説明

外観検査装置

【課題】物品の外観に生じた様々な欠陥を漏れなく、精度良く検査することができる外観検査装置を提供する。
【解決手段】外観検査装置10には、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の4種の照明が、CCDエリアセンサ23と検査するレンズ16との位置関係を変えずに、それぞれ切り替え可能に設けられる。外観検査装置10は、4種の照明を切り替えてレンズ16を撮影し、各々画像を用いて、レンズ16の表面や内部に生じた欠陥を漏れなく検出し、レンズ16の良,不良,再検査の何れかに分類する。再検査に分類されたレンズ16の4種類の画像は、容易に精度良く比較され、レンズ16の欠陥の有無や程度が精度良く検査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品の欠陥の有無を検査する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器に用いられる電子デバイスや、レンズ,撮像素子といった光学デバイスは多少のキズやヨゴレなどの欠陥であったとしても、その性能に甚大な影響を与えてしまうことが多い。しかし、こうした欠陥は、製造時の様々な要因から、完全に取り除くことは現実的には略不可能である。そこで、実際には出荷前に入念に外観や性能の検査を行い、一定の基準を満たすものだけが商品として出荷される。
【0003】
このような外観などの検査は、自動化されている部分もあるとはいえ、各種欠陥の定量的な評価は難しく、未だ目視検査に頼らざるを得ない検査項目も多い。目視検査は、検査の熟練度合いや体調などに大きく左右され、必ずしも安定した精度の検査であるとは言えない。また、目視検査の検査速度は必ずしも速いとは言えず、本来ならば全ての製品を正確に検査することが最も好ましいが、実際には目視検査は一部の製品を抜き取り検査することも多い。
【0004】
近年では、こうした目視検査の問題点を鑑みて、目視検査する分量を低減し、外観などの検査を正確、かつ、効率的に行う外観検査装置が提案されている。例えば、検査する物品を撮像して得られた画像内の最高輝度に基づいて、物品を良品,不良品,判定不能品の何れかに判定し、この判定結果に基づいて必要に応じて再検査を行う外観検査装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、暗視野に照明しながらレンズを撮像して得られた画像に基づいてレンズの外観を検査する装置が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−264856号公報
【特許文献2】特開2002−90258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の外観検査装置のように物品を撮像して得られた画像内の最高輝度を使用して欠陥を検出すると、ヨゴレなどの低輝度の欠陥を正しく判別することができないという問題がある。
【0007】
また、こうした低輝度の欠陥を検出しようとして、カメラの位置、照明の方向、照明光の強度などを調節すれば、もともと高輝度の欠陥は必要以上に強調され、本来良品であるはずのものまで不良品とされてしまう、いわゆる過剰検出が多く生じてしまう。すなわち、多種多様な欠陥がランダムに生じる物品については、必ずしも正確で効率的な検査が行えるとは言えないという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1,2に記載の検査装置のように、物品に対するカメラの位置や、照明の方向、照明光の強度,波長などを工夫するために、検査ラインに沿って複数のカメラや照明を設ければ、1セットのカメラや照明では検出されない欠陥も、他のセットの撮影で適切な撮影条件となれば検出されることもある。しかし、検査する物品を検査ライン上などで移動させると、各カメラや各照明に対する物品の位置は、それぞれ異なってしまう。したがって、このように複数のカメラや照明のセットを用いて別個に撮影された画像は、それぞれに様々な欠陥を写しだした画像であるにもかかわらず、検査する物品の撮影角度などが検査するレンズを撮影するたびにそれぞれ異なるから、これらの画像を相互に精度良く比較することが困難であるという問題がある。
【0009】
現実的な物品は立体的な形状であり、ここに生じる欠陥の特徴も様々である。したがって、多数のカメラ,照明のそれぞれで撮影した画像を相互に精度良く比較できない場合、こうした欠陥を漏れなく検出するためには、コスト的に非現実的な多数のカメラ及び照明が必要となってしまう。すなわち、現実的には、種々の欠陥を精度良く検出することはできないという問題がある。
【0010】
一方、自動的な検査では判断の難しいものを再検査と判定し、これを目視検査で再度検査するといったように、自動的な検査と目視検査とを併用する外観検査装置の場合、新製品の製造の初期段階のように製品の品質が安定しない状況下では、大量の再検査品が発生してしまう。したがって、こうした目視検査を併用する外観検査装置を導入しても必ずしも製造が効率化されるとは限らないという問題がある。
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、現実的な形状の物品にランダムに生じる多種多様な欠陥を漏れなく、かつ、精度良く検査することができる外観検査装置を提供することを目的とする。また、効率良く外観などの検査を行うことのできる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の外観検査装置は、外観を検査される被検体を撮像する撮像手段と、前記被検体と前記撮像手段との相対的な位置を変えずに相互に切り替えられるように、前記被検体を各々異なる方向から一様に照明する複数の照明手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第1照明手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第2照明手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第3照明手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第4照明手段を備えることを特徴とする。
【0017】
前記第2照明手段又は前記第4照明手段で前記被検体を照明するときに、前記撮像手段に対向する位置に前記第1照明手段が配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の外観検査装置は、外観を検査される被検体を撮像する撮像手段と、前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第1照明手段と、前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第2照明手段と、前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第3照明手段と、前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第4照明手段とを備え、前記第1照明手段、前記第2照明手段、前記第3照明手段、及び前記第4照明手段は、前記被検体と前記撮像手段との相対的な位置を変えずに相互に切り替えられるように設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、前記第2照明手段又は前記第4照明手段で前記被検体を照明するときに、前記撮像手段に対向する位置に前記第1照明手段が配置されていることを特徴とする。
【0020】
また、前記第1照明手段は、前記第3照明手段からの光を遮る遮光板を前記第1照明手段の前面に配置して切り替えられる照明であることを特徴とする。
【0021】
また、前記第1照明手段は、前記第3照明手段の発光面の一部を選択的に消光して切り替えられる照明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、現実的な形状の物品にランダムに生じる多種多様な欠陥を漏れなく検査することができる。また、本発明によれば、効率よく外観検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示すように、外観検査装置10は、検査トレイ15に並べて配置されたレンズ16の表面や内部に生じた欠陥を検査する外観検査装置である。
【0024】
外観検査装置10で検査するレンズ16は、例えば、ガラス材料を金型で加熱及び加圧して成形され、反射防止コーティングが施されたレンズであり、外観検査装置10を用いない場合には、例えば実体顕微鏡を用いた外観目視検査が行われるレンズ16である。
【0025】
検査トレイ15には、レンズ16を配置する座繰り穴17が格子状に並べて設けられている。また、これらの座繰り穴17の中央には、座繰り穴17と比較して小さな径の貫通孔18がそれぞれ設けられている。また、貫通孔18は、下方から照射される照明光を効率よくレンズ16に導くために、下方に向かうほど直径が大きくなるように設けられている。
【0026】
さらに、検査トレイ15は、レンズ16の製造量に応じて同様のものが複数用意されているが、検査トレイ15には各々を識別するためのID19(図2参照)が付与されている。このID19は例えばバーコードであり、検査位置に移動されたときに読み取られ、貫通孔18に配置したレンズ16の管理番号などとともに管理される。
【0027】
外観検査装置10は、XYステージ21、IDスキャナ22、CCDエリアセンサ23、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29などから構成される。
【0028】
XYステージ21は、セットされた検査トレイ15ごとレンズ16を移動させ、検査を実行するレンズ16をCCDエリアセンサ23の直下の検査位置に正確に移動させる。このXYステージ21には、レンズ16が配置された検査トレイ15がセットされる中空ステージが設けられている。この中空ステージは水平に移動自在に設けられているとともに、中空な枠状に形成されている。したがって、セットされた検査トレイ15の中央部分は下方に露出されており、検査トレイ15に配置されたレンズ16は、下方からであっても照明される。また、XYステージ21は、検査トレイ15が交換されるごとに、検査トレイ15をIDスキャン位置へ移動させる。
【0029】
CCDエリアセンサ23は、下方に向けて配置されており、XYステージ21によって検査位置に移動されたレンズ16、すなわちCCDエリアセンサ23に正対して配置されたレンズ16を様々な照明条件下で撮影する。CCDエリアセンサ23によって撮影されたレンズ16の画像は、検査トレイ15のID19(図2参照)やレンズ16が配置されている検査トレイ15内の座標とともに管理される。
【0030】
透過型暗視野照明26(第1照明手段)は、検査位置にあるレンズ16に対してCCDエリアセンサ23の反対側に配置され、レンズ16に対して一様に照明光を照射する平面状の発光面31を備える。この発光面31は全面が発光するわけではなく、発光面31の中央部分には無発光部32が設けられている。透過型暗視野照明26から照射される照明光は無発光部32を除いた発光面31の全体から一様に照射される。また、透過型暗視野照明26からの照明光がレンズ16を透過した後にCCDエリアセンサ23には入射しないように、無発光部32の大きさや形状が定められる。なお、透過型暗視野照明26は、多数配列されたLED上に拡散板を設けた構成となっており、無発光部32の大きさや形状などは容易に変更される。
【0031】
また、透過型暗視野照明26は、1軸ステージ33上に設けられており、レンズ16に照明光を照射する使用位置と、この使用位置から退避された不使用位置との間で自在に移動される。この透過型暗視野照明26を移動させる1軸ステージ33は、XYステージ21やCCDエリアセンサ23の固定設備などとは独立して設けられており、CCDエリアセンサ23と検査位置にあるレンズ16との相対的な位置関係を変えることなく、透過型暗視野照明26を使用位置と不使用位置とに自在に移動させる。
【0032】
反射型暗視野照明27(第2照明手段)は、検査位置にあるレンズ16に対してCCDエリアセンサ23と同じ側に配置される。この反射型暗視野照明27は、検査位置にあるレンズ16の周囲を上方から取り囲むようにして設けられた円筒状の照明であり、内面側が発光面となってレンズに対して一様に照明光を照射する。この反射型暗視野照明27照射される照明光は、後述する反射型明視野照明29と比較して、検査トレイ15の表面に近い角度からレンズ16に照射される。すなわち、照明光がレンズ16の正常な表面に反射されてCCDエリアセンサ23に入射する量が少なくなるように、反射型暗視野照明27の照明角度は調節されている。
【0033】
透過型明視野照明28(第3照明手段)は、検査位置にあるレンズ16に対してCCDエリアセンサ23の反対側に配置され、レンズ16に対して一様に照明光を照射する平面状の発光面34を備える。前述の透過型暗視野照明26の発光面とは異なり、この透過型明視野照明28の発光面34は全面が一様に発光する。また透過型明視野照明28の発光面34の大きさは、少なくとも前述の透過型暗視野照明26の無発光部32の大きさよりも大きい。すなわち、透過型明視野照明28から照射される照明光は、レンズ16を透過してCCDエリアセンサ23へ入射する。
【0034】
反射型明視野照明29(第4照明手段)は、検査位置にあるレンズ16に対してCCDエリアセンサ23と同じ側に配置され、レンズ16の上方から一様に照明光を照射する。この反射型明視野照明29から照射される照明光は、前述の反射型暗視野照明27と比較して、検査トレイ15の表面に正対する方向から照射される。すなわち、レンズ16の正常な表面に反射された照明光の大部分がCCDエリアセンサ23へと入射するように、反射型明視野照明29の照明角度は調節されている。
【0035】
マスク板36は、透過型暗視野照明26及び透過型明視野照明28と、XYステージ21との間に設けられる。また、マスク板36には、CCDエリアセンサ23の正面に、検査する対象のレンズ16だけが露出される開口が設けられており、透過型暗視野照明26や透過型明視野照明28から発せられる光は、この開口を通して検査するレンズ16に照射される。また、マスク板36とXYステージとの距離や、マスク板36の開口の大きさは、いわゆるケラレが生じない大きさに定められる。一方、マスク板36は、検査するレンズ16の周囲に配列された他のレンズ16に照射される透過型暗視野照明26や透過型明視野照明28からの光を遮る。さらに、マスク板36の表面は反射防止処理が施されており、透過型暗視野照明26や透過型明視野照明28からの光が乱雑な反射を繰り返して、検査するレンズ16に入射することを防ぐ。
【0036】
マスク板37は、反射型暗視野照明27とXYステージ21との間に設けられる。また、マスク板37には、CCDエリアセンサ23の正面に、検査する対象のレンズ16だけが露出される開口が設けられており、反射型暗視野照明27や反射型明視野照明29から発せられる光は、この開口を通して検査するレンズ16に照射される。また、マスク板37とXYステージとの距離や、マスク板37の開口の大きさは、いわゆるケラレが生じない大きさに定められる。一方、マスク板37は、検査するレンズ16の周囲に配列された他のレンズ16に照射される反射型暗視野照明27や反射型明視野照明29からの光を遮る。さらに、マスク板37の表面は反射防止処理が施されており、反射型暗視野照明27や反射型明視野照明29からの光が乱雑な反射を繰り返して、検査するレンズ16に入射することを防ぐ。
【0037】
図2に示すように、外観検査装置10は、制御部41、基本画像処理部42、リファレンス画像作成部43、差分画像作成部44、評価部46、RAM47、ROM48、データ通信部49などから構成される。
【0038】
制御部41は、データバス51を介して外観検査装置10の各部を統括的に制御する。また、制御部41はROM48に記憶された制御プログラムを読み出し、これにしたがってこのような外観検査装置10の各部の制御を行う。例えば、制御部41は、前述のXYステージ21、IDスキャナ22、1軸ステージ33、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29、CCDエリアセンサ23を、外観検査装置10の制御プログラムにしたがって、それぞれに対応するドライバを用いて制御する。また、例えば、制御部41は、XYステージ21を移動させた量などから検査するレンズ16の検査トレイ15内での位置を特定し、これをRAM47に記憶する。
【0039】
IDスキャナ22は、IDスキャン位置に移動された検査トレイ15のID19を読み取り、サーバ76(後述)に構築されたデータベースに登録する。データベースに登録されたID19は、各々のレンズ16の検査に用いる画像や検査結果とともに管理される。
【0040】
CCDエリアセンサ23は、ズームレンズ,フォーカスレンズ,絞りなどからなる撮像レンズと、この撮像レンズの背後に配置されたCCDなどから構成される。CCDエリアセンサ23は、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29のうち何れか1つによって照明された状態で、検査位置にあるレンズ16を撮像する。このとき、検査対象のレンズ16からの光は、撮像レンズによってCCDの受光面に結像され、CCDの各画素の受光量に比例したアナログの撮像信号へと光電変換される。
【0041】
なお、撮像レンズのズームやフォーカス、絞りの開口面積、CCDの電子シャッタ速度などは、検査するレンズ16の形状などに応じて予め定められ、同種のレンズ16を撮像する際には同じ条件で撮像が行われる。
【0042】
基本画像処理部42は、CCDエリアセンサ23から出力されるアナログの撮像信号からノイズを除去するとともに、信号を増幅し、アナログの撮像信号をデジタルな画像データへと変換する。こうしてCCDエリアセンサ23から得られたデジタルな画像データは、元画像としてRAM47に一時的に記憶される。
【0043】
以下では透過型暗視野照明26によって照明されたレンズ16の元画像を第1元画像56と称する。同様に、反射型暗視野照明27によって照明されたレンズ16の元画像を第2元画像57、透過型明視野照明28によって照明されたレンズ16の元画像を第3元画像58、反射型明視野照明29によって照明されたレンズ16の元画像を第4元画像59とそれぞれ称する。
【0044】
リファレンス画像作成部43は、外観検査装置10又は目視検査によって良品と判定されたレンズ(以下、良品レンズ)を撮像して得られた元画像に基づいて良品の基準となるリファレンス画像を作成する。例えば、複数の良品レンズを透過型暗視野照明26によって照明し、それぞれの第1元画像が得られると、リファレンス画像作成部43は、これらの第1元画像56の各画素ごとの輝度を平均する。そして、良品レンズの第1元画像の平均輝度を各画素の輝度とした第1平均輝度画像を作成する。また、同時に、リファレンス画像作成部43は、良品レンズの第1元画像56から各々の画素ごとに標準偏差を算出し、この標準偏差を各画素の輝度データとした第1標準偏差画像を作成する。さらに、リファレンス画像作成部43は、得られた第1平均輝度画像と第1標準偏差画像とから、透過型暗視野照明26で照明しながら撮影する場合の良品の基準として用いる第1リファレンス画像61を作成し、RAM47に記憶する。この第1リファレンス画像61は、例えば、検査するレンズの形状などの特性に応じて予め定められた数をαとするとき、第1平均輝度画像に第1標準偏差画像のα倍を対応する画素ごとに加算してつくられる。
【0045】
同様に、リファレンス画像作成部43は、複数の良品レンズの第3元画像58を用いて、第3平均輝度画像と第3標準偏差画像とを作成し、これらに基づいて透過型明視野照明28で照明しながら撮影する場合の良品の基準として用いる第3リファレンス画像63をつくり、RAM47に記憶する。
【0046】
一方、検査するレンズ16の第2元画像57が取得されると、リファレンス画像作成部43は、第2元画像57のある画素(注目画素と称する)に対して、この注目画素の輝度データと、注目画素の周囲にある所定範囲の画素の輝度データとを平均し、局所平均輝度データを算出する。この局所平均輝度データは第2元画像57の全ての画素について算出される。そして、リファレンス画像作成部43は、この局所平均輝度データを各画素の輝度データとする第2局所平均画像を、第2リファレンス画像62としてRAM47に一時的に記憶する。
【0047】
同様に、リファレンス画像作成部43は、検査するレンズ16の第4画像59が取得されると、この第4元画像59から、第4局所平均画像を作成し、これを第4リファレンス画像64として、RAM47に一時的に記憶する。
【0048】
なお、第1リファレンス画像61及び第3リファレンス画像63は、レンズの検査が開始される際に1度行われ、以降の検査には同じリファレンス画像61,63が用いられる。一方、第2リファレンス画像62及び第4リファレンス画像64は、検査するレンズ16のそれぞれについて作成される。
【0049】
差分画像作成部44は、RAM47から検査するレンズ16の第1元画像56と第1リファレンス画像61とを読み出し、各画素についてこれらの差を算出して、各画素がこの差と同じ値の第1差分画像66を作成し、RAM47に記憶する。同様にして、差分画像作成部44は、第2元画像57から第2リファレンス画像62を差し引いて第2差分画像67を、第3元画像58から第3リファレンス画像63を差し引いて第3差分画像68を、第4元画像59から第4リファレンス画像64を差し引いて第4差分画像69を、それぞれ作成し、RAM47に記憶する。
【0050】
上述のように差分画像作成部44が第1差分画像66を作成する際には、第1元画像56に写されたレンズの中心と第1リファレンス画像61のレンズの中心とは一般に一致しない。しかし、レンズ16を撮影すると、レンズ16の表面の形状に応じて、元画像に写されたレンズ16の内部に照明が写り込む。また、リファレンス画像に写されたレンズの内部にも同様にして照明が写り込む。差分画像作成部44は、このような、レンズ16の表面の形状に応じた照明の写りこみを利用して、元画像及びリファレンス画像にそれぞれ写されたレンズの中心を算出し、これを中心として第1差分画像66を作成する。一方、透過型明視野照明28で照明した場合の第3元画像58及び第3リファレンス画像63の場合には、全体が明るく写されるため、こうした照明の写りこみを利用したレンズの中心位置の算出,同定はしない。しかし、このようにレンズの全体が明るく写しだされる場合には、レンズの表面の形状に応じた輝度分布がある。したがって、第3差分画像68を作製する際に、差分画像作成部44は、レンズ16の表面の形状に応じた輝度分布に基づいて、第3元画像58に写しだされたレンズ16の中心を算出する。
【0051】
評価部46は、差分画像の各画素ごとに予め定められた閾値と比較して、レンズ16の良否を評価する。例えば、評価部46は、第1差分画像の各画素の値を、予め定められた基準値と比較し、この基準値を超える画素の総数を計数し、欠陥面積S1とする。ここで用いられる基準値は、予め定められ、RAM47に記憶されている。そして、評価部46は、こうして得られた欠陥面積を、予め設定されており、RAM47に記憶された第1閾値と比較する。ここで用いる第1閾値は、上限値U1と下限値L1とからなる。
【0052】
すなわち、第1閾値71は、範囲を定める閾値の組み合わせであり、検査開始前に予め定められている。この第1閾値71の値は、レンズ16の不良品率など、検査の結果などに応じて定められ、上限値U1,下限値L1のそれぞれについて別個に独立して定められる。こうした閾値の調節は、以下の第2〜第4閾値にも共通であり、第1〜第4閾値はそれぞれ独立に、かつ、各々の閾値の上限値,下限値についてそれぞれ独立に決定される。
【0053】
欠陥面積S1が第1閾値の下限値よりも小さい場合(S1<L1)に、評価部46はレンズ16を良と判定する。一方、欠陥面積が第1閾値の上限値よりも大きい場合(S1>U1)に、評価部46はレンズ16を不良と判定する。そして、欠陥面積S1が第1閾値71の下限値L1以上の大きさで、上限値U1以下の大きさの場合(L1≦S1≦U1)に、評価部46はレンズ16を要再検査と判定する。こうして、第1差分画像66と第1閾値71との比較から得られたレンズ16の判定は、第1判定結果としてRAM47に記憶される。
【0054】
同様にして、評価部46は、第2差分画像の欠陥面積S2を計数し、これを第2閾値72(上限値U2,下限値L2)と比較することで、レンズ16を良,不良,要再検査の何れかに判定する。第2差分画像67と第2閾値72との比較に基づいて得られたレンズ16の判定結果は、第2判定結果としてRAM47に記憶される。
【0055】
また同様に、評価部46は、第3差分画像の欠陥面積S3を計数し、これを第3閾値73(上限値U3,下限値L3)と比較することで、レンズ16を良,不良,要再検査の何れかに判定する。第3差分画像68と第3閾値73との比較に基づいて得られたレンズ16の判定結果は、第3判定結果としてRAM47に記憶される。
【0056】
さらに同様にして、評価部46は、第4差分画像の欠陥面積S4を計数し、これを第4閾値74(上限値U4,下限値L4)と比較することで、レンズ16を良,不良,再検査の何れかに判定する。第4差分画像69と第4閾値74との比較に基づいて得られたレンズ16の判定結果は、第4判定結果としてRAM47に記憶される。
【0057】
そして、評価部46は、上述の第1〜第4判定結果に基づいてレンズ16の最終的な評価を決定する。すなわち、第1〜第4判定結果の中に不良判定が含まれている場合には、評価部46はレンズ16を不良品と評価する。一方、レンズ16が不良品でない場合において、第1〜第4判定結果の中に要再検査が含まれている場合には、評価部46はレンズ16を要再検査品と評価する。そして、不良品及び要再検査品でない場合に、評価部46はレンズ16を良品と評価する。
【0058】
また、評価部46によるレンズ16の評価は、検査トレイ15のID19、検査トレイ15内での位置、評価する際に用いた第1〜第4差分画像などとともに関連付けられて、サーバ76のデータベースに登録される。
【0059】
RAM47は、作業用のメモリであり、検査トレイ15のID,検査するレンズ16の検査トレイ15内での位置,元画像,リファレンス画像,差分画像,閾値,基準値などが記憶される。また、ROM48は、外観検査装置10の各種設定や、制御プログラム、各種ドライバなどが記憶されるメモリである。
【0060】
データ通信部49は、外観検査装置10の外部に設けられたサーバ76と外観検査装置10とをLANなどで接続する。したがって、データ通信部49を介して、レンズ16の評価は検査トレイ15のID、検査トレイ15内でのレンズ16の位置、評価に用いられた第1〜第4元画像などとともにサーバ76に構築されたデータベースに登録される。
【0061】
以下、上述のように構成される外観検査装置10の作用を説明する。図3に示すように、検査するレンズ16が配置された検査トレイ15が外観検査装置10にセットされると、XYステージ21によって検査トレイ15はIDスキャン位置に移動され、IDスキャナ22によって検査トレイ15のIDが読み取られる。そして、検査するレンズ16がCCDエリアセンサ23の直下に移動され、レンズ16の検査が開始される。
【0062】
まず、透過型暗視野照明26が検査するレンズ16の直下に移動され、この透過型暗視野照明26によって照明された状態で検査するレンズ16の画像(第1元画像)が取得される。この第1元画像と第1リファレンス画像61とから第1差分画像66がつくられる。そして、この第1差分画像66に基づいて、レンズ16の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第1判定結果)。
【0063】
こうして第1判定結果が得られると、外観検査装置10は反射型暗視野照明27に照明を切り替え、レンズ16の画像(第2元画像)が取得される。この第2元画像と第2リファレンス画像62とから第2差分画像67がつくられる。そして、第2差分画像67に基づいて、レンズ16の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第2判定結果)。
【0064】
さらに、第2判定結果が得られると、外観検査装置10は、透過型明視野照明28に照明を切り替える。すなわち、1軸ステージ33が駆動され、透過型暗視野照明26はレンズ16の直下から退避し、透過型明視野照明28がレンズ16の直下に移動される。そして、外観検査装置10は、透過型明視野照明28でレンズ16を照明しながら、レンズ16の画像(第3元画像)が取得される。この第3元画像と第3リファレンス画像63とから第3差分画像68がつくられる。そして、第3差分画像68に基づいて、レンズ16の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第3判定結果)。
【0065】
第3判定結果が得られると、外観検査装置10は、反射型明視野照明29に照明を切り替え、第4元画像を取得する。そして、第4元画像と第4リファレンス画像64とから第4差分画像69がつくられる。そして、第4差分画像に基づいて、レンズ16の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第4判定結果)。なお、反射型明視野照明29で照明しながらレンズ16を撮影する場合、CCDエリアセンサ23に正対する位置には透過型暗視野照明26が配置される。
【0066】
こうして第1〜第4判定結果が揃うと、これらの判定結果に基づいて外観検査装置10はレンズ16の評価を決定する。このとき、第1〜第4判定結果の中に一つでも不良判定が含まれていれば、レンズ16は不良品であると評価される。また、第1〜第4判定結果の中に不良判定が含まれておらず、要再検査判定が含まれている場合には、レンズ16は要再検査品であると評価される。一方、第1〜第4判定結果の中に、不良判定及び要再検査判定がともに含まれていない場合に、すなわち、第1〜第4判定結果が全て良判定の場合に、レンズ16は良品と評価される。このレンズ16の評価は、検査トレイ15のIDや検査トレイ内での位置、検査に用いた差分画像などとともに、検査を管理するサーバ76に記憶される。
【0067】
このように1個のレンズ16の評価が定まると、XYステージ21が移動され、他のレンズに対して上述と同様の検査が行われる。
【0068】
また、外観検査装置10によって検査されたレンズ16のうち、再検査品と評価されたレンズ16は、別途、目視検査による再検査が実施され、最終的に良品又は不良品の何れかに分類される。ここで行われる再検査工程では、外観検査装置10で得られ、外観検査装置10による評価とともにサーバ76に登録されている第1〜第4元画像56,57,58,59が用いられる。第1〜第4元画像56,57,58,59は、CCDエリアセンサ23と検査したレンズ16の位置関係は同じ状態で、照明の条件を変更して得られた画像であるから、各種欠陥は、すべての画像の同じ位置に同じ角度で写されている。したがって、これら第1〜第4元画像56,57,58,59を別途用意されたディスプレイに並べて表示することで、欠陥の有無、程度、さらには各欠陥の種類が判断される。
【0069】
また、上述のように、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29をそれぞれ用いて、検査するレンズ16の画像を得る場合、各々の照明ごとに精度良く評価することができる欠陥の種類が異なる。例えば、図4に示すように、出荷直前のレンズ16には、キズ81、ブツ82、ヨゴレ83、カケ85、コート抜け91、アワ92などの様々な欠陥が生じているおそれがある。当然ながら、こうした様々な欠陥は、発生原因や特徴がそれぞれ異なる。
【0070】
キズ81はレンズ16の表面に生じた線状の傷であり、ブツ82はレンズ16の表面に生じる点状の傷である。ヨゴレ83は、レンズ16の表面に範囲に広がって付着した汚れである。また、カケ85はレンズ16の周縁部などが欠け落ちてしまったできた形状の欠陥である。コート抜け91は反射防止コーティングの欠陥であり、コーティング層にあいた穴である。また、アワ92は、成形時に混入した気泡などが主原因でレンズ16内部や表面に生じ、他の正常部分と屈折率が異なる欠陥である。
【0071】
こうした欠陥が生じたレンズ16を、透過型暗視野照明26で照明して撮影し、検査する場合には、キズ81、ブツ82が精度良く評価される。例えば、図5に示すように、第1元画像56には、キズ81、ブツ82、ヨゴレ83、アワ92が、視覚的にも容易に認められる。一方、カケ85、コート抜け91は、位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。このことから、第1差分画像66の欠陥面積S1と比較される第1閾値71は、キズ81、ブツ82を検出するために最適な値が選ばれる。なお、ヨゴレ83は反射型暗視野照明27による第2元画像57でさらに明確に認識されるから、後述するように第2差分画像67に基づいて評価される。また、アワ92についても、第1元画像56で精度良く認識されるが、これと同等以上に精度良く第2元画像56で認識されるから、第2差分画像67に基づいて評価される。
【0072】
なお、第1元画像56には、レンズ16の表面の形状に応じて生じた照明の写り込み96があるが、第1差分画像66においてはこの照明の写り込み96は欠陥と比較して十分に輝度が小さい。したがって、自動的に行われる欠陥の検査には大きな影響は与えず、また、この照明の写り込み96の上にある欠陥であっても略正確に評価される。このことは、他の差分画像であっても同様である。
【0073】
また、レンズ16を反射型暗視野照明27で照明して撮影し、検査する場合には、ヨゴレ83、アワ92が精度良く評価される。例えば、図6に示すように、第2元画像57には、キズ81、ブツ82、ヨゴレ83、アワ92が視覚的にも容易に認められる。特に、ヨゴレ83は、この第2差分画像67によって略確実に検出される。一方、コート抜け91については、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。また、キズ81、ブツ82については、透過型暗視野照明26による第1元画像56の方がより明確に認識される。これらのことから、第2差分画像67の欠陥面積S2と比較される第2閾値72は、ヨゴレ83、アワ92を評価するために最適な値が選ばれる。
【0074】
また、レンズ16を透過型明視野照明28で照明して撮影し、検査する場合には、カケ85が精度良く評価される。例えば、図7に示すように、第3元画像58には、カケ85、アワ92が視覚的にも容易に認められる。一方、キズ81、ブツ82、コート抜け91については、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。さらに、ヨゴレ83は、第3元画像58では殆ど認識されない。これらのことから、第3差分画像68の欠陥面積S3と比較される第3閾値73は、カケ85を評価するために最適な値が選ばれる。
【0075】
また、レンズ16を反射型明視野照明29で照明して撮影し、検査する場合には、コート抜け91が精度良く評価される。例えば、図8に示すように、第4元画像59には、コート抜け91が視覚的にも容易に認められる。一方、キズ81、ブツ82は、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては、認識されがたいこともある。さらに、ヨゴレ83、アワ92は、第4差分画像では殆ど認識されない。これらのことから、第4差分画像69の欠陥面積S4と比較される第4閾値74は、コート抜け91を精度良く評価するために最適な値が選ばれる。
【0076】
以上のように、外観検査装置10は、1個のCCDエリアセンサ23に対して透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の4種の照明を設けており、これらをそれぞれ用いてレンズ16を撮影し、検査する。したがって、検査ライン上にカメラや照明を複数設けた外観検査装置と比較して、外観検査装置10は小型化が実現される。また、カメラや照明が最小限の個数であるから、低コストに外観検査装置10を提供することができる。
【0077】
また、上述のように、外観検査装置10は、4種の照明条件でそれぞれ撮影した画像に基づいて検査を行うから、レンズ16の表面などに生じた欠陥を、その位置、大きさ、角度など個々の特徴によらず、漏れなく検査することができる。
【0078】
さらに、各照明条件での画像からレンズ16の欠陥をそれぞれ判断し、これらを総合して最終的なレンズ16の評価を決定するから、評価の基準が何れかの欠陥の評価に傾倒することなく、レンズ16の欠陥に生じる様々な欠陥の何れをも十分に考慮して、レンズ16の良否を正しく評価することができる。
【0079】
さらに、各照明条件に基づいて検査する欠陥の種類を割り当てているから、レンズ16に生じる欠陥の特徴に応じて容易に閾値を設定することができる。また、各照明条件で検出される欠陥の特徴に応じて設定される閾値を用いて評価を行うから、正確に漏れなく欠陥を検査することができ、検査の安定性,信頼性が向上する。
【0080】
また、上述のように、各種照明条件でのレンズ16の評価は、欠陥面積と照明条件に応じた閾値との比較によって行われ、用いられる閾値は上限値と下限値とからなり、範囲を指定する閾値である。したがって、欠陥を過剰評価してレンズ16を不良としてしまう過剰検査や欠陥を過小して評価レンズ16を良品としてしまう誤検査といったように、単一の値からなる閾値で評価する場合に閾値周辺の判断の難しい範囲で生じる弊害は防がれ、安定した信頼性の高い検査を行うことができる。
【0081】
さらに、閾値の上限値と下限値は、不良品の数や特徴などに応じてそれぞれ設定することができるから、新製品の生産初期などで製品の品質が安定しない場合などにも、検査精度を確保しながらも、不必要に再検査にまわされる製品の数を減らし、検査効率を向上させることができる。
【0082】
また、上述のように、外観検査装置10は、元画像とリファレンス画像との差である差分画像に基づいて欠陥を評価するから、レンズ16の表面の形状に応じて照明が写りこんだ部分にある欠陥であっても、正確に評価することができる。
【0083】
一方、自動的な判断の難しい要再検査のレンズに対しては、第1〜第4元画像56,57,58,59を用いて再検査を行うことで、顕微鏡による目視検査と比較して、容易に欠陥の有無、程度、種類が判別され、再検査自体が迅速に行われる。また、第1〜第4元画像56,57,58,59を用いて再検査を行うと、欠陥の有無や、程度,種類などの特徴も一目瞭然となり、検査員の個々の観察技術や体調などが再検査に与える影響は極めて少なくなるから、検査品質が安定する。
【0084】
さらに、第1〜第4元画像56,57,58,59を用いて再検査を行うと、再検査によってレンズ16が不良品と評価された場合に、将来的に多数生じるおそれのある不良の原因は容易に特定される。このように増加するおそれのある不良の原因を、一括管理,分析することで、不良多発ロットの特定、不良の原因となった生産工程の特定など、不良の原因を究明し、レンズ16の不良を未然に防ぎ、生産効率を向上させることができる。
【0085】
なお、上述の外観検査装置10の各部、例えば、各照明の発光面や、CCDエリアセンサ23、検査トレイ15などは反射防止処理を施されていることが好ましい。透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の発光面にそれぞれ反射防止処理を施しておくことで、各照明からの光が乱雑に反射され、レンズ16の外観に生じた欠陥以外に反射,散乱された不要な光がCCDエリアセンサ23に入射して検査の精度が劣化してしまうことを防ぐことができる。また、同様の理由から、例えば、外観検査装置10のマスク板36には、反射防止処理を施された開口を開閉するシャッタなどを設けても良い。また、反射型暗視野照明27や反射型明視野照明29で検査するレンズ16を撮影する場合に、透過型暗視野照明26を検査するレンズ16の直下に移動させても良い。すなわち、透過型暗視野照明26の無発光部32で上述の不要な光によって検査の精度が劣化することを防ぐことができる。
【0086】
なお、上述の実施形態では、外観検査装置10は透過型暗視野照明26と透過型明視野照明28とを1軸ステージ33を駆動して切り替えるが、これに限らず、透過型暗視野照明26と透過型明視野照明28とで共通の発光面を用いてもよい。例えば、図9(A)に示すように、全面が一様に発光,消光する照明パネル106の前面に、無発光部32と同じ形状を持つ遮光板108を回動させることで、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに切り替わる。すなわち、遮光板108を発光面107から退避させたときには、照明パネル106は透過型明視野照明28となり、一方、遮光板108を発光面107上に移動させたときには、照明パネル106は透過型暗視野照明26となる。また、例えば、図9(B)に示すように、照明パネル106の前面に、遮光板108を水平に移動させることで、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに切り替えても良い。
【0087】
また、例えば、図10に示すように、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに共通に用いられる照明パネルとして、画像などを表示する、いわゆる液晶パネル116を好適に用いることができる。液晶パネル116は、発光面116の全面を消光した状態(図10(A))と、発光面116の全面を発光させた状態(図10(B))と、発光面116の中央部分が無発光部117となるように部分的に発光させた状態(図10(C))とを自在に切り替えられる。このとき、全面が消光した状態(図10(A))は、液晶パネル116の不使用状態である。また、全面を発光させた状態(図10(B))は、液晶パネル116は、透過型明視野照明として機能する。さらに、部分的に発光させた状態(図10(C))は、透過型暗視野照明として機能する。
【0088】
さらに液晶パネル116を透過型暗視野照明として用いる場合、無発光部117の位置や大きさは、検査するレンズ16の大きさなどによって自在に変更される。例えば、図11(A)に示すように、検査するレンズ16の大きさや曲面の形状、検査するレンズ16と液晶パネル116との距離などに応じて最適な無発光部117の大きさや形状が定められる。一方、図11(B)に示すように、例えば、レンズ16と比較して直径の大きなレンズ118の外観を検査する場合であっても、液晶パネル116はこのレンズ118の大きさ、曲面の形状、レンズ118と液晶パネル116との距離などに応じて、無発光部119の大きさが変更される。
【0089】
このように、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに共通の発光面を用いると、実質的に照明パネルを1個減らすことができるから、外観検査装置10は小型化され、さらには、低コストに外観検査装置10を提供することができる。
【0090】
また、液晶パネル116を透過型暗視野照明及び透過型明視野照明として用いる場合には、大きさや表面の形状など検査するレンズの特徴に応じて、容易に、自在に無発光部の大きさや形状を変更することができる。
【0091】
なお、液晶パネル116は、発光面116の一部分を選択的に消光することができれば良いので、LEDパネル、FEDパネル、SEDパネル、CRTなどであっても良い。
【0092】
なお、上述の実施形態では、外観検査装置10は、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の全てを備えるが、これに限らない。例えば、さらに外観検査装置10を低コストに提供しようとする場合、透過型暗視野照明26を設けず、反射型暗視野照明27で代用しても良いが、多数の欠陥を第2差分画像から検出することになるので、第2閾値の設定が難しくなり、検査精度の劣化は免れない。また、例えば、外観検査装置10は予め反射防止コーティングが施されたレンズ16を検査するから、主としてコート抜け91を検出するための反射型明視野照明29を設けている。しかし、反射防止コーティングが施されていない状態のレンズ16や、反射防止コーティングが必要でない物品を検査する外観検査装置に本発明を適用する場合には、必ずしも反射型明視野照明29は必要ではない。したがって、このような物を検査する際には、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28の3種の照明を備えていれば良い。すなわち、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29は、それぞれに正確に検査することができる欠陥の特徴が異なるから、検査する物品に生じる欠陥の特徴に応じて、外観検査装置10に設ける照明の数を減らしても良い。
【0093】
なお、上述の実施形態では、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の順序でレンズ16を撮影し、検査するが、これに限らない。すなわち、撮影,検査に用いる照明の順序は任意に選択することができる。
【0094】
また、上述の実施形態では、各照明条件での撮影と同時にレンズの良否の判断を行うが、これに限らず、4種の照明条件下での撮影を全て終えた後に各々の画像についてレンズの良否を判断しても良い。
【0095】
さらに、上述の実施形態では、第1〜第4元画像56,57,58,59をデータベースに登録するが、これに限らず、レンズの評価が良品である場合などに差分画像をもデータベースに登録し、これをリファレンス画像を作成する際に使用しても良い。すなわち、上述の実施形態で示すリファレンス画像の作成方法は一例であって、これに限定されず、他の方法で作成したリファレンス画像に基づいて上述の実施形態と同様の検査を行っても良い。また、同様に、第1〜第4差分画像をデータベースに登録し、これを再検査に用いても良い。
【0096】
また、上述の実施形態では、自動的なレンズの評価を行う際に、欠陥面積として定義した値に基づいてレンズの評価を行うが、これに限らず、他の値に基づいてレンズの評価を行っても良い。例えば、欠陥の大きさや長さ、周囲の長さ、縦横比などの各欠陥の形状の特徴や、1つのレンズに対して検出された欠陥の総数などに基づいてレンズの評価を行っても良い。また、検査の精度をさらに向上させるためには、こうした各種基準を組み合わせてレンズの評価を行うことが好ましい。
【0097】
なお、上述の実施形態では、レンズ16を検査する外観検査装置10を例に説明するが、検査対象の物品はレンズに限られず、光をある程度透過する透明な物品であれば特に好ましく、不透明な物品であっても良い。
【0098】
なお、上述の実施形態では、検査トレイ15のID19としてバーコードを用いる例を示すが、このバーコードは1次元バーコードでも良く、また、2次元バーコードでも良い。さらに、ID19はバーコードにも限らず、ICチップなどを用いてもよい。
【0099】
なお、上述の実施形態では、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29の何れにも液晶パネルを好適に用いることができる。また、これに限らず、他の照明パネルやディスプレイを用いても良い。例えば、LEDを配列してなるLED照明パネルは点灯,消灯を高速に繰り返すことができることから、外観検査装置10に用いる照明としては特に好ましい。さらに、CRT,FET,SEDなどの電子の放出を利用するディスプレイを照明として用いてもよい。すなわち、検査するレンズ16に一様に光を照射できるものであれば動作原理などは任意のものを用いることができ、照明の形態は限定されない。
【0100】
また、上述の実施形態では、レンズ16の外観検査を行う例を示すが、検査するレンズ16の形状は限定されず、レンズ16の外観を検査する場合であっても、面の凹凸の組み合わせはメニスカスレンズ、両凸、両凹の何れのレンズであっても良く、また、形状が球面であるか、非球面であるかも問わない。また、大きさも任意のものを用いることができ、フレネルレンズなど特殊なレンズであっても良い。さらに、検査するレンズの材質もガラスに限らず周知の樹脂材料などであっても良く、また、レンズの製造方法も上述の実施形態に限らず、各種成型、あるいは研磨などにより製造しても良い。
【0101】
なお、上述の実施形態では、レンズ16の外観検査の結果はサーバ76に構築されたデータベースに登録されるが、これに限らず、外観検査装置10自体に記憶しても良い。また、プリンタなどで紙面に出力しても良い。さらには、検査結果表示装置などに出力しても良い。
【0102】
なお、上述の実施形態では、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29がそれぞれ照射する光は、白色光が好適に用いられるが、これに限らず、特定の波長域の略単色の光であっても良い。さらには、CCDエリアセンサ23が感度のある波長域であれば、赤外光などを用いてもよい。また、透過型暗視野照明26、反射型暗視野照明27、透過型明視野照明28、反射型明視野照明29のそれぞれを異なる色の照明としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】外観検査装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】外観検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】外観検査装置の作用を示すフローチャートである。
【図4】レンズに生じる欠陥を示す説明図である。
【図5】第1差分画像の様子を示す説明図である。
【図6】第2差分画像の様子を示す説明図である。
【図7】第3差分画像の様子を示す説明図である。
【図8】第4差分画像の様子を示す説明図である。
【図9】遮光板によって照明パネルを透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに切り替える様子を示す説明図である。
【図10】液晶パネルを透過型暗視野照明及び透過型明視野照明として用いる例を示す説明図である。
【図11】液晶パネルを透過型暗視野照明として用いる場合に、無発光部の大きさが変化する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0104】
10 外観検査装置
15 検査トレイ
16 レンズ
26 透過型暗視野照明(第1照明手段)
27 反射型暗視野照明(第2照明手段)
28 透過型明視野照明(第3照明手段)
29 反射型明視野照明(第4照明手段)
23 CCDエリアセンサ
36,37 マスク板
46 評価部
44 差分画像作成部
43 リファレンス画像作成部
49 データ通信部
76 サーバ
56,57,58,59 元画像
61,62,63,64 リファレンス画像
66,67,68,69 差分画像 71,72,73,74 閾値
106 照明パネル
108 遮光板
116 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外観を検査される被検体を撮像する撮像手段と、
前記被検体と前記撮像手段との相対的な位置を変えずに相互に切り替えられるように、前記被検体を各々異なる方向から一様に照明する複数の照明手段と
を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第1照明手段
を備えることを特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第2照明手段
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第3照明手段
を備えることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第4照明手段
を備えることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
外観を検査される被検体を撮像する撮像手段と、
前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第1照明手段と、
前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射しないように前記被検体を一様に照明する第2照明手段と、
前記被検体に対して前記撮像手段の反対側に配置され、前記被検体を透過した照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第3照明手段と、
前記被検体に対して前記撮像手段と同じ側に配置され、前記被検体に反射された照明光が前記撮像手段に入射するように前記被検体を一様に照明する第4照明手段と
を備え、
前記第1照明手段、前記第2照明手段、前記第3照明手段、及び前記第4照明手段は、前記被検体と前記撮像手段との相対的な位置を変えずに相互に切り替えられるように設けられていること
を特徴とする外観検査装置。
【請求項7】
前記第1照明手段は、前記第3照明手段からの光を遮る遮光板を前記第1照明手段の前面に配置して切り替えられる照明であることを特徴とする請求項4乃至6何れかに記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記第1照明手段は、前記第3照明手段の発光面の一部を選択的に消光して切り替えられる照明であることを特徴とする請求項4乃至6何れかに記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記第2照明手段又は前記第4照明手段で前記被検体を照明するときに、前記撮像手段に対向する位置に前記第1照明手段が配置されていることを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−249568(P2008−249568A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92645(P2007−92645)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】