説明

多層プリント回路基板

【課題】 多層プリント回路基板に形成された電子回路から放射される電磁ノイズを遮蔽する機能と上下方向に積層された配線の接続が確実に行える配線接続構造を備えた多層プリント回路基板を得ること。
【解決手段】 本発明の多層プリント回路基板100は、一枚のプリント回路基板110の少なくとも一方の面の電気良導体層に所定のエリアを区切って形成された電気良導体の閉鎖シールド壁111が他のプリント回路基板120の一方の面の電気良導体層、或いはその電気良導体層に形成された前記閉鎖シールド壁111と平面形状が同一の電気良導体の閉鎖シールド壁121の上端面に電気的に直接的に、或いは間接的に接続されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器、特に小型、薄型電子機器に組み込まれる多層プリント回路基板に関し、特にその多層プリント回路基板に形成された電子回路から放射される電磁ノイズを遮蔽する、或いは外部から前記電子回路内に飛び込んでくる電磁ノイズを遮蔽する機能を備えた多層プリント回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】先ず、図5乃至図7を用いて、従来技術の多層プリント回路基板を説明する。
【0003】図5は従来技術のシールド構造が形成されている多層プリント回路基板を示していて、同図Aはその一部断面図、同図Bはその一部平面図、図6は従来技術の一配線接続構造を示していて、同図Aはその斜視図、同図Bは同図AのA―A線上における断面図、そして図7は図6に示した配線接続構造の課題を説明するための断面図である。
【0004】先ず、図5を参照しながら、従来技術のシールド構造が形成されているの多層プリント回路基板を簡単に説明する。この多層プリント回路基板1は、特開平11−54944に公開されているものであって、接地電位に設定されるグランド層11上に第1のFRP基板21を介して、電源電位に設定されている電源層12、接続電極32及びダミー電極42が形成されている。接続電極32及びダミー電極42は、それぞれ層間接続用バンプ31a及びシールド用バンプ41を介してグランド層11に電気的に接続されている。第1のFRP基板21、電源層12、接続電極層32及びダミー電極42上に、第2のFRP基板22を介して信号配線13が形成されている。一部の配線13は層間接続用バンプ31bを介して接続電極32に接続されており、グランド層11に電気的に接続されている。
【0005】前記のように、この多層プリント回路基板1は或るエリアを複数本のシールド用バンプ41で囲ったシールド構造が形成されて構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この多層プリント回路基板1におけるシールド構造はそれぞれのシールド用バンプ41間に隙間があり、前記エリア内から発生する不要電磁ノイズ、或いは外部からの電磁ノイズを完全に遮蔽することができない。
【0007】また、層間接続は、前記シールド用バンプ41の他、層間接続用バンプ31a、31bが用いられており、各層間接続は一本の配線に対して一本のバンプを対応させて行われているため、上下方向に積層された複数のプリント回路基板の位置がずれると、良好に層間接続を行うことができなくなるため、上下方向に積層するプリント回路基板は精密に位置合わせを行わなければならない。そしてまた、たとえ位置合わせが良好に行われているとしても、前記層間接続は点接触に近い構造であるため、衝撃などで電子回路がオープンになることがあり、信頼性及び歩留まりの向上の妨げになっている。更にまた、集積が高密度化されるにつれて、プリント回路基板の前記層間接続の面積が少なくなり、ジュール熱の発生が大きくなって、配線の温度が上昇し、プリント回路基板の層間の絶縁樹脂との熱膨張率の相違から、配線とバンプとの間で断線が生じ易くなり、信頼性が低下するといった課題がある。
【0008】層間接続の前記位置ずれが若干生じても、前記接続不良を防止する手段として、図6に示したような層間接続構造50がある。この接続構造は各プリント回路基板51A、51Bに形成された配線52A、52Bの少なくとも一端にそれぞれ形成されている接続部であるパッド53A、53Bの直径Da(例えば、300μm)を、パッド53A、53Bの中心部に形成されているビア54の直径Db(例えば、100μm)よりも十分に大きい直径の円で形成したもので、絶縁接着層55を介して上下方向に積層、接着された複数のプリント回路基板51A、51Bの位置が多少ずれて、両配線52A、52B及びパッド53A、53Bがずれても、パッド53A、53Bが互いに重なった構造状態を維持でき、層間接続を確保することができる。
【0009】しかし、構造の層間接続構造50は、図7に示したように、パッド53Aに隣接して他の配線52Cを形成する場合には、パッド53Aより離して形成しなければならないため、この層間接続構造50は高密度集積基板用には不向きである。特に、前記のようにシールドされた狭いエリア内で適用するには向かないという課題がある。
【0010】従って、本発明はこれらの課題を解決しようとするものであって、多層プリント回路基板に形成された電子回路から放射される電磁ノイズを遮蔽する機能と上下方向に積層された配線の接続が確実に行える配線接続構造を備えた多層プリント回路基板を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】それ故、請求項1に記載の本発明の多層プリント回路基板では、一枚のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に所定のエリアを区切って形成された電気良導体の閉鎖シールド壁を、他のプリント回路基板の一方の面の電気良導体層、或いは該電気良導体層に形成された前記閉鎖シールド壁と平面形状が同一の電気良導体の閉鎖シールド壁の上端面に電気的に直接的に、或いは間接的に接続して構成し、前記課題を解決している。
【0012】また、請求項2に記載の本発明の多層プリント回路基板では、少なくとも2枚のプリント回路基板が上下方向に絶縁層を介して積層され、一方のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に、所定の幅の第1配線とその第1配線の少なくとも一端に同一の幅で形成された長方形の第1接続部を形成し、他方のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に、前記第1接続部に対して交差する方向に形成された長方形の第2接続部を備えた第2配線を前記第1配線と前記第1接続部と同様に形成し、前記第1接続部と前記第2接続部とを電気的に直接的に、或いは間接的に接続して構成し、前記課題を解決している。
【0013】そしてまた、請求項3に記載の本発明の多層プリント回路基板では、請求項1に記載の閉鎖シールド壁内に、請求項2に記載の配線構造を形成して構成し、前記課題を解決している。
【0014】従って、前記請求項1に記載の発明の多層プリント回路基板によれば、その多層プリント回路基板を構成するプリント回路基板に形成された電子回路から放射される電磁ノイズをほぼ閉鎖シールド壁で完全に遮蔽することができ、また、外部から前記電子回路に飛び込もうとする電磁ノイズをほぼ完全に遮蔽することができる。
【0015】また、前記請求項2に記載の発明の多層プリント回路基板によれば、複数のプリント回路基板に形成された配線の層間接続を、広い面積を取ることなく確実に行うことができる。
【0016】そしてまた、前記請求項3に記載の発明の多層プリント回路基板によれば、閉鎖シールド壁で囲まれ、電磁シールドされた狭いエリアであっても、その中で高密度に配線することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図を用いて、本発明の好適な実施形態の多層プリント回路基板を説明する。
【0018】図1は本発明の一実施形態の閉鎖シールド壁が形成されたプリント回路基板の斜視図、図2は図1に示したプリント回路基板を2枚積層して内部にシールドを形成した構造の本発明の一実施形態の多層プリント回路基板の断面図、図3は本発明の一実施形態の配線接続構造を示していて、同図Aはその斜視図、同図Bは同図AのA―A線上における断面図、そして図4は図3に示した配線接続構造の利点を説明するための図3Bと同様の断面図であるる。
【0019】先ず、図1を用いて本発明の一実施形態の閉鎖シールド壁が形成されたプリント回路基板を説明する。
【0020】図1において、符号110は本発明の一実施形態の多層プリント回路基板100の構成要素の一つであるプリント回路基板を指す。このプリント回路基板110の一表面の電気良導体層にフォトリソグラフ技術と電気メッキ技術とを駆使して閉鎖シールド壁111が形成されている。図示の場合、この閉鎖シールド壁111は長方形の升型で形成されている。そして、この閉鎖シールド壁111の、例えば、一短辺に配線112が接続、形成されている。
【0021】同様に、図2に示したように、他のプリント回路基板120の一表面の電気良導体層にも閉鎖シールド壁121が前記閉鎖シールド壁111と同一の形状、大きさで形成されていて、両プリント回路基板110、120を、前記各閉鎖シールド壁111、121を合わせて積層する。かくして両閉鎖シールド壁111、121が合体して内部に閉鎖空間である被シールドエリア130が形成される。図2に図示の例は、図1に示したプリント回路基板110を逆さまにしてプリント回路基板120の閉鎖シールド壁121に被せ、合体し、電気的に直接接続し、被シールドエリア130の外側は電気的絶縁接着樹脂140で両プリント回路基板110、120を接着した構造の多層プリント回路基板100である。前記閉鎖シールド壁111、121はCu、Ni、Sn、Au、Agなどで形成することができる。
【0022】図2に図示した例では、プリント回路基板120にも閉鎖シールド壁121が形成されていて、被シールドエリア130が形成されているが、プリント回路基板120側には前記閉鎖シールド壁121を形成せず、表面の電気良導体層をそのまま前記閉鎖シールド壁111の蓋として積層し、前記被シールドエリア130を形成する多層プリント回路基板を構成するようにしてもよい(不図示)。
【0023】前記被シールドエリア130は、通常、面積が狭い。この狭い面積の被シールドエリア130内に高密度で多数の配線を形成する場合に好適な配線接続構造を図3を用いて次に説明する。
【0024】図3において、符号200は一方の配線210に他方の配線220を交差して電気的に接続した状態の多層プリント回路基板における接続構造を示している。前記両配線210、220の少なくとも一先端部には前記配線210、220の幅にほぼ等しい幅で、長さが前記幅の、例えば、4倍、厚さが配線210、220の厚さより若干厚い直方体の接続部211、221が形成されている。
【0025】このような配線210、220を形成することにより、それらの各接続部211、221を互いに交差するように配設して接続する場合には、両者の接続位置が前記4倍の長さの範囲でずれても、両接続部211、221が互いに相手側の接続部上に留まっていて、従来技術に見受けられたような接続不良を防ぐことができ、しかも両接続部211、221が面で接触するので確実に接続することができるほか、両者の接続部分でジュール熱の発生を抑制することができる。
【0026】従って、前記被シールドエリア130内のプリント回路基板110、120に前記のような配線210、220及びそれらの先端部に前記接続部211、221を形成して配線し、図3Bに示したように、両プリント回路基板110、120を電気的絶縁接着樹脂140を介して前記の接続構造200が構成されるように合体、接着すれば多層プリント回路基板が得られ、しかも、図4に示したように、高集積密度で多数の配線210、220を形成することができる。
【0027】なお、本発明の配線接続構造200の形成は前記被シールドエリア130内に限定されるものではなく、被シールドエリア130外にもエリアにも適用できることを付言しておく。
【0028】また、前記各実施形態では2層のプリント回路基板110、120で構成した例で示したが、本発明は2層のものに限定されるものではなく、3層以上の構造で形成された多層プリント回路基板にも適用できることを付言しておく。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層プリント回路基板によれば、シールド部分を密閉できるので、電磁ノイズをほぼ完全に遮蔽することができる。
【0030】また、配線の接続部が、その配線の幅と同等の幅で形成されているため、高密度で集積できる。そして、配線の接続構造が面接触で、しかも接続部分が長方形であるため、接続位置が多少ずれても、確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の閉鎖シールド壁が形成されたプリント回路基板の斜視図である。
【図2】 図1に示したプリント回路基板を2枚積層して内部にシールドを形成した構造の本発明の一実施形態の多層プリント回路基板の断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態の配線接続構造を示していて、同図Aはその斜視図、同図Bは同図AのA―A線上における断面図である。
【図4】 図3に示した配線接続構造の利点を説明するための図3Bと同様の断面図である。
【図5】 従来技術のシールド構造が形成されている多層プリント回路基板を示していて、同図Aはその一部断面図、同図Bはその一部平面図である。
【図6】 従来技術の一配線接続構造を示していて、同図Aはその斜視図、同図Bは同図AのA―A線上における断面図である。
【図7】 図6に示した配線接続構造の課題を説明するための断面図である。
【符号の説明】
100…本発明の一実施形態の多層プリント回路基板、110,120…プリント回路基板、111,121…閉鎖シールド壁、112…配線、130…被シールドエリア、140…電気的絶縁接着樹脂、200…本発明の一実施形態の配線構造、210,220…配線、211,221…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一枚のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に所定のエリアを区切って形成された電気良導体の閉鎖シールド壁が他のプリント回路基板の一方の面の電気良導体層、或いは該電気良導体層に形成された前記閉鎖シールド壁と平面形状が同一の電気良導体の閉鎖シールド壁の上端面に電気的に直接的に、或いは間接的に接続されていることを特徴とする多層プリント回路基板。
【請求項2】 少なくとも2枚のプリント回路基板が上下方向に絶縁層を介して積層され、一方のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に、所定の幅の第1配線と該第1配線の少なくとも一端に同一の幅で形成された長方形の第1接続部が形成され、他方のプリント回路基板の少なくとも一方の面の電気良導体層に、前記第1接続部に対して交差する方向に形成された長方形の第2接続部を備えた第2配線を前記第1配線と前記第1接続部と同様に形成し、前記第1接続部と前記第2接続部とが電気的に直接的に、或いは間接的に接続されていることを特徴とする多層プリント回路基板。
【請求項3】 請求項1に記載の閉鎖シールド壁内に、請求項2に記載の配線構造が形成されていることを特徴とする多層プリント回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−102762(P2001−102762A)
【公開日】平成13年4月13日(2001.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−275313
【出願日】平成11年9月28日(1999.9.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】