたものを用いることができる。なお、柱3の最下部に固定される留め金具7(スタータ金具15)は、図1(c)のように固定片12及び上向き係止片13を設けて形成され、下向き係止片14を有しない。
【0018】
次に、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用いて、図1のような外壁材の固定構造を形成する方法について説明する。
【0019】
まず、所定間隔で立設された柱3の屋外側に防水紙16を張設し、この防水紙16を介して柱3の屋外面に木製長尺状の縦胴縁17を設置する。図示省略しているが、防水紙16より屋内側において隣り合う柱3間には断熱材としてロックウール(RW)を設置する。
【0020】
次に、縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付ける。この留付は、上下方向に300〜1000mmピッチの釘留めにより行うことができるが、釘留めによらずに後述のように目板材6に留め金具7(スタータ金具15も含む)を重ねて押圧することにより行うこともできる。以下では目板材6として、図5(a)のように長尺平板部9の略中央部に断面略U字状の突条部11を1つ長手方向に設けて形成されたハット型ジョイナーを用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
次に、図1(c)のように柱3の最下部において目板材6の両側にスタータ金具15を重ね、これらのスタータ金具15をビス2を用いて柱3に固定する。このとき目板材6とスタータ金具15との重なり部分の寸法(かかり寸法)は、10〜30mm程度である。また、ビス2はこれ以降もスタータ金具15以外の留め金具7を柱3に固定する際に用い、本発明ではビス2と柱3との関係が重要であるが、この関係については後述する。なお、ビス2は目板材6を貫通してもしなくてもよい。
【0022】
その後、複数の外壁材1を突き合わせて配置する。このとき形成される突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が当接するように形成されていてもよいが、図1では隣り合う外壁材1の対向する側端面で目板材6の突条部11を挟み込むように形成されている。いずれの場合も外壁材1の突き合わせ部5と柱3との間には目板材6が介在しているので、火炎が屋外から外壁材1の突き合わせ部5を通って侵入しても、目板材6の遮炎性によって柱3の燃焼や炭化を抑制したり遅延させたりすることができるものである。そして、外壁材1の下端面の溝部にスタータ金具15の上向き係止片13を嵌合させてスタータ金具15に外壁材1を取り付けて仮固定する。
【0023】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねる。このとき目板材6と留め金具7との重なり部分の寸法(かかり寸法)は、10〜30mm程度である。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定する。このような外壁材1の固定を下から上に必要に応じて繰り返すことによって、外壁材1の固定構造を形成することができる。
【0024】
目板材6として図3(a)、図4(a)、図5(a)及び図6(a)を用いて形成された外壁材1の固定構造をそれぞれ図3(b)、図4(b)、図5(b)及び図6(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0025】
ここで、ビス2と柱3との関係について説明する。本発明では、実際に外壁材1の固定構造を木造住宅等の建物において形成する前に、同一の素材で図9のような試験体18を製造し、この試験体18を加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行う。ISO標準加熱曲線は、図7に示すように、T=345log10(8t+1)+20(T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分))という式で表される。そしてこの耐火性能試験を行うと、図8のように試験体18の柱3のうち特に屋外面の角部が燃焼や炭化により欠損し、その他の部分が残存することが確認される。図8の上部が屋外側、下部が屋内側である。このように、この耐火性能試験により柱の欠損部分19と非欠損部分4とをあらかじめ把握することができるので、実際の外壁材1の固定構造では、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する柱3の非欠損部分4に到達する深さまでビス2を柱3に打入するようにしている。本発明ではビス2と柱3とがこのような関係を有しているため、火災時において柱3の一部が燃焼や炭化により欠損しても、外壁材1を直接的又は間接的に柱3に固定しているビス2が柱3の非欠損部分4に打入されていることによって、外壁材1の脱落を抑制し、耐火性能を高めることができるものである。
【0026】
図8のように柱3の屋外面において中央部は欠損しにくいので短いビス2を用いることができ、両端部は欠損しやすいので長いビス2を用いる必要がある。例えば、105mm×105mmの断面矩形状の杉材を柱3として用いる場合、中央部からの距離D1と欠損寸法D2との関係は以下の通りである。
【0027】
【表1】
【0028】
表1からD1=10mm、20mm、30mmの箇所にビス2を打入する場合にはそれぞれ8.5mm超、11.0mm超、17.5mm超の長さのビス2を用いるようにすれば、火災時において柱3の一部が欠損してもビス2が抜け落ちないものと考えられる。なお、D1=0mmの箇所には、通常、突き合わせ部5が形成されるので、この位置にはビス2は打入されない。
【0029】
本発明では外壁材1を直接的又は間接的に柱3に固定することができるが、図2のように外壁材1を直接的に柱3に固定する場合に比べて、図1のように留め金具7を用いて外壁材1を間接的に柱3に固定する場合の方が、ビス2を打入すべき箇所を容易に確認することができるものである。すなわち、ビス2を打入すべき箇所は、柱3の屋外面において欠損しにくい特定の箇所であるが、留め金具7に比べて面積の大きい外壁材1では上記の箇所が上下方向において大幅に隠れてしまうので、上記の箇所を狙ってビス2を打入することが困難になる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0031】
(実施例)
外壁材1として、セメントを主成分とする窯業系材料を略平板状の矩形状に形成したものを用いた。外壁材1の上端面の屋内側には実部8が突設されている。外壁材1の下端面の屋外側には覆い部が突設され、屋内側には溝部が凹設されている。
【0032】
柱3として、105mm×105mmの断面矩形状の杉材を用いた。
【0033】
目板材6として、図6(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を2つ長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーを用いた。この目板材6は、鋼板を折曲加工して形成されている。目板材6の幅は66mmである。
【0034】
留め金具7としては、固定片12、上向き係止13片及び下向き係止片14を設けて形成されたものを用いた。
【0035】
そして、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用い、次のようにして外壁材の固定構造が形成された試験体18を製造した。
【0036】
まず、柱3の屋外面に防水紙16を介して木製長尺状の縦胴縁17を設置した。防水紙16より屋内側には断熱材としてロックウール(RW)を設置した。縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付けた。この留付は、上下方向に600mmピッチの釘留めにより行った。
【0037】
次に、目板材6の両側に留め金具7を重ね、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定した。かかり寸法は20mmである。
【0038】
その後、2枚の外壁材1を突き合わせて配置した。突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が略当接するように形成されている。そして、外壁材1の下端面の溝部に留め金具7の上向き係止片13を嵌合させて留め金具7に外壁材1を取り付けて仮固定した。
【0039】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に別の留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねた。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定した。留め金具7の固定に用いたビス2の長さは38mmであり、柱3の屋外面における中央部から打入箇所までの距離D1=28mmである。上記のようにして図9のような試験体18を製造した。この試験体18における外壁材の固定構造を図6(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0040】
その後、上記の試験体18を小型加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行った。試験中における外壁材1の屋内面、RWの屋外面及び屋内面等の各層平均温度を図10(a)に示し、試験中における柱3及び縦胴縁17の各部最高温度を図10(b)に示す。試験の結果、いずれのビス2も抜け落ちず、外壁材1が脱落しないことが確認された。
【0041】
(比較例)
外壁材1、柱3及び留め金具7として、実施例と同様のものを用いた。
【0042】
目板材6として、図3(a)のように長尺平板部9に断面略V字状のリブ10を4つ長手方向に設けて形成された平板型ジョイナーを用いた。この目板材6は、鋼板を折曲加工して形成されている。目板材6の幅は76mmである。
【0043】
そして、上記の外壁材1、柱3、目板材6及び留め金具7を用い、次のようにして外壁材の固定構造が形成された試験体18を製造した。
【0044】
まず、柱3の屋外面に防水紙16を介して木製長尺状の縦胴縁17を設置した。防水紙16より屋内側には断熱材としてロックウール(RW)を設置した。縦胴縁17の屋外面に目板材6を留め付けた。この留付は、上下方向に600mmピッチの釘留めにより行った。
【0045】
次に、目板材6の両側に留め金具7を重ね、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定した。かかり寸法は10mmである。
【0046】
その後、2枚の外壁材1を突き合わせて配置した。突き合わせ部5は、隣り合う外壁材1の対向する側端面同士が略当接するように形成されている。そして、外壁材1の下端面の溝部に留め金具7の上向き係止片13を嵌合させて留め金具7に外壁材1を取り付けて仮固定した。
【0047】
次に、上記のように仮固定されたそれぞれの外壁材1の上端面の実部8に別の留め金具7の下向き係止片14を嵌合させると共に、これらの留め金具7を目板材6の両側に重ねた。そして、これらの留め金具7をビス2を用いて柱3に固定することによって、留め金具7に外壁材1を取り付けて固定した。留め金具7の固定に用いたビス2の長さは25mmであり、柱3の屋外面における中央部から打入箇所までの距離D1=43mmである。上記のようにして図9のような試験体18を製造した。この試験体18における外壁材の固定構造を図3(b)に示すが、柱3等の図示は省略している。
【0048】
その後、上記の試験体18を小型加熱炉を用いてISO標準加熱曲線に従って60分加熱して耐火性能試験を行った。試験中における外壁材1の屋内面、RWの屋外面及び屋内面等の各層平均温度を図11(a)に示し、試験中における柱3及び縦胴縁17の各部最高温度を図11(b)に示す。試験の結果、いずれのビス2も抜け落ちたり又は抜け落ちそうなものであり、外壁材1が脱落しそうであることが確認された。
【0049】
【表2】
【符号の説明】
【0050】
1 外壁材
2 ビス
3 柱
4 非欠損部分
5 突き合わせ部
6 目板材
7 留め金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材をビスを用いて木製の柱に固定して形成された外壁材の固定構造であって、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱の非欠損部分に到達する深さまで前記ビスが前記柱に打入されていることを特徴とする外壁材の固定構造。
【請求項2】
前記外壁材が複数突き合わされて配置され、前記外壁材の突き合わせ部と前記柱との間に目板材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の外壁材の固定構造。
【請求項3】
前記柱に前記ビスを用いて留め金具が固定され、前記留め金具に前記外壁材が取り付けられて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁材の固定構造。
【請求項1】
外壁材をビスを用いて木製の柱に固定して形成された外壁材の固定構造であって、ISO標準加熱曲線に従って60分加熱されても残存する前記柱の非欠損部分に到達する深さまで前記ビスが前記柱に打入されていることを特徴とする外壁材の固定構造。
【請求項2】
前記外壁材が複数突き合わされて配置され、前記外壁材の突き合わせ部と前記柱との間に目板材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の外壁材の固定構造。
【請求項3】
前記柱に前記ビスを用いて留め金具が固定され、前記留め金具に前記外壁材が取り付けられて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁材の固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−229587(P2012−229587A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99873(P2011−99873)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】
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