多孔質炭素の製造方法及び電子デバイスの製造方法
【課題】多孔質炭素の製造方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて水和したポリマーゲルを生成させる工程と、水和したポリマーゲルを、急速凍結又は緩慢凍結させる工程と、凍結された水和したポリマーゲルを凍結乾燥させる工程と、凍結乾燥された水和したポリマーゲルを焼成して炭化ゲルを生成させる工程を有し、水和したポリマーゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御され、1μm以上、1000μm以下の細孔径を有する多孔質炭素を生成させる。
【解決手段】水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて水和したポリマーゲルを生成させる工程と、水和したポリマーゲルを、急速凍結又は緩慢凍結させる工程と、凍結された水和したポリマーゲルを凍結乾燥させる工程と、凍結乾燥された水和したポリマーゲルを焼成して炭化ゲルを生成させる工程を有し、水和したポリマーゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御され、1μm以上、1000μm以下の細孔径を有する多孔質炭素を生成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1μm以上の細孔サイズが制御可能な多孔質炭素の製造方法、及び、この製造方法を適用した電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質炭素は二次電池、キャパシタ等のエネルギー貯蔵システム、吸着材、各種金属触媒の担体等に広く使用されている。
【0003】
従来、多孔質炭素であるカーボンゲルは、例えば、レゾルシノール(R)とホルムアルデヒド(F)を弱塩基性下でゾル−ゲル重合させ、この重合によって得られたRF湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを作製し、これを不活性雰囲気下で炭化することによって得られていた。
【0004】
多孔質炭素の製造法の1つとして、湿潤ゲルを使用する方法が知られている(例えば、後記の特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0005】
先ず、「活性炭」と題する後記の特許文献1には、次の記載がある。
【0006】
有機エアロゲル(2)の製造方法としては、例えば、フェノール性化合物、アルデヒド化合物、塩基性触媒及び水系溶媒を一括で混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて攪拌して湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;フェノール性化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;アルデヒド化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にフェノール性化合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;フェノール性化合物、アルデヒド化合物及び水系溶媒からなる混合物に塩基性触媒を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法等が挙げられる。中でもフェノール性化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を混合させて湿潤ゲルを得る方法が好ましいとしている。
【0007】
湿潤ゲルの乾燥は、例えば、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法等が挙げられる。また、湿潤ゲル中の溶媒が水である場合、親水性有機溶媒で置換した後、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法等が挙げられる。上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等の脂肪族ニトリル類;アセトン等の脂肪族ケトン類;ジメチルスルホキシド等の脂肪族スルホキシド類;酢酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。
【0008】
親水性有機溶媒としては、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、酢酸が好ましく用いられ、t−ブチルアルコールは水と置換し易いことから特に好ましい。また、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法に代えて、凍結乾燥を実施してもよい。凍結乾燥における温度は、通常、−70〜20℃の範囲であり、好ましくは−30〜10℃の範囲である。また、凍結乾燥は、通常、真空下で実施される。更に、特開平9−328308号公報に記載されているように、二酸化炭素等を用いて、超臨界状態下で乾燥してもよい。湿潤ゲルの乾燥方法としては、凍結乾燥が乾燥による細孔容積の変動が少ないことから好ましいとしている。
【0009】
また、「炭素材料の製造方法及び該炭素材料を含む電気二重層キャパシタ」と題する後記の特許文献2には、次の記載がある。
【0010】
特許文献2の発明は、下記[1]〜[5]工程を含む炭素材料の製造方法、および該炭素材料を含む電気二重層キャパシタである。
[1]フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を反応させて湿潤ゲルを作製する工程。
[2][1]で得られた湿潤ゲルを脱水して、乾燥ゲルを作製する工程。
[3][2]で得られた乾燥ゲルに、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸、反応させて、再湿潤ゲルを作製する工程。
[4][3]で得られた再湿潤ゲルを脱水して、再乾燥ゲルを作製する工程。
[5][4]で得られた再乾燥ゲルを焼成して炭素材料を作製する工程。
[2]工程は、[1]で得られた湿潤ゲルを脱水する工程であり、この工程で乾燥ゲルを得ることができる。湿潤ゲルから水を除去する方法としては、例えば、水を直接、通風乾燥法、減圧乾燥法、30〜150℃程度での加熱乾燥法、0℃以下での凍結乾燥法、或いはこれらの乾燥法の組合せ等が挙げられるが、好ましい実施態様として、前記湿潤ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換したのち、該親水性有機溶媒を除去する方法が推奨されるとしている。
【0011】
親水性有機溶媒を除去する方法としては、例えば、通風乾燥法、減圧乾燥法、30〜150℃程度での加熱乾燥法、0℃以下での凍結乾燥法、或いはこれらの乾燥法の組合せ等が挙げられるが、凍結乾燥法は、ゾル−ゲル反応により作られた湿潤ゲルを構成する粒子の三次元の網目状構造を保持することができることから好ましい。すなわち、凍結乾燥法形態及び機能的に三次元の網目状構造が有する性状を維持しつつ、湿潤ゲル中の親水性有機溶媒等の液体を除去することができるとしている。
【0012】
更に、凍結乾燥装置を用いることにより、湿潤ゲルを短時間で乾燥することができると共に、乾燥ゲルの製造コストを低減化することができることから好ましい。凍結乾燥における凍結温度は、通常は−70〜0℃の範囲であり、好ましくは−30〜−5℃の範囲であるとしている。
【0013】
[3]工程は、[2]工程で得られた乾燥ゲルに、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸させ、反応させる工程であり、乾燥ゲルが有するマクロ孔やメソ孔等の空孔、中でもメソ孔に、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸させ、該水溶液からコロイド粒子を経て、乾燥ゲル内の空孔に更に三次元網目構造を形成させた再湿潤ゲルを得る工程である。
【0014】
[4]工程は、[3]工程で得られた含浸ゲルを脱水する工程であり、再乾燥ゲルを得る工程である。具体的には[2]工程の項で例示された方法と同様に行えばよい。[2]工程と[4]工程は同一条件でも異なった条件で行ってもよい。
【0015】
[5]工程は、[4]工程で得られた再乾燥ゲルを焼成(炭化)し、炭素材料を得る工程である。通常は、不活性ガス雰囲気中で行われ、焼成(炭化)時の不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素等が好ましい。焼成(炭化)温度は、通常は200〜3000℃の範囲であり、体積抵抗率を低減させるためには、カルボキシル基等の官能基を除去し得る800℃以上であることが好ましく、グラファイト化を抑制するためには1100℃以下であることが好ましい。焼成時間は、通常は数分間〜数時間の範囲であるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
はじめに、以下の説明で使用する用語について説明しておく。
【0017】
「有機ポリマーヒドロゲル(単に、ポリマーヒドロゲルとも言う。)」は、水和(hydration)した有機ポリマーゲル(単に、ポリマーゲルとも言う。)であり、有機ポリマー骨格の間に取り込まれた水を含み、有機湿潤ゲル(単に、湿潤ゲルとも言う。)とも言う。
【0018】
「有機ポリマークライオゲル(単に、ポリマークライオゲル、有機エアロゲルとも言う。)」は、ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させて得られ、ゲル中に含まれる水を空気に置換したゲルを意味するものとする。
【0019】
「炭化ゲル」は、ポリマークライオゲルを焼成して得られたゲルを意味するものとする。
【0020】
多孔質炭素は、吸着剤、触媒担体等の化学分野、高電導材料等のエレクトロニクス分野等の多くの分野で利用されている。多孔質炭素を使用する目的に対応して、最適な細孔特性を有する多孔質炭素をどのようにして製造するのかは非常に重要な課題である。
【0021】
二次電池、キャパシタ等のエネルギー貯蔵システムはその容量を向上させるために、使用される炭素材料の用途に最も適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求されている。同様に、吸着材、各種金属触媒の担体等に使用される炭素材料に関しても、その用途に最も適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求されている。従来、ナノメータ(nm)オーダの細孔サイズを有する多孔質炭素に関する研究開発が盛んであるが、ミクロンメータ(μm)オーダの細孔サイズを有する多孔質炭素に関する研究開発は進んでおらず、使用用途に適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素の製造方法が望まれている。
【0022】
例えば、多孔質炭素は、燃料電池に使用される触媒の担体として注目されているが、これまでの研究開発は、主としてミクロ細孔と呼ばれる0.001μmから0.002μmのサイズの範囲の細孔をもつ多孔質炭素に関するものであった。このミクロ細孔は、大きな表面積を実現するために必須なものであるが、ミクロ細孔、メソ細孔より大きな細孔は、細孔体積やバルク密度のような性質に影響する。
【0023】
多孔質炭素を触媒層、拡散層に使用する燃料電池では、触媒層、拡散層のもつ特性、例えば、燃料ガスや酸化剤ガスの透過率、水分透過率、機械的強度等の特性は、多孔質炭素の特性によって大きく左右される。メタノール燃料電池では、フラッディング現象、メタノールクロスオーバーは、拡散層、触媒層の空隙の大きさが関係しており、燃料電池の特性を優れたものとするためには、多孔質炭素の空隙の大きさが最適なものとなるように制御することが重要である。優れた特性をもつ燃料電池を実現するために細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求され、細孔サイズが制御された多孔質炭素の製造方法が望まれている。
【0024】
従来、湿潤ゲルを使用する多孔質炭素の製造法では、殆どの場合、湿潤ゲルから水を除去する方法として、湿潤ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換した後、親水性有機溶媒を除去する方法がとられている。親水性有機溶媒を除去する方法として、減圧乾燥法、加熱乾燥法、凍結乾燥法、超臨界乾燥法等が使用されているが、1μm以上、1000μm以下のマクロ細孔を有する多孔質炭素を製造するための乾燥方法はこれまで検討が進んでいない。
【0025】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、1μm以上の細孔サイズが制御可能な多孔質炭素の製造方法、及び、この製造方法を適用した電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
即ち、本発明は、水(例えば、後述の実施の形態における脱イオン水)を溶媒として塩基性触媒(例えば、後述の実施の形態における炭酸ナトリウム)の存在下でフェノール類合物(例えば、後述の実施の形態におけるレゾルシノール)とアルデヒド類合物(例えば、後述の実施の形態におけるホルムアルデヒド)を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4工程とを有する、多孔質炭素の製造方法に係るものである。
【0027】
また、本発明は、上記の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成する電子デバイスの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、凍結乾燥された有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4工程とを有するので、前記有機ポリマーヒドロゲルに取り込まれている水を有機溶媒によって置換することなく、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させるので、高価な装置を使用することなく、より少ない工程により低コストで1μm以上の細孔を有する多孔質炭素を製造することができる多孔質炭素の製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、上記の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成するので、低コストで目的とする電子デバイスが製造可能な電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における、炭素材料の製造方法を説明する図である。
【図2】同上、水和したポリマーゲルの凍結方法を説明する図である。
【図3】同上、凍結曲線の概要を説明する図である。
【図4】同上、水和したポリマーゲルの凍結乾燥を行う装置の概要を説明する図である。
【図5】同上、直接メタノール燃料電池(DMFC)の構成例を示す断面図である。
【図6】同上、高分子電解質燃料電池(PEFC)の構成例を示す断面図である。
【図7】同上、電気二重層キャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図8】同上、ハイブリッドキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図9】同上、レドックスキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図10】本発明の実施例における、炭化ゲルの製造方法を説明する図である。
【図11】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図12】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図13】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図14】同上、炭化ゲルの対数微分細孔容積分布を説明する図である。
【図15】同上、炭化ゲルと市販品炭素の特性比較を説明する図である。
【図16】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図17】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図18】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の多孔質炭素の製造方法では、前記第2工程において、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって、細孔の源となる氷結晶の大きさを制御して所望の前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。なお、最大氷結晶生成帯は、前記有機ポリマーヒドロゲルの含有する水が氷に変わる温度(氷結点)に達し、氷結晶が生成する約0℃から−5℃〜−7℃までの温度帯を意味し、この最大氷結晶生成帯を通過する時間は、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯の温度におかれ氷結晶が生成される時間(即ち、凍結時間)である。
【0032】
また、前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させる構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0033】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、100μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、100μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0034】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が10μm以上、30μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間がより短くなるように制御することによって、10μm以上、30μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0035】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを63K以上、77K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な液体窒素を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを短時間で急速凍結させることができる。
【0036】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを小片に分割した後に急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、2μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが効率よく急速凍結され、前記細孔径を1μm以上、2μm以下とすることができる。
【0037】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを水に分散させた分散溶液を噴霧して急速凍結させる構成とするのがよい。このような構成によれば、噴霧によって微小な液滴とされた前記有機ポリマーヒドロゲルを効率よく急速凍結することができる。
【0038】
また、噴霧された前記分散溶液の液滴を63K以上、77K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な液体窒素を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを短時間で急速凍結させることができる。
【0039】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が100μm以上、1000μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、100μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0040】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が500μm以上、1000μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間がより長くなるように制御することによって、500μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0041】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを200K以上、273K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、汎用的な低コストの装置を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させることができる。
【0042】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを冷蔵庫又は凍結庫中で凍結させる構成とするのがよい。このような構成によれば、冷蔵庫又は凍結庫の動作温度条件を制御することによって、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することができる。
【0043】
また、前記第1工程において、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物、及び、前記塩基性触媒を前記溶媒に溶解させた後、355K以上、365K以下の温度に昇温する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記溶媒である水の蒸発が過度になく、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物の水溶液中でのゾル−ゲル重合の反応速度を高め効率よく均一な前記有機ポリマーヒドロゲルを生成することができる。
【0044】
また、前記フェノール類合物がレゾルシノール、前記アルデヒド類合物がホルムアルデヒド、前記塩基性触媒が炭酸ナトリウムである構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な材料によって他校いつ炭化水素を生成することができる。
【0045】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルは、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させることができる。
【0046】
また、前記第4工程において、大気圧の不活性ガス下で、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが焼成される構成とするのがよい。このような構成によれば、酸化による損失がなく前記有機ポリマーヒドロゲルを炭化させることができる。
【0047】
また、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが873K以上、1473K以下の温度で焼成される構成とするのがよい。このような構成によれば、活性化された多孔質炭素を生成することができる。
【0048】
本発明の電子デバイスの製造方法では、電子デバイスを、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタとして構成するのがよい。このような構成によれば、低コストで電子デバイスが製造可能な電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0050】
[実施の形態]
〈多孔質炭素の製造方法〉
本発明では、フェノール類合物とアルデヒド類合物を塩基性触媒の存在下の水溶液中で重合させ、重合反応で生成したポリマーが水溶液中に含まれるゾル状態を経て、最終的にゲルの隙間に水が含まれた有機湿潤ゲルを生成させる。そして、この湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間が制御された下で湿潤ゲルを凍結させ、続いて、凍結乾燥によって乾燥させ、制御された細孔サイズを有する乾燥ゲル(有機エアロゲル)を作製し、これを不活性雰囲気下で焼成して炭化させ制御された細孔サイズを有する多孔質炭素を得ることができる。湿潤ゲルを凍結する際、図3によって後述するように、最大氷結晶生成帯を通過させる時間(湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯の温度におかれ氷結晶が生成される時間(凍結時間))を制御することによって、細孔の源となる氷結晶の大きさを制御することができる。
【0051】
図1は、本発明の実施の形態における、多孔質炭素の製造方法を説明する図である。
【0052】
図1に示すように、先ず、水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を混合し、酸を添加し固相を溶解させた後、加熱してフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて、水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル、又は、有機湿潤ゲル)を生成させる。
【0053】
次に、この有機湿潤ゲルを急速凍結又は緩慢凍結させ、続いて、この凍結された有機湿潤ゲルを凍結乾燥させポリマークライオゲル(有機エアロゲル)を生成し、最後に、ポリマークライオゲルを不活性雰囲気下で焼成処理して炭化させ多孔質炭素を得る。このようにして得られた多孔質炭素は、所望の粒径をもつように粉砕処理される。
【0054】
以下、水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル)の生成、有機ポリマーヒドロゲルの凍結、ポリマークライオゲルの生成、炭化ゲルの生成についてより詳細に説明する。
【0055】
(水和したポリマーゲルの生成)
水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル)は、蒸留水、イオン交換水を溶媒として使用し、塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させるが、フェノール類化合物として、例えば、レゾシノール(m−ジオキシベンゼン)、ヒドロキノン(p−ジオキシベンゼン)、カテコール(o−ジオキシベンゼン)、フェノールを使用することができる。また、アルデヒド類化合物として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドを使用することができる。ホルムアルデヒドは水溶性であり、フェノール類化合物との反応性が良好であり、ゾル−ゲル反応を効率的に行うことができる。また、塩基性触媒として、水溶性のアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)を使用することができる。
【0056】
好適な具体例としては、フェノール類合物としてレゾルシノール、アルデヒド類合物としてホルムアルデヒド、塩基性触媒として炭酸ナトリウムが使用され、酸の添加によってこれらが溶解された水溶液が355K以上、365K以下の温度に昇温され、ゾル−ゲル反応が進行して、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する有機ポリマーヒドロゲルが形成される。
【0057】
次に、有機ポリマーヒドロゲルの凍結について説明する。
【0058】
(有機ポリマーヒドロゲルの凍結)
図2は、本発明の実施の形態における、水和したポリマーゲル(湿潤ゲル)の凍結方法を説明する図であり、図2(A)及び図2(B)は急速凍結、図2(C)は緩慢凍結を説明する図である。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態における、凍結曲線の概要を説明する図である。
【0060】
図3に示す凍結曲線は、凍結対象物体(ここでは、湿潤ゲルである。)を凍結したとき、時間の経過に伴う凍結対象物体の温度の変化を示すものであり、縦軸は凍結対象物体の温度、横軸は時間の経過を示す。
【0061】
一般に、凍結対象物体が冷却環境におかれると、凍結対象物体の温度が時間と共に低下していき、凍結対象物体の氷結点(水が氷に変わる温度)に達し、氷結晶が生成する約0℃から−5℃〜−7℃までの温度帯(「最大氷結晶生成帯」と呼ばれる。)を通過し、時間の経過と共に凍結対象物体の温度は低下していき、冷却環境で与えられる温度まで下がる。冷却環境は、例えば、固体炭素と有機溶媒による寒剤、液体窒素、液体酸素等の冷媒、冷蔵庫、冷凍庫等によって与えられる。
【0062】
図3に示す、最大氷結晶生成帯と呼ばれる約0℃から−5℃〜−7℃までのゾーンは、凍結対象物体に含まれる水が氷に変化し、冷却熱が氷結晶の生成に要する潜熱として消費され、氷結晶の成長が促進されるゾーンである。従って、最大氷結晶生成帯を通過する通過時間(T)、言い換えると、凍結対象物体が最大氷結晶生成帯におかれ氷結晶が生成される時間(T)(以下、「凍結時間」と言う。)の長短によって凍結対象物体中に含まれる水から生成される氷結晶の大きさが異なる。
【0063】
図3に示す右方の凍結曲線で示され、氷結晶生成帯を急速に短時間で通過させる急速凍結では、多数の微細結晶の氷結晶が凍結対象物体に生じる。一方、図3に示す左方の凍結曲線で示され、最大氷結晶生成帯をゆっくりと時間をかけて通過させる緩慢凍結では、少数の大きな氷結晶が凍結対象物体に生じる。なお、図3では、急速凍結における凍結時間(T)をTr、緩慢凍結における凍結時間(T)をTsで示している。
【0064】
本発明では、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間(凍結時間)(T)を制御することによって、最終的に炭化ゲルに生成される細孔の源となる氷結晶の大きさを制御することができ、炭化ゲルの細孔径を1μm以上、1000μm以下の範囲に制御ことができる。
【0065】
図2(A)は、小片化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を液体窒素中に投入して急速凍結する例を示している。液体窒素を用いて63K以上、77K以下の温度に湿潤ゲルを冷却し、例えば、凍結しようとする湿潤ゲルの大きさを変える等によって、急速凍結における凍結時間(Tr)が短い時間となるように制御することによって、細孔径を1μm以上、100μm以下の範囲、或いは、10μm以上、30μm以下の範囲に制御することができる。
【0066】
図2(B)は、霧化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を液体窒素中に入れて急速凍結する例を示している。湿潤ゲルを微細片化してこれを水に分散させた分散溶液を液体窒素中に噴霧して、湿潤ゲルを含む霧(液滴)を63K以上、77K以下の温度に冷却し微細な凍結体として、凍結時間(Tr)が短い時間となるように急速凍結させることによって、細孔径を1μm以上、2μm以下の範囲に制御することができる。
【0067】
図2(C)は、小片化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を冷凍庫(freezing storage)に入れて庫内の温度を制御し、例えば、200K以上、273K以下の温度に湿潤ゲルを冷却し、緩慢凍結する例を示している。例えば、凍結しようとする湿潤ゲルの大きさを変える、或いは、凍結時間(Ts)が長い時間となるように冷凍庫内の温度を制御する等によって、凍結時間(Ts)を制御することによって、細孔径を100μm以上、1000μm以下の範囲、或いは、500μm以上、1000μm以下の範囲に制御することができる。冷凍庫に換えて−10℃以下に冷却可能な冷蔵庫(cooling storage)を使用して、湿潤ゲルの緩慢凍結をおこなうことができることは言うまでもない。
【0068】
次に、凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥によるポリマークライオゲルの生成について説明する。
【0069】
(凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥:ポリマークライオゲルの生成)
ことで凍結乾燥対象とされる例は、図2(A)又は図2(B)に示した急速凍結によって得られもの(図4に示す(A)又は(B))であり、液体窒素中の凍結された湿潤ゲル、或いは、図2(C)に示した緩慢凍結によって得られもの(図4に示す(C))であり、冷凍庫の冷凍用容器中の凍結された湿潤ゲルである。
【0070】
図4に示すように、凍結乾燥(フリーズドライ)装置は、排気ポンプによって排気される真空室と、この中に配置され熱媒体によって加熱される加熱ステージ、冷凍機によって低温に保持されたコールドトラップから構成されている。凍結乾燥の概要は次の通りである。
【0071】
例えば、0.1mmHgの圧力下では、1gの氷は蒸発して10,000Lにも膨張するため、これを排気ポンプのみで排気することは実用的にできない。凍結乾燥装置では、凍結された乾燥対象(ここでは、凍結されたポリマーヒドロゲルである。)から昇華してくる水蒸気は、冷凍機によって低温に保持されたコールドトラップ(例えば、冷凍パイプ)に同体積の氷として凝固されるので、コールドトラップが排気ポンプの役割を果たしている。装置内の真空度は常に低く保たれ、乾燥対象の温度は飽和蒸気圧と対応して低温のまま保持され、水の昇華が進行し乾燥対象は脱水されていく。排気ポンプは、乾燥初期に装置内の空気を排気するために使用され、乾燥工程では、コールドトラップでトラップされなかった非凝縮ガスを排出するのに使用される。
【0072】
熱源による熱エネルギーは、熱交換機を通して熱媒体に付与され、熱媒体によって加熱ステージが加熱され、乾燥対象に昇華潜熱として伝達され、乾燥対象から昇華した水は、コールドトラップで熱を放出して氷に戻り、その熱は冷却機の冷却水に放熱される。乾燥対象からの水の昇華は進行し、水の昇華量が少なくなるに従って、加熱ステージから供給される熱の方が多くなり、熱バランスが崩れ乾燥対象の温度が上昇していく。凍結乾燥装置を使用することにより、低コストで湿潤ゲルを短時間で乾燥させ、ポリマークライオゲルを生成することができる。
【0073】
以上の説明では、湿潤ゲルの凍結と、凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥を分けて説明したが、湿潤ゲルの凍結と凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥を、図4に示す凍結乾燥装置内で連続して行うことができることは言うまでもない。
【0074】
次に、ポリマークライオゲルを焼成処理による炭化ゲルの生成について説明する。
【0075】
(ポリマークライオゲルの焼成:炭化ゲルの生成)
ポリマークライオゲルは、大気圧の不活性ガス下で、873K以上、1473K以下の温度で焼成され炭化ゲルとされ、活性化された多孔質炭素が得られる。得られた多孔質炭素は、粉砕機を使用して、使用目的に応じた所望の粒径とされる。
【0076】
このようにして得られた多孔質炭素は、各種の電子デバイスに使用することができ、電子デバイスは、例えば、多孔質炭素を白金触媒が担持される担体として具備する燃料電池、多孔質炭素を使用して形成されたガス拡散層を具備する燃料電池、多孔質炭素を使用して形成された電極を具備する二次電池、多孔質炭素を使用して形成された電極を具備するキャパシタ(電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタ)等である。
【0077】
また、多孔質炭素は、種々の化学種の吸着剤、一般の化学反応用の触媒の担体として使用することができることは言うまでもない。
【0078】
次に、本発明による多孔質炭素が適用される燃料電池について説明する。
【0079】
<本発明による多孔質炭素用される燃料電池>
本発明による多孔質炭素が適用され形成される触媒層、ガス拡散層を燃料電池に使用することができる。次に、この燃料電池の例について説明する。
【0080】
図5は、本発明の実施の形態におけるDMFC(直接型メタノール燃料電池)の構成例を説明する断面図である。
【0081】
図5に示すように、メタノール水溶液が燃料25として、流路をもつ燃料供給部(セパレータ)50の入口26aから通路27aへと流され、基体である導電性のガス拡散層24aを通って、ガス拡散層24aによって保持された触媒電極22aに到達し、図5の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上でメタノールと水が反応し、水素イオン、電子、二酸化炭素が生成され、二酸化炭素を含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、プロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、基体である導電性のガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22bに到達する。
【0082】
図5に示すように、空気又は酸素35が、流路をもつ空気又は酸素供給部(セパレータ)60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22aに到達し、図5の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bら排出される。図5の下方に示すように全反応は、メタノールと酸素から電気エネルギーを取り出して水と二酸化炭素を排出するというメタノールの燃焼反応となる。
【0083】
図6は、本発明の実施の形態におけるPEFC(高分子電解質型燃料電池)の構成例を説明する断面図である。
【0084】
図6に示すように、加湿された水素ガスが燃料25として、燃料供給部50の入口26aから通路27aへと流されガス拡散層24aを通って、触媒電極22aに到達し、図6の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上で水素ガスから水素イオン、電子が生成され、余剰の水素ガスを含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、プロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、ガス拡散層24bを通って触媒電極22bに到達する。
【0085】
図6に示すように、空気又は酸素35が、空気又は酸素供給部60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って触媒電極22aに到達し、図6の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bら排出される。図6の下方に示すように全反応は、水素ガスと酸素から電気エネルギーを取り出して水を排出するという水素ガスの燃焼反応となる。
【0086】
図5、図6において、高分子電解質膜23は、プロトン伝導性複合電解質が結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着されて形成されている。高分子電解質膜23によって、アノード20とカソード30が隔てられ、高分子電解質膜23を通して水素イオンや水分子が移動する。高分子電解質膜23は、水素イオンの伝導性が高い膜であり、化学的に安定であって機械的強度が高いことが好ましい。
【0087】
図5、図6において、触媒電極22a、22bは、集電体である導電性の基体を構成し、ガスや溶液に対して透過性をもったガス拡散層24a、24b上に密着して形成されている。ガス拡散層24a、24bは、例えば、カーボンペーパー、カーボンの成形体、カーボンの焼結体、焼結金属、発泡金属等の多孔性基体から構成される。燃料電池の駆動によって生じる水によるガス拡散効率の低下を防止するために、ガス拡散層は、フッ素樹脂等で撥水処理されている。
【0088】
触媒電極22a、22bは、例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金等からなる触媒が担持された担体が、結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着され形成されている。担体として、例えば、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素、アルミナ、シリカ等の無機物微粒子が使用される。結着剤を溶解させた有機溶剤に炭素粒子(触媒金属が担持されている。)が分散された溶液を、ガス拡散層24a、24bに塗布し、有機溶剤を蒸発させて結着剤によって結着された膜状の触媒電極22a、22bが形成される。
【0089】
高分子電解質膜23が、ガス拡散層24a、24b上に密着して形成された触媒電極22a、22bによって挟持され、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)40が形成されている。触媒電極22a、ガス拡散層24aによってアノード20が構成され、触媒電極22b、ガス拡散層24bによってカソード30が構成されている。アノード20及びカソード極30は高分子電解質膜23に密着し、炭素粒子の間にプロトン伝導体が入り込み、触媒電極22a、22bに高分子電解質(プロトン伝導体)を含浸させた状態となって、触媒電極22a、22と高分子電解質膜23とが密着して接合され、接合界面で水素イオンの高い伝導性が保持され、電気抵抗が低く保持される。
【0090】
なお、図5、図6に示した例では、燃料25の入口26a、排ガス29aの出口28a、空気又は酸素(O2)35の入口26b、排ガス29bの出口28bの各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に垂直に配置されているが、上記の各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に平行に配置されている構成とすることもでき、上記の各開口部の配置に関して種々の変形が可能である。
【0091】
図5、図6に示す燃料電池の製造は、各種文献に公知されている一般的な方法を利用できるので、製造に関する詳細な説明は省略する。
【0092】
次に、本発明による多孔質炭素が適用されるキャパシタについて説明する。
【0093】
<本発明による多孔質炭素が適用される電気二重層キャパシタ>
図7は、本発明の実施の形態における、電気二重層キャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0094】
図7に示すように、電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor:EDC))は、セパレータ13を挟んで配置された分極性電極(正極)10a及び分極性電極(負極)10bと、分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bにそれぞれ接合された集電体12と、電解質に対して不溶性、耐食性を有し、密封、封止するための電気絶縁性樹脂からなるガスケット14から構成されている。分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bはそれぞれ、多孔質炭素からなる電極であり、電解質が非プロトン性溶媒に溶解された電解質液が含浸されている。分極性電極10a、10bと電解質との間に形成される界面(電気二重層)に電荷が蓄えられ、電気エネルギーが貯蔵される。
【0095】
電解質として、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキレン基を有する4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、これらのアルキル基やアルキレン基のHの少なくとも1つがF等のハロゲンに置換されたハロゲン化アンモニウム塩等のオニウム塩等からなるイオン解離性塩が使用される。
【0096】
非プロトン性溶媒として、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の環状炭酸エステル類、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、スルホラン、トリメチルホスフェート等が使用される。
【0097】
セパレータは、イオン透過度が大きく、電解質に対して不溶性、耐食性を有する電気絶縁性樹脂、ガラス繊維やセラミクス等からなる多孔質フィルム、不織布又は抄紙等からなり、電解質液が含浸されている。集電体としては、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム合金等の金属が使用される。
【0098】
<本発明による多孔質炭素が適用されるハイブリッドキャパシタ>
図8は、本発明の実施の形態における、ハイブリッドキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0099】
ハイブリッドキャパシタは、充電時に、負極においてリチウムイオンが黒鉛等のカーボンの層間に挿入され、正極では電極表面に電解質のアニオンが引き寄せられて電気二重層を構成することにより、蓄電されるデバイスである。
【0100】
図8に示すように、ハイブリッドキャパシタは、図7に示す電気二重層キャパシタにおいて、分極性電極(負極)10bをリチウムイオン二次電池の負極と同様の黒鉛電極(負極)10cに換えた構成を有している。
【0101】
電解質として、リチウムカチオンと無機アニオンとの組み合わせが用いられ、無機アニオンは、BF4-、PF6-、ClO4-からなる群から選ばれる少なくとも1種が使用される。電解質液に含まれる有機極性溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン等が使用される。
【0102】
<本発明による多孔質炭素が適用されるレドックスキャパシタ>
図9は、本発明の実施の形態における、レドックスキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0103】
レドックスキャパシタは、擬似容量を利用して、電気二重層キャパシタの容量拡大をしたキャパシタであり、電気エネルギーの貯蔵と放出に、電極材料の酸化還元、電気二重層における充放電、電極表面でのイオンの脱吸着を利用するものである。
【0104】
図9に示すように、レドックスキャパシタは、図7に示す電気二重層キャパシタにおいて、分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bをそれぞれ、電極(正極)10d、電極(負極)10に換えた構成を有している。電極(正極)10d、電極(負極)10はそれぞれ、多孔質炭素からなる電極であり、活物質を含む電解質液が含浸されている。活物質は、ルテニウム等の遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、導電性高分子等である。電解質液として、ルテニウム等の遷移金属酸化物又は遷移金属水酸化物を活物質とするとき、硫酸水溶液を電解液とし、導電性高分子を活物質とするとき、LiBF4、LiPF6、LiClO4等のリチウム塩等の電解質を溶解し解離させた有機溶媒を電解液とする。電解質液に含まれる溶媒は、電気二重層キャパシタで使用される非プロトン性溶媒が使用される。
【0105】
次に、多孔質炭素に関する実施例について説明する。
【実施例】
【0106】
本発明の実施例では、レゾルシノールとホルムアルデヒドが重合され相互に連結された網目構造に水が満たされて構成される水和されたレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル(湿潤ゲル)が、ゾル−ゲルプロセスによって合成される。
【0107】
この湿潤ゲルが凍結されると、ゲル中に取り込まれた水は結晶化して六方晶系の氷結晶を生成するため、ゲルの網目構造は離散的なものとなる。この氷結晶の大きさは、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を変化させることによって制御することができる。
【0108】
湿潤ゲルの急速凍結は小さな氷結晶を生成し、この小さな氷結晶が生成された箇所から後処理(凍結乾燥)によって氷結晶が昇華されるので、例えば、1μm以上、100μm以下のサイズを有する細孔を生じることになる。湿潤ゲルの急速凍結は、例えば、湿潤ゲルを液体窒素中に置く方法、その他の方法によってなされる。湿潤ゲルの緩慢凍結は、より大きな氷結晶を形成し、このより大きな氷結晶が生成された箇所から後処理(凍結乾燥)によって氷結晶が昇華されるので、例えば、100μm以上、1000μm以下のサイズを有する細孔を生じることになる。湿潤ゲルの緩慢凍結は、例えば、湿潤ゲルを−10℃の凍結庫中に置く方法、その他の方法によってなされる。
【0109】
このように湿潤ゲルを凍結処理して、更に、凍結乾燥することによって、湿潤ゲルから水が除去され、低密度、多孔質のレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル(有機エアロゲル)が形成される。
【0110】
この有機エアロゲルは、大気圧の不活性ガス中で加熱処理することによって炭化され、炭化ゲルとされる。
【0111】
本発明の実施例による方法では、最終的に形成される炭化ゲルの細孔径は、湿潤ゲルの凍結工程で形成される氷結晶の大きさによって決定されるので、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を変化させることによって、細孔径の大きさを調整することができ、1μm以上、1000μm以下の範囲の大きさの細孔を有する多孔質炭素を合成することができた。
【0112】
なお、従来法では、殆どの場合、0.5nmから10nmの範囲の大きさの細孔を有する多孔質炭素が合成されているに過ぎない。また、従来法では、湿潤ゲルから水を一旦、有機溶媒で置換した後、有機溶媒を除去しているが、本発明の実施例では、有機溶媒を使用することなしに、水溶液中でのゾル−ゲルプロセスによって形成された湿潤ゲルを、有機溶媒置換を行うことなく、凍結処理して、更に、凍結乾燥することによって水を除去する。
【0113】
[実施例1]
図10は、本発明の実施例における、炭化ゲルの製造方法を説明する図である。
【0114】
図10に示すように、先ず、水和したポリマーゲル(湿潤ゲル)を生成させる。図2(A)に示すように湿潤ゲルを小片化しこの湿潤ゲルを凍結させた後、続いて、凍結乾燥させてポリマークライオゲルを生成させ、最後にこれを焼成して炭化ゲルを生成させる。
【0115】
(湿潤ゲルの生成)
レゾルシノール(C6H6O2)4g、ホルムアルデヒド(HCHO)(10%水溶液)6g、脱イオン水 190mL、炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.08gを、密封可能なプラスチック製容器(容積500mL)に入れ、磁気攪拌子で攪拌する間に、固相が溶解しpHが6.0となるまで5% 硝酸(HNO3)を滴下した。ラスチック製容器を密封して、87℃に保持された加熱炉に24時間置いた。この結果、形成されたゲル(湿潤ゲル)は堅く、密封されたプラスチック製容器の約200mLを占有していた。このゲルを室温まで冷却した後、ゲルをガラス棒でかき混ぜて小片化させ約1cm3 の大きさのゲル片とした。このゲル片を大きなブフナの漏斗(Bucher funnel)に入れて、ゲル片を水で繰り返し洗浄した。
【0116】
(湿潤ゲルの急速凍結及び凍結乾燥)
次に、湿潤ゲル片を液体窒素が収納されたデュア瓶に投入した。ゲル片が完全に凍結した後、凍結されたゲルを真空排気用容器内に入れて、真空圧力が安定化し氷が除去されたことを示すまで、コールドトラップを介して真空排気用容器を排気し、凍結乾燥を行い凍結乾燥されたポリマー(ポリマークライオゲル)を得た。凍結乾燥の時間は120時間であった。
【0117】
(ポリマークライオゲルの焼成(炭化ゲルの生成))
ポリマークライオゲルをアルミナ製容器に移し、1050℃に加熱して、ポリマークライオゲルを炭素化させ炭化ゲルを得た。炭化ゲルは粉砕され粉体化された。このようして、多孔質炭素が得られた。
【0118】
図11は、本発明の実施例において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:35倍)を示す図である。
【0119】
図11に示す、約約1cm3 の大きさポリマークライオゲルの倍率35倍の光学顕微鏡像では、細孔は観察されていない。
【0120】
図12は、本発明の実施例において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:450倍)を示す図である。
【0121】
図12に示すように、ポリマークライオゲルには約40μmの大きさの細孔が暗部領域として観察されている。
【0122】
図13は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:500倍)を示す図である。
【0123】
図13に示すように、図12に示すポリマークライオゲルと同様に約40μmの大きさの細孔が暗部領域として観察されている。
【0124】
図14は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの細孔径と細孔体積の関係を示す図であり、対数微分細孔容積分布を説明する図であり、図14において、横軸は細孔直径(Pore size diameter、μm)、縦軸は対数微分細孔容積(Log deferential Intrusion、dV/d(logD))(mL/g))を示す。
【0125】
図14に示すように、対数微分細孔容積分布は細孔径約45μmに中心をもつピークを示しており、主要細孔の存在を示している。また、約20μm以下の径を有する細孔が存在していないことを示している。なお、図14は、自動ポロシメータオートポアIV9500(SHIMAZU製)に試料をセットし水銀圧入法により、細孔直径分布を測定した結果である。
【0126】
図15は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルと市販品炭素に関する、窒素吸着から求められた特性の比較を説明する図である。
【0127】
図15において、市販品炭素はケッチェンブラック(登録商標)、具体的にはケッチェンブラック900であり、炭化ゲルA、炭化ゲルBはつぎのようにして作製された炭化ゲルである。
【0128】
炭化ゲルAは、上述した方法によって作製された3%湿潤ゲル(水和されたレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル)の水溶液(pH=6)を液体窒素中で凍結させた後、真空凍結乾燥機(EYELA 東京理化器械製FDU−2100)を用いて、−80℃で凍結乾燥させた。凍結乾燥されたポリマークライオゲルをアルミナ製容器に移し、1050℃に加熱して、ポリマークライオゲルを炭素化させ炭化ゲルAを得た。炭化ゲルBは、炭化ゲルAを更に乾燥空気流下で450℃に加熱して得られたものである。
【0129】
また、Vm(cm3/g)は、BET式における、単分子層を形成するのに要する吸着量であり、As(m2/g)は比表面積であり、Vp(cm3/g)は全細孔容積である。
【0130】
炭素化ゲルA、炭素化ゲルBのAsの平均値は892(m2/g)でありケッチェンブラック(登録商標)と略同じ値を示し、炭素化ゲルA、炭素化ゲルBのVmの平均値は204.5(cm3/g)でありケッチェンブラック(登録商標)と略同じ値を示している。炭化ゲルA、炭化ゲルBに関するVp、Apはそれぞれケッチェンブラック(登録商標)よりも小さな値を示し、炭化ゲルA、炭化ゲルBに関するRpはケッチェンブラック(登録商標)よりも大きな値を示している。
【0131】
[実施例2]
実施例1では、湿潤ゲルの急速凍結及び凍結乾燥を行ったが、実施例2では、図2(C)に示すように、湿潤ゲルを緩慢凍結しこれを凍結乾燥した。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0132】
(湿潤ゲルの緩慢凍結)
真空凍結乾燥機(EYELA 東京理化器械製FDU−2100)を使用して、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯に置かれる時間が長くゆっくりと凍結が進行するようにして、その後は急速に−80℃まで冷却されるように、冷却温度を制御して湿潤ゲルを凍結させて、続いて、凍結乾燥をおこなった。
【0133】
図16は、本発明の実施例2において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:10倍)を示す図である。
【0134】
図16に示すように、ポリマークライオゲルは500μmから1000μmの範囲の細孔を有している。図示しないが、このポリマークライオゲルを焼成して得られた炭化ゲルでは、図16に示すポリマークライオゲルと同様の大きさの細孔が確認された。
【0135】
[実施例3]
実施例3では、湿潤ゲルの急速凍結を実施例1とは異なる方法で行った。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0136】
(湿潤ゲルの急速凍結)
湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯に置かれる時間が短く急速に凍結が進行するようにして、湿潤ゲルを急速凍結させた。続いて、実施例1と同様にして凍結乾燥させた。
【0137】
図17は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:500倍)を示す図である。
【0138】
図17に示すように、炭素化ゲルは約10μmの細孔を有している。
【0139】
[実施例4]
実施例4では、湿潤ゲルの急速凍結を実施例1とは異なる方法で行った。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0140】
(湿潤ゲルの急速凍結)
図2(B)に示すように、湿潤ゲルを微細片化してこれを水に分散させた分散溶液を液体窒素中に噴霧して、湿潤ゲルを含む霧(液滴)を63K以上、77K以下の温度に冷却し微細な凍結体とした。続いて、この微細な凍結体を実施例1と同様にして凍結乾燥させた。
【0141】
図18は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:8000倍)を示す図である。
【0142】
図18に示すように、炭素化ゲルは約1μmの細孔を有している。
【0143】
以上説明したように、本発明によれば、有機湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、1000μm以下の範囲のマクロ細孔径を有し、細孔径が制御された多孔質炭素を製造することができた。
【0144】
細孔径が制御され、1μm以上、1000μm以下の範囲のマクロ細孔径を有する本発明による多孔質炭素は、触媒用担体、ガス拡散層、電極の構成材料として使用することができ、これらを、例えば、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタ等の電子デバイスに好適に適用することができる。
【0145】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれは、1μm以上、1000μm以下の範囲で細孔径が制御された多孔質炭素の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0147】
10a、10b、10c、10d、10e…電極、12…集電体、13…セパレータ、
14…ガスケット、20…アノード、22a、22b…触媒電極、
23…高分子電解質膜、24a、24b…ガス拡散層、25…燃料、
26a、26b…入口、27a、27b…通路、28a、28b…出口、
29a、29b…排ガス、30…カソード、35…空気又は酸素、40…膜電極接合体、50…燃料供給部、60…空気又は酸素供給部、70…外部回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】
【特許文献1】特開2008−184359(段落0028〜0029)
【特許文献2】特開2009−40646(段落0005〜0028)
【技術分野】
【0001】
本発明は、1μm以上の細孔サイズが制御可能な多孔質炭素の製造方法、及び、この製造方法を適用した電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質炭素は二次電池、キャパシタ等のエネルギー貯蔵システム、吸着材、各種金属触媒の担体等に広く使用されている。
【0003】
従来、多孔質炭素であるカーボンゲルは、例えば、レゾルシノール(R)とホルムアルデヒド(F)を弱塩基性下でゾル−ゲル重合させ、この重合によって得られたRF湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを作製し、これを不活性雰囲気下で炭化することによって得られていた。
【0004】
多孔質炭素の製造法の1つとして、湿潤ゲルを使用する方法が知られている(例えば、後記の特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0005】
先ず、「活性炭」と題する後記の特許文献1には、次の記載がある。
【0006】
有機エアロゲル(2)の製造方法としては、例えば、フェノール性化合物、アルデヒド化合物、塩基性触媒及び水系溶媒を一括で混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて攪拌して湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;フェノール性化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;アルデヒド化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にフェノール性化合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法;フェノール性化合物、アルデヒド化合物及び水系溶媒からなる混合物に塩基性触媒を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合させて湿潤ゲルを得たのち、乾燥させる方法等が挙げられる。中でもフェノール性化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を混合させて湿潤ゲルを得る方法が好ましいとしている。
【0007】
湿潤ゲルの乾燥は、例えば、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法等が挙げられる。また、湿潤ゲル中の溶媒が水である場合、親水性有機溶媒で置換した後、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法等が挙げられる。上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等の脂肪族ニトリル類;アセトン等の脂肪族ケトン類;ジメチルスルホキシド等の脂肪族スルホキシド類;酢酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。
【0008】
親水性有機溶媒としては、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、酢酸が好ましく用いられ、t−ブチルアルコールは水と置換し易いことから特に好ましい。また、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法に代えて、凍結乾燥を実施してもよい。凍結乾燥における温度は、通常、−70〜20℃の範囲であり、好ましくは−30〜10℃の範囲である。また、凍結乾燥は、通常、真空下で実施される。更に、特開平9−328308号公報に記載されているように、二酸化炭素等を用いて、超臨界状態下で乾燥してもよい。湿潤ゲルの乾燥方法としては、凍結乾燥が乾燥による細孔容積の変動が少ないことから好ましいとしている。
【0009】
また、「炭素材料の製造方法及び該炭素材料を含む電気二重層キャパシタ」と題する後記の特許文献2には、次の記載がある。
【0010】
特許文献2の発明は、下記[1]〜[5]工程を含む炭素材料の製造方法、および該炭素材料を含む電気二重層キャパシタである。
[1]フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を反応させて湿潤ゲルを作製する工程。
[2][1]で得られた湿潤ゲルを脱水して、乾燥ゲルを作製する工程。
[3][2]で得られた乾燥ゲルに、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸、反応させて、再湿潤ゲルを作製する工程。
[4][3]で得られた再湿潤ゲルを脱水して、再乾燥ゲルを作製する工程。
[5][4]で得られた再乾燥ゲルを焼成して炭素材料を作製する工程。
[2]工程は、[1]で得られた湿潤ゲルを脱水する工程であり、この工程で乾燥ゲルを得ることができる。湿潤ゲルから水を除去する方法としては、例えば、水を直接、通風乾燥法、減圧乾燥法、30〜150℃程度での加熱乾燥法、0℃以下での凍結乾燥法、或いはこれらの乾燥法の組合せ等が挙げられるが、好ましい実施態様として、前記湿潤ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換したのち、該親水性有機溶媒を除去する方法が推奨されるとしている。
【0011】
親水性有機溶媒を除去する方法としては、例えば、通風乾燥法、減圧乾燥法、30〜150℃程度での加熱乾燥法、0℃以下での凍結乾燥法、或いはこれらの乾燥法の組合せ等が挙げられるが、凍結乾燥法は、ゾル−ゲル反応により作られた湿潤ゲルを構成する粒子の三次元の網目状構造を保持することができることから好ましい。すなわち、凍結乾燥法形態及び機能的に三次元の網目状構造が有する性状を維持しつつ、湿潤ゲル中の親水性有機溶媒等の液体を除去することができるとしている。
【0012】
更に、凍結乾燥装置を用いることにより、湿潤ゲルを短時間で乾燥することができると共に、乾燥ゲルの製造コストを低減化することができることから好ましい。凍結乾燥における凍結温度は、通常は−70〜0℃の範囲であり、好ましくは−30〜−5℃の範囲であるとしている。
【0013】
[3]工程は、[2]工程で得られた乾燥ゲルに、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸させ、反応させる工程であり、乾燥ゲルが有するマクロ孔やメソ孔等の空孔、中でもメソ孔に、フェノール化合物、アルデヒド化合物及び塩基性触媒を含む水溶液を含浸させ、該水溶液からコロイド粒子を経て、乾燥ゲル内の空孔に更に三次元網目構造を形成させた再湿潤ゲルを得る工程である。
【0014】
[4]工程は、[3]工程で得られた含浸ゲルを脱水する工程であり、再乾燥ゲルを得る工程である。具体的には[2]工程の項で例示された方法と同様に行えばよい。[2]工程と[4]工程は同一条件でも異なった条件で行ってもよい。
【0015】
[5]工程は、[4]工程で得られた再乾燥ゲルを焼成(炭化)し、炭素材料を得る工程である。通常は、不活性ガス雰囲気中で行われ、焼成(炭化)時の不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素等が好ましい。焼成(炭化)温度は、通常は200〜3000℃の範囲であり、体積抵抗率を低減させるためには、カルボキシル基等の官能基を除去し得る800℃以上であることが好ましく、グラファイト化を抑制するためには1100℃以下であることが好ましい。焼成時間は、通常は数分間〜数時間の範囲であるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
はじめに、以下の説明で使用する用語について説明しておく。
【0017】
「有機ポリマーヒドロゲル(単に、ポリマーヒドロゲルとも言う。)」は、水和(hydration)した有機ポリマーゲル(単に、ポリマーゲルとも言う。)であり、有機ポリマー骨格の間に取り込まれた水を含み、有機湿潤ゲル(単に、湿潤ゲルとも言う。)とも言う。
【0018】
「有機ポリマークライオゲル(単に、ポリマークライオゲル、有機エアロゲルとも言う。)」は、ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させて得られ、ゲル中に含まれる水を空気に置換したゲルを意味するものとする。
【0019】
「炭化ゲル」は、ポリマークライオゲルを焼成して得られたゲルを意味するものとする。
【0020】
多孔質炭素は、吸着剤、触媒担体等の化学分野、高電導材料等のエレクトロニクス分野等の多くの分野で利用されている。多孔質炭素を使用する目的に対応して、最適な細孔特性を有する多孔質炭素をどのようにして製造するのかは非常に重要な課題である。
【0021】
二次電池、キャパシタ等のエネルギー貯蔵システムはその容量を向上させるために、使用される炭素材料の用途に最も適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求されている。同様に、吸着材、各種金属触媒の担体等に使用される炭素材料に関しても、その用途に最も適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求されている。従来、ナノメータ(nm)オーダの細孔サイズを有する多孔質炭素に関する研究開発が盛んであるが、ミクロンメータ(μm)オーダの細孔サイズを有する多孔質炭素に関する研究開発は進んでおらず、使用用途に適合するように細孔サイズが制御された多孔質炭素の製造方法が望まれている。
【0022】
例えば、多孔質炭素は、燃料電池に使用される触媒の担体として注目されているが、これまでの研究開発は、主としてミクロ細孔と呼ばれる0.001μmから0.002μmのサイズの範囲の細孔をもつ多孔質炭素に関するものであった。このミクロ細孔は、大きな表面積を実現するために必須なものであるが、ミクロ細孔、メソ細孔より大きな細孔は、細孔体積やバルク密度のような性質に影響する。
【0023】
多孔質炭素を触媒層、拡散層に使用する燃料電池では、触媒層、拡散層のもつ特性、例えば、燃料ガスや酸化剤ガスの透過率、水分透過率、機械的強度等の特性は、多孔質炭素の特性によって大きく左右される。メタノール燃料電池では、フラッディング現象、メタノールクロスオーバーは、拡散層、触媒層の空隙の大きさが関係しており、燃料電池の特性を優れたものとするためには、多孔質炭素の空隙の大きさが最適なものとなるように制御することが重要である。優れた特性をもつ燃料電池を実現するために細孔サイズが制御された多孔質炭素が要求され、細孔サイズが制御された多孔質炭素の製造方法が望まれている。
【0024】
従来、湿潤ゲルを使用する多孔質炭素の製造法では、殆どの場合、湿潤ゲルから水を除去する方法として、湿潤ゲル中の水を親水性有機溶媒で置換した後、親水性有機溶媒を除去する方法がとられている。親水性有機溶媒を除去する方法として、減圧乾燥法、加熱乾燥法、凍結乾燥法、超臨界乾燥法等が使用されているが、1μm以上、1000μm以下のマクロ細孔を有する多孔質炭素を製造するための乾燥方法はこれまで検討が進んでいない。
【0025】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、1μm以上の細孔サイズが制御可能な多孔質炭素の製造方法、及び、この製造方法を適用した電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
即ち、本発明は、水(例えば、後述の実施の形態における脱イオン水)を溶媒として塩基性触媒(例えば、後述の実施の形態における炭酸ナトリウム)の存在下でフェノール類合物(例えば、後述の実施の形態におけるレゾルシノール)とアルデヒド類合物(例えば、後述の実施の形態におけるホルムアルデヒド)を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4工程とを有する、多孔質炭素の製造方法に係るものである。
【0027】
また、本発明は、上記の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成する電子デバイスの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、凍結乾燥された有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4工程とを有するので、前記有機ポリマーヒドロゲルに取り込まれている水を有機溶媒によって置換することなく、前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させるので、高価な装置を使用することなく、より少ない工程により低コストで1μm以上の細孔を有する多孔質炭素を製造することができる多孔質炭素の製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、上記の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成するので、低コストで目的とする電子デバイスが製造可能な電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における、炭素材料の製造方法を説明する図である。
【図2】同上、水和したポリマーゲルの凍結方法を説明する図である。
【図3】同上、凍結曲線の概要を説明する図である。
【図4】同上、水和したポリマーゲルの凍結乾燥を行う装置の概要を説明する図である。
【図5】同上、直接メタノール燃料電池(DMFC)の構成例を示す断面図である。
【図6】同上、高分子電解質燃料電池(PEFC)の構成例を示す断面図である。
【図7】同上、電気二重層キャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図8】同上、ハイブリッドキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図9】同上、レドックスキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【図10】本発明の実施例における、炭化ゲルの製造方法を説明する図である。
【図11】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図12】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図13】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図14】同上、炭化ゲルの対数微分細孔容積分布を説明する図である。
【図15】同上、炭化ゲルと市販品炭素の特性比較を説明する図である。
【図16】同上、ポリマークライオゲルの光学顕微鏡像を示す図である。
【図17】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図18】同上、炭化ゲルの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の多孔質炭素の製造方法では、前記第2工程において、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって、細孔の源となる氷結晶の大きさを制御して所望の前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。なお、最大氷結晶生成帯は、前記有機ポリマーヒドロゲルの含有する水が氷に変わる温度(氷結点)に達し、氷結晶が生成する約0℃から−5℃〜−7℃までの温度帯を意味し、この最大氷結晶生成帯を通過する時間は、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯の温度におかれ氷結晶が生成される時間(即ち、凍結時間)である。
【0032】
また、前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させる構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0033】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、100μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、100μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0034】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が10μm以上、30μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間がより短くなるように制御することによって、10μm以上、30μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0035】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを63K以上、77K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な液体窒素を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを短時間で急速凍結させることができる。
【0036】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを小片に分割した後に急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、2μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが効率よく急速凍結され、前記細孔径を1μm以上、2μm以下とすることができる。
【0037】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを水に分散させた分散溶液を噴霧して急速凍結させる構成とするのがよい。このような構成によれば、噴霧によって微小な液滴とされた前記有機ポリマーヒドロゲルを効率よく急速凍結することができる。
【0038】
また、噴霧された前記分散溶液の液滴を63K以上、77K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な液体窒素を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを短時間で急速凍結させることができる。
【0039】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が100μm以上、1000μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、100μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0040】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が500μm以上、1000μm以下の範囲に制御される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間がより長くなるように制御することによって、500μm以上、1000μm以下の範囲にある前記細孔径を有する多孔質炭素を生成させることができる。
【0041】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを200K以上、273K以下の温度に冷却させる構成とするのがよい。このような構成によれば、汎用的な低コストの装置を使用して前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させることができる。
【0042】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルを冷蔵庫又は凍結庫中で凍結させる構成とするのがよい。このような構成によれば、冷蔵庫又は凍結庫の動作温度条件を制御することによって、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することができる。
【0043】
また、前記第1工程において、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物、及び、前記塩基性触媒を前記溶媒に溶解させた後、355K以上、365K以下の温度に昇温する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記溶媒である水の蒸発が過度になく、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物の水溶液中でのゾル−ゲル重合の反応速度を高め効率よく均一な前記有機ポリマーヒドロゲルを生成することができる。
【0044】
また、前記フェノール類合物がレゾルシノール、前記アルデヒド類合物がホルムアルデヒド、前記塩基性触媒が炭酸ナトリウムである構成とするのがよい。このような構成によれば、安価な材料によって他校いつ炭化水素を生成することができる。
【0045】
また、前記有機ポリマーヒドロゲルは、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させることができる。
【0046】
また、前記第4工程において、大気圧の不活性ガス下で、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが焼成される構成とするのがよい。このような構成によれば、酸化による損失がなく前記有機ポリマーヒドロゲルを炭化させることができる。
【0047】
また、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが873K以上、1473K以下の温度で焼成される構成とするのがよい。このような構成によれば、活性化された多孔質炭素を生成することができる。
【0048】
本発明の電子デバイスの製造方法では、電子デバイスを、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタとして構成するのがよい。このような構成によれば、低コストで電子デバイスが製造可能な電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0050】
[実施の形態]
〈多孔質炭素の製造方法〉
本発明では、フェノール類合物とアルデヒド類合物を塩基性触媒の存在下の水溶液中で重合させ、重合反応で生成したポリマーが水溶液中に含まれるゾル状態を経て、最終的にゲルの隙間に水が含まれた有機湿潤ゲルを生成させる。そして、この湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間が制御された下で湿潤ゲルを凍結させ、続いて、凍結乾燥によって乾燥させ、制御された細孔サイズを有する乾燥ゲル(有機エアロゲル)を作製し、これを不活性雰囲気下で焼成して炭化させ制御された細孔サイズを有する多孔質炭素を得ることができる。湿潤ゲルを凍結する際、図3によって後述するように、最大氷結晶生成帯を通過させる時間(湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯の温度におかれ氷結晶が生成される時間(凍結時間))を制御することによって、細孔の源となる氷結晶の大きさを制御することができる。
【0051】
図1は、本発明の実施の形態における、多孔質炭素の製造方法を説明する図である。
【0052】
図1に示すように、先ず、水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を混合し、酸を添加し固相を溶解させた後、加熱してフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて、水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル、又は、有機湿潤ゲル)を生成させる。
【0053】
次に、この有機湿潤ゲルを急速凍結又は緩慢凍結させ、続いて、この凍結された有機湿潤ゲルを凍結乾燥させポリマークライオゲル(有機エアロゲル)を生成し、最後に、ポリマークライオゲルを不活性雰囲気下で焼成処理して炭化させ多孔質炭素を得る。このようにして得られた多孔質炭素は、所望の粒径をもつように粉砕処理される。
【0054】
以下、水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル)の生成、有機ポリマーヒドロゲルの凍結、ポリマークライオゲルの生成、炭化ゲルの生成についてより詳細に説明する。
【0055】
(水和したポリマーゲルの生成)
水和したポリマーゲル(有機ポリマーヒドロゲル)は、蒸留水、イオン交換水を溶媒として使用し、塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合させて有機ポリマーヒドロゲルを生成させるが、フェノール類化合物として、例えば、レゾシノール(m−ジオキシベンゼン)、ヒドロキノン(p−ジオキシベンゼン)、カテコール(o−ジオキシベンゼン)、フェノールを使用することができる。また、アルデヒド類化合物として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドを使用することができる。ホルムアルデヒドは水溶性であり、フェノール類化合物との反応性が良好であり、ゾル−ゲル反応を効率的に行うことができる。また、塩基性触媒として、水溶性のアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)を使用することができる。
【0056】
好適な具体例としては、フェノール類合物としてレゾルシノール、アルデヒド類合物としてホルムアルデヒド、塩基性触媒として炭酸ナトリウムが使用され、酸の添加によってこれらが溶解された水溶液が355K以上、365K以下の温度に昇温され、ゾル−ゲル反応が進行して、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する有機ポリマーヒドロゲルが形成される。
【0057】
次に、有機ポリマーヒドロゲルの凍結について説明する。
【0058】
(有機ポリマーヒドロゲルの凍結)
図2は、本発明の実施の形態における、水和したポリマーゲル(湿潤ゲル)の凍結方法を説明する図であり、図2(A)及び図2(B)は急速凍結、図2(C)は緩慢凍結を説明する図である。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態における、凍結曲線の概要を説明する図である。
【0060】
図3に示す凍結曲線は、凍結対象物体(ここでは、湿潤ゲルである。)を凍結したとき、時間の経過に伴う凍結対象物体の温度の変化を示すものであり、縦軸は凍結対象物体の温度、横軸は時間の経過を示す。
【0061】
一般に、凍結対象物体が冷却環境におかれると、凍結対象物体の温度が時間と共に低下していき、凍結対象物体の氷結点(水が氷に変わる温度)に達し、氷結晶が生成する約0℃から−5℃〜−7℃までの温度帯(「最大氷結晶生成帯」と呼ばれる。)を通過し、時間の経過と共に凍結対象物体の温度は低下していき、冷却環境で与えられる温度まで下がる。冷却環境は、例えば、固体炭素と有機溶媒による寒剤、液体窒素、液体酸素等の冷媒、冷蔵庫、冷凍庫等によって与えられる。
【0062】
図3に示す、最大氷結晶生成帯と呼ばれる約0℃から−5℃〜−7℃までのゾーンは、凍結対象物体に含まれる水が氷に変化し、冷却熱が氷結晶の生成に要する潜熱として消費され、氷結晶の成長が促進されるゾーンである。従って、最大氷結晶生成帯を通過する通過時間(T)、言い換えると、凍結対象物体が最大氷結晶生成帯におかれ氷結晶が生成される時間(T)(以下、「凍結時間」と言う。)の長短によって凍結対象物体中に含まれる水から生成される氷結晶の大きさが異なる。
【0063】
図3に示す右方の凍結曲線で示され、氷結晶生成帯を急速に短時間で通過させる急速凍結では、多数の微細結晶の氷結晶が凍結対象物体に生じる。一方、図3に示す左方の凍結曲線で示され、最大氷結晶生成帯をゆっくりと時間をかけて通過させる緩慢凍結では、少数の大きな氷結晶が凍結対象物体に生じる。なお、図3では、急速凍結における凍結時間(T)をTr、緩慢凍結における凍結時間(T)をTsで示している。
【0064】
本発明では、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間(凍結時間)(T)を制御することによって、最終的に炭化ゲルに生成される細孔の源となる氷結晶の大きさを制御することができ、炭化ゲルの細孔径を1μm以上、1000μm以下の範囲に制御ことができる。
【0065】
図2(A)は、小片化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を液体窒素中に投入して急速凍結する例を示している。液体窒素を用いて63K以上、77K以下の温度に湿潤ゲルを冷却し、例えば、凍結しようとする湿潤ゲルの大きさを変える等によって、急速凍結における凍結時間(Tr)が短い時間となるように制御することによって、細孔径を1μm以上、100μm以下の範囲、或いは、10μm以上、30μm以下の範囲に制御することができる。
【0066】
図2(B)は、霧化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を液体窒素中に入れて急速凍結する例を示している。湿潤ゲルを微細片化してこれを水に分散させた分散溶液を液体窒素中に噴霧して、湿潤ゲルを含む霧(液滴)を63K以上、77K以下の温度に冷却し微細な凍結体として、凍結時間(Tr)が短い時間となるように急速凍結させることによって、細孔径を1μm以上、2μm以下の範囲に制御することができる。
【0067】
図2(C)は、小片化された水和ポリマー(湿潤ゲル)を冷凍庫(freezing storage)に入れて庫内の温度を制御し、例えば、200K以上、273K以下の温度に湿潤ゲルを冷却し、緩慢凍結する例を示している。例えば、凍結しようとする湿潤ゲルの大きさを変える、或いは、凍結時間(Ts)が長い時間となるように冷凍庫内の温度を制御する等によって、凍結時間(Ts)を制御することによって、細孔径を100μm以上、1000μm以下の範囲、或いは、500μm以上、1000μm以下の範囲に制御することができる。冷凍庫に換えて−10℃以下に冷却可能な冷蔵庫(cooling storage)を使用して、湿潤ゲルの緩慢凍結をおこなうことができることは言うまでもない。
【0068】
次に、凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥によるポリマークライオゲルの生成について説明する。
【0069】
(凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥:ポリマークライオゲルの生成)
ことで凍結乾燥対象とされる例は、図2(A)又は図2(B)に示した急速凍結によって得られもの(図4に示す(A)又は(B))であり、液体窒素中の凍結された湿潤ゲル、或いは、図2(C)に示した緩慢凍結によって得られもの(図4に示す(C))であり、冷凍庫の冷凍用容器中の凍結された湿潤ゲルである。
【0070】
図4に示すように、凍結乾燥(フリーズドライ)装置は、排気ポンプによって排気される真空室と、この中に配置され熱媒体によって加熱される加熱ステージ、冷凍機によって低温に保持されたコールドトラップから構成されている。凍結乾燥の概要は次の通りである。
【0071】
例えば、0.1mmHgの圧力下では、1gの氷は蒸発して10,000Lにも膨張するため、これを排気ポンプのみで排気することは実用的にできない。凍結乾燥装置では、凍結された乾燥対象(ここでは、凍結されたポリマーヒドロゲルである。)から昇華してくる水蒸気は、冷凍機によって低温に保持されたコールドトラップ(例えば、冷凍パイプ)に同体積の氷として凝固されるので、コールドトラップが排気ポンプの役割を果たしている。装置内の真空度は常に低く保たれ、乾燥対象の温度は飽和蒸気圧と対応して低温のまま保持され、水の昇華が進行し乾燥対象は脱水されていく。排気ポンプは、乾燥初期に装置内の空気を排気するために使用され、乾燥工程では、コールドトラップでトラップされなかった非凝縮ガスを排出するのに使用される。
【0072】
熱源による熱エネルギーは、熱交換機を通して熱媒体に付与され、熱媒体によって加熱ステージが加熱され、乾燥対象に昇華潜熱として伝達され、乾燥対象から昇華した水は、コールドトラップで熱を放出して氷に戻り、その熱は冷却機の冷却水に放熱される。乾燥対象からの水の昇華は進行し、水の昇華量が少なくなるに従って、加熱ステージから供給される熱の方が多くなり、熱バランスが崩れ乾燥対象の温度が上昇していく。凍結乾燥装置を使用することにより、低コストで湿潤ゲルを短時間で乾燥させ、ポリマークライオゲルを生成することができる。
【0073】
以上の説明では、湿潤ゲルの凍結と、凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥を分けて説明したが、湿潤ゲルの凍結と凍結された湿潤ゲルの凍結乾燥を、図4に示す凍結乾燥装置内で連続して行うことができることは言うまでもない。
【0074】
次に、ポリマークライオゲルを焼成処理による炭化ゲルの生成について説明する。
【0075】
(ポリマークライオゲルの焼成:炭化ゲルの生成)
ポリマークライオゲルは、大気圧の不活性ガス下で、873K以上、1473K以下の温度で焼成され炭化ゲルとされ、活性化された多孔質炭素が得られる。得られた多孔質炭素は、粉砕機を使用して、使用目的に応じた所望の粒径とされる。
【0076】
このようにして得られた多孔質炭素は、各種の電子デバイスに使用することができ、電子デバイスは、例えば、多孔質炭素を白金触媒が担持される担体として具備する燃料電池、多孔質炭素を使用して形成されたガス拡散層を具備する燃料電池、多孔質炭素を使用して形成された電極を具備する二次電池、多孔質炭素を使用して形成された電極を具備するキャパシタ(電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタ)等である。
【0077】
また、多孔質炭素は、種々の化学種の吸着剤、一般の化学反応用の触媒の担体として使用することができることは言うまでもない。
【0078】
次に、本発明による多孔質炭素が適用される燃料電池について説明する。
【0079】
<本発明による多孔質炭素用される燃料電池>
本発明による多孔質炭素が適用され形成される触媒層、ガス拡散層を燃料電池に使用することができる。次に、この燃料電池の例について説明する。
【0080】
図5は、本発明の実施の形態におけるDMFC(直接型メタノール燃料電池)の構成例を説明する断面図である。
【0081】
図5に示すように、メタノール水溶液が燃料25として、流路をもつ燃料供給部(セパレータ)50の入口26aから通路27aへと流され、基体である導電性のガス拡散層24aを通って、ガス拡散層24aによって保持された触媒電極22aに到達し、図5の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上でメタノールと水が反応し、水素イオン、電子、二酸化炭素が生成され、二酸化炭素を含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、プロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、基体である導電性のガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22bに到達する。
【0082】
図5に示すように、空気又は酸素35が、流路をもつ空気又は酸素供給部(セパレータ)60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22aに到達し、図5の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bら排出される。図5の下方に示すように全反応は、メタノールと酸素から電気エネルギーを取り出して水と二酸化炭素を排出するというメタノールの燃焼反応となる。
【0083】
図6は、本発明の実施の形態におけるPEFC(高分子電解質型燃料電池)の構成例を説明する断面図である。
【0084】
図6に示すように、加湿された水素ガスが燃料25として、燃料供給部50の入口26aから通路27aへと流されガス拡散層24aを通って、触媒電極22aに到達し、図6の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上で水素ガスから水素イオン、電子が生成され、余剰の水素ガスを含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、プロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、ガス拡散層24bを通って触媒電極22bに到達する。
【0085】
図6に示すように、空気又は酸素35が、空気又は酸素供給部60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って触媒電極22aに到達し、図6の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bら排出される。図6の下方に示すように全反応は、水素ガスと酸素から電気エネルギーを取り出して水を排出するという水素ガスの燃焼反応となる。
【0086】
図5、図6において、高分子電解質膜23は、プロトン伝導性複合電解質が結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着されて形成されている。高分子電解質膜23によって、アノード20とカソード30が隔てられ、高分子電解質膜23を通して水素イオンや水分子が移動する。高分子電解質膜23は、水素イオンの伝導性が高い膜であり、化学的に安定であって機械的強度が高いことが好ましい。
【0087】
図5、図6において、触媒電極22a、22bは、集電体である導電性の基体を構成し、ガスや溶液に対して透過性をもったガス拡散層24a、24b上に密着して形成されている。ガス拡散層24a、24bは、例えば、カーボンペーパー、カーボンの成形体、カーボンの焼結体、焼結金属、発泡金属等の多孔性基体から構成される。燃料電池の駆動によって生じる水によるガス拡散効率の低下を防止するために、ガス拡散層は、フッ素樹脂等で撥水処理されている。
【0088】
触媒電極22a、22bは、例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金等からなる触媒が担持された担体が、結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着され形成されている。担体として、例えば、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素、アルミナ、シリカ等の無機物微粒子が使用される。結着剤を溶解させた有機溶剤に炭素粒子(触媒金属が担持されている。)が分散された溶液を、ガス拡散層24a、24bに塗布し、有機溶剤を蒸発させて結着剤によって結着された膜状の触媒電極22a、22bが形成される。
【0089】
高分子電解質膜23が、ガス拡散層24a、24b上に密着して形成された触媒電極22a、22bによって挟持され、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)40が形成されている。触媒電極22a、ガス拡散層24aによってアノード20が構成され、触媒電極22b、ガス拡散層24bによってカソード30が構成されている。アノード20及びカソード極30は高分子電解質膜23に密着し、炭素粒子の間にプロトン伝導体が入り込み、触媒電極22a、22bに高分子電解質(プロトン伝導体)を含浸させた状態となって、触媒電極22a、22と高分子電解質膜23とが密着して接合され、接合界面で水素イオンの高い伝導性が保持され、電気抵抗が低く保持される。
【0090】
なお、図5、図6に示した例では、燃料25の入口26a、排ガス29aの出口28a、空気又は酸素(O2)35の入口26b、排ガス29bの出口28bの各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に垂直に配置されているが、上記の各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に平行に配置されている構成とすることもでき、上記の各開口部の配置に関して種々の変形が可能である。
【0091】
図5、図6に示す燃料電池の製造は、各種文献に公知されている一般的な方法を利用できるので、製造に関する詳細な説明は省略する。
【0092】
次に、本発明による多孔質炭素が適用されるキャパシタについて説明する。
【0093】
<本発明による多孔質炭素が適用される電気二重層キャパシタ>
図7は、本発明の実施の形態における、電気二重層キャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0094】
図7に示すように、電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor:EDC))は、セパレータ13を挟んで配置された分極性電極(正極)10a及び分極性電極(負極)10bと、分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bにそれぞれ接合された集電体12と、電解質に対して不溶性、耐食性を有し、密封、封止するための電気絶縁性樹脂からなるガスケット14から構成されている。分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bはそれぞれ、多孔質炭素からなる電極であり、電解質が非プロトン性溶媒に溶解された電解質液が含浸されている。分極性電極10a、10bと電解質との間に形成される界面(電気二重層)に電荷が蓄えられ、電気エネルギーが貯蔵される。
【0095】
電解質として、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキレン基を有する4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、これらのアルキル基やアルキレン基のHの少なくとも1つがF等のハロゲンに置換されたハロゲン化アンモニウム塩等のオニウム塩等からなるイオン解離性塩が使用される。
【0096】
非プロトン性溶媒として、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の環状炭酸エステル類、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、スルホラン、トリメチルホスフェート等が使用される。
【0097】
セパレータは、イオン透過度が大きく、電解質に対して不溶性、耐食性を有する電気絶縁性樹脂、ガラス繊維やセラミクス等からなる多孔質フィルム、不織布又は抄紙等からなり、電解質液が含浸されている。集電体としては、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム合金等の金属が使用される。
【0098】
<本発明による多孔質炭素が適用されるハイブリッドキャパシタ>
図8は、本発明の実施の形態における、ハイブリッドキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0099】
ハイブリッドキャパシタは、充電時に、負極においてリチウムイオンが黒鉛等のカーボンの層間に挿入され、正極では電極表面に電解質のアニオンが引き寄せられて電気二重層を構成することにより、蓄電されるデバイスである。
【0100】
図8に示すように、ハイブリッドキャパシタは、図7に示す電気二重層キャパシタにおいて、分極性電極(負極)10bをリチウムイオン二次電池の負極と同様の黒鉛電極(負極)10cに換えた構成を有している。
【0101】
電解質として、リチウムカチオンと無機アニオンとの組み合わせが用いられ、無機アニオンは、BF4-、PF6-、ClO4-からなる群から選ばれる少なくとも1種が使用される。電解質液に含まれる有機極性溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン等が使用される。
【0102】
<本発明による多孔質炭素が適用されるレドックスキャパシタ>
図9は、本発明の実施の形態における、レドックスキャパシタの基本構成の概要を説明する断面図である。
【0103】
レドックスキャパシタは、擬似容量を利用して、電気二重層キャパシタの容量拡大をしたキャパシタであり、電気エネルギーの貯蔵と放出に、電極材料の酸化還元、電気二重層における充放電、電極表面でのイオンの脱吸着を利用するものである。
【0104】
図9に示すように、レドックスキャパシタは、図7に示す電気二重層キャパシタにおいて、分極性電極(正極)10a、分極性電極(負極)10bをそれぞれ、電極(正極)10d、電極(負極)10に換えた構成を有している。電極(正極)10d、電極(負極)10はそれぞれ、多孔質炭素からなる電極であり、活物質を含む電解質液が含浸されている。活物質は、ルテニウム等の遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、導電性高分子等である。電解質液として、ルテニウム等の遷移金属酸化物又は遷移金属水酸化物を活物質とするとき、硫酸水溶液を電解液とし、導電性高分子を活物質とするとき、LiBF4、LiPF6、LiClO4等のリチウム塩等の電解質を溶解し解離させた有機溶媒を電解液とする。電解質液に含まれる溶媒は、電気二重層キャパシタで使用される非プロトン性溶媒が使用される。
【0105】
次に、多孔質炭素に関する実施例について説明する。
【実施例】
【0106】
本発明の実施例では、レゾルシノールとホルムアルデヒドが重合され相互に連結された網目構造に水が満たされて構成される水和されたレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル(湿潤ゲル)が、ゾル−ゲルプロセスによって合成される。
【0107】
この湿潤ゲルが凍結されると、ゲル中に取り込まれた水は結晶化して六方晶系の氷結晶を生成するため、ゲルの網目構造は離散的なものとなる。この氷結晶の大きさは、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を変化させることによって制御することができる。
【0108】
湿潤ゲルの急速凍結は小さな氷結晶を生成し、この小さな氷結晶が生成された箇所から後処理(凍結乾燥)によって氷結晶が昇華されるので、例えば、1μm以上、100μm以下のサイズを有する細孔を生じることになる。湿潤ゲルの急速凍結は、例えば、湿潤ゲルを液体窒素中に置く方法、その他の方法によってなされる。湿潤ゲルの緩慢凍結は、より大きな氷結晶を形成し、このより大きな氷結晶が生成された箇所から後処理(凍結乾燥)によって氷結晶が昇華されるので、例えば、100μm以上、1000μm以下のサイズを有する細孔を生じることになる。湿潤ゲルの緩慢凍結は、例えば、湿潤ゲルを−10℃の凍結庫中に置く方法、その他の方法によってなされる。
【0109】
このように湿潤ゲルを凍結処理して、更に、凍結乾燥することによって、湿潤ゲルから水が除去され、低密度、多孔質のレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル(有機エアロゲル)が形成される。
【0110】
この有機エアロゲルは、大気圧の不活性ガス中で加熱処理することによって炭化され、炭化ゲルとされる。
【0111】
本発明の実施例による方法では、最終的に形成される炭化ゲルの細孔径は、湿潤ゲルの凍結工程で形成される氷結晶の大きさによって決定されるので、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を変化させることによって、細孔径の大きさを調整することができ、1μm以上、1000μm以下の範囲の大きさの細孔を有する多孔質炭素を合成することができた。
【0112】
なお、従来法では、殆どの場合、0.5nmから10nmの範囲の大きさの細孔を有する多孔質炭素が合成されているに過ぎない。また、従来法では、湿潤ゲルから水を一旦、有機溶媒で置換した後、有機溶媒を除去しているが、本発明の実施例では、有機溶媒を使用することなしに、水溶液中でのゾル−ゲルプロセスによって形成された湿潤ゲルを、有機溶媒置換を行うことなく、凍結処理して、更に、凍結乾燥することによって水を除去する。
【0113】
[実施例1]
図10は、本発明の実施例における、炭化ゲルの製造方法を説明する図である。
【0114】
図10に示すように、先ず、水和したポリマーゲル(湿潤ゲル)を生成させる。図2(A)に示すように湿潤ゲルを小片化しこの湿潤ゲルを凍結させた後、続いて、凍結乾燥させてポリマークライオゲルを生成させ、最後にこれを焼成して炭化ゲルを生成させる。
【0115】
(湿潤ゲルの生成)
レゾルシノール(C6H6O2)4g、ホルムアルデヒド(HCHO)(10%水溶液)6g、脱イオン水 190mL、炭酸ナトリウム(Na2CO3)0.08gを、密封可能なプラスチック製容器(容積500mL)に入れ、磁気攪拌子で攪拌する間に、固相が溶解しpHが6.0となるまで5% 硝酸(HNO3)を滴下した。ラスチック製容器を密封して、87℃に保持された加熱炉に24時間置いた。この結果、形成されたゲル(湿潤ゲル)は堅く、密封されたプラスチック製容器の約200mLを占有していた。このゲルを室温まで冷却した後、ゲルをガラス棒でかき混ぜて小片化させ約1cm3 の大きさのゲル片とした。このゲル片を大きなブフナの漏斗(Bucher funnel)に入れて、ゲル片を水で繰り返し洗浄した。
【0116】
(湿潤ゲルの急速凍結及び凍結乾燥)
次に、湿潤ゲル片を液体窒素が収納されたデュア瓶に投入した。ゲル片が完全に凍結した後、凍結されたゲルを真空排気用容器内に入れて、真空圧力が安定化し氷が除去されたことを示すまで、コールドトラップを介して真空排気用容器を排気し、凍結乾燥を行い凍結乾燥されたポリマー(ポリマークライオゲル)を得た。凍結乾燥の時間は120時間であった。
【0117】
(ポリマークライオゲルの焼成(炭化ゲルの生成))
ポリマークライオゲルをアルミナ製容器に移し、1050℃に加熱して、ポリマークライオゲルを炭素化させ炭化ゲルを得た。炭化ゲルは粉砕され粉体化された。このようして、多孔質炭素が得られた。
【0118】
図11は、本発明の実施例において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:35倍)を示す図である。
【0119】
図11に示す、約約1cm3 の大きさポリマークライオゲルの倍率35倍の光学顕微鏡像では、細孔は観察されていない。
【0120】
図12は、本発明の実施例において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:450倍)を示す図である。
【0121】
図12に示すように、ポリマークライオゲルには約40μmの大きさの細孔が暗部領域として観察されている。
【0122】
図13は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:500倍)を示す図である。
【0123】
図13に示すように、図12に示すポリマークライオゲルと同様に約40μmの大きさの細孔が暗部領域として観察されている。
【0124】
図14は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの細孔径と細孔体積の関係を示す図であり、対数微分細孔容積分布を説明する図であり、図14において、横軸は細孔直径(Pore size diameter、μm)、縦軸は対数微分細孔容積(Log deferential Intrusion、dV/d(logD))(mL/g))を示す。
【0125】
図14に示すように、対数微分細孔容積分布は細孔径約45μmに中心をもつピークを示しており、主要細孔の存在を示している。また、約20μm以下の径を有する細孔が存在していないことを示している。なお、図14は、自動ポロシメータオートポアIV9500(SHIMAZU製)に試料をセットし水銀圧入法により、細孔直径分布を測定した結果である。
【0126】
図15は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルと市販品炭素に関する、窒素吸着から求められた特性の比較を説明する図である。
【0127】
図15において、市販品炭素はケッチェンブラック(登録商標)、具体的にはケッチェンブラック900であり、炭化ゲルA、炭化ゲルBはつぎのようにして作製された炭化ゲルである。
【0128】
炭化ゲルAは、上述した方法によって作製された3%湿潤ゲル(水和されたレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーゲル)の水溶液(pH=6)を液体窒素中で凍結させた後、真空凍結乾燥機(EYELA 東京理化器械製FDU−2100)を用いて、−80℃で凍結乾燥させた。凍結乾燥されたポリマークライオゲルをアルミナ製容器に移し、1050℃に加熱して、ポリマークライオゲルを炭素化させ炭化ゲルAを得た。炭化ゲルBは、炭化ゲルAを更に乾燥空気流下で450℃に加熱して得られたものである。
【0129】
また、Vm(cm3/g)は、BET式における、単分子層を形成するのに要する吸着量であり、As(m2/g)は比表面積であり、Vp(cm3/g)は全細孔容積である。
【0130】
炭素化ゲルA、炭素化ゲルBのAsの平均値は892(m2/g)でありケッチェンブラック(登録商標)と略同じ値を示し、炭素化ゲルA、炭素化ゲルBのVmの平均値は204.5(cm3/g)でありケッチェンブラック(登録商標)と略同じ値を示している。炭化ゲルA、炭化ゲルBに関するVp、Apはそれぞれケッチェンブラック(登録商標)よりも小さな値を示し、炭化ゲルA、炭化ゲルBに関するRpはケッチェンブラック(登録商標)よりも大きな値を示している。
【0131】
[実施例2]
実施例1では、湿潤ゲルの急速凍結及び凍結乾燥を行ったが、実施例2では、図2(C)に示すように、湿潤ゲルを緩慢凍結しこれを凍結乾燥した。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0132】
(湿潤ゲルの緩慢凍結)
真空凍結乾燥機(EYELA 東京理化器械製FDU−2100)を使用して、湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯に置かれる時間が長くゆっくりと凍結が進行するようにして、その後は急速に−80℃まで冷却されるように、冷却温度を制御して湿潤ゲルを凍結させて、続いて、凍結乾燥をおこなった。
【0133】
図16は、本発明の実施例2において得られたポリマークライオゲルの光学顕微鏡像(倍率:10倍)を示す図である。
【0134】
図16に示すように、ポリマークライオゲルは500μmから1000μmの範囲の細孔を有している。図示しないが、このポリマークライオゲルを焼成して得られた炭化ゲルでは、図16に示すポリマークライオゲルと同様の大きさの細孔が確認された。
【0135】
[実施例3]
実施例3では、湿潤ゲルの急速凍結を実施例1とは異なる方法で行った。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0136】
(湿潤ゲルの急速凍結)
湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯に置かれる時間が短く急速に凍結が進行するようにして、湿潤ゲルを急速凍結させた。続いて、実施例1と同様にして凍結乾燥させた。
【0137】
図17は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:500倍)を示す図である。
【0138】
図17に示すように、炭素化ゲルは約10μmの細孔を有している。
【0139】
[実施例4]
実施例4では、湿潤ゲルの急速凍結を実施例1とは異なる方法で行った。湿潤ゲルの生成、凍結乾燥、炭化ゲルの生成は、実施例1と同様にして行った。
【0140】
(湿潤ゲルの急速凍結)
図2(B)に示すように、湿潤ゲルを微細片化してこれを水に分散させた分散溶液を液体窒素中に噴霧して、湿潤ゲルを含む霧(液滴)を63K以上、77K以下の温度に冷却し微細な凍結体とした。続いて、この微細な凍結体を実施例1と同様にして凍結乾燥させた。
【0141】
図18は、本発明の実施例において得られた炭化ゲルの走査電子顕微鏡像(倍率:8000倍)を示す図である。
【0142】
図18に示すように、炭素化ゲルは約1μmの細孔を有している。
【0143】
以上説明したように、本発明によれば、有機湿潤ゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間を制御することによって、1μm以上、1000μm以下の範囲のマクロ細孔径を有し、細孔径が制御された多孔質炭素を製造することができた。
【0144】
細孔径が制御され、1μm以上、1000μm以下の範囲のマクロ細孔径を有する本発明による多孔質炭素は、触媒用担体、ガス拡散層、電極の構成材料として使用することができ、これらを、例えば、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタ等の電子デバイスに好適に適用することができる。
【0145】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれは、1μm以上、1000μm以下の範囲で細孔径が制御された多孔質炭素の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0147】
10a、10b、10c、10d、10e…電極、12…集電体、13…セパレータ、
14…ガスケット、20…アノード、22a、22b…触媒電極、
23…高分子電解質膜、24a、24b…ガス拡散層、25…燃料、
26a、26b…入口、27a、27b…通路、28a、28b…出口、
29a、29b…排ガス、30…カソード、35…空気又は酸素、40…膜電極接合体、50…燃料供給部、60…空気又は酸素供給部、70…外部回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】
【特許文献1】特開2008−184359(段落0028〜0029)
【特許文献2】特開2009−40646(段落0005〜0028)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合さ
せて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、
前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、
凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、
凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4
工程と
を有する、多孔質炭素の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御される、請求項1に記載の多孔質炭素製造方法。
【請求項3】
前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させる、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項4】
前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、100μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項5】
前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が10μm以上、30μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項6】
前記有機ポリマーヒドロゲルを63K以上、77K以下の温度に冷却させる、請求項4又は請求項5に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項7】
前記有機ポリマーヒドロゲルを小片に分割した後に急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、2μm以下の範囲に制御される、請求項4に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項8】
前記有機ポリマーヒドロゲルを水に分散させた分散溶液を噴霧して急速凍結させる、請求項7に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項9】
噴霧された前記分散溶液の液滴を63K以上、77K以下の温度に冷却させる、請求項8に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項10】
前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が100μm以上、1000μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項11】
前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が500μm以上、1000μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項12】
前記有機ポリマーヒドロゲルを200K以上、273K以下の温度に冷却させる、請求項11に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項13】
前記有機ポリマーヒドロゲルを冷蔵庫又は凍結庫中で凍結させる、請求項12に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項14】
前記第1工程において、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物、及び、前記塩基性触媒を前記溶媒に溶解させた後、355K以上、365K以下の温度に昇温する、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項15】
前記フェノール類合物がレゾルシノール、前記アルデヒド類合物がホルムアルデヒド、前記塩基性触媒が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項16】
前記有機ポリマーヒドロゲルは、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項17】
前記第4工程において、大気圧の不活性ガス下で、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが焼成される、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項18】
凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが873K以上、1473K以下の温度で焼成される、請求項17に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項19】
請求項1から請求項18の何れか1項に記載の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成する電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスを、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタとして構成する、請求項19に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項1】
水を溶媒として塩基性触媒の存在下でフェノール類合物とアルデヒド類合物を重合さ
せて有機ポリマーヒドロゲルを生成させる第1工程と、
前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結させる第2工程と、
凍結された前記有機ポリマーヒドロゲルを凍結乾燥させる第3工程と、
凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルを焼成して多孔質炭素を生成させる第4
工程と
を有する、多孔質炭素の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記有機ポリマーヒドロゲルが最大氷結晶生成帯を通過する時間によって細孔径の大きさが制御される、請求項1に記載の多孔質炭素製造方法。
【請求項3】
前記細孔径が1μm以上、1000μm以下である多孔質炭素を生成させる、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項4】
前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、100μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項5】
前記有機ポリマーヒドロゲルを急速凍結させることによって、前記細孔径が10μm以上、30μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項6】
前記有機ポリマーヒドロゲルを63K以上、77K以下の温度に冷却させる、請求項4又は請求項5に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項7】
前記有機ポリマーヒドロゲルを小片に分割した後に急速凍結させることによって、前記細孔径が1μm以上、2μm以下の範囲に制御される、請求項4に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項8】
前記有機ポリマーヒドロゲルを水に分散させた分散溶液を噴霧して急速凍結させる、請求項7に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項9】
噴霧された前記分散溶液の液滴を63K以上、77K以下の温度に冷却させる、請求項8に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項10】
前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が100μm以上、1000μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項11】
前記有機ポリマーヒドロゲルを緩慢凍結させることによって、前記細孔径が500μm以上、1000μm以下の範囲に制御される、請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項12】
前記有機ポリマーヒドロゲルを200K以上、273K以下の温度に冷却させる、請求項11に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項13】
前記有機ポリマーヒドロゲルを冷蔵庫又は凍結庫中で凍結させる、請求項12に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項14】
前記第1工程において、前記フェノール類合物、前記アルデヒド類合物、及び、前記塩基性触媒を前記溶媒に溶解させた後、355K以上、365K以下の温度に昇温する、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項15】
前記フェノール類合物がレゾルシノール、前記アルデヒド類合物がホルムアルデヒド、前記塩基性触媒が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項16】
前記有機ポリマーヒドロゲルは、95質量%以上、97質量%以下の水を含有する、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項17】
前記第4工程において、大気圧の不活性ガス下で、凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが焼成される、請求項1に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項18】
凍結乾燥された前記有機ポリマーヒドロゲルが873K以上、1473K以下の温度で焼成される、請求項17に記載の多孔質炭素の製造方法。
【請求項19】
請求項1から請求項18の何れか1項に記載の多孔質炭素の製造方法を適用し、この多孔質炭素によって触媒用担体、ガス拡散層、電極の少なくとも1つを形成する電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスを、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパタ、レドックスキャパシタとして構成する、請求項19に記載の電子デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−32117(P2011−32117A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178517(P2009−178517)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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