説明

多層コーティングシステム

少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)を含んでいる少なくとも1の層a)、および水性コーティング組成物b)を含んでいる少なくとも1の層b)を含んでいる多層コーティングシステムであって、少なくとも1の層a)と少なくとも1の層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有し、コーティング組成物b)が、コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、該少なくとも1のチオール官能性化合物と該少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる、多層コーティングシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)を含んでいる少なくとも1の層a)、および水性コーティング組成物b)を含んでいる少なくとも1の層b)、を含んでいる多層コーティングシステムであって、少なくとも1の層a)と少なくとも1の層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有する多層コーティングシステムに関する。本発明は、該多層コーティングシステムを調製する方法、およびベースコート組成物を調製するための部材のキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、(a)イソシアネート官能基を実質的に含んでおらず、硬化しまたは乾燥する能力のある塗膜形成性組成物およびイソシアネート基と活性水素基との反応のための触媒を含んでいる第一の塗膜、および(b)該第一の塗膜の表面に施与され、活性水素化合物とポリイソシアネートとを含んでいる第二の塗膜、を含んでいる多層コーティング複合物を記載している。第一の塗膜がジブチルスズジラウレートを含んでおり、第二の塗膜がポリオールとポリイソシアネートとに基づいている実施例が記載されている。
【0003】
特許文献2は、光潜在性(photolatent)塩基、および塩基触媒によって重合可能なまたは硬化可能な有機物質であって、少なくとも1のポリイソシアネートと少なくとも1のチオール基を有する少なくとも1の化合物とを含んでいる有機物質、を含んでいる光活性化可能なコーティング組成物を記載している。該光活性化可能なコーティング組成物は、ベースコート組成物の表面上に施与されることになるクリアコート組成物であることができる。該光活性化可能なコーティング組成物は長いポットライフを有し、紫外線および可視光を照射されると急速な硬化を示す。この公知の光活性化可能なコーティング組成物は、影の領域、すなわちコーティングされた基体の領域であって、紫外線または可視光に露光されない領域においても最終的には硬化する。
【0004】
これら公知の多層コーティングシステムの欠点は、該公知のシステムのトップコートの硬化速度が常に望ましいほど速くはないことである。特許文献2に従う光活性化可能なコーティング組成物の急速な硬化は、可視光および/または紫外線を照射されたときにのみ達成され、他方、影の領域における硬化速度はかなり遅く、さらなる改良の余地がある。
【特許文献1】米国特許第5578346号明細書
【特許文献2】国際公開第0192362号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これら公知の多層コーティングシステムの上述の欠点を緩和しようとするものである。特に、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物は、影の領域においてもまたは可視光および/もしくは紫外線の何らかの照射がなくてさえも急速に硬化することが可能でなければならない。急速な硬化性は、該組成物のポットライフを犠牲にして達成されてはならない。さらに、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物がクリアコート組成物であれば、該クリアコートの施与は下にあるベースコート層に最小限のみの染み込み(strike−in)作用をもたらすかまたは全くもたらさなくさえあることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
− 少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)を含んでいる少なくとも1の層a)、および
− 水性コーティング組成物b)を含んでいる少なくとも1の層b)
を含んでいる多層コーティングシステムであって、少なくとも1の層a)と少なくとも1の層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有し、コーティング組成物b)が、コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、該少なくとも1のチオール官能性化合物と該少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる多層コーティングシステムによって、これらの目的が達成されることができることが、今発見された。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従う多層コーティングシステムでは、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)は、影の領域においてもまたは可視光および/もしくは紫外線の何らかの照射がなくてさえも急速に硬化する。追加の成分、たとえば触媒がコーティング組成物a)に添加される必要がないので、コーティング組成物a)のポットライフは減少されない。したがって、急速な硬化性は該組成物のポットライフを犠牲にして達成されるわけではない。
【0008】
さらに、コーティング組成物a)のクリアコート組成物の施与は、水性ベースコート組成物b)から製造された、下にあるベースコート層に最小限の染み込み作用をもたらすかまたは全くもたらさなくさえある。
【0009】
本発明は、多層コーティングシステムにおける硬化速度を増加する方法にも関する。コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、該少なくとも1のチオール官能性化合物と該少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる水性多層ベースコートコート組成物b)から調製されたベースコート層b)の表面に、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるクリアコート組成物a)を施与することを、本発明の方法は含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
コーティング組成物a)に使用するのに適したイソシアネート官能性化合物は、少なくとも1のイソシアネート基を含んでいるイソシアネート官能性化合物である。あるいは、コーティング組成物a)中のイソシアネート官能性化合物は、ポリイソシアネート、たとえば脂肪族、脂環式または芳香族のジ、トリまたはテトライソシアネートである。ジイソシアネートの例は、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、トランスビニリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(Desmodur(商標)W)、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI(商標))、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、およびジイソシアナトナフタレンを含む。トリイソシアネートの例は、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、およびリシントリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートの付加物およびオリゴマー、たとえばビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、ウレトジオン、ウレタン、およびこれらの混合物も包含される。このようなオリゴマーおよび付加物の例は、ジイソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの2分子とジオール、たとえばエチレングリコールの1分子との付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの3分子と水の1分子との付加物(Bayer社の商標Desmodur Nの下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とトルエンジイソシアネートの3分子との付加物(Bayer社の商標Desmodur Lの下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とイソホロンジイソシアネートの3分子との付加物、ペンタエリスリトールの1分子とトルエンジイソシアネートの4分子との付加物、m−α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートの3分子とトリメチロールプロパンの1分子との付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート3量体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン2量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット、1,6−ジイソシアナトヘキサンのアロファネート、およびこれらの混合物である。さらに、イソシアネート官能性モノマーの(コ)ポリマー、たとえばα,α’−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートは使用に適している。
【0011】
ポリイソシアネートは、親水性基、たとえば共役結合された親水性ポリエーテル部分を含んでいることができ、これは水性分散物の生成を促進する。
【0012】
コーティング組成物a)に好適に使用されることができるチオール官能性化合物は、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、メチルチオグリコレート、2−メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、およびシステインを包含する。
【0013】
同様に好適なのは、チオール官能性カルボン酸とポリオールとのエステル、たとえば2−メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、11−メルカプトウンデカン酸、およびメルカプトコハク酸のエステルである。このようなエステルの例は、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、およびトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)を含む。このような化合物のさらなる例は、ポリオール出発物、たとえばトリメチロールプロパンとジメチロールプロピオン酸とに基づいた超分枝ポリオールの核から成り、これはその後3−メルカプトプロピオン酸およびイソノナン酸によってエステル化される。これらの化合物は、欧州特許出願公開第0448224号および国際公開第9317060号に記載されている。
【0014】
Sとエポキシ官能性化合物との付加生成物もチオール官能性化合物を与える。これらの化合物は、以下の式T[(O−CHR−CH−O)CHCHXHCHYH]の構造を有していてもよく、ここで、Tはm価の有機部分であり、mは1〜25の整数であり、Rは水素またはメチルであり、nは0〜30の整数であり、XおよびYは酸素またはイオウであり、ただしXおよびYは等しくない。このような化合物の例は、Cognis社から商標Capcure(商標)3/800の下に商業的に入手可能である。
【0015】
チオール官能性基を含んでいる化合物を調製する他の合成方法は、ハロゲン化アリールまたはアルキルとNaHSとを反応させて、それぞれ該アリールおよびアルキル化合物中へとペンダントのメルカプト基を導入する方法;グリニャール試薬とイオウとを反応させて、該構造中へとペンダントのメルカプト基を導入する方法;求核反応、求電子反応またはラジカル反応によるポリメルカプタンとポリオレフィンとの反応;ジスルフィドの反応を含む。
【0016】
これまでのところ、チオール官能性化合物としてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、およびCapcure 3/800を用いて良好な結果が得られている。
【0017】
本発明の他の実施態様では、コーティング組成物a)中のチオール官能性化合物のチオール基は、樹脂に共役結合されることができる。このような樹脂は、チオール官能性ポリウレタン樹脂、チオール官能性ポリエステル樹脂、チオール官能性重付加ポリマー樹脂、チオール官能性ポリエーテル樹脂、チオール官能性ポリアミド樹脂、チオール官能性ポリ尿素樹脂、およびこれらの混合物を包含する。HSとエポキシ基含有樹脂または不飽和炭素−炭素結合含有樹脂との反応、ヒドロキシル官能性樹脂とチオール官能性酸との反応、およびイソシアネート官能性ポリマーとチオール官能性アルコールかあるいはジもしくはポリメルカプト化合物との反応によって、チオール官能性樹脂は調製されることができる。
【0018】
チオール官能性ポリウレタン樹脂は、モノ、ジ、トリまたはテトラ官能性チオール化合物とイソシアネート末端ポリウレタンとの反応生成物であることができ、好ましくはジイソシアネート化合物と1または複数のジオール官能性化合物との反応生成物である。好適なチオール官能性ポリウレタン樹脂は、まずジオール、ジイソシアネート、および水性分散物中の該樹脂の安定化を促進する基を有する任意的な構成ブロックからイソシアネート官能性ポリウレタンを調製し、それに続いて塩基触媒による付加反応において該イソシアネート官能性ポリウレタンと多官能性チオールとを反応させることによって得られることができる。他のチオール官能性ポリウレタン樹脂が知られており、たとえば独国特許出願公開第2642071号および欧州特許出願公開第0794204号に記載されている。
【0019】
チオール官能性樹脂は、(a)少なくとも1のポリカルボン酸またはその反応性誘導体、(b)少なくとも1のポリオール、および(c)少なくとも1のチオール官能性カルボン酸から調製されたポリエステルであることができる。該ポリエステルは好ましくは分枝された構造を有する。ポリカルボン酸またはその反応性誘導体、たとえば対応する酸無水物または低級アルキルエステルとポリアルコールとの縮合によって、これら反応物のうち少なくとも1が少なくとも3の官能基を有するときに、分枝ポリエステルは慣用的に得られる。
【0020】
好適なポリカルボン酸またはその反応性誘導体の例は、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−3級ブチルイソフタル酸、無水トリメリット酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸、およびこれらの混合物である。
【0021】
好適なポリオールの例は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバル酸とのモノエステル、水素化ビスフェノールA、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジメチロールプロピオン酸、ペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、およびこれらの混合物を含む。
【0022】
好適なチオール官能性有機酸の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、システイン、およびこれらの混合物を含む。
【0023】
任意的に、モノカルボン酸およびモノアルコールが該ポリエステルの調製に使用されることができる。好ましくは、C〜C18モノカルボン酸およびC〜C18モノアルコールが使用される。C〜C18モノカルボン酸の例は、ピバル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、安息香酸、4−3級ブチル安息香酸、およびこれらの混合物を含む。C〜C18モノアルコールの例は、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、および4−3級ブチルシクロヘキサノールを含む。
【0024】
チオール基に加えて、上記の成分から調製されたチオール官能性ポリエステルはヒドロキシル基も含んでいてもよい。ヒドロキシル基が存在するならば、チオール基とヒドロキシル基との比は好適には90:10〜10:90、好ましくは75:25〜25:75の範囲にある。
【0025】
チオール官能性樹脂は、チオール官能性重付加ポリマー、たとえばポリ(メタ)アクリレートであることができる。このようなポリ(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリルモノマー、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および重付加ポリマーの調製について上記されたような他のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導される。アクリレートコポリマーのヒドロキシル基(の一部)を上記の1以上のチオール官能性カルボン酸でエステル化することによって、チオール基は導入される。
【0026】
あるいは、グリシジルメタクリレートが該ポリマー中へと導入されて、エポキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが調製される。次にエポキシ基は上述されたような適当なチオール官能性カルボン酸と反応される。あるいは、イソシアネート官能性ポリアクリレートとチオール官能性アルコール、たとえばメルカプトエタノールとを反応させることによって、チオール基は導入されることができる。上記の慣用の方法によって、たとえば適当なモノマーを適当な重合開始剤、たとえばアゾまたはパーオキシ開始剤の溶液にゆっくりと添加することによって、重付加ポリマーは調製される。
【0027】
本発明に従う多層システム中のコーティング組成物a)は、水で媒体された組成物、溶媒で媒体された組成物または溶媒を含んでいない組成物であることができる。該組成物は液状オリゴマーから成ることができるので、高固形分組成物または溶媒を含んでいない組成物としての使用にとりわけ適している。好適には、コーティング組成物a)中の理論的揮発性有機含有物(VOC)は、450g/l(リットル)未満、または350g/l未満、またはさらに250g/l未満である。あるいは、コーティング組成物a)は、その中のチオール官能性化合物が20℃超のTgを有する樹脂であるところの水性粉体コーティング分散物であることができる。該コーティング組成物は粉体コーティング組成物またはホットメルトコーティング組成物であることもできる。
【0028】
1の実施態様では、コーティング組成物a)はペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)とチオール官能性ポリエステルとの組み合わせを含んでいる。チオール官能性ポリエステルが、さらにヒドロキシル基を含んでいることが好まれる。
【0029】
上記のように、本発明に従う多層システムでは、コーティング組成物a)は、可視光および/または紫外線の何らかの照射がなくてさえも急速に硬化する。そうではあっても、可視光および/または紫外線の照射によって、硬化速度をさらに増加することが望ましいこともある。したがって、本発明の1の実施態様では、コーティング組成物a)は光潜在性塩基を含んでいる。好適な光潜在性塩基は、N置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロピリジン、任意的にアルキルエーテルおよび/またはアルキルエステル基で置換されたもの、ならびに4級有機ホウ素光開始剤を包含する。N置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロピリジンの例はN−メチルニフェジピン、N−ブチルニフェジピン、N−ブチル−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステル、および以下の式

に従うニフェジピン、すなわちN−メチル−2,6−ジメチル−4−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステルである。4級有機ホウ素光開始剤の例は英国特許出願公開第2307473号に開示されたもの、たとえば

である。
【0030】
これまでのところ、α−アミノアセトフェノンの群に属する光潜在性塩基によって最適の結果が得られている。本発明に従う光活性化可能なコーティング組成物に使用されることができるα−アミノアセトフェノンの例は、欧州特許出願公開第0898202号に開示された4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルフォリノエタン(Ciba Specialty Chemicals社からのIrgacure(商標)907)および(4−モルフォリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン(Ciba Specialty Chemicals社からのIrgacure(商標)369)である。好まれるのは、以下の式

に従うα−アミノアセトフェノンである。
【0031】
光潜在性塩基は、コーティング組成物a)の固形硬化性物質当たり0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%の量で使用されることができる。
【0032】
コーティング組成物a)が光潜在性塩基を含んでいるならば、それは施与後および任意的に溶媒の蒸発後に放射線硬化性である。紫外線の照射による硬化が特に適している。IR/UV照射の組み合わせも適している。使用されることができる放射線源は、UVについて慣例のもの、たとえば高圧および中圧水銀灯である。極短波長の紫外線(UVB光および/またはUVC光)を取り扱うことに付随する何らかの危険を避けるために、とりわけ自動車再仕上げ工場における使用のために、より低度に有害なUVA光を生じる蛍光灯が好まれる。あるいは、UVBおよびUVC放射の透過を許さないフィルターを備えたUV灯を使用することも可能である。
【0033】
光潜在性塩基がコーティング組成物a)に使用されるときには、コーティング組成物a)中に増感剤が任意的に含められてもよい。
【0034】
好適な増感剤はチオキサントン、たとえば以下の式

に従うイソプロピルチオキサントン(G.Lakes社からのQuantacure(商標)ITX)、オキサジン、およびローダミンである。ベンゾフェノンおよびその誘導体を用いると、無色の表面が得られることができる。ベンゾフェノンの好適な誘導体の例は、

(この式で、R、R、およびRは同じでも異なっていてもよく、CHまたはHを表す。Lambson社からのSpeedcure(商標)BEM)、

(G.Lakes社からのQuantacure(商標)BMS)、および

(この式で、R、R、およびRは同じでも異なっていてもよく、CHまたはHを表す。Lamberti社からのEsacure(商標)TZT))
である。
【0035】
増感剤は、コーティング組成物a)中の固形硬化性物質当たり0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%の量で存在することができる。
【0036】
上記のイソシアネート官能性化合物およびチオール官能性化合物に加えて、他の化合物がコーティング組成物a)中に存在することができる。このような化合物は主バインダーおよび/または反応性希釈剤、任意的に前述の官能性化合物と架橋することができる反応性基を含んでいるものであることができる。その例は、ヒドロキシル官能性バインダー、たとえばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、セルロースアセトブチレート、ヒドロキシル官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマー状ポリオール、たとえば国際公開第9317060号に記載されたものを含む。また、ヒドロキシル官能性オリゴマーおよびモノマー、たとえばヒマシ油およびトリメチロールプロパンが存在してもよい。
【0037】
コーティング組成物a)は、潜在性ヒドロキシル官能性化合物、たとえば2環式オルトエステル基またはスピロオルトエステル基を含んでいる化合物を含んでいることもできる。これらの化合物およびその使用方法は国際公開第9731073号に記載されている。
【0038】
最後に、ケトン樹脂、アスパラギル酸エステル、ならびに潜在性または非潜在性アミノ官能性化合物、たとえばオキサゾリジン、ケチミン、アルジミン、ジイミン、2級アミン、およびポリアミンが存在することができる。これらのおよび他の化合物が当業者に知られており、とりわけ米国特許第5214086号に挙げられている。
【0039】
コーティング組成物a)中のイソシアネート官能性基とチオール官能性基との比は、好適には0.5:1〜3:1、好ましくは0.8:1〜2:1である。
【0040】
コーティング組成物a)は、コーティング組成物に普通に使用される他の成分、添加剤または助剤、たとえば顔料、染料、乳化剤(界面活性剤)、顔料分散助剤、レベリング剤、湿潤剤、クレーター防止剤、消泡剤、たれ防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、およびフィラーをさらに含んでいてもよい。
【0041】
ヒドロキシル官能性化合物がコーティング組成物a)中に存在するならば、該組成物は、好ましくはイソシアネート基をヒドロキシル基で架橋するための1以上の触媒を含んでいる。この例は、Snに基づいた触媒、たとえばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、およびスズオクトエートを含む。また、塩基性触媒も適している。
【0042】
上述のように、水性コーティング組成物b)は、コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、コーティング組成物a)の少なくとも1のチオール官能性化合物と少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる。このような量の触媒は、コーティング組成物b)から調製されたコーティング層の表面上に施与後のコーティング組成物a)の乾燥速度の適度な増加を引き起こす。コーティング組成物b)に用いられる触媒の実際の量はさらに、個々の触媒の比触媒活性に、触媒の当量に、コーティング組成物b)中の他の成分の割合に、選択されたイソシアネート官能性化合物の種類に、およびコーティング組成物a)の所要の硬化速度に依存する。したがって、コーティング組成物b)中の触媒の最も好適な量は、非常に広い範囲で様々であることができる。一般に、コーティング組成物b)中の触媒の量は、コーティング組成物1kg当たり触媒17ミリモル〜10モル、または35ミリモル〜9モル毎kg、または50ミリモル〜8モル毎kg、または200ミリモル〜7モル毎kgの範囲にある。
【0043】
水性コーティング組成物b)中の好適な触媒は、チオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応を促進する能力のある全ての化合物である。
【0044】
一般に、好適な触媒は塩基性触媒である。この例は無機塩基性化合物、たとえば金属の水酸化物および塩基性酸化物である。リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムの水酸化物が明示的に挙げられることができる。
【0045】
4級水酸化アンモニウム、たとえば水酸化テトラエチルアンモニウムが、コーティング組成物b)中の触媒として使用されることもできる。
【0046】
さらに、アミンはコーティング組成物b)中の好適な触媒である。
【0047】
好適な1級アミンは、たとえばイソプロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールまたは2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールである。使用されることができる2級アミンは、たとえばモルホリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびジイソプロパノールアミンである。同様に適しているのはジアミンおよびポリアミン、たとえばエポキシドとアンモニアとの付加生成物またはエポキシドと1級、2級もしくは3級アミンとの付加生成物である。
【0048】
3級アミンは、特に適している部類の塩基性触媒である。好適な3級アミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、およびN−エチルモルホリンを含む。N,N−ジメチルエタノールアミンがコーティング組成物b)中の好まれる触媒である。
【0049】
同様に適しているのは、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、グアニジン、グアニン、グアノシン、メラミン、ならびにこれらの混合物および誘導体である。
【0050】
コーティング組成物b)中のアミン触媒は、アミノ官能性の、任意的に塗膜形成性のポリマーまたは樹脂、たとえば2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートの(コ)ポリマーであることもできる。
【0051】
コーティング組成物b)中の触媒が塩基であるときは、該塩基は、保護されたまたは中和された形で存在しているのと比べて、そのまま存在していることが好まれる。
【0052】
あるいは、コーティング組成物b)中の触媒は、有機配位子を有する金属化合物であって、該金属が周期表の第3〜13族の金属である金属化合物であることができる。好ましくは、金属は遷移金属である。より好ましくは、金属は周期表の第4族の金属である。
【0053】
金属化合物は、有機化合物の金属塩および/または金属錯体を含んでいる。有機化合物は、2〜40炭素原子を有し、任意的にO、N、およびSのような原子を含んでいる基である。金属塩は、カルボキシレートの群から選択されたアニオンを含んでいる。これらの例はプロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、2−エチルヘキサノエート、ナフテネート、オキサレート、マロネート、サクシネート、グルタメート、およびアジペートを含む。金属錯体は、ベータジケトン、アルキルアセトアセテート、アルコレート、およびこれらの組み合わせの群から選択された配位子を含んでいる。これらの例は、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタジオン、2,4−オクタンジオン、プロポキシド、イソプロポキシド、およびブトキシドを含む。好ましくは、金属化合物は金属錯体である。
【0054】
金属の例はアルミニウム、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムを含む。金属錯体の例は2,4−ペンタンジオンと錯化されたアルミニウム(King Industries社からのK−KAT(商標)XC5218)、アルミニウムトリアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラブトキシド(DuPont社からのTyzor(商標)NBZ)、チタンテトラブトキシド(DuPont社からのTyzor(商標)TBT)、6−メチル−2,4−ヘプタジオンと錯化されたジルコニウム、King Industries社からのK−KAT(商標)XC6212、アルミニウムトリイソプロポキシド、およびチタンジイソプロポキシドビス−2,4(ペンタジオネート)(DuPont社からのTyzor(商標)AA)を含む。
【0055】
コーティング組成物b)中のさらに他の部類の好適な触媒は、ホスフィンとミカエル受容体とを含んでいる共触媒であり、たとえば国際公開第0168736号に記載されたものである。このような共触媒が使用されるときは、共触媒の双方の成分、すなわちホスフィンおよびミカエル受容体がコーティング組成物b)中に存在することが可能である。あるいは、該成分のうち一方のみをコーティング組成物b)中に含め、他方の成分をコーティング組成物a)中に含めることも可能である。したがって、コーティング組成物b)がミカエル受容体を含んでいるときは、コーティング組成物a)はホスフィンを含んでいることができる。ホスフィンをコーティング組成物b)中に含め、ミカエル受容体をコーティング組成物a)中に含めることも同じように可能である。共触媒のうちの1として用いられるホスフィンは、式Z(PRに従う化合物であり、この式で、nは1〜6の整数であり、Rはアリール基またはアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはシクロアルケニル基から独立に選択され、該アルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはシクロアルケニル基は直鎖でも分枝していてもよく、1以上のヘテロ原子、たとえば酸素原子およびハロゲン原子を有していても有していなくてもよく、ただし酸素ヘテロ原子はリン原子に直接、結合されていない。好ましくは、Rはアルキル基またはアリール基であり、より好ましくは該アルキル基は1〜15炭素原子を有し、該アリール基は6〜15炭素原子を有する。
【0056】
n=1の場合には、ZはRに準じる基である。このような化合物は以下モノホスフィンと呼ばれる。モノホスフィンの例はトリフェニルホスフィンおよびトリオクチルホスフィンを含む。
【0057】
n≧2の場合には、アリーレン基、直鎖でも分枝していてもよく、ヘテロ原子、たとえば酸素、リン、窒素を有していても有していなくてもよく、ただし酸素および窒素ヘテロ原子がリン原子に直接、結合されていないアルキレン、シクロアルキレン、アルケニレン、シクロアルケニレン、アルキリデン、シクロアルキリデン、アルケニリデンもしくはシクロアルケニリデン基、ならびに/またはカルボキシル、酸無水物、シクロアルキル、アリールから選択された基から、Zは選択され、またはそれは単一結合であってもよい。これらの化合物は以下ポリホスフィンと呼ばれる。ポリホスフィンの例は、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5−ビス(2−ジフェニルホスフィノ)ペンタン、トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、シス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エチレン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、テトラフェニルビホスフィン、トリス−2−(ジフェニルホスフィノ)(エチル)ホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)マレイン酸無水物、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ペンタフルオロフェニル)(ホスフィノ)エタン、(2R,3R)−(−)−2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビシクロ[2,2,1]ヘプテン−5、およびエチレン−ビス(2−メトキシフェニル)(フェニルホスフィン)を含む。好まれるのは、Zが、直鎖のまたは分枝している、1〜8炭素原子を有し、任意的にリン原子を含んでいるアルキレン基であり、かつRがアリール基である、ポリホスフィンである。最も好まれるホスフィンは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンまたはトリフェニルホスフィンである。
【0058】
ミカエル受容体は、好ましくは1以上のオレフィン性不飽和基を含んでおり、該オレフィン性不飽和基は、その不飽和結合の炭素原子に結合された少なくとも1の電子吸引性官能基を含んでいる。オレフィン性不飽和結合は二重または三重結合であることができる。一般に、ミカエル受容体は、以下の式I

に従う構造を有し、この式で、R、R、R、およびRのうち少なくとも1が不飽和結合の炭素原子に結合された電子吸引性官能基を含んでおり、mは1〜6の整数である。
【0059】
電子吸引性官能基の例は、カルボニル、カルボキシル、エステル、チオカルボニル、チオカルボキシル、チオエステル、スルホキシド、スルホニル、スルホ、ホスフェート、ホスファイト、ホスフォナイト、ホスフィナイト、ニトロ、ニトリル、およびアミドを含む。
【0060】
mが1である場合には、R、R、R、および/またはRのうち少なくとも1は電子吸引性官能基を含んでおり、該電子吸引性官能基は、水素原子、種々の他の官能基、たとえばカルボン酸基もしくは水酸基によって任意的に置換されていてもよい、直鎖のまたは分枝している、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、およびアリールに結合されていることができる。R、R、R、および/またはRが吸引性官能基を含んでいないならば、これらは水素原子、種々の官能基、たとえばカルボン酸基もしくは水酸基によって任意的に置換されていてもよい、直鎖のまたは分枝している、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、およびアリールから独立に選択されることができる。RおよびRまたはRおよびRは、1以上の電子吸引性官能基を含んでいる環を形成してもよい。
【0061】
mが2〜6である場合には、単一結合、電子吸引性官能基、ならびに−O−、−S−、−Si−、および−P−のようなヘテロ原子、アミド基、尿素基、およびエステル基のような基、および/または1以上の電子吸引性官能基を任意的に含んでいる炭化水素化合物から誘導された多価の基から、R1は選択される。該炭化水素化合物は、置換または非置換の、アルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、アルキン、シクロアルキン、アレーン、またはこれらの組み合わせであることができる。該多価の基は好ましくは多価アルコールから誘導される。このような多価アルコールの例は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール,1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバル酸とのモノエステル、水素化ビスフェノールA、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジメチロールプロピオン酸、ペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、およびジペンタエリスリトールを含む。あるいは、1以上の電子吸引性官能基を有するR1とともに、R3は環を形成してもよい。
【0062】
ミカエル受容体の例は、イソボルニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)モノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート,N−ブチルマレイミド、ベンジルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、無水マレイン酸、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルマレイミドとの3官能性付加物、ジエチルマレエート、メトキシプロピルシトラコンイミド、ジエチルベンジリデンマロネート、またはα,β−不飽和アルデヒド、たとえばシンナムアルデヒドもしくはシトラールである。好まれるミカエル受容体の例は、トリメチロールプロパントリアクリレート、Irganox 3052またはN−ブチルマレイミドである。
【0063】
多層コーティングシステムの1の実施態様では、コーティング組成物b)は、本質的に上記の触媒および液状担体としての水から成る。この場合、多層コーティングシステムの層b)は、水の蒸発後に本質的に上記の触媒から成る。
【0064】
他の実施態様では、コーティング組成物b)は塗膜形成性バインダーも含んでいる。コーティング組成物b)中の塗膜形成性バインダーは、水性コーティング組成物に普通に使用される任意の樹脂、たとえば重付加ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリエーテル、セルロースに基づいたバインダー、たとえばセルロースアセトブチレート、および/またはハイブリッド樹脂であることができる。水性コーティング組成物b)中に、水性担体媒体中の溶液の形で、または水性担体媒体中の分散物の形で、これらの樹脂は存在することができる。
【0065】
好適な重付加ポリマー樹脂として、エチレン性不飽和モノマーの(コ)ポリマーが挙げられることができる。フリーラジカル開始重合の慣用の方法によって、重付加ポリマーは調製されることができる。あるいは、進歩した重合技術、たとえば基移動重合(GTP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合が、重付加ポリマー樹脂の調製のために使用されることもできる。
【0066】
重付加ポリマーは、ヒドロキシ官能性アクリルモノマー、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、他のアクリルモノマー、たとえば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、スチレン等のようなビニル誘導体と任意的に組み合わされたもの、またはこれらの混合物から誘導されたアクリルポリオールであることができ、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸の語は、それぞれメタクリレートおよびアクリレートの双方、ならびにメタクリル酸およびアクリル酸の双方を言う。
【0067】
1の実施態様では、コーティング組成物b)中の樹脂は、付加ポリマーの水性分散物である。水性分散物は、アルミニウムのようなメタリック顔料または金属酸化物で被覆されたマイカのような顔料と混合されてもよく、それによってメタリック外観の塗膜が得られることができる。
【0068】
該付加ポリマーは、好適には乳化重合によって2以上の段階で調製されたコポリマーであり、その(シクロ)アルキル基が4〜12炭素原子を有するところの(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート60〜100モル%とその(シクロ)アルキル基が4〜12炭素原子を有するところのジ(シクロ)アルキルマレエートおよび/またはジ(シクロ)アルキルフマレート0〜40モル%との混合物65〜100モル%、および異なった、共重合性の、モノエチレン性不飽和モノマー0〜35モル%から成るモノマー混合物Aの、該付加ポリマーの100重量部当たりで計算されて60〜95重量部の第一段階における共重合によって、ならびに(メタ)アクリル酸10〜60モル%と、異なった、共重合性の、モノエチレン性不飽和モノマー40〜90モル%とのモノマー混合物Bの(該付加ポリマーの100重量部当たりで計算されて)5〜40重量部の後続の段階における共重合によって得られ、該(メタ)アクリル酸から誘導されたカルボン酸基が少なくとも部分的にイオン化されているコポリマーである。好ましくは、該付加ポリマーは、モノマー混合物A80〜90重量部およびモノマー混合物B10〜20重量部の共重合によって得られ、該双方の量とも該付加ポリマーの100重量部当たりで計算される。乳化重合とは、本明細書では水溶性または水不溶性の開始剤の存在下に乳化剤をモノマー当たりで計算されて0.1〜9重量%使用する、水中におけるエチレン性不飽和モノマーの重合を意味する。
【0069】
モノマー混合物Aへの使用に適し、4〜12炭素原子を持つ(シクロ)アルキル基を有する(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートの例として、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートが挙げられることができる。モノマー混合物Aが、前述の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート70〜95モル%、より特には80〜95モル%有すべきことが好まれる。モノマー混合物Aへの使用に適した、4〜12炭素原子を持つ(シクロ)アルキル基を有するジ(シクロ)アルキルマレエートおよび/またはフマレートの例として、ジブチルマレエート、ジブチルフマレート、2−エチルヘキシルマレエート、2−エチルヘキシルフマレート、オクチルマレエート、イソボルニルマレエート、ドデシルマレエート、およびシクロヘキシルマレエートが挙げられることができる。
【0070】
モノマー混合物A中に最大で35モル%、好ましくは5〜20モル%が使用されることができる、好適なモノマー状のモノエチレン性不飽和化合物として、アルキル基中に4未満のC原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、たとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート;アルキル基中に4未満のC原子を有するアルキルマレエートおよびフマレート、たとえばジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、およびジプロピルマレエート;エーテル基を有する(メタ)アクリレート、たとえば2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、p−ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、p−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびこれらの対応するアルコキシ誘導体;エポキシ(メタ)アクリレート、たとえばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;モノビニル芳香族炭化水素、たとえばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン;また、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド;N−アルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート;モノマー、たとえば塩化ビニル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、および1以上の尿素基またはウレタン基を有するモノマー、たとえば1モルのイソシアナトエチルメタクリレートと、それぞれ1モルのブチルアミン、1モルのベンジルアミン、1モルのブタノール、1モルの2−エチルヘキサノール、および1モルのメタノールとの反応生成物のようなものが挙げられることができる。これらの化合物の混合物が使用されることもできる。第一の段階においては非架橋ポリマーが生成されなければならないので、モノマー混合物A中のモノマーは互いに反応する何らかの基を有していない。
【0071】
(メタ)アクリル酸の他にモノマー混合物B中に使用されることができるモノエチレン性不飽和化合物の例として、モノビニル芳香族炭化水素、たとえばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、およびビニルナフタレン;ニトリル、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル;アクリルまたはメタクリルエステル、たとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、p−ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート;ヒドロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびこれらの対応するアルコキシ誘導体;エチレン性不飽和モノカルボン酸、たとえばクロトン酸およびイタコン酸、および化合物、たとえば塩化ビニル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミドが挙げられることができる。これらの化合物の混合物が使用されることもできる。モノマー混合物Bが、(メタ)アクリル酸15〜50モル%、より特には20〜40モル%、および異なった、共重合性の、エチレン性不飽和モノマー50〜85モル%、より特には60〜80モル%を有すべきことが好まれる。モノマー混合物Bの共重合は、一般に30〜450、好ましくは60〜350の酸価、および0〜450、好ましくは60〜300のヒドロキシル価を有するコポリマーをもたらすだろう。酸価およびヒドロキシル価の双方ともコポリマーg当たりのKOHmg単位で表される。任意的に、異なったモノマー混合物Aおよび/またはBは逐次的に使用されることができる。
【0072】
乳化重合に好ましく使用される乳化剤は、アニオン性または非イオン性の性質を有するものである。アニオン性乳化剤の例は、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、およびロジン酸ナトリウムを含む。非イオン性乳化剤の例は、直鎖のおよび分枝している、アルキルおよびアルキルアリールのポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールのエーテルおよびチオエーテル、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、たとえば1モルのノニルフェノールと5〜12モルのエチレンオキシドとの付加物、またはこの付加物のサルフェートのアンモニウム塩を含む。また、乳化重合においては慣用のラジカル開始剤が通常の量で使用されることができる。好適なラジカル開始剤の例は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーピバレート、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルを含む。たとえばヒドロパーオキシドと組み合わせて使用されることができる好適な還元剤として、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオサルフェート、ビサルフェート、ヒドロサルフェート、水溶性アミン、たとえばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、N,N’−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、および還元性塩、たとえば硫酸コバルト、硫酸鉄、硫酸ニッケル、および硫酸銅が挙げられることができる。任意的に、鎖長調節剤、たとえばn−オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸が使用されることもできる。
【0073】
モノマー混合物の共重合は、一般に大気圧において40〜100℃、好ましくは60〜90℃の温度において、不活性ガス、たとえば窒素の雰囲気中で実施される。しかし、任意的に、高められた圧力において、40〜100℃またはそれよりも高い温度において、共重合は実施されることもできる。
【0074】
アクリル酸および/またはメタクリル酸から誘導されたカルボン酸基は、カルボン酸基の当量当たり0.5〜1.5、好ましくは0.8〜1.3当量のイオン化剤の添加によって、少なくとも40〜100%イオン化される。カルボン酸の好適なイオン化剤として、アンモニアおよびアミン、たとえばN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、およびモルホリンが挙げられることができる。カルボン酸基のイオン化は重合の後で実施されるべきことが好まれる。
【0075】
コーティング組成物b)は、任意的に少なくとも1の第二の樹脂を含んでいることができる。このような第二の樹脂は、組成物b)中に既に存在する樹脂と同一ではなく、それと同一の群の重付加ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルの樹脂またはこれらの混合物から選択されることができる。
【0076】
当業者に知られているように、好適なポリウレタンは一般にポリイソシアネートおよびポリオールから調製されることができる。これらの例は、(NeoResin社からの)Neorez R970および(Vianova Resins社からの)Daotan VTW 2275を含む。ポリウレタンの定義に同様に含まれるのは、ポリウレタンのハイブリッド、たとえばポリウレタンアクリレートハイブリッドである。これらの例は、(NeoResin社からの)Neopac E115および(Vianova Resins社からの)Daotan VTW 6460を含む。
【0077】
好ましくは、該ポリウレタンはポリウレタンポリ尿素である。より好ましくは、ポリウレタンポリ尿素は、
i)固形分100g当たり少なくとも200ミリモルの化学的に取り込まれたカーボネート基--O--CO--O--、および
ii)固形分100g当たり総合計320ミリモルまでの化学的に取り込まれたウレタン基--NH--CO--O--および化学的に取り込まれた尿素基--NH--CO--NH--
を含んでいる。このようなポリウレタンポリ尿素分散物は、独国特許第3936794号によって知られている。
【0078】
好ましくは、ポリウレタンポリ尿素は、固形分含有量100g当たり、少なくとも250ミリモルの化学的に取り込まれたカーボネート基--O--CO--O--、ならびに固形分含有量100g当たり、総合計200〜300ミリ当量のウレタン基--NH--CO--O--および尿素基--NH--CO--NH--を含んでいる。
【0079】
ポリウレタンポリ尿素は、
a)親水性基または親水性基へと変換可能な基を有さない有機ポリイソシアネートと
b)親水性基または親水性基へと変換可能な基を有さない比較的高分子量の有機ポリヒドロキシル化合物、
c)イソシアネートと反応性の少なくとも2の基を有するが、親水性基または親水性基へと変換する能力のある基を有さない任意的な低分子量組成物、
d)少なくとも1のイソシアネート基またはイソシアネートと反応性の少なくとも1の基を有する任意的な非イオン性親水性出発成分、および
e)少なくとも1のイオン性基またはイオン性基へと変換する能力のある少なくとも1の基ならびにイソシアネートと反応性の少なくとも1の水素原子を有する任意的な出発成分と
を反応させることによって公知の様式で調製されることができ、ただし、成分d)およびe)中に存在する非イオン性基およびイオン性基の量が、水中におけるポリウレタンポリ尿素の分散性を確保するのに十分であることを条件とする。
【0080】
イソシアネート基とヒドロキシ基との間の反応はウレタン基をもたらし、他方、反応生成物中に存在する何らかの尿素基は、アミン官能性出発成分からおよび/またはイソシアネート基と分散性の水との間の反応から生成され、これは水性ポリウレタン分散物の調製の間、常に起こりうる。
【0081】
ポリイソシアネート成分a)は、ポリウレタンの化学から知られる任意のポリイソシアネートを包含する。これらのポリイソシアネートは一般に112〜1,000、好ましくは140〜400の分子量を有する。好適なポリイソシアネートは式Q(NCO)nに相当するものであり、この式で、Qは、112〜1,000、好ましくは140〜400の分子量を有する有機ポリイソシアネートからイソシアネート基を除くことによって得られる有機基を表し、nは2〜4、好ましくは2または3、より好ましくは2の数を表す。上記の式において、Qは好ましくは4〜18炭素原子を有する二価脂肪族炭化水素基、5〜15炭素原子を有する二価脂環式炭化水素基、6〜15炭素原子を有する二価芳香族炭化水素基、または7〜15炭素原子を有する芳香脂肪族(araliphatic)炭化水素基を表す。好適なポリイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート−(1,11)、リシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを含む。同様に好適なのは、芳香族ジイソシアネート、たとえば2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、および1,4−ジイソシアナトイソプロピルベンゼンである。HDI、IPDI、およびこれらのジイソシアネートの混合物が特に好まれる。
【0082】
成分b)は、300〜5,000、好ましくは500〜3,000の分子量を有し、少なくとも50重量%、好ましくは70重量%超のポリヒドロキシポリカーボネートを有する有機ポリヒドロキシル化合物を含んでいる。ポリヒドロキシポリカーボネートは、炭酸誘導体、たとえばジフェニルカーボネートまたはホスゲンとジオールとの反応によって得られる炭酸のエステルである。これらのジオールの例は、エチレングリコール、プロパン−1,2−および−1,3−ジオール、ブタン−1,4−および−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリおよびテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールAを含む。ジオール成分は、好ましくは40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくはヘキサン−1,6−ジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基に加えてエーテルもしくはエステル基を有するもの、たとえば独国特許第1770245号に従って1モルのヘキサンジオールと≧1モル、好ましくは1〜2モルのカプロラクトンとの反応によって得られた生成物または独国特許第1570540号に従ってジヘキシレンもしくはトリヘキシレングリコールを生成するヘキサンジオールの自己エーテル化によって得られた生成物を包含する。独国特許第3717060号に記載されたポリエーテルポリカーボネートジオールも非常に適している。
【0083】
ヒドロキシルポリカーボネートは実質的に直鎖でなければならない。もっとも、これは所望により、多官能性成分、特に低分子量ポリオール、たとえばグリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、クイニトール、マンニトールおよびソルビトール、メチルグリコシドおよび1,4,3,6−ジアンヒドロヘキシトールを取り込むことによってわずかに分枝されていてもよい。ポリヒドロキシポリカーボネートの他に、出発成分b)は、前記の分子量を有する他の公知のポリヒドロキシル化合物、たとえば、
b1)ジカルボン酸、たとえばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸と、ジオール、たとえばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、および種々のビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン異性体とから得られたジヒドロキシポリエステル、
b2)ポリラクトン、たとえば上述の二価アルコールとともに生成されたε−カプロラクトンのポリマー、および
b3)ポリエーテル、たとえば水、上述のジオールもしくは2のNH結合を有するアミンのような二価出発分子とともに生成された、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンのポリマーまたはコポリマー、特にプロピレンオキシドと任意的なエチレンオキシドとのポリマーおよびコポリマー(エーテル分子の全量の一部として、エチレンオキシドが使用されることができ、ただし得られたポリエーテルジオールが10重量%超のエチレンオキシド単位を有さないことを条件とする。エチレンオキシドの添加なしに得られたポリエーテルジオール、とりわけプロピレンオキシドおよびテトラヒドロフラン単独に基づいたものを使用することが好まれる。)
を含有していてもよい。
【0084】
任意的に使用される出発成分c)は、300未満の分子量を有し、ヒドロキシルおよび/またはアミノ基を有し、かつイソシアネート付加反応において少なくとも二官能性である公知の低分子量化合物である。イソシアネート付加反応において二官能性である化合物(鎖延長剤)、イソシアネート付加反応において少なくとも三官能性である化合物(架橋剤)、およびこのような化合物の混合物が、出発成分c)として使用されることができる。これらの化合物の例は、低分子量多価アルコール、たとえばエチレングリコール、プロパン−1,2−および−1,3−ジオール、ブタン−1,4−および−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール異性体およびペンタエリスリトール;低分子量ジアミン、たとえばエチレンジアミン、1,2−および−1,3−ジアミノプロパン、1,3−、1,4−および1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,4−ビス−(2−アミノ−プロピル−2)シクロヘキサン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびこのようなジアミンとヒドラジンとの混合物;より高官能性のポリアミン、たとえばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジプロピレントリアミン、およびトリプロピレンテトラアミン;アクリロニトリルと脂肪族もしくは脂環式ジアミンとの付加の水素化生成物、好ましくは1のアクリロニトリル基とジアミンの1分子との付加によって得られたもの、たとえばヘキサメチレンプロピレントリアミン、テトラメチレンプロピレントリアミン、イソホロンプロピレントリアミンまたは1,3−もしくは1,3−シクロヘキサンプロピレントリアミン、およびこのようなポリアミンの混合物を含む。
【0085】
親水性出発成分d)は、ポリエーテル鎖内に取り込まれたエチレンオキシド単位を有する組成物であり、とりわけ、
d1)イソシアネートと反応性の水素原子を有し、イソシアネート重付加反応において二官能性であるジイソシアネートおよび/または組成物であって、該ジイソシアネートおよび組成物がエチレンオキシド単位を有するポリエーテル側鎖も有するもの、および
d2)イソシアネート重付加反応において単官能性であり、イソシアネートと反応性の水素原子を有するモノイソシアネートおよび/または組成物であって、該モノイソシアネートおよび組成物がエチレンオキシド単位を有する末端ポリエーテル鎖も有するもの、および
d3) d1)とd2)との混合物
である。
【0086】
米国特許第3920598号、米国特許第3905929号、米国特許第4190566号、および米国特許第4237264号に記載された方法と類似した方法によって、これらの親水性出発成分の調製は実施される。
【0087】
出発成分e)として使用される化合物は、イソシアネートと反応性の少なくとも1の基および少なくとも1の(潜在的に)イオン性の基を有する。これらは、米国特許第3479310号に記載されたアルコール含有3級アミノ基、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシスルホン酸、アミノカルボン酸、およびアミノスルホン酸を包含する。潜在的にイオン性の基を有するこれらの出発成分の代りに、これらに対応する塩の種類の誘導体、すなわち該潜在的にイオン性の基の4級化または中和によって生成されたイオン性基が使用されてもよい。潜在的にイオン性の基をイオン性基へと変換するために適した4級化剤および中和剤の例も、米国特許第3479310号に記載されている。潜在的にイオン性の出発成分が使用されるときは、潜在的にイオン性の基をイオン性基へと少なくとも部分的に変換することは、ポリウレタンポリ尿素の調製の後またはその間に、4級化または中和によって実施される。
【0088】
好まれる出発成分e)は、合計5〜8の炭素原子を有する2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)アルカンモノカルボン酸および/または有機アミンもしくはNHを用いた部分的もしくは完全な中和によって得られたこれらの塩を包含する。2,2−ジメチロールプロピオン酸(2,2−ビス−ヒドロキシメチルプロピオン酸)および/またはこれらの塩は、出発成分e)としての使用に特に好まれる。
【0089】
出発成分a)〜e)からのポリウレタンの調製は、出発成分中に存在するイソシアネート基と出発成分中に存在するイソシアネートと反応性の基との当量比が0.8:1〜2:1、好ましくは0.95:1〜1.5:1、より好ましくは0.95:1〜1.2:1であるような割合で該反応物を使用する1以上の段階において、公知の様式で実施される。
【0090】
末端のまたは側鎖のポリエーテル鎖中へと取り込まれたエチレンオキシド単位0〜30重量%、好ましくは1〜20重量%を、ポリウレタンポリ尿素が有するような量で、成分d)は使用される。
【0091】
最終的に得られるポリウレタンが、固形分100g当たりイオン性基0〜120ミリモル、好ましくは1〜80ミリモルを有することが確保されるように、イオン性基を生成するために要求される成分e)の量および中和度が計算される。エチレンオキシド単位およびイオン性基の合計量は、ポリウレタンポリ尿素の水中における分散性を確保するのに十分でなければならない。
【0092】
出発成分a)〜e)の反応は、イソシアネートに非活性な、水と混和性の溶媒の任意的な存在下に1以上の段階において実施され、その結果、このような溶媒中の溶液の形で反応生成物が得られることができる。本明細書において、「溶液」の語は、真の溶液かあるいは油中水エマルションを表し、該油中水エマルションは、たとえば個々の出発成分が水性溶液の形で使用されるならば、生成されることがある。好適な溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、およびこのような溶媒の任意の混合物を含む。出発成分a)〜e)の反応生成物が、10〜70重量%の非揮発性含有物を有する溶液の形で得られるような量で、これらの溶媒は一般に使用される。
【0093】
ポリウレタンポリ尿素の調製が単一段階反応として実施されるときは、イソシアネートと反応性の基を有する出発成分は、好ましくは一緒に混合され、それからイソシアネート基を有する出発成分と反応される。好ましくは、当初は溶媒の不存在下に50〜150℃の温度において任意的に公知の触媒の存在下に、この反応は実施される。
【0094】
反応の過程において混合物の粘度は増加し、したがって上述の溶媒のうち1が該混合物に徐々に添加される。最終的に得られる有機溶液のポリウレタン含有量は、10〜70重量%、特に15〜55重量%の濃度に調整される。
【0095】
2段階方法が用いられるならば、好ましくは最初に、過剰量のイソシアネート含有出発成分とヒドロキシル含有出発成分とから、溶媒があろうとなかろうと1.1:1〜3.5:1、好ましくは1.2:1〜2.5:1のNCO/OH当量比において、約50〜150℃において溶媒なしで、イソシアネートプレポリマーが調製され、そして次に、この段階までに溶媒が使用されていなかったならば、このイソシアネートプレポリマーが溶媒中に溶解される。得られた溶液はそれからさらに鎖延長剤または架橋剤c)と反応され、該鎖延長剤または架橋剤c)は任意的に水性溶液の形で使用され、好ましくは1級および/または2級アミノ基を有する上述の種類の出発成分である。第二段階に使用される出発成分c)の量は、第一および第二段階に使用される全ての出発成分の当量比が前述の条件に適合することが確保されるように計算される。両2変形(単一段階および2段階)の最終生成物は、上記の範囲内の固形分含有量を有する上述の溶媒中の反応生成物の溶液である。
【0096】
何らかの潜在的にイオン性の基が存在するならば、4級化または中和によるイオン性基へのこれらの少なくとも部分的な変換は、分散性の水の添加前に好都合に実施される。出発成分e)がカルボキシル基を有するならば、それが好まれ、特にジメチロールプロピオン酸が好まれ、使用される中和剤は好ましくは3級アミン、たとえばトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N−トリメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペラジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルピペリジン、およびトリエタノールアミンである。カルボキシル基の中和のために、欧州特許出願公開第0269972号に示された条件下にアンモニアを使用することも好まれる。
【0097】
水を溶媒または分散媒体として添加した後、使用された補助溶媒の少なくとも大部分が、蒸留によって任意的に除去される。生成物に10〜60重量%、好ましくは20〜45重量%の固形分含有量を与えるのに十分である量で、水は使用される。
【0098】
従来技術で知られた他の方法によって、たとえば米国特許第4269748号および米国特許第4829122号に開示されているように、鎖延長剤c)としてヒドラジンまたはジアミンを保護された形で、すなわち対応するアジンまたはケチミンの形で使用することによって、ポリウレタンポリ尿素は調製されることもできる。
【0099】
あるいは、いわゆるプレポリマー混合方法が使用されてもよい。この方法では、NCOプレポリマーが最初に上記のように調製され、そして存在する何らかの潜在的にイオン性の基をイオン性基へと少なくとも部分的に変換した後で、該プレポリマーが水と混合されて、エマルションが生成される。プレポリマーのNCO基がそれから、アミン官能性の鎖延長剤または架橋剤c)の添加によっておよび/または水との反応によって、水性相中において反応に至らしめられる。
【0100】
このようなポリウレタンポリ尿素分散物の1の例は、Bayer社からのBayhydrol VPLS 2952である。ポリウレタンの混合物が使用されてもよい。
【0101】
コーティング組成物b)は、任意的にコーティング組成物b)中に存在する官能基と化学反応する能力のある硬化剤を含んでいる。このような官能基の例はヒドロキシル基である。化学反応する能力のある好適な硬化剤の例は、上記のポリイソシアネートである。この場合、コーティング組成物b)は、化学反応によって少なくとも部分的に硬化可能である。
【0102】
層b)中の架橋の小さい程度は、多層コーティングシステムの性能に、特に層a)と層b)との間の改良された接着の観点から有益でありうる。したがって、好まれる実施態様では、コーティング組成物b)は、物理的乾燥によって、すなわち水の蒸発によって本質的に、かつ架橋によって小程度に乾燥するコーティング組成物である。
【0103】
コーティング組成物b)が架橋によって本質的に乾燥するときは、本発明に従う多層システムの層a)と層b)との少なくとも1の層境界における触媒の可動性および/または有効性は、層a)中のコーティング組成物a)を有効に硬化するには不十分であるかも知れない。したがって、コーティング組成物b)はポリイソシアネートとチオール官能性化合物を含んでいるコーティング組成物でないことが好まれる。
【0104】
コーティング層b)は、好ましくは水性ベースコート組成物から調製された着色および/または特殊効果付与ベースコート層である。このようなベースコート組成物は、普通、着色および/または特殊効果付与顔料を含んでいる。着色および/または特殊効果付与顔料は従来技術で周知である。アルミニウム粒子およびマイカ粒子が特に挙げられることができる。
【0105】
上述のように、コーティング組成物b)は水性コーティング組成物である。揮発性担体液体が主に水であることを、これは意味する。しかし、コーティング組成物b)は、水性コーティング組成物と相容性である少量の有機溶媒を含んでいることもできる。好適な有機溶媒として、エーテル基含有アルコール、たとえばブトキシエタノール、1−メトキシプロパノール−2、1−エトキシプロパノール−2、1−プロポキシプロパノール−2、1−ブトキシプロパノール−2、および1−イソブトキシプロパノール−2;アルコール、たとえばメタノールおよびエタノール;ならびにジオール、たとえばエチレングリコールおよびジエチレングリコールが挙げられることができる。
【0106】
本発明は、少なくとも1の樹脂と少なくとも1の着色および/または特殊効果付与顔料とを含んでいるトナーモジュール、該トナーモジュールの樹脂と相容性の少なくとも1の樹脂を含んでいる任意的なコネクターモジュール、ならびに樹脂と顔料とを本質的に含んでいない希釈剤モジュールを含んでいる、水性ベースコート組成物を調製するための部材のキットであって、該モジュールのうち1がチオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒の有効な量を含んでいる部材のキットにも関する。好ましくは、チオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒の有効な量は、コネクターモジュール中にまたは希釈剤モジュール中に含められる。該触媒が塩基触媒であるときは、該触媒は中和されていない形で存在する。
【0107】
本発明の多層コーティングシステムの製造の場合、コーティング組成物a)およびb)は、中間の乾燥なしに相次いで施与されることができ、いわゆる「ウェット・オン・ウェット」施与である。あるいは、中間の乾燥段階があることもある。コーティング組成物a)およびb)はランダムな順番で施与されることができ、フィラー組成物、プライマー組成物、ベースコート組成物、クリアコート組成物、および/またはトップコート組成物であることができる。
【0108】
したがって、本発明は、
(i) コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、チオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる水性コーティング組成物b)の層b)を基体に施与する段階、
(ii) 層b)の施与の前にまたはその後に、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)の層a)を施与して、その結果、層a)と層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有する段階、および
(iii) 室温または高められた温度において、紫外線および/または可視光の照射によって任意的に支援されて、層a)を硬化する段階
の各段階を含む多層コーティングシステムを調製する方法にも関する。
【0109】
1の実施態様では、本発明に従う多層コーティングシステムを得るために、任意的にコーティングされた基体上にコーティング組成物b)が最初に施与され、そしてその後にコーティング組成物b)の表面上にコーティング組成物a)が施与される。
【0110】
基体上への施与は当業者に知られた任意の方法によって、たとえばロール掛け法、スプレー法、ブラシ掛け法、フローコーティング、浸漬法、およびローラーコーティングによることができる。好ましくは、上記のコーティング組成物a)およびb)のうち少なくとも1はスプレー法によって施与される。コーティング組成物a)およびコーティング組成物b)が双方ともスプレー可能なコーティング組成物であってもよい。
【0111】
本発明に従うコーティング組成物は任意の基体に施与されることができる。基体は、たとえば金属、たとえば鉄、鋼、およびアルミニウム、プラスチック、木、ガラス、合成物質、紙、皮革、または他のコーティング層、たとえばプライマー層もしくはフィラー層であることができる。
【0112】
硬化温度は一般に0〜80℃、または20〜60℃である。
【0113】
本発明のコーティングシステムの特定の用途は、ベースコート/クリアコートシステムとしてのものであり、たとえば自動車および輸送乗物のコーティングにしばしば使用される。この場合、コーティング組成物b)は水性ベースコート組成物であることができ、コーティング組成物a)はクリアコート組成物であることができる。本発明のコーティングシステムおよび製造方法は、とりわけ再仕上げ産業において、特に自動車車体工場において、自動車を再仕上げしおよび補修するために有用である。該コーティングシステムおよび製造方法は、自動車産業においても、および大型輸送乗物、たとえば列車、バス、トラック、および飛行機、ならびにこれらの部品の仕上げのためにも適用可能である。
【0114】
実施例
【0115】
使用された原料物質
Sikkens Autowave(商標): 商業的に入手可能な、水で媒体された モジュールのベースコートシステム、 Akzo Nobel Car Refinishes社から。
577、504、098、 商業的に入手可能なSikkensのモ ジュール。
888EC、888YA Autowave、Akzo Nobel Car Refinishes社から。
Activator WB: 商業的に入手可能な水性希釈液、Akzo Nobel Car Refinishes 社から。

Tolonate HDT LV: ポリイソシアネート、Rhodia社から。
Sanduvor 3206: 光安定剤、Clariant社から。
Byk 306: 湿潤剤、Byk Chemie社から。
DMEA: N,N−ジメチルエタノールアミン
【0116】
ポリエステルポリオール1の調製
【0117】
ポリエステルポリオールは、以下の成分から調製された。
無水ヘキサヒドロフタル酸 13.30kg
トリメチロールプロパン 16.80kg
イソノナン酸 6.18kg
ジメチロールシクロヘキサン 0.33kg
85%リン酸の水性溶液 0.04kg
【0118】
撹拌機、充填カラム、凝縮器、油加熱、温度調節、真空ライン、および窒素入口を備えたステンレス鋼製反応器に、これらの成分が入れられた。反応混合物が窒素流下に加熱された。混合物の温度が240℃まで徐々に上げられた。充填カラムの頂部温度が103℃を超えないような速度で、反応水が留去された。最後に、窒素流を保ちながら200ミリバールの真空がかけられ、反応が240℃において1時間行われ、最後に5mgKOH/g未満の酸価に到達した。このポリエステルポリオールのヒドロキシル価は269mgKOH/gであった。ポリエステルポリオールは、ポリスチレンを標準物として使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された1,114のMnおよび2,146のMwを有していた。反応生成物は最後に130℃まで冷却され、n−ブチルアセテートで希釈されて、77%の固形分含有量を有するポリエステルポリオールの溶液が得られた。
【0119】
チオール官能性ポリエステルの調製
【0120】
撹拌機、カラムのない蒸留装置、凝縮器、油加熱、温度調節、真空、および窒素入口を備えたガラス被覆反応器中に、上記のポリエステルポリオール1の溶液19.76kgが仕込まれた。ブチルアセテートが150℃、70ミリバールにおいて留去された。
【0121】
3−メルカプトプロピオン酸3.87kgが大気圧において添加された。エステル化反応が150℃において(窒素流を保って)真空下に実施され、最後に約25mgKOH/gの酸価に到達した。3−メルカプトプロピオン酸の第二の小分け分1.93kgが添加された。約30mgKOH/gの酸価になるまでエステル化が続けられた。メタンスルホン酸10gが添加され、それ以上反応水が回収されなくなるまで、エステル化が続けられた。n−ブチルアセテート4.98kgが添加され、150℃、10ミリバールにおいて留去された。反応混合物は130℃まで冷却され、n−ブチルアセテート4.98kgで希釈された。生成物は50〜60℃まで冷却され、10ミクロンのフィルタークロス上にろ過された。80.0%の固形分含有量、全て固形分当たりで、10mgKOH/gの酸価、146mgKOH/gのSH価、および61mgKOH/gのヒドロキシル価を有するチオール官能性ポリエステルが得られた。チオール官能性ポリエステルは、ポリスチレンを標準物として使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された1,126のMnおよび2,297のMwを有していた。
【0122】
イソシアネート官能性化合物およびチオール官能性化合物を含んでいるコーティング組成物a)の調製
【0123】
イソシアネートと反応性の基とイソシアネート基とのモル比100〜150を有するスプレー可能なクリアコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 250g
上記で調製されたチオール官能性ポリエステル溶液 579g
n−ブチルアセテート 616g
Sanduvor 3206 24g
Byk 306 11g
n−ブチルアセテート/キシレン1:1中ジブチルスズジラウレートの10重量%溶液
20g
Tolonate HDT LV 1,000g
α−アミノアセトフェノン光潜在性塩基 10g
【0124】
比較の水性コーティング組成物bα)の調製
【0125】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された白色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
AW 098(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 100g
【0126】
比較の水性コーティング組成物bβ)の調製
【0127】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された緑色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
577(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 100g
【0128】
比較の水性コーティング組成物bγ)の調製
【0129】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された赤色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
504(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 100g
【0130】
比較の水性コーティング組成物bδ)の調製
【0131】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体されたシルバーメタリックベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
888EC(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 100g
【0132】
比較の水性コーティング組成物bε)の調製
【0133】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体されたゴールドメタリックベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
888YA(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 100g
【0134】
Aotowaveの技術文書に規定されたように、プライマー施与されたアルミニウム板に、比較のコーティング組成物bα)〜bε)からのベースコート層を施与しそして乾燥することによって、比較の多層コーティングシステムA〜Eが調製された。ベースコートの乾燥層厚さは約15〜40μmであった。
【0135】
その後、上記のスプレー可能なクリアコート組成物a)が、ベースコート層上にスプレー施与された。施与されたクリアコートは約50〜80μmの乾燥層厚さを有していた。クリアコートは室温(20〜24℃)において放置乾燥された。
【0136】
本発明に従う水性コーティング組成物b1)の調製
【0137】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された白色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
098(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 90g
DMEA 10g
【0138】
本発明に従う水性コーティング組成物b2)の調製
【0139】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された緑色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
577(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 90g
DMEA 10g
【0140】
本発明に従う水性コーティング組成物b3)の調製
【0141】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体された赤色ベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
504(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 90g
DMEA 10g
【0142】
本発明に従う水性コーティング組成物b4)の調製
【0143】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体されたシルバーメタリックベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
888EC(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 90g
DMEA 10g
【0144】
本発明に従う水性コーティング組成物b5)の調製
【0145】
物理的に乾燥性の、スプレー可能な、水で媒体されたゴールドメタリックベースコート組成物が、以下の成分を混合することによって調製された。
888YA(トナーモジュール) 900g
Activator WB(希釈剤モジュール) 90g
DMEA 10g
【0146】
本発明に従うコーティング組成物b1)〜b5)は、全組成物の重量当たりで計算されて1重量%のN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)を塩基性触媒として含有する。これは、コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて112ミリモル/kgの塩基性触媒に相当する。Autowaveの技術文書に規定されたように、プライマー施与されたアルミニウム板に、コーティング組成物b1)〜b5)からのベースコート層を施与しそして乾燥することによって、本発明に従う多層コーティングシステム1〜5は調製された。ベースコートの乾燥層厚さは約15〜40μmであった。
【0147】
その後、上記のスプレー可能なクリアコート組成物a)が、ベースコート層上にスプレー施与された。施与されたクリアコートは約50〜80μmの乾燥層厚さを有していた。クリアコートは、通常の照明を有する実験室内で、すなわちUV放射なしで、室温(20〜24℃)において放置乾燥された。
【0148】
クリアコートの乾燥性は手で測定された。親指で穏やかに擦ってもほとんど跡を残さないときに、クリアコートは指触乾燥(dust−dry)とみなされた。塗膜の上に落とされた一房のワディングは、吹き飛ばされることができた。親指で強く押した跡が1〜2分間後に消えたときに、クリアコートは取り扱い乾燥(dry−to−handle)とみなされた。
【0149】
結果が表1にまとめられている。
【表1】

【0150】
表1から、コーティング組成物b)に塩基性触媒を添加すると、コーティング組成物b)の層の表面上に施与された、イソシアネート官能性化合物とチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)の乾燥速度の増加がもたらされることが推察されることができる。本発明に従う多層コーティングシステム1〜5では、クリアコートの乾燥時間は、対応する比較の多層コーティングシステムA〜Eにおけるクリアコートの乾燥時間よりも短い。これは、クリアコートが紫外線によって照射されないときにも、硬化速度が増加することを示す。本発明に従う多層コーティングシステムは、他の望ましい特性、たとえば低い染み込み性、良好な硬さ、可撓性、耐引っ掻き性、高い光沢、ならびに良好な耐有機溶媒性および耐水性も有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)を含んでいる少なくとも1の層a)、および
− 水性コーティング組成物b)を含んでいる少なくとも1の層b)
を含んでおり、
少なくとも1の層a)と少なくとも1の層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有する多層コーティングシステムであって、コーティング組成物b)が、該少なくとも1のチオール官能性化合物と該少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を、コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの量で含んでいることを特徴とする、多層コーティングシステム。
【請求項2】
コーティング組成物a)が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を含んでいることを特徴とする、請求項1に従う多層コーティングシステム。
【請求項3】
コーティング組成物a)が、チオール官能性ポリエステルを含んでいることを特徴とする、請求項1または2に従う多層コーティングシステム。
【請求項4】
チオール官能性ポリエステルが、さらにヒドロキシル基を含んでいることを特徴とする、請求項3に従う多層コーティングシステム。
【請求項5】
コーティング組成物a)が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)およびチオール官能性ポリエステルを含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項6】
コーティング組成物a)が、光潜在性塩基を含んでいることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項7】
光潜在性塩基が、α−アミノアセトフェノンであることを特徴とする、請求項6に従う多層コーティングシステム。
【請求項8】
層a)がクリアコート層であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項9】
コーティング組成物b)中の、少なくとも1のチオール官能性化合物と少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒が、3級アミンであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項10】
3級アミンがN,N−ジメチルエタノールアミンであることを特徴とする、請求項9に従う多層コーティングシステム。
【請求項11】
コーティング組成物b)中の、少なくとも1のチオール官能性化合物と少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒が、有機配位子を有する金属化合物であり、該金属が周期表の第3〜13族の金属であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項12】
コーティング組成物b)中の、少なくとも1のチオール官能性化合物と少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒が、ホスフィン成分とミカエル受容体成分とを含んでいる共触媒であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項13】
− 少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)を含んでいる少なくとも1の層a)、および
− 水性コーティング組成物b)を含んでいる少なくとも1の層b)
を含んでおり、
少なくとも1の層a)と少なくとも1の層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有する多層コーティングシステムであって、コーティング組成物b)がホスフィン成分とミカエル受容体成分とを含んでいる共触媒のうちの少なくとも一方の成分の有効な量を含んでおり、かつ該ホスフィン成分と該ミカエル受容体成分とのうちの他方がコーティング組成物a)中に存在することを特徴とする、多層コーティングシステム。
【請求項14】
層b)が、着色および/または特殊効果付与ベースコート層であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項15】
コーティング組成物b)が、コーティング組成物b)中に存在する官能基と化学反応する能力のある硬化剤を含んでいることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に従う多層コーティングシステム。
【請求項16】
(i) コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、チオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる水性コーティング組成物b)の層b)を基体に施与する段階、
(ii) 層b)の施与の前にまたはその後に、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるコーティング組成物a)の層a)を施与して、その結果、層a)と層b)とが少なくとも1の共通の層境界を有する段階、および
(iii) 室温または高められた温度において、任意的に紫外線および/または可視光の照射によって支援されて、層a)を硬化する段階
の各段階を含む多層コーティングシステムを調製する方法。
【請求項17】
自動車、大型輸送車輌、またはこれらの部品の仕上げまたは再仕上げのために実施されることを特徴とする、請求項16に従う方法。
【請求項18】
コーティング組成物b)の重量当たりで計算されて少なくとも17ミリモル/kgの、少なくとも1のチオール官能性化合物と少なくとも1のイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒を含んでいる水性ベースコート組成物b)から調製されたベースコート層b)の上に、少なくとも1のイソシアネート官能性化合物と少なくとも1のチオール官能性化合物とを含んでいるクリアコート組成物a)を施与することを含む、多層コーティングシステムにおける乾燥速度を増加する方法。
【請求項19】
i) 少なくとも1の樹脂と少なくとも1の着色および/または特殊効果付与顔料とを含んでいるトナーモジュール、
ii) 該トナーモジュールの樹脂と相容性の少なくとも1の樹脂を含んでいる任意的なコネクターモジュール、および
iii) 樹脂と顔料とを本質的に含んでいない希釈剤モジュール
を含んでいる水性ベースコート組成物を調製するための部材のキットであって、該希釈剤モジュールと該コネクターモジュールとのうち少なくとも1がチオール官能性化合物とイソシアネート官能性化合物との付加反応のための触媒の有効な量を含んでおり、かつ該触媒が塩基触媒であるときは、当該触媒が中和されていない形で存在している、部材のキット。

【公表番号】特表2009−519148(P2009−519148A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544981(P2008−544981)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069572
【国際公開番号】WO2007/068683
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】